JP2005239979A - 燐酸とリグノセルロース加水分解生成物とを分離する方法及びグルコースの製造方法 - Google Patents

燐酸とリグノセルロース加水分解生成物とを分離する方法及びグルコースの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 リグノセルロースを燐酸で加水分解して得られる加水分解生成物を含む燐酸溶液から、燐酸とリグノセルロースの加水分解生成物とを効率的に分離する方法及びグルコースを安価に大量生産することが可能なリグノセルロースからグルコースを製造する方法を提供すること。
【解決手段】 リグノセルロースを高濃度の燐酸で加水分解して得られるリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液を、陰イオン交換樹脂を充填したカラムを使用して燐酸とリグノセルロースの加水分解生成物とに分離する。
上記の方法で分離されたリグノセルロースの加水分解生成物をβ−グルコシダーゼで加水分解するグルコースの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、リグノセルロースを高濃度燐酸で加水分解させて得られるリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液から、燐酸とリグノセルロースの加水分解生成物とを効率よく分離する方法、及び分離したリグノセルロースの加水分解生成物をβ−グルコシダーゼにより加水分解してグルコースを製造する方法に関する。
近年の地球環境問題で二酸化炭素の削減に関連して、バイオマスを活用する技術の開発が世界的に行われている。その中でリグノセルロースからグルコースを得、エタノールあるいはL−乳酸等を発酵技術で生産する方法が提案されているが、効率的な工業的生産は未だ行われていないのが現状である(非特許文献1〜3)。
その中でもアメリカのNREL(National Renewable Energy Laboratory)が中心になって長年開発してきた技術が工業化されようとしている。これらは当面はエタノール(バイオエタノール)の製造を目指しているものであるが、前処理及び加水分解過程で濃硫酸あるいは希硫酸を使用するものであり、代表的なものにBCI International社とArkenol社の方法がある。
前者の方法では濃硫酸を用いるが、硫酸の回収は中和法により石膏として回収されている。一方、後者では希硫酸を用いて陽イオン交換樹脂により糖類と硫酸を分離する方法である(特許文献1〜3)。
更に、最近の方法としてControlled Environmental Systems Corporationの方法があるが、この方法では使用した硫酸を中和法と陰イオン交換樹脂又は排除クロマトグラフィーで除去する方法である(特許文献4)。
一方、本発明者は、セルロース系物質を高濃度の燐酸を用いて溶解及び/又は膨潤させた状態で強撹拌し、得られた加水分解生成物を酵素で分解してグルコースを得る方法を提案したが、この方法では燐酸の回収方法として中和法と有機溶媒抽出法とが用いられている(特許文献5)。
NEDO平成13年度成果報告書、「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発/セルロース系バイオマスを原料とする新規なエタノール醗酵技術の開発/前処理・糖化・エタノール醗酵技術の開発」第18〜20頁 NEDO平成14年度成果報告書、「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発/セルロース系バイオマスを原料とする新規なエタノール醗酵技術の開発等により燃料用エタノールを製造する技術の開発」(その1) NEDO平成14年度成果報告書、「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発/セルロース系バイオマスを原料とする新規なエタノール醗酵技術の開発等により燃料用エタノールを製造する技術の開発」(その2) 特表平11−506934号公報 米国特許第5,580,389号明細書 米国特許第5,820,687号明細書 特表2001−511418号公報 特開平10−110001号公報
特許文献5で開示した方法では、燐酸は中和法と有機溶媒抽出法を用いて回収されるが、更なる製造コスト低減のためには効率の良い燐酸回収方法を用いる必要がある。又、セルロース系物質を高濃度燐酸で処理し、処理溶液から燐酸を分離した後、加水分解生成物を酵素で加水分解してグルコースを得ているが、製造コスト低減のためには加水分解過程も改良する必要がある。
従って、本発明の目的は、以上の如き問題点が解消されたリグノセルロースを燐酸で加水分解して得られる加水分解生成物を含む燐酸溶液から、燐酸と加水分解生成物とを効率的に分離する方法及びグルコースを安価に大量生産することが可能なリグノセルロースからグルコースを製造する方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、リグノセルロースを高濃度の燐酸で加水分解して得られるリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液は、分離型デカンタで効率良く固液分離でき、固形分が分離されたリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液を、Acid Retardation(アシッド リタデーション)作用を有する陰イオン交換樹脂を充填したカラムを用い、通液方法を考慮することで、燐酸水溶液とリグノセルロースの加水分解生成物を含む水溶液とに効率よく分離できることを見いだした。
又、上記カラム処理で分離されたリグノセルロースの加水分解生成物を含む水溶液は、そのままでも、又は、UF(限外ろ過)、RO膜(逆浸透膜)あるいはNF(ナノフィルトレーション)で濃縮してから、溶液のpHを、例えば、4〜6程度に、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤で調整した後に、セルラーゼ(エンドセルラーゼ、エクソセルラーゼ及びβ−グルコシダーゼの3種の酵素の混合物)中のβ−グルコシダーゼのみで上記リグノセルロースの加水分解生成物を加水分解することで、セルラーゼ(上記の3種の酵素の混合物)を使用するよりも短時間で加水分解されることを見いだした。
一方、上記カラム処理で回収された燐酸水溶液は、RO装置を用いることで濃縮可能であり、この濃縮された燐酸水溶液を缶蒸発させることで、RO装置で濃縮せずに直接缶蒸発により濃縮する場合よりも濃縮コストの低減が可能となった。又、回収された燐酸はリグノセルロースの加水分解に使用することができる。これらの知見に基づいて本発明を完成した。
即ち、本発明によれば、リグノセルロースを高濃度の燐酸で加水分解して得られるリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液を、陰イオン交換樹脂を充填したカラムを使用して燐酸とリグノセルロースの加水分解生成物とに分離することを特徴とする分離方法が提供される。
又、本発明によれば、リグノセルロースを高濃度の燐酸で加水分解して得られるリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液を、陰イオン交換樹脂を充填したカラムを使用して燐酸とリグノセルロースの加水分解生成物とに分離し、分離されたリグノセルロースの加水分解生成物をβ−グルコシダーゼで加水分解することを特徴とするグルコースの製造方法が提供される。
以上の本発明により、リグノセルロースからグルコース、セロオリゴ糖及びその他の単糖類を含む溶液を安価に製造することが可能となり、上記溶液を精製後に濃縮及び結晶化させればグルコースの結晶の製造も可能である。又、上記溶液を精製せずにグルコース以外の単糖類を含んだまま、エタノール、L−乳酸等の発酵原料として一般に使用されている糖蜜等の安価な代替品としても使用可能である。
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
本発明で原料として使用するリグノセルロースとしては、例えば、古新聞、雑誌、段ボール、オフィス古紙、木材質(木材チップ、建築廃材、間伐材、流木、街路樹あるいは庭木の剪定材等)、籾殻、竹、バガス、ワラ類、トウモロコシ穂軸等の農産廃棄物、リンター、綿、パルプ及び製紙メーカーからの排出する廃パルプあるいは酢酸等のオルガノソルブ処理で得られたセルロースリッチな成分等が挙げられる。以上のリグノセルロースのうちで、本発明において特に好ましいものは、古新聞、リンター、綿及びパルプである。
本発明では、まず、上記リグノセルロースを高濃度燐酸を用いて加水分解させるが、加水分解の方法は、特に限定されない。好ましい方法は以下の方法である。
リグノセルロースを高濃度燐酸に添加して溶解及び/又は膨潤させる。使用する高濃度燐酸としては、70質量%以上の燐酸が好ましく、特に81〜85質量%、又は92〜97質量%の燐酸が本発明に適している。リグノセルロースは、上記高濃度燐酸100質量部当たり約5〜20質量部の割合で使用することが好ましい。
リグノセルロースを高濃度燐酸に添加して溶解及び/又は膨潤させた後に攪拌してリグノセルロースを加水分解する。撹拌は、リグノセルロースの加水分解が生じる条件であれば特に限定されないが、例えば、パルパー等を用いて約30〜60℃の温度で約1〜4時間、強力に攪拌する(例えば、接続電動機150〜600KWで、ローター回転数600〜1000RPM)ことが好ましい。この強撹拌処理で、リグノセルロースは加水分解されて非晶性セルロース、セロオリゴ糖、グルコースリッチで、キシロース、マンノース等のグルコース以外の単糖類等の混合物(以下では「リグノセルロースの加水分解生成物」という)が生成する。
上記リグノセルロースの加水分解生成物を含む高濃度燐酸溶液から、リグノセルロースの加水分解生成物を分離するために、上記燐酸溶液を固液分離した後のケーキ(固形分:未加水分解のリグノセルロース、リグノセルロース原料中の夾雑物等)中の残存燐酸量を最小限にするための、換言すると燐酸の回収効率を高めるための固液分離方法を種々検討した結果、以下の方法が最適であることを見いだした。即ち、リグノセルロースの加水分解生成物を含む高濃度燐酸溶液を、上記燐酸溶液の、例えば、約2〜10倍容量の攪拌中の蒸留水中に流し込み、固形分を充分に再沈殿させる。この固形分を含んだ溶液を固液分離手段としてデカンタ、例えば、横型(水平型)デカンタ、例えば、DS−10V(三菱化工機社製)で2000G〜2500Gの条件で処理することでケーキ(固形分)中の残存燐酸量を最小限に抑えることが可能であることを見いだした。蒸留水の量は、上記の量に限定されるものではなく、ケーキ中の残存燐酸量が最小となるようにすることが好ましい。1回の操作で目的の残存燐酸量が得られない場合は、再度ケーキを蒸留水中に攪拌しながら分散させ、分散液を再度上記のデカンタ処理をすることで目的の残存燐酸量を達成することが可能である。
固液分離された溶液相(リグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液)から、燐酸とリグノセルロースの加水分解生成物の分離方法を種々検討した結果、Acid Retardation(アシッド リタデーション)作用を有する陰イオン交換樹脂を充填したカラムで、燐酸とリグノセルロースの加水分解生成物とを効率よく分離できることを見いだした。ここで使用する陰イオン交換樹脂としては、例えば、MA01SS(三菱化学社製)、Dowex 11A8(ダウ・ケミカル日本社製)、AP246(バイエル・ジャパン社製)等が挙げられるが、これらのなかでは分離効率の点から、特にMA01SSが好ましい。カラム装置としては、擬似移動方式、回分方式、固定床式、流動床式等のイオン交換樹脂を用いる公知の方式のものがいずれも使用可能であり、カラム装置は特に限定されない。通液方法としては、上記イオン交換樹脂を充填したカラムの最下段に、上記のリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液(溶液相)を、好ましくはその濃縮溶液を、直接あるいはガードカラム通過後に流入させ、上向流で蒸留水を流してリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液をカラムの最上段よりグルコース濃度計と電気伝導度計でモニターしながら回収し、その後下向流で蒸留水を流すことで電気伝導度計を用いてモニターしながら燐酸水溶液を排出・回収することが可能である。
カラムで分離、回収されたリグノセルロースの加水分解生成物を含む水溶液を、例えば、水酸化ナトリウム水溶液でpHを約5.5に調整した後、セルラーゼを添加してリグノセルロースの加水分解生成物の加水分解を行うことでグルコースを得ることが可能である。しかし、この加水分解で全てがグルコースとなるわけではなく、グルコースとともにグルコース以外の単糖類、セロオリゴ糖等も生成する。本発明では、これらをまとめてグルコースと称する。
ここで、反応時間を更に短縮するために鋭意検討した結果、セルラーゼ(前記の3種の酵素の混合物)よりもβ−グルコシダーゼのみの添加によりリグノセルロースの加水分解生成物を短時間でグルコースに加水分解させることができることを見いだした。又、回収されたリグノセルロースの加水分解生成物を含む水溶液は、そのまま使用するよりも任意の手段で、特に好ましくはNF(ナノフィルトレーション)膜を用いて濃縮して使用することが生産効率の点から好ましい。又、β−グルコシダーゼの使用量も特に限定されないが、通常、リグノセルロースの加水分解生成物100質量部当り1〜10質量部程度である。
リグノセルロースの加水分解生成物をβ−グルコシダーゼで加水分解する際、使用する反応装置にUF膜を組み込むことで、β−グルコシダーゼを回収・再利用しながら反応を行うことが可能である。一方、更にNF(ナノフィルトレーション)膜を組み込むことで生成したグルコースと残存する未加水分解物との分離並びにβ−グルコシダーゼを再循環させて反応を継続させることも可能である。
上記UF装置としては、例えば、Advantec社製攪拌型ウルトラホルダーUHP−62K、日本ミリポア社製Pelliconミニフォルダー、ProFluxM12等が好ましいものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、上記UF装置で使用されるUF膜としては、例えば、Advantec社製Q0100(分画10,000)、日本ミリポア社製Biomax−8(分画10,000)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
リグノセルロースの加水分解生成物をβ−グルコシダーゼで加水分解させた後、得られたグルコースを含む溶液は、通常、濃縮して使用されるが、濃縮にNF膜を使用することで濃縮コストを低減させることが可能である。
NF膜を取り付ける耐圧容器としては、例えば、日東電工社製メンブレンマスターC40−B型、日本ミリポア社製レモリーノ等が好ましいものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。NF膜としては、例えば、Desalination Systems社製のDL、DK等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
又、上記濃縮液は、通常、脱色されるが、脱色には、活性炭の使用は糖類(特にセロオリゴ糖)を吸着するので好ましくなく、例えば、塩基性イオン交換樹脂、特にバイエル社製VP OC 1074、MP 500、オルガノ社製IRA404J等が有効であるが、これらに限定されるものではない。
更に、β−グルコシダーゼによる加水分解生成物からグルコースを粗分取するには、例えば、UF膜としてDesalination Systems社製G−50(GM)、NF膜としてはFilm Tech社製NF−45等の使用が好ましいが、これらに限定されるものではない。
更に必要に応じて、上記粗分取液中に含まれるグルコース(本来のグルコースのみ)の純度を上げるためには、上記粗分取液を既存の擬似移動層を有する分離カラムを用いてグルコースとその他の糖類とに分離することも可能である。この分離カラムに充填するイオン交換樹脂としては、例えば、三菱化学社製UBK555、バイエル社製VP OC 1800等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一方、本発明において、前記陰イオン交換樹脂を充填したカラムより分離・回収された燐酸水溶液は、燐酸を再使用するために濃縮することが必要である。通常、濃縮には蒸発操作が必要とされるが、この工程はエネルギー消費が大きく、濃縮コストを高くする。そこで、種々検討した結果、逆浸透(RO)膜装置で、先ず、希釈された燐酸水溶液を濃縮し、次いで、蒸発缶で更に濃縮することで全濃縮コストの削減が可能となる。
逆浸透膜による濃縮工程は、特に限定されず、公知の回分式(デットエンドフィルトレーション)、循環式(クロスフローフィルトレーション)あるいは循環せずクロスフローで1度透過させる方法、濃度を一定に保ちながらクロスフローで循環させる方法(ダイアフィルトレーション)のいずれの方法でも行うことができる。
回分式で使用される耐圧容器としては、例えば、日東電工社製メンブレンマスターC40−B型、日本ミリポア社製レモリーノ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
又、循環式で使用される装置としては、例えば、東レ社製RO・UFモジュール・平膜試験機TS−RU−10型等が挙げられる。循環式装置で使用する逆浸透複合膜としては、例えば、日東電工社製NTR−70SWC、東レ社製SU−810、Film Tech社製SW−4040等が挙げられるが、同等の燐酸イオンに対する透過阻止率を有する芳香族ポリアミド膜であればこれらに限定されるものではない。
上記RO膜を用いて濃縮された燐酸水溶液は、蒸発缶によって燐酸濃度として70質量%以上まで濃縮され、ポリ燐酸、89質量%燐酸あるいは85質量%燐酸と適宜混合してリグノセルロースの加水分解に再利用される。
一方、RO膜の透過液は、必要により活性炭あるいはイオン交換樹脂カラムを通過させて不純物を除去した後に、リグノセルロースの加水分解生成物の高濃度燐酸溶液の再沈殿水として再利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。文中の「%」は特に断りのない限り質量基準である。文中の「グルコース」は、本来のグルコース(D−グルコース)をいう。
[実施例1]
明光商会社製MS Shredder 122MAで裁断した新聞古紙180gを、85%燐酸1,800mlを加えた5L(リットル)のビーカー中に添加し、60℃に加温して2〜4時間強力に攪拌して新聞古紙を溶解及び/又は膨潤させ、加水分解させた。得られた加水分解生成物を含むスラリーを、その5倍容量の蒸留水中に激しく攪拌しながら流し込み、得られた希釈液を三菱化工機社製の分離型デカンタDS−10Vで2,000G〜2,500Gの遠心力で固液分離した。1回の操作でケーキ中の燐酸残存率は0.7%以下となった。
この固液分離操作で得られた加水分解生成物の燐酸溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、この濃縮液160mlをAcid Retardation作用を有する三菱化学社製陰イオン交換樹脂MA01SSを充填したカラム(内径44.0cm、高さ46.5cm)の最下段に添加し、蒸留水を溶出液として、上向流で、SV:0.888、LV:0.414m/hrの条件下で操作させ、排出側の電導度計とグルコース濃度計で排出液(加水分解生成物流分)をモニターした。図1に示したように最初に電導度の上昇と下降を認め、その後グルコース濃度の上昇及び下降が認められるが、この加水分解生成物留分を採取した。加水分解生成物留分が、カラムからほぼ排出された後に、カラムの最上段から蒸留水を流して上向流から下向流に変換して、燐酸水溶液を回収した。燐酸回収留分は電導度計でモニターしながら、高濃度(高電導度)部分の燐酸水溶液を回収した。一方、低濃度(低電導度)部分は上記固液分離過程において希釈に使用する蒸留水の代わりに再利用可能であった。
カラムで分離された加水分解生成物を含む水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液でpHを5.1に調整し、その300mlを500mlの三角フラスコに入れて溶液を攪拌しながら恒温槽で50℃に保ち、β−グルコシダーゼとしてノボザイムズジャパン社製Novozyme188を1ml添加して経時的に生成するグルコース濃度をエイブル社製Gluco.Jrで測定した。又、上記と同様にしてセルラーゼ(ジェネンコアインターナショナルジャパンリミッテド製Multifect GC)に代えて加水分解を行った。図2に示すように、β−グルコシダーゼを用いた場合には0.5〜1時間で反応がプラトーに達したが、セルラーゼを用いた場合は20時間以上を要した。
反応終了後、プロスタックPSHN AG0 21(日本ミリポア社製)(孔径0.45μm)をPro FluxM12(日本ミリポア社製)に組み込んだUF装置で上記の酵素による加水分解生成物を含む溶液から酵素等を除去した。この透過溶液からグルコースを得るために、表1に記載のDesalination Systems社製NF膜(DL、DK)を用いて透析を行い、グルコースの透過阻止状況を検討した。表1に示すように、これらのNF膜はグルコースの透過を阻止するものである。グルコースの透過阻止率はDLで95.4%であった。
又、Desalination Systems社製のUF膜(G20(GK))についてもグルコースの透過阻止性を確認したが、上記の該社製NF膜と同様なグルコースの透過阻止性を示した。
Figure 2005239979
上記の透析後のグルコース等を含む溶液を塩基性イオン交換樹脂(バイエル社製VP OC 1074)で脱色した後、夾雑イオンを陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の混床カラムで除いた後、必要に応じてグルコース以外の単糖類をカラムクロマトグラフィーで除去、精製した。
一方、カラムで分離・回収した分画範囲の異なる数種の燐酸溶液を、循環装置として東レ社製RO・UFモジュール・平膜試験機TS−RU−10型を用い、ROモジュールとして東レ社製SU−810(SUと略する)、Film Tech社製SW−4040(SWと略する)を用いて濃縮した。表2に示すように燐酸溶液を4〜6倍に濃縮可能であった。
Figure 2005239979
上記のRO装置で燐酸溶液を濃縮した後、ササクラ社製RHC−5で蒸発濃縮して、70%以上の燐酸溶液を回収して再利用した。
[実施例2]
アセック社製HVパルパー(容積0.3m3)に85%燐酸100Lを入れ、強力に攪拌している中に新聞古紙10kgを入れて溶解した。得られたスラリーの一部を5Lのビーカーに入れて、60℃に温度を保ちながら強力に2〜4時間攪拌して新聞古紙を加水分解させた。その加水分解生成物を含むスラリーは、実施例1と同様の処理が可能であった。
上記方法で分離したグルコース及びグルコース以外の単糖類等を含む溶液は、例えば、エタノール発酵、乳酸発酵等の糖蜜の代替品として利用可能であり、該溶液をイオン交換カラムで精製することでグルコース製品とすることも可能である。
又、この製造方法の中で燐酸の濃縮工程で使用するRO膜は、メッキ等の他の分野での燐酸の濃縮にも応用可能である。
実施例1における陰イオン交換樹脂MA01SS(三菱化学社製)を用いて分離したリグノセルロースの加水分解生成物の水溶液の、排出各分画におけるグルコース濃度と電気伝導度とを示す図である。 実施例1におけるカラム分離したリグノセルロースの加水分解生成物をβ−グルコシダーゼ(188:商品名Novozyme188)及びセルラーゼ(GC:商品名Multifect GC)でそれぞれ加水分解反応させたときの経時変化を示す図である。

Claims (6)

  1. リグノセルロースを高濃度の燐酸で加水分解して得られるリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液を、陰イオン交換樹脂を充填したカラムを使用して燐酸とリグノセルロースの加水分解生成物とに分離することを特徴とする分離方法。
  2. 陰イオン交換樹脂が、Acid Retardation(アシッド リタデーション)作用を有する陰イオン交換樹脂である請求項1に記載の分離方法。
  3. リグノセルロースの加水分解生成物の分離は上向流で行い、燐酸の分離は下向流で行う請求項1又は2に記載の分離方法。
  4. リグノセルロースを高濃度の燐酸で加水分解して得られるリグノセルロースの加水分解生成物を含む燐酸溶液を、陰イオン交換樹脂を充填したカラムを使用して燐酸とリグノセルロースの加水分解生成物とに分離し、分離されたリグノセルロースの加水分解生成物をβ−グルコシダーゼで加水分解することを特徴とするグルコースの製造方法。
  5. 分離された燐酸の水溶液をRO膜(逆浸透膜)で濃縮し、更に蒸発濃縮したものを燐酸の少なくとも一部として再使用する請求項4に記載のグルコースの製造方法。
  6. 分離されたリグノセルロースの加水分解生成物の水溶液を、NF(ナノフィルトレーション)で濃縮し、これにβ−グルコシダーゼを加えて上記加水分解生成物を加水分解する請求項4に記載のグルコースの製造方法。
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