JP2013075632A - 走行状態推定装置 - Google Patents

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Takuro Matsuda
拓郎 松田
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Abstract

【課題】 路面摩擦係数が急変する路面を走行しているときであっても、車両挙動の推定精度の悪化を抑制することができる走行状態推定装置を提供すること。
【解決手段】 前輪がある地点を通過してから後輪が同地点を通過するまでの遅延時間を車速が高くなるほど短くなるように算出し、後輪タイヤモデルで用いられる後輪路面摩擦係数を、遅延時間分遅れた前輪タイヤモデルで用いられる前輪路面摩擦係数の値を用いて、路面摩擦係数と車体すべり角との少なくとも1つを推定するようにした。
【選択図】 図4

Description

本発明は、走行状態推定装置に関する。
下記特許文献1には、車輪と路面との間の摩擦特性モデルを含む車両モデルを用いて、路面反力モデル値と横滑り運動状態量モデル値を求めるものが開示されている。この路面反力モデル値から求めた横加速度モデル値と横加速度検出値との偏差、および路面反力モデル値から求めたヨー軸周りの角加速度モデル値と角加速度検出値との偏差に応じて横滑り運動状態量モデル値を補正している。
特開2010−234920号公報
しかしながら上記従来技術にあっては、摩擦特性モデルは各車輪とも同一としているため、摩擦係数が急変する路面を走行中には前輪の路面摩擦係数と後輪の路面摩擦係数とが大きく異なり、これによるステア特性の変化をモデルに反映することができず、横滑り角の推定精度が悪化するおそれがあった。
本発明は、上記問題に着目されたもので、その目的とするところは、路面摩擦係数が急変する路面を走行しているときであっても、車両挙動の推定精度の悪化を抑制することができる走行状態推定装置を提供することである。
上述の目的を達成するため、本発明では、前輪がある地点を通過してから後輪が同地点を通過するまでの遅延時間を車速が高くなるほど短くなるように算出し、後輪タイヤモデルで用いられる後輪路面摩擦係数を、遅延時間分遅れた前輪タイヤモデルで用いられる前輪路面摩擦係数の値を用いて、路面摩擦係数と車体すべり角との少なくとも1つを推定するようにした。
よって本発明においては、路面摩擦係数が急変する路面を走行しているときであっても車両挙動の推定精度の悪化を抑制することができる走行状態推定装置を提供することである。
実施例1の走行状態推定装置を搭載した車両を示す図である。 実施例1の統合コントローラの制御ブロック図である。 実施例1の前後輪遅延時間の設定例を示す図である。 実施例1の状態推定器の制御ブロック図である。 実施例1の路面摩擦係数補正ゲイン増加判定器の制御ブロック図である。 実施例1の車両制御器の制御ブロック図である。 実施例1の操舵角予測値のマップである。 実施例1の車速予測値のマップである。 実施例1の車体すべり角と前輪路面摩擦係数のシミュレーション結果を示す図である。 実施例1の車体すべり角とヨーレートのタイムチャートである。 実施例1のブレーキ圧のタイムチャートである。 実施例2の状態推定器の制御ブロック図である。 実施例2の車両制御器の制御ブロック図である。 実施例2の目標後輪タイヤ縦力応答のマップである。 実施例3の車両制御器の制御ブロック図である。 実施例3の目標横加速度応答のマップである。
〔実施例1〕
図1は実施例1の走行状態推定装置を搭載した車両14を示す図である。
この車両14は駆動系として、後輪4RL,4RRに制駆動力を発生させる駆動モータ1と、リチウムイオンバッテリ3から駆動モータ1に電力を供給する駆動回路2とを有している。
車両14の操舵系はステアバイワイヤであって、ステアリングホイール13の回転軸に取り付けられて操舵反力を発生させる反力モータ10と、前輪4FL,4FRを転舵させる転舵モータ9L,9Rとを有している。
車両14は制御系として、駆動回路2、反力モータ10、転舵モータ11を制御する統合コントローラ8と、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ12と、各車輪4FL,4FR,4RL,4RRの車輪速Vwを検出する車輪速センサ5FL,5FR,5RL,5RRと、車両重心のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ6と、前後加速度Gxおよび横加速度Gyを検出する加速度センサ7と、ステアリングホイール13の回転軸に取り付けられて操舵角δを検出する操舵角センサ11と、転舵モータ9L,9Rの回転角を検出する回転角センサ15L,15Rとを有している。各センサの検出値は統合コントローラ8に入力されている。
統合コントローラ8は、駆動モータ1の制駆動トルクを演算して、駆動回路2にトルク指令値を出力する。また統合コントローラ8は、転舵時に前輪4FL,4FRに発生するセルフアライニングトルクを推定し、推定したセルフアライニングトルク相当の反力トルクを反力モータ10により発生させ、操舵反力としてドライバに伝える。また統合コントローラ8は、検出された操舵角δに応じて転舵モータ9L,9Rによりはステアリングラックを車幅方向に変位させて、左右前輪4FL,4FRを同相に転舵させる。
[統合コントローラの構成]
図2は統合コントローラ8の制御ブロック図である。図2に示すように、統合コントローラ8は、車速検出器81と、前後輪遅延時間算出器82と、前輪状態検出器83と、車両状態検出器84と、ドライバ入力検出器85と、状態推定器86と、車両制御器87とを有している。
(車速検出器)
車速検出器81では、車速(車体速)Vtを検出する。例えば、従動輪である前輪4FR,4FLの車輪速Vwを基にして検出しても良いし、横滑り防止装置やGPS(全地球測位
システム)など、既存の車載装置において検出された値を用いても良い。
(前後輪遅延時間算出器)
前後輪遅延時間算出器82では、車速検出値Vt_sensから前後輪遅延時間t_delayを求める。この前後輪遅延時間t_delayは、前輪4FL,4FRがある地点を通過してから後輪4RL,4RRが同地点を通過するまでの時間であり、状態推定器86において後輪路面摩擦係数(後輪路面摩擦係数)は、前後輪遅延時間t_delay前の前輪路面摩擦係数(前輪路面摩擦係数)を用いるようにしている。前後輪遅延時間t_delayは、例えば次の式(1)を用いて計算できる。
Figure 2013075632
ここで、lwはホイールベース長である。また、旋回半径が小さい場合には、旋回時の軌跡から幾何的に導いた次の式(2)から前後輪遅延時間t_delayを算出してもよい。
Figure 2013075632
ここでRtは旋回半径である。
なお、この上記式(1),(2)では前後輪遅延時間t_delayは車速に反比例したものとなっているが、特にこれに限定せずに、単純な比例関係や、低車速でもより短い時間に設定したり、逆に高車速でも長い時間に設定したり、車速に関する変化の感度を適宜調整することが可能である。図3は前後輪遅延時間t_delayの設定例を示す図である。前後輪遅延時間t_delayは車速が高くなるほど短くなるという関係を満たすものであれば良く、例えば図3(a)に示すように単純比例(一次関数)の関係のものでも良いし、図3(b)に示すように上側に膨らむ二次関数的なものでも良いし、図3(c)に示すように下側に膨らむ二次関数的なものでも良いし、図3(d)に示すように階段状に減少するものであっても良い。
(前輪状態検出器)
前輪状態検出器83では、セルフアライニングトルクMzを検出する。例えば、転舵モータ9L,9Rの指令電流からモータトルク定数や、サスペンションリンクの構造を考慮して、セルフアライニングトルクMzを検出する。前輪状態はセルフアライニングトルクMzに限られるものではなく、前輪タイヤ横力、前輪スリップ率など、前輪路面摩擦係数に応じて高感度に影響を受ける物理量ならば、同様に用いることができる。その場合、以下実施例中のセルフアライニングトルクMzを対応する物理量に読み替える。
(車両状態検出器)
車両状態検出器84では、車両重心回りのヨーレートγを検出する。例えば、前述のヨーレートセンサ6の検出値を用いても良いし、既存の横すべり防止装置に内蔵されたセンサで計測された値を用いても良い。またヨーレートγよりも横加速度Gyのほうが精度良く検出できる場合は、横加速度Gyで代用しても良い。
(ドライバ入力検出器)
ドライバ入力検出器85では、操舵角δを検出する。例えば、前述の操舵角センサ11の検出値を用いても良いし、既存の横すべり防止装置に内蔵されたセンサで計測された値を用いても良い。
(状態推定器)
状態推定器86は、前後輪遅延時間t_delayと、セルフアライニングトルク検出値Mz_sensと、ヨーレート検出値γ_sensと、操舵角検出値δ_sensとを入力し、車体すべり角推定値β_estと、前輪路面摩擦係数推定値μf_estとを求める。状態推定器86の詳しい構成については、制御ブロック図を用いて後で述べる。
(車両制御器)
車両制御器87は、前後輪遅延時間t_delayと、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと、車体すべり角推定値β_estとを入力し、後述する制動器87hを制御する。車両制御器87の詳しい構成については、制御ブロック図を用いて後で述べる。
[状態推定器の構成]
図4は状態推定器86の制御ブロック図である。図4に示すように状態推定器86は、車両ダイナミクスモデル86aと、前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86bと、後輪路面摩擦係数モデル86cと、セルフアライニングトルク算出器86dと、偏差算出器86eと、補正量算出器86fと、路面μ補正ゲイン増加判定器86gと、車両状態補正ゲイン判定器86hとを有している。
(車両ダイナミクスモデル)
車両ダイナミクスモデル86aは、操舵角検出値δ_sensと、後述する前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86bで推定された前輪路面摩擦係数推定値μf_estと、後述する後輪路面摩擦係数モデル86cで推定された後輪路面摩擦係数推定値μr_estと、後述する補正量算出器86fで求められた車体すべり角補正量Cβと、ヨーレート補正量Cγとを入力し、車体すべり角推定値β_estと、前輪路面摩擦係数推定値μf_estとを求める。2輪モデル(車両の運動と制御第2版、山海堂、安部正人著)を離散時間系に変換することで導出した次の式(3),(4)に基づいて、車体すべり角βおよびヨーレートγを推定する。
Figure 2013075632
Figure 2013075632
Δtは1計算ステップあたりの時間である。Izはヨー方向の車体慣性モーメント、mは車両の質量、lfは車両重心点と前輪車軸間の距離、lrは車両重心点と後輪車軸間の距離である。添え字kは現在の計算ステップにおける状態であることを表し、添え字k+1は次回計算ステップにおける状態であることをあらわす。上の式(3),(4)を用いて、現在計算ステップの状態から次回計算ステップの状態を逐次的に計算できる。
式(3),(4)においてFyfは前輪タイヤ横力であり、前輪タイヤ横力Fyfは、例えば次の式(5)のフィアラモデルを用いて求められる。
Figure 2013075632
)
Fzf0は静的な前輪輪荷重である。またφfは次の式(6)によって求められる。
Figure 2013075632
μf_estは前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86bにより推定された前輪路面摩擦係数推定値である。Cαfは前輪コーナリングパワーである。αfは前輪すべり角であり、次の式(7)により求められる。
Figure 2013075632
)
δ_sensはドライバ入力検出器85により検出された操舵角検出値である。
式(3),(4)においてFyrは後輪タイヤ横力であり、後輪タイヤ横力Fyrは、例えば次の式(8)のフィアラモデルを用いて求められる。
Figure 2013075632
)
Fzr0は静的な後輪輪荷重である。またφrは次の式(9)によって求められる。
Figure 2013075632
μr_estは後輪路面摩擦係数モデル86cにより推定された後輪路面摩擦係数推定値である。Cαrは後輪コーナリングパワーである。αrは後輪滑り角であり、次の式(10)により求められる。
Figure 2013075632
)
この車両ダイナミクスモデル86aにおいて求められた車体すべり角推定値β_estは、状態推定器86の出力値とされる。
(前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル)
前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86bは、前輪路面摩擦係数補正量Cμfを入力し、前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデルに基づいて前輪路面摩擦係数推定値μf_estを求める。前輪路面摩擦係数推定値μf_estは、次の式(11)により求められる。
Figure 2013075632
前輪路面摩擦係数補正量Cμfは前輪路面摩擦係数に関する補正量であり、補正量算出器86fにより求められる。
この前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86bにおいて求められた前輪路面摩擦係数μf_estは、状態推定器86の出力値とされる。
(後輪路面摩擦係数モデル)
後輪路面摩擦係数モデル86cは、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと、前後輪遅延時間t_delayとを入力し、後輪路面摩擦係数μr_estを求める。まず、次の式(12)より前後輪遅延時間t_delayから遅延ステップ数N_delayを求める。
Figure 2013075632
t_delayは、前後輪遅延時間算出器82で求められた前後輪遅延時間である。floorは引数が小数の場合は、小数点以下を切り捨てて整数に変換する演算子を表わす。
後輪路面摩擦係数推定値μr_estは、現在の前輪路面摩擦係数μf_estに対して遅延ステップ数N_delay前の前輪路面摩擦係数μf_estの値に設定される。
Figure 2013075632
(セルフアライニングトルク算出器)
セルフアライニングトルク算出器86dは、前輪摩擦係数推定値μf_estと、車体すべり角推定値β_estと、ヨーレート推定値γ_estを入力し、セルフアライニングトルク推定値Mz_estを求める。セルフアライニングトルク推定値Mz_estは、例えば次の式(14)のフィアラモデルを用いて求められる。
Figure 2013075632
ここで、lcはタイヤ接地長であり、例えばタイヤ空気圧とタイヤ空気圧の関係を実験的に取得したマップを用いて、タイヤ空気圧から推定される。またφfは次の式(15)によって求められる。
Figure 2013075632
μf_estは前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86bにより推定された前輪路面摩擦係数推定値である。Cαfは前輪コーナリングパワーである。αfは前輪すべり角であり、次の式(16)により求められる。
Figure 2013075632
(偏差算出器)
偏差算出器86eは、車両ダイナミクスモデル86aで求められたヨーレート推定値γ_estと、車両状態検出器84で検出されたヨーレート検出値γ_sensとの偏差eγ、およびセルフアライニングトルク算出器86dで求められたセルフアライニングトルク推定値Mz_estと、前輪状態検出器83で検出されたセルフアライニングトルク検出値Mz_sensとの偏差eMzを求める。ヨーレート推定値γ_estとヨーレート検出値γ_sensとの偏差eγは次の式(17)により求められる。
Figure 2013075632
セルフアライニングトルク推定値Mz_estとセルフアライニングトルク検出値Mz_sensとの偏差eMzは次の式(18)により求められる。
Figure 2013075632
(補正量算出器)
補正量算出器86fは、偏差算出器86eで求めた偏差eγ,eMzを入力し、車体すべり角補正量Cβと、ヨーレート補正量Cγと、前輪路面摩擦係数補正量Cμfとを求める。車体すべり角補正量Cβ、ヨーレート補正量Cγ、前輪路面摩擦係数補正量Cμfは、それぞれ次の式(19)〜(21)により求められる。
Figure 2013075632
Figure 2013075632
Figure 2013075632
補正ゲインKcβ1,Kcβ2,Kcγ1,Kcγ2,Kcμf1,Kcμf2は、設計者により適当に定められる。
補正ゲインは、各々の絶対値が大きいほど補正量の絶対値が大きくなり、車体すべり角β、ヨーレートγ、前輪路面摩擦係数μfが急に変化した場合でも各々の推定値をすばやく追従させることでき高い応答性が実現できる。一方、補正ゲインの絶対値が大きいときには、車体すべり角推定値β_est、ヨーレート推定値γ_est、前輪路面摩擦係数推定値μf_estが、ヨーレート検出値γ_sensおよびセルフアライニングトルク検出値Mz_sensに含まれるノイズの影響を受け振動的になる。したがって、応答性の設計値と、検出値に含まれるノイズ強度とのバランスを考慮して、補正ゲインを適当に定めることとする。なお、走行状況に応じた各補正ゲインの調節は、路面摩擦係数補正ゲイン増加判定器86gおよび車両状態補正ゲイン増加判定器86hの信号に基づいて行う。
(路面摩擦係数補正ゲイン増加判定器)
路面摩擦係数補正ゲイン増加判定器86gは、操舵角検出値δ_sensとセルフアライニングトルク検出値Mz_sensとを入力し、路面摩擦係数補正ゲイン増加判定信号を出力するか否かを判定する。
図5は路面摩擦係数補正ゲイン増加判定器86gの制御ブロック図である。路面摩擦係数補正ゲイン増加判定器86gは、操舵角速度推定器86g1と、セルフアライニングトルク変化率推定器86g2と、比計算器86g3と、セルフアライニングトルク変化判定器86g4とを有している。
操舵角速度推定器86g1は、操舵角検出値δ_sensを入力し、操舵角速度推定値rδ_estを求める。操舵角速度推定値rδ_estは次の式(22)で求められる。
Figure 2013075632
ここで、ΔTはサンプル時間、kは現在の計算時間ステップを表わす。操舵角検出値δ_sensにノイズが含まれるときには、操舵角速度推定値rδ_estを適当な特性を有するローパスフィルターで処理した後に出力しても良い。
セルフアライニングトルク変化率推定器86g2は、セルフアライニングトルク検出値Mz_sensを入力し、セルフアライニングトルク推定変化率rMz_estを求める。セルフアライニングトルク推定変化率rMz_estは次の式(23)で求められる。
Figure 2013075632
比計算器86g3は、操舵角速度推定値rδ_estと、セルフアライニングトルク推定変化率rMz_estとを入力し、これらの比λを求める。比λは次の式(24)で求められる。
Figure 2013075632
セルフアライニングトルク変化判定器86g4は、比λを入力し、路面摩擦係数増加信号を出力するか否かを判定する。比λの絶対値が、予め定めた閾値よりも大きいときには、セルフアライニングトルクMzの変化が操舵角δの変化ではなく、路面摩擦係数μが比較的大きく変化したと判断する。そして、今後も路面摩擦係数μが急速に変化することが見込まれるとして、前輪路面摩擦係数推定値μf_estの補正に用いる路面摩擦係数補正ゲインKcμf1,Kcμf2の絶対値を大きくするように路面摩擦補正ゲイン増加信号を出力する。なお、路面摩擦補正ゲイン増加信号は、比λの絶対値が予め定めた閾値よりも大きくなったと判定してから前後輪遅延時間t_delayの間に出力される。
路面摩擦係数補正ゲインの増加判定の方法は、上記の方法に限られるものではない。例えば、路面を記録した画像に基づいて路面摩擦係数μの変化を判定し、前輪路面摩擦係数推定値μf_estの補正ゲインの増加を判定してもよい。すなわち、前方のバンパーに備えたCCDカメラで路面を記録し、これを画像処理することにより、湿潤した路面か、乾燥した路面かを判断する。ここで、乾燥した路面から湿潤した路面に変化したこと、もしくは、湿潤した路面から乾燥した路面に変化したことが検知されたときには、前輪路面摩擦係数μfも変化することが見込まれるため、路面摩擦係数補正ゲイン増加信号を出力する。
(車両状態補正ゲイン増加判定器)
車両状態補正ゲイン増加判定器86hは、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと前後輪遅延時間t_delayとを入力し、車両状態補正ゲイン増加信号を出力するか否かを判定する。
所定の時間内に、前輪路面摩擦係数推定値μf_estが予め定められた変化量より大きく変化したときには、この変化を検知した時間から前後輪遅延時間t_delay後に、車体すべり角補正ゲインKcβと、ヨーレート補正ゲインKcγの値を大きくするように車両状態補正ゲイン増加信号を出力する。
[車両制御器の構成]
図6は車両制御器87の制御ブロック図である。図6に示すように車両制御器87は、前輪路面摩擦係数変化時刻判定器87aと、後輪路面摩擦係数変化予測時間算出器87bと、後輪路面摩擦係数モデル87cと、ドライバ入力予測器87dと、車速予測器87eと、車両状態予測器87fと、閾値比較器87fgと、制動器87hとを有している。
(前輪路面摩擦係数変化時刻判定器)
前輪路面摩擦係数変化時刻判定器87aは、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと前後輪遅延時間t_delayとを入力して、所定の時間内に所定の値よりも大きな範囲で前輪路面摩擦係数推定値μf_estが変化したときに、前輪路面摩擦係数推定値μf_estが変化を開始した時刻を、前輪路面摩擦係数変化時刻tμfとして出力する。
(後輪路面摩擦係数変化予測時間算出器)
後輪路面摩擦係数変化予測時間算出器87bは、前輪路面摩擦係数変化時刻tμfと、前後輪遅延時間t_delayと、現在時刻tとから後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_changeを算出する。後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_changeは、現在時刻tから何秒後に後輪路面摩擦係数μrが変化するかを示す。後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_changeは、次の式(25)により求められる。
Figure 2013075632
(後輪路面摩擦係数モデル)
後輪路面摩擦係数モデル87cは、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと前後輪遅延時間t_delayを入力し、後輪路面摩擦係数μr_estを求める。後輪路面摩擦係数μr_estの求め方は、状態推定器86の後輪路面摩擦係数モデル86cと同様である。
(ドライバ入力予測器)
ドライバ入力予測器87dは、後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_changeと、操舵角検出値δ_sensとを入力し、操舵角予測値δ_preを求める。
図7は操舵角予測値δ_preのマップである。現在からNサンプル前までの操舵角検出値δ_sensを直線でフィッティングし、この直線を延長して後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_change後の操舵角δを予測する。フィッティングする対象の操舵角検出値の数Nは、設計者により適当に定められる。フィッティングのアルゴリズムには、例えば最小2乗法を用いればよい。
ドライバ入力の予測は上記の方法に限定されるものではなく、例えば現在の操舵角δが将来も引き続き保持されるとして、現在の操舵角δを用いて車両状態を予測することとしても良い。
(車速予測器)
車速予測器87eは、後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_changeと、車速検出値Vt_sensとを入力し、車速予測値Vt_preを求める。
図8は車速予測値Vt_preのマップである。現在からNサンプル前までの車速検出値Vt_sensを直線でフィッティングし、この直線を延長して後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_change後の車速Vtを予測する。フィッティングする対象の操舵角検出値の数Nは、設計者により適当に定められる。フィッティングのアルゴリズムには、例えば最小2乗法を用いればよい。
車速の予測は上記の方法に限定されるものではなく、例えば現在の車速Vtが将来も引き続き保持されるとして、現在の車速Vtを用いて車両状態を予測することとしても良い。
(車両状態予測器)
車両状態予測器87fでは、操舵角予測値δ_preと、車速予測値Vt_preと、後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_changeと、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと、後輪路面摩擦係数推定値μr_estと、車体すべり角推定値β_estと、ヨーレート検出値γ_sensとを入力し、車体すべり角予測値β_preと、ヨーレート予測値γ_preとを求める。2輪モデル(車両の運動と制御第2版、山海堂、安部正人著)を離散時間系に変換することで導出した次の式(26),(27)に基づいて、車体すべり角およびヨーレートを推定する。
Figure 2013075632
Figure 2013075632
Δtは1計算ステップあたりの時間である。Izはヨー方向の車体慣性モーメント、mは車両の質量、lfは車両重心点と前輪車軸間の距離、lrは車両重心点と後輪車軸間の距離である。添え字kは現在の計算ステップにおける状態であることを表し、添え字k+1は次回計算ステップにおける状態であることをあらわす。式(26),(27)の求めた車体すべり角予測値β_preとヨーレート予測値γ_preの初期値は、状態推定器86の車両ダイナミクスモデル86aにおける式(3),(4)で求めた車体すべり角予測値β_estとヨーレート予測値γ_estを用いることとする。
式(26),(27)においてFyfは前輪タイヤ横力であり、前輪タイヤ横力Fyfは、例えば次の式(28)のフィアラモデルを用いて求められる。
Figure 2013075632
Fzf0は前輪輪荷重である。またφfは次の式(29)によって求められる。
Figure 2013075632
Cαfは前輪コーナリングパワーである。αfは前輪すべり角であり、次の式(30)により求められる。
Figure 2013075632
式(26),(27)においてFyrは後輪タイヤ横力であり、後輪タイヤ横力Fyrは、例えば次の式(31)のフィアラモデルを用いて求められる。
Figure 2013075632
Fzr0は後輪輪荷重である。またφrは次の式(32)によって求められる。
Figure 2013075632
Cαrは後輪コーナリングパワーである。αrは後輪滑り角であり、次の式(33)により求められる。
Figure 2013075632
式(26)の反復計算を、少なくとも後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_changeよりも後の時間まで所定回数繰り返して算出した値を車体すべり角予測値β_preとして出力する。また、式(27)の反復計算を同様に繰り返して算出した値をヨーレート予測値γ_preとして出力する。
(閾値比較器)
閾値比較器87gは、車体すべり角予測値β_preと、ヨーレート予測値γ_preとを入力し、予め定めた車体すべり角閾値β_thresと、ヨーレート閾値γ_thresとを比較した結果に基づいて制御開始信号を出力する。例えば、車体すべり角予測値β_preの絶対値が車体すべり角閾値β_thresよりも大きいとき、あるいはヨーレート予測値γ_preの絶対値がヨーレート閾値γ_thresよりも大きいときには、操舵角等のドライバ入力の傾向が維持されれば、後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_change後に車両が不安定となる可能性が高いとして、制御開始信号を出力する。すなわち、
Figure 2013075632
または、
Figure 2013075632
であるときに制御開始信号を出力する。
(制動器)
制動器87hは、制御開始信号に基づいてブレーキ与圧を付加する。ブレーキの与圧を付加する輪は、制動力により旋回方向と逆方向にヨーモーメントを発生することができる輪を選択する。例えば左旋回時には、右前輪と右後輪に備えられたブレーキに与圧を付加し、右旋回時には、左前輪と左後輪に備えられたブレーキに与圧を付加する。ブレーキ与圧の強度は、リターンスプリングによる圧力ないしは、これよりもやや大きな圧力を付加することとする。なお、旋回方向は、ヨーレート検出値の符号により判定する。
[作用]
(車両挙動推定の高精度化)
従来は、前輪と後輪の路面摩擦係数μは同一であるとして、車両挙動を推定していた。しかし、例えば乾燥路面から湿潤路面へ進入するときなどのように、路面摩擦係数が急変するときには、車両挙動の推定精度が悪化してしまうことがあった。
そこで実施例1では前後輪遅延時間算出器82において、前輪4FL,4FRがある地点を通過してから後輪4RL,4RRが同地点を通過するまでの時間である前後輪遅延時間t_delayを演算するようにした(式(1)または(2)参照)。また、後輪路面摩擦係数モデル86cにおいて、後輪路面摩擦係数推定値μr_estは、現在の前輪路面摩擦係数μf_estに対して前後輪遅延時間t_delay(遅延ステップ数N_delay)前の前輪路面摩擦係数μf_estの値に設定するようにした(式(13)参照)。車両ダイナミクスモデル86aでは、この後輪路面摩擦係数モデル86cを用いて、車体すべり角推定値β_estを推定するようにした(式(3)〜(10)参照)。
図9は車体すべり角βと前輪路面摩擦係数μfのシミュレーション結果を示す図である。図9(a)は後輪路面摩擦係数μrとして前後輪遅延時間t_delay分遅れた前輪路面摩擦係数μfの値を用いたときのシミュレーション結果である。図9(b)は後輪路面摩擦係数μrとして現在の前輪路面摩擦係数μfの値を用いたときのシミュレーション結果である。
図9(a)に示すように、後輪路面摩擦係数μrとして前後輪遅延時間t_delay分遅れた前輪路面摩擦係数μfの値を用いた場合は、路面摩擦係数が急変するときであっても、車体すべり角推定値β_estは真値に追従している。一方、後輪路面摩擦係数μrとして現在の前輪路面摩擦係数μfの値を用いた場合は、路面摩擦係数が急変するときには車体すべり角推定値β_estは真値に対して誤差が発生している。
すなわち、後輪路面摩擦係数μrとして前後輪遅延時間t_delay分遅れた前輪路面摩擦係数μfの値を用いることにより、路面摩擦係数が急変するときであっても、車両挙動の推定精度を高く保つことができる。
(前輪路面摩擦係数推定の高応答性)
また実施例1では路面摩擦係数補正ゲイン増加判定器86gにおいて、操舵角速度推定値rδ_estに対するセルフアライニングトルク推定変化率rMz_estの比λが予め設定した閾値よりも大きくなったと判定してから前後輪遅延時間t_delayの間、前輪路面摩擦係数推定値μf_estの補正に用いる補正ゲインKcμf1,Kcμf2の絶対値を大きくするように路面摩擦補正ゲイン増加信号を出力するようにした。
路面摩擦係数補正ゲインKcμf1,Kcμf2の絶対値が大きいほど前輪路面摩擦係数補正量Cμfの絶対値が大きくなり(式(21)参照)、前輪路面摩擦係数推定値μf_estをすばやく追従させることでき(式(11)参照)、高い応答性を実現できる。
(車両状態推定の高応答性)
また実施例1では車両状態補正ゲイン増加判定器86hにおいて、所定の時間内に、前輪路面摩擦係数推定値μf_estが予め定められた変化量より大きく変化したときには、この変化を検知した時間から前後輪遅延時間t_delay後に、車体すべり角補正ゲインKcβ1,Kcβ2とヨーレート補正ゲインKcγ1,Kcγ2の値を大きくするように車両状態補正ゲイン増加信号を出力するようにした。
図10は、旋回時に路面摩擦係数が高い路面から低い路面に進入した場合の車体すべり角βとヨーレートγのタイムチャートをである。区間1は前輪路面摩擦係数μfも後輪路面摩擦係数μrも高い区間、区間2は前輪路面摩擦係数μfは低く後輪路面摩擦係数μrは高い区間、区間3は前輪路面摩擦係数μfも後輪路面摩擦係数μrも低い区間とする。
区間3に変化した直後、前輪路面摩擦係数μfだけでなく後輪路面摩擦係数μrも低い状態となり、ステア特性がオーバーステアに変化したことで、車体すべり角βおよびヨーレートγが急激に変化を始めることが分かる。一方、前輪路面摩擦係数μfの変化が起こったことは区間2の初期に検知が可能であり、この時点から前後輪遅延時間t_delay経過した後に、車体すべり角βおよびヨーレートγが急激に変化を始める。
したがって、前輪路面摩擦係数推定値μf_estが予め定められた変化量より大きく変化したときには、この変化を検知した時間から前後輪遅延時間t_delay後に、車両状態補正ゲイン増加信号を出力する。これにより、車体すべり角補正ゲインKcβ1,Kcβ2の絶対値が大きいほど車体すべり角補正量Cβの絶対値が大きくなり(式(19)参照)、車体すべり角推定値β_estをすばやく追従させることでき(式(3)参照)、高い応答性が実現できる。同じく、ヨーレート補正ゲインKcγ1,Kcγ2の絶対値が大きいほどヨーレート補正量Cγの絶対値が大きくなり(式(20)参照)、車体すべり角推定値β_estをすばやく追従させることでき(式(4)参照)、高い応答性を実現できる。
(車両運動制御の開始予測)
また実施例1では車両状態予測器87fにおいて、後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_change後の車体すべり角予測値β_preおよびヨーレート予測値γ_preを予測するようにした(式(26)〜(33)参照)。また閾値比較器87gにおいて、車体すべり角予測値β_preの絶対値が車体すべり角閾値β_thresよりも大きいとき、あるいはヨーレート予測値γ_preの絶対値がヨーレート閾値γ_thresよりも大きいときには、操舵角等のドライバ入力の傾向が維持されれば、後輪路面摩擦係数変化予測時間Δt_change後に車両が不安定となる可能性が高いとし制御開始信号を出力するようにした。
よって、この予測に基づいて適切な車両制御を実施することができる。
(ブレーキ予圧)
また実施例1では制動器87hにおいて、制御開始信号が入力されるとてブレーキ与圧を付加して、ブレーキのクリアランスを予め小さくするようにした。
よって、予めブレーキ与圧を付加することで、車両挙動が実際に不安定化したときに、より素早く制動力を生じさせることができ、高応答に車両運動を安定化することができる。
図11は前輪路面摩擦係数μfが低くなり制御開始信号が出力されたとしたときのブレーキ圧のタイムチャートである。前輪路面摩擦係数μfが低くなった後に制御開始信号が出力されるとブレーキ与圧が付加される。さらに、後輪路面摩擦係数μrが低くなると車両運動を安定化するヨーモーメントを発生するのに十分なブレーキ圧を付加する。
(前輪路面摩擦係数推定の高精度化)
また実施例1の状態推定器86では、セルフアライニングトルク検出値Mz_sens、ヨーレート検出値γ_sens、操舵角検出値δ_sensから前輪路面摩擦係数推定値μf_estを推定することとした。
よって、前輪路面摩擦係数μfに応じて高感度に変化するセルフアライニングトルクMzを用いるため、前輪路面摩擦係数μfの推定精度を高くすることができる。
(前輪路面摩擦係数と車体すべり角を同時推定)
また実施例1の状態推定器86では、セルフアライニングトルク検出値Mz_sens、ヨーレート検出値γ_sens、操舵角検出値δ_sensから前輪路面摩擦係数推定値μf_estおよび車体すべり角推定値β_estを推定することとした。
よって、互いに関連性がある前輪路面摩擦係数μfと車体すべり角βを同時に推定でき、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと車体すべり角推定値β_estの推定精度を高くすることができる。
(車体すべり角推定の高精度化)
また実施例1の状態推定器86では、前輪路面摩擦係数推定値μf_estを推定し、操舵角検出値δ_sens、前輪路面摩擦係数推定値μf_estから車体すべり角推定値β_estを推定することとした。
よって、前輪路面摩擦係数推定値μf_estから精度良く車体すべり角推定値β_estを推定できる。
[効果]
実施例1の効果について以下に列記する。
(1)前後輪のタイヤモデルと車両モデルとに基づいて路面摩擦係数μと車体すべり角βとの少なくとも1つを推定する状態推定器86(走行状態推定手段)を有する走行状態推定装置において、車速を検出する車速検出器81(車速検出手段)と、前輪がある地点を通過してから後輪が同地点を通過するまでの前後輪遅延時間t_delayを車速Vtが高くなるほど短くなるように算出する前後輪遅延時間算出器82(遅延時間算出手段)と、を備え、状態推定器86は、後輪路面摩擦係数モデル86cで用いられる後輪路面摩擦係数μrを、前後輪遅延時間t_delay分遅れた前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86bで用いられる前輪路面摩擦係数推定値μf_estの値を用いるようにした。
よって、路面摩擦係数が急変するときであっても、車両挙動の推定精度を高く保つことができる。
(2)状態推定器86は、前輪路面摩擦係数μf_estの急変を推定もしくは検出したときには、前輪路面摩擦係数μfが急変してから前後輪遅延時間t_delayの間、前輪路面摩擦係数μfの推定速度を速くするようにした。
よって、前輪路面摩擦係数推定値μf_estをすばやく追従させることでき高い応答性を実現できる。
(3)状態推定器86は、前輪路面摩擦係数μfの急変を推定もしくは検出したときには、
前輪路面摩擦係数μfが急変してから前後輪遅延時間t_delayの後に、車体すべり角βの推定速度を速くするようにした。
よって、車体すべり角推定値β_estをすばやく追従させることでき高い応答性を実現できる。
(4)ドライバの操作入力を操舵角検出値δ_sens(ドライバ入力検出値)として検出するドライバ入力検出器85(ドライバ入力検出手段)と、操舵角検出値δ_sensと、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと、前後輪遅延時間t_delayとから、後輪路面摩擦係数が変化するであろう時刻以降の車両状態(車体すべり角β、ヨーレートγ)を予測する車両状態予測器87f(車両状態予測手段)と、この予測した車両状態に基づいて、車両運動制御の開始を予測する閾値比較器(制御開始予測手段)とを設けた。
よって、この予測に基づいて適切な車両制御を実施することができる。
(5)ブレーキをアクチュエータとする制動器87h(車両運動制御装置)を有し、車両運動制御の開始を予測したときには、制御開始時刻までに、ブレーキのクリアランスを予め小さくしておくようにした。
よって、予めブレーキ与圧を付加することで、車両挙動が実際に不安定化したときに、より素早く制動力を生じさせることができ、高応答に車両運動を安定化することができる。
(6)セルフアライニングトルク検出値Mz_sensを検出する前輪状態検出器83(前輪状態検出部)と、ヨーレート検出値γ(車両状態)を検出する車両状態検出器84(車両状態検出部)と、操舵角検出値δ_sens(車両へのドライバの入力)を検出するドライバ入力検出器85(ドライバ入力検出部)と、を備え、状態推定器86は、セルフアライニングトルク検出値Mz_sensと、ヨーレート検出値γと、操舵角検出値δ_sensとから、前後輪のタイヤモデルと車両モデルとに基づいて、少なくとも前輪路面摩擦係数推定値μf_estを求めるようにした。
よって、前輪路面摩擦係数μfに応じて高感度に変化するセルフアライニングトルクMzを用いるため、前輪路面摩擦係数μfの推定精度を高くすることができる。
(7)状態推定器86は、セルフアライニングトルク検出値Mz_sensと、ヨーレート検出値γと、操舵角検出値δ_sensとから、前後輪のタイヤモデルと車両モデルとに基づいて、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと車体すべり角β_estとを求めるようにした。
よって、互いに関連性がある前輪路面摩擦係数μfと車体すべり角βを同時に推定でき、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと車体すべり角推定値β_estの推定精度を高くすることができる。
(8)前輪路面摩擦係数推定値μf_estを求める前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86b(前輪路面摩擦係数推定部)と、ヨーレート検出値γと、操舵角検出値δ_sensと前輪路面摩擦係数推定値μf_estとから、前後輪のタイヤモデルと車両モデルとに基づいて、少なくとも車体すべり角推定値β_estを求め車体ダイナミクスモデル86a(車体すべり角推定部)とを設けた。
よって、前輪路面摩擦係数推定値μf_estから精度良く車体すべり角推定値β_estを推定できる。
〔実施例2〕
実施例1では、車両制御器87の閾値比較器87gから制御開始信号が出力されると、制動器87hはブレーキ予圧を負荷するようにしていた。実施例2では、車両制御器87に制御開始判定器87mを設け、この制御開始判定器87mから制御開始信号が出力されると、滑らかに後輪タイヤ縦力Fxrが変化するように後輪制駆動トルク指令値Tdを出力するようにした。実施例2は、状態推定器86と車両制御器87の構成が実施例1と異なる。以下、実施例2について説明するが、実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
[状態推定器の構成]
図12は、状態推定器86の制御ブロック図である。図12にしめすように、状態推定器86は、車両ダイナミクスモデル86aと、後輪路面摩擦係数モデル86cと、前輪路面摩擦係数推定器86iと、偏差算出器86jと、車両状態補正量算出器86kとを有している。車両ダイナミクスモデル86aと後輪路面摩擦係数モデル86cは実施例1と同じものである。
(前輪路面摩擦係数推定器)
前輪路面摩擦係数推定器86iは、前輪路面摩擦係数推定値μf_estを求める。例えば、前輪の近くに備えられた路面を撮影するカメラから得られる画像を解析することで、アスファルトや雪道などの路面の表面構成と、路面表面がどの程度湿潤しているかを判定し、前輪路面摩擦係数μfを推定する。また、ナビゲーションシステムの情報やワイパーの作動頻度を参照して、前輪路面摩擦係数μfを推定するようにしても良い。この前輪路面摩擦係数推定器86iにより求められた前輪路面摩擦係数推定値μf_estは、状態推定器86の出力値とされる。
(偏差算出器)
偏差算出器86jは、車両ダイナミクスモデル86aで求められたヨーレート推定値γ_estと、車両状態検出器84で検出されたヨーレート検出値γ_sensとの偏差eγを求める。ヨーレート推定値γ_estとヨーレート検出値γ_sensとの偏差eγは次の式(36)により求められる。
Figure 2013075632
)
(車両状態補正量算出器)
車両状態補正量算出器86kは、偏差算出器86jで求めた偏差eγを入力し、車体すべり角補正量Cβと、ヨーレート補正量Cγとを求める。車体すべり角補正量Cβ、ヨーレート補正量Cγは、それぞれ次の式(37),(38)により求められる。
Figure 2013075632
Figure 2013075632
補正ゲインKcβ,Kcγは、設計者により適当に定められる。
[車両制御器の構成]
図13は車両制御器87の制御ブロック図である。図13に示すように車両制御器87は、後輪制駆動トルク検出器87iと、後輪タイヤ縦力算出器87jと、後輪スリップ率推定器87kと、後輪タイヤ横力推定器87lと、制御開始判定器87mと、目標後輪タイヤ縦力応答生成器87nと、後輪タイヤ縦力偏差算出器87pと、後輪制駆動トルク指令値算出器87qとを有している。
(後輪制駆動トルク検出器)
後輪制駆動トルク検出器87iは、後輪4RL,4RRの駆動モータ1から後輪制駆動トルク検出値Tr_sensを検出する。例えば、検出された駆動モータ1の電流にトルク定数を乗算することで、回生制動時および駆動時の制駆動トルク検出値Tr_sensを検出する。
(後輪タイヤ縦力算出器)
後輪タイヤ縦力算出器87jは、後輪制駆動トルク検出値Tr_sensを入力し、後輪タイヤ縦力検出値Fxr_sensを求める。後輪制駆動トルク検出値Tr_sensにタイヤ有効半径を乗算することでタイヤ周での相当する力に変換する。また、後輪制駆動トルクTrが変化してから後輪タイヤ縦力Fxrが変化するまでにはタイヤの変形に起因する遅れが存在するため、この遅れ特性を考慮して後輪タイヤ縦力検出値Fxr_sensを求める。
(後輪スリップ率推定器)
後輪スリップ率推定器87kは、例えば4輪の車輪速Vwから推定された車体速Vtと、後輪の車輪速Vwに基づいて、後輪推定スリップ率Sr_estを求める。
(後輪タイヤ横力推定器)
後輪タイヤ横力推定器87lは、車体すべり角推定値β_estと、ヨーレート検出値γ_sensと、後輪推定スリップ率Sr_estとを入力し、後輪タイヤ横力推定値Fyr_estを求める。まず、後輪すべり角αrを次の式(39)により求める。
Figure 2013075632
この後輪すべり角αrと、後輪推定スリップ率Sr_estとから、例えばブラッシュモデル(車両の運動と制御第2版、山海堂、安部正人著)等のタイヤモデルを用いて、後輪タイヤ横力Fyr_estを求める。タイヤモデルはこれに限られるものではなく、実験的に同定したマジックフォーミュラ等を用いても良い。
(制御開始判定器)
制御開始判定器87mは、後輪タイヤ横力推定値Fyr_estと、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと、前後輪遅延時間t_delayとを入力し、制駆動力制限制御を開始するか否か判断する。そして、開始するべきであると判断したときには制御開始信号を出力する。例えば、次の条件を満たすときに制御開始信号を出力する。
条件1:前輪路面摩擦係数推定値μf_estが、所定の時間内に所定変化幅以上に低下すること。
条件2:後輪タイヤ横力推定値fyr_estが、前輪路面摩擦係数推定値μf_estから算出される摩擦円半径よりも小さいこと。すなわち、次の式(40)を満たしていること。
Figure 2013075632
ここで、Fzr0は静的な後輪輪荷重である。
条件3:タイヤ力が、前輪路面摩擦係数推定値μf_estから算出される摩擦円半径よりも大きいこと。すなわち、次の式(41)を満たしていること。
Figure 2013075632
以上の条件1から条件3を全て満たすときに制御開始信号を出力する。以下の目標後輪タイヤ縦力応答生成器87n、後輪タイヤ縦力偏差算出器87p、後輪制駆動トルク指令値算出器87qにおける演算は、制御開始信号が出力されたときに実行する。
(目標後輪タイヤ縦力応答生成器)
目標後輪タイヤ縦力応答生成器87nは、前輪路面摩擦推定値μf_estと、後輪タイヤ縦力検出値Fxr_sensと、前後輪遅延時間t_delayとから、目標後輪タイヤ縦力応答Fxr_tarを生成する。
まず、前輪路面摩擦推定値μf_estから算出される許容される後輪タイヤ力許容値は、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと後輪輪荷重Fzr0との積であたえられる。制御の結果、前後輪遅延時間t_delay後に実現したい後輪タイヤ力は、この後輪タイヤ力許容値よりも小さい値でなければならない。したがって、後輪タイヤ縦力許容値Fxr_tolを前後輪遅延時間t_delay後に次の式(42)で求める値とすれば良い。
Figure 2013075632
ここで、Sはマージンを設定する係数であり、0より大きく1より小さい値に設定する。
図14は、目標後輪タイヤ縦力応答Fxr_tarのマップである。目標後輪タイヤ縦力応答Fxr_tarは、例えば図14に示すように、現在時刻と現在時刻における後輪タイヤ縦力とでプロットされる図中A点と、現在時刻から前後輪遅延時間後の時刻と許容後輪タイヤ縦力とでプロットされる図中B点とを結ぶ線分を目標後輪タイヤ縦力応答Fxr_tarとすれば良い。
(後輪縦力偏差算出器)
後輪タイヤ縦力偏差算出器87pでは、後輪タイヤ縦力検出値Fxr_sensと目標後輪タイヤ縦力応答Fxr_tarとの偏差を算出し、後輪タイヤ縦力偏差eFxrとして出力する。
(後輪制駆動トルク指令値算出器)
後輪制駆動トルク指令値算出器87qでは、後輪タイヤ縦力偏差eFxrから後輪制駆動トルク指令値Tdを算出する。後輪制駆動トルク指令値Tdの算出には、例えばPI制御器を用いる。すなわち、入出力関係を伝達関数で表現すると、次の式(43)に示すようになる。
Figure 2013075632
ここで、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲインである。
[作用]
実施例2では、前輪路面摩擦係数μfの変化を検出した時間から前後輪遅延時間t_delayの間、目標後輪タイヤ縦力応答Fxr_tarを、前輪路面摩擦係数μfの変化を検出した時間の前の後輪タイヤ縦力検出値Fxr_sensから、変化後の後輪タイヤ縦力許容値Fxr_tolへ滑らかに変化させるようにした。
制御を開始してから、前後輪遅延時間t_delayのうちに後輪4RL,RRがタイヤ限界を超えないような後輪タイヤ縦力Fxrを実現するように滑らかに後輪制駆動トルクTrを制御することで、制御時にドライバが感じる違和感を低減しつつ車両挙動を安定化することができる。
[効果]
実施例2の効果について以下に述べる
(9)前輪路面摩擦係数μfの変化を検出した時刻と、後輪路面摩擦係数μrが変化すると予測される時刻との間で、目標後輪タイヤ縦力応答Fx_tar(後輪制駆動力制限値)を、変化前の後輪タイヤ縦力検出値Fxr_sens(路面摩擦係数相当の制限値)から変化後の後輪タイヤ縦力許容値Fxr_tol(路面摩擦係数相当の制限値)へ滑らかに変化させるようにした。
よって、制御時にドライバが感じる違和感を低減しつつ車両挙動を安定化することができる。
〔実施例3〕
実施例1では、車両制御器87の閾値比較器87gから制御開始信号が出力されると、制動器87hはブレーキ予圧を負荷するようにしていた。実施例3では、車両制御器87に制御開始判定器87mを設け、この制御開始判定器87mから制御開始信号が出力されると、滑らかに横加速度Gyが変化するように操舵角指令値δdを出力するようにした。実施例3は、車両制御器87の構成が実施例1と異なる。以下、実施例3について説明するが、実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
[車両制御器の構成]
図15は車両制御器87の制御ブロック図である。図15に示すように車両制御器87は、横加速度検出器87rと、制御開始判定器87sと、目標横加速度応答生成器87tと、横加速度偏差算出器87uと、操舵角指令値算出器87vとを有している。
(横加速度検出器)
横加速度検出器87rは横加速度Gyを検出する。ここで、横加速度検出値Gy_sensは、例えば既存の横滑り防止装置に内蔵されたセンサで計測された量を用いればよい。
(制御開始判定器)
制御開始判定器87sは、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと、横加速度検出値Gy_sensとを入力し、横加速度制御を開始するか否か判断する。そして、開始するべきであると判断したときには制御開始信号を出力する。例えば、次の条件を満たすときに制御開始信号を出力する。
条件1:所定時間内に前輪路面摩擦係数推定値μf_estが所定値より大きく変動すること。
条件2:現在の横加速度検出値Gy_sensが前輪路面摩擦係数推定値μf_estと重力加速度gで与えられる加速度よりも大きいこと。
以上の条件1および条件2を満たすときに制御開始信号を出力する。以下の目標横加速度応答生成器87t、横加速度偏差算出器87u、操舵角指令値算出器87vにおける演算は制御開始信号が出力されたときに実行する。
(目標横加速度応答生成器)
目標横加速度応答生成器87tは、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと、横加速度検出値Gy_sensと、前後輪遅延時間t_delayとを入力し、目標横加速度応答Gy_tarを生成する。
まず、前輪路面摩擦係数推定値μf_estから算出される許容される横加速度許容値は、前輪路面摩擦係数推定値μf_estと重力加速度gとの積であたえられる。制御の結果、前後輪遅延時間t_delay後に実現したい横加速度である目標最終横加速度Gy_finは、この横加速度許容値よりも小さい値でなければならない。つまり、目標最終横加速度は、次の式(44)で求める値とすれば良い。
Figure 2013075632
ここで、Sはマージンを設定する係数であり、0より大きく1より小さい値に設定する。
図16は、目標横加速度応答Gy_tarのマップである。目標横加速度応答Gy_tarは、例えば、図16に示すように、現在時刻と現在時刻における横加速度検出値Gy_sensとでプロットされる図中A点と、現在時刻から前後輪遅延時間後の時刻と目標最終横加速度Gy_finとでプロットされる図中B点とを結ぶ線分を目標横加速度応答Gy_tarとすれば良い。
(横加速度偏差算出器)
横加速度偏差算出器87uは、横加速度検出値Gy_sensと目標横加速度応答Gy_tarとの偏差を算出し、横加速度偏差eGyとして出力する。
(操舵角指令値算出器)
操舵角指令値算出器87vは、横加速度偏差eGyを小さくするように操舵角指令値δdを算出する。操舵角指令値δdの算出には、例えばPI制御器を用いる。すなわち、入出力関係を伝達関数で表現すると、次の式(45)に示すようになる。
Figure 2013075632
ここで、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲインである。
[作用]
実施例3では、前輪路面摩擦係数μfの変化を検出した時間から前後輪遅延時間t_delayの間、目標横加速度応答Gy_tarを、前輪路面摩擦係数μfの変化を検出した時間の前の横加速度検出値Gy_sensから、変化後の目標最終横加速度Gy_finへ滑らかに変化させるようにした。
制御を開始してから、前後輪遅延時間t_delayのうちに滑らかに目標横加速度を制御することで、制御時にドライバが感じる違和感を低減しつつ、後輪路面摩擦係数が変化したときのときの不安定挙動を予め防止することができる。
[効果]
実施例3の効果について以下に述べる。
(10)前輪路面摩擦係数μfの変化を検出した時刻と、後輪路面摩擦係数μrが変化すると予測される時刻との間で、目標横加速度応答Gy_tarを、変化前の横加速度検出値Gy_tarから変化後の目標最終横加速度Gy_finへ滑らかに変化させるようにした。
よって、制御時にドライバが感じる違和感を低減しつつ車両挙動を安定化することができる。
〔実施例4〕
実施例1では、前輪路面摩擦係数推定値μf_estを求め、その推定値から後輪路面摩擦係数推定値μr_estを求めるようにしていた。実施例4では、左右前輪独立して、左前輪路面摩擦係数推定値μfl_estおよび右前輪路面摩擦係数推定値μfr_estを求め、その推定値から左後輪路面摩擦係数推定値μrl_estおよび右後輪路面摩擦係数推定値μrr_estを求めるようにした。
実施例4の統合コントローラ8の制御ブロック自体の構成は実施例1と同様であり状態推定器86の各構成の処理の内容が一部異なる。よって、実施例1の図4を用いて説明する。なお以下では、実施例1と処理が異なる構成のみ説明する。
[状態推定器]
状態推定器86は、図4に示すように状態推定器86は、車両ダイナミクスモデル86aと、前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86bと、後輪路面摩擦係数モデル86cと、セルフアライニングトルク算出器86dと、偏差算出器86eと、補正量算出器86fと、路面μ補正ゲイン増加判定器86gと、車両状態補正ゲイン判定器86hとを有している。
(前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル)
前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル86bは、左前輪路面摩擦係数補正量Cμflと右前輪路面摩擦係数補正量Cμfrとを入力し、左前輪路面摩擦係数推定値μfl_estと右前輪路面摩擦係数推定値μfr_estとを求める。左前輪路面摩擦係数推定値μfl_estは次の式(46)で、右前輪路面摩擦係数推定値μfr_estは次の式(47)で求められる。
Figure 2013075632
Figure 2013075632
左前輪路面摩擦係数補正量Cμflは左前輪路面摩擦係数に関する補正量であり、右前輪路面摩擦係数補正量Cμfrは右前輪路面摩擦係数に関する補正量であり、補正量算出器86fにより求められる。
(後輪路面摩擦係数モデル)
後輪路面摩擦係数モデル86cは、左前輪路面摩擦係数推定値μfl_estと、右前輪路面摩擦係数推定値μfr_estと、前後輪遅延時間t_delayとを入力し、左後輪路面摩擦係数μr_estと、右後輪路面摩擦係数μrr_estとを求める。まず、次の式(48)より前後輪遅延時間t_delayから遅延ステップ数N_delayを求める。
Figure 2013075632
t_delayは、前後輪遅延時間算出器82で求められた前後輪遅延時間である。floorは引数が小数の場合は、小数点以下を切り捨てて整数に変換する演算子を表わす。
左後輪路面摩擦係数推定値μrl_estは、現在の左前輪路面摩擦係数μfl_estに対して遅延ステップ数N_delay前の左前輪路面摩擦係数μfl_estの値に設定される。右後輪路面摩擦係数推定値μrr_estは、現在の右前輪路面摩擦係数μfr_estに対して遅延ステップ数N_delay前の右前輪路面摩擦係数μfr_estの値に設定される。
Figure 2013075632
Figure 2013075632
(セルフアライニングトルク算出器)
セルフアライニングトルク算出器86dは、左前輪路面摩擦係数推定値μfl_estと、右前輪路面摩擦係数推定値μfr_estと、車体すべり角推定値β_estと、ヨーレート推定値γ_estを入力し、セルフアライニングトルク推定値Mz_estを求める。セルフアライニングトルク推定値Mz_estは、例えば実施例1に記載のフィアラモデルを用いて、左前輪セルフアライニングトルクMzl、右前輪セルフアライニングトルクMzrを算出する。
(偏差算出器)
偏差算出器86eは、車両ダイナミクスモデル86aで求められたヨーレート推定値γ_estと、車両状態検出器84で検出されたヨーレート検出値γ_sensとの偏差eγ、およびセルフアライニングトルク算出器86dで求められた左前輪セルフアライニングトルク推定値Mzl_estと、前輪状態検出器83で検出された左前輪セルフアライニングトルク検出値Mzl_sensとの偏差eMzl、およびセルフアライニングトルク算出器86dで求められた右前輪セルフアライニングトルク推定値Mzr_estと、前輪状態検出器83で検出された右前輪セルフアライニングトルク検出値Mzr_sensとの偏差eMzrを求める。ヨーレート推定値γ_estとヨーレート検出値γ_sensとの偏差eγは次の式(51)により求められる。
Figure 2013075632
左前輪セルフアライニングトルク推定値Mzl_esと左前輪セルフアライニングトルク検出値Mzl_sensとの偏差eMzlは次の式(52)により求められる。
Figure 2013075632
左前輪セルフアライニングトルク推定値Mzr_esと左前輪セルフアライニングトルク検出値Mzr_sensとの偏差eMzrは次の式(53)により求められる。
Figure 2013075632
(補正量算出器)
補正量算出器86fは、偏差算出器86eで求めた偏差eγ,eMzl,eMzrを入力し、車体すべり角補正量Cβと、ヨーレート補正量Cγと、左前輪路面摩擦係数補正量Cμflと、右前輪路面摩擦係数補正量Cμfrとを求める。車体すべり角補正量Cβ、ヨーレート補正量Cγ、左前輪路面摩擦係数補正量Cμfl、右前輪路面摩擦係数補正量Cμfrは、それぞれ次の式(54)〜(57)により求められる。
Figure 2013075632
Figure 2013075632
Figure 2013075632
Figure 2013075632
補正ゲインKcβ1,Kcβ2,Kcβ3,Kcγ1,Kcγ2,Kcγ3,Kcμf1,Kcμf2,Kcμf3は、設計者により適当に定められる。
[作用]
実施例4では、左前輪路面摩擦係数推定値μfl_estと右前輪路面摩擦係数推定値μfr_estとを独立して推定するようにした。そして、左後輪路面摩擦係数推定値μrl_estを、現在の左前輪路面摩擦係数推定値μfl_estに対して前後輪遅延時間t_delay前の左前輪路面摩擦係数推定値μfl_estに設定し、右後輪路面摩擦係数推定値μrr_estを、現在の右前輪路面摩擦係数推定値μfr_estに対して前後輪遅延時間t_delay前の右前輪路面摩擦係数推定値μfr_estに設定するようにした。
これにより、左右輪で路面摩擦係数μが異なる路面を跨ぐ所謂スプリットμ時に、より精度良く、車体すべり角βおよび路面摩擦係数を推定することができる。
[効果]
(11)状態推定器86は、前輪4FL,4FRを左右独立に路面摩擦係数を推定し、左後輪路面摩擦係数推定値μrl_estを、遅延時間t_delay分遅れた左前輪路面摩擦係数推定値μfl_estとし、右後輪路面摩擦係数推定値μrr_estを、遅延時間t_delay分遅れた右前輪路面摩擦係数推定値μfr_estとするようにした。
よって、左右輪で路面摩擦係数μが異なる路面を跨ぐ所謂スプリットμ時に、より精度良く、車体すべり角βおよび路面摩擦係数を推定することができる。
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づく実施例により説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例1では制動器87hをブレーキ予圧しているが、車両挙動制御に関連する他の機器のブレーキやクラッチのクリアランスを予め小さくするものであっても良い。
81 車速検出器(車速検出手段)
82 前後輪遅延時間算出器(遅延時間算出手段)
83 前輪状態検出器(前輪状態検出部)
84 車両状態検出器(車両状態検出部)
85 ドライバ入力検出器(ドライバ入力検出手段)
86 状態推定器(走行状態推定手段)
86b 前輪路面摩擦係数ダイナミクスモデル(前輪路面摩擦係数推定部)
87f 車両状態予測器(車両状態予測手段)
87h 制動器(車両運動制御装置)

Claims (10)

  1. 前後輪のタイヤモデルと車両モデルとに基づいて路面摩擦係数と車体すべり角との少なくとも1つを推定する走行状態推定手段を有する走行状態推定装置において、
    車速を検出する車速検出手段と、
    前輪がある地点を通過してから後輪が同地点を通過するまでの遅延時間を車速が高くなるほど短くなるように算出する遅延時間算出手段と、
    を備え、
    前記走行状態推定手段は、後輪タイヤモデルで用いられる後輪路面摩擦係数を、前記遅延時間分遅れた前輪タイヤモデルで用いられる前輪路面摩擦係数の値を用いることを特徴とする走行状態推定装置。
  2. 請求項1に記載の走行状態推定装置において、
    前記走行状態推定手段は、前輪路面摩擦係数の急変を推定もしくは検出したときには、前輪路面摩擦係数が急変してから前記遅延時間の間、路面摩擦係数の推定速度を速くすることを特徴とする走行状態推定装置。
  3. 請求項1に記載の走行状態推定装置において、
    前記走行状態推定手段は、前輪路面摩擦係数の急変を推定もしくは検出したときには、
    前輪路面摩擦係数が急変してから前記遅延時間の後に、車体すべり角の推定速度を速くすることを特徴とする走行状態推定装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の走行状態推定装置において、
    ドライバの操作入力をドライバ入力検出値として検出するドライバ入力検出手段と、
    前記ドライバ入力検出値と、前記前輪路面摩擦係数推定値と、前記遅延時間とから、後輪路面摩擦係数が変化するであろう時刻以降の車両状態を予測する車両状態予測手段と、
    この予測した前記車両状態に基づいて、車両運動制御の開始を予測する制御開始予測手段と、
    を有することを特徴とする走行状態推定装置。
  5. 請求項4に記載の走行状態推定装置において、
    ブレーキもしくはクラッチをアクチュエータとする車両運動制御装置を有し、
    前記車両運動制御の開始を予測したときには、制御開始時刻までに、前記ブレーキもしくは前記クラッチのクリアランスを予め小さくしておくことを特徴とする走行状態推定装置。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の走行状態推定装置において、
    前記前輪路面摩擦係数の変化を検出した時刻と、前記後輪路面摩擦係数が変化すると予測される時刻との間で、後輪の制駆動力制限値を、変化前の路面摩擦係数相当の制限値から変化後の路面摩擦係数相当の制限値へ滑らかに変化させることを特徴とする走行状態推定装置。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の走行状態推定装置において、
    前記走行状態推定手段は、前輪を左右独立に路面摩擦係数を推定し、
    左後輪路面摩擦係数推定値を、前記遅延時間分遅れた左前輪路面摩擦係数推定値とし、
    右後輪路面摩擦係数推定値を、前記遅延時間分遅れた右前輪路面摩擦係数推定値とすることを特徴とする走行状態推定装置。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の走行状態推定装置において、
    前輪の横力もしくはセルフアライニングトルクを検出する前輪状態検出部と、
    車両状態を検出する車両状態検出部と、
    車両へのドライバの入力を検出するドライバ入力検出部と、
    を備え、
    前記走行状態推定手段は、前記前輪状態と、前記車両状態と、前記ドライバ入力とから、前後輪のタイヤモデルと車両モデルとに基づいて、少なくとも前記前輪路面摩擦係数を推定することを特徴とする走行状態推定装置。
  9. 請求項8に記載の走行状態推定装置において、
    前記走行状態推定手段は、前記前輪状態と、前記車両状態と、前記ドライバ入力とから、前後輪のタイヤモデルと車両モデルとに基づいて、前記前輪路面摩擦係数と前記車体すべり角とを推定することを特徴とする走行状態推定装置。
  10. 請求項9に記載の走行状態推定装置において、
    前輪の路面摩擦係数を推定もしくは検出する前輪路面摩擦係数推定部と、
    前記車両状態と、前記ドライバ入力と、前記前輪摩擦係数推定部とから、前後輪のタイヤモデルと車両モデルとに基づいて、少なくとも前記車体すべり角を推定する車体すべり角推定部と、
    を有することを特徴とする走行状態推定装置。
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