JP3990239B2 - アルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

アルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法に関し、さらに詳しくは各種素材に対する接着性に優れ、かつ吸水性、防曇性、透明性、可とう性、水性インクの筆記性並びに耐水性、耐ブロッキング性、滑性に優れたアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリウレタン系樹脂は、耐摩耗性、接着性、可とう性、耐薬品性等に優れ、且つ各種加工法への適用にも優れるため各種コーティング剤、塗料、インキ等のバインダーとして、或いはフィルム、シート、その他の成型体として広く使用されており、各々の用途に適したポリウレタン系樹脂が提案されている。
このポリウレタン系樹脂とはポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン−ポリウレア樹脂を総称するものである。これらのポリウレタン系樹脂は基本的には高分子量ポリオール成分、有機ポリイソシアネート成分、更に必要に応じて鎖延長剤成分を反応させて得られるものであり、これら各成分の種類、組み合わせ等によって種々の物性のポリウレタン系樹脂が提供される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリウレタン系樹脂には、例えば、農業用樹脂シートの防曇性塗料や内装用樹脂壁紙用の表面処理剤、繊維コーティング剤、インクジェット用受像シート用コーティング剤等の如き用途においては、親水性や耐ブロッキング性も同時に要求されるのが普通である。
しかし、高分子量親水性ポリオール成分としてエチレンオキサイドの開環重合から得られるポリエチレングリコールを使用した場合は、高強度で高弾性、且つ親水性に優れたポリウレタン系樹脂が得られるものの、耐水性が悪く、水分により膨潤、白化、強度低下が起こり、各種塗料、印刷インキのバインダー、成型体、フィルム、シート等には適さないという問題があった。
【0004】
これらの問題点の対策として、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン等の微粒子充填剤をポリウレタン系樹脂に添加したり、或いは微粒子充填剤を原料の高分子量ポリオール成分中にあらかじめ分散させて合成したポリウレタン系樹脂を使用することが一般に行われている。
しかし、上記のいずれの場合も、微粒子充填剤はポリウレタン系樹脂中に高々5重量%程度しか分散できず、多量の微粒子充填剤をポリウレタン系樹脂に分散させることは困難であった。
【0005】
その理由は、粉末状の微粒子は、増粘剤やチキソトロピック化剤などとして広く知られているように、それをポリウレタン系樹脂や高分子量ポリオールに多量に分散させたものは、粘度が極めて高くなるからである。また、微粒子充填剤は、一般に、ポリウレタン系樹脂のつや消し剤(マット剤)として使用されているように、一般に該樹脂の透明性を低下させ、たとえ5重量%以下の少ない分散量であってもその透明性は著しく低下する。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、微粒子を多量に使用する場合にも上記の問題点が発生せず、各種素材に対する接着性に優れ、且つ吸水性、防曇性、透明性、可とう性、水性インクの筆記性並びに耐水性、耐ブロッキング性、滑性に優れた微粒子分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、親水性セグメントと第3級アミノ基とを有する親水性ポリウレタン系樹脂を製造する際に、原料成分中の高分子量ポリオール又はポリアミンとして、予め微粒子アルミナを分散させた高分子量ポリオール又はポリアミンを用いることにより、得られた親水性ポリウレタン系樹脂に微粒子アルミナが分散した組成物は、その溶液においては微粒子アルミナが上記の親水性ポリウレタン系樹脂の溶液に安定に分散した分散液を形成し、又、そのフィルムは透明であり、上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、有機ポリイソシアネートと、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物とを、反応させて親水性セグメントと第3級アミノ基を有する親水性ポリウレタン系樹脂と微粒子アルミナとからなる組成物を製造する方法において、上記親水性ポリウレタン系樹脂を上記原料成分中の高分子量親水性ポリオール又はポリアミンの少なくとも一部として、微粒子アルミナと高分子量親水性ポリオール及びポリアミンとの混合物を使用して製造することを特徴とするアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に好ましい発明の実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【0010】
本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、親水性セグメントと第3級アミノ基とを有する親水性ポリウレタン系樹脂と微粒子アルミナとから組成物である。その溶液においては、微粒子アルミナは、分散剤を使用しなくても、分離、沈降せずに上記の親水性ポリウレタン系樹脂の溶液に安定に分散しており、又、この溶液から形成したフィルムは微粒子アルミナの分散量が多い場合にも透明であることが特徴である。尚、本発明では、ポリウレタン系樹脂とは、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂及びポリウレタン−ポリウレア樹脂の総称である。
【0011】
上記の如き親水性セグメントと第3級アミノ基を有する親水性ポリウレタン系樹脂と微粒子アルミナとからなる本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、有機ポリイソシアネート、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物を、必要に応じて鎖延長剤と反応させて親水性ポリウレタン系樹脂を製造する際に、高分子量親水性ポリオール又はポリアミンの一部あるいは全部を上記ポリオール又はポリアミンと微粒子アルミナとの混合物を使用することにより得ることができる。
【0012】
高分子量親水性ポリオール又はポリアミンと微粒子アルミナとの混合物としては、高分子量親水性ポリオール又はポリアミンと微粒子アルミナとの機械的混合物ではなく、高分子量親水性ポリオール又はポリアミンとアルミナゾルとを混合し、この混合物からアルミナゾルの分散溶剤を除去して得られる混合物を使用する。高分子量ポリオール又はポリアミンは、それらを有機溶剤に溶解した溶液として使用することもできる。その場合には全ての溶剤を除去する。
【0013】
本発明におけるアルミナゾルとは、微粒子アルミナ又は微粒子アルミナ化合物が分散溶剤に安定に分散したものである。このアルミナゾル中の微粒子アルミナの平均粒子径は、通常1μm以下であり、特に1〜300mμm(nm)のものが好ましい。アルミナゾルにおける分散媒は通常、水及び/又はアルコールであるが、ケトン、エステル、その他の有機溶剤も使用される。
【0014】
通常、アルミナゾル(安定な分散溶液)は、それをポリウレタン系樹脂溶液に添加・分散させても、微粒子アルミナの分散安定性は低く、時間とともに両者は容易に分離する。これは、ポリウレタン系樹脂とアルミナとの相溶性(親和性)や両者のpHの変化に対する安定性やポリウレタン系樹脂とアルミナゾル表面の性質が異なること等によるものである。又、アルミナゾルをポリウレタン系樹脂の反応時に添加する方法も考えられるが、アルミナゾルの水やアルコール系の分散媒はイソシアネートと反応することから使用できないのは勿論、他の溶剤系のアルミナゾルを用いた場合にも、アルミナ微粒子の分散安定性は得られない。
【0015】
しかし、本発明で使用する後述の高分子量親水性ポリオール又はポリアミンは、その親水性によりアルミナゾルとの相溶性(親和性)が極めて高く、任意の割合でアルミナゾルと安定に混合することができる。そしてこの混合物から分散媒を任意の方法で除去することにより、極めて安定にアルミナ微粒子が分散した高分子量親水性ポリオール又はポリアミンが得られ、しかも、高分子量親水性ポリオール又はポリアミン中の微粒子アルミナの分散量が増大しても、上記ポリオール又はポリアミンの粘度上昇は少なく、且つ極めて透明な混合物が得られる。
【0016】
そして、この混合物をポリウレタン系樹脂の合成の際に、この混合物を原料成分中の高分子量親水性ポリオール又はポリアミンの少なくとも一部として使用することにより、合成(重合)反応中及び合成反応後にも微粒子アルミナは分離せず、沈降することなく安定に反応系に存在し、アルミナ微粒子がポリウレタン系樹脂溶液に安定に分散した親水性ポリウレタン系樹脂組成物を得ることができる。
【0017】
高分子量親水性ポリオール又はポリアミンと微粒子アルミナとの混合物は、上記ポリオール又はポリアミンとアルミナゾルとの混合物から、一般に、減圧等で混合物中の分散溶剤である水又は水と有機溶剤を容易に留去することが得ることができる。この場合、留去を減圧下、低温で行うことが好ましく、特に70℃以下で留去することが好ましい。これ以上の高温になると微粒子アルミナの凝集が起こることがあり、微粒子アルミナの分散安定性が低下するとともに、透明性の低いアルミナ分散高分子量親水性ポリオール又はポリアミンが生成することがある。高分子量親水性ポリオール又はポリアミンと微粒子アルミナとの混合割合は、生成する親水性ポリウレタン系樹脂に対してアルミナ微粒子が5〜95重量%となる量が好ましく、更に好ましくは10〜90重量%となる量である。
【0018】
本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、高分子量親水性ポリオール又はポリアミンの一部又は全部として、上記のアルミナゾルの分散溶剤を除去すること等により得られる微粒子アルミナが分散した高分子量ポリオール又はポリアミンを用い、有機ポリイソシアネートと、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物を、必要に応じて鎖延長剤と、従来公知のポリウレタン系樹脂の製造方法に準じて反応させることによって得ることができる。反応は、無溶剤でもよいし、水溶液や有機溶剤中での反応でもよい。無溶剤の場合には、得られたアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、親水性ポリウレタン系樹脂の可溶性溶剤に溶解して使用することもできる。この場合にも、親水性ポリウレタン系樹脂溶液中の微粒子アルミナの分散安定性は保持される。重合溶剤及び該樹脂可溶性溶剤は特に限定されず、ジメチルホルムアミドやメチルエチルケトン等が好ましいものとして挙げられる。本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、用途に応じて溶液状態で、あるいは固体状態で使用される。
【0019】
本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物における親水性ポリウレタン系樹脂は、分子中に高分子量の親水性ポリオール又はポリアミンを構成単位とする親水性セグメントと少なくとも1個の第3級アミノ基を有する化合物を構成単位とする第3級アミノ基含有セグメントとを有している。親水性セグメントと第3級アミノ基を有するセグメントは、鎖延長剤を使用しない場合は、それぞれランダムにウレタン結合、ウレア結合又はウレタン−ウレア結合で結合されている。鎖延長剤を使用する場合には、これらの結合とともに、該結合の間に鎖延長剤の残基である短鎖が存在する結合が存在する。
【0020】
分子中に第3級アミノ基が導入されることにより、本発明における親水性ポリウレタン系樹脂には、各種素材に対する優れた接着性、且つ優れた吸水性、防曇性、透明性、可とう性、水性インクの筆記性並びに優れた耐水性、耐ブロッキング性、滑性が付与される。
【0021】
例えば、本発明のアルミナ分散親水性ポリレタン系樹脂組成物で形成されたインク受容層を有する記録紙に印刷する場合を例に、何故、耐水性が付与されるかを考えてみる。印刷インキやインクジェットインクの染・顔料分子は、その分子中に陰イオン性のカルボキシル基やスルフォン酸基を一般的に有しており、第3級アミノ基を導入した親水性ポリウレタン系樹脂と上記の染・顔とが混合若しくは接触すると、染・顔料と該樹脂中の第3級アミノ基との間にイオン結合が形成され、染・顔料の定着性及び記録画像の耐水性が向上するものと考えられる。
【0022】
しかし、水分の存在下では上記の如きイオン性結合は解離し易く、上記の耐水性の向上は期待できないはずであるが、耐水性は向上する。耐水性向上の理由は定かではないが、本発明におけるポリウレタン系樹脂は親水性であるが、その分子内には疎水性部分も存在しており、該樹脂中の親水性部分及び第3級アミノ基と染・顔料との間にイオン結合が形成されたあと、疎水性部分がイオン結合部分の回りを取り囲むようになるため、耐水性が向上するものと思われる。
【0023】
本発明において親水性ポリウレタン系樹脂を構成する分子中鎖中に第3級アミノ基を導入するために使用する化合物は、分子中に少なくとも1個の活性水素含有基(反応性基)、例えば、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アルコキシ基、酸ハライド基、カルボキシエステル基、酸無水物基等を有し、且つ分子鎖中に第3級アミノ基を有する化合物である。
【0024】
上記の如き反応性基を有する第3級アミノ基含有化合物の好ましい例としては、例えば、下記の如き化合物が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物
Figure 0003990239
(式中の、R1は炭素数20以下のアルキル基、脂環族基、芳香族基(ハロゲン、アルキル基で置換されていてもよい)であり、R2及びR3は−O−、−CO−、−COO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−SO2 −等で連結されていてもよい低級アルキレン基であり、X及びYは−OH、−COOH、−NH2
−NHR1−、−SH等の反応性基であり、X及びYは同一でも異なってもよい。又これらの基に誘導できるエポキシ基、アルコキシ基、酸ハライド基、酸無水物基、又はカルボキシルエステル基でもよい。)
【0025】
一般式(2)で表される化合物
Figure 0003990239
(式中の、R1、 R2、及びR3は前記と同じ定義であるが、但し二つのR1同士は環状構造を形成するものであってもよい。R4は−(CH2n−(nは0〜20の整数)である。)
【0026】
一般式(3)で表される化合物
Figure 0003990239
(式中の、X及びYは前記の定義と同じであり、Wは窒素含有複素環、窒素と酸素含有複素環、又は窒素と硫黄含有複素環を表す。)
【0027】
上記の一般式(1)、(2)又は(3)で表される化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
N,N−ジヒドロキシエチル−メチルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチル−エチルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチル−イソプロピルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチル−n−ブチルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチル−t−ブチルアミン、
メチルイミノビスプロピルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、
N,N−ジヒドロキシエチル−m−トルイジン、
N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、
N,N−ジヒドロキシエチル−m−クロロアニリン、
N,N−ジヒドロキシエチルベンジルアミン、
N,N−ジメチル−N,N−ジヒドロキシエチル1,3−ジアミノプロパン、
N,N−ジエチル−N,N−ジヒドロキシエチル1,3−ジアミノプロパン、
【0028】
N−ヒドロキシエチル−ピペラジン、
N,N−ジヒドロキシエチル−ピペラジン、
N−ヒドロキシエトキシエチル−ピペラジン、
1,4−ビスアミノプロピル−ピペラジン、
N−アミノプロピル−ピペラジン、
ジピコリン酸、
2,3−ジアミノピリジン、
2,5−ジアミノピリジン、
2,6−ジアミノピリジン、
2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、
2,6−ジヒドロキシピリジン、
2,6−ピリジン−ジメタノール、
2−(4−ピリジル)−4,6−ジヒドロキシピリミジン、
2,6−ジアミノトリアジン、
2,5−ジアミノトリアゾール、
2,5−ジアミノオキサゾール等がある。
【0029】
又、これら第3級アミノ化合物のエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等も本発明に使用できる。その付加物としては、例えば、
Figure 0003990239
Figure 0003990239
Figure 0003990239
Figure 0003990239
Figure 0003990239
Figure 0003990239
Figure 0003990239
(上記式中のnは1〜60の整数を、mは1〜6の整数を表す。)
【0030】
本発明で使用する有機ポリイソシアネートとしては、従来公知のものがいずれも使用でき、特に制限されない。好ましいものとして、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添MDI、イソホロンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等、或いはこれらの有機ポリイソシアネートと低分子量のポリオールやポリアミンを末端イソシアネートとなる様に反応させて得られるポリウレタンプレポリマー等も使用することができる。
【0031】
本発明で使用する高分子量親水性ポリオール又はポリアミンとしては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等を有する重量平均分子量が400〜8000の範囲のものが好ましい。
末端が水酸基で親水性を有するポリオールとしては、例えば、
ポリエチレングリコール、
ポリエチレングリコール/ポリテトラメチレングリコール共重合ポリオール、
ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合ポリオール、
ポリエチレングリコールアジペート、
ポリエチレングリコールサクシネート、
ポリエチレングリコール/ポリε−ラクトン共重合ポリオール、
ポリエチレングリコール/ポリバレロラクトン共重合ポリオール、
等が挙げられる。
【0032】
末端がアミノ基で親水性を有するポリアミンとしては、例えば、
ポリエチレンオキサイドジアミン、
ポリエチレンオキサイドプロピレンオキサイドジアミン、
ポリエチレンオキサイドトリアミン、
ポリエチレンオキサイドプロピレンオキサイドトリアミン、
等が挙げられる。
その他、カルボキシル基やビニル基を有するエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0033】
尚、親水性ポリウレタン系樹脂の製造に際しては、得られる樹脂に他の性能を付与する為、上記の如き親水性鎖を有しない他のポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸等を適宜共重合することも可能である。
又、本発明において必要により使用される鎖延長剤としては、低分子量ジオールやジアミン等の従来公知の鎖延長剤がいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0034】
以上の原料成分を用いて得られる本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物における親水性セグメント及び第3級アミノ基を分子鎖中に有する親水性ポリウレタン系樹脂は、重量平均分子量(GPCで測定した標準ポリスチレン換算)は、3,000〜800,000の範囲が好ましく、更に好ましい重量平均分子量は5,000〜500,000の範囲である。
【0035】
又、本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物において、アルミナ微粒子の含有量は、親水性ポリウレタン系樹脂に対して5〜95重量%が好ましく、更に好ましくは10〜90重量%である。アルミナ微粒子の含有量が5重量%未満では、本発明の目的である耐ブロッキング性、滑性といった表面特性の発現が不十分となり、一方95重量%を超えると皮膜の強度、基材に対する接着性等に劣るので好ましくない。又、驚くべきことに、アルミナの含有量が75〜95重量%では、本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物を基材にコーティングすると、数mμm(nm)サイズの微多孔質を有し、透明性にも優れた皮膜が形成される。
【0036】
本発明における親水性ポリウレタン系樹脂中の第3級アミノ基の含有量は、分子量10,000当たり1個以下では、本発明の所期の目的である耐水性、耐ブロッキング性といった特性の発現が不十分となり、一方、第3級アミノ基の含有量が分子量20当たり1個以上では樹脂中の親水性部分の減少による撥水性が強くなり、吸水性能や防曇性に劣るようになるので好ましくない。
【0037】
又、本発明におけるポリウレタン系樹脂中の親水性セグメントの含有量は、30〜80重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは50〜75重量%の範囲である。親水性セグメントの含有量が30重量%未満では、吸水性、防曇性に劣るようになり、一方、80重量%を超えると耐水性、耐ブロッキング性に劣るようになり好ましくない。
【0038】
以上の如き本発明で得られるアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、各種素材に対する接着性に優れ、且つ吸水性、防曇性、透明性、可とう性、水性インクの筆記性並びに耐水性、耐ブロッキング性、滑性に優れ、インクジェット受像シートの受像層用コーティング剤として、各種フィルムの防曇性の塗料として、内装用樹脂製壁紙の結露防止用表面処理剤として、吸水性の衣料用コーティング剤として、合成皮革用材料、合成紙の水性インク筆記用処理剤等として非常に有用である。又、本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、固体状態で種々の成形体の製造にも使用することができる。
【0039】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中の部又は%は重量基準である。
【0040】
参考例1
ポリエチレングリコール(分子量1,000)700部とアルミナ水ゾル(アルミナ平均粒径150〜160nm、固形分40%)750部を充分に混合し、得られた混合物を攪拌しながら70℃で減圧脱水を行った。
理論量の水が留去された後、温度を120℃に上げ133.3Pa以下の減圧下で水分を除去してアルミナ含有量30%の白色固体状ポリオール(A)を得た。このポリオールは、水酸基価76mgKOH/g、水分率0.15%、80℃では透明で、粘度は380dPa・sであった。
【0041】
参考例2
ポリエチレングリコール(分子量590)100部とアルミナ水ゾル(アルミナ平均粒径10〜20nm、固形分20%)500部を充分に混合し、得られた混合物を攪拌しながら70℃で減圧脱水を行った。
理論量の水が留去された後、温度を120℃に上げ133.3Pa以下の減圧下で水分を除去してアルミナ含有量50%の白色固体状ポリオール(B)を得た。このポリオールは、水酸基価95mgKOH/g、水分率0.12%、90℃で軟化するものであった。
【0042】
参考例3
ポリエチレンオキサイドジアミン(テキサコケミカル社製ジェファーミンED;分子量600)100部とアルミナ水ゾル(アルミナ平均粒径150〜160nm、固形分40%)2250部を充分に混合し、得られた混合物を攪拌しながら70℃で減圧脱水を行った。
理論量の水が留去された後、温度を120℃に上げ133.3Pa以下の減圧下で水分を除去してアルミナ含有量90%の白色固体状ポリアミン(C)を得た。このポリアミンは、アミン当量30g/mol、水分率0.20%、110℃で軟化するものであった。
【0043】
実施例1
(アルミナ分散ポリウレタン樹脂組成物の製造)
ポリエチレングリコール(分子量2,040)50部、参考例1 のポリオール(A)100部、N−メチルジエタノールアミン20部及ジエチレングリコール5部を、200部のメチルエチルケトンと200部のジメチルホルムアミドとの混合溶剤中に溶解し、60℃でよく攪拌しながら、80部の水添MDIを200部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を徐々に滴下した、滴下終了後、80℃で8時間反応させた後ジメチルホルムアミド420部を加えて本発明のアルミナ分散ポリウレタン樹脂組成物の溶液を得た。
【0044】
この溶液は固形分20%で、22dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレタン樹脂のGPCで測定した( 以下の例においても同様) 重量平均分子量は52,000であり、アルミナの含有量は11.7%であった。
この樹脂組成物溶液から形成したフィルムは、透明で、破断強度は23.7Mpa、破断伸度は55%、且つ軟化点は155℃であった。
【0045】
実施例2
(アルミナ分散ポリウレタン−ポリウレア樹脂組成物の製造)
ポリエチレンオキサイドジアミン(ジェファーミンED;分子量2,000)30部、参考例2のポリオール(B)120部、及びN,N−ジメチル−N′,N′−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパン25部を100部のメチルエチルケトン及び200部のジメチルホルムアミド混合溶剤中に溶解し、60℃でよく攪拌しながら、65部の水添MDIを100部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で8時間反応させた後ジメチルホルムアミド560部を加えて本発明のアルミナ分散ポリウレタン−ポリウレア樹脂組成物の溶液を得た。
【0046】
この溶液は固形分20%で40dPa・s(25℃)の粘度を有していた。ポリウレタン−ポリウレア樹脂の重量平均分子量は51,000であり、アルミナの含有量は24%であった。
この 樹脂組成物溶液から形成したフィルムは、透明で破断強度は18.5Mpa、破断伸度は20%、且つ軟化点は165℃であった。
【0047】
実施例3
(アルミナ分散ポリウレア樹脂組成物の製造)
ポリエチレンオキサイドジアミン(ジェファーミンED;分子量2,000)5部、参考例3のポリアミン(C)145部、メチルイミノビスプロピルアミン3部をジメチルホルムアミド250部中に溶解し、内温を0〜−5℃に保ってよく攪拌しながら、7部の水添MDIを100部のジメチルホルムアミドに溶解した溶液を徐々に滴下して反応させた。滴下終了後、次第に内温を上昇させ、50℃に達した所でさらに5時間反応させた後ジメチルホルムアミド310部を加えて本発明のアルミナ分散ポリウレア樹脂組成物の溶液を得た。
【0048】
この溶液は固形分20%で、80dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレア樹脂の重量平均分子量は38,000であり、アルミナの含有量は79%であった。
この樹脂組成物溶液から形成したフィルムは、やや半透明で多孔質で、破断強度は4.2Mpa、破断伸度は3%、且つ軟化点は210℃であった。
【0049】
比較例1
実施例1のN−メチルジエタノールアミンを使用せず、又参考例1のポリオール(A)のアルミナを除いたポリオールを使用するほかは実施例1と同じ材料と処方によりポリウレタン樹脂の溶液を得た。
この溶液は固形分20%で、50dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は68,000であった。
この樹脂溶液から形成したフィルムは、破断強度35.0Mpa、破断伸度450% 、軟化点は103℃であった。
【0050】
比較例2
実施例2のN,N−ジメチル−N′,N′−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパンを使用せず、又、参考例2のポリオール(B)のアルミナを除いたポリオールを使用するほかは実施例2と同じ材料と処方によりポリウレタン−ポリウレア樹脂の溶液を得た。
この溶液は固形分20%で、40dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレタン−ポリウレア樹脂の重量平均分子量は55,000であった。
この樹脂溶液から形成したフィルムは、破断強度25.3MPa 、破断伸度400% 、軟化点は95℃であった。
【0051】
比較例3
実施例3のメチルイミノビスプロピルアミンを使用せず、又、参考例3のポリオール(C)のアルミナを除いたポリアミンを使用するほかは実施例3と同じ材料と処方によりポリウレア樹脂の溶液を得た。
この溶液は固形分20%で、25dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレア樹脂の重量平均分子量は32,000であった。
この 樹脂溶液から形成したフィルムは、破断強度22.7MPa、破断伸度350%、軟化点は115℃であった。
【0052】
比較例4〜6
参考例1〜3のそれぞれのアルミナ水ゾルを、比較例1〜3のそれぞれの樹脂溶液中に攪拌しながら添加したが、粒子が析出し溶液は不透明となった。
【0053】
比較例7
鹸化度98.5%のポリビニルアルコール( 重合度550) の5%水溶液を調製した。
【0054】
上記で得られたアルミナ分散ポリウレタン系樹脂組成物等を以下の方法で評価した。
〔1〕インクジェット用受像層への応用
実施例1〜3、比較例1〜7で得られた各樹脂組成物等の溶液を、それぞれ100μm厚のPETフィルムに乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工して透明シートを作製し、カラーインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−800C)で印字記録を行い、以下の項目の評価を行った。
【0055】
(1)ブロッキング性
樹脂コーティング面に未処理PETフィルムを重ね、荷重0.29MPa、温度40℃で一日放置後のブロッキング性の評価を行った。結果を以下のように表示する。
結果の表示は以下の通りである。
○:ブロッキング性なし △:ややブロッキング性あり
×:ブロッキング性あり
(2)透明性
樹脂コーティング面の曇りを目視にて判定した。結果を以下のように表示する。
○:完全に透明 △:僅かに曇りがある ×:完全に不透明
【0056】
(3)発色鮮明性
インクジェットプリンターでカラー印字後、得られたカラー画像の発色鮮明性を目視により観察した。結果を以下のように表示する。
○:滲みがなく鮮明 ×:滲みがある
(4)インキの乾燥性
インクジェットプリンターでカラー印字後、50g/m2の荷重で5秒間濾紙を押し付けインキが濾紙に転写しなくなるまでの時間を測定した。
(5)印字画像の耐水性
インクジェットプリンターでカラー印字後、記録シートを水中に漬け(20℃、1時間)、その後 室温で乾燥した際の、記録画像の滲み、発色の変化を目視により観察。結果を以下のように表示する。
○:変化なし △:インキ及び皮膜に変化が認められる
×:インキがかなりとれるか、皮膜ごと取れる
以上の評価結果を表1に示す。
【0057】
Figure 0003990239
【0058】
比較例8
比較例1で得られた樹脂溶液に、非イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル:日本油脂製)を固形分重量比で95:5となるようにに混合した。
【0059】
比較例9
ポリビニルブチラール(重合度700:積水化学製)100部、トリオクチルフォスフェート50部及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酸エステル(リン酸エステル系界面活性剤:第一工業製薬製)3部をエタノール400部に混合溶解した。
【0060】
〔2〕防曇・帯電防止塗料への応用
実施例1〜3、比較例1、比較例8、比較例9で得られた各樹脂組成物等の溶液を、それぞれ透明なアクリル樹脂板に乾燥後の厚みが25μmとなるよう刷毛塗りして試料とし、表面硬さ、防曇性、帯電防止性の評価を行った。
(1)表面硬さ
鉛筆硬度試験(JIS K5400. 8. 4)による表面傷で評価した。
(2)防曇性
80℃の温浴上、5cmのところに試料板をセットして水蒸気に10分間曝した時の塗膜の曇りを評価した。結果を以下のように表示する。
○:曇りなし △:部分的に曇り ×:曇り
【0061】
(3)耐水性
80℃の温浴上、5cmのところに試料板をセットして水蒸気に10分間曝した時の塗膜状態を評価した。結果を以下のように表示する。
○:変化なし △:やや塗膜に変化あり ×:塗膜の剥離や溶解
(4)帯電防止性
ダストチェンバーテストにより帯電カーボンの付着性を評価した。結果を以下のように表示する。
○:カーボンの付着なし △:一部カーボンの付着あり
×:カーボン付着
以上の評価結果を表2に示す。
【0062】
Figure 0003990239
【0063】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、各素材に対する接着性に優れ、且つ吸水性、防曇性、透明性、水性インクの筆記性並びに耐水性、耐ブロッキング性、滑性に優れ、インクジェット受像シートの受像用コーティング剤として、各種フィルムの防曇性の塗料として、内装用樹脂製壁紙の結露防止用表面処理剤として、吸水性の衣料コーティング材として、合成擬革用材料として有用であるアルミナ分散ポリウレタン系樹脂組成物が提供される。

Claims (5)

  1. 有機ポリイソシアネートと、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物とを、反応させて得られる親水性セグメントと第3級アミノ基を有する親水性ポリウレタン系樹脂と微粒子アルミナとからなる親水性ポリウレタン系樹脂組成物を製造する方法において、上記親水性ポリウレタン系樹脂を、上記原料成分中の高分子量親水性ポリオール又はポリアミンの少なくとも一部として、微粒子アルミナと高分子量親水性ポリオール又はポリアミンとの混合物を使用して製造することを特徴とするアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法。
  2. 上記の混合物が、高分子量親水性ポリオール又はポリアミンとアルミナゾルとの混合物から、アルミナゾルの分散溶媒を除去したものである請求項に記載のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法。
  3. 上記の混合物中の微粒子アルミナの含有量が、生成する上記の親水性ポリウレタン樹脂に対して5〜95重量%となる量である請求項に記載のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法。
  4. 微粒子アルミナは、平均粒径が1〜300nmである請求項に記載のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法。
  5. 親水性ポリウレタン系樹脂中の親水性セグメントの含有量が30〜80重量%である請求項1に記載のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の製造方法。
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