JP2005239851A - 末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体及びその製造方法 - Google Patents

末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体及びその製造方法 Download PDF

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Masaaki Komatsu
正明 小松
Yoshinori Miyagawa
義教 宮川
Masakazu Hashimoto
昌和 橋本
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Abstract

【課題】 レンズなどの光学部材の成形材料として用いた際に焦点のボケや焦点距離の変動などが生じない末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を提供する事。
【解決手段】 片側あるいは両側の分子末端が、環構造及び極性基を有する変性剤で変性されてなる末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体。
ビニル脂環式炭化水素重合体が、芳香族ビニル単量体と鎖状ビニル単量体のランダム共重合体の芳香環水素添加物であると好ましく、変性剤の環構造が多環構造であるとより好ましく、変性剤の極性基が、カルボニル基又はエステル基であると特に好ましく、変性剤が9−フルオレノンであると最も好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規なビニル脂環式炭化水素重合体に関し、更に詳しくは、分子末端が環構造及び極性基を有する変性剤で変性されてなる末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体に関する。
ビニル脂環式炭化水素重合体は、透明性、低吸湿性、耐薬品性、耐熱性、低複屈折性に優れており、レンズや光ディスク基板などの光学部材に用いられている。
特許文献1には、芳香族ビニル単量体とそれと共重合可能な他の化合物とを共重合し、更に、その共重合体中の芳香環を水素添加して得られるビニル脂環式炭化水素重合体を用いたレンズが開示されている。
特許文献2には、ビニルシクロアルカンとそれと共重合可能な他の化合物とを共重合して得られるビニル脂環式炭化水素重合体を用いた光ディスク基板が開示されている。
しかし、これらのビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料を成形してなる成形体は、ひけが生じていたり、部位により屈折率に差があることがあった。
このひけや屈折率の差の発生を防ぐ方法として、特許文献3には、金型温度と射出圧力を特定の範囲にして射出成形するビニル脂環式炭化水素重合体樹脂の射出成形方法が開示されている。
特開平4−75001号公報 特開昭63−43910号公報 特開2003−103555号公報
しかしながら、特許文献1乃至3記載のビニル脂環式炭化水素重合体からなる成形材料を用いて成形したレンズは、特許文献3に記載されている射出成形方法で成形を行っても、焦点がボケたり、経時的に焦点距離が変動することがあった。
従って、本発明の課題は、レンズなどの光学部材の成形材料として用いた際に焦点のボケや経時的な焦点距離の変動が生じないビニル脂環式炭化水素重合体を提供する事にある。
本発明者らは、レンズの焦点のボケや焦点距離の変動ついて検討を行った結果、焦点がボケたり経時的に焦点距離が変動するレンズは、成形の際に射出圧力や金型冷却歪の影響でレンズ内部に応力が生じ、密度分布や応力複屈折が発生しており、レンズ内部の密度分布が広いと、レンズ内部の屈折率が均一でないために焦点が合わず焦点のボケが生じ、又、レンズを使用していくうちにレンズ内部の応力歪が緩和され、密度分布が経時変化するために焦点距離が変動することを見出した。
本発明者らは、更に、成形品内部の密度分布を狭め且つ、応力歪を少なくする為に、用いるビニル脂環式炭化水素重合体について鋭意検討を行った。その結果、特定の変性剤により変性された末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体は、比容積の圧力及び温度に対する低依存性のために、成形時の射出圧力や金型冷却歪の影響を受けづらく、得られる成形品は、応力歪が少なく、密度分布が狭く、かつその密度分布の経時変化が少ないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
かくして本発明によれば、
片側あるいは両側の分子末端が、環構造及び極性基を有する変性剤で変性されてなる末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体が提供される。
末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体が、芳香族ビニル単量体と鎖状ビニル単量体のランダム共重合体の芳香環水素添加物であると好ましく、変性剤の環構造が多環構造であるとより好ましく、変性剤の極性基が、ケトン又はアルコキシカルボニルであると特に好ましく、変性剤が9−フルオレノンであると最も好ましい。
また、芳香族ビニル単量体を含有する単量体組成物をリビングアニオン重合して得られるアニオンリビング状態の芳香族ビニル重合体を、環構造及び極性基を有する変性剤で変性し、得られた末端変性芳香族ビニル重合体の芳香環を水素添加する末端変性変性ビニル脂環式炭化水素重合体の製造方法が提供される。
更に、本発明の末端変性変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料及び、その成形材料を成形して成る成形体が提供され、該成形体は、光学用成形体として好適である。
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料を成形した成形品は、応力歪が少なく、成形品内部の密度分布が狭く且つその密度分布の経時変化が少ない。
又、本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料を成形したレンズは、焦点のボケや経時的な焦点距離の変動が生じない。
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体は、脂環式構造を有する重合体部分(i)と、環構造及び極性基を有する変性剤由来の末端変性部分(ii)とからなっている。
脂環式構造を有する重合体部分(i)は、ビニル基を有する脂環式炭化水素化合物をビニル付加重合して得られるような繰り返し単位、すなわち側鎖に脂環式構造を有する繰り返し単位を有するものである。
該脂環式構造を構成する炭素原子数は通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であり、最も好ましくは6個である。
炭素原子数がこの範囲にあると、耐熱性、成形加工性の点で好ましい。
脂環式構造を有する重合体部分(i)は、(a)ビニルシクロアルカン系単量体を重合することによって、(b)ビニルシクロアルケン系単量体を重合し必要に応じて水素添加することによって、あるいは(c)芳香族ビニル単量体を重合し更に重合体中の芳香環を水素添加することによって得られる。
ビニルシクロアルカン系単量体の具体例としては、ビニルシクロヘキサン、3−メチルイソプロペニルシクロヘキサン等が挙げられる。
ビニルシクロアルケン系単量体の具体例としては、4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン等が挙げられる。
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、t−ブチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、等のアルキル化スチレン;ビニルピリジン;等が挙げられる。中でもスチレンが好ましい。
これらのビニルシクロアルカン系単量体、ビニルシクロアルケン系単量体及び芳香族ビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
脂環式構造を有する重合体部分(i)は、前記単量体とそれらと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
共重合可能な単量体としては、特に制限は無いが、鎖状ビニル単量体等が挙げられ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチルペンテン、及び1−ヘキセン及等のα−オレフィン系単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等の鎖状共役ジエン系単量体;等が挙げられる。中でも操作性及び重合制御の容易さなどから1,3−ブタジエン及び2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましい。
これらの共重合可能な単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
脂環式構造を有する重合体部分(i)の全繰り返し単位に対する脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は特に限定されないが、50〜100重量%にあると好ましく、90〜100重量%にあるとより好ましく、93〜99重量%にあると特に好ましい。
脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、耐熱性及び低複屈折性の点で好ましい。
又、脂環式構造を有する重合体部分(i)が共重合体である場合には、ランダム共重合体、擬似ランダム共重合体、ブロック共重合体、傾斜ブロック共重合体等の何れでも良い。中でもランダム共重合体であると好ましい。
ブロック共重合体の場合、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、テトラブロック共重合体、ペンタブロック共重合体、ヘキサブロック共重合体、ヘプタブロック共重合体等、ブロック数は特に限定されず、各ブロックのブロック長が互いに同じでも異なってもよい。
脂環式構造を有する重合体部分(i)の重合反応は、ラジカル重合、リビングラジカル重合;アニオン重合、カチオン重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合等のイオン重合;等の公知の方法で行うことが出来る。
中でも、分子量の調整及び末端変性の容易さからイオン重合が好ましく、リビングアニオン重合がより好ましい。
重合反応に用いる重合開始剤は特に限定されないが、重合反応がラジカル重合である場合には、有機過酸化物等が挙げられ、重合反応がカチオン重合である場合には、BF、PF等が挙げられ、重合反応がリビングアニオン重合である場合には、有機アルカリ金属化合物等が挙げられる。
有機アルカリ金属化合物の中でも、有機モノリチウム化合物が好ましく、その具体例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、4−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム等が挙げられる。
重合反応は溶液重合、スラリー重合等の方法を用いることができるが、反応熱の除去が容易である点で、溶液重合が好ましい。この場合、重合体及び/又はその水素添加物を溶解できる不活性溶媒を用いる。
不活性溶媒としては、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂環式炭化水素類は、重合体の溶解性が良好であり、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができるので好ましい。
これらの溶媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用単量体100重量部に対して200〜2,000重量部となるような割合で用いられる。
(変性剤)
環構造及び極性基を有する変性剤由来の末端変性部分(ii)は、ビニルシクロアルカン系単量体の(共)重合体、ビニルシクロアルケン系単量体の(共)重合体、又は芳香族ビニル単量体の(共)重合体と、環構造及び極性基を有する変性剤の極性基と反応させることによって得られる。
本発明に用いる変性剤は、環構造及び極性基を有してなる。
極性基としては、脂環式構造を有する重合体部分(i)の末端部分と反応するものであれば特に限定されないが、ハロゲン化ケイ素、アルコキシカルボニル、カルボン酸、酸ハライド、エポキサイド、ケトン、ホルミル、アミン、アミド、アルキルハライド、酸無水物等が挙げられる。
中でも、反応後にも極性基を有するものが好ましく、未変性の脂環式構造を有する重合体部分(i)が、ビニルシクロアルケンの(共)重合体又は芳香族ビニル単量体の重合体の水素添加物である場合には、水素添加触媒の活性低下が起きない点及び変性の容易さの点で、窒素原子を含まない極性基がより好ましく、アルコキシカルボニル、ケトンが特に好ましく、ケトンが最も好ましい。
環構造としては、特に限定されないが、シクロペンタン、シクロヘキサン等の単環式炭化水素;チクロヘキサンスピロシクロペンタン等のスピロ炭化水素;インデン、フルオレン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン等及びこれらの水素化物の縮合多環式炭化水素;などが挙げられる。
環構造及び極性基を有する変性剤の具体例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロデカノン、クマリン、dl−カンファー、L−(−)−フェンコン、(R)−(−)−4,4a,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−4aα−メチル−2(3H)−ナフタレノン、(S)−(+)−4,4a,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−4aβ−メチル−2(3H)−ナフタレノン、9−フルオレノン、ペリナフテノン、キサントン、アントロン、ジベンゾスベロン、ジベンゾスベレノン、フラボン、フラバノン、4,4´−ヂメチルベンゾフェノン、1,5−ジフェニルカルバジド、4−ベンゾイルビフェニル、1−ベンジル−3−メチル−4−ピペリドン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、ビアントラセンなどの環状ケトン類、アビエチン酸メチルエステル、アビエチン酸エチルエステルなどのエステル類が挙げられる。
中でも入手のしやすさ、反応制御の容易さなどからシクロヘキサノン、9−フルオレノン、アビエチン酸エチルエステルが好ましく、9−フルオレノンがより好ましい。
変性方法は特に限定されないが、アニオンリビング状態の芳香族ビニル単量体の重合体と、カルボニル基などの極性基及び環構造を有する変性剤を反応させる方法が好ましい。
又、両側の分子末端が変性された末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を得るには、例えば、開始剤としてジリチオメタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウムなどを用いてリビングアニオン重合する方法や、ナフタレンナトリウムを開始剤としてリビングアニオン重合する方法が挙げられる。
末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体の末端変性率は、35%〜100%の範囲にあると好ましく、40%〜100%の範囲にあるとより好ましく、49%〜100%にあると特に好ましい。
本発明において、末端変性率とは、末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体中の全末端中の変性されてなる末端の割合である。
(水素添加)
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体は、水素添加されていると好ましい。水素添加反応は、公知の水素添加触媒を用いて行うことができる。
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体中の不飽和結合(芳香環中のものを除く)の水素添加率は、90%以上であると好ましく、99%以上であるとより好ましい。
ビニル脂環式炭化水素重合体中の芳香環中の不飽和結合(芳香族環の核水添)の水素添加率は90%以上であると好ましく、97%以上であると特に好ましい。芳香族環の核水添の水素添加率がこの範囲であると低複屈折性の点で好ましい。
水素添加触媒としては、オレフィン化合物の水素添加に際して一般に使用されているものであれば使用可能であり、特に制限されないが、たとえば次のようなものがある。
不均一系触媒の具体例としては、ニッケル、パラジウム、白金またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒、例えばニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等が挙げられる。
また、均一系触媒としては、周期律表第8族の金属を基体とするものがあげられる。均一系触媒の具体例としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、ニッケルアセチルアセトネート/トリエチルアルミニウム等のニッケル、コバルト化合物と周期律表第1A〜3A、1B〜3B族金属の有機金属化合物からなるもの、あるいはロジウム化合物等が挙げられる。
水素添加反応は、触媒の種類により均一系または不均一系で、ゲージ圧0.5〜10MPaGの水素圧下、0〜230℃、好ましくは20〜200℃で行われる。
(末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体)
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、10,000〜1,000,000の範囲にあると好ましく、30,000〜300,000の範囲にあるとより好ましく、50,000〜70,000の範囲にあると特に好ましい。
重量平均分子量がこの範囲にあると、成形時の配向による複屈折の上昇が少なく、応力複屈折の緩和が容易であり好ましい。
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に限定されないが、1〜5の範囲にあると好ましく、1〜3の範囲にあるとより好ましく、1〜2.5の範囲にあると特に好ましい。
分子量分布がこの範囲にあると、加工性の点で好ましい。
本発明において重量平均分子量及び分子量分布は、テトラヒドロフランを溶液としてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の値から求めた値である。
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体中の異物含有量は、粒径0.5μm以上の異物含有量で、3×10個/g以下であると好ましく、2×10個/g以下であるとより好ましく、1×10個/g以下であると最も好ましい。
異物としては、触媒残渣、ゲル状物、副反応物及び外部から混入する粉塵などが挙げられる。
異物の数が少ないと、例えば該重合体をレンズとして用いた際に光散乱がおきづらいので好ましい。
異物の含有量は、光散乱式微粒子検出器を用いて測定することができる。
異物を低減させる方法としては、末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体の溶液を、(a)孔径が好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下の機械式フィルターで、少なくとも1回、好ましくは2回以上ろ過する方法、(b)電荷的捕捉機能を有するろ過フィルターでろ過する方法、などを挙げることができる。
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体の揮発成分含有量は、0.3重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましく、500ppm以下であることがさらに好ましい。
揮発成分としては、有機溶剤、未反応モノマーまたはその変性物などが挙げられる。
揮発成分がこの範囲にあると、成形時にボイドや表面の凹状欠陥などが発生しずらいので好ましい。
揮発成分を低減させる方法としては、ビニル脂環式炭化水素重合体の重合転化率を向上させて未反応モノマーを低減させる方法、脱溶剤時の条件(例えば温度、減圧度など)を最適化し、溶剤と共に揮発成分を除去する方法などが挙げられる。
脱溶剤においては、重合体の分子量低下を抑制することが重要であり、重合体溶液の揮発成分の一部を、容器内で蒸発除去して重合体濃度を30〜95重量%程度にする予備濃縮工程を施したのち、重合体を薄膜状にして加熱及び/又は減圧し、揮発成分の残部を除去する方法などを用いることができる。
(成形材料)
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体は、必要に応じて公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で含有させ成形材料とすることができる。公知の添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、滑剤や分散助剤、潤滑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、防曇剤、顔料、有機物充填材、中和剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
前記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキスメチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリチル−テトラキス3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]などのアルキル置換フェノール系化合物;2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−{1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル}フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのモノホスファイト系化合物;4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3'−チオジプロピピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3'−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その添加量は、ビニル脂環式炭化水素重合体100重量部に対し、通常0.01〜2.0重量部、好ましくは0.02〜1.0重量部、より好ましくは0.05〜0.5重量部の範囲である。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、ベンゾエート系光安定剤などが挙げられ、これらの中でもヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
HALSの具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−〔2−{3−(3,5−ジ−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9,−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N'−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、テトラキシ(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、N,N',N'',N'''−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などが挙げられる。
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、
ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕などのMnが2000〜5000のものが好ましい。
これらの光安定剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その添加量は、末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体100重量部に対し、通常0.0001〜5重量部、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部の範囲である。
その他の樹脂としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の主鎖水素化物(=スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体〔SEBS〕)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の主鎖水素化物(=スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体〔SEPS〕)などの重合体などが挙げられる。
成形材料は、その調製法によって特に限定されない。
例えば、末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体の溶液に、溶剤に溶解した添加剤を添加した後、溶剤を除去して添加剤を含有する変性ビニル脂環式炭化水素重合体を回収する方法、あるいは変性ビニル脂環式炭化水素重合体と必要に応じて添加剤とをヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダー等の混合器を用いて混合することによって、または更にこの混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等により溶融混練することによって得られる。
成形材料は、成形性の点で、造粒あるいは粉砕、又はペレット化することが好ましい。
(成形体)
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料は、周知の熱可塑性樹脂の成形法、例えば、射出成形法、押し出し成形法、キャスト成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、真空成形法、プレス成形法、圧縮成形法、回転成形法、カレンダー成形法、圧延成形法、切削成形法等によって成形加工し、成形体とすることができる。
中でも、寸法精度に優れ、非球面形状などが成形可能な射出成形法又はプレス成形法が好ましく、特に射出成形法が好適である。
金型の材質は特に限定されないが、金型を構成する金属部材の表面をポリイミドやポリエ−テルイミド等の耐熱性樹脂で厚さが0.5〜500μmになるようにコ−ティングして金型表面の断熱性を向上させたものであると好ましい。更に、金型表面の強度向上のため、前記耐熱性樹脂層を、厚さ0.5〜50μmのCr、Ni等のメッキ層で被覆したものも好ましい。このような金型を使用すれば、成形時に成形材料表面が急冷されることによる光学特性の悪化を防止することができる。
(用途)
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体は、従来のビニル脂環式炭化水素重合体が有する透明性、低吸湿性、耐薬品性、耐熱性、低複屈折性を有している。
従って本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有してなる成形材料は各種成形品の成形材料として広範な分野において有用である。
例えば、光ディスク、光学レンズ、プリズム、光拡散板、光カード、光ファイバー、光学ミラー、液晶表示素子基板、導光板、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学材料;
液体、粉体、または固体薬品の容器(注射用の液体薬品容器、アンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ、輸液用バッグ、密封薬袋、プレス・スルー・パッケージ、固体薬品容器、点眼薬容器等)、サンプリング容器(血液検査用サンプリング試験管、薬品容器用キャップ、採血管、検体容器等)、医療器具(注射器等)、医療器具等の滅菌容器(メス用、鉗子用、ガーゼ用、コンタクトレンズ用等)、実験・分析器具(ビーカー、シャーレ、フラスコ、試験管、遠心管等)、医療用光学部品(医療検査用プラスチックレンズ等)、配管材料(医療用輸液チューブ、配管、継ぎ手、バルブ等)、人工臓器やその部品義(歯床、人工心臓、人造歯根等)等の医療用器材;
処理用または移送用容器(タンク、トレイ、キャリア、ケース等)、保護材(キャリアテープ、セパレーション・フィルム等)、配管類(パイプ、チューブ、バルブ、流量計、フィルター、ポンプ等)、液体用容器類(サンプリング容器、ボトル、アンプルバッグ等)の電子部品処理用器材;
被覆材(電線用、ケーブル用等)、民生用・産業用電子機器匡体(複写機、コンピューター、プリンター、テレビ、ビデオデッキ、ビデオカメラ等)、構造部材(パラボラアンテナ構造部材、フラットアンテナ構造部材、レーダードーム構造部材等)等の電気絶縁材料;
一般回路基板(硬質プリント基板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線板等)、高周波回路基板(衛星通信機器用回路基板等)等の回路基板;
透明導電性フィルム(液晶基板、光メモリー、面発熱体等)の基材; 半導体封止材(トランジスタ封止材、IC封止材、LSI封止材、LED封止材等)、電気・電子部品の封止材(モーター封止材、コンデンサー封止材、スイッチ封止材、センサー封止材等)の封止材;
ルームミラーやメーター類のカバーなど自動車用内装材料;
ドアミラー、フェンダーミラー、ビーム用レンズ、ライト・カバーなど自動車用外装材料;等が挙げられる。
中でも、本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料を成形した成形品は、応力歪が少なく、成形品内部の密度分布が狭く且つその密度分布の経時変化が少ないので、光学用成形体に好適である。
本発明を、参考例、実施例及び比較例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
(1)分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒にしてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。
(2)重合転化率は、反応液をガスクロマトグラフィーで測定し、未反応単量体を定量することにより算出した。
(3)複屈折は、偏向顕微鏡(ニコン社製;546nmセナルモンコンペンセータ)にて測定した。
(4)水素添加率は、NMRにより算出した。
(5)屈折率分布は、カルニュ−デジタル精密屈折率計(カルニュ−光学工業(株)製;KPR−200)を用いてVブロックプリズム法にて求めた。成形品表面からの距離が200μm以上の領域の屈折率を波長587.6nmの光にて測定した場合、検出される光強度が最大となる屈折率に対し、屈折率差が±0.0005の範囲にある屈折率を有する領域における積算光強度の面積比(%)で求めた。
(6)吸水率は、ASTM D−570に従い、サンプルをデシケーター中に23℃で72時間静置してコンディショニングし、方法6.1で測定した。
(7)焦点のボケは、CDプレイヤー用非球面ピックアップレンズ(有効径4.5mm、厚さ3.4mm、焦点距離4.5mm)を用いて焦点距離測定装置(パール光学工業株式会社製;MB−70)により確認した。ボケの有無は、ピントを調整して焦点直径が5μm未満になる場合を「ボケ無し」焦点直径が5μm未満にならない場合を「ボケ有り」とした。
(8)焦点距離変化は、CDプレイヤー用非球面ピックアップレンズ(有効径4.5mm、厚さ3.4mm、焦点距離4.5mm)を用いて焦点距離測定装置(パール光学工業株式会社製;MB−70)により測定した。成形直後及び環境試験(60℃×90%RH×300時間)後でのそれぞれの焦点距離を測定し、焦点距離の変化した距離を環境試験前の焦点距離で除した値を求めた。
[実施例1]
乾燥し、窒素置換したステンレス製耐圧容器に、スチレン(St)76.8重量部とイソプレン(IP)3.2重量部を添加して混合撹拌し、単量体混合物(混合比;St/IP=96/4(重量比))を調製した。
次いで、乾燥し、窒素置換した電磁撹拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、脱水シクロヘキサン320重量部、前記単量体混合物4重量部及びジブチルエーテル0.1重量部を仕込み、50℃で撹拌しながらn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(濃度15重量%)0.51重量部を添加して重合を開始した。同条件下で0.5時間重合反応を行った後(この時点での転化率は96%であった)、同条件下での重合反応を継続しながら、単量体混合物76重量部を1時間かけて連続的に添加した。添加終了後(この時点での転化率は95%であった)、同条件下で0.5時間重合を行い、次いで9−フルオレノンのシクロヘキサン溶液(3重量%)7重量部(n−ブチルリチウムと等モル量)を添加して1時間撹拌して変性反応を行った。次いでイソプロピルアルコール0.1重量部を添加して反応を完了させ、片側の分子末端が9−フルオレノンで変性されたスチレン−イソプレンランダム共重合体が溶解した重合反応溶液を得た。
末端変性の割合は、変性後の重合反応溶液からサンプリングした溶液に2倍量(重量部)のイソプロピルアルコールを撹拌しながら添加し、重合体を析出沈殿し、上澄み液をガスクロマトグラフで分析して未反応の末端変性剤量を事前に得た検量線から求めることで得た。重合体分子の片末端の90%以上が変性されていることがわかった。
次いで、前記重合反応溶液400重量部に、安定化ニッケル水素化触媒(日揮化学工業社製;E22U(60重量%ニッケル担持シリカ−アルミナ担体))3重量部を添加混合し、電熱加熱装置と電磁撹拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに仕込んだ。仕込み終了後、オートクレーブ内部の気相部を水素ガスで置換し、次いでオートクレーブ内部のゲージ圧力が4.5MPaGを保つように水素を供給しながら160℃で、撹拌し、6時間水素添加反応を行った。水素添加反応終了後、ラジオライト♯800をろ過床として、加圧ろ過器(石川島播磨重工社製;フンダフィルター)を使用し、ゲージ圧力0.25MPaGで加圧ろ過して、無色透明な溶液を得た。次いで、得られたろ液に、重合体100重量部当り、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.05重量部及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の主鎖水素化物(SEPS、スチレン/イソプレン重量比=30/70、メルトフローレート約70g/分(230℃、2.16kgf))0.2部を加えて溶解させた。
この溶液を金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製(孔径0.5μm))を用いてろ過し、次いで、得られたろ液をゼータプラスフィルター(キュノ社製;30S(孔径0.5〜1μm))でろ過し、得られたろ液を更に金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製(孔径0.2μm))でろ過して異物を除去した。
次いで、得られたろ液(重合体濃度20重量%)を予備加熱装置で250℃に加熱し、ゲージ圧力3MPaGで円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)に連続的に供給した。濃縮乾燥機の運転条件は、圧力60kPa、内部の濃縮された重合体溶液の温度が260℃とした。濃縮された溶液は、濃縮乾燥機から連続的に導出し、さらに同型の濃縮乾燥機に温度260℃を保ったまま、ゲージ圧力1.5MPaGで供給した。運転条件は、ゲージ圧力1.5kPaG、温度270℃とした。溶融状態の重合体を前記濃縮乾燥機から連続的に導出し、クラス100のクリーンルーム内でダイから押し出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所製;OSP−2)でカッティングしてペレット(末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料)を得た。ペレットは、表面を研磨したステンレス製密閉容器に充填し、保管した。
このペレットをクロロベンゼンに溶解させた溶液を用いて、ガスクロマトグラフィー(日立製作所社製;G−3000(検出限界10ppm))により分析したところ、揮発成分含有量は150ppmであった。
また、このペレットについて、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、Mw=65,000、Mw/Mn=1.18であった。また、水素添加率はほぼ100%(水素化されていない芳香族ビニル単量体単位と水素化された芳香族ビニル単量体単位との合計量に対する、水素化されていない芳香族ビニル単量体単位の量が0.01モル%以下、水素化されていない共役ジエン単量体単位と水素化された共役ジエン単量体単位との合計に対する、水素化されていない共役ジエン単量体単位の量が0モル%)、Tgは125℃であった。
さらに、孔径0.2μmのフィルターでろ過精製したテトラリンを用い、このペレットを溶解させて1.5重量%濃度の溶液とし、光散乱式微粒子検出器(リオン社製;KS−58)を用いて、粒径0.5μm以上の異物個数を測定した結果、2.1×103個/gであった。
前記ペレットを成形直前にオーブン中にて120℃で4時間乾燥し、次いで、射出成形機により、成形温度250℃、金型温度100℃、射出圧力100MPaの成形条件で横90mm×縦65mm×厚9mmの成形体を成形し、吸水率を測定した。
また、得られた成形体の中心(横45mm×縦32mmの部分)を丸のこ盤(マルトー(株)社製)を用い冷却水で室温付近を維持しながら切断面の角度ωが90±1度になる状態で切り出し、辺20mm×厚9mmのVブロックプリズムを得た。得られたVブロックプリズムの切断面を♯3000の耐水研磨紙を用いて研磨機で研磨し、屈折率測定用試料を作成し、屈折率分布を測定した。
また、得られたペレットを射出成形機(ファナック株式会社製;AUTOSHOTC MODEL 30A)を用いて、型締力30t、樹脂温度250℃、型温度120℃、射出圧力80MPaの条件でCDプレイヤー用非球面ピックアップレンズ(有効径4.5mm、厚さ3.4mm、焦点距離4.5mm)に成形し、複屈折性、焦点のボケの有無と焦点距離変化の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
9−フルオレノンの代わりにアビエチン酸エチルエステルを用いた他は実施例1と同様の方法でペレット及び成形体を得、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
[実施例3]
9−フルオレノンの代わりにシクロヘキサノンを用いた他は実施例1と同様の方法でペレット及び成形体を得、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
[比較例1]
9−フルオレノンの代わりにイソプロピルアルコール0.1重量部を用いた他は実施例1と同様の方法でペレット及び成形体を得、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
[比較例2]
水素化触媒で水素化しない他は実施例1と同様の方法でペレットを得た。Tgは86℃であった。CDプレイヤー用非球面ピックアップレンズの成形時の型温度を80℃に下げた他は実施例1と同様の方法で成形体を得、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
Figure 2005239851
表1から以下のことがわかる。
片側あるいは両側の分子末端が、環構造及び極性基を有する変性剤で変性されてなる末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を成形してなる成形体は、屈折率分布が狭く、複屈折率が低く、又、吸水率が低い。更に、成形体がレンズである場合には、焦点のボケがなく、焦点距離の変動が少ない(実施例1〜3)。焦点距離の変動が無いことから、これらのレンズには、応力歪が少なく、密度分布の経時変化が少ないことがわかる。
それに対して、変性されていないビニル脂環式炭化水素重合体を成形してなる成形体は、屈折率分布が広い。更に、成形体がレンズである場合には、焦点のボケが有り、焦点距離の変動が大きい(比較例1)。
又、片側あるいは両側の分子末端が、環構造及び極性基を有する変性剤で変性されてなる末端変性芳香族ビニル重合体は、複屈折率、吸水率が高い。更に、成形体がレンズである場合には、焦点のボケがあった(比較例2)。
本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料を成形した成形品は、応力歪が少なく、成形体内部の密度分布が狭く且つその密度分布の経時変化が少ない。
又、本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料を成形したレンズは、焦点のボケや経時的な焦点距離の変動が生じない。
従って本発明の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体は、光学分野において好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 片側あるいは両側の分子末端が、環構造及び極性基を有する変性剤で変性されてなる末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体。
  2. ビニル脂環式炭化水素重合体が、芳香族ビニル単量体と鎖状ビニル単量体のランダム共重合体の芳香環水素添加物である請求項1記載の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体。
  3. 変性剤の環構造が多環構造である請求項1又は2記載の末端変性ビニル脂環式炭化水素系合体。
  4. 変性剤の極性基が、ケトン又はアルコキシカルボニルである請求項1乃至3記載の末端変性ビニル脂環式炭化水素系合体。
  5. 変性剤が9−フルオレノンである請求項1乃至4記載の末端変性ビニル脂環式炭化水素系合体。
  6. 芳香族ビニル単量体を含有する単量体組成物をリビングアニオン重合して得られるアニオンリビング状態の芳香族ビニル重合体を、環構造及び極性基を有する変性剤で変性し、得られた末端変性芳香族ビニル重合体の芳香環を水素添加する請求項1乃至5記載の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体の製造方法。
  7. 請求項1乃至5記載の末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料。
  8. 請求項7記載の成形材料を成形してなる成形体。
  9. 成形体が、光学用成形体である請求項8記載の成形体。
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