JP2005239071A - 制動力制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 適切な制動力を付与して制動距離の短縮を可能とした制動力制御装置を提供する。
【解決手段】 車輪に作用する前後力Fxiと上下力Fziとを読み込み(ステップS1)、制動初期のスリップ率S1時点での前後力Fxiと上下力Fziとを基にしてブレーキングスティフネスKSを算出する(ステップS5)。こうして推定したKSを基にしてスリップ限界Sp0を推定し(ステップS6)、推定したスリップ限界と現在のスリップ値とを比較する(ステップS8、S16)とともに、このスリップ限界とスリップ値との差が大きく、前後力の時間変化量が小さい場合(ステップS9、S17)には、判定結果に応じて制動力を増大(ステップS18)・減少(ステップS10)させることで適切な制動力を各車輪に付与する。
【選択図】 図3
【解決手段】 車輪に作用する前後力Fxiと上下力Fziとを読み込み(ステップS1)、制動初期のスリップ率S1時点での前後力Fxiと上下力Fziとを基にしてブレーキングスティフネスKSを算出する(ステップS5)。こうして推定したKSを基にしてスリップ限界Sp0を推定し(ステップS6)、推定したスリップ限界と現在のスリップ値とを比較する(ステップS8、S16)とともに、このスリップ限界とスリップ値との差が大きく、前後力の時間変化量が小さい場合(ステップS9、S17)には、判定結果に応じて制動力を増大(ステップS18)・減少(ステップS10)させることで適切な制動力を各車輪に付与する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、車両において車輪に付与する制動力を制御する制動力制御装置に関し、特に、車輪のロックを抑制するよう付与する制動力を制御する制動力制御装置に関する。
制動時に車輪がロックしてスリップ状態となるのを抑制し、車両の操縦性を確保する技術であるABS(Antilock Braking System)制御技術が知られている。ところで、タイヤ特性、路面状態に応じてタイヤと路面間の摩擦力特性が変化し、これにより制動特性も変化することから、タイヤと路面間の摩擦力特性に応じて適切な制動制御を行う必要がある。特許文献1〜4はそうした制動制御方法について開示している。
特許文献1の技術では、車輪速度に基づいてブレーキ剛性(ブレーキングスティフネス)を推定し、推定したブレーキ剛性に基づいて制御パラメータの調整を行う。特許文献2の技術では、車輪速センサの出力からブレーキングスティフネスを求め、各車輪の静的荷重を推定して制動力制御を行っている。特許文献3の技術では、タイヤ作用力センサと車体Gセンサの出力を基にしてスリップ状態を推定し、制御を行うものである。また、特許文献4の技術では、路面摩擦係数と横力から最大縦力を推定して、これを基にして駆動力、制動力を制御している。
特開2001−18780号公報
特開2003−291790号公報
特開2003−165400号公報
特開平11−59366号公報
ところで、制動中の路面摩擦係数は実際には一定ではなく、最大減速度を得るためには最大摩擦係数のスリップ率近傍で制動を行うことが好ましい。しかしながら、この最大摩擦係数となるスリップ率はタイヤの状態や、路面の状態によって変化するため、最大摩擦係数に到達する前に予測することが困難である。ブレーキングスティフネスを、タイヤモデル(ブラッシュモデル)から求める手法もあるが、複雑な計算を必要とするため、制動時に車両においてこれをリアルタイムに求めるのは困難である。
そこで本発明は、適切な制動力を付与して制動距離の短縮を可能とした制動力制御装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る制動力制御装置は、制動時に車輪に付与する制動力を制御する制動力制御装置において、各車輪に作用する前後力と上下力とを測定する作用力センサと、各車輪のスリップ率を算出するスリップ率算出手段と、制動開始初期時点において、スリップ率が所定のスリップ率しきい値S1を超えた時点における車輪に作用する前後力、上下力からブレーキングスティフネスKsを推定し、このKsと前後力から初期スリップ限界Sp0を推定して、求めたスリップ限界に基づいて車輪のスリップ率が所定範囲となるよう車輪に付与する制動力を調整することを特徴とする。
ブレーキングスティフネスKsは、式(1)により、初期スリップ限界Sp0は式(2)より求めるとよい。
ブラッシュモデル(詳細は後述する。)を解くのに必要とされるタイヤ−路面間の摩擦係数の最大値は、制動初期においては不明である。また、同モデルにおけるブレーキングスティフネスもタイヤの接地幅、接地長、タイヤの剛性に依存するものであるが、接地幅、接地長は、荷重やタイヤの状態によって変化するうえ、タイヤの剛性も、タイヤが単純な剛体ではないことから定数として取り扱うことはできない。このため、制動初期にこれらを求めるのは困難とされている。
本発明者は、初期制動時におけるスリップ率とタイヤ作用力の関係からブレーキングスティフネスを精度良く推定することが可能な簡易式を見出した。このような簡易式を用いてブレーキングスティフネスを推定し、路面摩擦係数が最大、つまり、最大制動力が得られるスリップ率の限界値を推定し、スリップ率がその近傍値になるよう制動力を制御して、最大に近い制動力を得る。
本発明によれば、最大制動力が得られるスリップ率を制動初期において精度良く推定することができるため、スリップ率が最大制動力が得られるスリップ率を越えるのを抑制することができ、車輪速の復帰が遅れてロックに至るケースの発生を抑制でき、適切な制動力を付与することができる。このため、制動距離を短縮することができる。
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明に係る車両状態量推定装置を備える車両挙動制御装置の概略構成図である。この車両は、前輪1FL、1FRを駆動する前輪駆動式の車両であり、エンジン20と前輪1FL、1FRは、変速系22を挟んで接続されている。各車輪1(前輪1FL、1FRと後輪1RL、1RR、以下、特に区別する必要がない場合には、添字FL〜RRを省略する。)には、制動装置であるブレーキ32(32FL〜32RR)と車輪の回転速度を検出する車輪速センサ12(12FL〜12RR)が取り付けられており、車輪1内には、作用力センサ15(15FL〜15RR)が配置されている。
図2は、車輪1の概略図である。車輪1は、ホイール11の周囲にタイヤ10が配置されており、作用力センサ15は、ホイール11内部に取り付けられている。作用力センサ15は、少なくとも3軸方向の力を検出するものであり、この3軸は、タイヤ中心から鉛直下向きをz軸、車軸方向をy軸、これらに直交して車両前方に向かう方向をx軸とする。さらに、各軸回りのモーメントを測定可能なセンサを用いてもよいが、最低限x軸方向とz軸方向、つまり前後力と上下力が測定できればよい。この作用力センサ15の出力は、有線または無線方式で車体に伝送される。
ブレーキアクチュエータ30は、各ブレーキ32のホイールシリンダへ供給する油圧を独立に調整する機能を有している。ブレーキアクチュエータ30には、マスタシリンダ36の出力油圧が入力されている。このマスタシリンダ36は、運転者のブレーキペダル35の操作量に応じて増圧された油圧を出力している。
各車輪速センサ12と、作用力センサ15の出力は、ABS制御ECU4に入力されている。このABS制御ECU4が、本発明に係る制動力制御装置のスリップ率算定手段を含む本体部分にあたる。ABS制御ECU4は、ブレーキアクチュエータ30を制御することで各車輪1に付与する制動力の大きさおよびそれらのバランスを制御する。また、ブレーキアクチュエータ30からABS制御ECU4へは、マスタシリンダ36の油圧情報と各ホイールシリンダへ供給している油圧情報(制動力に対応する。)が送られている。
このABS制御ECU4は、ROM、RAM、CPU等によって構成されている。ABS制御ECU4は、専用のユニットとして構成されていてもよいし、また、複数のユニットを組み合わせて構成されていてもよい(例えば、通常のブレーキ制御ECUと、ABS制御部とを別個に備える)。あるいは、他のECUの一部またはメモリ等一部を共有する構成であってもよい。
図3は、この装置によるABS制御方法の制御処理を示すフローチャートである。この処理は、運転者のブレーキペダル35踏み込み量が所定値以上で踏み込み時の踏み込み速度が所定速度以上に達した時点から、踏み込み量が所定値以下になるまでの間、つまり、急制動を開始してから制動終了までの間、所定のタイミングで繰り返し実行されるものである。以下、特に記載のない限り、この処理はABS制御ECU4によって実行されるものとする。また、以下の説明では、車輪1を特定せずに説明するが、実際の制御においては、個々の車輪1ごとに制御を行う。
まず、車輪速センサ12の出力ωiと、各作用力センサ15の前後力出力Fxiと、上下力出力Fziとを読み込む(ステップS1)。次に、ABS制御状態に移行しているか否かを判定する(ステップS2)。これは、ABS制御フラグの値を制御開始時にはオフにし、移行した時点(後述する減圧制御の開始時点)でオンにすることとし、このABS制御フラグの値により判定すればよい。
制御移行前と判定した場合には、さらに、車輪1のスリップ率Siとしきい値S1とを比較する(ステップS3)。図4は、スリップ率と路面−タイヤ間の摩擦係数の対応を示す図である。路面−タイヤ間の摩擦係数は、スリップ率Spまでは、スリップ率が大きくなるほど大きくなるが、スリップ率がSpを越えると、スリップ率が大きくなるほど小さくなる。しきい値S1は、低μ路を含む一般的な路面において予想されるSpの値より小さいスリップ率として設定される。
スリップ率SiがS1に達していない場合には、ステップS51に移行し、ブレーキアクチュエータ30にマスタシリンダ36の出力油圧に応じた油圧をブレーキ32のホイールシリンダへと供給する通常ブレーキ制御を行うよう指示し、当該タイムステップの処理を終了する。
スリップ率SiがS1以上の場合には、さらに、ブレーキングスティフネスKSを設定ずみか否かを判定する(ステップS4)。設定ずみでない場合には、ステップS5においてブレーキングスティフネスKSを下記の式(1)に基づいて算出する。
式(1)により求めるKSは、簡略化した式に基づいて求まる近似値である。この近似の妥当性について以下に述べる。図5は、ブラッシュモデルにおける車輪に作用する力の状態を説明する図である。ブラッシュモデルにおいては力の釣り合いから以下の式が導かれる。
制動初期には、μmaxは不明であり、また、接地長、接地幅は定数でなく、車両の荷重によって変化するため特定することが難しい。また、Cxについても、タイヤは単純なゴムではなく、また、空気量、タイヤ表面の溝の状態等によっても変化するため、その値を特定することは難しい。そこで、本実施形態の装置においては、(1)式に基づいて算出を行っている。
図6は、ブラッシュモデルに基づくKSと(1)式によるKSとを比較したグラフである。破線はブラッシュモデルにより求めたKSであり、実線は(1)式により求めたKSの値である。各定数の値を適宜設定することによって、(1)式による算出結果がブラッシュモデルによく合致していることがわかる。
ステップS5でKSを算出した後はステップS6へと移行する。また、ステップS4で既にKSを算出済みと判定した場合と、ステップS2でABS制御状態に移行済みと判定した場合には、直接ステップS6へと移行する。
ステップS6では、スリップ限界Sp0を以下の(2)式により求める。
図7は、(3)式で求めたSpと、(2)式で求めたSp0とを比較した図である。ここでは、最大摩擦係数μmax時点での前後力、上下力を用いている。なお、(2)式の計算においては、(1)式で求めたKS値を用いている。図中で黒三角はブラッシュモデルで求めたSpを示しており、白丸が(2)式によって推定したSp0を示している。両者がよく合致していることがわかる。
次に、Sp*を求める(ステップS7)。ABS制御移行前の場合には、Sp*=Sp0に設定し、移行後は、Sp*は後述するSp1とSp0のうち小さい値が設定される。
次に現在のスリップ率Sと求めたSp*を比較する(ステップS8)。スリップ率SがSp*以上の場合には、さらに、前後力Fxiの時間変化量dFxi/dtとしきい値α1とを比較する(ステップS9)。この時間変化量dFxi/dtは、タイムステップ間隔をΔt、今回のタイムステップにおける前後力をFxi(n)、前回のタイムステップにおける前後力をFxi(n−1)とすると、{Fxi(n)−Fxi(n−1)}/Δtにより求めることができる。このしきい値α1は、例えば負の所定の数値に設定されている。
前後力Fxiの時間変化量がしきい値α1より小さい場合には、実際に車輪に付与される制動力が減少している場合であり、図4に示されるSpよりスリップ率が大きい状態と推定される。そこで、アクチュエータ30に指示してブレーキ32のホイールシリンダに供給する油圧の減圧を指示し(ステップS10)、ABS制御移行を示す制御フラグをオンに切り替え(ステップS11)、この状態におけるスリップ率Sを変数Sp1に格納して(ステップS12)、当該タイムステップの処理を終了する。
ステップS8でスリップ率SがSp*未満と推定された場合と、ステップS9で前後力Fxiの時間変化量がしきい値α1より大きいと推定された場合には、ステップS15へと移行して、ABS制御フラグの値を判定する。制御フラグがオンの場合には、現在のスリップ率Sと求めたSp*との差としきい値βとを比較する(ステップS16)。Sp*−Sがβより大きい場合には、さらに、前後力Fxiの時間変化量dFxi/dtとしきい値α2とを比較する(ステップS17)。このしきい値α2は、例えば負の所定の数値に設定されており、α1と同じ値でも異なる値であってもよい。
前後力Fxiの時間変化量がしきい値α2より小さい場合には、実際に車輪に付与される制動力が減少している場合であり、図4に示されるSpよりスリップ率が小さい状態と推定される。そこで、アクチュエータ30に指示してブレーキ32のホイールシリンダに供給する油圧の増圧を指示して(ステップS18)、当該タイムステップの処理を終了する。
ステップS15でABS制御フラグがオフの場合には、ステップS51へと移行して、通常のブレーキ油圧制御を行い、当該タイムステップの処理を終了する。ステップS16でSp*−Sがβより小さいと判定された場合と、前後力Fxiの時間変化量がしきい値α2より大きいと判定された場合には、ブレーキ32のホイールシリンダに供給する油圧を増圧または減圧することなく当該タイムステップの処理を終了する。つまり、この場合には、ホイールシリンダに供給される油圧は前回タイムステップの油圧のまま維持されることになる。
このように、スリップ限界Spを推定し、推定結果と現在のスリップ率Sとに応じて最適な制動力が得られるよう制動力を制御することにより、車輪のロックを予防して車両の操縦性を確保するとともに、効率よく制動を行うことができるため、制動距離を短縮することが可能となる。
また、ブレーキングスティフネスKS、スリップ限界Sp0を簡単な式で精度良く近似しているため、制御ECUの計算負荷を軽くすることができるため、計算能力の高いCPU等を用いずともリアルタイムにKS、Sp0を求めることができるため、精度良く制御を行うことができる。
以上の説明では、油圧ブレーキを用いる場合を例に説明してきたが、例えば、回生ブレーキを併用または回生ブレーキのみを用いる場合においても本発明は適用可能である。また、油圧ブレーキを用いる場合においても、ホイールシリンダの供給油圧を個々にポンプ等により制御する形式であってもよい。
1…車輪、4…ABS制御ECU、10…タイヤ、11…ホイール、12…車輪速センサ、15…作用力センサ、20…エンジン、22…変速系、30…ブレーキアクチュエータ、32…ブレーキ、35…ブレーキペダル、36…マスタシリンダ。
Claims (2)
- 制動時に車輪に付与する制動力を制御する制動力制御装置において、
各車輪に作用する前後力と上下力とを測定する作用力センサと、
各車輪のスリップ率を算出するスリップ率算出手段と、
制動開始初期時点において、スリップ率が所定のスリップ率しきい値S1を超えた時点における車輪に作用する前後力、上下力からブレーキングスティフネスKsを推定し、このKsと前後力から初期スリップ限界Sp0を推定して、求めたスリップ限界に基づいて車輪のスリップ率が所定範囲となるよう車輪に付与する制動力を調整することを特徴とする制動力制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004054613A JP2005239071A (ja) | 2004-02-27 | 2004-02-27 | 制動力制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004054613A JP2005239071A (ja) | 2004-02-27 | 2004-02-27 | 制動力制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2005239071A true JP2005239071A (ja) | 2005-09-08 |
Family
ID=35021261
Family Applications (1)
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JP2004054613A Pending JP2005239071A (ja) | 2004-02-27 | 2004-02-27 | 制動力制御装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007112367A (ja) * | 2005-10-24 | 2007-05-10 | Hitachi Ltd | 車両タイヤ状態検出方法および車両タイヤ状態検出装置 |
JP2018144661A (ja) * | 2017-03-06 | 2018-09-20 | トヨタ自動車株式会社 | 偏向制御装置 |
US11650133B2 (en) * | 2015-12-18 | 2023-05-16 | Nira Dynamics Ab | Tire stiffness estimation and road friction estimation |
-
2004
- 2004-02-27 JP JP2004054613A patent/JP2005239071A/ja active Pending
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