JP2005231263A - 液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】 ノズル詰まり等の吐出不良を確実に防止することができる液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】 流路形成基板の一方面側に振動板を介して圧電素子を形成すると共に連通部となる領域の振動板を貫通する貫通孔を形成する工程と、振動板上に有機フィルムを接着して貫通孔の一方の開口を封止すると共に有機フィルムを介して流路形成基板上にリザーバ形成基板を接着する工程と、流路形成基板をその他方面側から振動板が露出するまでウェットエッチングして圧力発生室と共に貫通孔に連通する連通部を形成する工程と、貫通孔に対向する領域の有機フィルムを除去してリザーバ部と連通部とを連通させてリザーバを形成する工程とを具備する。
【選択図】 なし
【解決手段】 流路形成基板の一方面側に振動板を介して圧電素子を形成すると共に連通部となる領域の振動板を貫通する貫通孔を形成する工程と、振動板上に有機フィルムを接着して貫通孔の一方の開口を封止すると共に有機フィルムを介して流路形成基板上にリザーバ形成基板を接着する工程と、流路形成基板をその他方面側から振動板が露出するまでウェットエッチングして圧力発生室と共に貫通孔に連通する連通部を形成する工程と、貫通孔に対向する領域の有機フィルムを除去してリザーバ部と連通部とを連通させてリザーバを形成する工程とを具備する。
【選択図】 なし
Description
液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射ヘッドに関し、特に、液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドの製造方法及びインクジェット式記録ヘッドに関する。
インクを吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインクを吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
前者は圧電素子の端面を振動板に当接させることにより圧力発生室の容積を変化させることができて、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反面、圧電素子をノズル開口の配列ピッチに一致させて櫛歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられた圧電素子を圧力発生室に位置決めして固定する作業が必要となり、製造工程が複雑であるという問題がある。
これに対して後者は、圧電材料のグリーンシートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電素子を作り付けることができるものの、たわみ振動を利用する関係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困難であるという問題がある。
一方、後者の記録ヘッドの不都合を解消すべく、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成することで高密度配列を実現したものがある。
また、このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、ノズル開口に連通する圧力発生室とこの圧力発生室に連通する連通部とが形成される流路形成基板と、この流路形成基板の一方面側に形成される圧電素子と、流路形成基板の圧電素子側の面に接合されて連通部と共にリザーバの一部を構成するリザーバ部を有するリザーバ形成基板とを具備し、振動板とこの振動板上に形成された積層膜とを貫通する貫通部を介してリザーバ部と連通部とを連通させた構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法においては、振動板及び積層膜の連通部(リザーバ部)に対向する部分を機械的に打ち抜いて貫通部を形成することにより、リザーバ部と連通部とを連通させている。
しかしながら、このように機械的な加工で貫通部を形成すると、加工カスが圧力発生室などの流路内に入り込んでしまう。貫通部を形成後、洗浄等により加工カスは除去されるが完全に除去するのは難しく、残留した加工カスによってノズル開口が塞がれて吐出不良が発生してしまうという問題がある。また、貫通部を機械的に加工すると、貫通部の周囲に亀裂等が発生するという問題がある。この亀裂が発生した状態でインクを充填して吐出させると、その部分から破片が脱落し、この破片によってノズル開口が塞がれて吐出不良が発生するという問題がある。なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけでなく、勿論、インク以外の液体を吐出する他の液体噴射ヘッドの製造方法においても、同様に存在する。
本発明は、このような事情に鑑み、ノズル詰まり等の吐出不良を確実に防止することができる液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射ヘッドを提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、シリコン基板からなり液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と当該圧力発生室に連通する連通部とが形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側の面に接合されて前記連通部と共に前記各圧力発生室の共通の液体室であるリザーバの一部を構成するリザーバ部が形成されるリザーバ形成基板とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記流路形成基板の一方面側に前記振動板を介して前記圧電素子を形成すると共に前記連通部となる領域の前記振動板を貫通する貫通孔を形成する工程と、前記振動板上に有機フィルムを接着して前記貫通孔の一方の開口を封止すると共に該有機フィルムを介して前記流路形成基板上に前記リザーバ形成基板を接着する工程と、前記流路形成基板をその他方面側から前記振動板が露出するまでウェットエッチングして前記圧力発生室と共に前記貫通孔に連通する前記連通部を形成する工程と、前記貫通孔に対向する領域の前記有機フィルムを除去して前記リザーバ部と前記連通部とを連通させて前記リザーバを形成する工程とを具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第1の態様では、リザーバを形成する際に、加工カス等の異物が発生することがないため、加工カス等によるノズル詰まり等の吐出不良が確実に防止される。また、流路形成基板をエッチングする際のエッチング液が、貫通孔を介してリザーバ形成基板側に回り込むのを防止でき、エッチング液によるリザーバ形成基板の損傷等が防止される。
かかる第1の態様では、リザーバを形成する際に、加工カス等の異物が発生することがないため、加工カス等によるノズル詰まり等の吐出不良が確実に防止される。また、流路形成基板をエッチングする際のエッチング液が、貫通孔を介してリザーバ形成基板側に回り込むのを防止でき、エッチング液によるリザーバ形成基板の損傷等が防止される。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記リザーバ形成基板上に前記圧電素子に接続される配線を予め形成した状態で、当該リザーバ形成基板を前記流路形成基板に接合することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第2の態様では、リザーバ形成基板上の配線のエッチング液による損傷を防止することができる。
かかる第2の態様では、リザーバ形成基板上の配線のエッチング液による損傷を防止することができる。
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記有機フィルムをアッシングにより除去することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第3の態様では、有機フィルムを比較的容易に除去することができ、製造効率が向上する。
かかる第3の態様では、有機フィルムを比較的容易に除去することができ、製造効率が向上する。
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記有機フィルムを接着した前記リザーバ形成基板を前記流路形成基板上に接合して、前記有機フィルムで前記貫通孔を封止することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第4の態様では、有機フィルムを所定位置に比較的容易に接着することができ、有機フィルムによって貫通孔を確実に封止できる。
かかる第4の態様では、有機フィルムを所定位置に比較的容易に接着することができ、有機フィルムによって貫通孔を確実に封止できる。
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記有機フィルムが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム又はポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)フィルムであることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第5の態様では、有機フィルムとして特定の材料を用いることで、流路形成基板をエッチングする際のエッチング液が、貫通孔を介してリザーバ形成基板側に回り込むのを確実に防止できる。
かかる第5の態様では、有機フィルムとして特定の材料を用いることで、流路形成基板をエッチングする際のエッチング液が、貫通孔を介してリザーバ形成基板側に回り込むのを確実に防止できる。
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記リザーバを形成後に、当該リザーバ内の少なくとも前記有機フィルムの表面及び当該有機フィルムの接着領域を覆うように、酸化タンタルからなる保護膜を形成する工程をさらに有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第6の態様では、リザーバの内面を構成するリザーバ形成基板等が、リザーバ内に供給される液体によって浸食されるのを防止でき、耐久性に優れた液体噴射ヘッドを提供することができる。
かかる第6の態様では、リザーバの内面を構成するリザーバ形成基板等が、リザーバ内に供給される液体によって浸食されるのを防止でき、耐久性に優れた液体噴射ヘッドを提供することができる。
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの製造方法によって形成されたことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第7の態様では、信頼性の高い液体噴射ヘッドを提供することができる。
かかる第7の態様では、信頼性の高い液体噴射ヘッドを提供することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。なお、後述するように、この弾性膜50は、振動板の一部を構成するものである。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。なお、後述するように、この弾性膜50は、振動板の一部を構成するものである。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。連通部13は、後述するリザーバ形成基板30のリザーバ部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ105の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
また、流路形成基板10の開口面側には、圧力発生室12を形成する際のマスクとして用いられたマスク膜52を介して、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又は不錆鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板としての役割を果たす。
また、このような各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。
さらに、本実施形態では、連通部13の開口周縁部に対応する領域の絶縁体膜55上には、上述した圧電素子300を構成する層とは不連続の不連続下電極膜61、不連続圧電体層71及び不連続上電極膜81からなる積層膜400が設けられている。
そして、このような流路形成基板10の圧電素子300側の面には、リザーバ105の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有するリザーバ形成基板30が有機フィルム100を介して接着されている。リザーバ形成基板30のリザーバ部31は、本実施形態では、弾性膜50、絶縁体膜55、積層膜400及び有機フィルム100を貫通する貫通部101を介して連通部13と連通され、これらリザーバ部31及び連通部13によってリザーバ105が形成されている。
また、リザーバ形成基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子保持部32設けられている。圧電素子300は、この圧電素子保持部32内に形成されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。なお、圧電素子保持部32は、密封されていてもよいし密封されていなくてもよい。このようなリザーバ形成基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることがより好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、リザーバ形成基板30上には、図示しない配線を介して圧電素子を駆動するための駆動IC200が実装されている。そして、圧電素子保持部32の外側まで引き出されたリード電極90の先端部と、駆動IC200とが駆動配線210を介して電気的に接続されている。
さらに、リザーバ形成基板30のリザーバ部31に対応する領域上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ105に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ105の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ105からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動IC200からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、圧電素子300及び振動板をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインクが吐出する。
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図6を参照して説明する。なお、図3〜図6は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜51を形成する。そして、この弾性膜50をパターニングして、流路形成基板用ウェハ110の連通部(図示なし)が形成される部分に対向する領域に、弾性膜50を貫通する貫通孔50aを形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
次に、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。そして、この絶縁体膜55をパターニングして、弾性膜50の貫通孔50aに対向する領域に、絶縁体膜55を貫通する貫通孔55aを形成する。
次いで、図3(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。このとき、流路形成基板用ウェハ110の連通部(図示なし)の周縁部に対応する領域に、圧電素子を構成する下電極膜60とは不連続である不連続下電極膜61を残す。すなわち、連通部に対応する領域に、絶縁体膜55の貫通孔55aに連通する貫通孔61aを有する不連続下電極膜61を形成する。
次に、図4(a)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板用ウェハ110の全面に形成し、これら圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。また、本実施形態では、圧電素子300を形成する際、不連続下電極膜61上に圧電素子300とは不連続の不連続圧電体層71及び不連続上電極膜81を残す。これにより、連通部の周縁部に対応する領域の絶縁体膜55上に、不連続下電極膜61、不連続圧電体層71及び不連続上電極膜81からなり絶縁体膜55の貫通孔55aに連通する貫通孔400aを有する積層膜400が形成される。
なお、圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイッテルビウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。その組成は、圧電素子300の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよいが、例えば、PbTiO3(PT)、PbZrO3(PZ)、Pb(ZrxTi1−x)O3(PZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PMN−PT)、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PZN−PT)、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PNN−PT)、Pb(In1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PIN−PT)、Pb(Sc1/3Ta1/2)O3−PbTiO3(PST−PT)、Pb(Sc1/3Nb1/2)O3−PbTiO3(PSN−PT)、BiScO3−PbTiO3(BS−PT)、BiYbO3−PbTiO3(BY−PT)等が挙げられる。
また、圧電体層70の形成方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。
次に、図4(b)に示すように、リード電極90を形成する。具体的には、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなる金属層を形成した後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して金属層を各圧電素子300毎にパターニングしてリード電極90を形成する。
次に、図4(c)に示すように、複数のリザーバ形成基板となるリザーバ形成基板用ウェハ130の圧電素子保持部32側の表面に、接着剤35によって有機フィルム100を接着する。このとき、リザーバ部31の開口が有機フィルム100によって封止されるようにする。次いで、図5(a)に示すように、リザーバ形成基板用ウェハ130に接着された有機フィルム100の表面の全面に接着剤36を塗布し、この接着剤36によってリザーバ形成基板用ウェハ130と流路形成基板用ウェハ110とを接着する。これにより、積層膜400の貫通孔400aの開口が有機フィルム100によって封止される。なお、リザーバ形成基板用ウェハ130は、例えば、400μm程度の厚さを有するシリコンウェハであり、リザーバ形成基板用ウェハ130を接合することにより流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上する。
ここで、有機フィルム100は、後述する工程で流路形成基板用ウェハ110をウェットエッチングして圧力発生室12等を形成する際に、エッチング液が貫通孔50a等を介してリザーバ形成基板用ウェハ130側に流れ込むのを防止する役割を果たす。このため、有機フィルム100の材料としては、流路形成基板用ウェハ110をエッチングするためエッチング液、例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液等にエッチングされにくい材料、すなわち、耐アルカリ性を有する材料であることが好ましく、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、あるいはポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)フィルム等を用いるのが好ましい。また、このような有機フィルム100の厚さは、特に限定されず、例えば、本実施形態では、20μm程度の厚さのものを用いている。
次いで、図5(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、更に弗化硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにする。例えば、本実施形態では、約70μm厚になるように流路形成基板用ウェハ110をエッチング加工した。次いで、図5(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図6(a)に示すように、このマスク膜52を介して流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチング(ウェットエッチング)して、流路形成基板用ウェハ110に圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14等を形成する。具体的には、流路形成基板用ウェハ110を、例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液によって弾性膜50及び有機フィルム100が露出するまでエッチングすることより、圧力発生室12等を形成する。
このとき、貫通孔50a,55a,400aの一方の開口が有機フィルム100によって覆われているため、これら貫通孔50a等を介してエッチング液がリザーバ形成基板用ウェハ130側に流れ込むことがない。これにより、リザーバ形成基板用ウェハ130の表面に設けられている配線(図示なし)にエッチング液が付着することがなく、断線等の不良の発生を防止することができる。また、リザーバ部31内にエッチング液が浸入してリザーバ形成基板用ウェハ130がエッチングされる虞もない。
なお、このような圧力発生室12等を形成する際、リザーバ形成基板用ウェハ130の流路形成基板用ウェハ110側とは反対側の表面を、耐アルカリ性を有する材料、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPTA(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)等からなる封止フィルムで封止しておくことが望ましい。これにより、リザーバ形成基板30の表面に設けられた配線の断線等の不良をより確実に防止することができる。
次いで、図6(b)に示すように、貫通孔50a等に対向する領域の有機フィルム100を除去して貫通部101を形成し、連通部13とリザーバ部31とを連通させてリザーバ105を形成する。なお、有機フィルム100の除去方法はアッシングにより除去するようにした。これにより、有機フィルム100を比較的容易且つ良好に譲許できるため、貫通孔400aの有機フィルム100露出部分にバリが発生しない。このため、貫通孔400aを通過するインクの流動性に与える影響が少ない。そしてこのように、貫通孔50a等を封止している有機フィルム100のみを最終的に除去することでリザーバ部31と連通部13とを連通させてリザーバ105を形成することで、従来の機械的な加工とは異なり加工カス等の異物が発生することはない。したがって、圧力発生室12、連通部13等の流路内に加工カスが残留し、残留した加工カスによってノズル詰まり等の吐出不良が発生するのを防止することができる。
なお、このようにリザーバ105を形成後、リザーバ105の内面に、例えば、五酸化タンタル等からなる保護膜を形成するようにしてもよい。この保護膜は、リザーバ105の内面の全面に形成するようにしてもよいが、少なくとも有機フィルム100、及び有機フィルム100の接着領域、例えば、有機フィルム100とリザーバ形成基板用ウェハ130との境界部分を覆うように形成すればよい。これにより、リザーバ105の内面を構成するリザーバ形成基板30等が、リザーバ105内に供給されたインクによって浸食されるのを防止できる。例えば、有機フィルム100とリザーバ形成基板30との境界部分等、有機フィルム100の接着領域は、インクによって浸食されやすいが、保護膜を形成することでこのようなインクによる浸食を確実に防止することができる。
また、このようにリザーバ105を形成した後は、リザーバ形成基板用ウェハ130上に駆動IC200を実装すると共に、駆動IC200とリード電極90とを駆動配線210によって接続する(図2参照)。その後、流路形成基板用ウェハ110及びリザーバ形成基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110のリザーバ形成基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、リザーバ形成基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによってインクジェット式記録ヘッドとする。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、弾性膜、絶縁体膜及び積層膜にそれぞれ別工程で貫通孔を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、圧電素子を形成する際に、これら積層膜、絶縁体膜及び弾性膜を連続的に除去して貫通孔を形成するようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、弾性膜、絶縁体膜及び積層膜にそれぞれ別工程で貫通孔を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、圧電素子を形成する際に、これら積層膜、絶縁体膜及び弾性膜を連続的に除去して貫通孔を形成するようにしてもよい。
なお、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 リザーバ形成基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部、 35,36 接着剤、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 50a,55a,400a 貫通孔、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 100 有機フィルム、 101 貫通部、 105 リザーバ、 200 駆動IC、 210 駆動配線、 300 圧電素子、 400 積層膜
Claims (7)
- シリコン基板からなり液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と当該圧力発生室に連通する連通部とが形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側の面に接合されて前記連通部と共に前記各圧力発生室の共通の液体室であるリザーバの一部を構成するリザーバ部が形成されるリザーバ形成基板とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記流路形成基板の一方面側に前記振動板を介して前記圧電素子を形成すると共に前記連通部となる領域の前記振動板を貫通する貫通孔を形成する工程と、前記振動板上に有機フィルムを接着して前記貫通孔の一方の開口を封止すると共に該有機フィルムを介して前記流路形成基板上に前記リザーバ形成基板を接着する工程と、前記流路形成基板をその他方面側から前記振動板が露出するまでウェットエッチングして前記圧力発生室と共に前記貫通孔に連通する前記連通部を形成する工程と、前記貫通孔に対向する領域の前記有機フィルムを除去して前記リザーバ部と前記連通部とを連通させて前記リザーバを形成する工程とを具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。 - 請求項1において、前記リザーバ形成基板上に前記圧電素子に接続される配線を予め形成した状態で、当該リザーバ形成基板を前記流路形成基板に接合することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項1又は2において、前記有機フィルムをアッシングにより除去することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、前記有機フィルムを接着した前記リザーバ形成基板を前記流路形成基板上に接合して、前記有機フィルムで前記貫通孔を封止することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項1〜4の何れかにおいて、前記有機フィルムが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム又はポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)フィルムであることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項1〜5の何れかにおいて、前記リザーバを形成後に、当該リザーバ内の少なくとも前記有機フィルムの表面及び当該有機フィルムの接着領域を覆うように、酸化タンタルからなる保護膜を形成する工程をさらに有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項1〜6の何れかの製造方法によって形成されたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
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JP2004045418A JP2005231263A (ja) | 2004-02-20 | 2004-02-20 | 液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射ヘッド |
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Cited By (1)
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JP2019072882A (ja) * | 2017-10-13 | 2019-05-16 | キヤノン株式会社 | 貫通基板の加工方法および液体吐出ヘッドの製造方法 |
-
2004
- 2004-02-20 JP JP2004045418A patent/JP2005231263A/ja active Pending
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