JP2005232197A - 微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 有機ポリイソシアネートと、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、ポリシロキサンと、活性水素含有基と第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物と、活性水素含有基と加水分解性シリル基とを同一分子内に有する化合物とを反応させて得られる親水性ポリウレタン樹脂と、微粒子シリカとからなる組成物及びその製造方法。
【選択図】 なし
Description
しかしながら、高分子量親水性ポリオールとしてエチレンオキサイドの開環重合から得られるポリエチレングリコールを使用して得られるポリウレタン樹脂は、高強度で高弾性、且つ親水性に優れているが、耐水性が悪く、該樹脂を用いて形成された被膜は、水分により膨潤或いは白化して強度低下が起こり、各種塗料及び印刷インクのバインダー、成型体、フィルム、シート等の用途には適さないという問題があった。
しかし、上記のいずれの場合も、微粒子充填剤はポリウレタン樹脂中に高々5質量%程度しか良好に分散できず、多量の微粒子充填剤をポリウレタン樹脂に良好に分散させることは困難であった。
本発明の組成物は、親水性ポリウレタン樹脂と微粒子シリカとから構成されている。本発明で用いる親水性ポリウレタン樹脂は、有機ポリイソシアネートと、親水性成分と、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物と、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の加水分解性シリル基とを同一分子内に有する化合物とを、必要に応じて鎖延長剤の存在下に反応させて得られる親水性ポリウレタン樹脂である。
本来、疎水性(撥水性)であるポリシロキサンセグメントをポリウレタン樹脂中に導入することは、該ポリウレタン樹脂に対して良好な吸水性及び親水性を期待できないはずである。しかし、ポリシロキサンセグメント含有量の少ないポリウレタン樹脂から形成される被膜表面は、乾燥状態では完全にポリシロキサンセグメントで覆われるが、該被膜を水中に浸漬した場合にはポリシロキサンセグメントが該樹脂被膜中に埋没してしまう現象、つまり環境応答性があることが知られている(高分子論文集、第48巻[第4号]、227頁(1991)他)。
(式中の、R1は炭素数20以下のアルキル基、脂環族基、又は芳香族基(ハロゲン、アルキル基で置換されていてもよい)であり、R2及びR3は−O−、−CO−、−COO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−SO2−等で連結されていてもよい低級アルキレン基であり、X及びYは−OH、−COOH、−NH2、−NHR1、−SH等の反応性基であり、X及びYは同一でも異なってもよい。又、X及びYは上記の反応性基に誘導できるエポキシ基、アルコキシ基、酸ハライド基、酸無水物基、又はカルボキシルエステル基でもよい。)
(上記式中のnは1〜60の整数を、mは1〜6の整数を表す。)
〔1〕一般式(1)で表される、少なくとも1個の遊離イソシアネート基を有するシランカップリング剤。
(式中のR1は低級アルキル基、R2は低級アルキル基、低級アルコキシ基又はイソシアネート基を、Xは何もないか、又は2価の有機基、好ましいものはC0〜C50のアルキレン鎖、芳香族環又は脂肪族環であり、これらの基はその中に連結基として、−N−、−O−、−CO−、−COO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−SO2−等を含んでいてもよい。又、m=0〜3の整数、n=3−mである。)
(式中のYは、−NH−、−NR3−、−O−、−S−であり、R1、R2、X、m及びnは前記定義の通りである。R3は低級アルキル基である。)
従って、上記の例示の化合物のみならず、その他公知の現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
[2]分子鎖側鎖への導入
(上記式中のR1、R2、X及びYは前記と同じであり、Zは−O−、−S−、−NR3−、−NH−であり、〔P〕は重合体1分子当たり少なくとも2つのウレタン結合及び/又はウレア結合を含有する親水性ポリウレタン樹脂の分子鎖を表す。又、R3は低級アルキル基であり、m及びnは前記定義の通りである。)
末端が水酸基で、親水性を有するポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリテトラメチレングリコール共重合ポリオール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合ポリオール、ポリエチレングリコールアジペートポリオール、ポリエチレングリコールサクシネートポリオール、ポリエチレングリコール/ポリε−ラクトン共重合ポリオール、ポリエチレングリコール/ポリバレロラクトン共重合ポリオール等が挙げられる。特に好ましいのは、ポリエチレングリコールである。
ポリエチレングリコール(分子量1,000)700部とシリカ水ゾル(シリカの平均粒径10〜20nm、固形分20%)1,500部とを充分に混合し、得られた混合物を撹拌しながら70℃で減圧脱水を行った。理論量の水が留去された後、温度を120℃に上げ、133.3Pa以下の減圧下で水分を更に除去し、シリカ含有量30%の白色固体状ポリオール(A)を得た。このポリオール(A)は、水酸基価76mgKOH/g、水分率0.15%、80℃では透明な液体となり、その時の液体の粘度は450dPa・sであった。
ポリエチレングリコール(分子量590)100部とシリカ水ゾル(シリカの平均粒径200〜230nm、固形分30%)333部とを充分に混合し、得られた混合物を撹拌しながら70℃で減圧脱水を行った。理論量の水が留去された後、温度を120℃に上げ、133.3Pa以下の減圧下で水分を更に除去し、シリカ含有量50%の白色固体状ポリオール(B)を得た。このポリオール(B)は、水酸基価95mgKOH/g、水分率0.12%、110℃で軟化するものであった。
ポリエチレンオキサイドジアミン(テキサコケミカル社製ジェファーミンED;分子量600)100部とシリカメタノールゾル(シリカの平均粒径20〜30nm、固形分40%)2,250部とを充分に混合し、得られた混合物を撹拌しながら70℃で減圧脱メタノールを行った。理論量のメタノールが留去された後、温度を120℃に上げ、133.3Pa以下の減圧下でメタノール分を更に除去し、シリカ含有量90%の白色固体状ポリアミン(C)を得た。このポリアミン(C)は、アミン当量30g/mol、メタノール分率0.20%、130℃で軟化するものであった。
(本発明の組成物の製造)
上記構造のポリジメチルシロキサンポリオール(分子量3,200)5部と、ポリエチレングリコール(分子量2,040)30部と、参考例1のポリオール(A)120部と、1,3−ブチレングリコール7部と、N−メチルジエタノールアミン9部とを、200部のメチルエチルケトンと200部のジメチルホルムアミドとの混合溶剤中に溶解し、60℃でよく撹拌しながら、66部の水添MDIを100部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で8時間反応させた。得られたポリウレタン樹脂を赤外分光光度計で分析した結果、赤外吸収スペクトルには水酸基の吸収は認められず、又、ピリジン法(JIS K0070 2.5)による定量分析によっても水酸基は確認されなかった。
上記組成物の溶液は、21dPa・s(25℃)の粘度を有し、上記組成物を構成している親水性ポリウレタン樹脂のGPCで測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下の例においても同様)は58,000であり、該樹脂中のポリシロキサンセグメントの含有量は2.7%、第3級アミノ基の含有量は0.36meq/g、加水分解性シリル基の含有量は0.19meq/g、親水性セグメントの含有量は54.5%であり、該組成物(固形分)中のシリカの含有量は14.7%であった。
(本発明の組成物の製造)
(1)イソシアネート末端シランカップリング剤の製造
ヘキサメチレンジイソシアネートと水との付加物(ジュラネート24A−100:旭化成社製、NCO%=23.5)270部を25℃でよく撹拌しながら、この中にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン111部を徐々に滴下して反応させ、無色透明な液状生成物(D)が得られた。得られた生成物は、遊離のイソシアネート基は10.5%〔理論値(100%反応した場合に化学量論的に生成する反応物中の該基の量)は11.2%〕であり、理論的には下記構造を有すると思われる。
(本発明の組成物の製造)
18部の水添MDIと、実施例2で用いたポリジメチルシロキサンジアミン(分子量3,880)3部と、ポリエチレンオキサイドジアミン(ジェファーミンED;分子量2,000)4部と、参考例3のポリアミン(C)146部と、メチルイミノビスプロピルアミン2部とを、200部のジメチルホルムアミド中で、30℃、4時間反応させ、イソシアネート末端ポリウレア樹脂を得た。該樹脂溶液の温度を20℃に調整し、1部の1,4−ジアミノブタンを50部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を徐々に滴下し、滴下終了後、同温度で1時間反応させた。更に3部のγ−アミノプロピルトリメトキシシランを50部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を徐々に滴下し、30℃で1時間反応させて、ポリウレア樹脂の溶液を得た。生成した樹脂からイソシアネート基が消失していることを確認した後、ジメチルホルムアミドを加えて固形分を20%に調整し、本発明の組成物の溶液を得た。
ポリジメチルシロキサンポリオール、N−メチルジエタノールアミン及びイソシアネート基含有シランカップリング剤を使用せず、又、参考例1のポリオール(A)のシリカを除いたポリオールを使用する他は実施例1と同じ材料と処方によりポリウレタン樹脂の溶液を得た。この樹脂溶液は、固形分が20%で、47dPa・s(25℃)の粘度を有し、上記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は86,000であった。
ポリジメチルシロキサンジアミン、N,N−ジメチル−N′,N′−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパン、イソシアネート基含有シランカップリング剤及びγ−アミノプロピルトリメトキシシランを使用せず、又、参考例2のポリオール(B)のシリカを除いたポリオールを使用する他は実施例2と同じ材料と処方によりポリウレタン−ポリウレア樹脂の溶液を得た。この樹脂溶液は、固形分20%で、55dPa・s(25℃)の粘度を有し、上記ポリウレタン−ポリウレア樹脂の重量平均分子量は91,000であった。
ポリジメチルシロキサンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン及びγ−アミノプロピルトリメトキシシランを使用せず、又、参考例3のポリアミン(C)のシリカを除いたポリアミンを使用する他は実施例3と同じ材料と処方によりポリウレア樹脂の溶液を得た。この樹脂溶液は、固形分20%で、25dPa・s(25℃)の粘度を有し、上記ポリウレア樹脂の重量平均分子量は68,000であった。
参考例1〜3で使用したシリカ水ゾル又はシリカメタノールゾルを、それぞれ比較例1〜3の樹脂溶液中に撹拌しながら添加したが、微粒子シリカが析出し、これらの溶液は不透明となった。
鹸化度98.5%のポリビニルアルコール(重合度550)の5%水溶液を調製した。
〔1〕インクジェット用記録シートの評価
実施例1〜3、比較例1〜7で得られた各組成物及び樹脂の溶液を、それぞれ100μm厚のPETフィルムに乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布及び乾燥してインク受容層を形成し、得られた記録シートにカラーインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−800C)で印字記録を行い、以下の項目の評価を行った。
インク受容層の表面に未処理PETフィルムを重ね、荷重0.29MPa、温度40℃で一日放置後の耐ブロッキング性の評価を行った。結果を以下のように表示する。
○:ブロッキング性なし
△:ややブロッキング性あり
×:ブロッキング性あり
インク受容層の表面の曇りを目視にて判定した。結果を以下のように表示する。
○:完全に透明
△:僅かに曇りがある
×:完全に不透明
インクジェットプリンターでインク受容層にカラー印字した後、得られたカラー画像の発色鮮明性を目視により観察した。結果を以下のように表示する。
○:滲みがなく鮮明
△:やや滲みがあり、やや不鮮明
インクジェットプリンターでインク受容層にカラー印字した後、50g/m2の荷重で5秒間濾紙を押し付け、インクが濾紙に転写しなくなるまでの時間を測定した。
インクジェットプリンターでインク受容層にカラー印字した後、記録シートを水中に漬けた(20℃、1時間)後、室温で乾燥した際の、記録画像の滲み、発色の変化を目視により観察した。結果を以下のように表示する。
○:画像の滲み、発色の変化なし
△:画像及びインク受容層に変化が認められる
×:画像がかなりとれるか、インク受容層ごと取れる
以上の評価結果を表1に示す。
比較例1で得られた樹脂の溶液と、非イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル:日本油脂製)とを固形分質量比で95:5となるように混合、溶解した。
ポリビニルブチラール(重合度700:積水化学製)100部と、トリオクチルフォスフェート50部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酸エステル(リン酸エステル系界面活性剤:第一工業製薬製)3部とをエタノール400部に混合溶解した。
実施例1〜3、比較例1、比較例8、比較例9で得られた各組成物及び樹脂の溶液を、それぞれ透明なアクリル樹脂板に乾燥後の厚みが25μmとなるように刷毛塗り及び乾燥して被膜を有する試料板とし、各試料被膜を有する面の表面硬さ、防曇性、耐水性、帯電防止性の評価を下記の方法で行った。
鉛筆硬度試験(JIS K5400.8.4)による試料板の表面傷で評価した。
80℃の温浴上、5cmのところに試料板をセットして水蒸気に10分間曝した時の塗膜の曇りを評価した。結果を以下のように表示する。
○:曇りなし
△:部分的に曇りあり
×:曇りあり
80℃の温浴上、5cmのところに試料板をセットして水蒸気に10分間曝した時の塗膜状態を目視で評価した。結果を以下のように表示する。
○:変化なし
△:やや塗膜に変化あり
×:塗膜の剥離や溶解
ダストチェンバーテストにより試料板に対する帯電カーボンの付着性を評価した。結果を以下のように表示する。
○:カーボンの付着なし
△:一部カーボンの付着あり
×:カーボンの付着あり
以上の評価結果を表2に示す。
Claims (11)
- 有機ポリイソシアネートと、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物と、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の加水分解性シリル基とを同一分子内に有する化合物とを反応させて得られる親水性ポリウレタン樹脂と、微粒子シリカとからなる組成物であって、その溶液において微粒子シリカが上記親水性ポリウレタン樹脂溶液中に安定に分散していることを特徴とする微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物。
- 微粒子シリカの含有量が、組成物中において5〜95質量%を占める量である請求項1に記載の微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物。
- 微粒子シリカが、親水性ポリウレタン樹脂を合成する際に、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンに添加されている請求項1に記載の微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物。
- 微粒子シリカが、平均粒径が1〜300nmの微粒子シリカである請求項1に記載の微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物。
- 親水性ポリウレタン樹脂中の親水性セグメント、ポリシロキサンセグメント、第3級アミノ基及び加水分解性シリル基の含有量が、それぞれ30〜80質量%、0.1〜10質量%、0.1〜50meq/g及び0.001〜10meq/gである請求項1に記載の微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物。
- 親水性セグメントが、ポリエチレンオキサイドセグメントである請求項1に記載の微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物。
- 有機ポリイソシアネートと、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物と、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の加水分解性シリル基とを同一分子内に有する化合物とを反応させて得られる親水性ポリウレタン樹脂と、微粒子シリカとからなる組成物を製造する方法において、上記高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンとして、微粒子シリカが添加された高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンを使用して親水性ポリウレタン樹脂を合成することを特徴とする微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物の製造方法。
- 微粒子シリカが添加された高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンが、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンとシリカゾルとの混合物からシリカゾルの分散媒体を除去したものである請求項7に記載の微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物の製造方法。
- 微粒子シリカの含有量が、組成物中において5〜95質量%を占める量である請求項7に記載の微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物の製造方法。
- 微粒子シリカが、平均粒径が1〜300nmの微粒子シリカである請求項7に記載の微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物の製造方法。
- 親水性ポリウレタン樹脂中の親水性セグメント、ポリシロキサンセグメント、第3級アミノ基及び加水分解性シリル基の含有量が、それぞれ30〜80質量%、0.1〜10質量%、0.1〜50meq/g及び0.001〜10meq/gである請求項7に記載の微粒子シリカ分散親水性ポリウレタン樹脂組成物。
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