JP2005254375A - ボールねじ面のラップ加工方法並びにそれに用いるラップ装置 - Google Patents

ボールねじ面のラップ加工方法並びにそれに用いるラップ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】形状精度が高く、かつ加工速度を向上させるボールねじのラップ装置を提供する。
【解決手段】ラップ工具11はスリット17により多数に分割されており、各分割片11aは、調整ねじ14を締め込むことにより弾性体13を変形して、内形方向に均等なラップ加工圧が作用する。これにより、各分割片のラップ歯によりねじ面が研磨される。励振器12により各分割片11aに振動を付与して、加工部にラップ砥粒をポンプ作用により供給する。
【選択図】図4

Description

本発明は、ボールねじ装置のボールねじ面(ねじ軸の外周ねじ溝面又はナットの内周ねじ溝面)、特にボールねじ軸のねじ面(外周ねじ溝面)に用いて好適なラップ加工方法並びにそれに用いるラップ装置(ラップ加工装置)に関する。
一般に、ボールねじ装置のねじ面(ねじ溝)は、高い精度が要求されており、研削加工を施した後、仕上げ加工としてラップ加工が施されている。
従来、ねじ面のラップ加工に係り、特許文献1及び2のものが提案されているが、実際には、ラップ工具は消耗品であって簡単な構造のものが望ましく、ねじ軸のねじ面のラップ工具としては、手作業用の2つ割ラップ工具が用いられている。該ラップ工具1は、図1(a)に示すように、一般的には鋳物からなり、内周面に、ねじ軸のボールねじ溝と整合する突条からなるラップ歯2が形成され、かつ径方向に1本のスリット3が形成されている。
該ラップ工具1は、図1(b)に示すように、調整ねじ4を有するケレ5に取付けられ、更に上記ラップ歯2をねじ軸6に螺合した状態で、該ねじ軸6が旋盤に取付けられる。そして、ねじ軸6を正逆方向に回転すると共に、上記ケレ5を手で抑えて、ラップ歯2とねじ軸のねじ溝面とを摺動しつつ、該摺動部分にラッピング用砥粒(ラップ砥粒)を適宜供給して、ねじ面が研磨(ラップ)加工される。この際、ケレ5から手に作用する回転抵抗をみて、ケレ5に設けられた調整ねじ4を締め込むことにより、ラップ工具1は、図2に示すようにラップ加工圧(ラップ圧調整力)が調整される。
2つ割ラップ工具1は、ねじ軸のボールねじ溝面との間に所定のラップ加工圧が付与された状態で、ラップ歯2がねじ面との間に共摺りさせることにより、ねじ面の表面粗さを向上し、前研削工程で発生したバリの除去を行う。
特許公開2000−198063 特許公開2002−370155
上記2つ割ラップ工具1は、図2(b)に示すように、ラップ圧力調整ねじ4により締付けられて、断面形状が楕円径に歪んだ状態で、ラップ加工されるため、工具とねじ面との接触加工部A,Bは2点になる。このため、ラップ加工速度は、研削等の他の除去加工法と比較して非常に遅く、ボールねじ軸のラップ加工では、例えば0.1〜0.5本/時間であって、ラップ作業が手作業であることと相俟って、精密なボールねじ装置における生産性向上のネックとなっている。
更に、加工の進行に伴って加工面であるねじ面の表面粗さは、ある程度向上して定常状に達するが、加工されたボールねじ軸の弦巻線に沿う断面形状は、任意の角度で直径値が一定となる等径歪み円となるため、ボールねじ軸の形状精度は、ラップ加工進展に伴って悪化することになる。
即ち、図3は、加工物(ねじ面)の断面形状が3角成分のおむすび形(真円度の成分n=3)とし、ラップ工具が2つ割(ラップ工具形状の等角多角形k=2)とした、ねじ軸の回転角によるラッピング形状を示す模式図であり、各角度0°〜135°においてラップ工具の大きさは一定で(2辺[歯A,B]の距離Lは一定)である。2つの歯(接触加工部A,B)は加工物が0°のときラップ工具中心Gは、原点からy軸上にCだけ離れたG点の位置に移動する。次に45°回転すると原点から135°の方向にCだけ離れたG点の位置に移動する。さらに45°ずつ回転させると加工物中心Gは半径Cの円上を移動することがわかる。よって、加工物は中心が半径Cの円を描くように振れまわり、3辺が一様にラップ仕上が行われるため、おむすび形を真円に近づけることは不可能なことになる。
そこで、本発明の目的は、ラップ工具を多数個に分割して、各分割片に等しいラップ加工圧が作用するように構成し、もって上述した課題を解決したボールねじ面のラップ加工方法及びそれに用いられるラップ装置を提供することがにある。
また、本発明の他の目的は、ラップ歯に振動を与えて、新鮮なラップ砥粒を加工部に積極的に送り込むことにより、ねじ面の形状精度を維持しつつ、ラップ加工速度を向上して、ラップ作業の効率化を図ることにある。
請求項1に係る本発明は(例えば図5,図6参照)、ボールねじ面(21a)に、ラップ砥粒を供給しつつラップ歯(20)を接触し、前記ねじ面にラップ歯を摺接して研磨するラップ加工方法において、
ラップ工具(11)を多数(3個以上)に分割した各分割片(11a…)に略々均等なラップ加工圧を作用して、前記各分割片にそれぞれ形成されたラップ歯が、前記ねじ面に対して多角形状にそれぞれ略々均等なラップ加工圧にて接触してなる、
ことを特徴とするボールねじ面のラップ加工方法にある。
請求項2に係る本発明は(例えば図7,図8,図11,図12参照)、前記各分割片(11a…)に、励振器(12)により振動を与えて、前記ラップ歯(20)及びねじ面(21a)からなる加工部に、新鮮なラップ砥粒(T)を供給すると共に、ラップ加工により破砕されたラップ砥粒を前記加工部から排出してなる、
請求項1記載のボールねじ面のラップ加工方法にある。
請求項3に係る本発明は、前記分割片(11a…)は、円筒形を等角に分割された5個以上であり、
前記ねじ面に接触する前記各分割片のラップ歯により形成される多角形(k)が5角形以上である、
請求項1又は2記載のボールねじ面のラップ加工方法にある。
請求項4に係る本発明は、ラップ加工される前記ボールねじ面(21a)が、ねじ軸(21)の外周に形成されたねじ溝である、
請求項1ないし3のいずれか記載のボールねじ面のラップ加工方法にある。
請求項5に係る本発明は(例えば図4,図13参照)、ボールねじ面(21a)にラップ工具(11)のラップ歯(20)をラップ加工圧により接触して、前記ねじ面にラップ砥粒を介在して前記ラップ歯を摺接することによりラップ加工するラップ装置において、
前記ラップ工具(11)は、スリット(17)により周方向に多数分割された分割片(11a…)からなり、
操作部(14a)の変位を、前記各分割片に対して略々均等な径方向変形として伝達し、前記各分割片にそれぞれ形成された前記ラップ歯に略々均等な前記ラップ加工圧を付与する加工圧調整手段(13,14)(14,11b,16b;図13参照)を設け、
前記各分割片(11a…)のラップ歯(20)が、前記ねじ面(21a)に多角形状にそれぞれ略々均等なラップ加工圧にて接触してなる、
ことを特徴とするボールねじ面のラップ装置にある。
請求項6に係る本発明は(例えば図4参照)、前記加工圧調整手段は、閉鎖空間(K)内に収納された弾性体(13)と、該空間内の軸方向一端面を軸方向に変位自在に調整し得る操作部(14)と、を有し、
前記空間の軸方向他端面及び径方向の内又は外側の一方を固定部(15,16)とすると共に、径方向内又は外側の他方に前記分割片(11a…)を配置し、前記操作部(14)による弾性体(13)の軸方向変位に基づき、前記弾性体を径方向に変形して前記分割片(11a…)に略々均等なラップ加工圧を付与してなる、
請求項5記載のボールねじ面のラップ装置にある。
請求項7に係る本発明は(例えば図11,図12参照)、前記分割片(11a…)に振動を与える励振器(12a,12b,12c)を設け、前記各分割片に振動を与えて、前記ラップ歯(20)及びねじ面(21a)からなる加工部に、新鮮なラップ砥粒(T)を供給すると共に、ラップ加工により破砕されたラップ砥粒を前記加工部から排出してなる、
請求項5又は6記載のボールねじ面のラップ装置にある。
請求項8に係る本発明は、前記分割片(11a…)は、円筒形を等角に分割した5個以上であり、
前記ねじ面(21a)に接触する前記各分割片のラップ歯(20)により形成される多角形が5角形以上である、
請求項5ないし7のいずれか記載のボールねじ面のラップ装置にある。
請求項9に係る本発明は、前記ラップ加工される前記ボールねじ面が、ねじ軸(21)の外周に形成されたねじ溝であり、
前記ラップ工具(11)が、内周面に前記ラップ歯(20)が形成されたナット状部材からなる、
請求項5ないし8のいずれか記載のボールねじ面のラップ装置にある。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより請求項記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る本発明によると、ラップ工具が多数の分割された分割片からなり、これら分割片の各ラップ歯が、加工面であるねじ面に対して多角形状にそれぞれ略々均等な加圧力にて接触するので、多数のラップ歯が同時に作用して加工速度を速くすることができると共に、ねじ面の形状精度も向上し、精度の高いラップ加工を高い作業効率により行うことができる。
請求項5に係る本発明によると、上述した精度の高いラップ加工を高い作業効率で行うことのできるラップ装置を提供し得る。
請求項6に係る本発明によると、加工圧調整手段が弾性部材を有するので、消耗品であるラップ工具は単純な形状で足り、ラップ工具を安価にして、ラップ作業のコストダウンを図ることが可能となる。
請求項2に係る本発明によると、加工部にて破砕されたラップ砥粒を外部に排出すると共に、常に新鮮なラップ砥粒を供給するので、切れ刃の鋭いラップ砥粒により高い効率で精度の高いラップ加工を行うことができる。
請求項7に係る本発明によると、上述した高効率で精度の高いラップ加工を行うことのできるラップ装置を提供し得る。
請求項3に係る本発明によると、分割片が5個以上で、ラップ歯により形成される多角形が5角以上であると、ねじ面を真円に近づくように加工することができ、ねじ面の形状精度を向上することができる。
請求項8に係る本発明によると、上述したねじ面の形状精度を向上することができるラップ装置を提供することができる。
請求項4に係る本発明によると、ボールねじ軸のねじ溝を加工ねじ面とするので、ボールねじ装置にあっては、ねじ軸は長くかつ送り精度に対して影響が大きいが、本発明に係るラップ加工により該ボールねじ軸の精度を向上することができる。
請求項9に係る本発明によると、上述したボールねじ軸の精度を向上することのできるラップ装置を提供し得る。
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態を説明するに、まず図4及び図5に沿って、ラップ装置(工具)について説明する。
ボールねじ軸ラップ加工用装置10は、図4に示すように、ラップ工具11、励振器12、弾性体13、外筒体16、加工圧調整ねじ14及びハウジング15からなる。ラップ工具11は、図5に示すように、交互に軸方向両端から多数のスリット17…が形成されて、周方向に等角度で分割されかつ薄肉連結部19…にて連結された多数(3個以上、図5の場合6個、図6の場合8個)の分割片11a…からなり、その内周面には、加工物であるボールねじ軸21のねじ溝面21aに整合する形状からなるラップ歯20が形成されている(図7,図8参照)。
ラップ工具11の外周面には、中空円筒状の弾性体13が被嵌されており、該弾性体13は、ポリウレタン等の合成ゴム、天然ゴム、ゲル状物、油等の液体等の非圧縮性材料からなり、軸方向変位により周方向に全周に対して略々均等に変形する材料からなる。該弾性体13の外周面には、シリンダ状の外筒体16が密着して被嵌されており、該外筒体16の一端内周面には雌ねじ部16aが形成されている。上記加圧調整ねじ14は、外周に並んでローレット等の操作部14a及び雄ねじ部14bを有しており、該雌ねじ部14bが上記外筒体16の雌ねじ部16aに螺合されている。また、上記外筒体16の他端側には、鍔付き円筒状のハウジング15がねじにより固定されている。
従って、上記弾性体13は、その外周面が外筒体16に、その軸方向他端がハウジング15に、その軸方向一端がワッシャ22を介して加圧調整ねじ14の一端面に、そして内周面がラップ工具の分割された各分割片11a…に密接して、閉鎖空間K内に収納されている。そして、加工調整ねじ14を締付けることにより、ワッシャ22を介して弾性体13の一端面が圧縮変形すると、該弾性体13は、その外周面及び他端面がそれぞれ外筒体16及びハウジング15により変位が規制されており、かつ各分割片11a…は、各スリット17〜17f及び連結薄肉部19…にてそれぞれ径方向に変形可能となっているため、上記弾性体13は内径方向に膨らみ、各分割片11a…には,図6(b)に示すように、それぞれ均等のラップ加工圧調整力が作用する。
一方、各分割片11a…の外周面には、それぞれ励振器12が貼付等により固着されている。該励振器12は、電気エネルギを機械的振動により変換する、例えば圧電素子であり、各分割片11a…を半径方向に振動する。一例として、励振器は、図7に示すように、電源25に連結された加振器12aと、抵抗26に連結された吸振器12bとからなり、加振器12aに所定周波数の振動を出力すると共に、所定周波数を吸振すべく吸振器12bを作動状態とすると、各分割片11a…は、加振器12aから吸振器12bに向って上記振動を伝播して、各分割片従ってその円周面のラップ歯20にたわみ進行波を発生させる。また、他の例として、励振器は、図8に示すように、径方向に分極した、軸方向に延びるトイ型圧電素子12cからなる。該圧電素子13cにより、各分割片11a…に径方向の振動を発生する。
ついで、上述したラップ装置10を用いることにより、本発明に係るラップ加工方法を説明する。ボールねじ軸21に、ナット形状の本ラップ装置11を取付け、この状態でボールねじ軸21を旋盤に装着する。ボールねじ軸21はねじ軸長さに相当する所定ストロークで本ラップ装置11が移動するように正逆回転し、また本ラップ装置11は手で抑えるか又は所定治具により固定される。これにより、ボールねじ軸のねじ面21aと、ラップ工具11のラップ歯20との間には相対摺動が生じ、ラップ砥粒が供給されることにより、ラップ研磨加工が行われる。
この際、ラップ歯20は、各分割片11a…に形成されているため、ねじ面に対して各分割片の数からなる多角形、本実施の形態の場合では6角形又は8角形によりねじ面に当接して、多数の歯(3個以上、例えば6個又は8個)によりラップ加工が施される。そして、ラップ加工の進行に伴い、加工圧調整ねじ14が締め込まれることにより、弾性体13が圧縮変形され、それにより径方向に膨らんだ部分が薄肉部19により変形可能になっている各分割片11aに対して内径方向に均等なラップ圧調整力として作用し、径方向に均等な加工圧力が作用する多数のラップ歯によりラップ加工が続行される。
これにより、多数のラップ歯によるため、従来の2個のラップ歯によるものに比し、加工速度が向上して、高い効率でのラップ作業を行うことができる。また、多数の分割片による多角形歯による加工により、ボールねじ軸の形状精度を向上し得る。
以下、ねじ軸の形状精度の向上について説明する。
[円筒ラップ仕上げにおける理論解析]
ラップ工具の形状を等角多角形(k角形)とし,ラップ仕上中においては、常に工作物とラップ工具が外接すると仮定する。工作物形状によりラップ工具の中心がどのように振れまわるかを求める。
工作物半径r(θ)は接線極座標を用いてフーリエ級数の形で下記のように表示できる。
Figure 2005254375
図9に示すように、ラップ工具の一辺をl,工作物の中心Oを原点にとり、Oからlに下した垂線の足A・l,とli+1交点をBとして、ラップ工具の中心G(x+y)は各頂点Bの平均の位置にあると考える。
ここで、ラップ工具の中心G(x+y)は各頂点Bの平均の位置にあると考えて、
Figure 2005254375
Figure 2005254375
以上の結果を表1に示す。
Figure 2005254375
A:n+1=mkのとき
Figure 2005254375
B:n−1=mkのとき
Figure 2005254375
C:平行二直線(k=2)で挟んだとき、ラップ工具がnの奇数成分に対して、A,B,と同様に変動する。
空欄は工作物中心とラップ工具中心が一致していることをあらわす。
以下、表1を2つのケースに分けて考察する。
ケース1:空欄の場合
表1の空欄は、x=y=0,すなわちラップ仕上中に工作物とラップ工具の中心は常に一致していることをあらわす。すなわち、加工中においては、ラップ工具はふれまわらずに、工作物は凸部が積極的に削られるので、軸形状は真円に近づく。
ケース2:A,B,Cの場合
いずれの場合も物理的意味は等しく、工作物の凹凸に応じてラップ工具も同じ量だけ振れまわる。したがって、凸部や凹部も一様にラップ仕上が行われるため、いくらラップ仕上をしても真円には近づかない。
たとえば、k=4の場合、偶数成分は減少するが奇数成分は減少しないことを示す。また、n≦k−2のすべての成分はすべて空欄となることがわかり、多分割工具の有効性が理論的に証明される。
Figure 2005254375
従って、工具の分割片の数は、5個以上が好ましく、それ以上数が増える程形状精度が向上する。
[円筒軸の真円度成分とボールねじ軸のよろめき成分]
これまでの説明は、円筒の加工に対しておこなわれてきた。ここでは、「円筒の断面形状における真円度成分」と「ボールねじ軸の1回転による変動成分(以下、よろめき成分)」の相似性より、円筒軸のラップ仕上における理論解析がボールねじ軸に応用できることを示す。
円筒軸の断面形状には、加工中の円筒軸偏心や旋盤の親ねじ精度などにより、図10(a)断面A−Aの実線の真円に対し、2点鎖線のように、半径方向にいびつが生じている。これを真円に修正するには、楕円形やおむすび形などの断面形状に含まれる多角形成分をすべて減少させる必要がある。
ついで、励振器12によるラップ加工方法について説明する。ラップ加工速度の高効率化には、切れ刃の鋭い、新鮮なラップ砥粒を加工部に積極的に送り込むことが重要であるが、本ラップ加工方法では、励振器12によりラップ工具11の各分割片11a…が振動して、これによるポンプ効果により加工領域で破砕したラップ砥粒を外部に吐き出すと共に、新鮮で切り刃の鋭いラップ砥粒が加工領域に送り込まれる。
図7に示す加振器12a及び吸振器12bを用いた実施例を図11に示す。加振器及び吸振器により各分割片11aは、ラップ工具11の一端Eから他端Fに向うたわみ進行波が発生する。これにより、ラップ歯20がねじ面21aに対して接離する部分が軸方向に順次移動し、ねじポンプ様にラップ砥粒Tは、一端Eから他端Fに強制的に送られる。これにより、ラップ歯20とねじ面21aとの加工部に、常に新鮮なラップ砥粒が供給され、そして加工により破砕されたラップ砥粒が加工面から順次排出される。
図12は、図8に示す励振器12cを用いた実施例を示すものであり、圧電素子からなる励振器12cにより、ラップ工具11の各分割片11a…は、半径方向に振動し、ラップ歯20とねじ面21aとの間が接離して、該加工部へラップ砥粒Tが供給されそして吐出されることが繰返される。同時に、ラップ装置10は、ねじ運動に基づき軸方向に往復移動するので、ラップ歯20及びねじ面21aからなる加工部には、常に新鮮なラップ砥粒が供給され、加工により破砕した砥粒が該加工部から排出される。
なお、図10,図12は、イメージとして理解し易いように、極めて強調して描かれているが、実際は、励振器12による振動は極めて細かく、ラップ歯10とねじ面21aとの擦れ合いによる研磨仕上げ加工に影響を及ぼすものではない。また、図12に示す励振器12cは、弾性体13で支えられているため、励振器12cの微振動と共に、弾性体13の共振により大きな同期な振動が発生し、上述した加工面へのポンプ作用を増大化する可能性もある。
図13は、ラップ工具分割片のラップ圧調整手段として、弾性体を用いない実施の形態を示すものである。ラップ装置10’は、ラップ工具11,ハウジング16,ラップ圧調整ねじ14及びエンドキャップ15を有しており、ラップ工具11は、同様にスリット17により多数の分割片11a…が形成されていると共に、外周面がテーパ面11bからなる。また、ハウジング16の内周面にはテーパ面16bが形成されており、該テーパ面16bに上記テーパ面11bが係合してラップ工具11が嵌合されている。
ハウジング16の一端面には、ラップ工具11との間にばね座金29及び平座金30を介在して、エンドキャップ15が6角穴付ボルト31により固定されている。そして、ハウジング16の他端部に形成された雌ねじ16aにラップ圧調整ねじ14の雄ねじ部14bが螺合されている。
これにより、操作部14aによりラップ圧調整ねじ14を締め込むことにより、ラップ工具11の各分割片11a…は、テーパ面11b,16bにより均等に内径方向に移動して、均一なラップ加工圧が付与される。なお、本テーパ面によるラップ圧調整手段は、テーパ面の加工が面倒であり、消耗品としてのラップ工具としては、先の実施の形態に係る弾性体13によるものが好ましい。
また、上述した実施の形態は、ボールねじ軸のねじ面のラップ加工について説明したが、本発明は、これに限らず、外周面にラップ歯を有する分割片からなるラップ工具を用いて、ボールナットのねじ面に対しても同様に適用可能である。
従来のラップ工具を示す図で、(a)はラップ工具の正面図及び側断面図、(b)はラップ工具をケレに取付けた状態を示す図。 従来のラップ工具によるラップ加工を示す断面図で、(a)はラップ加工圧を作用していない状態、(b)はラップ加工圧を作用した状態を示す。 従来のラップ工具によるラップ加工の各角度における状態を示す図。 本発明に係るラップ装置を示す断面・正面図。 本発明に係るラップ工具を示す図で、(a)は斜視図、(b)は断面図。 本発明に係るラップ工具によるラップ加工を示す図で、(a)はラップ加工圧を作用していない状態、(b)はラップ加工圧を作用した状態を示す。 本発明に係る励振器の一例を示す模式図。 本発明に係る励振器の他の例を示す模式図。 任意断面形状の加工物に対するラップ加工を示す図。 円筒軸の真円度成分とボールねじ軸のよろめき成分を示す図。 一例の励振動器を取付けたラップ装置によるラップ加工を示す模式図。 他の例の励振器を取付けたラップ装置によるラップ加工を示す模式図。 他の実施の形態によるラップ装置を示す正面断面図。
符号の説明
10,10’ ラップ装置
11 ラップ工具
11a 分割片
12,12a,12c 励振器(圧電素子)
13 弾性体
14,14a 操作部(加工力調整ねじ)
15 外筒部
16 ハウジング
17 スリット
19 薄肉連結部
20 ラップ歯
21 ボールねじ軸
21a ボールねじ面(ねじ溝)
14b,16b テーパ面
T ラップ砥粒

Claims (9)

  1. ボールねじ面に、ラップ砥粒を供給しつつラップ歯を接触し、前記ねじ面にラップ歯を摺接して研磨するラップ加工方法において、
    ラップ工具を多数に分割した各分割片に略々均等なラップ加工圧を作用して、前記各分割片にそれぞれ形成されたラップ歯が、前記ねじ面に対して多角形状にそれぞれ略々均等なラップ加工圧にて接触してなる、
    ことを特徴とするボールねじ面のラップ加工方法。
  2. 前記各分割片に、励振器により振動を与えて、前記ラップ歯及びねじ面からなる加工部に、新鮮なラップ砥粒を供給すると共に、ラップ加工により破砕されたラップ砥粒を前記加工部から排出してなる、
    請求項1記載のボールねじ面のラップ加工方法。
  3. 前記分割片は、円筒形を等角に分割された5個以上であり、
    前記ねじ面に接触する前記各分割片のラップ歯により形成される多角形が5角形以上である、
    請求項1又は2記載のボールねじ面のラップ加工方法。
  4. ラップ加工される前記ボールねじ面が、ねじ軸の外周に形成されたねじ溝である、
    請求項1ないし3のいずれか記載のボールねじ面のラップ加工方法。
  5. ボールねじ面にラップ工具のラップ歯をラップ加工圧により接触して、前記ねじ面にラップ砥粒を介在して前記ラップ歯を摺接することによりラップ加工するラップ装置において、
    前記ラップ工具は、スリットにより周方向に多数分割された分割片からなり、
    操作部の変位を、前記各分割片に対して略々均等な径方向変形として伝達し、前記各分割片にそれぞれ形成された前記ラップ歯に略々均等な前記ラップ加工圧を付与する加工圧調整手段を設け、
    前記各分割片のラップ歯が、前記ねじ面に多角形状にそれぞれ略々均等なラップ加工圧にて接触してなる、
    ことを特徴とするボールねじ面のラップ装置。
  6. 前記加工圧調整手段は、閉鎖空間内に収納された弾性体と、該空間内の軸方向一端面を軸方向に変位自在に調整し得る操作部と、を有し、
    前記空間の軸方向他端面及び径方向の内又は外側の一方を固定部とすると共に、径方向内又は外側の他方に前記分割片を配置し、前記操作部による弾性体の軸方向変位に基づき、前記弾性体を径方向に変形して前記分割片に略々均等なラップ加工圧を付与してなる、
    請求項5記載のボールねじ面のラップ装置。
  7. 前記分割片に振動を与える励振器を設け、前記各分割片に振動を与えて、前記ラップ歯及びねじ面からなる加工部に、新鮮なラップ砥粒を供給すると共に、ラップ加工により破砕されたラップ砥粒を前記加工部から排出してなる、
    請求項5又は6記載のボールねじ面のラップ装置。
  8. 前記分割片は、円筒形を等角に分割した5個以上であり、
    前記ねじ面に接触する前記各分割片のラップ歯により形成される多角形が5角形以上である、
    請求項5ないし7のいずれか記載のボールねじ面のラップ装置。
  9. 前記ラップ加工される前記ボールねじ面が、ねじ軸の外周に形成されたねじ溝であり、
    前記ラップ工具が、内周面に前記ラップ歯が形成されたナット状部材からなる、
    請求項5ないし8のいずれか記載のボールねじ面のラップ装置。
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