JP2005239947A - インクジェット記録用水性インク - Google Patents

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Abstract

【課題】 顔料や共重合体の分離沈降や粒子径変化等が起こり難く高温長時間の保存において貯蔵安定性に優れ、かつそれから得られる着色画像の発色性にも優れるインクジェット記録用水性インクを得る。
【解決手段】 インクジェット記録用水性インクに含める樹脂として、メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下でスチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させた疎水性ポリマージオール(b1)と、メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下で(メタ)アクリル酸を重合させた親水性ポリマージオール(b2)と、有機ジイソシアネート(b3)とを反応させた構造のカルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂を用いることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、スチレン系単量体や(メタ)アクリル酸エステル系単量体等の重合体部分とポリウレタン樹脂部分とを一分子中に含有する樹脂を分散剤として含有するインクジェット記録用水性インクに関する。
インクジェット記録用インクに使用する分散剤用樹脂は、顔料に対する親和性と水に対する親和性とを兼備する必要があることから、組成を変えることで容易に親水性−顔料親和性のバランスを取ることが出来るスチレンアクリルランダム共重合体が多用されてきた。しかし、インクジェット技術の発展に伴い親水性−疎水性のバランスを取るだけでは解決できない問題が生じている。例えば、顔料を数十ナノメートルのオーダーにまで、微細に分散させながら、これを水中で安定に存在せしめるのは、これだけでは困難であるのが現状である。そこで、これらの問題を解決するために、近年では、スチレン系樹脂やアクリル系樹脂を用いて、これらの問題点を解決しようという試みが多数なされている。
特許文献1には、インクジェット記録用水性インクの調製に用いるエマルジョンとして、ポリアクリル酸を塩化チオニル中で環流させ酸塩化物とした後、これと、ポリエーテルジオールと有機ジイソシアネートと低分子ジオールとから得たポリウレタンとを反応させた、アクリル重合体部分とポリウレタン樹脂部分とを一分子中に含む樹脂(アクリル−ウレタン樹脂)のエマルジョンを用いている。
また特許文献2には、水性インクの調製の用いるエマルジョンとして、酸基含有エチレン性不飽和モノマーとメルカプト基含有ウレタンプレポリマーとをラジカル重合により結合した自己乳化性共重合体からなるアクリル−ウレタン樹脂のエマルジョンを用いている。この特許文献2には、前記自己乳化性共重合体を製造する前記した以外の製造方法も記載されている。
さらに特許文献3には、インクジェット記録用水性インクの調製に用いるエマルジョンとして、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをメルカプト基含有ジオールの存在下で重合させて水酸基を2つ含有するアクリル共重合体を得て、これを必須成分として有機ジイソシアネートと必要に応じてジメチロールプロピオン酸の様なカルボキシル基一つと水酸基を二つ有する低分子化合物とを反応させて得た、アクリル−ウレタン樹脂のエマルジョンを用いている。
これらのアクリル−ウレタン樹脂は、アクリル部分とポリウレタン部分とが化学的に結合しており、これら別個の樹脂を混合して用いた場合の相溶性不良等の欠点が解消される結果、この樹脂から調製されたインクジェット記録用水性インクは、いずれも、顔料や共重合体の分離沈降等が起こり難く、貯蔵安定性に優れているものの、それから得られる着色画像の発色性は依然として不充分であるという欠点があった。
特開平10−60353号公報 特開2000−345092号公報 特表2002−503746号公報
本発明は、顔料や共重合体の分離沈降や粒子径変化等が起こり難く高温長時間の保存においても貯蔵安定性に優れ、かつそれから得られる着色画像の発色性にも優れるインクジェット記録用水性インクを得ることを課題とする。
本発明者等は、アクリル−ウレタン樹脂の構造のうち、主にアクリル部分に相当する、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び(メタ)アクリル酸等の単量体の組成や分布を多様な形態に変えて、各種のアクリル−ウレタン樹脂及びスチレン−ウレタン樹脂を製造し、それらからインクジェット記録用水性インクを調製し、その貯蔵安定性と被記録媒体上の着色画像の発色性について検討を行った。
その結果、インクジェット記録用水性インクの調製に用いるアクリル−ウレタン樹脂やスチレン−ウレタン樹脂の一部分構造をなすアクリル系重合体やスチレン系重合体部分の化学構造を、親水性重合体部分と疎水性重合体部分とに機能分離させこれら二種の重合体を併用して得たアクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂とすると、親水性部分と疎水性部分とを有する一種の重合体のみを用いて得た同様の樹脂に比べて、高温長時間の保存においても優れた貯蔵安定性を有し、かつ着色画像の発色性もより優れたインクジェット記録用水性インクが得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、顔料(A)と、カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂(B)と、塩基性物質(C)とを含有するインクジェット記録用水性インクにおいて、前記樹脂(B)として、メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下でスチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させた疎水性ポリマージオール(b1)と、メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下で(メタ)アクリル酸を重合させた親水性ポリマージオール(b2)と、有機ジイソシアネート(b3)とを反応させた構造のカルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂を用いることを特徴とするインクジェット記録用水性インクを提供する。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、アクリル−ウレタン樹脂やスチレン−ウレタン樹脂の一部分構造であるアクリル系重合体やスチレン系重合体部分の化学構造を、親水性重合体部分と疎水性重合体部分とに機能分離させこれら二種の重合体を併用して得たアクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂を含有するので、高温長時間の保存においても優れた貯蔵安定性を有し、かつ従来より着色画像の発色性により優れたインクジェット記録用水性インクを提供出来るという格別顕著な効果を奏する。
本発明では、メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下でスチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させた疎水性ポリマージオール(b1)と、メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下で(メタ)アクリル酸を重合させた親水性ポリマージオール(b2)と、有機ジイソシアネート(b3)とを反応させた構造のカルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂を用いる。
本発明における疎水性ポリマージオール(b1)とは、メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下でスチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須成分として重合したジオールである。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルシロキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。特にポリマージオール(b1)の疎水性を保持するために、これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中でも、1gの水に対する溶解度が例えば5g以下のものを用いることが望ましい。
本発明のおける親水性ポリマージオール(b2)とは、メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下で(メタ)アクリル酸を必須成分として重合させたジオールである。
ポリマージオール(b2)は前記(メタ)アクリル酸だけを用いて調製しても良いが、必要ならば更に(メタ)アクリル酸エステル系単量体を併用して調製しても良い。特にポリマージオール(b2)の親水性を保持するために、1gの水に対する溶解度が例えば5gを越えるものを(メタ)アクリル酸エステル系単量体に併用することが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステル類としては、特に、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、モノメトキシ化されたエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体ジオールのモノ(メタ)アクリレート等の水酸基や1級アミノ基、2級アミノ基のようなイソシアネート類と反応する官能基を持たない親水性モノマーを使用することが望ましい。
疎水性ポリマージオール(b1)や親水性ポリマージオール(b2)を得るに当たっては、前記した以外のその他のモノエチレン性不飽和単量体を更に併用することが出来る。この様な単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
疎水性ポリマージオール(b1)としては、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須成分として、前記その他のモノエチレン性不飽和単量体を併用して共重合させた、芳香環を含む疎水性ポリマージオールが好ましい。ポリマージオール中の芳香環の含有量は、例えばプロトンNMRで同定できる。この芳香環を含む疎水性ポリマージオールとしては、室温でプロトンNMRを測定した時に、(芳香族プロトンのシグナル強度)/(活性水素を除いた疎水性ポリマージオール中の全プロトンのシグナル強度)が0.3〜0.7であるポリマージオールが特に好ましい。また親水性ポリマージオール(b2)としては、(メタ)アクリル酸を必須成分として、前記その他のモノエチレン性不飽和単量体を併用して共重合させた酸価60〜770の親水性ポリマージオールが好ましい。
本発明に使用される一つのメルカプト基と水酸基を二つ含有する連鎖移動剤としては、例えば、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
疎水性ポリマージオール(b1)や親水性ポリマージオール(b2)は、必要なエチレン性不飽和単量体を重合して合成することが出来る。これらのポリマージオールは、具体的には、疎水性有機溶剤中、重合開始剤と一つのメルカプト基と水酸基を二つ含有する連鎖移動剤との存在下、必要な前記した各単量体を必須成分として重合すれば得ることが出来る。
この際の重合開始剤としては、公知慣用のものがいずれも使用出来る。この様な重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。疎水性有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、n−ブタノール、トルエン、キシレン、テトラハイドロフラン等が挙げられる。
前記各ポリマージオールは、温度20〜120℃にて30分〜30時間の範囲内にて重合反応させることで得ることが出来る。ポリマージオールの重量分子量をどの程度とするかにもよるが、重合開始剤は、ポリマージオ−ルを構成する単量体100部当たり0.1〜7部、前記連鎖移動剤は、ポリマージオ−ルを構成する単量体100部当たり0.5〜10部とすることが出来る。必要であれば、重合開始剤や前記連鎖移動剤は、必要とされる全量を反応中に分割して反応系に添加することも出来る。
疎水性ポリマージオール(b1)や親水性ポリマージオール(b2)は、重量平均分子量2,000〜40,000であることが好ましい。各ポリマージオールは、同様の重量平均分子量であっても良いが、異なる重量平均分子量であっても良い。
これら疎水性ポリマージオール(b1)と親水性ポリマージオール(b2)とは、有機ジイソシアネート(b3)と反応させることで、カルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂やカルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂を得ることが出来る。本発明においては、ポリマージオール(b2)の親水性ポリマー部分で、スチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂を水性媒体中に安定的に分散させることを意図している。疎水性ポリマージオール(b1)と親水性ポリマージオール(b2)とは、どの様な割合で併用しても良く、親水性ポリマージオール(b2)自体の酸価や、得るべきスチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂の酸価をどうするかにより一義的に限定することは出来ないが、通常、質量換算で疎水性ポリマージオール(b1)/親水性ポリマージオール(b2)=30/70〜70/30とすることが出来る。
本発明においては、ウレタン以外の構造を司るポリマージオールを構成する全単量体をみたとき、スチレン系単量体が(メタ)アクリル酸エステル系単量体より多いもの及びスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とが同量のものをスチレン−ウレタン樹脂と言い、同様にウレタン以外の構造を司るポリマージオールを構成する全単量体をみたとき、(メタ)アクリル酸エステル系単量体がスチレン系単量体より多いものをアクリル−ウレタン樹脂と言うものとする。この基準は、疎水性ポリマージオール(b1)がスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体との両方を含む混合物を重合したポリマージオールの呼称についても同様に適用するものとする。
ここで用いる有機ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど、で代表されるような各種の脂肪族あるいは脂環式(環状脂肪族)ジイソシアネートが挙げられる。
本発明で用いるスチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂の製造するに際しては、疎水性ポリマージオール(b1)、親水性ポリマージオール(b2)、有機ジイソシアネート(b3)以外に、必要であれば、疎水性ポリマージオール(b1)と親水性ポリマージオール(b2)だけを用いて前記樹脂を製造した場合の技術的効果を損なわない少量の範囲において、低分子量ジオール、前記以外のポリマージオール、低分子量ジアミン等に代表されるその他の活性水素化合物を併用しても良い。
低分子量ジオールとは、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールの様なものである。
ポリマージオール(b1)及び同(b2)以外のポリマージオールとは、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカーボネートジオールの様なものである。
低分子量ジアミンとは、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N′−ジアミノピペラジン、2−メチルピペラジン、4,4′ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ジアミノベンゼン、ジフェニルメタンジアミン、メチレンビスジクロロアニリンの様なものである。
本発明においては、ポリマージオール(b2)の親水性ポリマー中のカルボキシル基を中和してスチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂を水性媒体中に安定的に分散させるが、必要に応じて、その他の親水性成分であるジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸等を少量併用しても良い。
本発明で用いるスチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂の製造するに際して、その反応順序は特に限定されるものではない。この重付加反応は、無溶剤下あるいは疎水性有機溶剤中20〜120℃、好ましくは30〜100℃で行うことが出来る。
疎水性ポリマージオール(b1)と親水性ポリマージオール(b2)とを含めた活性水素化合物の合計活性水素基と、有機ジイソシアネート(b3)のイソシアネート基の当量比は特に制限されるものではないが、通常2:1〜1:2、好ましくは1.2:1.0〜1.0:1.2となる割合で行うことが出来る。当量比が1.0に近くなるほど、より高分子量のスチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂が得られる。
この重付加反応に際しては、必要に応じて第三級アミン系触媒又は/及び有機金属系触媒を使用して反応を促進することができる。疎水性有機溶剤としては、前記ポリマージオールを製造する際に用いたものが同様に使用出来る。更にこの重付加反応においては、ウレタン構造がリニアー(分岐のない線状)形状であることが好ましいが、必要に応じて、反応の初めに、あるいは反応の途中に、若しくは反応の最後に、3官能以上の多価アルコール、3官能以上の有機ポリイソシアネート、3官能以上の有機ポリアミン等を併用することが出来る。この際には、3官能以上の多価アルコールを用いることが好ましい。
こうすることで、例えば、分岐形状のウレタン構造を持ったスチレン−ウレタン樹脂又はアクリル−ウレタン樹脂或いは、前記したリニアー形状のウレタン構造を持ったスチレン−ウレタン樹脂又はアクリル−ウレタン樹脂に、この分岐形状のウレタン構造を持ったスチレン−ウレタン樹脂又はアクリル−ウレタン樹脂の混合物とすることも出来る。こうすることで、インクから得られる印刷画像の皮膜強靱性や良好な耐溶剤性を付与することが出来る。また、前記重付加反応には、モノアルコール、有機モノイソシアネート及び有機モノアミン等を併用することも出来る。
本発明で用いる前記スチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂は、前記した疎水性ポリマージオール(b1)と親水性ポリマージオール(b2)と有機ジイソシアネート(b3)とを反応させる方法だけでなく、別法でも同様の樹脂を製造することが出来る。別法としては、前記メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤と有機ジイソシアネート(b3)とを反応させて初めに両末端水酸基のウレタンプレポリマーを製造し、このウレタンプレポリマーの存在下で、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させ、同様にしてウレタンプレポリマーの存在下で、(メタ)アクリル酸を重合させ、これらを有機ジイソシアネート(b3)と反応させる方法等がある。
カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂(B)は、重量平均分子量2000〜50000であって前記したポリマージオールより大きく、かつ酸価30〜300の範囲である、カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂であることが、インクジェット記録用水性インクに求められる要求性能を満足する点で好ましい。
中でも、カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂としては、疎水性ポリマージオール(b1)として、室温でプロトンNMRを測定した時に、(芳香族プロトンのシグナル強度)/(活性水素を除いた疎水性ポリマージオール中の全プロトンのシグナル強度)が0.3〜0.7である疎水性ポリマージオールを用い、かつ親水性ポリマージオール(b2)として酸価60〜770の親水性ポリマージオールを用い、最終的な樹脂の酸価が50〜200、室温でプロトンNMRを測定した時に、(芳香族プロトンのシグナル強度)/(活性水素を除いた疎水性ポリマージオール中の全プロトンのシグナル強度)が0.1〜0.5となる様に反応させて得た前記樹脂であることが、特に好ましい。
カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂は、用いたポリマージオールよりも大きな重量平均分子量を有するものであり、酸価30〜300の範囲であることが好ましい。
こうして得られたカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂は、そのカルボキシル基の少なくとも一部又は全部を塩基性物質で中和することにより、顔料と共に水中に分散させることで水性顔料分散体とすることが出来る。本発明において水性顔料分散体の液媒体は、必要ならば水のみでなく、水溶性有機溶剤を併用しても良い。本発明において、水性媒体とは、水のみ又は水と水溶性有機溶剤との混合物であって、質量換算での水の含有率が60%以上のものを言う。水性媒体は、取扱いが容易であることから、水のみであることが好ましい。
この際の顔料としては、従来公知の有機顔料、無機顔料をいずれも用いることが出来る。これらを例示すると、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料、カーボンブラック、酸価チタン、べんがら等の無機顔料等が挙げられる。ここで調色などの目的のために顔料は2種類以上のものを併用することもできる。
前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基、ジエチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。前記スチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂と塩基性化合物との併用による顔料の分散は、従来の、各種カルボキシル基を含まないスチレン−ウレタン樹脂やアクリル−ウレタン樹脂と各種イオン性界面活性剤との組み合わせに比べ、インクジェット記録用水性インクから得られる着色画像の耐水性に優れるという長所がある。
水溶性有機溶剤としても公知慣用のものがいずれも使用できる。この様な水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類またはグリコール類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のモノアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチル燐酸トリアミド、ヘキサメチル亜燐酸トリアミド、ジメチルイミダゾリジノンなどの含窒素有機化合物や含硫黄有機化合物等を挙げることが出来る。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、不揮発分濃度がより高い水性顔料分散体を予め調製しておき、それを必要な不揮発分濃度に希釈することで容易に調製出来る。この様な水性顔料分散体は、例えば、後記する様な1)〜4)の方法で製造することが出来る。
1)アクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂(B)と塩基性物質(C)とを含有する水性エマルジョンに顔料(A)を機械的に強制分散する水性顔料分散体の製造方法。
2)顔料(A)の存在下の水中でアクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂(B)を製造し、任意の工程で塩基性物質(C)を併用し必要に応じて会合させる水性顔料分散体の製造方法。
3)顔料(A)とアクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂(B)と有機溶剤の混合物を、水と塩基性物質(C)を用いて徐徐に油相から水相に転相させてから脱溶剤する水性顔料分散体の製造方法。
4)顔料(A)とアクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂(B)と塩基性物質(C)と有機溶剤と水との均一混合物から脱溶剤を行い、酸性物質を加えて酸析し析出物を洗浄後、この析出物を塩基性物質(C)と共に水性媒体に分散させる水性顔料分散体の製造方法。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、質量換算による分散粒子含有率1〜10%となる様に、前記した様な水性顔料分散体から調製することが出来る。この際には、前記した分散粒子含有率を越える、濃厚な水性顔料分散体に対して必要に応じて水や水溶性有機溶剤を加えて、前記範囲で必要な分散粒子含有率となる様に希釈したり、湿潤剤、防かび剤、pH調節剤等の水性インクの調製に必要な各種添加剤を併用することが出来る。また得られたインクジェット記録用水性インクは、必要に応じてミクロフィルターにより濾過をすることにより、ノズル目詰まり等の極めて少なくすることが出来る。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、アクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂が平均分散粒径5〜100nmとなる様に分散させることがxxxの点で好ましい。
また、吐出方式に応じて組成を適宜選択し調製することにより、本発明の水性顔料分散体から、ピエゾ方式でもサーマル方式でもいずれの方式にも対応出来るインクジェット記録用水性インクを得ることが出来る。本発明のインクジェット記録用水性インクは、公知慣用の被記録媒体への記録に使用することが出来る。この様な被記録媒体としては、例えば普通紙、樹脂コート紙、混抄紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。中でも、本発明のインクジェット記録用水性インクは、写真用紙の様なインクジェット専用紙においてより光沢の高い着色画像が得られるか、又は普通紙においてより鮮明な発色濃度が高い着色画像が得られる。特に被記録媒体の普通紙としては、針葉樹パルプを原料とした太い繊維を抄紙した普通紙が、この発色性の改良効果が最も大きい。
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を具体的に説明するものであり、実施の態様がこれにより限定されるものではない。以下の合成例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、いずれも質量換算である。また、不揮発分の測定は、シャーレ上で室温で測定した重量と、100℃で1時間乾燥させて溶剤や水分などを揮発させたあとの重量の比を示している。
予備合成例1〈疎水性ポリマージオール(1)の合成〉
80℃に加熱したメチルエチルケトン100部中に、窒素気流下、スチレン50部、ベンジルメタクリレート50部、チオグリセロール0.62部、和光純薬工業(株)製重合開始剤「V−59」(α,α’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))5部を混合し、攪拌しながら2時間で滴下した。滴下終了後、同温度でさらに20時間攪拌し、この間5時間毎にV−59を各々0.5部ずつ計4回添加し、疎水性ポリマージオール(1)を得た。このポリマージオール(1)の重量平均分子量(Mw)は5100であった。これにメチルエチルケトン(MEK)を添加して、不揮発分の割合が50%になるように調整した。
一方、この樹脂溶液を完全に乾固し、重DMSO中で、プロトンNMRを測定し、活性プロトンを除く全プロトンの示すシグナルに対する芳香族プロトンのシグナル強度の比を計算したところ、0.57(約57%)であった。
予備合成例2〈親水性ポリマージオール(2)の合成〉
スチレン50部、ベンジルメタクリレート50部に代えて、アクリル酸20部、メタクリル酸28部、日本油脂株式会社製PME1000(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)52部を用いる以外は合成例1と同様にして、親水性ポリマージオール(2)を得た。このポリマージオール(2)の重量平均分子量(Mw)は8800、酸価は149mgKOH/gであった。これにメチルエチルケトンを添加して、不揮発分の割合が50%になるように調整した。
予備合成例3〈両親媒性ポリマージオール(3)の合成〉
スチレン50部、ベンジルメタクリレート50部に代えて、アクリル酸10部、メタクリル酸14部、スチレン38部、ベンジルメタクリレート38部を用いる他は予備合成例1と同様にして、両親媒性ポリマージオール(3)を得た。このポリマージオール(3)の重量平均分子量(Mw)は5100、酸価は150mgKOH/gであった。これにメチルエチルケトンを添加して、不揮発分の割合が50%になるように調整した。
〈合成例1〉
疎水性ポリマージオール(1)MEK溶液200部、親水性ポリマージオール(2)MEK溶液200部、2,4−トルイレンジイソシアネート0.9421部、オクタン酸第一錫0.0001部、メチルエチルケトン50部を混合し、80℃で10時間、反応させ、これにメチルエチルケトンを添加して、不揮発分の割合が50%のアクリル−ウレタン樹脂(1)を得た。この樹脂の酸価は130mgKOH/gであった。
一方、この樹脂溶液を完全に乾固し、重ジメチルスルホキシド(DMSO)中で、プロトンNMRを測定し、活性プロトンを除く全プロトンの示すシグナルに対する芳香族プロトンのシグナル強度の比を計算したところ、約0.27(約27%)であった。
〈合成例2a〉
疎水性ポリマージオール(1)MEK溶液200部、2,4−トルイレンジイソシアネート0.4462部、オクタン酸第一錫0.0001部、メチルエチルケトン50部を混合し、80℃で10時間、反応させ水酸基を含有するスチレン−ウレタン樹脂を得た。
一方、この樹脂溶液を完全に乾固し、重DMSO中で、プロトンNMRを測定し、活性プロトンを除く全プロトンの示すシグナルに対する芳香族プロトンのシグナル強度の比を計算したところ、約0.57(約57%)であった。
〈合成例2b〉
疎水性ポリマージオール(1)MEK溶液に代えて、親水性ポリマージオール(2)MEK溶液200部を用いる以外は、合成例2aと全く同様にして、水酸基を含有するアクリル−ウレタン樹脂を得た。
〈合成例2〉
合成例2aで得た水酸基を含有する疎水性スチレン−ウレタン樹脂MEK溶液全量(合成例2aの樹脂100.44部含有)、合成例2bで得た水酸基を含有する親水性アクリル−ウレタン樹脂MEK溶液全量(合成例2bの樹脂100.44部含有)、2,4−トルイレンジイソシアネート0.0496部、オクタン酸第一錫0.0001部とを混合し、80℃で10時間反応させ、これにメチルエチルケトンを添加して、不揮発分の割合が50%のアクリル−ウレタン樹脂(2)を得た。この樹脂の酸価は132mgKOH/gであった。
一方、この樹脂溶液を完全に乾固し、重DMSO中で、プロトンNMRを測定し、活性プロトンを除く全プロトンの示すシグナルに対する芳香族プロトンのシグナル強度の比を計算したところ、約0.27(約27%)であった。
〈合成例3〉
疎水性ポリマージオール(1)MEK溶液200部、親水性ポリマージオール(2)MEK溶液200部、グリセリン0.0104部、2,4−トルイレンジイソシアネート0.951部、オクタン酸第一錫0.0001部、メチルエチルケトン50部を混合し、80℃で10時間、反応させ、これにメチルエチルケトンを添加して、不揮発分の割合が50%のアクリル−ウレタン樹脂(3)を得た。この樹脂の酸価は133mgKOH/gであった。
一方、この樹脂溶液を完全に乾固し、重DMSO中で、プロトンNMRを測定し、活性プロトンを除く全プロトンの示すシグナルに対する芳香族プロトンのシグナル強度の比を計算したところ、約0.27(約27%)であった。
〈合成例4〉
両親媒性ポリマージオール(3)MEK溶液200部、2,4−トルイレンジイソシアネート0.471部、オクタン酸第一錫0.0001部、メチルエチルケトン50部を混合し、80℃で10時間、反応させ、これにメチルエチルケトンを添加して、不揮発分の割合が50%のスチレン−ウレタン樹脂(4)を得た。
〈水性媒体分散液の調製〉
上記の合成例1〜4で得た樹脂(1)〜(4)のそれぞれについて、メチルエチルケトンを添加して、不揮発分40質量%のメチルエチルケトン溶液を調製した。得られた溶液100部に、各樹脂が有するカルボキシル基を100%中和する量に相当する水酸化カリウムを水50部に溶解した溶液を攪拌しながら加えた後、減圧下に溶剤を留去し、不揮発分が20%となるよう水を加えて、対応する樹脂(1)〜(4)の水性媒体分散液を得た。
〈水性顔料分散組成物の調製〉
上記で得られた水性媒体分散液(1)〜(4)のそれぞれについて、当該水性媒体分散液150部、チバガイギー社製クロモフタルイエロー8GCF(C.I.ピグメントイエロー128)100部、ジエチレングリコール200部、水150部、三洋化成工業(株)製ポリプロピレングリコール「PP−950」50部、東レ(株)製ビーズ「トレセラム」(直径0.5mm)、2400部を、AIMEX社製サンドミル「6TSG−1/4」に仕込み、6時間分散を行った。ビーズを濾別して水性顔料分散組成物を得た。樹脂(1)の水性媒体分散液を使用した水性顔料分散組成物を水性顔料分散組成物(1)とし、以下同様に樹脂(2)〜(4)の水性媒体分散液を使用した水性顔料分散組成物を、それぞれ水性顔料分散組成物(2)〜(4)とした。
水性顔料分散組成物(1)60.5部を水8.5部で希釈後、ポアサイズ1.2μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、ベースインク(1)とした。次いで、ベースインク(1)60部に前記PP−950の5部を加え、イオン交換水162部で希釈してインクジェット記録用水性インク(1)を得た。
水性顔料分散組成物(1)の代わりに水性顔料分散組成物(2)を使用した以外は実施例1と同様にして、ベースインク(2)とインクジェット記録用水性インク(2)を得た。
水性顔料分散組成物(1)の代わりに水性顔料分散組成物(3)を使用した以外は実施例1と同様にして、ベースインク(3)とインクジェット記録用水性インク(3)を得た。
[比較例1]
水性顔料分散組成物(1)の代わりに水性顔料分散組成物(4)を使用した以外は実施例1と同様にして、ベースインク(4)とインクジェット記録用水性インク(4)を得た。
<顔料分散安定性評価試験>
各水性顔料分散組成物における顔料分散安定性および当該水性顔料分散組成物を使用したインクジェット記録用水性インクの貯蔵安定性および吐出安定性の指標として、ベースインク調製直後の、当該ベースインク中に分散している顔料の体積平均粒子径および当該ベースインクを80℃のオーブン中で7日間放置した後のベースインク中に分散している顔料の体積平均粒子径をリーズ・アンド・ノースラップ社製「マイクロトラックUPA150」で測定し、顔料の粒子径変化率を求めた。粒子径の変化率が130%以下の場合、顔料分散安定性が高いと評価した。
また、各インクジェット記録用水性インク調製直後の粘度と、これを80℃のオーブン中に1週間放置した後の粘度を測定し、後者の値を前者の値で割った値を100倍し、粘度変化指数とした。粘度変化指数が130以下の場合、インクジェット記録用水性インクが実用的な貯蔵安定性を有していると評価した。なお粘度の測定には、東機産業(株)製「R型粘度計」を使用し、25℃、30rpmの条件下で測定した。
<インクジェットプリンターによる印刷適性試験>
ENCAD社製インクジェットプリンター「NOVA Jet700」を用い、各インクジェット記録用水性インクの印刷適性試験を行った。プリンターの印刷モードを双方向、パス4、スピード10に設定し、ユポコーポレーション(株)製合成紙「ユポVJFP」にベタ画像を印刷し、その光学濃度をマクベス社製反射濃度計「RD918」を用いて測定した。また、日本電色工業(株)製色差計「SZ−Σ90」を使用してベタ印刷画像の彩度を測定した。
これらの顔料分散安定性評価試験およびインクジェットプリンターによる印刷適性試験の結果を表1に示した。

Figure 2005239947
表1中、樹脂欄の(1)〜(4)は、水性顔料分散組成物およびインクジェット記録用水性インクに使用した合成例1〜4の各樹脂(1)〜(4)を表し、顔料粒子径は体積平均粒子径を表す。粘度変化の欄に記載した数値は、前記した粘度変化指数である。
表1の結果から、両親媒性ポリマージオールを用いて得たアクリル−ウレタン樹脂を含有する比較例1の水性顔料分散組成物は、疎水性ポリマージオールと親水性ポリマージオールとを併用して得た実施例1のそれに比べて、調製直後の組成物に分散した顔料の粒子径絶対値がより小さい上、高温長時間保存後の貯蔵安定性に優れており、インクとした場合においても、その中での顔料の分散状態が良好なことは明白である。
疎水性ポリマージオールと親水性ポリマージオールとを併用して得た樹脂を用いた実施例1と実施例2との対比においては、疎水性部分と親水性部分とがランダムに存在する実施例1のインクに比べ、疎水性部分と親水性部分とが明瞭に局在する実施例2のインクの方が、印刷画像における光学濃度や彩度がより高くなり、より発色性に優れることが明らかである。
また疎水性ポリマージオールと親水性ポリマージオールとを併用して得た樹脂を用いた実施例1と実施例3との対比においては、リニアー構造からなる樹脂を含有する実施例1のインクに比べ、分岐(三次元)構造からなる樹脂を含有する実施例3のインクの方が、印刷画像の強靱性や耐溶剤性に優れていた。
この様に、実施例1〜3の顔料粒子は、比較例1の顔料粒子に比べて、粒径が小さい上に、粒子径変化率が小さいことから、インク中での顔料の分散状態が良好なことは明白である。しかも、このような樹脂を使ったインクでは、機能分離した形で、水親和性部位と顔料親和性部位とを併せ持っているために、樹脂の顔料に対する親和力がより高まって、インク中にある浮遊樹脂量が減少すると考えられる。そのために色材が紙表面に残りやすくなった結果、画像の発色性に関する光学濃度や彩度が向上することも明らかになった。

Claims (5)

  1. 顔料(A)と、カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂(B)と、塩基性物質(C)とを含有するインクジェット記録用水性インクにおいて、前記樹脂(B)として、
    メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下でスチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させた疎水性ポリマージオール(b1)と、
    メルカプト基一つと水酸基を二つ含有する連鎖移動剤の存在下で(メタ)アクリル酸を重合させた親水性ポリマージオール(b2)と、
    有機ジイソシアネート(b3)とを
    反応させた構造のカルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂
    を用いることを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
  2. カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂(B)が、酸価30〜300の範囲である、カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂である請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
  3. カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂(B)が、疎水性ポリマージオール(b1)として、これを室温でプロトンNMRを測定した時に、(芳香族プロトンのシグナル強度)/(活性水素を除いた疎水性ポリマージオール中の全プロトンのシグナル強度)が0.3〜0.7である疎水性ポリマージオールを用い、かつ親水性ポリマージオール(b2)として酸価60〜770の親水性ポリマージオールを用い、最終的な樹脂の酸価が50〜200、室温でプロトンNMRを測定した時に、(芳香族プロトンのシグナル強度)/(活性水素を除いた疎水性ポリマージオール中の全プロトンのシグナル強度)が0.1〜0.5となる様に反応させた、カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂である請求項2記載の水性顔料分散体。
  4. カルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂として、前記ジオ−ル(b1)、前記ジオール(b2)及び前記有機ジイソシアネート(b3)に加えて、三官能以上の多価アルコールを更に用いて反応させた構造のカルボキシル基を含有するアクリル−ウレタン樹脂又はカルボキシル基を含有するスチレン−ウレタン樹脂である請求項1〜3のうちのいずれか一項記載のインクジェット記録用水性インク。
  5. アクリル−ウレタン樹脂又はスチレン−ウレタン樹脂がインク中で平均分散粒径5〜100nmとなる様に分散した請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のインクジェット記録用水性インク。
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