JP2005232535A - 圧粉磁心用鉄粉および圧粉磁心 - Google Patents

圧粉磁心用鉄粉および圧粉磁心 Download PDF

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敏夫 前谷
Masateru Ueda
正輝 植田
Naomichi Nakamura
尚道 中村
Yukiko Ozaki
由紀子 尾▲崎▼
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Abstract

【課題】高磁束密度および高絶縁性を有するだけでなく高強度な圧粉磁心を製造することができる圧粉磁心用鉄粉を提供する。
【解決手段】表面に、アルミニウムを含有するリン酸塩またはリン酸化合物を被覆した被覆鉄粉について、その粒度分布を、JIS Z 8801-1に定める篩による篩い分け質量%で、呼び寸法が1mmの篩を通過し、かつ呼び寸法が 180μm の篩を通過しない粒度のものが40%以下、呼び寸法が 180μm の篩を通過し、かつ呼び寸法が 150μm の篩を通過しない粒度のものが15%以上60%以下、呼び寸法が 150μm の篩を通過し、かつ呼び寸法が 106μm の篩を通過しない粒度のものが10%以上60%以下、呼び寸法が 106μm の篩を通過し、かつ呼び寸法が75μm の篩を通過しない粒度のものが3%以上20%以下、呼び寸法が75μm 篩を通過する粒度のものが15%以下の分布に調整する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高い磁気特性や高い強度が要求される圧粉磁心の原料として好適な圧粉磁心用鉄粉およびかかる圧粉磁心用鉄粉を用いて作製した圧粉磁心に関するものである。
粉末冶金技術は、複雑な形状の部品をニアネット形状でしかも高寸法精度に製造することが可能であるため、切削コストの大幅な低減が可能となる。このため、自動車部品、電気部品等において粉末冶金製品が広く採用されている。
近年、電子機器、電気機器の小型化に伴い、鉄心材料として粉末を加圧成形して作製する圧粉磁心においても、より磁気特性に優れた材料が要求されている。
そこで、磁気特性を改善するために、飽和磁束密度の高い強磁性金属粉末の表面を絶縁物で被覆して、圧粉磁心としたものが普及しつつある。
かような圧粉磁心は、成形したまま、あるいは金属粉末表面に被覆した絶縁物が破壊され絶縁性が低下しないような温度範囲で熱処理を行って、使用される。従って、圧粉磁心の強度は、高温で熱処理すなわち焼結したものに比べると低いため、高い強度が要求されない部品等に適用されている。しかしながら、圧粉磁心には巻線を施す必要があるため、高強度であるにこしたことはない。
また、圧粉磁心で高磁束密度を得るためには、圧粉密度を高くする必要がある。圧粉密度を高くするためには、圧粉される金属粉末が高圧縮性であることが望ましい。圧縮性と磁気特性に優れた金属粉末として、例えば鉄粉の粒度分布を粗粒側に限定すると共に 150μm 以上の粒径の鉄粉の硬度に上限を設けた鉄粉が開示されている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、一般に、鉄粉の粒径を粗くすると、圧粉時における粉末同士の接触点数が減少するため、圧粉体の強度が低下するという問題があった。
一方、圧粉磁心の絶縁性および強度を向上させる方法として、鉄粉にエポキシ樹脂やフツ素樹脂等の樹脂バインダーを被覆する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、エポキシ樹脂やフツ素樹脂等の非磁性のバインダーを添加すると、絶縁性および強度は向上するものの、磁束密度は著しく低下するという問題があった。
さらに、別の方法として、強磁性金属粉末の表面をリン酸処理し、表面にリン酸を付着させた強磁性金属粉末を加圧成形した圧粉コアでは、渦電流損が低下すると共に、リン酸処理をしない強磁性金属粉末を加圧成形した圧粉コアよりも高い機械的強度が得られることが報告されている(例えば特許文献3参照)。
しかしながら、鉄粉の表面をリン酸処理しただけでは、100 kHz, 0.1Tでのコアロスが2460 kW/m3以上となり、十分な絶縁性が得られないという問題が生じる。
さらに、圧粉磁心の絶縁性を向上させる方法として、鉄を主成分とする軟磁性粉末の表面を、P,Mg,Si,Bを含むガラス状絶縁層で被覆する方法も提案されている(例えば特許文献4参照)。
しかしながら、この方法では、 588 MPaを超える高圧成形ではガラス状絶縁層の破壊を招くことがあり、高圧成形することができないため、高い圧粉体密度が得られず、圧粉磁心の強度や磁束密度等の磁気特性において高特性が望めないという問題があった。
特開2002−317204号 特開昭59−50138 号 特開平7−245209号 特開平6−260319号
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、高磁束密度および高絶縁性を有するだけでなく高強度な圧粉磁心を製造することができる圧粉磁心用鉄粉およびこの圧粉磁心用鉄粉を用いて作製した高磁束密度で高絶縁性、高強度な圧粉磁心を提案することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)表面を、アルミニウムを含有するリン酸塩またはリン酸化合物で被覆した被覆鉄粉であって、JIS Z 8801-1に定める篩による篩い分け質量%で、呼び寸法が1mmの篩を通過し、かつ呼び寸法が 180μm の篩を通過しない粒度のものが40%以下、呼び寸法が 180μm の篩を通過し、かつ呼び寸法が 150μm の篩を通過しない粒度のものが15%以上60%以下、呼び寸法が 150μm の篩を通過し、かつ呼び寸法が 106μm の篩を通過しない粒度のものが10%以上60%以下、呼び寸法が 106μm の篩を通過し、かつ呼び寸法が75μm の篩を通過しない粒度のものが3%以上20%以下、呼び寸法が75μm 篩を通過する粒度のものが15%以下の粒度分布になることを特徴とする圧粉磁心用鉄粉。
(2)前記(1)記載の被覆鉄粉を加圧成形してなる圧粉磁心。
(3)前記(2)において、JIS Z 2507に定める圧環強さ試験方法に準拠して求めた圧環強さKが、常温における 980 MPaの加圧成形でK≧100 MPa を満足することを特徴とする圧粉磁心。
本発明によれば、高磁束密度と高絶縁性を有するだけでなく、高強度も併せもつ圧粉磁心を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、鉄粉の表面をアルミニウムを含有するリン酸塩またはリン酸化合物で被覆した被覆鉄粉であって、該被覆鉄粉の粒度分布を厳密に規定した鉄粉である。
ここに、鉄粉としては、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉および電解鉄粉等に代表される純鉄粉が適しており、特に高圧縮性の面ではアトマイズ鉄粉が好適である。
一方、鉄粉の表面を被覆する材料は、例えばリン酸化合物とアルミニウムを含む金属化合物を原料として作製される。
ここに、被覆材の原料として用いられるこのリン酸化合物は、リン原子に結合する水酸基を2個以上有するリン酸類であり、五酸化二リンを水和して得られる酸およびその塩を総称したものである。具体的には、メタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸およびそれらの塩などが挙げられる。なお、本発明においては、これ以外のリン酸化合物、例えばモノメチルリン酸、モノオクチルリン酸、モノフェニルリン酸などのリン酸モノエステルや、それ以外のリン酸化合物およびその塩を用いることもできる。なお、本発明においては、これらのリン酸化合物は水等の溶媒に可溶なものであることが好ましい。
また、被覆材の原料として用いられるこのアルミニウムを含む金属化合物は、アルミニウムを含むものであればどのようなものでもかまわないが、例えばアルミニウムのリン酸塩、硝酸塩、酢酸塩および水酸化物等などが有利に適合する。
さらに、本発明においては、アルミニウム以外の金属を含む金属化合物を併用することもできる。そのような金属化合物としては、Mg,Mn,Zn,Co,Ti,Sn,Ni,Fe,Zr, Sr,Y, Cu,Ca,VおよびBaなどの金属元素を含有する、リン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩および水酸化物等などが例示される。
なお、本発明においては、これらの金属化合物についても水等の溶媒に可溶なものであることが好ましい。
本発明では、鉄粉の表面に被覆するアルミニウムを含有するリン酸塩またはリン酸化合物について、それに含まれるリンの含有量をP(mol) 、全金属元素の含有量をM(mol) としたとき、そのモル比P/Mを1以上、10未満とすることが好ましい。というのは、P/M比が1未満では、金属表面での化成反応が不十分であり、鉄粉表面の化成膜の密着性が低下するため、成形体の強度や絶縁性の低下を招き、一方P/M比が10以上になると、被覆処理後に遊離したリン酸が残存するようになり、鉄粉の腐食が生じるおそれがあるからである。好ましいP/M比は、1以上、5以下の範囲である。さらに、比抵抗のばらつきや不安定化を効果的に防止するには、P/M比を2以上、3以下と範囲に制御するのが一層有利である。
なお、P/M比の調整は、リン酸化合物、アルミニウム化合物およびその他の金属化合物を、P/M比が所望の値になるようにそれぞれ所定量用いる方法、一旦P/M比を所定の量とした上でP/M比が所望の値となるように、さらにリン酸化合物あるいはアルミニウム化合物およびその他の金属化合物のいずれかを加える方法などが挙げられるが、いずれの方法を用いてもかまわない。また、これら以外の方法を用いても、勿論かまわない。
また、P/M比の定量は、化合物中のリンおよび金属の成分量を定量分析によって求めてから、モルに換算しても良いし、あるいは原料中に含まれるリンおよび金属の成分量を定量分析によって求めておき、モル比が所定のP/M比となるように混合しても良い。勿論、それ以外の方法を用いてもかまわない。
なお、本発明においては、成形体の磁束密度およびその他必要な特性の低下を招くものでなければ、被膜中あるいは被膜下層または被膜上層に、アルミニウムを含むリン酸塩またはリン酸化合物以外の物質が存在していてもかまわない。かような物質としては、例えば界面活性剤などの金属と被覆物質の濡れ性改善を目的とする材料、粉末同士の結着を目的とする樹脂、被覆時のリン酸塩および被覆原料の物性たとえばpH等の調整を目的とする添加剤などがあるが、これらは総量で全被覆材中の5mass%以下に抑制することが好ましい。
また、本発明においては、全金属元素のモル数をM、アルミニウム元素のモル数をαM(αは0≦α≦1となる数値)、それ以外の金属成分のモル数を(1−α)Mとした時、αは 0.3超、1以下であることが好ましい。というのは、αが 0.3以下になると、リン酸との反応性が高いアルミニウムが少なくなるため、遊離リン酸が未反応のまま残存してしまい、鉄粉の腐食が生じるおそれがあるからである。なお、本発明において、特に好ましいα値は 0.4≦α≦1.0 であり、さらに好ましくは 0.8≦α≦1.0 の範囲である。
本発明において、鉄粉の表面上に、アルミニウムを含むリン酸塩またはリン酸化合物の被膜を被覆する方法としては、CVD,PVDなどの気相蒸着法、メカノフュージョンなどの各種の乾式による被覆処理法、原料としてのリン酸化合物および金属化合物を含む溶液を用いる湿式の被覆処理法などが挙げられるが、本発明においては、これらいずれの方法であっても、あるいはこれら以外の方法を用いても構わない。その中でも、原料としてのリン酸化合物および金属化合物を含む溶液を用いた湿式の被覆処理法は、気相蒸着法などに比べて簡便な上に、そのリン酸化合物とアルミニウム化合物の混合比を調整することでP/M比を所望の値にすることが容易であるため、乾式の被覆処理法に比べてリンと金属元素のモル比(P/M)を正確に制御することができ、さらに鉄粉表面への被覆も均一に行うことができるので、特に好ましい。
なお、湿式法で被覆処理する場合、用いる溶液の鉄に対する反応性を制御することを目的として、溶液のpHを所望の値に調整しておくことが好ましい。好適なpHの範囲は1以上、6以下である。pHの値が1に満たないと、反応性が高くなりすぎ、処理時、反応が過剰になる部分が発生するため、被膜の成分・組成が不均一になったり、密着性の低下を招く。一方、pHの値が6より大きくなると、反応性が低下してしまうため、被膜の生成が十分に進行しない。
本発明においては、溶液のpHを調整するために、溶液中にpH調整剤を添加してもかまわない。pH調整剤としては、例えばリン酸1ナトリウム、リン酸2ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸1カリウム、リン酸2カリウム、フマル酸1ナトリウムおよびホウ酸などが挙げられる。但し、本発明においては、上記した以外の材料を用いてpH調整を行っても、勿論かまわない。
湿式による被覆処理法としては、アトライターやヘンシェルミキサーなどのように槽内で撹拌混合する方法、転動流動槽型被覆装置のように流動状態で混合する方法などが挙げられるが、本発明においてはいずれの方法を用いても構わないし、それら以外の方法を用いても勿論構わない。湿式混合を行う場合、鉄粉に対する溶液の供給は、混合開始前あるいは開始直後に全量を供給する方法でも構わないし、混合中に数回に分けて供給する方法でも構わない。また、液滴供給装置やスプレーなどを用いて、混合中に継続して供給するようにしても良い。
特に、スプレーによる溶液供給は、溶液を粉末全体に均一に散布することが可能であり、さらにスプレーの噴霧条件の調整により、噴霧液滴の径を10μm 程度まで小さくすることができるので、被膜厚みが過剰になることも防止できる。その結果、鉄粉全体を均一かつ薄い被膜で被覆することが可能となる。従って、本発明においては、スプレーを用いて被覆処理を行うことが好ましい。
また、流動造粒機や転勤造粒機などのような流動槽およびヘンシェルミキサーのような撹拌型混合機による撹拌を行うと、粉体同士の凝集が抑制される利点がある。従って、流動槽やヘンシェルミキサーでスプレーを用いて溶液を噴霧すると、スプレー噴霧による効果と、流動槽やヘンシェルミキサーを利用した効果とが複合し、より均一な被覆が得られるので、特に好ましい。なお、溶媒の乾燥の促進や反応の促進などを目的として、混合中あるいは混合後に加熱処理を行うことは有利である。
ここに、鉄粉に対する被覆材の添加量は、粉末全体で0.05〜5mass%の範囲とすることが好ましい。というのは、0.05%mass%を下回ると、被覆材が少なすぎるために鉄粉の被覆が不均一となって、強度の低下のみならず、絶縁性の低下を招き、一方5mass%を超えた場合は、圧粉磁心中の鉄粉の割合が著しく低下するので、成形体強度のみならず磁束密度の著しく低下を招くからである。
次に、被覆鉄粉の粒度を限定した理由について説明する。
被覆鉄粉の最大粒度を1mm以下に限定した理由は、金型への鉄粉の充填および加圧成形時に、金型の微細な凹部近くや金型の角部近くに、先に1mmを超える鉄粉が位置してしまうと、細かい鉄粉が金型の微細な凹部や金型の角部に充填されなくなり、成形体表面に粗大な空孔が生じたり、密度むらが生じたりして、高密度で高磁気特性な圧粉体が得られなくなるのを防止するためである。
また、本発明の粒度構成に限定した場合、すなわち質量%で、−1mm/+180 μm (呼び寸法が1mmの篩を通過し、かつ呼び寸法が 180μm の篩を通過しないことを表す。以下同じ)の粒度のものが40%以下(0%の場合を含む)、かつ−180 μm /+150 μm の粒度のものが15%以上60%以下、かつ−150 μm /+106 μm の粒度のものが10%以上60%以下、かつ−106 μm /+75μm の粒度のものが3%以上20%以下、かつ−75μm (呼び寸法が75μm の篩を通過することを表す。以下同じ)の粒度のものが15%以下(0%の場合を含む)の場合には、粗い粒子の隙間を細かい粒子が埋めるような粒度構成となって、見掛密度が高くなり、加圧成形時に嵩高な状態で充填されるために、高密度な成形体を得ることができる。
より望ましい粒度構成は、−1mm/+180 μm の粒度のものが30%以下(0%の場合を含む)、かつ−180 μm /+150 μm の粒度のものが25%以上55%以下、かつ−150 μm/+106 μm の粒度のものが10%以上40%以下、かつ−106 μm /+75μm の粒度のものが3%以上20%以下、かつ−75μm の粒度のものが10%以下(0%の場合を含む)の場合であり、この場合には、より見掛密度が高くなり、一層高密度な成形体を得ることができる。
逆に、本発明の粒度構成を外れた場合、すなわち−1mm/+180 μm の粒度のものが40%を超えた場合や、−180 μm /+150 μm の粒度のものが15%未満または60%を超えた場合、−150 μm /+106 μm の粒度のものが10%未満または60%を超えた場合、−106μm /+75μm の粒度のものが3 %未満または20%を超えた場合、−75μm の粒度のものが15%を超えた場合等のいずれかの場合には、見掛密度が低下するため、圧粉体密度が低下する。
なお、−75μm の鉄粉の粒度を15%以下に限定した理由は、上記の粒度構成上の理由に加え、−75μm の鉄粉は粗い粒度の鉄粉に比べ比表面積が大きくなり、粒子同志の摩擦抵抗が大きくなるため、鉄粉同志が動き難くなって、高密度が得られないためである。
以上のような粒度分布に調整された被覆鉄粉は、金型などを用いて加圧成形される。
ここに、成形圧力は、用途に応じて適宜決定すれば良い。成形圧力を向上させると、成形体の圧粉密度が向上するため、磁束密度などの磁気特性が向上し、さらには機械的強度も向上するので好ましい。好ましい成形圧力は 490 MPa以上、特に好ましい成形圧力は 980 MPa以上である。
また、上記の加圧成形に際し、必要に応じて潤滑剤を金型全面に塗布あるいは添加することができる。かかる潤滑剤を利用することにより、加圧成形時に金型と粉末間の摩擦を低減することができるので、成形体密度の低下を抑制することができ、その上金型から抜き出す際の摩擦も低減できるので、取り出し時における成形体の割れを防止できるなどの改善効果が得られる。
ここに、潤滑剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸、あるいは脂肪酸アミドなどのワックスが挙げられる。
本発明に従い得られた鉄粉から作製される圧粉磁心は、加圧成形後に、歪取りによるヒステリシス損失の低減や成形体強度の向上などを目的とした熱処理を行っても良い。この際、加熱温度や加熱時間、加熱雰囲気等の熱処理条件は、用途に応じて適宜決定すれば良いが、加熱温度は 300〜700 ℃、加熱時間は5〜120 分程度が好適である。加熱雰囲気としては、簡易な加熱装置で処理ができる大気以外にも、ArやN2などの不活性雰囲気、H2などの還元性雰囲気あるいは真空などが挙げられるが、本発明においてはそのいずれでも構わない。また、雰囲気露点は用途等に応じて適宜決定すれば良い。さらに、熱処理時、昇温時あるいは降温時に一定の温度で保持する段階を設けてもよい。
以上の方法で作製された成形体は、高い磁束密度と絶縁性を示す。
なお、これらの機構の詳細については明確に解明されたわけではないが、発明者らは、リン酸塩中のリン酸による鉄粉表面での化成反応と、リン酸塩中の金属元素、とくにアルミニウムとリン酸の間で進行する架橋反応とそれに伴う遊離リン酸の消滅およびリン酸塩でできた絶縁層の形成が、本発明の鉄粉を加圧成形して作製される成形体において、高密度、高絶縁性の実現に強く影響しているものと推定している。
以下、本発明の実施例について説明をする。
鉄粉としては、JFEスチール(株)製の鉄粉「KIP-304AS 」を用いた。また、被覆材としては、P/M比(モル比)が表1に示す値になるように調整したリン酸化合物および金属化合物を用いた。なお、P/M比は、小数点第一位を四捨五入して示した。
被覆に際しては、湿式の被覆処理法を用いるものとし、溶液としては、蒸留水中における固形分濃度を5mass%に調整したものを用いた。
なお、P/M比の調整は、リン酸化合物と金属化合物の溶解比あるいは混合比の調整または所定のP/M比となるように調整したリン酸塩を溶解することにより行った。そして、P/M比については、全金属成分中、アルミニウム原子が占めるモル比αが0<α≦1になるように調整した。
被覆鉄粉としては、表1に示す粒度分布になるもの(水アトマイズ鉄粉)を使用した。鉄粉表面への被覆材の被覆は、転動流動槽型被覆装置により実施した。被覆材の添加は、鉄粉を装置容器内で流動化させた上で、スプレーを用いてその流動状態にある粉末に対し、被覆材の固形分量が表1に示した量になるように噴霧することによって行った。噴霧終了後、乾燥を確実とするために20分間流動状態を維持した。また、比較例2〜6では、本発明の被覆材の代わりに水分散型エポキシ樹脂(樹脂濃度:5mass%)を被覆材とした。
このようにして得られた被覆鉄粉を、JIS Z 8801-1に定める篩による篩い分けを行い、粒度分布を測定した。
また、被覆鉄粉を加圧成形して測定用のリング状試料(外径:38mm,内径:25mm,高:6.2 mm)を作製した。なお、成形に際には、金型内面にステアリン酸亜鉛の5mass%アルコール溶液を塗布して金型潤滑を行った。また、成形圧力は 980〜1470MPa とした。
かくして得られた成形体試料の成形体密度、磁束密度、比抵抗および圧環強度について調べた結果を、表2に示す。
なお、圧粉体密度は、試料の寸法と重量を測定し、その値を用いて算出した。
磁束密度は、リング試料にφ0.6 mmのホルマル被覆導線を1次側:100 巻、2次側:20巻したコイルを用いて、磁界H=10 kA/m における磁束密度B10k で評価した。
比抵抗は、四端子法にて測定した。この際、通電電流は1Aとした。
圧環強度は、JIS Z 2507において「焼結含油軸受けの圧環強さ試験方法」として規定されている方法に準拠して求めた。
Figure 2005232535
Figure 2005232535
表2から明らかなように、本発明に従いアルミニウムを含有するリン酸塩またはリン酸化合物を被覆し、かつ被覆鉄粉の粒度分布を適正に調整した場合には、優れた圧粉体密度、磁束密度および比抵抗が得られただけでなく、100 MPa 以上という高い圧環強度が得られた。
これに対し、比較例1は、被覆を施さなかった場合であるが、高磁束密度は得られたものの、比抵抗が9μΩm と低く、圧環強度も84 MPaにすぎなかった。また、比較例2〜4は、エポキシ樹脂を被覆した例であるが、高比抵抗は得られたものの、圧環強度は著しく低下した。
被覆鉄粉として、表3に示す被覆材および粒度分布になるもの(水アトマイズ鉄粉)を用い、実施例1と同様の方法で被覆を行ったのち、測定用のリング状試料(外径:38mm,内径:25mm,高:6.2 mm)を作製した。
かくして得られた成形体試料の成形体密度、磁束密度、比抵抗および圧環強度について調べた結果を、表4に示す。
Figure 2005232535
Figure 2005232535
表4から明らかなように、本発明に従いアルミニウムを含有するリン酸塩またはリン酸化合物を被覆し、かつ被覆鉄粉の粒度分布を適正に調整した場合には、優れた圧粉体密度、磁束密度および比抵抗が得られただけでなく、100 MPa 以上という高い圧環強度が得られた。
これに対し、比較例5〜13は、粒度分布が本発明の適正範囲を外れる場合であるが、発明例に比べ、圧粉体密度が低いため、磁束密度が低く、また圧環強度も 100 MPa未満にすぎなかった。また、比較例14は、被覆を施さず、かつ粒度分布が本発明の適正範囲を外れる場合であるが、粒度分布が本発明の範囲を満たす比較例1に比べて、圧粉体密度、磁束密度が低く、しかも比抵抗は11μΩm 、圧環強度は80MPa と低い値であった。
本発明は、高い絶縁性と磁束密度を有する圧粉磁心用鉄粉を提供する。ここで、鉄粉の表面を被覆材で被覆した被覆鉄粉において、該被覆材として、アルミニウムを含有するリン酸塩またはリン酸化合物を用いる。すなわち、例えば、鉄粉の表面をリン酸アルミニウムにて被覆することにより、絶縁性、磁束密度のいずれもが高い圧粉磁心が得られる。
従って、本発明は、モーター鉄心用圧粉体の製作をはじめとして、その関連技術分野も含めて多大な貢献をもたらす。

Claims (3)

  1. 表面を、アルミニウムを含有するリン酸塩またはリン酸化合物で被覆した被覆鉄粉であって、JIS Z 8801-1に定める篩による篩い分け質量%で、呼び寸法が1mmの篩を通過し、かつ呼び寸法が 180μm の篩を通過しない粒度のものが40%以下、呼び寸法が 180μm の篩を通過し、かつ呼び寸法が 150μm の篩を通過しない粒度のものが15%以上60%以下、呼び寸法が 150μm の篩を通過し、かつ呼び寸法が 106μm の篩を通過しない粒度のものが10%以上60%以下、呼び寸法が 106μm の篩を通過し、かつ呼び寸法が75μm の篩を通過しない粒度のものが3%以上20%以下、呼び寸法が75μm 篩を通過する粒度のものが15%以下の粒度分布になることを特徴とする圧粉磁心用鉄粉。
  2. 前記請求項1記載の被覆鉄粉を加圧成形してなる圧粉磁心。
  3. 前記請求項2において、JIS Z 2507に定める圧環強さ試験方法に準拠して求めた圧環強さKが、常温における 980 MPaの加圧成形でK≧100 MPa を満足することを特徴とする圧粉磁心。
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