JP2005246106A - 生物脱臭装置、生物脱臭方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】悪臭漏れ及び脱臭性能の経時的な低下を防止することができ、しかもコスト性にも優れた生物脱臭装置を提供すること。
【解決手段】本発明の循環散水運転式の生物脱臭装置11は、悪臭ガスG1を生物学的に脱臭するものであって、容器12、充填担体15、散水器21、散水配管31等を備える。容器12には悪臭ガスG1が導入される。充填担体15は、脱臭用微生物またはそれ由来の酵素の担持用であり、容器12内に充填される。散水器21は、容器12内の水を充填担体15に散水する。散水配管31は、容器12内の水を散水用水W1として回収して散水器21に循環供給する。散水配管31の途上には、散水用水W1の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質を低減できる臭気物質低減部材33が配設される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、生物脱臭装置、生物脱臭方法に関するものである。
従来、有機性廃棄物の堆肥化プラント、下水処理場、畜舎、食品加工工場等において発生する悪臭ガスを、微生物を利用して生物学的に脱臭する装置がよく知られている。一般的にこの種の生物脱臭装置は、悪臭ガスが導入される容器を備えており、その容器内には脱臭用微生物を担持させた充填担体が充填されている。容器内に導入された悪臭ガスは、充填担体を通過する際に脱臭用微生物の作用により脱臭された後、排気ダクトを介して容器外に排出されるようになっている。また、充填担体の上部には散水器が配設されており、その散水器から充填担体に対して水を散水することで、脱臭用微生物の活性が維持されるようになっている。
このような生物脱臭装置には、水を掛け捨てにする非循環散水方式と、容器内に溜まった水を捨てずに回収して散水用水として再利用する循環散水方式とがある。しかしながら、前者の非循環散水方式はコスト性や環境性の点で難点があるため、現在では後者の循環散水方式のほうが望ましいと考えられている。ただし、循環散水方式を採用した場合、悪臭ガス中に含まれる臭気物質や、悪臭ガスの分解によって生成した臭気物質などが散水用水にイオンとして蓄積し、次第にその濃度を増していく。そして、このような高濃度のイオンを含む散水用水が散水されると、脱臭用微生物の活性が低下し、長期にわたって脱臭性能が維持されなくなる。また、散水器から散水用水を散水する際には臭気物質が揮発しやすいため、脱臭処理済みのガスに臭気成分が含まれてしまい、結果として容器外に悪臭が漏れてしまう。ちなみに、アンモニアを主体とする悪臭ガスに対する循環散水方式の生物脱臭装置では、散水用水の電気伝導度が35ms/cm〜50ms/cm程度で散水を行うと、10ppm〜20ppm程度のアンモニアが漏れることがわかっている。
そこで、上記の欠点を解消しうる循環散水方式の生物脱臭装置として、例えば、散水用水のイオン濃度に従って新水を補給して希釈し、散水用水のイオン濃度を適正濃度まで下げて散水を行う技術が従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−42353号公報(図1等)
ところが、上記従来技術の場合、散水用水のイオン濃度を適正濃度まで下げるためには大量の新水を補給する必要があり、それに伴って生物脱臭装置の運転中に大量の廃水が生じてしまう。ゆえに、廃水処理費と水代とがかかり、ランニングコストが高くなるという問題がある。また、廃水処理設備が別途必要になるほか、イオン濃度を測定するためのセンサ等の設備が必要になるため、設備コストも高くなるという問題もある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、悪臭漏れ及び脱臭性能の経時的な低下を防止することができ、しかもコスト性にも優れた生物脱臭装置、生物脱臭方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、悪臭ガスが導入される容器と、前記容器内に充填され、脱臭用微生物またはそれ由来の酵素を担持させる充填担体と、前記容器内の水を前記充填担体に散水する散水器と、前記容器内の水を散水用水として回収して前記散水器に循環供給する散水配管とを備え、前記悪臭ガスを生物学的に脱臭する循環散水運転式の生物脱臭装置において、前記散水配管の途上に、前記散水用水の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質を低減できる臭気物質低減部材を配設したことを特徴とする生物脱臭装置をその要旨とする。
従って、請求項1に記載の発明によると、散水配管の途上に配設された臭気物質低減部材によって、散水用水の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質が散水器に到る前に低減される。このため、悪臭ガス中に含まれる臭気物質や、悪臭ガスの分解によって生成した臭気物質などのイオンが散水用水中にあまり蓄積されず、散水用水のイオン濃度が低いレベルに維持される。よって、脱臭用微生物の活性が維持されることで脱臭性能の経時的な低下が防止されるとともに、散水時の臭気物質揮発量が減ることで容器外への悪臭漏れが防止される。
また本発明によれば、従来技術の場合のような大量の新水の補給が不要となるため水代がかからなくなることに加え、廃水が殆ど生じなくなるため廃水処理費もかからなくなる。以上の結果、ランニングコストを低く抑えることができる。しかも、大掛かりな廃水処理設備などが別途必要にならないので、設備コストを低く抑えることができる。
本発明において脱臭処理の対象となる悪臭ガスとしては、例えば、アンモニアやトリメチルアミン等の窒素化合物、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル等の硫化物、スチレン等の炭化水素等を挙げることができる。これらの悪臭ガスは、例えば、有機性廃棄物の堆肥化プラント、下水処理場、畜舎、食品加工工場等から発生されるものである。悪臭ガスの脱臭に利用すべく充填担体に担持される脱臭用微生物としては、例えば、アンモニアを酸化可能な硝化細菌、硫化水素を酸化可能なチオバチルス属の細菌、メチルメルカプタンを分解可能なハイホマイクロビウム属の細菌、炭化水素を分解可能なシュードモナス属、キサントバクター属及びコリネバクテリウム族の細菌等を挙げることができる。充填担体には、細菌以外の微生物が担持されてもよく、さらには微生物自体でなくてもそれから単離した酵素が担持されてもよい。
前記散水用水の中に含まれる臭気物質とは、散水用水に溶解した臭気物質及びそのイオンを指し、例えば、水に溶解可能なアンモニア、硫化水素等の悪臭ガスや、アンモニウムイオン等の陽イオンや、硝酸イオン、亜硝化イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン等の陰イオンを挙げることができる。前記散水配管の途上に配設される臭気物質低減部材は、1種類または2種以上の臭気物質を低減または除去可能なものを指す。この場合、臭気物質低減部材は、臭気物質を物理的に低減等するものであってもよく、化学的に低減等するものであってもよい。
臭気物質を物理的に低減等する臭気物質低減部材としては、微孔を有する多孔質体があり、その具体例としては活性炭やセラミック多孔質体などがある。多孔質体であると、臭気物質が細孔内に取り込まれることで物理的に吸着される。また、臭気物質を化学的に低減等する臭気物質低減部材としては、臭気物質のイオンを化学的に吸着するイオン吸着剤があり、前記イオン吸着剤としては、陽イオン吸着用及び陰イオン吸着用の2種類のものがある。
前記臭気物質低減部材はイオン吸着剤を含んで構成されることが好ましい(請求項2)。従って、この場合には、イオン吸着剤が散水用水中に溶解している臭気物質のイオンを吸着することにより、当該イオンが確実にかつ効率よく低減される。ゆえに、臭気物質のイオンが散水用水中にあまり蓄積されず、散水用水のイオン濃度を常時低いレベルに維持することができる。
ここで、臭気物質低減部材は、イオン吸着剤と、前記散水配管に連結され、その内部に前記イオン吸着剤を収容するケースとを含んで構成されることが好ましい。イオン吸着剤及びケースの形態は特に限定されないが、イオン吸着剤を例えばカートリッジ式にするとともにケースに開閉部を設けることで、劣化したイオン吸着剤を新しいものに容易に交換可能な構造とすることが好ましい。このような構造を採用した場合にはメインテナンス性が向上する。
前記イオン吸着剤は例えば鉱物系のものであることがよく、とりわけゼオライトであることが好ましい(請求項3)。ゼオライト(沸石)とは、結晶中に多くの空洞が存在し、珪素、アルミニウム、ナトリウムなどを成分とする多孔性の鉱物のことをいう。かかるゼオライトは特に陽イオンを吸着する性質を有するため、低減したい臭気物質がアンモニア(アンモニウムイオン)である場合、それを確実にかつ効率よく低減、除去することができる。さらに、ゼオライトは多孔質体であるので、散水用水と接触しうる表面積も大きく、また、臭気物質を物理的に吸着する作用もある程度奏することができる。加えて、ゼオライトは廉価な材料であるので、コスト性にも優れている。なお、イオン吸着剤として使用されるゼオライトは、天然から産出する天然ゼオライト、人工的に合成した合成ゼオライトのいずれであってもよい。
請求項4に記載の発明は、散水配管を経て循環する散水用水を、脱臭用微生物またはそれ由来の酵素を担持した充填担体に散水することにより、悪臭ガスを生物学的に脱臭する循環散水運転式の生物脱臭装置における脱臭方法において、前記散水配管の途上にて、前記散水用水の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質を低減することを特徴とする生物脱臭方法をその要旨とする。
従って、請求項4に記載の発明によれば、散水用水の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質が散水配管の途上にて低減される。このため、悪臭ガス中に含まれる臭気物質や、悪臭ガスの分解によって生成した臭気物質などのイオンが散水用水中にあまり蓄積されず、散水用水のイオン濃度が低いレベルに維持される。よって、脱臭用微生物の活性が維持されることで脱臭性能の経時的な低下が防止されるとともに、散水時の臭気物質揮発量が減ることで容器外への悪臭漏れが防止される。また本発明によれば、従来技術の場合のような大量の新水の補給が不要となるため水代がかからなくなることに加え、廃水が殆ど生じなくなるため廃水処理費もかからなくなる。以上の結果、ランニングコストを低く抑えることができる。しかも、大掛かりな廃水処理設備などが別途必要にならないので、設備コストを低く抑えることができる。
以上詳述したように請求項1〜3に記載の発明によれば、悪臭漏れ及び脱臭性能の経時的な低下を防止することができ、しかもコスト性にも優れた生物脱臭装置を提供することができる。また、請求項4に記載の発明によれば、悪臭漏れ及び脱臭性能の経時的な低下を防止することができ、しかもコスト性にも優れた生物脱臭方法を提供することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4に基づき詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態の生物脱臭装置11は、有機性廃棄物の堆肥化プラントが排出する悪臭ガス、つまりアンモニアガスを多く含む悪臭ガスを脱臭処理するための装置である。この生物脱臭装置11は縦長円筒形状をした容器12を備えている。容器12内の略中央部には金属網13が水平状態に配設され、この金属網13によって容器12の内部空間が上下に仕切られている。金属網13の上側の領域には担体保持部14が形成されている。この担体保持部14には、脱臭用微生物である硝化細菌を担持させた充填担体15が充填されている。担体保持部14のすぐ下方はガス導入室16となっていて、そのガス導入室16には、図示しない堆肥化プラントに通じるガス導入ダクト17が連結されている。ガス導入ダクト17の途上には、堆肥化プラントが発生する悪臭ガスG1を容器12のガス導入室16に圧送するためのファン18が配設されている。ガス導入室16の下方の領域は、散水された水が貯留される貯水槽19となっている。一方、担体保持部14の上側の領域は散水室20となっていて、その散水室20の内部には充填担体15に水を撒くための複数の散水ノズル21(散水器)が設置されている。散水室20には排気ダクト22が接続されており、その排気ダクト22を介して脱臭処理済みガスG2が外部に放出されるようになっている。
本実施形態では、多数の細孔を有する多孔質体の粒子の集合体を、充填担体15として用いている。具体的には、鋳物工場から排出された廃鋳物砂を焼成して多孔質化した無機多孔質焼結体の粒子の集合体を、充填担体15として用いている。この無機多孔質焼結体の粒子の平均粒径は1mm〜100mm程度に設定可能であり、ここでは1mm〜5mm程度とされている。廃鋳物砂は有機物質を含むため、熱処理することにより有機物質が消失し、その消失跡が細孔となる。このように細孔が形成されると、多孔質体となることで表面積が増加し、臭気成分の吸着や微生物の繁殖、活性化に貢献する。
図1に示されるように、この生物脱臭装置11は容器12の外部に散水配管31を備えている。散水配管31の始端(下端)は貯水槽19に接続される一方、散水配管31の終端(上端)は容器12を貫通して散水室20内に入り込んでいる。このような散水配管31の終端には、上記の複数の散水ノズル21が取り付けられている。散水配管31の途上には、散水配管31内の散水用水W1をその始端側から終端側へと圧送するためのポンプ32が設けられている。従って、このポンプ32を作動させると、貯水槽19の水が散水用水W1として回収されるとともに、各々の散水ノズル21から散水用水W1が散水されるようになっている。即ち、本実施形態の生物脱臭装置11は、容器12内に溜まった水を捨てずに回収し、散水配管31を経て循環供給させることで、散水用水W1として再利用する循環散水方式を採用している。
このように構成された循環散水方式の生物脱臭装置11の基本的動作について説明する。
ガス導入ダクト17を経てガス導入室16に導入された悪臭ガスG1は、容器内12を上方に向けて進行する。充填担体15においては硝化細菌が繁殖しているため、悪臭ガスG1が充填担体15を通過する際には、臭気成分であるアンモニアが酸化分解されて無臭化される。無臭化された脱臭処理済みガスG2は、散水室20を通り抜けて排気ダクト22から外部に放出される。つまり、この生物脱臭装置11において、悪臭ガスG1に含まれる臭気成分であるアンモニアは、硝化細菌により硝酸イオン(NO )等となって散水された水の中に存在したり、散水された水の中に溶解したりする。このような硝酸イオン等を含有する水は、充填担体15から落下して貯水槽19にて貯留される。よって、貯水槽19の水は硝酸イオン等を含んだものとなっている。なお、貯水槽19の水は、硝酸イオンのほかに例えばアンモニウムイオン(NH )やアンモニアなどを含有する。
そして、ポンプ32を作動すると、貯水槽19の水が散水用水W1として回収されるとともに、散水配管31を経て各々の散水ノズル21に到る。そして、各々の散水ノズル21から散水された散水用水W1は、落下して充填担体15に降り掛かる。その結果、硝化細菌の活性が維持される。充填担体15への散水は所定間隔ごと、例えば1時間〜5時間ごとに行われる。
図1にて概略的に示されるように、本実施形態の生物脱臭装置11では、散水配管31の途上に、臭気物質低減部材としてのフィルタユニット33が配設されている。このフィルタユニット33は、具体的には、散水配管31において容器12の外部に位置する部分、かつ、ポンプ32の下流側に配設されている。このような位置に配置した理由は、フィルタユニット33のメインテナンス性を向上するためである。なお、フィルタユニット33はポンプ32の上流側に配設されていてもよい。
このフィルタユニット33は、イオン吸着剤35と、散水配管31に連結され、その内部にイオン吸着剤35を収容するケース34とを含んで構成されている。かかるフィルタユニット33としては、図2(a)のように、円筒状ケース34の下端に入口部36を設け、上端に出口部37を設け、内部にイオン吸着剤35を充填配置したものを例示することができる。図2(a)のフィルタユニット33は、入口部36側から導入された散水用水W1が、イオン吸着剤35の下端側から入り込んで上端側に抜け、最終的に出口部37側から排出される構造となっている。また、別のものとしては図2(b)のように、円筒状ケース34の上端に入口部36及び出口部37をともに設け、内部に円筒状のイオン吸着剤35を配置したものを例示することができる。図2(b)のフィルタユニット33は、入口部36側から導入された散水用水W1が、イオン吸着剤35の内周側から入り込んで外周側に抜け、最終的に出口部37から排出される構造となっている。なお、これらのケース34においては、例えば、その上端部に開閉可能な蓋を設けておき、内部のイオン吸着剤35を取り換え可能としておいてもよい。
フィルタユニット33を構成するイオン吸着剤35としては、散水用水W1の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質(ここではアンモニウムイオン)を低減、除去できる陽イオン吸着剤が使用されている。より具体的にいうと、本実施形態では、陽イオン吸着作用があるゼオライトが使用されている。ゼオライトの形態は特に限定されないが、本実施形態ではゼオライト粒子をカートリッジに充填したものを使用している。カートリッジ式の利点は、粒子状態のものに比べて交換作業が容易なためメインテナンス性を向上できることである。なお、カートリッジ式に代えて、例えばゼオライト粒子を集合させて結合した多孔質ブロックを用いてもよく、この場合においてもメインテナンス性を向上できる。
従って、散水時において散水用水W1がフィルタユニット33を通過する際には、散水用水W1の中に含まれる臭気物質(特にアンモニウムイオン)が、イオン吸着剤35であるゼオライトに確実にかつ効率よく吸着される。よって、散水用水W1のアンモニウムイオン濃度が常に極めて低いレベルに維持される。そして、アンモニウムイオンがほぼ除去された散水用水W1が散水ノズル21から散水される。ここでは、散水する水だけをその直前にかつ必要最小限だけ臭気物質低減処理を行っているため、散水用水W1中に含まれるアンモニア分を極めて効率よく低減することができる。
[実施例1]
次に、上記実施形態をさらに具体化した実施例1について説明する。
ここでは、鋳物工場から排出された廃鋳物砂を焼成して多孔質化した無機多孔質焼結体の粒子の集合体を、充填担体15として用いた。具体的には、廃鋳物砂を転動造粒機に収容するとともに、廃鋳物砂に対して10重量%〜30重量%となる水を注入し、この水を含んだ廃鋳物砂を混練後、略球形状に造粒した。これを400℃〜500℃で8時間程度加熱して脱脂して有機分を燃焼させ、その後800℃で3時間焼成し、多孔質化した無機多孔質焼結体の粒子とした。そして、当該粒子を容器12内に200リットル充填した。なお、当該粒子の乾燥時1リットルの重量は0.83kg、吸水時1リットルの重量は1.0kg、見掛けの気孔率は約30%、乾燥時の圧壊強度は123N、平均粒径は5mm程度であった。
また、フィルタユニット33については、ゼオライト粒子(市販品)をカートリッジに10リットル収容したものをイオン吸着剤35として使用した。貯水槽19の容量については200リットルとした。
そして、ガス導入ダクト17における悪臭ガスG1中のアンモニアガス濃度(即ち入口アンモニア濃度)を200ppmに設定し、生物脱臭装置11の運転を行った。この場合において、処理風量を3m/min、LV値(空塔線速度)を0.18m/s、SV値(空間速度)を900h−1、散水用水W1のEC値を42ms/cmに、それぞれ設定した(図4の表を参照)。
そして、所定時間が経過した後に、排気ダクト22を通過する脱臭処理済みガスG2に含まれるアンモニアガス濃度(即ち出口アンモニア濃度;ppm)と、圧力損失(mmHO/m)とを従来公知の手法によりそれぞれ測定した。
その結果、図4の表1に示すように、出口アンモニア濃度については0.05ppmを下回る値となり、アンモニアガスがほぼ完全に除去されていた。従って、脱臭処理済みガスG2にはアンモニア臭が付いていなかった。これは、フィルタユニット33の配設によって、散水用水W1中のアンモニウムイオンやアンモニアが確実に低減、除去された結果もたらされた利益であると、結論付けられる。また、圧力損失については40mmHO/mであった。
[比較例]
比較例では、フィルタユニット33を未配設にした。それ以外の条件については実施例1と同じとした。そして、所定時間経過後に、出口アンモニア濃度を測定した結果、図4の表1に示すように、出口アンモニア濃度については約13ppmとなり、実施例1よりもかなり高い値を示した。それゆえ、脱臭処理済みガスG2にはアンモニア臭が付いていた。また、圧力損失については40mmHO/mであり、特に差はなかった。
[実施例2]
実施例2では、充填担体15を図3に示すような中空円筒状多孔質体の集合体、即ちいわゆるラシヒリング41の集合体とした点で、実施例1と異なっている。それ以外の条件については実施例1と同じとした。
図3に示されるように、本実施例のラシヒリング41は、より具体的には、廃鋳物砂を原料とする中空円筒状の無機多孔質焼結体であって、上端面及び下端面を貫通する中空部42を有している。直径D1及び軸線方向長さL1は10mm〜50mm程度であることがよく、中空部42の直径D2は5mm〜30mm程度であることがよい。また、D1及びL1の比は1に近いことがよい。
本実施例では、充填担体15に用いるラシヒリング41を具体的には以下の手順で製造した。即ち、鋳物工場から排出された廃鋳物砂に対して10重量%〜30重量%となる水を注入し、この水を含んだ廃鋳物砂を混練後、特に造粒工程を経ることなしに押出成形機を用いて中空円筒状に成形した。この成形体を400℃〜500℃で12時間程度加熱して脱脂し、有機分を燃焼させた後、800℃で3時間焼成し、焼結体からなるラシヒリング41(直径D1=13mm、軸線方向長さL1=13mm、直径D2=5mm)とした。ちなみに、本実施例では脱脂時間を実施例1よりもかなり長めに設定している。好ましい脱脂時間の範囲は10時間〜15時間程度である。この範囲で脱脂を行えば、有機分を十分に除去することができ、多孔質化を十分に促進することができるからである。
そして、上記方法により製造されたラシヒリング41を容器12内に200リットル充填した。当該ラシヒリング41の乾燥時1リットルの重量は0.55kg、吸水時1リットルの重量は0.67kgであった。つまり、実施例1の粒子よりもかさ比重がかなり小さく、容器12への充填作業が容易であった。また、当該ラシヒリング41の見掛けの気孔率は約46.1%であり、実施例1の粒子の約1.5倍を示した。また、乾燥時の圧壊強度は116Nであった。
そして、入口アンモニア濃度、処理風量、LV値、SV値、EC値をそれぞれ表1のように設定して生物脱臭装置11の運転を行い、所定時間経過後に出口アンモニア濃度(ppm)と、圧力損失(mmHO/m)とを測定した。
その結果、図4の表1に示すように、出口アンモニア濃度については実施例1と同じく0.05ppmを下回る値となり、アンモニアガスがほぼ完全に除去されていた。従って、脱臭処理済みガスG2にはアンモニア臭が付いていなかった。これは、フィルタユニット33の配設によって、散水用水W1中のアンモニウムイオンやアンモニアが確実に低減、除去された結果もたらされた利益であると、結論付けられる。
また、圧力損失については10mmHO/mとなり、実施例1の1/4という極めて低い値を示した。本実施例2にてこのように低圧力損失化が達成された理由としては以下のように考察している。
即ち、生物脱臭装置11を長期間にわたって運転すると、充填担体15に付着物が付着する。この付着物は、主にバイオフィルムであって、充填担体15から脱落した微生物やその死骸などからなる。そして、このようなバイオフィルムが多くなることで充填担体15に目詰まりが起き、これが圧力損失の増加を引き起こす原因となる。
ここで本実施例のラシヒリング41は、それ自身が細孔を有する多孔質体であることに加え、細孔よりも相当大きな中空部42を備えている。それゆえ、バイオフィルムが発生したとしても大きな中空部42を完全に塞ぐには至らず、通気経路が確保される。従って、充填担体15に目詰まりが起こりにくくなって、低圧力損失化が達成されるものと考えられる。
さて、以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、フィルタユニット33を配設したことで、散水用水W1の中に含まれるアンモニウムイオンが散水ノズル21に到る前に確実に低減される。このため、散水用水W1のアンモニウムイオン濃度が常時低いレベルに維持される。よって、硝化細菌の活性が維持されることで脱臭性能の経時的な低下が防止されるとともに、散水時の臭気物質揮発量が減ることで容器12外へのアンモニア臭漏れが防止される。
(2)また本実施形態によれば、従来技術の場合のような大量の新水の補給が不要となるため水代がかからなくなることに加え、廃水が殆ど生じなくなるため廃水処理費もかからなくなる。以上の結果、ランニングコストを低く抑えることができる。しかも、大掛かりな廃水処理設備などが別途必要にならないので、設備コストを低く抑えることができる。
(3)本実施形態の場合、低減したい臭気物質がアンモニウムイオンやアンモニアであることから、イオン吸着剤35としてゼオライトを選択している。それゆえ、特にコスト高を伴うことなしに、前記臭気物質を確実にかつ効率よく低減、除去することができる。
(4)本実施形態の実施例2では、充填担体15をラシヒリング41の集合体とした結果、大幅な低圧力損失化を達成することができる。これにより、ファン18の電力量を抑えることができ、ランニングコストの低減を達成しやすくなる。また、風量を上げたとしてもファン18に負荷がかかりにくくなるので、風量の設定の自由度が高くなる。
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、鋳物工場から排出された廃鋳物砂を充填担体用材料として用いたが、新しい鋳物砂を充填担体用材料としてもよい。
・鋳物砂以外の材料を用いてラシヒリング41を製造してもよく、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム等のセラミック材料を用いてセラミック多孔質焼結体製ラシヒリングとしてもよい。また、微生物の活性に悪影響を与えない金属材料を用いて金属多孔質焼結体製ラシヒリングとしてもよい。
・上記実施形態では、イオン吸着剤35として鉱物系のものを使用したが、これに限定されず有機高分子系やセラミック系のものを選択してもよい。
・例えば、図5に示す別の実施形態のように構成してもよい。図5においては、散水配管31を途中で複数ラインに分岐させて、各々の分岐部にフィルタユニット33を配設している。分岐部の上流側接続部及び下流側接続部には、それぞれ流路切換弁51が設けられている。この構成によると、一方のフィルタユニット33を一定期間使用した後には、そのフィルタユニット33への散水用水W1の供給をストップし、代わりに今まで休んでいた他方のフィルタユニット33への散水用水W1の供給を開始することができる。従って、臭気物質の低減を中断せずに、劣化したイオン吸着剤35の取り換えを行うこと等が可能となる。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)悪臭ガスが導入される容器と、前記容器内に充填され、脱臭用微生物またはそれ由来の酵素を担持させる充填担体と、前記容器内の水を前記充填担体に散水する散水器と、前記容器内の水を散水用水として回収して前記散水器に循環供給する散水配管とを備え、前記悪臭ガスを生物学的に脱臭する循環散水運転式の生物脱臭装置において、前記散水配管の途上に、前記散水用水の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質を低減できる臭気物質低減部材を配設するとともに、前記充填担体を中空円筒状多孔質体の集合体としたことを特徴とする生物脱臭装置。
(2)前記充填担体は、鋳物砂を原料とする中空円筒状の無機多孔質焼結体の集合体であることを特徴とする前記(1)記載の生物脱臭装置。
(3)前記充填担体は、鋳物砂を原料とし、直径及び軸線方向長さが10mm〜50mmかつ中空部の直径が5mm〜30mmである無機多孔質焼結体製ラシヒリングの集合体であることを特徴とする前記(1)記載の生物脱臭装置。
(4)鋳物砂を原料とし、直径及び軸線方向長さが10mm〜50mm、中空部の直径が5mm〜30mmの無機多孔質焼結体からなる生物脱臭用ラシヒリング。
(5)鋳物砂を原料とし、直径及び軸線方向長さが10mm〜50mm、中空部の直径が5mm〜30mm、見掛け気孔率が40%以上の無機多孔質焼結体からなる生物脱臭用ラシヒリング。
(6)鋳物砂に水を加えたものを成形材料とし、造粒工程を経ずにそれを押出成形して中空円筒状の成形体とし、この成形体を400℃〜500℃で10時間以上加熱して脱脂した後、脱脂時の温度よりも高い温度で所定時間焼成することを特徴とする、前記(5)または(6)に記載の生物脱臭用ラシヒリングの製造方法。
(7)前記臭気物質除去部材は、前記散水配管において前記容器の外部に位置する部分に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項の生物脱臭装置。
本発明を具体化した実施形態の循環散水式の生物脱臭装置を示す概略図。 (a),(b)は実施形態にて使用するフィルタユニットを示す概略正面図。 実施形態の実施例2にて使用するラシヒリングを示す斜視図。 実施例1,2における装置の運転条件等を示す表。 別の実施形態のフィルタユニットの配設方法を示す概略図。
符号の説明
11…循環散水運転式の生物脱臭装置
12…容器
15…充填担体
21…散水器としての散水ノズル
31…散水配管
33…臭気物質低減部材としてのフィルタユニット
35…イオン吸着剤
G1…悪臭ガス
W1…散水用水

Claims (4)

  1. 悪臭ガスが導入される容器と、前記容器内に充填され、脱臭用微生物またはそれ由来の酵素を担持させる充填担体と、前記容器内の水を前記充填担体に散水する散水器と、前記容器内の水を散水用水として回収して前記散水器に循環供給する散水配管とを備え、前記悪臭ガスを生物学的に脱臭する循環散水運転式の生物脱臭装置において、
    前記散水配管の途上に、前記散水用水の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質を低減できる臭気物質低減部材を配設したことを特徴とする生物脱臭装置。
  2. 前記臭気物質低減部材はイオン吸着剤を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の生物脱臭装置。
  3. 前記イオン吸着剤はゼオライトであることを特徴とする請求項2に記載の生物脱臭装置。
  4. 散水配管を経て循環する散水用水を、脱臭用微生物またはそれ由来の酵素を担持した充填担体に散水することにより、悪臭ガスを生物学的に脱臭する循環散水運転式の生物脱臭装置における脱臭方法において、
    前記散水配管の途上にて、前記散水用水の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質を低減することを特徴とする生物脱臭方法。
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