JP6445664B1 - 生物脱臭装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスに対しても、低コストで長期間安定した脱臭性能を発揮できること。【解決手段】臭気ガスGを生物的処理によって消化するバイオフィルタ21を木材チップ21Aで構成し、下方に臭気ガスが導入される導入口24aを有するハウジングH内に、多数の通気孔22Aを有する床材23を収容して、その上に木材チップ21を充填し、散水手段30によってバイオフィルタ21の上方からなされる散水により木材チップ21Aの含水率を150%以上、300%以下に維持する。また、循環手段40によりバイオフィルタ21を通過した余剰水W1を回収し散水手段30に供給することで、散水手段30で散水する水を循環させている。【選択図】図2

Description

本発明は、生ごみ、食品加工残渣等の有機性廃棄物や、畜糞、下水・汚水処理のスラッジ等の有機物を発酵・分解処理する際に生じる臭気ガスを生物脱臭方式により脱臭する生物脱臭処理に関するもので、特に、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスに対しても、低コストで長期間安定した脱臭性能を発揮できる生物脱臭装置に関するものである。
有機廃棄物、例えば、生野菜、果実、肉類等の生ごみや食品加工残渣等をコンポスト化(堆肥化)する廃棄物処理施設や、家畜を飼育したり家畜の排泄物を処理したりする養鶏・畜産施設や、有機スラッジ等が生じる下水・汚水の排水処理施設等における臭気、悪臭対策として、燃焼により臭気物質を酸化分解して脱臭する燃焼脱臭法、活性炭等の吸着材により臭気物質を吸着して脱臭する吸着脱臭法、薬液に臭気物質を接触させ化学反応を利用して脱臭する洗浄脱臭法(薬液処理法)、臭気物質を微生物によって分解して脱臭する生物脱臭法等が知られている。
なかでも、微生物に臭気物質を分解させる生物脱臭法によれば、燃焼脱臭法、吸着脱臭法、洗浄脱臭法のように、吸着材(廃活性炭等)、化学汚泥、廃液等の後処理が必要な残渣を発生させることもなく、臭気成分は二酸化炭素(CO2)、水(H2O)等の無害な物質やSO4 -やNO3 -等の無機イオンに分解することができる。また、燃焼法のように、煤塵、ダイオキシンや、多量のCO2やNOxを排出することもないことから、環境に優しい脱臭法である。更に、薬品等の高価な材料を使用することもなく、また、吸着材のように頻繁な交換を必要としたり、燃料を必要としたりすることもないから運転コストも抑えられる。
特に、近年は、我が国の環境問題に対する関心も高く、廃棄物処理に関しては、環境負荷の観点から有機廃棄物を資源として再利用することにより少しでも焼却量を減少させる努力がなされており、生ごみ等を発酵熟成させて堆肥化し、有機肥料として使用する方法が積極的に行われている。このため、このような堆肥化施設から排出される臭気を含んだガスの臭気対策の必要性が高まっている。
また、家畜産業に関しては、家畜排泄物の約9割が堆肥化されているが、生産性に結びつかない臭気対策にはコストをかけにくいのが実情である。よって、その臭気対策には設備費や運転費が安価な脱臭技術が望まれている。
そして、これら生ゴミ等の有機廃棄物や家畜糞の堆肥化処理においては、主に好気性発酵処理(好気性微生物による有機物分解)であるから、その有機物の分解過程(発酵過程)で生じる臭気は、化学工場等で発生する悪臭や、家畜のし尿処理施設、嫌気性発酵処理施設での臭気よりも、比較的低濃度で大風量であるうえ、種々の臭気成分を含む複合臭であり臭気成分、濃度も変動し得る。このため、種々の臭気成分を含む複合臭であって、臭気成分、濃度も変動し得る低濃度多風量の臭気でも確実に、かつ、持続的に脱臭性能を果たす脱臭技術が望まれている。
ここで、従来の生物脱臭法として、主に、土壌脱臭法、ロックウール脱臭法等が知られている。
土壌脱臭法は、土壌層の下から送り込まれた臭気ガスの臭気成分が、土壌層を通過中に土壌粒子表面の水分に溶解したり、土壌粒子の表面に吸着したりし、更に土壌微生物により分解されることにより脱臭される仕組みであるが、土壌層の通気抵抗が高いために広い敷地面積を要する。そこで、その欠点を補うために開発されたのがロックウール脱臭法であり、ロックウールを用いることで通気抵抗を改善できる。そして、ロックウール脱臭法では土壌脱臭法と比較して設置面積の縮小を可能とする。しかし、ロックウールは無機物であるから、臭気成分の吸着能力及び微生物の活動に欠ける。このため、有機物と混合して脱臭に寄与する微生物の活性を高める工夫が必要である。
例えば、特許文献1には、粒状物の粒径が1mm以上40mm以下の粒が混在するロックウール粒状綿等の無機繊維製粒状綿と、木質系チップの混合物を主体とし、更に、家畜糞尿・堆厩肥・余剰汚泥の単独または2以上の混合物からなる微生物活性物質を混合した脱臭材が開示されている。この特許文献1では、ロックウール層の中に生息させる微生物の活性を維持するための炭素源となり、また、初期の吸着効果を発揮する有機物として、木質系チップが紹介されている。
WO2011/024507 特開2004−024353 特開2005−246106 特開2006−035028
ところが、特許文献1を始めとする従来のロックウールを微生物担体として使用した生物脱臭装置においては、土壌脱臭法より初期の通気抵抗が改善されるも、水分管理及び微生物管理が難しく、使用によって圧力損失が大きくなりやすかった。このため、処理能力、処理効率を高めてそれを維持するには高圧力をかけたり、脱臭材料の容積を大きくしたりする必要があり、コストを抑えるのが困難である。ロックウールの材料は高価でもある。
また、従来のロックウールを微生物担体として使用した生物脱臭装置では、固定された臭気ガスには有効であるも、臭気濃度の変動や臭質の変動への対応に乏しく、安定した脱臭効果の持続性が低かった。特に、従来、固定された臭気ガスに対しての脱臭効率の重視から、特定の臭気成分に対して有効な微生物を摂種、植種したり、微生物活性物質を添加したりすることがあり、臭気源に適した微生物を採択する技術開発にコストがかかるうえ、特定の微生物を摂種、植種したり微生物活性物質を添加したりすると、臭気濃度の変動や臭質の変動に弱く、微生物活性を超えた負荷がかかることがあった。このような場合には、導入する臭気の制御を行う対策も考えられるが、運転管理費がコスト高となる。
また、特許文献1の技術では、無機繊維製粒状綿と木質系チップの取合わせにより充填性も高く、更に、通気路の大きさも不均一になることから、悪臭が均等に分布して通過せずに、特定の通気路に多量の悪臭が通過しやすくなり、そこで通気路が閉塞しやすくなる。このため、臭気の導入に伴って圧力損失が増大しやすく、高い脱臭効率の持続も困難である。当然、圧力損失が高くなることで設備運転費(動力費)も高くなる。更に、家畜糞尿・堆厩肥・余剰汚泥といった微生物活性物質を混合しなければ生物脱臭の作用が得られ難いために、微生物管理も煩雑であり、材料の価格も高価となる。
ところで、この種の生物脱臭装置では、微生物担体の乾燥を防止して微生物活性を維持するために散水がなされる。そこで、コスト低減化のために、例えば、特許文献2乃至特許文献4において、散水の水を循環させる循環散水方式を採用した技術が開示されている。
特許文献2は、微生物を担持した担体が充填された向流充填層に、処理水と臭気ガス導入口から導入された臭気ガスとを相互に向流方向で通過させ、前記向流充填層を通過して脱臭された処理ガスを処理ガス排出口から排出し、一方、前記向流充填層を通過した前記処理水は、前記処理水流の下流方向に設けられ、微生物を担持した担体が充填された単流充填層を通過させることにより前記臭気ガスを処理する脱臭方法において、前記向流充填層を通過した前記処理水は、前記単流充填層を通過させ、続いて前記処理水流の下流方向に設けられた貯水部に溜められた後、前記貯水部から前記向流充填層及び前記単流充填層を経由して再び前記貯水部までを循環的に通過させ、前記単流充填層の通過後から前記向流充填層への到達前までの間で前記処理水にアルカリを添加することにより、前記単流充填層を通過した直後の処理水のpH値を6.5以上に維持する技術を開示している。
また、特許文献3は、悪臭ガスが導入される容器と、前記容器内に充填され、脱臭用微生物またはそれ由来の酵素を担持させる充填担体と、前記容器内の水を前記充填担体に散水する散水器と、前記容器内の水を散水用水として回収して前記散水器に循環供給する散水配管とを備え、前記悪臭ガスを生物学的に脱臭する循環散水運転式の生物脱臭装置において、前記散水配管の途上に、前記散水用水の中に含まれる少なくとも1種類以上の臭気物質を低減できる臭気物質低減部材を配設した技術を開示している。
更に、特許文献4は、硝化作用を有する微生物によりアンモニアを硝酸及び/または亜硝酸に変えて脱臭する循環散水運転方式の生物脱臭装置と、前記生物脱臭装置とは別体で設けられ、脱窒作用を有する微生物により硝酸及び/または亜硝酸を窒素に変える脱窒装置と、前記脱窒作用を有する微生物の養分となる有機物を前記脱窒装置に供給する有機物供給装置とを備え、前記生物脱臭装置と前記脱窒装置との間を循環水が循環するように構成された生物脱臭装置を用いた生物脱臭方法において、脱窒装置において脱窒作用を有する微生物により、硝酸及び/または亜硝酸を窒素に変えることで、前記循環水に含まれる硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の濃度を2500ppm以下の値に維持する制御を行う技術を開示している。
このような散水に使用する水を循環させる循環散水方式では、臭気物質や微生物による臭気物質の分解により生じた分解物が循環水中に次第に蓄積して高濃度となり、そのような臭気物質や分解物が濃縮された循環水の散水によって微生物の活性が阻害されるために脱臭効果の持続が困難である。
そこで、特許文献2乃至特許文献4では、循環水のpH調節を行ったり、イオン吸着剤等の臭気物質低減部材によって臭気物質や分解物を吸着したり、循環水路中に脱窒工程を設けたりする技術を用いている。
しかし、その反面、装置や制御が複雑化し、材料コスト、設備コスト、ランニングコスト等の新たにコストがかかる問題がある。
そこで、本発明は、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスに対しても、低コストで長期間安定した脱臭性能を発揮できる生物脱臭装置の提供を課題とするものである。
請求項1の発明の生物脱臭装置は、臭気ガスを生物的処理によって消化するバイオフィルタを木材チップで構成したものであり、臭気ガスが導入される導入口を下方に有するハウジング内に、多数の通気孔を有する床材を収容して、その上に前記木材チップを充填し、散水手段によって前記バイオフィルタの上方からなされる散水により前記木材チップの含水率を150%以上、300%以下に維持するものである。また、循環手段により前記バイオフィルタを通過した余剰水を回収し前記散水手段に供給することで、前記散水手段で散水する水を循環させているものである。
上記バイオフィルタは、木材チップを充填してなるものであり、臭気ガスを生物的処理によって消化するものである。
ここで、上記生物的処理によって消化とは、微生物の酵素作用等によって臭気ガス中の臭気成分を分解して脱臭することを意味する。
また、上記木材チップは、原木(幹、全木、灌木、末木、枝条、剪定枝、根株等)、製材(背板、端材、剥き芯等)、建築解体材、建築資材、梱包資材、合板、集成材、パーティクルボード、廃パレット等をチッパー、シュレッダー、ミル、クラッシャー、ハンマー、パンチング等により切削または破砕して木片とし、それを篩分けして、所定サイズを選抜したものである。
本発明者らは、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスに対しても安定して長期間脱臭性能を発揮し、かつ、低コストで構成できるバイオフィルタについて鋭意実験研究を重ねた結果、木材チップでバイオフィルタを構成することにより、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスに対しての追従性も高く、安定して長期間高い脱臭効果を維持できることを見出した。
特に、木材チップを堆積してなるバイオフィルタは、所定の含水率の制御によって、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスに対しての追従性が高く、安定して長期間高い脱臭効果を維持されることをつきとめ、本発明者らの実験により、散水によって含水率を150%以上、300%以下に維持すると特定したものである。即ち、散水によって木材チップの含水率を150%以上、300%以下に維持することで、木材チップの高い保水特性によって高い処理能力が得られ、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスに対しても木材チップの高い保水特性により安定して長期間の高い脱臭効果を発揮できる。
木材チップの含水率は、水分を含まない木材チップの重量(全乾重量、ドライベース)に対する水分重量の割合を表すものであり、以下の式(A)により算出したものである。
含水率(%)=(乾燥前の重量−全乾重量)/全乾重量×100・・・(A)
なお、全乾重量は、105℃で、重量の変化が無くなるまで乾燥させた状態の値を用いている。
上記ハウジングは、少なくとも下面及び左右側面の3面で形成され、床材とその上にバイオフィルタを収容するものである。その下方では臭気ガスが導入される導入口が設けられることから導入される臭気ガスが外に漏れが生じることのない遮断構造とする。一方で、下方の導入口から導入された臭気ガスは上昇して前記床材及びその上に配設する前記バイオフィルタを通過し、前記バイオフィルタの上面から放出されるから、バイオフィルタの上方側は開放される。ハウジングの上面を形成することなく前記バイオフィルタから放出された空気が大気に放出されるようにしてもよいし、上面を形成しても通気開口を設け、その通気開口から前記バイオフィルタから放出された空気が大気に放出されるようにしてもよい。
なお、散水の水を循環させるから、バイオフィルタ及び床材を通過しハウジングの底部に到達した水を回収して散水手段に循環させるために、通常、ハウジングの下方には、散水の余剰水が排水される排水口も設けられる。
また、上記床材は、前記バイオフィルタと共に前記ハウジング内に収容されるものであり、前記バイオフィルタの下部であって前記ハウジングの底部との間で所定容積の空間を画成して、即ち、前記ハウジングの底部との間で所定間隔をあけて前記ハウジング内に配設されるものである。したがって、ハウジング内では床材の上に前記木材チップが積載されることになる。そして、床材は臭気ガスが導入される前記ハウジングの導入口と連通する所定容積の空間を画成する配設であり、この床材には上下に貫通する多数の通気孔が設けられていることから、前記ハウジング下方の導入口から導入された臭気ガスは所定容積の空間によって前記バイオフィルタの底面積方向全体に流通され、そして、床材の通気孔を通過してバイオフィルタに入力されることになる。
上記散水手段は、前記ハウジングに収容された前記バイオフィルタに対して、臭気ガスの導入側とは反対側の上方からの散水によって水を供給するものである。この散水によって前記バイオフィルタを湿潤状態とし、前記木材チップの含水率を150%以上、300%以下に維持する。散水は、間欠的であってもよいし、連続的に行ってもよい。
上記循環手段は、前記バイオフィルタの上方から散水されて前記バイオフィルタを上方から下方に通過した水、即ち、前記バイオフィルタ中に保持されずに床材の通気孔を通ってハウジングの下方に流下した余剰水を回収して前記散水手段に供給し、散水の水を循環させるものである。なお、バイオフィルタを通過した余剰水はハウジング内の下部で回収しそこに貯留するようにしてもよいし、ハウジングの外部に別途受水部を設けそこに貯留するようにしてもよい。
また、散水用の水には、バイオフィルタを通過した余剰水に加え、外部から水が補充されるように構成してもよい。
請求項の発明の生物脱臭装置は、前記床材の位置から上または前記床材の位置から下で前記ハウジングの内方に向かって前記ハウジング側の内側壁が突出していることによって、ハウジングHの側壁伝いの臭気を遮断するものである。
例えば、前記ハウジング自体の内側壁を前記バイオフィルタの側面に向かって突状に形成することによって、或いは前記ハウジングと前記バイオフィルタの間に板状等の別部材を設置することによって、前記床材の位置から上では前記ハウジング側の側壁が前記バイオフィルタの側面に向かって突出さえる。また、前記床材の位置から下で前記ハウジング自体の内側壁の突出構造または板状等の別部材の設置によってハウジング側の内側壁をハウジングの内方に向かって突出させる。
請求項の発明の生物脱臭装置は、前記臭気ガスが下方から上方に通過する方向の前記バイオフィルタの厚さ堆積が1.5m以上、3m以下であるものである。
本発明者らは、木材チップを堆積してなるバイオフィルタについては、厚さ堆積が高くなると圧密化するために、目詰まり、使用による圧力損失の増大を招き高い脱臭効果を維持できなくなる一方で、厚みが少ないと、バイオフィルタを上昇する臭気ガスの木材チップとの接触量が少なく目詰まりが生じるとすぐに消化できなくなるから、木材チップを堆積してなるバイオフィルタの厚み(充填高さ)の特定により、脱臭効果の持続性を確保できることを見出した。そこで、バイオフィルタの最適な厚みについて究明したところ、バイオフィルタの厚さ堆積が1.5m以上、3m以下であるのが好ましく、より好ましくは、2m以上、2.5m以下の範囲内であることが判明した。なお、このバイオフィルタの厚さ堆積は、初期設定の値である。
請求項2の発明の生物脱臭装置の前記床材は、前記通気孔の目開きが20mm〜100mmの範囲内であり、開口率が5%以上、95%以下の範囲内であるものである。
本発明者らの実験によれば、木材チップを充填してなるバイオフィルタの下部に配置する床材について、その通気孔の大きさ、密度の制御によって、そこに発生する流体損失を最小に設定し、かつ、臭気ガスの導入量に変動、ばらつきがあっても、所定の流体抵抗によって負荷がかからないようにできることから、そのような床材の構造について目開き、開口率で特定したものである。
ここで、上記目開き、開口率とは前記床材の通気孔の大きさ、密度を表すものである。上記目開きも、例えば、メッシュ状等の縦線と横線が交差して形成された1つの目当たりの開口(空間)における天地幅または左右幅を示し、円形目であれば円孔の直径に相当し、正方目であれば正方形の一辺に相当する。通気孔は円形目または正方目にその形状を特定するものではないが、空気抵抗の小さい形状で、かつ、表面積が広いものであることからすると、断面が円形の円孔、断面が正方形の角孔が好適である。
上記床材の目開き、開口率は、ふるい金網の規格に準拠して測定したものであり、床材の平面積をS、床材の目数をM、縦線・横線の線径をdとしたとき、以下の式(B)により目開きを算出し、以下の式(C)により開口率を算出したものである。
目開きA(mm)=S/M−d・・・(B)
開口率ε(%)=(A/A+d)2×100・・・(C)
請求項1の発明に係る生物脱臭装置によれば、木材チップからなるバイオフィルタを有し、散水によって前記木材チップの含水率を150%以上、300%以下に維持し、そして、前記バイオフィルタに散水する水を循環手段により循環させている。これによって、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスに対しても、低コストで長期間安定した脱臭性能が発揮される。
本発明者らは、鋭意実験研究を積み重ねた結果、バイオフィルタを微生物担体として木材チップで構成し、そのバイオフィルタに対して散水する水を循環手段により循環させることにより前記木材チップの含水率を150%以上、300%以下に維持することによって、微生物を摂種、植種したり微生物活性を付与するための微生物活性物質等を添加したりしなくとも、早い立ち上がりで臭気成分を微生物による生物的処理によって消化するバイオフィルタとして機能させることができ、そして、経時的な圧力損失の増大も少なく、臭気濃度の変動や臭質の変動への追随性も高くて長期間に亘って脱臭効果を持続させることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
即ち、木材チップでバイオフィルタを構成したことにより木材チップのサイズの選択によって通気抵抗を低く抑えることができ、また、木材チップの含水率を150%以上、300%以下に維持するための散水に、循環手段によりバイオフィルタを通過した水を再利用していることで、微生物や微生物による臭気の分解で生じた分解物(代謝産物)がバイオフィルタ中に偏ることなく分布する。
よって、バイオフィルタの通気路の狭窄、閉塞、目詰まりが生じ難く、経時的な圧力損失の増大を抑制できる。
特に、含水率を150%以上、300%以下に維持した木材の特性により、多種の臭気の分解に対応できる微生物種も繁殖しやすい。そして、木材チップで構成されるバイオフィルタではそのサイズの選択によって流路を広くできて、バイオフィルタ全体に均一に水が分布すると共に、含水率を150%以上、300%以下に維持する木材チップの高い保水性によって、pH変動の緩和効果が高い。このため、経時的なpHの低下も生じ難く、中性域のpHを維持できる。
よって、多種の臭気でもその分解に対応できる微生物種が活動し易く、その活性も持続させることができる。特に、循環手段によりバイオフィルタを通過した水を散水として再利用していても、微生物の活動の低下、微生物活性の低下が生じ難い。また、含水率が150%以上、300%以下に維持された木材チップからなるバイオフィルタでは、木材チップの保水特性及び高表面積によって、臭気ガスの気体が木材チップ周囲の液相に溶解されやすく、また、木材チップと臭気ガスとの接触量が大きいことから、処理能力が高い。更に、バイオフィルタの下部には配置した床材の多数の通気孔による整流効果によっても圧力損失を緩和でき、処理効率を高めることが可能である。
したがって、導入される臭気濃度や臭気質が変動しても、長期間安定した脱臭性能を維持できる。
更に、木材チップでバイオフィルタを構成することで木材チップのサイズの選択により通気抵抗を抑えることができ、目詰まりも生じ難いことで、経時的な圧力損失の増大も少ないから、臭気ガスの送風にかかるランニングコストを抑えることができる。
また、木材チップは安価に入手できる。そのうえ、含水率が150%以上、300%以下に維持された木材チップからなるバイオフィルタは処理能力も高く、更に圧力損失を抑えることができるから、バイオフィルタは少ない容積量でも所定の高い処理量を確保できる。そして、環手段によりバイオフィルタを通過した水を散水として再利用していても、バイオフィルタの高い保水性によりpH変動の緩衝効果が高いから、循環水のpHや臭気の分解で生じた分解物を制御したり臭気ガスの導入量を制御したりする手段を設ける必要もない。
よって、材料コスト、設備コスト、ランニングコストが抑えることができ低コストで済む。
請求項の発明の生物脱臭装置によれば、前記床材の位置から上または前記床材の位置から下で前記ハウジングの内方に向かって前記ハウジング側の内側壁が突出していることによって、ハウジングHの側壁伝いの臭気漏れを防止できる。
請求項の発明の生物脱臭装置によれば、前記臭気ガスが下方から上方に通過する方向の前記バイオフィルタの厚さ堆積が1.5m以上、3m以下の範囲内である。
木材チップを充填してなるバイオフィルタの厚さ堆積(高さ)が低すぎると、臭気成分のバイオフィルタへの滞留時間、木材チップとの接触時間が短くなり、高い脱臭効果を得ることができない。一方、バイオフィルタの厚さ堆積(高さ)が高すぎると、圧力損失が高く運転コストが高くなったり、通気路の狭窄、閉塞、目詰まりが生じ易くなり脱臭効果の持続性が低下したりする。また、材料コストもかかる。
バイオフィルタの厚さ堆積(高さ)が1.5m以上、3m以下の範囲内であれば、低コストで高い脱臭効果が得られ、その高い脱臭効果をより持続させることができる。より好ましくは、バイオフィルタの厚さ堆積(高さ)が2m以上、2.5m以下の範囲内である。
請求項2の発明の生物脱臭装置によれば、前記床材は目開きが20mm〜100mmの範囲内であり、開口率が5〜95%の範囲内である。
前記床材の開口面積、開口率が大き過ぎると、開口の総和面積が大きいことで機械的強度が弱く、強靭な素材を必要とすることからコスト高となる。また、開口面積、開口率が低く過ぎても、圧力損失が高く、強力な送風を必要とするからランニングコストが高くなる。
前記床材は、目開きが20mm〜100mmの範囲内であり、開口率が5〜95%の範囲内であれば、請求項1に記載の効果に加えて、低コストで臭気ガスの整流機能を果たすことができ、処理効率を高めることができる。
図1は本発明の実施の形態に係る生物脱臭装置に臭気ガスが導入されるまでの流れを説明する概念図である。 図2は本発明の実施の形態に係る生物脱臭装置の全体構成を示す説明図である。 図3(a)は本発明の実施の形態に係る生物脱臭装置の床材及びその周囲の構成を示す説明図であり、図3(b)は、本発明の実施の形態に係る生物脱臭装置の床材の構成を示す斜視図であり、図3(c)は図3(b)のX−X断面図である。 図4は本発明の実施の形態に係る生物脱臭装置のハウジング内の構成を説明する要部拡大図である。 図5は本発明の実施の形態に係る実施例の生物脱臭装置における経時的な圧力損失の変化を示すグラフである。 図6は本発明の実施の形態に係る実施例の生物脱臭装置におけるバイオフィルタの経時的な温度変化を示すグラフである。 図7(a)は本発明の実施の形態に係る生物脱臭装置のハウジング内に設ける突壁の一例を説明する部分拡大図であり、図7(b)は本発明の実施の形態に係る生物脱臭装置に設ける突壁の別の一例を説明する部分拡大図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
まず、本発明の実施の形態に係る生物脱臭装置10に臭気ガスGが導入されるまでの流れを、図1を参照して説明する。
本実施の形態に係る生物脱臭装置10が対象とする臭気ガスGは、例えば、生野菜、果実、肉類等の生ごみや食品加工残渣を堆肥化(コンポスト化)する廃棄物処理施設や、家畜を飼育したり家畜の排泄物を堆肥化したりする養鶏・畜産施設や、有機スラッジ等が生じる下水・汚水処理施設、農業集落排水処理施設、食品工場排水処理施設等から生じる臭気であり、主に、有機物の好気的発酵・分解処理の際に生じる臭気を想定している。このような有機物の好気的発酵・分解処理の際に生じる臭気ガスGは、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、ジメチルスルフィド(DMS)、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、メチルメルカプタン、揮発性脂肪酸(VFA)、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、テルペン類等の臭気成分を含んでおり、複数の臭気成分、様々な臭質を含む複合臭である。なお、有機物を好気的に発酵、分解処理する施設からの臭気は、家畜のし尿処理施設や嫌気的処理発酵施設の臭気に比べ低濃度で大風量であり、臭気質、臭気濃度、風量等が大きく変動する。
即ち、図1において、堆肥化装置2では、有機廃棄物或いは畜糞等の好気的発酵・分解処理が行われ、臭気ガスGが発生する。この堆肥化装置2では、例えば、集められた食品残渣、剪定枝等の有機物廃棄物または畜糞または下水汚泥等の堆肥化材料に好気性細菌を付着した細菌保持チップを入れ、温度、酸素、湿度等の周囲環状条件を所定に制御することによって、好気的な発酵・分解処理が行われる。なお、好気性発酵による堆肥化は、多種多様な装置が提案されており、例えば、バイオセル方式と呼ばれる密閉型のコンクリート製のハウジング内で堆肥化を行う装置等がある。特に、近年では周辺環境に与える影響、悪臭の問題等から密閉容器や建物内での堆肥化方式が主流となっている。
そして、この堆肥化装置2における好気性発酵・分解処理過程で生じた臭気ガスGが、適宜、ブロワー、ファン等を用いて捕集され、本実施の形態に係る生物脱臭装置10へ圧力風として送り込まれることになる。
なお、堆肥化装置2から排出された臭気ガスGは、生物脱臭装置10へと送込まれる前に、必要に応じて、化学脱臭装置3により臭気濃度を低下させる。
更に、必要に応じて、スクラバー装置4で堆肥化装置2から排出された臭気ガスGに含まれる有害物質や粉塵の除去を行う。スクラバー装置4は、例えば、洗浄集塵装置(粉塵除去装置、ガス洗浄装置)を使用し、臭気ガスG中の粒子を洗浄液や液膜で捕集して分離する。
特に、下水処理場のスラッジから発生する硫黄化合物やアンモニアを含む臭気に対しては、生物脱臭装置10の前段階で、スクラバー装置4によって酸スクラバー処理を行うと、生物脱臭装置10の目詰まり(狭窄、閉塞)を防止し、負荷を軽減できる。
なお、生物脱臭装置10に臭気ガスGを導入する前段階で、水の噴霧により粉塵を捕捉して除去する湿式のスクラバー装置4があると、臭気ガスGが加湿されるから、湿度の高い臭気ガスGをバイオフィルタ21に導入できる。バイオフィルタ21に導入する臭気ガスGの湿気を高くできると、後述するようにバイオフィルタ21の温度変動の抑制にも有効である。
堆肥化装置2から排出され、適宜、化学脱臭装置3やスクラバー装置4を介した臭気ガスGは、ブロワー5によって吸引し加圧されて、生物脱臭装置10に送風される。なお、生物脱臭装置10に臭気ガスGを導くブロワー5は、必要に応じて回転数制御ができるようにインバータ制御されている。したがって、例えば、堆肥化装置2から排出される臭気ガスGの処理量、臭気濃度が極めて少ないとき等には、回転速度を落として省エネルギ運転を行うこともできる。但し、ブロワー5は常に動作させて生物脱臭装置10に空気流を送り込むことにより、生物脱臭装置10のバイオフィルタ21の目詰まり(狭窄、閉塞)を防止する。ブロワー5の能力は、臭気ガスGの処理量、バイオフィルタ21の容積、大きさ等によって決定されるが、本実施の形態の生物脱臭装置10によれば、後述するように圧力損失が少なく、また、経時的な圧力損失の増大も抑制されることから、送風能力が高い高価なものを使用しなくとも、即ち、低能力で小型の送風機でも高い処理量を確保できる。
次に、本発明の実施の形態に係る生物脱臭装置10を実施する全体構成について、図2を参照して説明する。
本実施の形態の生物脱臭装置10は、臭気ガスGを生物的処理によって消化するバイオフィルタ21及びバイオフィルタ21の下部に設けた床材22がハウジングHに収容されてなる脱臭処理部20と、脱臭処理部20を構成するバイオフィルタ21の上部から散水する散水手段30と、散水手段30から散水された水を回収し貯留する受水部41と受水部41の水を散水手段30に供給し循環させる供給路42を構成し、バイオフィルタ21及び床材22を通過した余剰水を回収し散水手段30に循環させる循環手段40とを有する。
本実施の形態の脱臭処理部20は、上方が開放され下面及び左右の両側面が、例えば、強化コンクリート製で形成された箱状のハウジングH内に、支持脚23を介して床材22を配設し、その上に木材チップ21Aを充填してバイオフィルタ21を形成してなる。
ハウジングHの大きさは、臭気ガスGの処理量、目的とする脱臭率等に応じて設計される。例えば、堆肥化施設のトンネル容積の1.5倍〜4倍の容積程度に設定され、圧力損失からすると、後述するようにバイオフィルタ21の高さhは1.5m以上、3.5m以下が好ましい。ハウジングHは、強化コンクリート製に限定されることなく、腐食しにくい材質であればよく、外側に断熱材を使用してもよい。断熱材により微生物の生育環境を良好に維持し、脱臭効率を安定させることも可能である。しかし、本実施の形態では、後述するように、季節変動を問わず安定して脱臭効率を維持できることから、断熱材を使用しなくとも問題ない。
ハウジングHの底部には、ブロワー5によって圧送される臭気ガスGを導入する導入口24が設けられ、ブロワー5の出力からハウジングH底部の導入口24までを繋ぐダクト等の管路等からなる導入路24aを介して、ブロワー5から圧送された臭気ガスGが導入口24から導入される。なお、導入口24及び導入部24aはそこに圧力損失が発生しない程度の大きさである。例えば、ハウジングHの側面の4面のうち、任意の1面の下方に導入口24が設けられる。
そして、コンクリートで区画された空間のハウジングH内では、図3に示すように、床材22を所定の高さに維持するための複数の支持脚23をハウジングHの底面に立設し、それら支持脚23の上に床材22が載せられる。支持脚23は、例えば、柱状または筒状に形成されたコンクリートからなり、床材22の重さ及び散水によって湿潤状態とされるバイオフィルタ21の重圧に耐える構造、配置設計としている。このように、ハウジングHの床面に支持脚23を立設してから、その上に床材22を配置して、床材22を所定高さに保持する構造により、ハウジングHの底部と床材22の間にハウジングHの導入口24aと連通する所定の空間Sが画成される。即ち、支持脚23によってハウジングH底部と床材22とが距離的に離間されて、ハウジングHの底部と床材22の間に所定の空間Sが形成される。このようなハウジングHの導入口24aと連通する所定の空間Sを設けていることにより、ハウジングHの導入口24aから導入された臭気ガスGをハウジングHの底部全体に流通させることができる。
床材22は、このようにハウジングHの底部に立設した支持脚23の上に載せられて、ハウジングH内の横断面全体に敷き詰められ、その上に木材チップ21Aを積載する。
床材22は、例えば、図3に示すように、肉厚を貫通する所定形状の貫通孔22aが複数設けられ、また、側面に肉厚を貫通する複数の溝22bが設けられた所定厚みのコンクリート製のパーツを複数個組み合わせてコンクリートH内に敷設される。
このように床材22には、例えば、円筒形状(断面円形状)の貫通孔22aである通気孔22A及びパーツ周囲に設けた溝22bの組み合わせによって形成される通気孔22Aが設けられていることで、ハウジングHの導入口24aから導入されハウジングHの底部全体に流通された臭気ガスGは、床材22の通気孔22Aを通って、床材22の上に敷設される木材チップ21Aに導入されることになる。なお、通気孔22Aは床材22の全体に亘って分布することで、バイオフィルタ21の面積全体へ臭気ガスGの均一な供給を可能とする。
ここで、本発明者らの実験によれば、上記所定サイズの木材チップ21Aを充填してなるバイオフィルタ21の下部に配置する床材22について、その通気孔22Aの大きさ、密度の制御によって、そこに発生する流体損失を最小に設定し、かつ、臭気ガスの導入量に変動、ばらつきがあっても、所定の流体抵抗によって負荷がかからないようにできることから、そのような床材22の構造について目開き、開口率で特定した。
即ち、床材22に設ける通気孔22Aの開口面積、開口率が大き過ぎると、機械的強度が弱く、強靭な素材を必要とすることからコスト高となる。一方で、開口面積、開口率が低く過ぎても、圧力損失が高く、強力な送風を必要とするからランニングコストが高くなる。
そこで、床材22は通気孔22Aの目開きが20mm〜100mmの範囲内であり、開口率が5%以上、95%以下の範囲内とするのが好ましい。
なお、上記目開き、開口率とは床材22の通気孔22Aの大きさ、密度を表すものである。上記目開きも、例えば、メッシュ状等の縦線と横線が交差して形成された1つの目当たりの開口(空間)における天地幅または左右幅を示し、円形目であれば円孔の直径に相当し、正方目であれば正方形の一辺に相当する。通気孔は円形目または正方目にその形状を特定するものではないが、空気抵抗の小さい形状で、かつ、表面積が広いものであることからすると、断面が円形の円孔、断面が正方形の角孔が好適である。
なお、床材22の目開き、開口率は、ふるい金網の規格に準拠して測定し、床材の平面積をS、床材の目数をM、縦線・横線の線径をdとしたとき、以下の式(B)により目開きを算出し、以下の式(C)により開口率を算出したものである。
目開きA(mm)=S/M−d・・・(B)
開口率ε(%)=(A/A+d)2×100・・・(C)
このように、所定径の木材チップ21Aが敷設される床材22においては、目開きが20mm〜100mmの範囲内であり、開口率が5%以上、95%以下の範囲内とすると、圧力損失が少なく良好な処理効率とし、臭気ガスの導入量に変動、ばらつきがあっても、所定の流体抵抗によって負荷が少なく済む。より好ましくは、目開きが30mm〜90mmの範囲内であり、開口率が10%以上、90%以下である。
そして、図3においては、整流効果を高めるために、また、臭気ガスGの流速による圧変動の影響を少なくするために、複数の通気孔22Aの口径は上方に向かって、即ち、バイオフィルタ21側に向かって徐々に縮径する形状としている。更に、ブロワー5からの臭気ガスGが、ベルヌーイの定理に従って、その流速に影響されないように、通気孔22aの大きさ、形状、開口率の調節によって流速変化が少なくなる調節をしてもよい。
なお、図3においては、床材22の複数の通気孔22Aは、断面円形状、即ち、正面から見て円に形成されているが、本発明を実施する場合には、断面楕円形、断面長円形、断面三角形、断面四角形、断面六角形等であってもよい。流体抵抗の小さい形状が好ましく、例えば、断面が円形、楕円形、長円形、四角形等が好適である
また、ハウジングH、支持脚23及び床材22の構成は、コンクリート製である説明をしたが、本発明を実施する場合には、腐食しにくい材質で所定の強度を確保できれば、他の材質を使用してもよい。
こうして本実施の形態では、ハウジングHの底部に立設した支持脚23の上に床材22を設置し、その床材22の上にバイオフィルタ21を形成する木材チップ21Aを充填する。
このとき、図4に示すように、床材22の上にハウジングHの側壁に沿って囲むように板状の突壁28を設置し、この板状の突壁28によって囲まれた空間に木材チップ21Aを充填するようにしてもよい。これより、床材22の敷設面積に対し、突壁28の突出分だけ、木材チップ21Aを充填してなるバイオフィルタ21の設置面積(底面積)は小さくなる。即ち、バイオフィルタ21が載置される床材22の上面積よりも床材22の上に配置するバイオフィルタ21の底面積を狭くしている。つまり、バイオフィルタ21の側面と床材22の側面が一致することなく床材22の出力側の平面積に対し、バイオフィルタ21下端部の入力側の床面積(平面積)が小さくなっている。
このように、床材22の上にハウジングHの側壁に沿って囲むように板状の突壁28を設け、バイオフィルタ21に対して臭気ガスGが入力されるその入力側領域の面積比を、床材22の上面の面積よりも小さくすることにより、整流効果を高め、ハウジングHの側壁伝いの臭気漏れを抑えることができ、また、バイオフィルタ21の面積全体に対してより均一に臭気ガスGを供給し、バイオフィルタ21の容積に対する処理効率を高めることができる。更に、床材22とバイオフィルタ21の境界での圧力変化が高まることで、バイオフィルタ21に臭気ガスGが導入される入力側の目詰まりを解消しやすい。但し、所定断面積の通気孔22Aを所定の開口率で有する床材22の敷設面積に対し、バイオフィルタ21の設置面積が余りに小さすぎると、即ち、板状の突壁28によってバイオフィルタ21の入り口で床材22を通過した臭気ガスGの流速が大きく制限されることになると、所定の処理量を確保するために圧力損失が大きくなりブロワー5の送付圧力の増大によるコスト高を招くことになる。このため、圧力損失を考慮し、例えば、突壁28の突出長さは150mm〜1000mmの範囲内、より好ましくは、250mm〜600mmの範囲内に設定される。
なお、ここでは、床材22の上でバイオフィルタ21とハウジングHの間に突壁28を設ける説明としたが、バイオフィルタ21自身の内側壁を床材22の位置から上で内側(バイオフィルタ21側)に向かって突出するように成形してもよい。
また、突壁28は、図4(a)に示すように、バイオフィルタ21の充填高さhの位置まで設けなくともよく、図7(a)に示すように、床材22の上面から、例えば、10cm〜20cmの高さ位置までとしてもよい。何れにせよ、ハウジングHの壁面に沿って上昇する臭気ガスGの漏れを防止できればよい。
更に、本発明を実施する場合には、図7(b)に示すように、木材チップ21Aが積載される床材22の載置面とは反対面から下で、例えば、150mm〜1000mmの範囲内の突出長さ、より好ましくは、250mm〜600mmの範囲内の突出長さでハウジングHの側壁から内方に向かって突出する板状の突壁28を設けてもよい。これによっても、バイオフィルタ21に入力される臭気ガスGを整流し、ハウジングHの側壁伝いの臭気漏れを抑えることが可能である。本発明を実施する場合には、図7(b)に示すように、床材22の下から例えば、10cm〜20cmの厚み(上下方向の長さ)で突壁28を設けても良いし、床材22の下空間SにハウジングHの側壁に沿って板状の突壁28或いは複数の支持脚23を設けて、空間Sの容積を縮小させてもよいし、バイオフィルタ21自身の内側壁をハウジングHの内方に向かって突出するように成形してもよい。このようにしても、ハウジングHの壁面に沿って上昇する臭気ガスGの漏れを防止することが可能である。
更に、本実施の形態においては、図2に示すように、ハウジングHの底部には、バイオフィルタ21の上方で散水手段30から散水されてバイオフィルタ21及び床材22を通過(流下)した水を受水部41へと流出させる排水口42が設けられている。ここでは、バイオフィルタ21及び床材22を通過しハウジングHの底部に到達した水(以下、余剰水W1ということもある)は、ハウジングHの底部に所定量以上溜まることなく排水口42から受水部41に流出するように排水口42を所定位置とする設計としている。ハウジングHの底部に貯留する水の量が多いと、昆虫等の生物の繁殖もあり脱臭性能が低下するためである。
しかし、床材22下部の空間Sでは、バイオフィルタ21及び床材22を通過した水がハウジングHの底部に収集されることにより、湿度が高く、ハウジングH下方の導入口24から導入された臭気ガスGの湿度を高めることも可能である。バイオフィルタ21に導入する臭気ガスGの湿気を高くできると、後述するようにバイオフィルタ21の温度変動の抑制にも有効である。
なお、本発明を実施する場合には、ハウジングHの底部に到達した水の流出はハウジングHnの下部の底面に傾斜を付与して水が停留することなく排水口42から受水部41と収集されるようにしてもよい。排水口42を複数設けてもよい
ハウジングHの排水口42から流出した余剰水W1は、排水口42から受水部41までを繋ぐ管路等からなる排水路42aを介して、受水部41で収集され回収される。
この受水部41からは、管路等からなる散水供給路43がハウジングHの上方まで配設され、また、ハウジングHの上方では、散水供給路43に接続する散水手段30を構成する散水管31が配設されている。なお、散水供給路43の途中には、ポンプやバルブが設けられる。
散水管31は、水を散水する必要数の散水ノズル32を有し、ハウジングH内のバイオフィルタ21の上面に略均一に水を散水できる構造となっている。通常、散水は水滴として噴霧される。なお、図1及び図2において、散水ノズル32の向きをバイオフィルタ21側の下方に向けているが、散水ノズル32の向きはそれに限定されることなく、散水ノズル31を上方に向けて噴水させるようにしてもよい。何れにせよ、ハウジングHの上方からバイオフィルタ21に向けて散水することで、散水した水は重力でバイオフィルタ21に落下し、バイオフィルタ21を構成する木材チップ21Aに水分が供給される構造とする。
こうして、受水部41に回収された余剰水W1は散水供給路43によって、ハウジングHの上方からバイオフィルタ21に水を散水する散水手段30としての散水管31に供され、バイオフィルタ21を加湿する散水に使用される。つまり、本実施の形態では、バイオフィルタ21に散水する水には、バイオフィルタ21を通過した余剰水W1を使用しており、散水を循環させている。
更に、本実施の形態の受水部41では、循環手段40に外部から水を補充し散水に供する補充手段として産業用水(工業用水等)を導入する導水部44も接続され、ハウジングHからの排水W1(余剰水W1)に加え、必要に応じてバルブを介し導水部44から新しく補充水W2を取り込めるようになっている。即ち、受水部41では、ハウジングHからの排水W1(余剰水W1)に必要に応じて導水部44 からの補充水W2をまとめることができる。
したがって、受水部41にて散水に使用した余剰水W1及び必要に応じて外部から供給された補充水2がまとめられてポンプで汲み上げられ、散水供給路43を介して散水管31に供給される。そして、散水管31に供給された水は、バイオフィルタ21の上面に向けた散水ノズル31からの散水によって、バイオフィルタ21に供給されることになる。このとき、散水は、間欠的であってもよいし、連続的に行ってもよい。
なお、必要に応じ、工業用水等の水を導入する導水部44には、ごみ、砂、微粒子を濾過するためのフィルタやスクラバ−装置4が設置される。これによって、散水にごみ、砂、微粒子が含まれることなくバイオフィルタ21の詰まりを防止できる。
こうして本実施の形態の生物脱臭装10では、バイオフィルタ21の水分調整、加湿には主に散水手段30から散水されバイオフィルタ21を通過した余剰水W1が用いられ、更に、必要に応じて外部の工業用水等から補充水W2が補われるものであるから、廃水の排出を皆無にしている。即ち、散水を外部へとドレインすることなく、循環させている。
ここで、本実施の形態のバイオフィルタ21の構成について、詳細に説明をする。
本実施の形態のバイオフィルタ21は、例えば、原木(幹、全木、灌木、末木、枝条、剪定枝、根株等)、製材(背板、端材、剥き芯等)、建築解体材、建築資材、梱包資材、合板、集成材、パーティクルボード、廃パレット等をチッパー、シュレッダー、ミル、クラッシャー、ハンマー、パンチング等により切削または破砕して木片とした木材チップ21Aを堆積してなるものである。原木(伐採木、間伐材、小径木を含む)を切削、破砕した原木チップに限定されず、工場残材チップ、林地残材チップ、解体材・廃材チップ等を利用してもよい。即ち、木材チップ21Aは、無垢材チップに限定されず、集成材チップ、MDFチップ、パーティクルボードチップを含んでいてもよい。但し、集成材チップ、MDFチップ、パーティクルボードチップ等は、接着剤や塗料等の不純物が付着するから、微生物環境への影響を考慮すると、それらの含有量は好ましくは、全体の40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下とする。また、木材チップ21は、主に、木材の木部、髄のみで構成されるが、樹皮チップ、樹皮付きチップが混在(好ましくは全体の20重量%以下、より好ましくは、全体の5重量%以下)していてもよい。
そして、この木材チップ21Aは、木材チッパー(ディスク型チッパー等)を利用して、原木、製材、廃材等を刃物で切削した切削チップであってもよいし、シュレッダー、ミル、ハンマー、クラッシャー等を利用して、原木、製材、廃材等を破砕した破砕チップ(ピンチップ、クラッシャーチップ等)であってもよい。
また、木材チップ21Aに使用する木材は、スギ、ヒノキ、アカマツ、ツガ、マツ、イチイ、ネズコ、モミ、モミ、サワラ、アスナロ、ヒバ、イヌガヤ、トウヒ、スプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック等の針葉樹であってもよいし、シラカンバ、シナノキ、ミズナラ、ブナ、シナ、ポプラ、ユーカリ、アカシア、ナラ、イタヤカエデ、センノキ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ミズメ、ミズキ、アオダモ、アオコクタン等の広葉樹であってもよい。
因みに、本発明者らは使用するバイオフィルタ21の微生物担体となる木材チップ21Aの材種を種々変えて、生物脱臭装置10による脱臭効果の評価試験を行っている。そのときの結果を表1に示す。
Figure 0006445664
表1に示すように、木材チップ21Aとして、針葉樹(スギ・ヒノキの混合)の間伐材・製材端材の破砕品、広葉樹散孔材(シラカンバ・シナノキの混合)の間伐材・製材端材の破砕品、広葉樹環孔材(ミズナラ)の間伐材・製材端材の破砕品、建築廃材の破砕品、剪定枝の破砕品の5種を使用して、表1に示した生物脱臭装置10の仕様、試験条件で臭気ガスGの脱臭効果の試験を行った。
ここで、表1に示した数値は、脱臭効果を評価するためのモニターによる臭気の官能評価の結果である。
脱臭効果の評価には、一般の人から募った12名(以下、モニターと呼ぶ)に源臭気の臭気ガスGとバイオフィルタ21を通過した後の処理空気をそれぞれ1時間間隔で5回嗅いでもらい、臭いの強さを表1下段に示した6段階(0:無臭、1:におうが何のにおいか分からない、2:気にならないにおい、3:気になるにおい、4:強いにおい、5:非常に臭い、強烈なにおい)で官能評価してもらった。なお、モニター12名は6名ずつの2グループに分け、片方のグループでは源臭気の臭気ガスG、処理空気の順に臭いを嗅いでもらい、他方のグループでは処理空気、臭気ガスGの順で臭いを嗅いでもらって官能評価を行っている。上記の表1に示した数値は、モニター12名による臭気評価の平均値である。但し、平均値を算出する際には、最高値と最低値を除いて10名の平均値の整数としている。また、ここでの臭気評価は、生物脱臭装置10に臭気ガスGの導入を開始してから、1カ月後、3カ月後、1年後の3回行っている。
表1に示すように、木材チップ21Aが何れの材種のものあっても、臭気ガスGの導入を開始してから1年経過後も、何のにおいか分からない(1)、または、気にならないにおい(2)との評価であり、高い脱臭効果が維持されていた。つまり、木材チップ21は、間伐材・製材端材からの破砕品であっても、建築廃材の破砕品であっても、剪定枝の破砕品であっても、高い脱臭効果が長く続くことが分かる。
特に、本発明者らの実験研究によれば、マツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹からなる木材チップ21Aでは樹脂分を多く含むために、より長期間の脱臭効果が持続し、バイオフィルタ21としての寿命が高くなることを確認している。一方で、広葉樹の木材チップ21Aでは、針葉樹の木材チップ21Aと比較して、臭気ガスGの分解に有効な微生物の馴養、微生物叢(バイオフィルム)の形成がはやく、早い立ち上がりを示し、初期のバイオフィルタ21の脱臭能力が高いことを確認している。
なお、工場残材、解体残材等の廃材を木材チップ21Aとして再利用する際には、通常、切削または破砕処理の前後で異物除去の処理がなされる。
そして、本実施の形態の木材チップ21Aでは、木材の切削または破砕後に、例えば、振動式篩、ロール式分級機等で所定のサイズ(粒度)に分級(選別)された木材チップが使用される。
このような木材チップ21Aは、酸性やアルカリ性に対して耐性があり、劣化や型崩れし難く、形状保持性が高い。このため、使用による経時的な圧力損失の増大、脱臭効率の低下を抑えることができる。
木材チップ21の大きさは、例えば、木材の繊維方向の長さが10mm〜300mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が5mm〜30mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内である。
ここで、木材チップの木材の繊維方向の長さが10mm〜300mmの範囲内とは、木材の木目の長さ方向を木材チップの長さとしたとき、木材チップの長さが10mm以上、300mm以下の範囲内であることを示す。
また、木材チップの木材の接線方向の幅が5mm〜30mmの範囲内とは、木材の年輪円に接する接線方向を木材チップの幅としたとき、木材チップの幅が5mm以上、30mm以下の範囲内であることを示す。
更に、木材チップの木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲とは、木材の年輪の放射方向を木材チップの厚みとしたとき、木材チップの厚みが4mm以上、10mm以下の範囲内であることを示す。
但し、例えば、MDFチップ、PBチップ等、その木材の方向の判別が困難である場合は、木材チップの長辺方向を木材チップの長さとし、その長辺方向に直角な方向を木材チップの幅とし、その長さ及び幅に対して垂直な方向を木材チップの厚みとする。
切削チップや破砕チップでは、木材の繊維方向の最長幅を木材チップ21Aの長さ、木材の接線方向の最長幅を木材チップ21Aの幅、木材の半径方向の最長幅を木材チップ21Aの厚さとする。また、木材の繊維方向、接線方向、半径方向の判別がつかないMDFチップ、PBチップ等については、木材チップ21Aの最長辺を長さ、長辺に直角な方向の最長幅を幅、長辺及び幅に垂直な方向の最長幅を木材チップ21の厚みとする。
上述したような木材チップ21のサイズによって、嵩密度150〜500kg/m3の範囲内とする充填が可能である。しかし、木材の原料や樹種、破砕または切削の処理手段・機構の相違により、木材チップの形状は一定の形状でなくバラつきがありしかも複雑な形状を有することから、上記数値は、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
ここで、本発明者らは、バイオフィルタ21を構成する木材チップ21A群のサイズを種々変えて、脱臭効果の評価試験を行っている。そのときの結果を表2に示す。なお、表2に示す木材チップ21Aは、木材チップ21aの長さ寸法(木材の繊維方向)で表現したものである。
Figure 0006445664
ここでも、表2に示した生物脱臭装置10の仕様、試験条件で上述と同様に臭気ガスGの脱臭効果の試験を行っており、表2に示した数値は、上述した12名のモニターによる臭気の官能評価(平均値)の結果である。なお、臭気評価は、生物脱臭装置10に臭気ガスGの導入を開始してから、1カ月後、3カ月後、1年後、3年後の4回行った。
表2に示すように、木材の長さが10mm以上、100mm以下の木材チップ群では、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後の評価は気にならないにおい(2)、3カ月後の評価は何のにおいか分からない(1)、更に、1年後の評価も何のにおいか分からない(1)と高い脱臭効果が長期間持続した。また、木材の長さが150mm以上、300mm以下の木材チップ群では、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後の評価は気にならないにおい(2)、3カ月後、1年後及び3年後の評価も何のにおいか分からない(1)とより高い脱臭効果が長期間持続した。ここで、このような木材の長さが10mm以上、300mm以下の木材チップについては、例えば、その幅が5mm〜30mmであり、その厚さが4mm〜10mmであった。
これに対し、木材の長さが10mm未満の木材チップ群では、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後及び3カ月後の評価は気にならないにおい(2)であるが、1年後や3年後の評価は気になるにおい(3)または強いにおい(4)であり、臭気ガスGの導入を開始してから1年後には脱臭効果が明らかに低下した。なお、このような木材の長さが10mm未満の木材チップは、例えば、その幅が1〜10mm程度であり、その厚さが1mm〜5mm程度であり、所謂チップダストと称される木材チップが含まれていた。
これは、木材チップ21Aのサイズ(粒子径)が小さいことで臭気ガスGの流路が小さいから、微生物膜(バイオフィルム)や微生物による臭気成分の分解により生じた分解物(代謝産物)の堆積等によって目詰まり(狭窄、閉塞)が生じやすくなるためと考えられる。木材チップ21Aが部分的に目詰まりすると、臭気ガスGの通り道が限定する偏流が生じ、臭気ガスGの臭気成分の分解に必要な木材チップ21Aとの接触量が減少し、バイオフィルタ21全体が均一に効果的に利用されなくなると思われる。
一方、木材の長さが400mm以上、700mm以下の木材チップ群では、臭気ガスGの導入を開始してから1年後は気になるにおい(3)であり、臭気ガスGの脱臭効果は低いものであった。なお、このような木材の長さが400mm以上の木材チップは、例えば、その幅が20mm〜50mm程度であり、その厚さが5mm〜20mm程度であった。
これは、木材チップ群のサイズが大きいことで臭気ガスGの流路が大きくなり、臭気ガスG中の臭気成分と木材チップ21Aとの接触率が低下したり、バイオフィルタ21全体で木材チップ21Aの表面積が小さいことで、保水量及び臭気成分の分解に有効な微生物量が少なかったりするためであると考えられる。
また、木材の長さが150mm以上、300mm以下の木材チップを使用するも、その容積量をバイオフィルタ21全体の80%とし、残りの20%容積に木材の長さが10mm未満木材チップを混入していると、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後及び3カ月後の評価は気にならないにおい(2)であるが、1年後の評価は気になるにおい(3)であり、脱臭効果の持続性が低かった。
これは、小径の木材チップ(木材の長さが10mm未満)と大径の木材チップ(木材の長さが150mm以上、300mm以下)の取合わせにより、充填密度が増して、臭気ガスGの流路が小さいことで目詰まりや臭気ガスGの偏流が生じやすくなり、臭気ガスGの臭気成分の分解に必要な木材チップ21Aとの接触量が減少し、バイオフィルタ21全体が均一に効果的に利用されなくなるためであると考えられる。
このように、木材チップ21については、チップダスト、パーティクル等のようなその大きさが小さすぎる群集では、目詰まり生じ難くなり、一方で、大きさが大きすぎる群集でも、バイオフィルタ21が所定の嵩密度とならず、有効な脱臭効果を発揮できない。
そこで、例えば、木材の繊維方向の長さが10mm〜300mmの範囲内であり木材の接線方向の幅が5mm〜30mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内である木材チップ21Aの群集であれば、目詰まり生じ難く、バイオフィルタ21全体にむらなく臭気ガスGを通過させることができ、また、高表面積により保水性及び微生物の保持性も良く、脱臭効果の持続性が向上する。即ち、木材の原料の相違を問わず、狭窄、閉塞、目詰まり生じ難く圧力損失の増大が少ない最適な流路サイズを形成し高い脱臭効果の持続性を確保できる。
なお、より好ましくは、木材チップ21のサイズが、木材の繊維方向の長さが150mm〜300mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が5mm〜25mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内であり、このサイズの木材チップが80質量%以上であると、目詰まりのし難い通路を形成する最適な条件が得られ易い。即ち、木材チップ群のサイズ分布を見たときに、木材の原料や樹種、破砕または切削の処理手段・機構の相違がサイズ分布に反映されるも、木材の繊維方向の長さが150mm〜300mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が5mm〜25mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内である木材チップサイズの木材チップが全体の80質量%以上あれば、脱臭効果の持続性が高いバイオフィルタを構成する木材チップとして安定した特性を得ることが可能である。
このような所定サイズの木材チップ21A群については、例えば、切削または破砕後の木片の篩分けによって入手できる。通常、木材チップの篩分けは、篩(スクリーン)を使用し、篩を振とうさせて分級される。
そして、上記所定サイズの木材チップ21A群については、例えば、目開き60mmの篩を通過(パス)し、目開き10mmの篩を通過(パス)しない木材チップ群のサイズとして入手可能である。例えば、篩の目開きが60mmを通過したアンダーサイズの木材チップを得て、次にこの目開きが60mmの篩を通過したアンダーサイズの木材チップを、更に、目開きが10mmの篩にかけ、目開き10mmを通過しないオーバーサイズの木材チップを得る。こうして、目開きが60mmの篩を通過したアンダーサイズであって、目開き5mmの篩を通過しないオーバーサイズの木材チップを得て、所定寸法の木材チップ21を得ることが可能である。なお、篩分けは、篩が積み重ね構造に設計されているふるい振とう機で分級してもよい。また、目開きとは、縦線と横線が交差して形成された1つの目当たりの開口(空間)における天地幅または左右幅を示すが、ここでは、円形目(円孔)または正方目(角孔)の篩を使用した。目開きが60mmの篩は、円形目の場合には、円孔の直径が60mm、正方目の場合には、正方形の一辺が60mmである。目開きが10mmの篩は、円形目の場合には、円孔の直径が10mm、正方目の場合には、正方形の一辺が10mmである。しかし、木材の原料や樹種、破砕または切削の処理手段・機構の相違により、木材チップの形状は一定の形状でなくバラつきがありしかも複雑な形状を有することから、上記篩分けによって、必ずしも一定の寸法形状のサイズの木材チップ21A群を得ることができるとは限らない。より好ましくは、篩分けにより目開き40mmの篩を通過(パス)し、目開き20mmの篩を通過(パス)しない木材チップである。
ところで、このような木材チップ21Aを床材22の上に充填して所定の嵩密度でバイオフィルタ21を構成するのであるが、床材22の通気孔22aのサイズの選択によっては、木材チップ21Aが床材22の通気孔22aを埋めてしまう恐れがある。
そこで、本発明を実施する場合には、図4(b)に示すように、床材22の床面上に粗いサイズの木材チップ21bを敷設してから、例えば、上述したような木材の繊維方向の長さが10mm〜300mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が5mm〜30mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内である細かい木材チップ21aを充填することも可能である。
例えば、粗いサイズの木材チップ21bとしては、木材の繊維方向の長さが350mm〜700mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が10mm〜40mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが5mm〜20mmの範囲、より好ましくは、木材の繊維方向の長さが400mm〜500mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が10mm〜80mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが5mm〜50mmの範囲内である木材チップ21bが使用できる。
このように、床材22の通気孔22Aに細かいサイズの木材チップ21aが落下しないように粗いサイズの木材チップ21bを敷設してから細かいサイズの木材チップ21aを充填していくようにすることで、圧力損失の緩和や、バイオフィルタ21下部の圧密による通気路の狭窄も緩和でき、脱臭効率の向上も可能である。なお、圧力損失の軽減効果により、臭気ガスGの送風に強力な送風を必要としないから、ブロワー5のランニングコストを下げることも可能である。
なお、このような粗い木材チップ21bは細かい木材チップ21aの容積の5%以下で充填される。
こうして木材チップ21A(以下、木材チップ21aと木材チップ21bとを特段区別しないときにはまとめて木材チップ21Aと記すことがある。)で構成されるバイオフィルタ21に対しては、木材チップ21Aの乾燥を防止してバイオフィルタ21による生物的処理の活性を維持するために、散水手段30からの散水により加湿を行いバイオフィルタ21を湿潤状態とする。即ち、木材チップ21Aの水分が少ないと、微生物の繁殖が抑制され、また、木材チップ21Aにおいて臭気ガスG中の臭気成分を捉えることができないために脱臭作用が低減することから、ハウジングH内のバイオフィルタ21では散水手段30からの散水により湿潤状態を維持させる。
ここで、本発明者らは、微生物担体となる木材チップ21Aからなるバイオフィルタ21について、更に、臭気成分の水分への溶解、吸着や微生物環境を最適化する条件について究明したところ、散水量の調節によって木材チップ21aの含水率を制御すると、高い脱臭効果が得られその効果も持続することが判明した。木材チップ21aの含水率と脱臭効果の関係について評価試験を行ったときの結果を表3に示す。
Figure 0006445664
ここでは、木材チップ21aを散水量の調節によって20%〜220%まで各含水率に調節してそれを維持し、表3に示した生物脱臭装置10の仕様、試験条件で臭気ガスGの脱臭効果の試験を行った。
表3に示した数値も、上述した12名のモニターによる臭気の官能評価(平均値)の結果である。臭気評価は、生物脱臭装置10に臭気ガスGの導入を開始してから、1カ月後、3カ月後、1年後、3年後の4回行った。
木材チップ21aの含水率については、木材チップ21aが各含水率に維持されているか定期的に含水率の測定を行い、各含水率に維持されるように散水量を調節して管理した。
測定に際しては、所定量の木材チップ21aをバイオフィルタ21から採取し、乾燥の前後で重量を測定して含水率を求めている。
このときの木材チップ21aの含水率は、水分を含んでいない状態の木材チップ21Aの重量(全乾重量、ドライベース)に対する水分重量の割合を表すものであり、以下の式(A)により含水率を求めている。
含水率(%)=(乾燥前の重量−全乾重量)/全乾重量×100・・・(A)
なお、全乾重量は、105℃で、重量の変化が無くなるまで乾燥させた状態の値を用いた。
表3に示すように、木材チップ21aの含水率が150%以上であると、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後の評価は気になるにおい(3)、または、気にならないにおい(2)であるが、3カ月後の評価は、におうが何のにおいか分からない(1)であった。また、1年後の評価においても、におうが何のにおいか分からない(1)であり、更に、3年後においても、気にならないにおい(2)であり、高い脱臭効果が長期間維持された。
これに対し、木材チップ21aの含水率が150%未満であると、脱臭効果に劣っていた。即ち、木材チップ21の含水率が120%では、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後であっても評価は強いにおい(4)であり、3カ月後の評価でも、気になるにおい(3)であり、1年後の評価は強いにおい(4)であった。
また、木材チップ21aの含水率が80%以下であると、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後であっても評価は強いにおい(4)、または、非常に臭い、強烈なにおい(5)であり、3カ月後、1年後、3年後の評価においても気にならなるにおい(3)、強い匂い(4)、または、非常に強い匂い、強烈な臭い(5)と脱臭効果が得られなかった。
したがって、木材チップ21aの含水率を150%以上に維持することで、高い脱臭効果を3年以上も持続させることができる。本発明者らの実験によれば、より好ましくは、160%以上であり、更に好ましくは、180%以上である。
そして、本発明者らの実験研究では、木材の特性から木材チップ21aの含水率には上限があり、その上限値は木材チップの樹種の特性等によって決定されるが、最大でも300%程度である。
なお、散水手段30からの散水によって木材チップ21aの含水率を150%以上、300%以下に維持することで、高い脱臭効果が持続するのは、木材チップ21aの保水性によって臭気成分の水分への溶解、吸着や微生物環境が最適化されるためと推測される。特に、含水率を150%以上、300%以下の範囲内とする木材チップ21aでは、周囲に厚い水膜が形成され、微生物活性を高くできるうえ、気体が液相に溶解されやすくて吸着されやすくなっている可能性がある。更に、このような厚い水膜によって臭気成分の濃度変動に対して、また、臭気成分の分解により生じる分解物の生産に対してもpH緩衝作用が高く、pHの変動が抑制されるものと推測される。そして、このようにpHの変動が抑制され、pHが中性域に維持されることで、微生物活性が失活し難く、複数種の微生物群の活性が維持され多種の臭気でも対応することができるものと思われる。即ち、多種の臭気に対応可能な微生物群の生育にとって最適な環境に維持することができると考えられる。
こうして、本実施の形態では、散水手段30からの散水によって木材チップ21aの含水率を150%以上、300%以下に維持する。
なお、散水量については、木材チップ21aの含水率を150%以上、300%以下に維持する散水量とされるが、バイオフィルタ21の上層、下層を問わずバイオフィルタ21全体で木材チップ21a,木材チップ21bの含水率が150%以上、300%以下に維持されるものとする。
ここで、更に本発明者らは、高い脱臭効果を持続するための条件について究明したところ、本実施の形態では、受水部41にて散水に使用した余剰水W1及び必要に応じて外部から供給された補充水W2がまとめられてポンプで汲み上げられ、散水供給路43を介して散水管31に供給されて散水されるが、このときの散水に使用する水の条件によって、脱臭性能が変動することが判明した。
即ち、散水手段30で散水させる水について、表4に示すように、ハウジングHから余剰水W1として排水されて受水部41で回収され、再び散水として利用される水を循環水W1とし、導水部44から補充される水を補充水W2としたときに、単位時間当たりの一定の散水量について散水として使用する水の循環水W1と補充水W2の割合によって脱臭性能に相違がみられた。散水に使用する水の条件と脱臭効果の関係について評価試験を行ったときの結果を表4に示す。
Figure 0006445664
ここでは、散水手段30で散水させる水について、循環水W1と補充水W2の割合を調節して表4に示した生物脱臭装置10の仕様、試験条件で臭気ガスGの脱臭効果の試験を行った。
表4に示した数値も、上述した12名のモニターによる臭気の官能評価(平均値)の結果である。臭気評価は、脱臭装置10に臭気ガスGの導入を開始してから、1カ月後、3カ月後、1年後、3年後の4回行っている。
表4に示すように、単位時間当たりの一定の散水量を100容積%としたとき散水用の水が循環水W1100容積%からなるか、または、外部から補充水W2を取り入れたとしても、散水用の水が容積比で循環水W1/補充水W2≧7/12であると、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後の評価は気になるにおい(3)、または、気にならないにおい(2)であり、3カ月後の評価は、におうが何のにおいか分からない(1)であった。また、1年後の評価においても、におうが何のにおいか分からない(1)、または、気にならないにおい(2)であり、更に、3年後においても、におうが何のにおいか分からない(1)、または、気にならないにおい(2)であり、高い脱臭効果が長期間維持された。
これに対し、散水用の水を循環させていなかったり(循環水W1:補充水W2=0:10)、散水用の水が容積比で循環水W1/補充水W2<7/12であると、脱臭効果に劣っていた。即ち、0/10≦循環水W1/補充水W2<7/12では、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後であっても評価は強いにおい(4)であり、3カ月後の評価でも、強いにおい(4)であった。
したがって、単位時間当たりの一定の散水量を100容積%としたとき散水手段30で散水させる水Wは循環水W1を約36容積%以上、補充水W2を64容積%以下とすることより、高い脱臭効果を3年以上も持続させることができる。
これは、バイオフィルタ21を通過した水には臭気分解に有効な微生物が存在し、かかる微生物を含んだ循環水W1が外部へ排出(廃水)されることなく、散水として再利用されることで、バイオフィルタ21に散水される水には、有効な微生物が含まれることより、バイオフィルタ21の微生物量が維持され、また、微生物叢の偏りが防止されてバイオフィルタ21全体に微生物叢が均一に分布し、バイオフィルタ21全体が効果的に利用されるためと考えられる。また、それによって、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスGに対する追従性、応答性も高くなるものと考えられる。特に、循環水W1に対して、補充水W2による希釈を少なくすることで、つまり、散水に使用する水に循環水W1の割合が高いと、高濃度で有効な微生物がバイオフィルタ21に散水されるから、バイオフィルタ21の高い微生物量、微生物活性が維持され、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスGに対しても持続して高い脱臭効果を上げることができる。また、このような散水の循環によって、pHの上昇を招く臭気成分(アンモニアイオン等)と、pHの低下を招く臭気成分の分解物(硝酸イオン等)とがバランスされてpHの中性域が維持され、高い脱臭効果を持続できたものと推測される。
こうして、本実施の形態では、単位時間当たりの一定の散水量を100容積%としたとき、散水手段30で散水させる水を容積比で、0/10≦:補充水W2/循環水W1≦12/7とする。即ち、受水部41では散水に使用しバイオフィルタ21を通過した余剰水W1(循環水W1)に、必要に応じて散水に使用する水の64容積%以下で外部から補充水W2を補充し、散水手段30から散水としてバイオフィルタ21に供給される。
なお、このような生物脱臭装置10では、ブロワー5からの臭気ガスGが導入される導入路24a及び余剰水W1が排出される排水路42a及び受水部41を含め、ハウジングHの底部では臭気ガスGが外部に漏れない密閉系とする一方で、バイオフィルタ21を通過して脱臭された空気が排出されるハウジングHの上方は一般的に開放される。天井を設けたハウジングHでは、脱臭された空気が大気中へ放出可能に開口を設けることになる。この場合、散水管31等を天井に埋設し、天井に散水ノズル31を配設してもよい。
このような生物脱臭装置10の設置は室内でも屋外でもよく、屋外に設置する際には、必要に応じて、ハウジングH内のバイオフィルタ21に対して雨の浸入や直射日光の照射を防止するために、散水管31の上方にハウジングHを覆うためのテント地等の屋根を設けてもよい。また、ハウジングHは地中への埋設型としてもよい。
なお、本実施の形態の生物脱臭装置10は、コンピュータ制御が望ましい。
主な情報管理のみを取り上げると、例えば、ブロワー5の送付量、送付圧の情報を検出し、それをコンピュータCOMPに入力する。また、コンピュータCOMPには、バイオフィルタ21の上の空気放出側の圧力及びバイオフィルタ21の内部温度の情報がセンサで検出され、それが入力される。更に、コンピュータCOMPには、人為的に測定した木材チップ21の含水率の情報が入力されて管理され、それをもとに、散水手段30で噴霧する水量が決定される。更に受水部41の水量についても、それが検出され、散水手段30で噴霧する水量をもとに、導水部44からの水量を決定し、それをコンピュータCOMPの入力としている。そして、受水部41に貯留した水を散水手段30まで揚水するポンプ、バルブ、流量計や、外部からの水を取り入れる導水部44に配設するバルブ等についても、その駆動がコンピュータCOMPによって制御され、散水手段30からの散水量の調節を可能とする。通常、散水用のポンプはタイマー制御される。また、バイオフィルタ21上方で臭気濃度がセンサで検出され、それがコンピュータCOMPに入力される。生物脱臭装置10に臭気ガスGが導入されるその入り口で臭気ガスGの圧力、温度、臭気濃度等を検出し、コンピュータCOMPに入力してもよい。
こうして、木材チップ21Aの含水率の情報は、主に、散水手段30の散水量、即ち、ポンプ、バルブの駆動制御に使用される。また、バイオフィルタ21上の空気放出側の圧力及びブロワー5の送付量、送付圧の情報は、主にブロワー5の制御に使用される。臭気濃度の情報を含めこれらの情報はモニターによる日程管理情報として制御及び管理し、処理記録を残して、自治体の諸規制に対する適合性の証明にも使用できる。なお、図1における化学脱臭装置3、スクラバー装置4も独自に監視及び運転される。
また、木材チップ21Aの充填高さhについて目視の監視によって、所定量を下回った際には、新しい所定の木材チップ21Aが補充される。
更に、ブロワー5の送付圧及びバイオフィルタ21の上の噴出圧力から算出される圧力損失が管理され、圧力損失が所定量を超えた際には、ブロワー5の送付量、送付圧を制御する。更に、木材チップ21Aのサイズ径の目視の監視により、細粒物が増え、圧力損失が大となっている場合には、篩分けを行って細粒物を排除し、新しい木材チップ21Aを補充する。
以下、本実施の形態の生物脱臭装置10を具体化した実施例を説明する。
本実施例においては、家庭ごみ、都市ごみ等の堆肥化施設で発生する臭気ガスGを対象とし、コンクリート製のハウジングH内の底部に、図3に示すように、支持脚23を立設し、その上に、目開きが20mm〜100mmの範囲内であり、開口率が5〜95%の範囲内である床材22を設置し、そして、床材22の上に、例えば、木材の繊維方向の長さが350mm〜700mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が10mm〜80mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが5mm〜50mmの範囲内である木材チップ21bを敷設してから、例えば、木材の繊維方向の長さが10mm〜300mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が5mm〜30mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内である木材チップ21aを充填することによりバイオフィルタ21を形成し、脱臭処理部20を構成した。
このとき、ハウジングH底部と床材22底面との離間距離は、例えば、10cm〜50cm、好ましくは20cm〜40cmに設定され、粗い木材チップ21bは、細かい木材チップ21aの容積の10%以下で充填される。
なお、家庭ごみ、都市ごみ等の堆肥化施設では、そこで処理される廃棄物は常に一定の性状でなく、毎回異なる種々雑多な原料が発酵・分解されるから、そこで発生する臭気ガスGは複合臭であり、更に、その臭気濃度や臭気質が変動するものである。また、堆肥の切り返しを行う堆肥化施設では、堆肥の切り返しによる濃度変動も大きくなる。
このとき、本実施例では、図7(a)に示したように、床材22の上に、突出長さが150mm〜1000mmの範囲内、好ましくは、250mm〜600mmの範囲内の板状の突壁28がハウジングHの4面の側壁に沿って床材28の上面から所定高さで設置され、そのような突壁28を設けたハウジングH内の空間に、所定サイズの木材チップ21Aを充填した。即ち、床材22の上では、突壁28によってバイオフィルタ21に向かってハウジングH側の側壁が突設した構造となっている。
図2に示したように、ハウジングHの底部には、導入路24aを介してブロワー5に接続している臭気ガスGの導入口24が設けられ、また、排水路42aを介して受水部41に接続しバイオフィルタ21及び床材22を通過した余剰水W1が排水される排出口42が設けられている。
受水部41には、ハウジングHの上方に配設した散水ノズル32を有する散水管31に接続する管路からなる散水供給路43が接続し、また、必要に応じて産業用水(工業用水等)の水を導入するための導水部44が接続されている。散水供給路43には、バルブ及びポンプが設けられ、導水部44にもバルブが設けられている。
本実施例に係る生物脱臭装置10の仕様、設計は表5に示す通りである。なお、本実施例では、散水手段30は間欠的な運転であり、タイマー制御された散水用ポンプにより間欠的に散水を行った。
Figure 0006445664

生物脱臭装置10の設計に際しては、都市ごみ等の堆肥化施設で発生する臭気ガスG(源臭)の発生量から所望とする処理風量(m3/分)、処理速度(mm/秒)を決定し、その処理風量(m3/分)、処理速度(mm/秒)から、負荷を超えることのない所定の処理能力を確保するバイオフィルタ21の設置面積(断面積)を設定した。例えば、臭気ガスGが見掛風速で15〜30mm/秒、より好ましくは、20〜25mm/秒となるようにバイオフィルタ21の断面積、容積等を決定する。なお、見掛速度は、処理する臭気ガスGの流量(mm3/秒)をバイオフィルタ21の断面積(mm2)で除算することにより求められる。
ここで、本発明者らは、低コストで長期間安定した脱臭性能を確保するために、更に、木材チップ21A(木材チップ21a,木材チップ21b)を充填してなるバイオフィルタ21の層の厚み、即ち、木材チップ21Aの充填高さ(積付高さ)hについて、究明した。バイオフィルタ21の充填高さhについて、初期設定を1.0m〜3.5mとして実験を行い、脱臭効果の評価試験を行った。そのときの結果を表6に示す。
Figure 0006445664
表6に示した数値も、上述した12名のモニターによる臭気の官能評価(平均値)の結果である。臭気評価は、生物脱臭装置10に臭気ガスGの導入を開始してから、1カ月後、3カ月後、1年後、3年後の4回行った。
表6に示したように、木材チップ21Aの充填高さhが1.5m以上、3.0m以下であると、臭気ガスGの導入を開始してから1カ月後の評価は気にならないにおい(2)であり、3カ月後、1年後、3年後の評価においても気にならないにおい(2)または何のにおいか分からない(1)と高い脱臭効果が長期間維持されていた。
特に、木材チップ21Aの充填高さが2.0m以上、2.5m以下であると高い脱臭効果の持続性が高かった。
これに対し、木材チップ21Aの充填高さが1.4m以下であると、1年経過後は、気になるにおい(3)または強いにおい(4)の評価であり、特に1.0m以下では、常に、強いにおい(4)または、非常に臭い、強烈なにおい(5)の評価で、脱臭効果が得られなかった。
これは、臭気ガスGの臭気成分と木材チップ21Aとの接触量が十分に得られなかったためである。
また、木材チップ21Aの充填高さhが3.5m以上であっても、3か月以降は気になるにおい(3)の評価であり、脱臭効果の持続性が低下した。
これは、木材チップ21Aの充填高さhが高すぎることで、バイオフィルタ21の下部で圧密が高く、臭気ガスGの偏流が生じやすいために、臭気ガスGの臭気成分の分解に必要な木材チップ21Aとの接触量が減少し、バイオフィルタ21全体が均一に効果的に利用されなくなるためであると考えられる。
したがって、バイオフィルタ21を構成する木材チップ21Aの充填高さhが、1.5m〜3.0mの範囲内の高さであれば、高い脱臭効果を長期間維持される。より好ましくは、木材チップ21Aの充填高さhが2.0m〜2.5mの範囲内である。
そして、本実施の形態においては、木材チップ21Aを充填したときの嵩密度は150〜500Kg/m3の範囲内が好ましい。これにより、流路(通気路)の目詰まりが生じ難く、経時的な圧力損失の増大も少ない。
即ち、嵩密度が高すぎると、圧力損失が大きいから臭気ガスGを送風するコストも高くなる。また、目詰まりが生じやすく、臭気ガスGの偏流を招くから脱臭効果の持続性が低下する。一方で、嵩密度が低すぎても、臭気成分と木材チップ21Aとの接触量が低下するから脱臭効果が低下する。木材チップ21Aによる嵩密度は150〜500Kg/m3の範囲内であれば、圧力損失を抑えてコストを抑えることができ、また、高い脱臭効果の持続性が得られる。より好ましい嵩密度は、200〜400Kg/m3の範囲内である。
そこで、本実施例では、バイオフィルタ21を構成する木材チップ21A(木材チップ21a,木材チップ21b)の初期の充填高さhを2.0mに設定した。
なお、本発明者らの実験研究では、経時的に、微生物による木材チップ21Aの消費、代謝、木材チップ21Aの劣化により木材チップ21Aが細片化、縮小し、バイオフィルタ21の体積が低下する。初期設定の充填高さhが2mに対し、使用により1.7mを下回った際には、新たに、例えば、木材の繊維方向の長さが10mm〜300mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が5mm〜30mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内である木材チップ21aの補充をし、充填高さhを2mに回復させることで、脱臭効果を低減させることなく3年以上もの長期間の高い脱臭効果を維持できることを確認している。
そして、本実施例では、散水手段30からの散水によって、木材チップ21aの含水率を150%以上、300%以下に維持した。
なお、木材チップ21aの含水率については、周囲(雰囲気環境)の湿度条件の変化や、木材チップ21aの細片化、縮小によってもその保水量が変化することから、定期的に木材チップ21aの含水率の測定を行い、木材チップ21aの含水率が150%以上、300%以下に維持されるように散水量を調節している。
このように構成された生物脱臭装置10では、ブロワー5の駆動により、堆肥化装置2からの臭気ガスGが、導入路42aを介して導入口42からハウジング底部の所定容積の空間Sに拡散、流通すると共に、床材22の通気孔22Aを通ってバイオフィルタ21内へと上昇する。バイオフィルタ21に入力される前に床材22の所定径の通気孔22Aを通過するから、導入口42から導入された臭気ガスGが整流されてバイオフィルタ21に入力されることになり、臭気ガスGの通気抵抗を緩和して圧力損失を抑えることができる。
このとき、散水手段30からの散水によって、バイオフィルタ21の木材チップ21aの含水率を150%以上、300%以下に維持するようにし、バイオフィルタ21内は湿潤状態に維持する。装置の立ち上げ初期では、導水部44から受水部41に新鮮な水が取り入れられ受水部41内の水がポンプによって散水供給路43を介して散水管31まで汲みあげられ、散水ノズル32からバイオフィルタ21に散水される。そして、バイオフィルタ21及び床材22の通気孔22aを通過してハウジングH底部に到達した余剰水W1は、所定容積の空間S内で所定量以上に溜まることなくハウジングH底部の排水口42から排水路42aを介して受水部41で回収される。受水部41で回収され貯留した水は、外部に廃水されることなく散水のタイミングでポンプによって散水供給路43から散水管31まで汲みあげられ、再び散水として使用される。木材チップ21aの含水率を150%以上、300%以下に維持する散水のタイミングで、受水部41に回収された余剰水W1が散水管31まで汲みあげられ散水されるが、受水部41での回収量が少ないときには、必要に応じ導水部44から水を補充する。特に、本実施例では、散水に使用する水は、0/10≦:補充水W2/循環水W1≦12/7に調節している。
散水手段30からの散水によって、湿潤状態に維持されているバイオフィルタ21では、木材チップ21Aに適度な水分が保持されていることで、微生物が繁殖し、その活性が維持される。
特に、自然界の資源である木材チップ21Aは、有機物であり水分保持機能にも優れることで、適度な水分と温度環境下での放置により、特定の菌を接種、植種したり、微生物活性物質を添加したりしなくとも、臭気ガスGを通過させていると、直ぐにその臭気成分の分解に関与する微生物が繁殖し、バイオフィルタ21として脱臭機能を発揮させることができる。そして、このような木材チップ21Aでは、初期から多種の微生物を多く保有し、或いは、複数種の臭気成分の分解に直接的または間接的に関与する有効な多種の微生物が生息し易い環境にあるものと推測され、木材チップ21Aから構成されるバイオフィルタ21では好気的環境、嫌気的環境の両方が存在し、脱臭に直接的または間接的に関与する微生物も好気性微生物に限られず、嫌気性微生物も寄与するものと推測される。なお、このようなバイオフィルタ21では、微生物が木材チップ21Aの成分(多糖類等)、臭気成分を栄養源、エネルギ源として利用(資化)し、微生物が繁殖してバイオフィルムを形成している。例えば、亜硝酸菌、硝化菌、脱窒菌、硫黄酸化細菌、その他の好気性微生物、嫌気性微生物等が木材チップ21Aに生息する。
したがって、湿潤状態が維持されているバイオフィルタ21にその下方から臭気ガスGが導入されると、臭気ガスGは上向流でバイオフィルタ21を流れる。このとき、バイオフィルタ21を構成している木材チップ21Aに保持されている水分または木材チップ21Aの周囲の水分に、臭気ガスGに含まれている臭気成分の水溶性化合物等が溶解し、また、木材チップ21Aに吸着、捕集、保持され、そして、木材チップ21Aやその周囲の水分に生息、付着している微生物によって、臭気成分が分解される。こうして臭気ガスGはバイオフィルタ21を上昇する間に、生物的処理による消化によって脱臭(浄化)され、バイオフィルタ21の上方から放出される。
このとき臭気ガスGに含まれる臭気成分は、例えば、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)のような無害な物質やSO4 -やNO3 -のような無機イオン、硫酸や硝酸等の無機物に分解される。
例えば、臭気ガスG中の臭気成分として代表的なアンモニアに着目すると、アンモニア(NH3)は、亜硝酸菌、硝化菌等の好気性の微生物の硝化作用によりNO2(亜硝酸態)、NO3(硝酸態)等の窒素酸化物(NOx)に分解され、脱臭される。更に、脱窒菌やアナモックス反応によりN2(窒素)等にまで分解されている可能性もある。
また、硫化水素(H2S)やメチルメルカプタン等の硫黄化合物(硫化物)、有機酸系化合物の臭気成分は、例えば、硫黄酸化細菌、その他の好気性菌等の好気性微生物の作用により酸化分解されてSO2や硫酸等の酸化物となり、脱臭される。
特に、上述のように構成されている本実施例の生物脱臭装置10では、次のような特徴がある。
まず、本実施例の生物脱臭装置10では、臭気ガスGの導入及び散水を開始した稼働初期で圧力損失が30〜120Paであり、経時的には圧力の上昇がみられるも、3年経過後であっても、圧力損失が200Pa以下に抑えられた。
念のため、図5に圧力損失を経時的に測定した結果を示す。なお、この圧力損失は、ブロワー5の送圧(全圧)とバイオフィルタ21の上で空気が放出されている出口の全圧との差圧を計測したものである。
図5に示したように、季節や臭気源の濃度等の変化によって圧力損失に変化があるも、圧力損失は0〜200mmH2Oの範囲内にあり、経時的に圧力損失が顕著に上昇することもなく少ない圧力損失で維持されている。なお、圧損の測定は、間欠運転される散水手段30の散水時または散水停止時を問わない測定である。
使用による圧力損失の増大が少ないのは、所定の嵩密度で木材チップ21aでバイオフィルタ21を構成したことにより通気抵抗が低く抑えられ使用によっても目詰まり(狭窄、閉塞)が生じ難く、また、木材チップの含水率を150%以上、300%以下に維持する散水に、循環手段40によりバイオフィルタ21を通過した余剰水W1が再利用されることで、微生物の分布や微生物の分解により生じた分解物の蓄積に偏りが生じ難く、バイオフィルタ21全体が効率的に使用されるためである。特に、所定の嵩密度で木材チップ21aを充填してなるバイオフィルタ21では、通気抵抗が低く圧損が少ないため、木材チップ21aの含水率が150%以上、300%以下にするために散水量を多くしても圧損への影響も少なく、使用によっても臭気ガスGの偏流が生じ難い。
また、本実施例の生物脱臭装置10では、バイオフィルタ21のpHが6.5〜7.5の範囲内に維持された。特に、循環水のバイオフィルタ21からの余剰水W1を回収して循環させる受水部41の水も中性域に維持され、散水31に使用する水についてpH調節を行ったり、イオン吸着剤等の臭気物質低減部材によって臭気物質や分解物を吸着したり、脱窒を行わくとも、バイオフィルタ21ではpHが6.5〜7.5の範囲内に維持されていた。
ここで、臭気ガスGにアンモニアが含まれていると、湿潤状態にあるバイオフィル21では、アンモニウムが水に溶解してアンモニウムイオン(NH4 +)となり、このアンモニウムイオン(NH4 +)は、木材チップ21Aを覆う水膜において木材チップ21Aに生息するアンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌による硝化作用によって亜硝酸イオン(NO2 -)や硝酸イオン(NO3 -)に酸化分解される。このとき、硝化前のアンモニウムイオン(NH4 +)の存在によってpHが上昇するが、これら亜硝酸イオン(NO2 -)や硝酸イオン(NO3 -)の分解物が生成されると水膜内のpHが低下し、一般的にはそれらの濃度が高くなるとpHが酸性に傾く。特に、散水を循環させていると、短期間でpHが酸性に傾き易く、バイオフィルタ21における微生物周りの環境が酸性となると、特定の微生物のみの活動及び特定の臭気成分のみしか除去されない事態が生じやすい。
しかし、本実施例の生物脱臭装置10では、バイオフィルタ21からの余剰水W1を回収して散水を循環させていても、含水率を150%以上、300%以下に維持する木材チップ21Aの高い保水性によって、pHの緩衝作用が高く、また、散水の循環によってアンモニウムイオン(NH4 +)が蓄積することもなく分解が進み、更に、亜硝酸イオン(NO2 -)や硝酸イオン(NO3 -)等の分解物がバイオフィルタ21中に偏りなく分布し負荷が局所的に集中することもない。また、必要に応じて補充水W2で希釈される。このため、pHが中性の環境に維持されている。
特に、所定の嵩密度で木材チップ21aを充填してなるバイオフィルタ21では、通気抵抗が低く圧損が少ないため、木材チップ21Aの含水率が150%以上、300%以下にするために散水量を多くしても圧損への影響も少なく、木材チップ21Aの高い保水性、木材チップ21の周囲の厚い水膜を確保できる。更に、木材チップ21Aの含水率を150%以上、300%以下に維持したバイオフィルタ21の高い湿潤状態及びハウジングH底部の所定容積の空間Sで余剰水W1が収集される構成によって、ハウジングH底部の湿気が高く、ハウジングH底部に導入された臭気ガスGを加湿できる。これより、pHの変動を緩和でき、また、高濃度の臭気に対してもその濃度の緩和が可能である。特に、本実施例の脱臭装置10では、硝化とアンモニア導入がバランスされているものと思われる。
そして、本実施例の脱臭装置10によれば、このようにpHを中性域に維持できることで、多種の臭気成分の分解に対応できる微生物種の活動を維持できる。即ち、pHが中性域の環境は、多種の臭気化合物の対応に有利な微生物の生育環境に適する。よって、臭気濃度や臭気質が変動する臭気ガスGに対しても長期間安定した脱臭性能を発揮することができる。特に、本実施例の脱臭装置10によれば、散水を循環させていてもpHの低下が抑制され、中性環境で生育する微生物群は、多数の臭気化合物を除去できるから、臭気濃度や臭気質が変動する臭気ガスGに対しても処理能力が低下することなく、長期間安定した脱臭性能を持続できる。
このような本実施例の生物脱臭装置10によれば、脱臭効果を示す下記の式(B)により算出されるバイオフィルタ効率(%)が、90〜95%であり、3年以上経過後も90〜95%の脱臭効率が得られている。
バイオフィルタ効率(BFE)(%)
=100×(IOC−EOC)/IOC・・(B)
IOC:導入側空気の臭気濃度(オダーユニット;OUE
EOC:排出側空気の臭気濃度(オダーユニット;OUE
例えば、導入側空気が2500〜6000オーダーユニットの臭気濃度であると、本実施例の生物脱臭装置10のバイオフィルタ21を通過後の放出側の空気では、平均200〜450オーダーユニットの臭気濃度になることが確認されている。
但し、無臭の空気を導入したときでも、バイオフィルタ21の木材チップ21A自身のにおいにより、放出側の空気は、150オーダーユニットの臭気濃度より低くなることはない。また、放出側の空気では、平均200〜450オーダーユニットの臭気濃度であっても、バイオフィルタ21の作用により、導入側の臭気ガスGの源臭と比較して臭質が大きく改善されている。
なお、ここでの、臭気濃度は、動的オルファクトメータ法により、人の嗅覚を用い、臭気を無臭の空気で希釈したときにちょうどにおわなくなった時のにおい閾値までの希釈倍数(単位;オーダーユニット(OUE))を示す。即ち、上記実施例の生物脱臭装置10によれば、官能試験によって測定された臭気の指標を示す臭気濃度で90〜95%の除去率を示したことになる。
因みに、動的オルファクトメータ法による臭気濃度(単位;オーダーユニット(OUE))と日本で採用されている臭気指数とは下記の式(C)の関係で表すことができる。日本で採用されている三点比較式臭袋法と、動的オルファクトメータ法による測定結果は概ね一致するとされている。
臭気指数=10×log(臭気濃度)・・(C)
例えば、上述した2500〜6000オーダーユニットの臭気濃度を臭気指数に換算すると34〜38であり、200〜450オーダーユニットの臭気濃度を臭気指数に換算すると23〜27である。150オーダーユニット臭気濃度を臭気指数に換算すると22である。
また、本実施例の生物脱臭装置10によれば、臭気ガスGがバイオフィルタ21を通過して放出される出力側において、アンモニア濃度を測定すると、臭気の導入を開始してから数日で1〜2mg/Nm3のアンモニア濃度に抑えられ、3年経過後もその数値以下に抑えられていた。都市ごみ等の堆肥化施設(発酵処理施設)においての好気性発酵処理では、アルデヒド類、テルペン類、VAF等が悪臭原因物質として問題となっているが、そのような臭気に対しても高い脱臭効果が確認されており、その脱臭効果も3年以上持続した。
特に、表5の仕様で構成されている生物脱臭装置10では、その前段階で化学脱臭装置3の処理やスクラバー装置4による酸スクラバー処理等を施さなくても、3年以上持続する高い脱臭効果が得られている。
更に、本実施例の生物脱臭装置10によれば、季節変化による周囲(環境雰囲気)の温度変化によって脱臭機能が低下することもなく、周囲の温度変化を問わず年間を通じて高い脱臭機能を維持していた。
ここで、バイオフィルタ21の温度に着目すると、図6において、バイオフィルタ21の中間層の温度を経時的に測定(熱電対による測定)した結果を示したように、バイオフィルタ21の温度は周囲環境温度が0℃となるような冬季でも臭気ガスGを導入している操業時は12℃以上あり、周囲環境温度が40℃となるような夏季でも、散水によって45℃以下に抑えることが可能であった。
特に、真夏において、バイオフィルタの21の表面(上層)温度を赤外線サーモグラフィによって測定すると、臭気ガスGの排気箇所で部分的に50℃を超えるところが存在するも、温度が低いところでは20℃程度に維持されていた。夏季では、散水及び含水率を150%以上、300%以下に維持した木材チップ21Aの高湿度により、その気化熱によってバイオフィルタ21の温度上昇を抑えることができる。
一方、冬季では、木材チップ21Aの含水率を150%以上、300%以下に維持したバイオフィルタ21の高湿度及びバイオフィルタ21底部での余剰水W1の収集によって所定容積の空間Sに導入された臭気ガスGを加湿できるから、臭気ガスGがバイオフィルタ21を通過する際でもバイオフィルタ21の潜熱が奪われ難く、バイオフィルタ21の温度低下を抑制できる。即ち、冬季では、堆肥化装置2から比較的乾燥した臭気ガスGが送り込まれ、このような臭気ガスGはバイオフィルタ21を通過する際にバイオフィルタ21から潜熱を奪いやすく、バイオフィルタ21の温度低下を招くことになる。しかし、バイオフィルタ21に入力される臭気ガスGの湿気を高くできると、バイオフィルタ21から潜熱が奪われるのを防止でき、バイオフィルタ21の温度低下を抑えることができる。
そして、バイオフィルタ21が木材チップ21Aからなるから、木材の調湿特性によって、ハウジングH内の湿度変動が抑制されている可能性もある。なお、冬季では周囲温度の低温の影響によって、堆肥化装置2から発生する臭気濃度も比較的少なくなりバイオフィルタ21にかかる負荷も比較的少なくなるから、バイオフィルタ21の温度が多少低下しても、脱臭効果を維持できる。
こうして、本実施例の生物脱臭装置10によれば、周囲環境温度と比較してバイオフィルタ21の温度が大幅に低下することもなく、周囲の温度が変動しても高い脱臭性能が安定して維持されていた。即ち、加熱または冷却手段を設けなくとも周囲温度による処理能力の変動が少なく、安定した脱臭性能が持続するから、低コストで済む。
しかし、本発明を実施する場合には、周囲温度の影響に左右されることのない極めて安定した処理能力を確保するために、ハウジングHや、散水手段30や、ハウジングHの下部に設けた排水口42aから排水路42を介して受水部41に入力する排出路及び受水部41及び受水部41の出力から散水供給路43を介して散水手段30の入力までの供給路の構成からなる循環路に、加熱または冷却手段を配設し、バイオフィルタ21の温度や、散水の水温の制御、調節を行ってもよい。
なお、設置場所等によってバイオフィルタ21の温度が45℃を超えるときには、散水量を増大させることで、温度を45℃以下に抑え、脱臭性能の維持が可能である。
そして、微生物の活性を維持し、安定した脱臭性能を発揮させるために、好ましくは、バイオフィルタ21の温度、臭気ガスGの温度は10〜55℃範囲内に維持される。
加えて、本実施例の生物脱臭装置10によれば、堆肥化装置2が例えば、1〜2週間の休止状態にあり、ブロワー5によって堆肥化装置2からの空気が生物脱臭装置10に連続的に送り込まれてハウジングH内が連続的に通気されてはいるが臭気ガスGが存在していない状態であっても、微生物が木材チップ21Aを栄養源として生育することができる。そして、その後、堆肥化装置2で発酵・分解処理を再開したときでも、木材チップ21Aの微生物によって直ちに臭気ガスG中の臭気成分の分解が始まり、微生物が死滅しないような環境が形成され、バイオフィルタ21の脱臭能力は維持されている。したがって、低い維持費、ランニングコストで脱臭効果を長期に亘って持続可能である。
なお、本発明者らの実験研究では、生物脱臭装置10の稼働から3〜4年経過後に、微生物による木材チップ21Aの消費、代謝、木材チップ21の劣化により細片化、縮小した木材チップ21Aの堆積によって、圧力損失が200Paを超える場合には、バイオフィルタ21を形成する木材チップ21Aの篩分けによって例えば目開き10mmの篩を通過する細分化された木材チップ21Aは取り除き、バイオフィルタ21の充填高さhが2mになるまで、新たに、例えば、木材の繊維方向の長さが10mm〜300mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が5mm〜30mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内である木材チップ21aを補充する。必要に応じて木材チップ21aと床材22との間の粗い木材チップ21bを補充する。これによって、高い脱臭効果が更に長期間持続することを確認している。こうして木材チップ21Aの取り除き、木材チップ21Aの補充の繰り返しにより、所定の菌の添加や微生物活性物質の添加をしなくとも低コストで半永久的に脱臭効果を持続させることが可能である。
また、源臭の質によってpHが4.5未満となった場合には、一時的に補充水W2の割合を高め、散水量を増大させることにより、pHを6.5以上に回復させることが可能であり、脱臭性能を維持できる。
そして、本実施例の生物脱臭装置10では、散水手段30からの散水によっても、圧損が上がり過ぎることもないから、散水時にブロワー5を一時的に中断しなくとも、散水時にバイオフィルタ21で水がふき上がることがない。即ち、所定の嵩密度で堆積してなる木材チップ21Aによってバイオフィルタ21を構成したことにより、散水の水がバイオフィルタ21の下方に通過しやすく、含水率を150%以上、300%以下に維持するための散水量でも散水した水がホールドアップして圧力損失の急激な増大を招くことがない。よって、維持管理も容易で、低コストであり、ブロワー5の連続運転により処理効率も良い。また、このように、臭気ガスGの導入方向と散水の方向を向き合わせて(向流させて)いても水がふき上がらないから、低コストで高い処理能力を得ている。
以上説明してきたように、本実施の形態に係る生物脱臭装置10は、木材チップ21aを充填してなり、散水によって木材チップ21Aの含水率が150%以上、300%以下に維持され、臭気ガスGを生物的処理によって消化するバイオフィルタ21と、バイオフィルタ21を収容し、臭気ガスが導入される導入口24aを下方に有するハウジングHと、多数の通気孔22Aを有し、ハウジングHの底部との間にハウジングHの導入口24aと連通する所定容積の空間Sを画成してハウジングH内に配設され、上側の床面上にバイオフィルタ21が配設される床材22と、ハウジングH内の床材22の上に配置するバイオフィルタ21に対してその上方から散水する散水手段30と、バイオフィルタ21を通過した散水の水(余剰水W1)を回収し散水手段30に循環させる循環手段40とを具備するものである。
なお、本実施の形態の循環手段40とは、所定容積の空間Sを有するハウジングHの底部及びハウジングHの下部に設けた排水口42aから排水路42を介して受水部41に入力する排出路及び受水部41及び受水部41の出力から散水供給路43を介して散水手段30の入力までの供給路の構成である。
このように構成された本実施の形態に係る生物脱臭装置10によれば、木材チップAのサイズの選択及び所定堆積高さの設定により所定の嵩密度で堆積してなる木材チップ21Aによってバイオフィルタ21を構成したことにより通気抵抗が低く抑えられ、また、木材チップ21Aの含水率を150%以上、300%以下に維持する散水に、循環手段によりバイオフィルタ21を通過した余剰水が再利用されることで微生物の分布や微生物の分解により生じた分解物の蓄積に偏りが生じ難くなる。
即ち、散水を循環させるから、微生物や分解物を上から下に移動させることになり、バイオフィルタ21内で微生物や分解物が変位するため、負荷が局所的に集中することなく、バイオフィルタ21全体で効率よく処理できる。
したがって、使用を続けても通気路の目詰まり(狭窄、閉塞)が生じ難く、圧力損失の増大も抑制される。散水の循環によって含水率が150%以上、300%以下に維持され木材チップ21Aには、臭気成分の分解により生じた塩類等の結晶物も付着し難い可能性がある。
即ち、微生物量が多くても、また、臭気成分の分解物が増えてきても、散水の循環によって、それら微生物や分解物が一定の場所に留まり難いから、使用を続けても通気路の目詰まり(狭窄、閉塞)が生じ難い。
これより、バイオフィルタ21において臭気ガスGの通り道が限定される偏流、特定の道をすり抜けるショートパスも生じ難くなり、バイオフィルタ21全体が均一に効果的に臭気ガスGの消化に利用されるから、高い脱臭性能を長期間持続させることができる。
そして、圧力損失が小さいから大風量の臭気ガスGに適し、低コスト及び高い処理効率で臭気ガスGを消化できる。
特に、含水率を150%以上、300%以下に維持する木材チップ21Aの高い保水性によって、使用の継続によりpHの低下も生じ難く、pHが中性の環境に維持可能である。このため、多種の臭気、また、高濃度の臭気でもその分解に対応できる微生物種が活動し易くなる。
また、含水率を150%以上、300%以下に維持する木材の特性によっても、特定の菌の接種、植種をし、微生物活性物質を添加しなくとも、天然、自然の微生物の働きで、すぐに臭気の分解に対応できる微生物種が繁殖する。
特に、木材の特性によって多種の臭気の分解に対応できる微生物種が増殖、活動しやすい環境であり、多種の臭気の分解に対応できる微生物種の働く環境を作り出すことができる。臭気質や臭気濃度の変動にも追随する微生物環境を構築できる。
更に、散水を循環させていることで、有効な微生物群、微生物活性が維持されやすい。
また、バイオフィルタ21が木材チップ21Aからなるから、木材の調湿特性が、バイオフィルタ21の湿度変動を防止し、微生物の最適な湿度環境の維持、pH変動の緩和に寄与している可能性もある。つまり、木材の特性によって、微生物の活動に適した水分条件となっている。
加えて、木材チップ21Aが有機物であるから、連続的に臭気ガスGを送りこまなくても、また、極めて低濃度の臭気が連続するとできも、微生物が死滅することなく微生物活性が良好に維持される。
つまり、バイオフィルタ21が所定の含水率に維持する所定サイズの木材チップ21Aで構成されていることにより、また、散水を循環させていることによって、多種の臭気に対応可能な微生物群の生育にとって最適な環境が維持され、特定の臭気成分に特化されず、臭気の変動にも対応できる。
そして、このように含水率が150%以上、300%以下に維持された木材チップ21aが充填してなるバイオフィルタ21では、木材チップ21Aの高い保水性及び高表面積により、臭気ガスGの気体が液相に溶解されやすく、また、臭気ガスGとの接触量も大きいことから、高い処理能力を有する。
特に、含水率を150%以上、300%以下に維持可能な木材チップ21Aが所定の嵩密度で充填され、また、散水を循環させているから、目詰まりが生じ難く、散水により常にバイオフィルタ21全体に水がムラなく分布しやすく、微生物の偏りも少ない。即ち、所定の嵩密度で充填してなる木材チップ21aによってバイオフィルタ21を構成したことにより、散水の水がバイオフィルタ21の下方にも通過しやすい。よって、バイオフィルタ21全体が効果的に利用され、臭気成分が木材チップ21Aの周囲の水膜に溶解、捕捉されやすく、効果的に微生物による分解を受ける。よって、高い脱臭効率を有する。
更に、木材チップ21Aの含水率を150%以上、300%以下に維持したバイオフィルタ21の水分特性(高い保水性、木材チップ21A周囲の厚い水膜)と、散水の循環による木材チップ21A周囲の水分の変移によって、pHの変動や分解物の濃度が緩衝されるから、循環手段によりバイオフィルタ21を通過した余剰水W1を散水に再利用しても、微生物の活動の低下、微生物活性の低下が生じ難い。
つまり、バイオフィルタ21の高湿潤状態により臭気濃度の変動への適応性が高く、また、pH変動の緩和性も高く、多種の臭気の分解に対応できる微生物種の働く環境、微生物の活性が維持される。
したがって、導入される臭気濃度や臭気質が変動しても、長期間安定した脱臭性能を維持できる。
加えて、本実施の形態では、木材チップ21Aの含水率を150%以上、300%以下に維持したバイオフィルタ21の高い湿潤状態及びハウジングH底部の所定容積の空間Sに余剰水W1が達する構成によって、ハウジングH底部の湿気が高く、ハウジングH底部に導入された臭気ガスGを加湿可能である。よって、臭気の濃度変動に対する緩和効果を高めることができる。また、木材チップ21周囲の分厚い水膜によっても臭気濃度の変動を緩和できる。更に、臭気ガスGの湿気が高いと、バイオフィルタ21の含水率の均一な分布にも寄与する。したがって、臭気を空気で希釈したり見かけ風速を極端に低下させたりする手段を講ずることなく、臭気濃度の変動に対応できる。
そして、ハウジングH底部に導入された臭気ガスGを加湿可能であると、冬季の周囲温度が低いときでも、臭気ガスGがバイオフィルタ21の潜熱を奪い難いためにバイオフィルタ21の温度低下を防止できる。また、夏季の周囲温度が高いときでは、臭気ガスGの高い湿気及び木材チップ21Aの含水率を150%以上、300%以下に維持したバイオフィルタ21の高い湿潤状態によりその気化熱によってバイオフィルタ21の温度上昇を抑えることが可能である。よって、周囲の温度変化に対しても追随できて脱臭性能の変動が少なく、安定して高い脱臭性能を発揮できる。
更に、木材チップ21Aのサイズの選択によって木材チップ21Aを所定の嵩密度で充填してバイオフィルタ21を構成し、木材チップ21Aの含水率を150%以上、300%以下に維持することにより、通気抵抗が低く抑えられ、圧力損失の増大も少ないので、臭気ガスGの送風にかかるランニングコストを抑えることができる。
また、木材チップ21Aは安価に入手できるうえ、所定の嵩密度で充填される木材チップ21Aから構成されるバイオフィルタ21は、圧力損失が少なく、高い処理能力によって小型でも高い処理量を確保できるから、その容積量も少なくて済む。
そして、木材チップ21Aの含水率を150%以上、300%以下に維持するバイオフィルタ21の高い保水性、つまり、木材チップ21周囲の分厚い水膜と、散水の循環による木材チップ21A周囲の水分の変移によって、pHや分解物が緩衝されるから、循環水のpHや分解物を制御したり臭気ガスの導入量を制御したりする手段を設ける必要もなく、簡易な装置設計で済み、維持管理も容易である。
散水を循環させていることで、散水用の水のコストも少なくて済む。また、バイオフィルタ21の切りかえしや木材チップ21Aの交換といったメンテナンス頻度も少なくて済む。
よって、材料コスト、設備コスト、ランニングコストが抑えられるから、低コストで済む。
こうして、臭気濃度や臭気質の変動を伴う複合臭の臭気ガスに対しても、低コストで長期間安定した脱臭性能が持続可能な生物脱臭装置10となる。
そして、本実施の形態に係る生物脱臭装置10によれば、含水率を150%以上、300%以下に維持する特定サイズの木材チップ21Aによりバイオフィルタ21を構成することより、その木材の特性から、天然、自然の微生物の働きで、直ぐに臭気の分解に対応できる微生物種が繁殖させることができ、多種の臭気の脱臭に対応できる。したがって、家庭ごみ、都市ごみ等の堆肥化施設から発生する臭気に限定されず、家畜を飼育したり家畜の排泄物を処理したりする養鶏・畜産施設や、有機スラッジ等が生じる下水・汚水の排水処理施設、農業集落排水処理施設、食品工場排水処理施設等から発生する臭気に対しても高い脱臭効果の持続性を発揮できる。即ち、特定の臭気成分に特化されない脱臭技術であり、臭気の変動にも対応できるから、適用範囲が広い。
また、本実施の形態に係る生物脱臭装置10によれば、目開きが20mm〜100mmの範囲内である通気孔22Aを開口率が5〜95%の範囲内で有する床材22によって、臭気ガスGを整流できるから臭気ガスGの処理効率を高めることできる。また、臭気ガスGの圧力損失を低減化でき、臭気量の変動による負荷を少なくできる。
更に、上記実施例に係る生物脱臭装置10によれば、床材22の上に、例えば、木材の繊維方向の長さが350mm〜700mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が10mm〜80mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが5mm〜50mmの範囲内である木材チップ21bを敷設してから、その上に、例えば、木材の繊維方向の長さが10mm〜300mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が5mm〜30mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内である木材チップ21aが充填されるから、木材の繊維方向の長さが10mm〜300mmの範囲内であり、木材の接線方向の幅が5mm〜30mmの範囲内であり、木材の半径方向の厚みが4mm〜10mmの範囲内である木材チップ21aを充填すると、所定の嵩密度でバイオフィルタ21が構成され、床材22の所定径の通気孔22Aを閉塞することもなく、また、ハウジングHの下方から導入口24aを介して導入されて床材22の通気孔22Aを通過しバイオフィルタHに入力される臭気ガスGの流れをより円滑にする整流効果が発揮される。そして、臭気ガスGの通気抵抗を緩和し圧力損失を緩和できる。よって、処理効率を高めることができる。
加えて、本実施の形態に係る生物脱臭装置10においては、床材22の位置の上または下でハウジングHの側壁に沿って突壁28を設け、ハウジングH側の側壁が所定の突出長さで内方に突出していることによってハウジングHの側壁伝いの臭気を遮断し、ハウジングHの側壁伝いの臭気漏れを抑えることが可能である。また、臭気ガスGを整流でき、バイオフィルタの面積全体に均一に臭気ガスを送り込むことができるから、処理効率を高めることができる。例えば、図7(a)に示すように、ハウジングH自体の内側壁をバイオフィルタ21の側面に向かって突状に形成することによって、或いは、ハウジングHとバイオフィルタ21の間に板状等の別部材(突壁28)を設置することによって、床材22の位置から上ではハウジングH側の側壁がバイオフィルタ21の側面に向かって突出させる。また、図4及び図7(b)に示すように、床材22の位置から下でハウジングH自体の内側壁の突出構造または板状等の別部材(突壁28)の設置によってハウジングH側の内側壁をハウジングHの内方に向かって突出させる。これより、ハウジングHの側壁伝いの臭気を遮断し、ハウジングHの側壁伝いの臭気漏れを抑えることが可能である。
また、上記実施例に係る生物脱臭装置10によれば、バイオフィルタ21に散水する水は、バイオフィルタ21を通過した余剰水W1を36容積%以上とし、外部から補充する水を64容積%以下とすることにより、低コストであり、より高い脱臭能力を持続できる。
更に、上記実施例に係る生物脱臭装置10によれば、臭気ガスGが下方から上方に通過する方向のバイオフィルタ21の厚さ堆積hが1.5m以上、3m以下の範囲内であるから、低コストで高い脱臭効果が得られ、その高い脱臭効果をより持続させることができる。
なお、本発明を実施する場合には、生物脱臭装置10の設計、仕様は、上記実施例に限定するものではない。対象とする臭気ガスGの種類、濃度、除去率、処理風量等の要求により、本実施例で求められた見掛け速度、バイオフィルタ21の負荷特性、線速度等をパラメータとして、バイオフィルタ21の容積、断面積、充填高さhを決定することができる。特に、圧力損失は充填高さhや線速度に比例し、圧損が上がり過ぎると、コストの上昇及び臭気ガスGの偏流による処理効率の低下を招くことから、低能力のブロワー5でも対応できるように、0〜200mmH2Oの範囲内で圧力損失を維持する設計とするのが望ましい。
本発明を実施する場合には、床材22の構成も上記に限定されず、例えば、ハウジングHの底部に所定径の通気孔22Aを設けた管路を埋設し、或いは、所定間隔で形成された孔にスリーブを配設してスリーブからなる通気孔22Aを設けた管路を埋設することによって、床材22を形成することも可能である。
また、本発明を実施する場合には、ブロワー5から圧縮空気となって送付される臭気ガスGの導入口24は、1つに限定されず複数設けても良い。堆肥化施設の複数の発酵槽に接続し、脱臭の対象とする発酵槽によって複数の導入口24のうち特定の導入口24を使用する構成としてもよい。即ち、制御によって複数の導入口24を選択的に使い分ける構成としても良い。また、受水部41をハウジングHの底部に設けてもよい。
10 生物脱臭装置
20 脱臭処理部
21 バイオフィルタ
21A 木材チップ
24 導入口
30 散水手段
40 循環手段
H ハウジング

Claims (2)

  1. 木材チップを充填してなり、臭気ガスを生物的処理によって消化するバイオフィルタと、
    前記バイオフィルタを収容し、臭気ガスが導入される導入口を下方に有するハウジングと、
    通気孔を有し、前記ハウジングの底部との間に前記ハウジングの導入口と連通する所定容積の空間を画成して前記ハウジング内に配設され、上側の床面上に前記バイオフィルタが配設される床材と、
    前記ハウジング内の前記床材の上に配置する前記バイオフィルタに対してその上方から散水する散水手段と、
    前記バイオフィルタを通過した前記散水の水を回収し前記散水手段へ循環させる循環手段と
    を具備し、
    前記床材の位置から上または前記床材の位置から下で前記ハウジングの内方に向かって前記ハウジング側の内側壁が突出しており、
    前記散水により水分を含んだ前記木材チップの重量(乾燥前重量)を測定し、更に、それを乾燥させて前記水分を含まない状態の前記木材チップの重量(全乾重量)を測定したときに
    含水率(%)=(乾燥前重量−全乾重量)/全乾重量×100
    として算出した前記散水により水分を含んだ前記木材チップの含水率が150%以上、300%以下に維持し、
    前記臭気ガスが下方から上方に通過する方向の前記バイオフィルタの厚さ堆積が1.5m以上、3m以下の範囲内であることを特徴とする生物脱臭装置。
  2. 前記床材は、前記通気孔の目開きが20mm〜100mmの範囲内であり、開口率が5〜95%の範囲内である請求項1に記載の生物脱臭装置。
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