JP2014237104A - 水の浄化装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】生物学的手法を用い、簡単な構成で迅速に水を浄化することができる水の浄化方法及び浄化装置を提供する。
【解決手段】湿潤かつ好気状態の環境下に置かれた、白色腐朽菌を保有するピートモス15を用いて被処理水中の難分解性物質を吸着除去し、前記白色腐朽菌が生成する分解酵素により吸着された前記難分解性物質を分解する水の浄化装置であって、前記白色腐朽菌を保有するピートモス15と、前記ピートモス15を湿潤かつ好気状態で収容可能な容器21と、前記容器21に収容された前記ピートモス15を湿潤かつ好気状態にする環境形成手段であるサイホン39とを備え、前記サイホン39により容器21内に干満状態を形成し、これにより前記ピートモス15を湿潤かつ好気状態とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、生物学的手法を用いた水の浄化方法及び浄化装置に関する。
ダイオキシン類、PCBのような残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)は、環境中で分解され難い物質であり、環境、人体に悪影響を及ぼす。このためこれまでに残留性有機汚染物質が環境中に排出されることを防止する技術、さらには環境中に排出された残留性有機汚染物質を除去し、あるいは分解、無害化させる技術が多く開発されている。
排水中に含まれる残留性有機汚染物質を除去する技術としては、活性炭のような吸着材を用いて残留性有機汚染物質を吸着除去する吸着法、残留性有機汚染物質を含む排水に薬剤を添加し脱ハロゲン化する化学的手法、さらには微生物などを利用し残留性有機汚染物質を分解する生物学的手法が知られている。例えば、生物学的手法を用いた方法としては、ダイオキシン類、PCBに汚染された水と、活性炭などの担体に固定化された難分解性物質分解酵素とを接触させ、ダイオキシン類、PCBを分解させる方法がある(例えば特許文献1参照)。
被処理物が固相の場合、例えばダイオキシン類を含む土壌(以下、汚染土壌という)の場合も、薬剤を使用した化学的手法、微生物を利用した生物学的手法により汚染土壌を浄化する方法が提案されている。例えば化学的手法を用いた方法としては、汚染土壌に含まれるPCBを過硫酸塩と接触させPCBを分解させる方法がある(例えば特許文献2参照)。生物学的手法を用いた方法としては、白色腐朽菌を用いて焼却灰に含まれるダイオキシン類を分解させる方法がある(例えば特許文献3参照)。
汚染土壌の浄化方法に関しては、間接加熱酸化分解法、ジオスチーム工法、溶剤抽出法、バイオレメディエーション法などが実用化されている(例えば特許文献4参照)。
特開2002−18480号公報 特許第3929905号公報 国際公開第00/15361号公報 特開2011−161218号公報
排水あるいは汚染土壌、焼却灰に含まれる残留性有機汚染物質の分解方法として種々の方法が開発されているが、その中で生物学的手法は、簡便に実施することができる特徴を有する。特許文献2に記載の方法は、PCBに汚染された水と活性炭などの担体に固定化された難分解性物質分解酵素とを接触させ、特許文献3に記載の方法は、木材チップなどの木質系基材を用いて白色腐朽菌を培養し、この培養物(培地)に焼却灰を混合し、室温、屋外で静置するだけである。
生物学的手法は、複雑な操作を必要とせず簡便に実施することができる点が長所である一方、難分解性物質を分解する速度が遅い点が短所の一つとなっている。よって難分解性物質を含有する排水などを迅速に処理する場合には、生物学的手法は適さない。生物学的手法と他の手法とを組み合せることで、生物学的手法の長所を生かした処理が可能になると考えられるが、このような取り組みは殆ど報告されていない。
本発明の目的は、生物学的手法を用い、簡単な構成で迅速に、また効率的に水を浄化することができる水の浄化方法及び浄化装置を提供することである。
本発明は、湿潤かつ好気状態の環境下に置かれた、白色腐朽菌を保有するピートモスを用いて被処理水中の難分解性物質を吸着除去し、吸着された前記難分解性物質を前記白色腐朽菌が生成する分解酵素により分解することを特徴とする水の浄化方法である。
本発明の水の浄化方法によれば、水中の難分解性物質をピートモスで吸着除去することができるので、難分解性物質を含有する水を迅速に浄化することができる。さらにピートモスに吸着した難分解性物質は、そのままの状態で、白色腐朽菌を作用させ白色腐朽菌が生成する分解酵素により分解するので複雑な操作も不要であり、簡単に実施することができる。水に含まれる難分解性物質の含有量が非常に少なくても、難分解性物質はピートモスに吸着されることで濃縮されるので効率的に分解させることができる。
本発明は、前記水の浄化方法を実施するための装置であって、前記白色腐朽菌を保有するピートモスと、前記ピートモスを湿潤かつ好気状態で収容可能な容器と、前記容器に収容された前記ピートモスを湿潤かつ好気状態にする環境形成手段と、を有することを特徴とする水の浄化装置である。
本発明の水の浄化装置を用いることで本発明の水の浄化方法を確実に実施することができる。また本発明の水の浄化装置は、装置構成が簡単で安価に製作することができる。また本発明の水の浄化装置は、基本的に可動部がないため故障も少なく、高低差を利用して排水を供給すれば動力も不要である。
本発明の水の浄化装置において、前記環境形成手段は、被処理水と前記ピートモスとを接触させ、被処理水中の難分解性物質を前記ピートモスに吸着分離させると共に、前記ピートモスと空気との接触を良好にし、前記白色腐朽菌が良好に生育する高湿度でかつ好気状態の環境を作り出すことを特徴とする。
本発明によれば、被処理水を利用し白色腐朽菌が良好に生育することができる高湿度でかつ好気状態の環境を作り出すので非常に効率的である。
また本発明の水の浄化装置において、前記環境形成手段が、サイホンであり、前記サイホンは、前記容器に設置され、前記容器に被処理水が供給され前記容器内が満水となるまでは該水を排出せず、前記容器内が満水となると該水を短時間内に排出し、前記ピートモスを大気中に露出させ、前記容器への水の充填と前記容器からの水の排出とにより干満を繰り返し、これにより前記ピートモスを湿潤かつ好気状態にすることを特徴とする。
本発明によれば、サイホンを用い、容器への水の充填と容器からの水の排出とによる干満を利用し、ピートモスを湿潤かつ好気状態にすることができるので非常に効率的である。
また本発明の水の浄化装置において、前記環境形成手段が、前記容器内に収容されるピートモスに対して上方から前記被処理水を噴霧する噴霧手段であることを特徴とする。
本発明によれば、被処理水を噴霧し、白色腐朽菌が良好に生育することができる高湿度でかつ好気状態の環境を作り出すので非常に効率的である。また安価にかつ容易に実現することができる。
また本発明の水の浄化装置において、前記環境形成手段が、前記ピートモスの上部及び下部に配置される通水性及び通気性を有する保水体であり、前記被処理水を、前記上部保水体の上方から供給し前記ピートモスの層内を流下させることを特徴とする。
本発明によれば、通水性及び通気性を有する保水体を利用し、これに被処理水を供給することで白色腐朽菌が良好に生育することができる高湿度でかつ好気状態の環境を作り出すので非常に効率的である。また安価にかつ容易に実現することができる。
また本発明の水の浄化装置において、前記環境形成手段は、さらに前記容器内を換気し好気状態にする換気手段及び/又は前記容器内に空気を送り前記容器内を好気状態にする送気手段を備え、前記容器内を換気し及び/又は前記容器内に空気を送り、前記ピートモスを湿潤かつ好気状態にすることを特徴とする。
本発明によれば、換気手段により容器内を換気し及び/又は送気手段により容器内に空気を送ることができるので、確実にピートモスを湿潤状態でかつ好気状態にすることができ、これにより白色腐朽菌が良好に生育できる。
また本発明の水の浄化装置において、前記ピートモスは、通気性及び通水性を有する複数の袋に小分けして充填され、前記容器内に収納されていることを特徴とする。
本発明によれば、ピートモスは、袋に小分けした状態で容器内に収容されるので、隣り合う袋同士の間に隙間が形成される。これによりピートモスが空気と接触し易くなり、白色腐朽菌が良好に生育することができる高湿度でかつ好気状態の環境を作り出し易い。また取扱いも簡単となる。
また本発明の水の浄化装置において、前記ピートモスは、前記容器内に多段に充填され、各段の間に空間部が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、ピートモスは、容器内に多段に充填され、各段の間に空間部が設けられているので、白色腐朽菌が良好に生育することができる高湿度でかつ好気状態の環境を作り出し易い。
また本発明の水の浄化装置は、さらに前記容器から排出される処理水を再度、前器容器に返送し、前記ピートモスと接触させるための処理水循環手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、処理水を再度、ピートモスと接触させるための処理水循環手段を備えるので、難分解性物質を確実に分解させることができる。
本発明の水の浄化方法、浄化装置は、簡単な構成ながら迅速に、また効率的に水を浄化することができる。特に難分解性物質の含有量が少ない水の浄化に好適に使用することができる。また外部からの動力を使用することなく水の浄化が可能であり、さらに本発明の水の浄化装置は、装置構成が簡単であるため安価に製作することができる。また本発明の水の浄化装置は、被処理水を利用し白色腐朽菌が良好に生育することができる高湿度でかつ好気状態の環境を作り出すので非常に効率的である。
本発明の第1実施形態の水の浄化装置1の概略構成図である。 本発明の水の浄化方法を示すフロー図である。 本発明の第1実施形態の水の浄化装置1の変形例である。 本発明の第2実施形態の水の浄化装置2の概略構成図である。 本発明の第3実施形態の水の浄化装置3の概略構成図である。 本発明の第4実施形態の水の浄化装置4の概略構成図である。 本発明の第5実施形態の水の浄化装置5の概略構成図である。 本発明の第6実施形態の水の浄化装置6の概略構成図である。 本発明の第7実施形態の水の浄化装置7の概略構成図である。
図1は、発明の第1実施形態の水の浄化装置1の概略構成図である。浄化装置1は、図2に示すように被処理水である難分解性物質を含有する水とピートモス15とを接触させ、ピートモス15により被処理水中の難分解性物質を吸着分離し、水を浄化する。ピートモス15は、白色腐朽菌(図示省略)を保有し、湿潤かつ好気状態の環境下にあり、白色腐朽菌が繁殖し、白色腐朽菌が生成する分解酵素により難分解性物質が分解される。ここではピートモス15が吸着材兼白色腐朽菌の培地として機能する。
浄化装置1は、白色腐朽菌を保有するピートモス15と、ピートモス15を湿潤かつ好気状態で収容可能な容器21と、容器21に収容されたピートモス15を湿潤かつ好気状態にするサイホン39とを備える。サイホン39は、ピートモス15を湿潤かつ好気状態にする環境形成手段である。浄化装置1の下方には、浄化装置1より排出される、難分解性物質が吸着除去された水(処理水)を貯留する処理水槽49が設けられている。
ピートモス15は、ミズゴケ、アシ、ヨシ、スゲ、ヤナギなどの植物が堆積し、腐植化した泥炭を脱水、粉砕、選別したものである。ここで使用するピートモス15は、難分解性物質を分解する分解酵素を生成する白色腐朽菌を保有している。通常、ピートモス15は、難分解性物質を分解する分解酵素を生成する白色腐朽菌を保有しているが、当該白色腐朽菌を保有していない場合、難分解性物質を分解するに適した白色腐朽菌を使用する場合には、別途、ピートモス15に難分解性物質を分解するに適した白色腐朽菌の種菌を添加し培養すればよい。
白色腐朽菌が生成する分解酵素により難分解性物質を分解させるには、白色腐朽菌が良好に生育できる環境とすることが重要である。ピートモス15を高湿度の気中に置くことで白色腐朽菌は良好に生育することができ、具体的には、温度が20〜40℃、相対湿度が50〜80%の好気状態が好ましい。
ここで分解可能な難分解性物質は、特定の物質に限定されるものではなく、ダイオキシン類、PCB、農薬などの残留性有機汚染物質POPsが例示される。また難分解性物質を含む水も、特定の水に限定されるものではなく河川水、排水が例示される。
容器21は、ピートモス15を収容し、被処理水を受け入れ、被処理水とピートモス15とを接触させ、ピートモス15が被処理水中の難分解性物質を吸着分離し水を浄化する。容器21は、上面が完全に開口し、蓋33で覆われている。蓋33には、容器21内を好気状態に維持すべく空気孔35が設けられている。また容器21の上部には、被処理水を受けるための被処理水流入口37が設けられ、底部にはサイホン39が設置されている。
空気孔35の大きさは、容器21内が、白色腐朽菌が生育し易い環境となるように設定される。例えば、湿度が高過ぎる場合には、大きくすることで空気の入れ替わりを促し湿度を下げ、湿度が低過ぎる場合には、小さくすることで空気の入れ替わりを抑制し湿度を上昇させるようにする。また必要に応じて蓋33を取外して使用してもよい。
容器21は、高さが低く、平面視における面積が広い形状のものが好ましい。容器21をこのような形状とすることで、充填するピートモス15の厚さも必然的に薄くなり、空気との接触面積も大きくなり、ピートモス15の内部まで好気状態を維持することができる。
容器21内には、ピートモス15を充填するための充填部27が設けられている。充填部27は、容器21の底部との間に空間が形成されるように容器底面23から少し高い位置に設けられている。また被処理水流入口37から供給される被処理水が直接ピートモス15にかからないように被処理水流入口37側の充填部側面31は、容器側面25と少し離れている。
充填部27は、ピートモス15を保持可能で、かつ水及び空気が自在に通過できる網で形成されている。なお、充填部27を形成する部材は、ピートモス15を保持可能で、かつ水及び空気が自在に通過できる部材であればよく、網以外に布、多孔質板などを使用することができる。
サイホン39は、容器21内の水を間欠的に排出する水排出手段であり、ピートモス15を湿潤かつ好気状態にするための手段でもある。サイホン39がピートモス15を湿潤かつ好気状態とするメカニズムについては後述する。サイホン39は、容器21内が満水となったとき、溜まっている水を一気に排出する。本実施形態において、満水とは、ピートモス15の上面16よりも僅かに高い水位である。このため容器21内が満水となるとピートモス15は完全に水中に没する。満水の水位H1は、満水状態において、ピートモス15が水中に完全に埋没する水位ならば、可能な限り低いことが好ましい。
サイホン39は、被処理水流入口37と相対する容器21の端部に取り付けられている。サイホン39の入口41は、容器21の底面23近傍に位置し、この位置は充填部底面29と容器底面23との間であり、サイホン39の排出口43は容器底面23よりも低位置に設けられている。サイホン39自体は、従来から一般的に使用されているサイホンと変わりない。
サイホン39と同等の機能を備える装置として、弁を備える排水管と、水位検知器と、水位に応じて排水管に設置された弁を開閉させる制御装置とを備える排水装置が挙げられる。但し、水位検知器等を用いる排水装置は、構成部品が多く、電源も必要であるからサイホン39の方が使用し易い。
浄化装置1の使用方法及び動作について説明する。ここでは、被処理水に含まれる難分解性物質の含有量は少なく、一度、浄化装置1を通過すると被処理水に含まれる難分解性物質が基準値以下まで除去され、浄化装置1から排出される処理水に含まれる難分解性物質も基準値以下であるとする。
難分解性物質を分解する分解酵素を生成する白色腐朽菌を保有するピートモス15を容器21内の充填部27に充填する。容器21内は、サイホン39の作用によりピートモス15が湿潤かつ好気状態に維持され、白色腐朽菌が良好に生育する高湿度でかつ好気状態の環境であり、白色腐朽菌は、難分解性物質を分解する分解酵素を生成する。
被処理水は、サイホン39とは反対側の容器21の上部に設けられた被処理水流入口37から容器21内に供給される。このとき被処理水は、水面45上に落下し、空気を巻き込む。水位が上昇し、被処理水がピートモス15に接触すると、被処理水中の難分解性物質は、ピートモス15に吸着され被処理水は浄化される。
容器21内の水位がさらに上昇し、満水H1となるとサイホン39が動作し、容器21内の水が一気に排出される。サイホン39が動作し排出される水は、ピートモスにより難分解性物質が吸着除去された処理水に極少量の被処理水が混ざったものである。容器21内の水が排出されると、再度、満水となるまで容器21内に水が貯留される。
以上のように浄化装置1は、容器21内で水が干満を繰り返しながら、被処理水中の難分解性物質をピートモス15で吸着除去する。容器21内の水が全て排出されるとピートモス15は、大気中(気中)に完全に露出する。水位がピートモス15の底面17の高さに達するまでピートモス15は、大気中に露出したままであり、十分に空気と接触する。さらに水位が上昇すると、ピートモス15の下部から徐々に被処理水に浸かるが、被処理水は、空気を巻き込みながら供給されるため、水に浸かっている部分も完全な嫌気状態とはならない。
容器21内で水が干満を繰り返すため、ピートモス15は、湿潤状態を維持し、新たな空気と接触することができる。特に容器21の高さを低くすることで、ピートモス15が空気と接触し易くなる。これらにより白色腐朽菌が良好に生育できる環境である高湿度の好気状態を簡単に作り出すことができる。このように容器21内は、サイホン39の作用によりピートモス15が湿潤かつ好気状態に維持されるので、白色腐朽菌が良好に生育する高湿度でかつ好気状態の環境である。これにより白色腐朽菌は、難分解性物質を分解する分解酵素を生成し、ピートモス15に吸着された難分解性物質は、白色腐朽菌が生成する分解酵素で分解される。
上記のように浄化装置1では、ピートモス15による被処理水中の難分解性物質の吸着と、吸着された難分解性物質の分解とが同時並行的に、又は連続的に行われる。このような浄化装置1は、分解酵素による難分解性物質の分解速度が遅い場合であっても、被処理水中の難分解性物質は、ピートモス15に吸着除去されるので被処理水を迅速に浄化することができる。一方、難分解性物質は、ピートモス15に吸着され濃縮された状態で、分解されるので効率的である。
また浄化装置1は、簡便な構成からなるので容易に実施することができる。また図1に示す浄化装置1は、可動部がなく、さらに外部から電源等を供給する必要がないため安価に製作することができる。
ここで、ピートモス15の水中の難分解性物質の吸着性能の実験結果を示す。
ピートモスを用い、河川水中の難分解性物質を吸着除去する実験を以下の要領で実施した。GC−MS全自動同定・定量データーベースシステム(AIQS−DB)により、ピートモスの河川水中の残留性有機汚染物質吸着能力の測定を行った。AIQS−DBは、性能評価標準より、装置を調整し、未知試料中の約1,000物質を標準物質なしで同定・定量が行えるシステムである。環境用データベース登録化合物は、炭化水素(PAHs、PCBsなど)−194物質、含酸素化合物−150物質、含窒素化合物−113物質、含窒硫黄化合物−12物質、含リン化合物−8物質、PPCPs−14物質、農薬(殺虫剤、除草剤、殺菌剤など)−451物質である。
サンプルとして、(ア)河川水、(イ)ピートモス処理河川水を使用した。ピートモス処理河川水は、固相抽出時にSS除去フィルター前にピートモス吸着カラムを接続し、河川水を通水させた水である。ピートモス吸着カラムは、25ml注射筒に1.5gピートモスを充填し、5Lの純水を通水し溶出成分をできるだけ除去し、コンディショニングを行った後に使用した。
「環境分析向けGC−MS一斉分析用データベースのための固相抽出法の開発」島津レポートを基に下記の手順により、固相抽前処理を行った。
・サンプル 1L(河川水・ピートモス処理河川水は200ml)
・1mol/lりん酸緩衝液 1ml添加し、約pH7に調整(海水は別途調整)
・(SS除去フィルター)コンディショニング
:ジクロロメタン5ml→アセトン5ml→純水10ml
・(固相抽出カラム:PLS3−AC2)コンディショニング
:ジクロロメタン5ml→アセトン5ml→純水10ml
・SS除去フィルター−PLS3−AC2連結サンプル通水(ろ過・吸着)
・別途に窒素気流乾燥 40分
・溶媒で溶出
:PLS3 溶媒 アセトン2ml+ジクロロメタン3ml0
:AC2 溶媒 アセトン3ml
・両溶出液を合わせ約1mlに窒素気流濃縮
・(脱水カラム:SlimJDry1.4g)に通液し、ヘキサン5ml洗浄
・1ml以下に窒素気流濃縮
・10μg/mlIS溶液100μl添加し、1mlに定容
・GC−MS分析
GC−MS分析:下記分析条件で、「一斉分析用データベース(環境)運用手順書」に従い、分析を行った。
(分析条件)AnalyticalConditions
・GC−MS :島津GC−MS QP2010シリーズ
・カラム :J&W DB−5MS(5%フェニルメチルシリコン系キャ
ピラリーカラム)、30m(長さ)×0,25mm(内径)、
0.25μm(膜厚)
・温度プログラム カラムオーブン温度:40℃(2分間)→8℃/分→310℃
(5分間)
気化室温度:250℃
インターフェース温度:300℃
イオン源温度:200℃
・注入モード スプリットレス
・サンプリング時間 1分
・キャリアーガス He
・制御モード 線速度一定
・線速度 40cm/秒
・イオン化法 EI(電子イオン化法)
・チューニングメソッド USEPAmethod625
・測定モード スキャン
・スキャン質量範囲 33amu−600amu
・イベント時間 0,3秒
・量入注 1μL溶媒:ヘキサン
ピートモスの河川水中の残留性有機汚染物質吸着能力の測定結果を表1及び表2に示した。この結果から、ピートモスが、河川水に含まれる微量の多くの残留性有機汚染物質(農薬・可塑剤・有害物等)を吸着することが確認できた。また、ピートモスは、GC−MSヘッドスペース法により水道水中のトリハロメタン(TCM・BDCM)を吸着することも確認した。
Figure 2014237104
Figure 2014237104
第1実施形態の水の浄化装置1は、種々変形して使用することができる。図1の浄化装置1では、容器21に供給される被処理水が直接ピートモス15にかからないように充填部27を設ける例を示したが、ピートモス15の上に直接、被処理水を供給するようにしてもよい。この場合には、一か所に供給するのではなく、ピートモス15全体に被処理水が行きわたるように、例えばピートモス15の上面に多孔板を置き、その上に被処理水を供給することが好ましい。
また第1実施形態の水の浄化装置1の変形例として、図3に示すようにピートモス15を小分けし、各々袋詰めにした後に容器21内に充填してもよい。袋51は、通気性のよい布、不織布、あるいはメッシュ状の袋などを使用することができる。袋詰めの数は、容器21の大きさ、ピートモス15の充填量に応じて適宜決定すればよく、2個以上あればよい。この方法は、充填効率が多少低下するが、逆に隣り合う袋51と袋51との間に隙間ができるので、ピートモス15がより空気と接触し易くなる。図3では被処理水を分散して供給する例を示すが、図1の浄化装置1のようにピートモス15にかからないように被処理水を供給してもよい。
図4は、本発明の第2実施形態の水の浄化装置2の概略構成図である。図1から図3に示す水の浄化装置1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略し、以下、浄化装置1と相違する点を中心に説明する。
浄化装置2は、浄化装置1と基本的構成を同じくするが、ピートモス15が多段に充填される。充填部27の各段の底面29a、29b、29cには第1実施形態の浄化装置1と同様に、網を設置し、その上にピートモス15を充填する。ピートモス15を多段に充填することで、各段のピートモス15の高さが低く、かつ上下の段の間に空間部53が形成され各段のピートモス15をより好気状態とすることができる。
図4に示す浄化装置2では、ピートモス15を3段に充填する例を示すが、充填段数は特定の段数に限定されるものではなく、容器21の大きさ、深さ、ピートモス15の充填量に応じて適宜決定することができる。ピートモス15の充填量が多い場合には、段数を多くし、一段当たりのピートモス15の充填高さを低くすることが好ましい。上下の段の間に形成される空間部53の大きさは、空気の入れ替わりが可能な大きさであればよく、不必要に大きくしても容積効率が低下するだけである。
図4に示す浄化装置2において、図3に示すようにピートモス15を小分けし、各々袋詰めにした後に容器21内の各段に充填してもよい。
図5は、本発明の第3実施形態の水の浄化装置3の概略構成図である。図1から図4に示す水の浄化装置1、2と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略し、以下、浄化装置1、2と相違する点を説明する。
浄化装置3は、浄化装置1と基本的構成を同じくするが、ピートモス15の底部において空気との接触をより確実にすべく、ピートモス15の上方と下方とを導通させる導通管(通気管)55を有する。必要に応じて導通管55の途中、あるいは容器21内の気相部57にファンを設け、容器21内を強制的に換気し、あるいは空気を送り込むようにしてもよい。これによりピートモス15を高湿度でかつ好気状態に維持することがより容易となる。このような導通管(通気管)55の設置、気相部57へのファンの設置は、図3に示す浄化装置1及び図4に示す浄化装置2においても効果的である。
図6は、本発明の第4実施形態の水の浄化装置4の概略構成図である。図1から図5に示す浄化装置1、2、3と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略し、以下、浄化装置1、2、3と相違する点を中心に説明する。
浄化装置4は、浄化装置1と基本的構成を同じくするが、サイホン59の頂部61の高さを可変可能とした点に特徴がある。ピートモス15は、白色腐朽菌により分解されるので時間経過と共に減少する。これに伴いピートモス15の高さも漸次減少する。サイホン59の頂部61の位置を固定すると、ピートモス11の高さが低くなっても、水は当初に設定したレベルH1に達しないと排出されず、ピートモス15が水中に没している時間が長くなる。
浄化装置4では、ピートモス15の高さによらず、ピートモス15が完全に水に浸かると、直ちに水を排出することができるように、ピートモス15の高さにサイホン59の頂部61の高さを追従させる。具体的には、柔軟性を有するパイプを逆U字状に設置しこれをサイホン59とする。同時に、逆U字状のパイプの頂部61を支持する多孔板62を取り付け、この多孔板62をピートモス15の上面16に載せる。多孔板62には、通水性、通気性のあるものを使用し、水に浮かばない範囲で軽いものが好ましい。これにより使用に伴いピートモス15の高さが低くなってもピートモス15の高さにサイホン59の頂部61の高さを追従させることができる。このような浄化装置4は、ピートモス15を多高湿で好気状態に維持し易い。
図7は、本発明の第5実施形態の水の浄化装置5の概略構成図である。図1から図6に示す浄化装置1、2、3、4と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略し、以下、浄化装置1、2、3、4と相違する点を中心に説明する。
浄化装置5は、浄化装置1等と異なり、容器21から排出される処理水を再度、容器21に返送しピートモス15と接触させるための処理水循環手段72を備える点に特徴がある。処理水循環手段72は、処理水槽49内の処理水を圧送する送水ポンプ67、送水ポンプ67に連結し処理水槽49内の処理水を容器21に返送する返送ライン69を備える。返送ライン69は、被処理水を供給する被処理水供給管47に接続し、処理水は、被処理水供給管47を介して容器21に供給される。
浄化装置5においては、処理水循環手段72を介して一定の量の処理水が常時、循環運転される。循環量は、被処理水に含まれる難分解性物質の濃度及びピートモス15の難分解性物質の吸着速度から決定される。被処理水に含まれる難分解性物質の濃度が高く、ピートモス15を一回通過させただけでは、被処理水に含まれる難分解性物質を十分に吸着除去することができないような場合は、処理水の循環量を多くすればよい。但し、処理水の循環量は、被処理水の処理速度に直接影響し、処理水の循環量が多いほど被処理水の処理速度が低下することも考慮すべきである。
逆にピートモス15を一回通過させただけで、被処理水に含まれる難分解性物質をほぼ吸着除去することができる場合には、処理水の循環量は少なくてよい。ピートモス15を一回通過させただけで被処理水に含まれる難分解性物質を完全に吸着することができる、あるいはピートモス15を一回通過させただけで被処理水に含まれる難分解性物質を基準値(許容値)以下とすることができる場合は、処理水の循環は不要である。
図7に示す浄化装置5は、浄化装置1に処理水循環手段72を付設した形態からなるが、浄化装置1に代え、浄化装置2、浄化装置3又は浄化装置4に処理水循環手段72を付設してもよいことは当然である。処理水循環手段72は、ピートモス15と接触可能に処理水を容器21に返送することができるのであれば、本実施形態に限定されるものではない。
図8は、本発明の第6実施形態の水の浄化装置6の概略構成図である。図1から図7に示す浄化装置1、2、3、4、5と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
浄化装置6は、浄化装置1と同様の白色腐朽菌を保有するピートモス15を収容する容器21を有し、該容器21内にピートモス15を収容し、被処理水とピートモス15とを接触させ、ピートモス15に被処理水中の難分解性物質を吸着させ水を浄化する。浄化装置1では、サイホン39を使用して容器21内に水の干満を形成し、これによりピートモス15を高湿度でかつ好気状態とするが、浄化装置6では、ピートモス15の上方から被処理水を噴霧し、かつ容器21内の換気をよくすることで高湿度好気状態を作り出す。本実施形態では、被処理水を噴霧するスプレーノズル75及び容器21内を換気する換気手段が環境形成手段である。
充填部27は、容器21の横断面全体に設けられ、底面29にのみ網が取付けられている。また充填部27は、浄化装置1と同様に容器底面23との間に空間が形成されるように容器底面23から少し高い位置に設けられている。
被処理水は、ピートモス15の上方に設置されるスプレーノズル75を通じてピートモス15に噴霧される。浄化装置6では、容器21内を高湿度好気状態とする必要があるから、スプレーノズル75として被処理水を圧搾空気で微細化することができる2流体ノズルを好適に使用することができる。ただし、スプレーノズルとして液体のみを加圧しこれを噴霧する1流体ノズルを使用することもできる。
容器21の底部には、排水管77が設置されており、スプレーノズル75を通じて供給される被処理水は、ピートモス15で浄化され処理水となり排水管77を通じて処理水槽49に送られる。なお、排水管77は、容器21の底部に少量の処理水が溜まるように、上端79が容器底面23から少し持ち上げられた位置となっている。
また容器21の下部、具体的には、充填部底面29と排水管の上端79との間に空気を取り込むための通気口81が設けられている。容器21には、通気口81と空気孔35とが設けられているため、容器21内を自然換気することができる。なお、送風装置(図示省略)を用い、通気口81から空気を強制的に送り込むようにしてもよい。
また浄化装置6には、浄化装置5と同様に、容器21から排出される処理水を再度、容器21に返送しピートモス15と接触させるための処理水循環手段72を備える。処理水循環手段72の構成は、浄化装置5の処理水循環手段72と同一であるので説明を省略する。返送ライン69は、被処理水を供給する被処理水供給管47に接続し、被処理水といっしょにスプレーノズル75から噴霧される。
浄化装置6の使用方法及び動作について説明する。
白色腐朽菌を保有するピートモス15を容器21内の充填部27に充填する。容器21内は、スプレーノズル75及び換気手段によりピートモス15が湿潤かつ好気状態に維持され、白色腐朽菌が良好に生育する高湿度でかつ好気状態の環境であるため、白色腐朽菌は、難分解性物質を分解する分解酵素を生成する。
被処理水は、スプレーノズル75を介して、ピートモス15の上方から噴霧される。噴霧された被処理水は、ピートモス15層内を流下する過程で難分解性物質がピートモス15に吸着され浄化され、排水管77を通じて処理水槽49に排出される。なお、処理水槽49内の処理水の一部は、返送ライン69を通じてスプレーノズル75に送られ、再度、ピートモス15層内を流下する過程で難分解性物質が吸着除去される。
以上のように浄化装置6は、容器21の上方から被処理水及び処理水が噴霧されると共に容器21内が換気されるため、ピートモス15は、湿潤状態を維持し、新たな空気と接触することができる。これらにより白色腐朽菌が良好に生育できる環境である高湿度の好気状態を簡単に作り出すことができ、白色腐朽菌は、難分解性物質を分解する分解酵素を生成し、ピートモス15に吸着された難分解性物質は、白色腐朽菌が生成する分解酵素で分解される。
浄化装置6は、浄化装置5に比較して、排水を噴霧するためのスプレーノズル75、排水を加圧する装置が必要となるが、ピートモス15の高さが低くなっても高湿度好気状態を容易に作り出すことができる。
上記のように浄化装置6では、ピートモス15による被処理水中の難分解性物質の吸着と、吸着された難分解性物質の分解とが同時並行的に、又は連続的に行われる。このような浄化装置6は、分解酵素による難分解性物質の分解速度が遅い場合であっても、被処理水中の難分解性物質は、ピートモスに吸着除去されるので被処理水を迅速に浄化することができる。一方、難分解性物質はピートモス15に吸着され濃縮された状態で、分解されるので効率的である。さらに処理水循環手段72を備えるので、被処理水を十分に浄化することができる。
上記浄化装置6において、スプレーノズル75に圧搾空気による2流体タイプのスプレーノズルを使用すれば、噴霧される被処理水及び返送される処理水に空気が混入し、ピートモス15を好気状態に維持し易い。さらに通気口81から空気を強制的に送り込めば、ピートモス15を好気状態に維持し易い。
浄化装置6も浄化装置1と同様に、種々変形して使用することができる。図8に示す浄化装置6では、処理水循環手段72を備え、処理水槽49内の処理水を再度、ピートモス15に接触させる循環運転を行うが、供給される被処理水に含まれる難分解性物質の含有量が少なく、ピートモス15を一回通過させただけで被処理水に含まれる難分解性物質を完全に吸着することができる、あるいはピートモス15を一回通過させただけで被処理水に含まれる難分解性物質を基準値(許容値)以下とすることができる場合は、処理水の循環は不要である。なお、このような難分解性物質の含有量が少ない被処理水のみを取扱う場合には、処理水循環手段72を設けなくてもよい。
また浄化装置6においても図3に示す浄化装置1と同様に、ピートモス15を袋詰めにして充填してもよい。さらに図4に示す浄化装置2と同様に、容器21内にピートモス15を多段充填してもよい。
図9は、本発明の第7実施形態の水の浄化装置7の概略構成図である。図1から図8に示した水の浄化装置1、2、3、4、5、6と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
浄化装置7は、浄化装置1と同様の白色腐朽菌を保有するピートモス15を収容する容器21を有し、該容器21内にピートモス15を収容し、被処理水とピートモス15とを接触させ、ピートモス15に被処理水中の難分解性物質を吸着させ水を浄化する。浄化装置1では、サイホン39を使用して容器21内に排水の干満を形成し、これによりピートモス15を高湿度でかつ好気状態とするが、浄化装置7では、ピートモス15の上下を多孔質材83、85で挟み込み、かつ容器21内の換気をよくすることで高湿度好気状態を作り出す。本実施形態では、ピートモス15の上下に配置される多孔質材83、85及び容器21内を換気する換気手段が環境形成手段である。
充填部27は、浄化装置6と同様に容器21の横断面全体に設けられ、底面29にのみ網が取付けられている。充填部27は、浄化装置1と同様に容器底面23との間に空間が形成されるように容器底面23から少し高い位置に設けられており、この空間部に、この空間部を埋めるように多孔質材83が充填されている。
ピートモスの上面16には、多孔質材85が載置されている。ピートモスの上面16に載置された多孔質材85と充填部27の下方に充填された多孔質材83は、共に保水性、通水性、通気性に富む部材からなり、保水体(保水層)として機能する。このような多孔質材83、85としては、合成樹脂製のスポンジ、セラミック、ゼオライトなどからなる多孔体が挙げられる。多孔質材83、85は、水に浮かばない範囲内で軽い方が好ましい。
多孔質材83、85は、一枚の板状の部材であっても、粒状、塊状の部材を充填したものであってもよい。多孔質材85は、ピートモス15の上面16に載っているだけであるから、ピートモス15が白色腐朽菌により分解され高さが減少すると、それに追従して多孔質材85も移動する。粒状の多孔質材83を充填部27の下方に充填する場合において、排水管77を通じて流出する恐れがあるときには、排水管77を網で覆うなどの対策が必要である。
多孔質材85は、ピートモス15が白色腐朽菌により分解され高さが減少しても移動しないように容器21内に固定してもよい。この場合には、被処理水が多孔質材85で分散されシャワー状となりピートモス15に供給される。
排水管77の取付け位置は、第6実施形態の水の浄化装置6と同様に、容器21の底部に少量の処理水が溜まるように、排水管の上端79が容器底面23から少し持ち上げられた位置となっている。また容器21の下部には、第6実施形態の水の浄化装置6と同様に、通気口81が設けられ、容器内21を自然換気及び強制換気することができる。
浄化装置7の使用方法及び動作について説明する。
白色腐朽菌を保有するピートモス15を容器21内の充填部27に充填する。容器21内は、ピートモス15の上下に配置される多孔質材83、85及び容器21内を換気する換気手段によりピートモス15が湿潤かつ好気状態に維持され、白色腐朽菌が良好に生育する高湿度でかつ好気状態の環境であるため、白色腐朽菌は、難分解性物質を分解する分解酵素を生成する。
ピートモス15の上方から供給された被処理水は、多孔質材85で分散され、多孔質板85を通過し、ピートモス15に供給される。被処理水は、被処理水に含まれる難分解性物質がピートモス15層内を流下する過程で吸着され処理水となり、多孔質材83を通過し、排水管77を通じて処理水槽49に排出される。容器21内は、通気口81及び空気孔35を通じて換気され、さらに多孔質材83、85が通気性を有するので、ピートモス15は、湿潤状態を維持し、新たな空気と接触することができる。これらにより白色腐朽菌が良好に生育できる環境である高湿度の好気状態を簡単に作り出すことができ、白色腐朽菌は、難分解性物質を分解する分解酵素を生成し、ピートモス15に吸着された難分解性物質は、白色腐朽菌が生成する分解酵素で分解される。
浄化装置7は、装置構成が非常に簡単で可動部がないため信頼性が高い。また外部から電源等を供給する必要がないので、使用場所が限定されず幅広く使用することができる。
上記浄化装置7において、通気口81から空気を強制的に送り込めば、ピートモス15を好気状態に維持し易い。また浄化装置1と同様に、種々変形して使用することができる。例えば図3に示す浄化装置1と同様に、ピートモス15を袋詰めにして充填してもよい。さらに図4に示す浄化装置2と同様に、容器21内にピートモス15を多段充填してもよい。また浄化装置6と同様に処理水循環手段72を設け、処理水を循環し、浄化させるようにしてもよい。
以上の通り、種々の形態の浄化装置を示したが、浄化装置は、上記実施形態に限定されるものではない。難分解性物質を含有する水とピートモスとを接触させ、ピートモスにより被処理水中の難分解性物質を吸着分離し、さらに難分解性物質を吸着したピートモスを湿潤かつ好気状態の環境下に置き、白色腐朽菌を繁殖させ、白色腐朽菌が生成する分解酵素により難分解性物質を分解することができれば、他の形態であってもよい。このとき、前記実施形態で示したように、被処理水を利用し白色腐朽菌が良好に生育することができる高湿度でかつ好気状態の環境を作り出すことができれば非常に効率的であり好ましい。
図面を参照しながら好適な水の浄化装置及び水の浄化方法について説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
1、2、3、4、5、6、7 浄化装置
15 ピートモス
21 容器
27 充填部
35 空気孔
39 サイホン
51 袋
53 空間部
55 導通管
57 気相部
59 サイホン
61 サイホンの頂部
62 多孔板
67 送水ポンプ
69 返送ライン
72 処理水循環手段
75 スプレーノズル
81 通気口
83、85 多孔板
本発明は、生物学的手法を用いた水の浄化装置に関する。
本発明の目的は、生物学的手法を用い、簡単な構成で迅速に、また効率的に水を浄化することができる水の浄化装置を提供することである。
本発明は、白色腐朽菌を保有するピートモスを用いて被処理水中の難分解性物質を吸着除去し、吸着された前記難分解性物質を前記白色腐朽菌が生成する分解酵素により分解する水の浄化装置であって、前記白色腐朽菌を保有するピートモスと、前記ピートモスを湿潤かつ好気状態で収容可能な容器と、被処理水と前記ピートモスとを接触させ、被処理水中の難分解性物質を前記ピートモスに吸着分離させると共に、前記ピートモスと空気との接触を良好にし、前記白色腐朽菌が良好に生育する高湿度でかつ好気状態の環境を作り出す環境形成手段と、を有し、前記環境形成手段がサイホンであり、前記容器への水の充填と前記容器からの水の排出とにより干満を繰り返し、これにより前記ピートモスを湿潤かつ好気状態にし、さらに前記サイホンは、サイホンの頂部の高さが可変可能であり、前記ピートモスが分解され高さが減少するとサイホンの頂部の高さもそれに追従することを特徴とする水の浄化装置である。
本発明の水の浄化装置は、水中の難分解性物質をピートモスで吸着除去することができるので、難分解性物質を含有する水を迅速に浄化することができる。さらにピートモスに吸着した難分解性物質は、そのままの状態で、白色腐朽菌を作用させ白色腐朽菌が生成する分解酵素により分解するので複雑な操作も不要であり、簡単に実施することができる。水に含まれる難分解性物質の含有量が非常に少なくても、難分解性物質はピートモスに吸着されることで濃縮されるので効率的に分解させることができる。
また本発明の水の浄化装置は、装置構成が簡単で安価に製作することができる。また本発明の水の浄化装置は、基本的に可動部がないため故障も少なく、高低差を利用して排水を供給すれば動力も不要である。
また本発明の水の浄化装置は、サイホンを用い、容器への水の充填と容器からの水の排出とによる干満を利用し、ピートモスを湿潤かつ好気状態にすることができるので非常に効率的である。さらにピートモスが分解され高さが減少するとサイホンの頂部の高さもそれに追従するので、より効率的にピートモスを湿潤かつ好気状態にすることができる。
本発明の水の浄化装置は、簡単な構成ながら迅速に、また効率的に水を浄化することができる。特に難分解性物質の含有量が少ない水の浄化に好適に使用することができる。また外部からの動力を使用することなく水の浄化が可能であり、さらに本発明の水の浄化装置は、装置構成が簡単であるため安価に製作することができる。また本発明の水の浄化装置は、被処理水を利用し白色腐朽菌が良好に生育することができる高湿度でかつ好気状態の環境を作り出すので非常に効率的である。

Claims (10)

  1. 湿潤かつ好気状態の環境下に置かれた、白色腐朽菌を保有するピートモスを用いて被処理水中の難分解性物質を吸着除去し、吸着された前記難分解性物質を前記白色腐朽菌が生成する分解酵素により分解することを特徴とする水の浄化方法。
  2. 請求項1に記載の水の浄化方法を実施するための装置であって、
    前記白色腐朽菌を保有するピートモスと、
    前記ピートモスを湿潤かつ好気状態で収容可能な容器と、
    前記容器に収容された前記ピートモスを湿潤かつ好気状態にする環境形成手段と、
    を有することを特徴とする水の浄化装置。
  3. 前記環境形成手段は、被処理水と前記ピートモスとを接触させ、被処理水中の難分解性物質を前記ピートモスに吸着分離させると共に、前記ピートモスと空気との接触を良好にし、前記白色腐朽菌が良好に生育する高湿度でかつ好気状態の環境を作り出すことを特徴とする請求項2に記載の水の浄化装置。
  4. 前記環境形成手段が、サイホンであり、
    前記サイホンは、前記容器に設置され、前記容器に被処理水が供給され前記容器内が満水となるまでは該水を排出せず、前記容器内が満水となると該水を短時間内に排出し、前記ピートモスを大気中に露出させ、
    前記容器への水の充填と前記容器からの水の排出とにより干満を繰り返し、これにより前記ピートモスを湿潤かつ好気状態にすることを特徴とする請求項3に記載の水の浄化装置。
  5. 前記環境形成手段が、前記容器内に収容されるピートモスに対して上方から前記被処理水を噴霧する噴霧手段であることを特徴とする請求項3に記載の水の浄化装置。
  6. 前記環境形成手段が、前記ピートモスの上部及び下部に配置される通水性及び通気性を有する保水体であり、前記被処理水を、前記上部保水体の上方から供給し前記ピートモスの層内を流下させることを特徴とする請求項3に記載の水の浄化装置。
  7. 前記環境形成手段は、さらに前記容器内を換気し好気状態にする換気手段及び/又は前記容器内に空気を送り前記容器内を好気状態にする送気手段を備え、前記容器内を換気し及び/又は前記容器内に空気を送り、前記ピートモスを湿潤かつ好気状態にすることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の水の浄化装置。
  8. 前記ピートモスは、通気性及び通水性を有する複数の袋に小分けして充填され、前記容器内に収納されていることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の水の浄化装置。
  9. 前記ピートモスは、前記容器内に多段に充填され、各段の間に空間部が設けられていることを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の水の浄化装置。
  10. さらに前記容器から排出される処理水を再度、前器容器に返送し、前記ピートモスと接触させるための処理水循環手段を備えることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項に記載の水の浄化装置。
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