以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
図12は、本発明の実施例に係る分流式流量センサ装置の全体構成を示す外観図である。本実施例の分流式流量センサ装置は、ヘッド部31とアンプ部32が電気ケーブル27で接続された構成を有する。アンプ部32は更に電気ケーブル10を介して外部機器(図示せず)に接続することができる。
図13は、本発明の実施例に係る分流式流量センサ装置のヘッド部の外観を示す斜視図である。また、図1は分流式流量センサ装置のヘッド部の分解図であり、図2は分流式流量センサ装置のヘッド部の主要部断面図である。この分流式流量センサ装置は、金属製の略円筒状の主流路部材(主流路モジュール)11と、その側面(図1等では上面)に形成された開口部に挿入されるバイパス流路モジュールを備えている。バイパス流路モジュールは、金属製又は樹脂製のバイパス流路部材12と流量センサ基板21で構成されている。主流路部材11の側面開口部とバイパス流路部材12との間には、バイパスパッキン13が介装されている。また、詳しくは後述するが、基板パッキン22によって主流路部材11(主流路モジュール)の側面開口部とバイパス流路モジュールとの封止(気密性の確保)が成されている。
この分流式流量センサ装置は、略円筒状の主流路部材11の両端部を流量測定対象の装置や設備における気体の管路に挿入して使用される。主流路部材(主流路モジュール)11は気体の主流路を構成し、バイパス流路モジュール(バイパス流路部材12及び流量センサ基板21)は主流路から分流して流れる気体のバイパス流路を構成する。図2において、主流路を気体が流れる様子を太い矢印線で示し、バイパス流路を気体が流れる様子を細い矢印線で示している。
主流路部材11の上流側部分には、複数のメッシュ板141とスペーサ142を交互に重ねた構造の第1整流手段14が装着されている。図示の例では、6枚のメッシュ板141と5枚のスペーサ142が交互に重ねられて第1整流手段14が構成されている。一例として、各メッシュ板141は厚み0.1mmの円板状の金属板に直径約0.2mmの小孔が多数形成されたものであり、各スペーサ142は厚み1.0mmの金属製の円環状部材である。
第1整流手段14は、図2に示すように、主流路部材11の上流側内壁面に設けられた段部111に押し当てられ、メッシュロック15を用いて固定されている。メッシュロック15は、円環状部材の外周に雄螺子が形成されたものであり、主流路部材11の段部111より上流側の内壁面に形成された雌螺子と螺合するようにねじ込まれる。第1整流手段14は、分流前の主流路における径方向の流量分布、つまり流路断面内の流量分布を均一にする働きを有する。この働きの詳細については後述する。
主流路部材11の下流側部分には、測定レンジ調整部材16及びメッシュフィルタ17が装着されている。測定レンジ調整部材16は、略円筒形の部材であり、一端側に鍔部161を有する。図2に示すように、主流路部材11の下流側内壁面に形成された段部112に、Oリング(オーリング)18を挟むようにして測定レンジ調整部材16の鍔部が押し当てられ、測定レンジ調整部材16の円筒形部分が主流路部材11の下流側円筒形部分に挿入される。測定レンジ調整部材16の円筒形部分の外径と、主流路部材11の下流側円筒形部分の内径はほぼ等しく、両者の隙間ができるだけ小さいことが望ましい。
測定レンジ調整部材16の鍔部161の外側端面にメッシュフィルタ17の外周部を挟むようにしてメッシュロック19がねじ込まれ、これによって測定レンジ調整部材16及びメッシュフィルタ17が固定されている。メッシュロック19は、上述のメッシュロック15と同様に、円環状部材の外周に雄螺子が形成されたものであり、主流路部材11の段部112より下流側の内壁面に形成された雌螺子と螺合するようにねじ込まれる。
メッシュフィルタ17は、下流側の管路から気体が逆流したときに気体中の異物(ごみ)が分流式流量センサ装置の内部に入り込むのを防止するために設けられている。また、測定レンジ調整部材16は、主流路の断面積を変えることによって測定レンジを変更することを容易にするために使用される。したがって、この測定レンジ調整部材16が装着される場合と装着されない場合がある。
図3は、バイパス流路部材12の斜視図である。また、図4はバイパス流路部材12及び流量センサ基板21で構成されるバイパス流路モジュールの断面図である。バイパス流路部材12は、主流路部材11の側面開口部を封止するように装着されたときに、主流路の断面の略中央部に位置するバイパス流路の入口121及び出口122を備え、入口121から出口122に至るバイパス流路がバイパス流路部材12の内部に形成されている。図4において、バイパス流路を気体が流れる様子を矢印線で示している。
図3及び図4から分かるように、バイパス流路部材12の上面には凹部123が形成され、この凹部123の前後が入口121及び出口122に連通している。図1及び図2に示すように、バイパス流路部材12の上面には、流量センサ基板21が被せられ、基板パッキン22を挟んで流量センサ基板21が主流路部材11に固定される。つまり、バイパス流路部材12の凹部123とその上側開口を塞ぐ流量センサ基板21によってバイパス流路の一部が形成されている。
図5は、主流路部材11の側面開口部にバイパス流路部材12が装着され、その上に流量センサ基板21が取り付けられる様子を示す斜視図である。図2の断面図に良く示されているように、基板パッキン22は、主流路部材11の側面(上面)開口部の周囲に設けられた段部とバイパス流路部材12の上端部外周面とで形成される溝にはめ込まれる。4本の固定螺子23と下基板ホルダ285によって流量センサ基板21が主流路部材11の上面に締め付けられると、基板パッキン22が変形して主流路部材11の側面開口部とバイパス流路部材12の側面と流量センサ基板21の下面とが同時に封止される。流量センサ基板21等の取り付け構造については後で説明を加える。
図2及び図4に示すように、流量センサ基板21の下面には、チップ部品である熱式流量センサ211が実装されている。つまり、バイパス流路の壁面の一部を構成する流量センサ基板21の下面に熱式流量センサ211が配置されている。なお、図3において、バイパス流路の一部を形成する凹部123の横に第2の凹部124が形成されているが、これは流量センサ基板21の下面に実装される熱式流量センサ211の引き出し線(ワイヤ)を保護するモールド部を逃げるためのものである。そのようなモールド部が無い熱式流量センサを用いる場合は凹部124が不要であり、また、バイパス流路の一部を形成する凹部123を流路方向に直角な方向(幅方向)に中央からずらして配置する必要もない。幅方向の寸法を更に小さく構成することも可能である。
前述のように、バイパス流路の入口121は主流路の断面の略中央部に位置する(図2参照)。これにより、気流の乱れが発生しやすい管路の壁面付近ではなく、比較的安定した気流となる中央部の気体をバイパス流路の入口121からバイパス流路へ導くことができる。その結果、バイパス流路を流れ込む気体の流量が安定しやすく、熱式流量センサ211による流量測定の安定性が向上する。
また、図2及び図4から分かるように、バイパス流路の入口121を構成するバイパス流路部材12の先端部は上流側へ突出し、入口121の周辺部121aが球面状に形成されている。つまり、主流路(の気体の流れ)に沿って流線形となるように形成されている。これにより、主流路中に配置されたバイパス流路の入口121の周辺部121aに起因する主流路の気流の乱れが低減される。主流路の気流が乱れれば、熱式流量センサ211が配置されたバイパス流路の気流に影響が出るので、主流路の気流の乱れを抑えることが重要である。同様の理由により、バイパス流路の出口122を構成するバイパス流路部材12の後端部は下流側へ突出し、出口122の周辺部122aも球面状(流線形)に形成されている。
図2及び図4によく示されているように、バイパス流路の途中において熱式流量センサ211の上流側に第2整流手段24が配置されている。第2整流手段24は、複数(この例では5枚)の金属製メッシュ板25を重ねたものであり、各メッシュ板25はメッシュ(多数の小孔)が形成されたメッシュ部251とメッシュが形成されていない板状部252とからなる(図6参照)。メッシュ部251は板状部252より薄く形成されている。これにより、隣接するメッシュ板25のメッシュ部251の間に一定の隙間が形成されている。
一例として、板状部252の厚みが0.2mm、メッシュ部251の厚みが0.1mmであり、隣接するメッシュ板25のメッシュ部251の間に0.1mmの隙間が形成されている。本実施例のメッシュ板25は、エッチング加工によってメッシュ部251が精密加工されたエッチングメッシュである。金網、フィルタ材、ハニカム材等を用いてメッシュ板25を形成してもよいが、エッチングメッシュは組み立て時のばらつきに起因する整流効果の差が発生しにくい点で優れている。
図6は、バイパス流路部材12と第2整流手段24との分解図である。この図に良く示されているように、第2整流手段24を構成する5枚のメッシュ板25のそれぞれは、上側の薄肉のメッシュ部251とそれ以外の厚肉の板状部252からなる。板状部252のうちの下側部分253には、横長のスリットが3列にわたって互い違いにずれるように形成され、これによって上下方向の変形(圧縮)が可能なように構成されている。また、メッシュ部251の一方の側部には、板状部252の一部である突出部254が形成されている。
図6において、バイパス流路部材12の上面には、メッシュ収容溝125が形成され、重ねられた5枚のメッシュ板25の突出部254がこのメッシュ収容溝125に嵌り込むように装着される。また、薄板ばね部材を加工して形成されたメッシュ押さえばね26を用いて、5枚のメッシュ板25が重ね方向に押圧され固定されている。図4から分かるように、メッシュ押さえばね26はバイパス流路中に位置するので、その下面中央部に大きな開口26aが形成され、気流を妨げないようになっている。また、バイパス流路部材12の上面の上流側に浅い凹部126が形成されており、メッシュ押さえばね26の水平部分26bがこの凹部126に嵌り込むようになっている。
前述のように、流量センサ基板21が主流路部材11の上面に締め付けられると、メッシュ押さえばね26の水平部分26bがバイパス流路部材12の上面の凹部126と流量センサ基板21の下面との間に挟み込まれて固定されると共に、5枚のメッシュ板25の上端面が流量センサ基板21の下面に当接して下方に押される。このとき、前述したように、各メッシュ板25の下側部分253に設けられた横長スリットによる上下方向の変形(圧縮)を許容する構造が機能する。
すなわち、各メッシュ板25の下端面はバイパス流路部材12に形成された段部127(図4参照)に当接し、上端面は流量センサ基板21の下面に当接する。そして、流量センサ基板21が4本の固定螺子23で主流路部材11の上面に締め付けられるに伴って、各メッシュ板25は上下方向に若干圧縮される。このような構造としたことにより、各メッシュ板25(第2整流手段24)は、がたつきの無い状態で確実に固定される。図2及び図4から分かるように、各メッシュ板25の上側部分のメッシュ部251がバイパス流路中に位置し、下側部分253はバイパス流路から外れた箇所に位置する。
第2整流手段24は、バイパス流路における熱式流量センサ211の上流側で更なる整流を行い、熱式流量センサ211の近傍での気流の乱れを抑える働きを有する。この働きの詳細については後述する。また、上記のように、スペーサを介さずに複数のメッシュ板25を直接重ねながら隣接するメッシュ部間に隙間を設けた構造により、十分な整流作用を確保しながら流路方向の長さ(厚み)をできるだけ小さくした第2整流手段24を実現している。流路方向に比較的長いスペースを確保することができる主流路の第1整流手段14と異なり、熱式流量センサ211の上流側に配置される第2整流手段24は、流路方向に短いことが好ましい。これにより、バイパス流路部材12ひいては分流式流量センサ装置全体の小形化が可能となる。
図1に示すように、分流式流量センサ装置のヘッド部とアンプ部との電気接続のための電気ケーブル27が上下のケーブルブッシュ271,272と2本の固定螺子(図示を省略)を用いて主流路部材11の上面に固定されている。分流式流量センサ装置のヘッド部及びアンプ部の電気回路の構成については後述する。また、流量センサ基板21の上には、ヘッド部の電気回路を構成するプリント基板が内蔵された上ケースユニット28が被せられている。
図7は、上ケースユニット28及び流量センサ基板21の分解図である。また、図14は、分流式流量センサ装置のヘッド部の上ケースユニットを含む内部構造を示す断面図である。上ケースユニット28は、樹脂製の上ケース281と、その内部に収容される表示基板282、メイン基板283、上基板ホルダ284及び下基板ホルダ285を含んでいる。図1にも示されているように、上ケースユニット28(上ケース281)の上面には、2種類のLED表示28a及び28bが備えられている。第1のLED表示28aは、アンプ部からの制御によってオン・オフされるLED表示であり、現在の流量があらかじめ設定した流量より多いか少ないかを表示する。第2のLED表示28bは、4個のLED(発光ダイオード)を順番に点灯させることにより気体が流れている様子を表す。流量に応じてLEDを順番に点灯させる速度(周期)を変化させることにより、流量が視覚的に分かるような表示である。表示基板282には、第1のLED表示28aに対応するLED282aと第2のLED表示28bに対応する4個のLED282bが実装されている。
メイン基板283には、熱式流量センサ211の出力信号の処理回路、上記のLED表示28a及び28bの駆動回路、アンプ部との通信のための回路、電源回路等の回路部品が実装されている。メイン基板283は、基板間コネクタ283aを介して表示基板282と上下一体に接続され、これらの基板282,283は樹脂製の上基板ホルダ284に固定される。上基板ホルダ284の下面の前後の端部には下方に突出した係合突起部284aが設けられ、これらに係合する係合部285aが下基板ホルダ285の前後の端部に形成されている。前後一対の係合突起部284aと係合部285aが係合することによって、上基板ホルダ284と下基板ホルダ285は一体に結合される。
樹脂製の下基板ホルダ285は、強度を高めるために、水平板部と両側の側板部285bからなる断面H形状の構造を有する。バイパス流路を流れる気体の圧力によって流量センサ基板21が撓むのを防止するために、下基板ホルダ285の下面が流量センサ基板21の上面に接触した状態で、図5に示したように下基板ホルダ285が主流路部材11の側面開口部に螺子止めされる。下基板ホルダ285の強度を高めるための断面形状はH形状に限らず、例えば断面コ形状(U形状)としてもよい。十分な強度を確保できる金属で下基板ホルダ285を作る場合は側板部285bを省いた水平板部のみの形状としてもよい。
また、側板部285bは、上ケースユニット28の両側壁の一部を兼ねている。すなわち、図7に示すように、上ケース281の両側面の比較的広い面積に矩形の切欠き281aが形成され、この切欠き281aに下基板ホルダ285の側板部285bが嵌り込み、上ケース281の側面と下基板ホルダ285の側板部285bの表面が面一になるように構成されている。そして、下基板ホルダ285の側板部285を含む上ケースユニット28の側面全体に樹脂シート(図示を省略)が貼られる。このような構造により、各基板282,283の面積を最大限確保しながら上ケースユニット28の幅を小さくすることができる。
図14から分かるように、アンプ部との電気接続のための電気ケーブル27は、メイン基板283に接続されている。そして、メイン基板283と流量センサ基板21とが基板間コネクタ21aによって電気的に接続されている。図7から分かるように、上基板ホルダ284及び下基板ホルダ285のそれぞれの中央部に、基板間コネクタ21aを挿通させる貫通孔284b,285cが形成されている。
上ケース281の両側面の下端部には計4箇所の係合孔281bが形成されており、これらに対応する係合突起11aが主流路部材11の上部側面に形成されている。4対の係合孔281b及び係合突起11aを互いに係合させることにより、上ケース281が主流路部材11の上部に固定される。
図8は、ヘッド部の電気回路の構成を示すブロック図である。また、図9はヘッド部に接続されるアンプ部の電気回路の構成を示すブロック図である。前述のヘッド部31とアンプ部32との電気接続のための電気ケーブル27には、4本の電線、すなわちヘッド電源ライン、アナログ信号/通信線、ヘッド表示信号/通信線、及びグランド(GND)ラインが含まれている。アナログ信号/通信線は、ヘッド部31で検出された流量に相当する電圧信号(アナログ信号)をアンプ部32に送るための信号線路とディジタル通信線路とを兼ねている。また、ヘッド表示信号/通信線は、アンプ部32からヘッド部31のLED表示のオン・オフを制御するための信号線路とディジタル通信線路とを兼ねている。
ヘッド部31は、前述の熱式流量センサ211、その出力信号の処理回路である一対のブリッジ回路311と差動増幅器312、V−F変換回路313、前述の第1及び第2のLED表示28a,28bに対応する複数のLEDを含むLED表示回路314、電気的にデータ書き換え可能なメモリ素子であるEEPROM315、2個のアナログスイッチ316A,316B、電源回路317及び2個の電圧検出回路318A,318Bを備えている。
熱式流量センサ211は、白金薄膜で構成されたヒータ抵抗301と温度補償抵抗302を二組備え、それぞれの組が上流側と下流側とに離間して配置されている。上流側及び下流側のヒータ抵抗301に一定の電流を流したときに、気流が無い場合は両者の発熱による温度に差が無いが、気体の流量が多くなるにつれて、上流側のヒータ抵抗301が下流側のヒータ抵抗301に比べて冷却されて温度が下がる度合いが大きくなる。
したがって、両者の温度差から気体の流量が検出できる。実際には、本実施例の熱式流量センサ211では、上流側及び下流側のヒータ抵抗301が共に設定温度(抵抗値)になるように、一対のブリッジ回路311によってそれぞれのヒータ抵抗301に電流が供給される。そして、上流側及び下流側のヒータ抵抗301の電流の差(電圧の差)が差動増幅回路312で増幅され、得られた出力電圧が気体の流量に相当する検出信号となる。なお、各ヒータ抵抗301と組になっている温度補償抵抗302は、周囲温度の変化を補償するための抵抗である。
差動増幅回路312の出力電圧(流量に相当する検出信号)は、アナログスイッチ316Aを通ってアナログ信号/通信線でアンプ部32へ送られると共に、V−F変換回路313に与えられる。V−F変換回路313は、入力された流量に相当する電圧信号を周波数(周期)信号に変換し、変換後の信号をLED表示回路314に与える。この信号に基づいて、LED表示回路314は前述の第2のLED表示28bを構成する4個のLEDを与えられた周期で順番に点灯させる。このようにして、流量が多いほど短い周期で(速い速度で)、4個のLEDが順番に繰り返し点灯する。
また、LED表示回路314に含まれる第1のLED表示28aを構成するLEDは、アンプ部32からの制御信号によって点灯又は消灯される。すなわち、アンプ部32からの制御信号がヘッド表示信号/通信線を通してヘッド部31に与えられ、この制御信号はアナログスイッチ316Bを通って電圧検出回路318Bに与えられる。そして、電圧検出回路318Bの出力信号がLED表示回路314に与えられている。なお、この信号は、上記の第2のLED表示28bのオン・オフ制御にも使用される。例えば、流量が所定値以下であるとアンプ部32が判断したときは、アンプ部32からヘッド部に与えられる制御信号によって第1のLED表示28aがオフになると共に、流れ表示を行う第2のLED表示28bもオフになる。
また、EEPROM315は、ヘッド部の固有(識別)データや特性データの記憶に使用され、アンプ部32からの通信制御によって、その記憶データの読み出し及び書き込みが行われる。このとき、アナログ信号/通信線とヘッド表示信号/通信線が2本の通信ラインとして使用される。また、2個のアナログスイッチ316A,316Bのオン・オフは、アンプ部32からヘッド部31の電源回路317にヘッド電源ラインを通して与えられる電源電圧によって制御することができる。このために、アンプ部32から供給される電源電圧を電圧検出回路318Aに入力し、その出力電圧がアナログスイッチ316A,316Bの制御端子に与えられている。
アンプ部32は、状態表示LED321、キースイッチ322、電源回路323、A/D変換回路324、マイクロプロセッサ(MPU)325、ヘッド表示制御回路326、EEPROM327、入力回路328、アナログ出力回路329及び制御出力回路330を備えている。マイクロプロセッサ325は、アンプ部32の全体の制御を司ると共に、前述の第1のLED表示28aを制御するための信号をヘッド表示制御回路326(を介してヘッド部31)に与える。また、ヘッド部31からアナログ信号/通信線を通して送られる差動増幅回路312の出力電圧(流量に相当する検出信号)は、A/D変換回路324でディジタル値に変換された後、マイクロプロセッサ325に入力される。
状態表示LED321は、ヘッド部31及びアンプ部32を含む分流式流量センサ装置の動作状態を表示する。キースイッチ322は、第1のLED表示28aの点灯/消灯の制御のための基準流量値やその他の動作条件の設定に使用される。例えば、設定された基準流量値より検出流量値が大きい場合に第1のLED表示28aを点灯させ、それ以外では消灯させるように制御される。電源回路323は、アンプ部32を構成する各部に電源電圧を供給すると共に、ヘッド部31にヘッド電源ラインを通して電源電圧を供給する。そして、前述のようにヘッド部31のアナログ信号/通信線とヘッド表示信号/通信線に挿入された2個のアナログスイッチ316A,316Bのオン・オフを制御するために、マイクロプロセッサ325から電源回路323にヘッド電圧制御信号が与えられる。電源回路323は、このヘッド電圧制御信号にしたがってヘッド電源ラインに供給する電圧を切り替える。
EEPROM327は、各種設定値や制御用データの記憶に使用される。その記憶データは、外部機器(例えば上位コントローラ)から入力回路328を介してマイクロプロセッサ325に入力されるデータによって書き換えることができるようにしてもよい。また、検出された流量値は、マイクロプロセッサ325からアナログ出力回路329を介して外部機器へ出力することができる。更に、制御出力回路330を介してマイクロプロセッサ325からの制御信号を外部機器へ出力するための2つの出力ポートが備えられている。例えば、前述のヘッド部及びアンプ部のLED表示に対応する(連動する)オン・オフ出力を外部に出力する。2つの出力ポートを用いて4通り(2ビット)のデータを出力することができる。
次に、主流路に設けられた第1整流手段14とバイパス流路に設けられた第2整流手段24の効果について説明を加える。前述のように、第1整流手段14は、主として分流前の主流路における径方向の流量分布、つまり流路断面内の流量分布を均一にする働きを有する。特に、分流式流量センサ装置の上流側に接続される管路の形状がL字状に曲がっている場合に、主流路の上流側端部における流路断面内の流量分布が不均一になりやすい。この場合、主流路の壁面に沿って流れる気流が多くなり、流路断面内の中央付近を流れる気流が少なくなる傾向がある。その結果、入口121からバイパス流路に流れ込む気流が減少し、流量の測定結果が実際より少なめに検出される傾向がある。第1整流手段14の働きによって、このような傾向が抑制され、又は緩和される。
図10は、第1整流手段14の効果を示すグラフである。横軸は実際の流量(リットル/分)を表し、縦軸はオフセット流量(リットル/分)を表している。ここでいうオフセット流量は、上述のように主流路の上流側にL字状に曲がっている管路を接続して気体を流したときに、実際の流量と検出流量(少なめに検出される)との差を意味する。曲線41は第1整流手段14を装着しなかったときの測定値をプロットしたものであり、曲線42は第1整流手段14を装着したときの測定値をプロットしたものである。
曲線41から分かるように、第1整流手段14を装着しなかったときは、流量が増加するに伴ってオフセット流量も増加し、流量100リットル/分では実際の流量より約20リットル/分少なめに検出された。これに対して第1整流手段14を装着したときは、曲線42に示すように、流量が増加してもごくわずかのオフセット流量を維持し、流量100リットル/分での実際の流量と検出流量との差は2リットル/分未満であった。
図11は、第1整流手段14及び第2整流手段24のノイズレベルに関する効果を示すグラフである。横軸は実際の流量(リットル/分)を表し、縦軸はノイズレベル(±リットル/分)を表している。ここでいうノイズレベルは、図8に示した差動増幅器312の出力電圧(DC電圧)に重畳されたAC電圧成分を流量に換算したものである。AC電圧成分は主として気流の乱れによって発生する。ある程度の時間における平均値で測定流量を求めればAC電圧成分(ノイズ)を除くことができるが、その場合は測定値が決定するまでに時間を要するので、いわゆる応答性が悪くなる。また、平均化するためのハードウェア(積分回路)又はソフトウェア処理が必要となる。
図11において、曲線43は第1整流手段14を装着しないで、第2整流手段24のみを装着したときの測定値をプロットしたものである。曲線44は、第1整流手段14を装着し、第2整流手段24は装着しなかったときの測定値をプロットしたものである。曲線45は、第1整流手段14及び第2整流手段24の両方を装着したときの測定値をプロットしたものである。
曲線43と曲線45を比較すれば、ノイズレベルに関しても第1整流手段14の効果がかなり大きいことが分かる。しかし、曲線44から分かるように、第1整流手段14のみ装着して第2整流手段24は装着しなかったときは、流量100リットル/分に対して±20リットル/分に近いノイズレベルが検出された。これに対して、第2整流手段24も装着した場合は、曲線45から分かるように、流量100リットル/分に対して±2リットル/分未満のノイズレベルが検出されたにすぎない。
このように、ノイズレベルに関して、第2整流手段24の効果も大きいことが確認された。第2整流手段24は、バイパス流路における熱式流量センサ211の上流側で更なる整流を行い、熱式流量センサ211の近傍での気流の乱れを抑える働きを有する。これによって、ノイズレベルが抑えられる。
次に、バイパス流路部材12及び流量センサ基板21によって構成されるバイパスモジュールの詳細な実施例及び変形例について説明を加える。バイパス流路部材12はアルミニウム等の金属ブロックを切削加工して作製してもよいし、樹脂成形によって作製してもよい。特に樹脂の射出成形によってバイパス流路部材12を作製する場合は、細部の形状に関して後述するようないくつかの点を考慮することが好ましい。
図4等から分かるように、バイパス流路部材12及び流量センサ基板21によって構成されるバイパス流路は、直線的に延びる直管部と直角に曲がる屈曲部との組合せで構成されている。すなわち、バイパス流路は、入口121から主流路に沿って(横方向へ)延びる第1直管部B1から第1屈曲部を経て上方に向かう第2直管部B2となり、第2屈曲部を経て再び主流路に沿って延びる第3直管部B3となる。更に第3屈曲部を経て下方に向かう第4直管部B4となり、第4屈曲部を経て再び主流路に沿って延びる第5直管部B5となり出口122に至る。但し、上記のようなバイパス流路の構成に限るわけではなく、適宜変更可能である。直管部及び屈曲部の数を増やしてもよい。屈曲部を必ずしも直角に曲げる必要はなく鈍角に曲げてもよいし、円弧状に(Rを付けて)曲げてもよい。
上記のバイパス流路のうち、第3直管路B3は前述のようにバイパス流路部材12の上面に形成された凹部123と流量センサ基板21の下面とによって形成されている。凹部123の底面、すなわち流量センサ基板21に対向する面は平面状に形成されている。したがって、この第3直管路B3は断面が長方形である。これに対して、第1直管部B1、第2直管部B2、第4直管部B4及び第5直管部B5の断面は円形である。但し、円形に限らず、楕円形や長円形、又は矩形の断面としてもよい。
樹脂の射出成形によってバイパス流路部材12を作製する場合に、例えば第1直管部B1の断面を円形とするのであれば、第2直管部B2の断面は長円形又は矩形とすることが好ましい。つまり、射出成形で使用される金型において、第1直管部B1を形成するスライドピンと第2直管部B2を形成するスライドピンが共に円形断面である場合は、両者の突き合わせ部分の加工が難しい。加工精度が悪い場合は突き合わせ部分でバリが生じやすくなる。そこで、第1直管部B1を円形とする場合は、第2直管部B2の断面は長円形又は矩形とする。
より詳しく言えば、図4において第2直管部B2の管壁のうち少なくとも左側部分に平面部を設けることによって、第1直管部B1を形成するスライドピンの先端形状を平面とすることができる。これにより、金型(スライドピン)の加工が容易になると共に、樹脂成形品であるバイパス流路部材12に形成されたバイパス流路内にバリが生ずることを回避することができる。なお、金属ブロックの切削加工によってバイパス流路部材12を作製する場合は、第1直管部B1の断面及び第2直管部B2の断面を共に円形としても問題ない。第5直管部B5と第4直管部B4との関係についても、上記の第1直管部B1と第2直管部B2との関係と同様のことが言える。
樹脂の射出成形によってバイパス流路部材12を作製する場合の他の留意点として、射出成形におけるいわゆるヒケを防止するために、肉厚部を抉る肉盗みを設けてもよい。例えば、図4において、第2直管部B2と第4直管部B4との間に側面又は下面からブロックを刳りぬくような凹部(肉盗み)を設けてもよい。
図4における第2直管部B2及び第4直管部B4の上側部分は、図3から分かるように幅広の矩形断面となって第3直管路B3と接続されている。図3から分かるように、第3直管路B3は、流路方向に直角な方向(幅方向)に中央からずらして(オフセットして)配置されている。これは、前述のように熱式流量センサ211の形状によるものである。なお、図4の断面図は、第3直管路B3の部分のみ中央からずれた(オフセットされた)断面を示している。
図4において、第2整流手段24(のメッシュ部251)と熱式流量センサ211は共に第3直管路B3に配置され、両者の間にバイパス流路の屈曲部は存在しない。これにより、第2整流手段24によって略均一な気流となった直後の流量が熱式流量センサ211によって検出されることになる。また、第3直管路B3の始まり部分、即ち第22直管部B2の後の第2屈曲部の直後に第2整流手段24が設けられており、これを構成するメッシュ板25の積層方向は主流路に沿った方向、即ち第1整流手段14のメッシュ板141の積層方向と同じである。また、流量センサ基板21の下面に実装された熱式流量センサ211が第3直管路B3に突出し、この部分でバイパス流路の断面が小さくなっている。したがってこの部分での絞り効果により、流量の検出精度が良くなる。
次に、主流路部材11の下流側部分に装着される測定レンジ調整部材16について説明を加える。図1及び図2から分かるように、この測定レンジ調整部材16は主流路の内周面に密着する外周面を有する断面が環状の筒状部材であり、長手方向(軸方向)の下流側端部(基端部)に鍔部161を有する。また、上流側端部(先端部)の周壁の一部に、バイパス流路部材12との干渉を回避するための切り欠き部162が形成されている。筒状の測定レンジ調整部材16を前述のようにして主流路部材11に装着することにより、その環状断面積の分だけ主流路の断面積が減少する。その結果、バイパス流路と主流路との分流比が増加する。
例えば、測定レンジ調整部材16を挿入しないときのバイパス流路と主流路との分流比が1:10(1/10)であり、測定レンジ調整部材16を装着することによってその分流比が1:5(1/5)に増加したとする。この場合は、主流路の流量が同じであれば熱式流量センサ211によって検出される流量が2倍になることを意味する。逆に、検出される流量が同等であれば、主流路の流量が半分になったことを意味する。こうして、測定レンジ調整部材16を装着した場合は装着しない場合に比べて測定可能な流量のレンジ(測定レンジ)が半分になる。
本実施例の分流式流量センサ装置は、測定レンジ調整部材16を装着するか否かによって、上述のように2段階の異なる測定レンジに対応することができる。断面積の異なる複数の測定レンジ調整部材16を用意し、それらの中から用途に応じて適切な測定レンジ調整部材16を選択して装着するようにしてもよい。そうすることにより、1台の分流式流量センサ装置で3段階以上の測定レンジに対応することが可能となる。なお、測定レンジ調整部材16は金属製でも樹脂製でもよい。
測定レンジ調整部材16の装着によって、主流路の断面積が減少する部分で気流の乱れが発生することがある。この主流路での気流の乱れがバイパス流路の気流(ひいては熱式流量センサの検出出力)に影響を与えることを回避するために、測定レンジ調整部材16は主流路とバイパス流路との分流部より下流側において主流路の断面積を減少させるように構成されている。但し、このことは、必ずしも上記実施例のように主流路の下流側から測定レンジ調整部材16を挿入する構造のみを意味するわけではない。以下に他の実施例を示す。
図15は、測定レンジ調整部材16の変形例を示すヘッド部の主要部断面図である。この変形例の測定レンジ調整部材16は、主流路の下流側からではなく上流側から挿入するように構成されている。測定レンジ調整部材16の上流側端部に鍔部161が形成されている。筒状部材である測定レンジ調整部材16の軸方向中央部の上部壁は主流路部材11の側面(上面)開口と同様に、バイパス流路部材12を挿入するための開口が形成されている。また、測定レンジ調整部材16の上流側周壁163は肉薄であり、下流側周壁164は肉厚に形成されている。
上記のような測定レンジ調整部材16は、バイパス流路部材12及び第1整流手段14を主流路部材11に装着する前に上流側から主流路に挿入される。そして、鍔部161を主流路部材11の段部111に突き当て、第1整流手段14と共にメッシュロック15によって固定される。この変形例の測定レンジ調整部材16を用いる場合は、主流路とバイパス流路との分流部より下流側において測定レンジ調整部材16の周壁が肉薄から肉厚に変化することによって主流路の断面積が減少する。したがって、上記の実施例と同様の効果が得られる。
図16は、測定レンジ調整部材と同様の構成を実現する他の実施例を示すヘッド部の部分断面図である。図16(a)はヘッド部の部分断面を示し、図16(b)はバイパス流路部材12の主流路に垂直な断面を模式的に示している。この実施例では、上述の測定レンジ調整部材16に相当する略円環状の断面を有する測定レンジ調整部128がバイパス流路部材12に一体に(したがってバイパス流路モジュールに一体に)形成されている。
図16(a)から分かるように、この実施例でも主流路とバイパス流路との分流部より下流側において主流路M1の断面積が減少している。そして、測定レンジ調整部128の肉厚(断面積)を変えれば主流路M1の断面積の減少分が変化する。その結果、バイパス流路と主流路との分流比が変化して、上記の実施例と同様の効果が得られる。測定レンジ調整部128の肉厚(断面積)が異なる複数のバイパス流路モジュール12を用意し、それらの中から用途に応じて適切なバイパス流路モジュール12を選択して使用するようにしてもよい。そうすることにより、1台の分流式流量センサ装置で複数段階の測定レンジに対応することが可能となる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記の実施例に限らず、必要に応じて種々の変更を加えて実施することができる。