JP2005226493A - 建設機械のエンジン管理装置 - Google Patents

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真司 秋野
Takanobu Ikari
孝信 井刈
Yoshinori Owada
義宜 大和田
Yoshinori Furuno
義紀 古野
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Abstract

【課題】 建設機械の運転状態の変化を可能な限り排除したデータの採取を行うことでエンジンの状態を正確に把握して、エンジン異常を正確に予測し、エンジンの正確な予防保全を図ることができる建設機械のエンジン管理装置を提供する。
【解決手段】 エンジン管理装置はエンジンモニタ部21と、このエンジンモニタ部21に接続され、通信を行う無線機26と、この無線機26に接続されたアンテナ27と、インジケータ25とを備えている。エンジンモニタ部21は電気レバー制御部19及びエンジン制御部20と接続され、電気レバー制御部19からは作業者が入力した操作信号、例えばブーム上げ操作信号等を入力し、エンジン制御部20からスロットルダイヤル22の位置情報(目標回転数)、エンジン回転数センサー23の検出信号、オートアイドルスイッチ24の信号を入力する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、エンジンを備えた油圧ショベル等の建設機械の管理装置に係わり、特に、大型の油圧ショベル等の建設機械のエンジンの予防保全を図る建設機械のエンジン管理装置に関する。
建設機械、特に、大型の油圧ショベル等の建設機械は、例えば、広大な作業現場での土石掘削作業に供されている。上記の油圧ショベルは、その生産性向上のために、一般的に連続稼働されている。このため、エンジンに異常が発生すると、油圧ショベルの運転を停止し、その修理を行わなければならないが、エンジンの修理には長時間を要する場合が多く、油圧ショベルを長期間休止させなければならない事態が生じることがある。この場合、油圧ショベルによる生産作業が中断するので、生産計画の運用を変更しなければならない。
そこで、エンジンの状態量を検出し、健康診断をすることで、エンジンの異常を事前に予測する必要があり、例えば特開2002−180862号公報には、エンジンを含む駆動装置の性能と関係する複数種類のデータ(例えば燃料消費量、冷却水温度、排気温度)をその運転中に検出し、これらの検出データを各種データの基準値とともに演算処理して一元化することにより、駆動装置の現状性能を数値化して表すことが提案されている。
特開2002−180862号公報
大型の油圧ショベル等の建設機械においては、エンジンのシリンダライナーが摩耗すると、エンジン出力が低下して、エンジン負荷率が上昇し、熱負荷が上昇するため、シリンダライナー焼き付き、エンジン破損に至るケースがある。上述したように、特に連続運転される大型の油圧ショベル等の建設機械では、エンジンに異常が発生すると、その修理のため油圧ショベルの運転を長期間休止しなければならず、この場合、油圧ショベルによる生産作業が中断するので、生産計画の運用を変更しなければならない。
特開2002−180862号公報に記載の従来技術では、エンジンを含む駆動装置の性能と関係する複数種類のデータをその運転中に検出し、これらの検出データを一元化処理し、駆動装置の現状性能を数値化して表すことにより、エンジンの性能を評価している。しかし、この従来技術では、エンジンの状態量の検出は定期的に一定時間だけ行うか、或いは運転中に常時行っている。このため、状態量の検出値に建設機械の運転状態(作業状態)に依存する変動成分を含むものとなり、正確な診断が行うことができないという問題がある。
つまり油圧ショベル等の建設機械にあっては、建設機械の運転状態(作業状態)によってエンジンにかかる負荷が変化し、エンジンに係わる状態量は大きく変化する。例えば、ブーム上げ時はエンジン負荷が大となり、ブーム下げ時はエンジン負荷が小となる。エンジン負荷が大のときはエンジン負荷が小のときに比べ、エンジン回転数の低下量や燃料消費量は増え、排気温度等は高くなる。
特開2002−180862号公報に記載の従来技術では、そのような運転状態の変化に係わらず、エンジンの状態量の検出は定期的に一定時間だけ行うか、運転中に常時行っているため、検出した状態量には運転状態の変化による変動量も含まれ、一元化処理で得た駆動装置の現状性能の数値も運転状態の変化に応じて変化するため、正確な診断を行うことができない。
本発明の目的は、建設機械の運転状態の変化による変動量を可能な限り排除したデータの採取を行うことでエンジンの状態を正確に把握して、エンジンの正確な予防保全を図ることができる建設機械のエンジン管理装置を提供することである。
(1)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプからの吐出圧油により駆動される油圧アクチュエータとを備えた建設機械のエンジン管理装置において、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、前記エンジンに予め定められた負荷が投入されたことを検出し、この検出結果を信号として出力する負荷投入検出手段と、この負荷投入検出手段の検出信号に基づいて前記回転数検出手段で検出された検出値を取り込み、エンジン回転数の一次データとして記憶する第1処理手段と、前記第1処理手段におけるエンジン回転数の一次データを集計し、所定時間毎のエンジン回転数の二次データを作成し、これを前記エンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして出力する第2処理手段とを備えるものとする。
このように、エンジン回転数検出手段及び負荷投入検出手段と第1処理手段を設け、エンジンに予め定められた負荷が投入されたことが検出されると、その検出結果に基づいて回転数検出手段の検出値を取り込み、エンジン回転数の一次データとして記憶することにより、建設機械の運転状態の変化による変動量を可能な限り排除したデータの採取が可能となり、第2処理手段でそのエンジン回転数の一次データを集計し、所定時間毎のエンジン回転数の二次データを作成し、これをエンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして、出力することにより、エンジンの状態を正確に把握して、エンジンの正確な予防保全を図ることができる。
(2)上記(1)において、好ましくは、前記負荷投入検出手段は、前記油圧アクチュエータにより駆動される所定の作業部材が所定の操作をされたかどうかを検出する手段である。
これにより、負荷投入検出手段は、エンジンに予め定められた負荷が投入されたことを検出することができる。
(3)上記(2)において、好ましくは、前記建設機械はブームを有するフロント作業機を備え、前記所定の作業部材は前記ブームであり、前記負荷投入検出手段は、前記ブームが上げ操作されたかどうかを検出する手段である。
これにより、負荷投入検出手段は、エンジンに予め定められた負荷が投入されたことを検出することができる。
(4)上記(1)において、好ましくは、前記第1処理手段は、前記回転数検出手段の検出値として、前記予め定められた負荷投入後、所定時間経過後のエンジン回転数を取り込むものである。
これにより、負荷投入直後のエンジン回転数の過渡的な変化による変動量を排除したデータ採取を行うことができ、エンジンの状態を正確に把握することができる。
(5)また、上記(1)において、好ましくは、前記第1処理手段は、前記回転数検出手段の検出値として、前記予め定められた負荷投入後の最も低いエンジン回転数を取り込むものである。
このように常に負荷投入後の最も低いエンジン回転数を取り込むことによっても、運転状態の変化による変動量を排除したデータ採取を行うことができ、エンジンの状態を正確に把握することができる。
(6)また、上記(1)において、好ましくは、前記第2処理手段は、前記エンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして前記エンジンのオーバーホール実施時期に係わるエンジン回転数のトレンドデータを作成する手段と、前記エンジン回転数のトレンドデータと前記エンジンのオーバーホール実施時期の判定基準値とを表示する表示手段とを有する。
これによりその表示手段の表示内容を見てエンジンのオーバーホール実施時期を正確に予測することができ、オーバーホールのための事前の準備が可能となり、建設機械による生産作業の中断による影響を最小にとどめることができる。
(7)また、上記(1)において、好ましくは、前記第2処理手段は、前記エンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして前記エンジンの異常に係わるエンジン回転数のトレンドデータを作成する手段と、前記エンジン回転数のトレンドデータと前記エンジンの異常の判定基準値とを表示する表示手段とを有する。
これによりその表示手段の内容を見て、例えば衝撃によるピストンリングの損傷等のエンジンの異常を正確に予測することができ、エンジン破損を未然に防止することができる。
(8)また、上記(7)において、好ましくは、前記第2処理手段は、前記エンジン回転数のトレンドデータと前記エンジンの異常の判定基準値と比較し、警報を出力する警報手段を更に有する。
これにより例えば衝撃によるピストンリングの損傷等のエンジンの異常を確実に把握することができ、エンジン破損を未然に防止することができる。
本発明によれば、エンジンの状態を正確に把握して、エンジンの正確な予防保全を図ることができる。
また、本発明によれば、エンジンのオーバーホール実施時期を正確に予測することができ、オーバーホールのための事前の準備が可能となり、建設機械による生産作業の中断による影響を最小にとどめることができる。
更に、本発明によれば、例えば衝撃によるピストンリングの損傷等のエンジンの異常を正確に予測することができ、エンジン破損を未然に防止することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の適用対象となる建設機械の一例として大型油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。
この図1において、1は大型の油圧ショベルであり、この大型油圧ショベル1は下部走行体3と、この下部走行体3の上部に旋回可能に設けられた旋回体4と、この旋回体4の前部中央に俯仰動可能に設けられた多関節型のフロント作業機6とを備えている。下部走行体3は走行手段である無限軌道履帯(クローラ)2、2を左右両側に備え、この左・右の履帯2、2は左・右の走行用油圧モータ2a、2aの回転駆動により動作するようになっている。旋回体4は前部左側に設けられた運転室5を備えるとともに、下部走行体3に対し旋回用油圧モータ(図示せず)により回転駆動するようになっている。フロント作業機6はブーム7と、ブーム7の先端に回動可能に設けられたアーム8と、アーム8の先端に回動可能に設けられたバケット9とを備え、ブーム7、アーム8、及びバケット9は、それぞれブーム用油圧シリンダ10、アーム用油圧シリンダ11、及びバケット用油圧シリンダ12により回転動作するようになっている。
図2は、本発明の建設機械のエンジン管理装置の一実施形態の構成を建設機械の油圧駆動装置とともに表す図である。
この図2において、大型油圧ショベル1の油圧駆動装置はエンジン13と主油圧ポンプ15と前記ブーム用油圧シリンダ10とを備えている。大型油圧ショベル1の油圧アクチュエータとしては、ブーム用油圧シリンダ10以外に前記左・右の走行用油圧モータ2a、2a、前記旋回用油圧モータ(図示せず)、前記アーム用油圧シリンダ11、前記バケット用油圧シリンダ12等があるが、図2では省略している。エンジン13は制御信号により燃料噴射量を変化させる電子制御ガバナー14を備えている。主油圧ポンプ15(以下単に油圧ポンプとする)はエンジン13により駆動され、ブーム用油圧シリンダ10(以下単にブームシリンダとする)はこの油圧ポンプ15から吐出される圧油により駆動される。
また、大型油圧ショベル1の油圧駆動装置はパイロットポンプ16と、油圧ポンプ15からブームシリンダ10に供給される圧油の流量を制御するコントロールバルブ17と、ブームシリンダ10の動作を指示するための電気レバー方式の操作レバー装置18と、電気レバー制御部19とを備えている。電気レバー制御部19は操作レバー装置18によりブーム7の操作信号(電気信号)が入力されると、操作信号に対し所定の演算処理を行い、駆動信号(制御信号)を生成し、電磁比例減圧弁17a、17aに出力する。電磁比例減圧弁17a、17aは電気レバー制御部19から入力された駆動信号に応じてパイロットポンプ16から出力された一次パイロット圧を減圧して操作パイロット圧を生成し、この操作パイロット圧をコントロールバルブ17に出力し、コントロールバルブ17の切り換えを行う。これにより作業者は操作レバー装置18を操作し、ブーム7を駆動することができる。
また、大型油圧ショベル1の油圧駆動装置は、エンジン13の目標回転数を指示するスロットルダイヤル22と、エンジン13の実回転数を検出するエンジン回転数センサー23と、オートアイドルスイッチ24と、エンジン制御部20とを備えている。エンジン制御部20はスロットルダイヤル22の位置情報(目標回転数)とエンジン回転数センサー23の検出信号(実回転数)とを入力して必要な燃料噴射量を算出し、それを基に電子制御ガバナー14に制御信号を出力し、目標回転数に応じてエンジン13の回転数を制御する。オートアイドルスイッチ24はオートアイドル機能を作動させるためのモード選択スイッチであり、エンジン制御部20はオートアイドルスイッチ24の信号と操作レバー装置18の操作信号を入力し、オートアイドルスイッチ24がON(オートアイドルモードを選択する)位置にあるとき、作業者が操作レバー装置18を一定時間操作しない場合に、エンジン13をアイドル回転数に下げるよう電子制御ガバナー14を制御する。
本実施の形態のエンジン管理装置は上記のような油圧駆動装置を備えた大型油圧ショベルに設けられるものであり、エンジンモニタ部21と、このエンジンモニタ部21に接続され、通信を行う無線機26と、この無線機26に接続されたアンテナ27と、インジケータ25とを備えている。エンジンモニタ部21は電気レバー制御部19及びエンジン制御部20と接続され、電気レバー制御部19からは作業者が入力した操作信号、例えばブーム上げ操作信号等を入力し、エンジン制御部20からスロットルダイヤル22の位置情報(目標回転数)、エンジン回転数センサー23の検出信号、オートアイドルスイッチ24の信号を入力する。エンジンモニタ部21は上記の入力された各種信号情報に基づいて所定の処理を行い、無線機26及びアンテナ27を介して、後述の管理事務所28にエンジン回転数情報を送信すると共に、エンジン異常が検出されるとインジケータ25のランプを点灯し、作業者にエンジン13の異常を知らせる。
本実施の形態のエンジン管理装置はまた、大型油圧ショベル1の外部に設置された管理事務所28を備え、この管理事務所28は演算表示装置29と、この演算表示装置29と接続され、通信を行う無線機30と、この無線機30と接続され、管理事務所28の建屋外部に設けられたアンテナ31とを備えている。演算表示装置29は無線機30及びアンテナ31を介して、エンジンモニタ部21から上記エンジン回転数情報を受信し、この情報に所定の処理を行い、管理者に対し表示する。管理者はこの表示を基にエンジン13のオーバーホールの実施時期の予測や故障診断を行うとともに、その結果を作業者に知らせるための入力を行なう。演算表示装置29はこの入力された指示をエンジンモニタ部21に送信し、エンジンモニタ部21はこの指示を受信して表示部に表示し、作業者に知らせる。
ここでは、管理事務所28に対し大型油圧ショベルが1台の場合について説明しているが、大型油圧ショベルは複数でもよく、他の油圧作業機が併存していてもかまわない。更に無線機26、30を衛生を利用した無線機とすることで管理事務所28は世界各地の油圧作業機を1カ所で集中して管理するメンテナンスセンターとすることもできる。
図3は本実施の形態の大型油圧ショベル1のエンジンモニタ部21で行われる処理のメインフローチャートである。
図3において、まず、エンジン13が起動状態であるかどうかを判定する(S110)。この判定は例えばエンジン回転数センサー23で検出したエンジン回転数が所定レベル以上にあるかどうかにより行う。エンジン13が起動していないと判定された場合はその判定処理をが繰り返す。一方、エンジン13が起動していると判定された場合は、オートアイドルスイッチ24がOFFであるかどうか、スロットルダイヤル22からのスロットル位置情報が最大であるかどうか、電気レバー制御部19からブーム上げ操作が指示されたかどうかを判定する(S120)。これら3つの判定の1つでも否定されると次の処理には移行せず、ステップ120の判定処理を繰り返す。
ここで、上記3つの判定を行う目的は、エンジン目標回転数が一定であるときにエンジン13に予め定められたときの負荷が投入された回転数変化を検出するためである。つまり、オートアイドルスイッチ24がOFFであるかどうかを判定し、ONのときは次の処理に移行しないことにより、アイドルモードでエンジン回転数がアイドル回転数に低下した場合を除外する。また、スロットルダイヤル22からのスロットル位置情報が最大であるかどうかを判定し、それ以外のときは次の処理に移行しないことにより、エンジン13が最大回転数以外の回転数にあるときを除外する。そして、ブーム上げ操作が指示されたかどうかを判定し、ブーム上げ操作以外のときは次の処理に移行しないことにより、ブーム上げ以外の異なる種類の負荷が投入された場合を除外する。ここで、ブーム上げは比較的負荷変動の少ない操作である。よって、そのような3つの判定により、エンジン目標回転数が一定(最大)であるときに、エンジン13に予め定められた負荷が投入されたときの回転数変化を検出することが可能となる。
上記の3つの判定がすべて肯定された場合には、その後所定時間例えば5秒間経過したかどうかを判定し(S130)、5秒間経過するとエンジン回転数センサー23で検出したエンジン13の実回転数をエンジン制御部20から入力し、エンジンモニタ部21のメモリに記録する(S140)。所定時間経過したかどうか判定する目的は、負荷投入時のエンジン回転数変化の過渡的な状態を除外するためである。続いて、オーバーホールデータ作成処理(S150)と異常検出処理(S160)を行い、以後、ステップS120〜S160の処理を繰り返す。
ここで図4を用いて、ブーム上げ操作時のエンジン13の回転数の変化について説明する。図4はオートアイドルスイッチOFF、スロットルダイヤル最大の状態で操作レバー装置に非操作状態から、ブーム上げ操作を入力し、その後非操作状態に戻した場合のエンジンの実回転数の変化を示す図である。
図4において、縦軸はエンジン回転数、横軸は経過時間tを示す。上記のようにエンジン13には電子制御ガバナー14が設けられており、エンジン制御部20はスロットルダイヤル22の位置情報(目標回転数)とエンジン回転数センサー23の検出信号(実回転数)とから燃料噴射量を算出し、それを基に電子制御ガバナー14に制御信号を入力し、エンジン13を目標回転数に制御している。この場合、エンジン13が無負荷状態にあるときは、エンジン回転数は目標回転数より高いハイアイドル回転数となる。ここで操作レバー装置18にブーム上げ操作が入力されると(t1)、エンジン13の回転数が一瞬落ち込むラグダウンという現象が起こる(t1〜t2)。これはエンジン13が無負荷状態のときにはエンジン13の回転数は上記のように、ハイアイドルの状態にあり、かつこの状態でのエンジン13への燃料供給量が少ないのに対し、エンジン13に急に負荷が加わったときは電子制御ガバナー14は燃料を多く供給しようとするが、その制御には応答遅れがあるため、燃料の供給量が過渡的に不足するからである。そして、その後燃料供給が増加するに従ってエンジン回転数は上昇し、定格回転数(目標回転数)に達する(t2〜t3)。その後、操作レバー装置18を中立位置に戻すまで定格回転数が維持され(t3〜t5)、その後エンジン回転数はハイアイドルに戻る。
このように無負荷状態から操作を行うと、エンジン回転数は過渡的に大きく低下するため、本実施の形態では、図3のステップS130、S140において、所定時間(例えば5秒)経過後にエンジン回転数を測定し、定格回転時の安定したエンジン回転数を測定するものである。
なお、本実施の形態では投入された負荷の種類としてブーム上げ操作を例にしているが、これはブーム上げが最も負荷の大きさの変動が少ないからである。しかし負荷の大きさの変動が少なければ、ブーム上げ以外の負荷を検出してもよい。また、エンジン回転数の測定として定格回転数を測定しているが、エンジン回転数が最大に落ち込んだ時間t2のタイミングをとらえ、このときの回転数を測定してもよい。
図5は図3のオーバーホールデータ作成処理S150の詳細を示すフローチャートである。
図5において、まず前回のオーバーホールデータ作成処理から1日経過したかどうかの判定を行う(S210)。1日経過していなければこの処理を抜け、図3の異常検出処理S160に移行する。1日経過した場合には、図3のステップS140で測定し記録したエンジン回転数の1日の平均値D1(以下平均値D1という)を算出し(S220)、算出した平均値D1を管理事務所28の演算表示装置29に送信する処理を行う(S230)。
図6は図3の異常検出処理S160の詳細を示すフローチャートである。
図6において、まず前回の異常検出処理から30分経過したかどうかの判定を行う(S310)。30分経過していなければこの処理を抜け、図3のメインフローチャートに戻り、ステップS120から、図3の処理を繰り返す。30分経過した場合には、エンジン回転数の30分の平均値D2(以下平均値D2とする)を算出し(S320)、算出した平均値D2をエンジンモニタ部21のメモリに記録すると共に、演算表示装置29に送信する(S330)。次に、エンジンモニタ部21に記録された平均値D2は警告発生基準回転数N2と比較され、平均値D2が警告発生基準回転数N2より低下していなければ処理を抜け、図3のメインフローチャートに戻り、ステップS120から、図3の処理を繰り返す。
ここで、警告発生基準回転数N2はエンジン13の異常を判定するための基準値であり、この警告発生基準回転数N2より平均値D2が低下した場合には、速やかに何らかの処置を必要とする異常が発生したと判定する。ここでエンジン13の異常とは例えば突発的なピストンリングや吸排気バルブ等の損傷であり、警告発生基準回転数N2の基準値としては後述するオーバーホール実施時期の判定のために設定された警告回転数N1より低い回転数が設定される。
上記の判定で平均値D2が警告発生基準回転数N2より低下した場合には警告出力を行う(S350)。警告出力には二種類あり、1つはインジケータ25を点灯し、作業者に知らせるインジケータ出力であり、もう1つは管理事務所28の演算表示装置29に送信し管理者に伝える警告送信である。これにより作業者はエンジン13の異常を知り、早急にエンジン13を停止させる等の処置を行うことができるとともに、管理事務所28側でも事態を把握し、適切な処理を行うことができる。警告出力を行った後は図3のメインフローチャートに戻り、ステップS120から、図3の処理を繰り返す。
図7は管理事務所28に設置された演算表示装置29の処理を示すフローチャートである。
図7において、油圧ショベル1から平均値D1を受信したかどうかの判定を行い(S410)、受信していない場合には、ステップS460に進み、受信した場合には平均値D1を演算表示装置29のメモリに記録する(S420)。続いて前回の平均値D3を算出した日から30日経過したかどうかの判定を行い(S430)、30日経過していなければ、ステップS460に進み、30日経過していれば、演算表示装置29のメモリに記録した平均値D1の30日の平均値D3(以下平均値D3という)を算出する(S440)。そして平均値D3を演算表示装置29のメモリに記録し、かつ演算表示装置29に表示される表示内容1のデータの変更を行う(S450)。
続いて、油圧ショベル1から平均値D2を受信したかどうかの判定を行い(S460)。受信していない場合にはステップS480に進み、受信した場合には平均値D2を演算表示装置29のメモリに記録し、かつ演算表示装置29に表示される表示内容2のデータの変更を行う(S470)。
続いて管理者の指示に応じて演算表示装置29の画面29aに表示内容1あるいは表示内容2のいずれかを表示する(S480)。なお、管理事務所28が複数の油圧作業機を管理する場合は、どの油圧作業機のデータを表示するかの切り換えもここで行うことができるようになっている。
続いて、図6のステップS350で送信された警告を受信したかどうかの判定を行い(S490)。警告を受信していない場合には、上記の処理を繰り返し、警告を受信した場合には大型油圧ショベル1で警告が発生したことを演算表示部29に表示し管理者に知らせる(S500)。管理者はこの表示と表示内容2の表示とを総合判断し、大型ショベル1の運転の中止を指示する等の所定の処置を行う。
図8は演算表示装置29の画面29aに表示される表示内容2の一例を示す図である。
図8において縦軸は回転数であり、横軸は日時を示している。黒丸は30分毎のエンジン回転数の平均値D2を示している。なお、本実施の形態では30分毎の平均値を示したが、1時間毎、2時間毎等、その他の時間間隔であってもよい。図7のステップS470で最新の平均値D2が記録され、表示内容2のデータ変更処理がなされると、表示内容2もその最新の平均値D2が表示されるよう変更される。また、図8中点線は図6のステップS340で用いたエンジン13の異常を判定するための警告発生回転数N2である。更に、エンジン回転数の平均値D2が警告発生回転数N2より低下すると油圧ショベル側のエンジンモニタ部21ではエンジン13が異常であると判定し、インジケータ25を点灯してそのことを作業者に警告するとともに、管理事務所28の演算表示装置29に警告信号を送り、演算表示装置29では、図7のステップS470により表示画面にその警告を表示する。図8中の「エンジン異常発生」の文字はその警告表示である。これにより、管理者はエンジン異常が発生した事実とそれに至るまでのエンジン回転数の変化つまりトレンドデータを知ることができ、エンジン異常に対する適切な措置を行うことができる。
図9は演算表示装置29の画面29aに表示されるオーバーホール実施時期の判定のための表示内容1の一例を示す図である。
図9において縦軸は回転数であり、横軸は日時を示している。黒丸は30日毎の平均値D3を示している。なお、本実施の形態では30日毎の平均値を示したが、10日毎、20日毎、60日毎等、その他の日毎であってもよく、または、それぞれに切換可能な構成としてもよい。図7のステップS450で最新の平均値D3が記録され、表示内容1のデータ変更処理がなされると、表示内容1もその最新の平均値D3が表示されるように変更される。また、図9中点線は警告回転数N1を示している。
一般に大型の油圧ショベル等の建設機械においてはエンジンのシリンダライナーが摩耗すると、エンジン出力が低下して、エンジン負荷率が上昇し、熱負荷が上昇するため、シリンダライナーが焼き付き、エンジン破損に至るケースがある。よって、エンジン出力がある程度低下するとエンジンのオーバーホールを行なう必要がある。ここで、エンジン出力が低下するとエンジン回転数も下がるので、エンジン回転数の低下からエンジン出力の低下を推定しエンジンのオーバーホール実施時期を予測することができる。
警告回転数N1はこのエンジン回転数の低下からエンジン13の性能の低下を判定し、オーバーホール実施時期を予測する基準値として設けられたものであり、エンジン回転数がこの警告回転数N1を下回った場合には、オーバーホール実施が必要であると判断する。この警告回転数N1はエンジン13の異常を判定する警告発生回転数N2より高い回転数に設定される。これにより管理者はエンジン回転数のトレンドデータより低下傾向を解析し、エンジン回転数が警告回転数N1を下回る時期を予測し、その時期には至らぬようオーバーホールの実施時期を決定することができる。
以上において、図3のステップS120の処理は前記エンジンに予め定められた負荷が投入されたことを検出する負荷投入検出手段を構成し、図3のステップS130及びステップS140の処理は負荷投入検出手段により前記エンジンに予め定められた負荷が投入されたことが検出されると、その検出結果に基づいて回転数検出手段(エンジン回転数センサー23)の検出値を取り込み、エンジン回転数の一次データとして記憶する第1処理手段を構成し、図3のステップS150及びステップS160及び図7のステップS410〜ステップS500の処理は前記エンジン回転数の一次データを集計し、所定時間毎のエンジン回転数の二次データを作成し、これを前記エンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして出力する第2処理手段を構成する。
また、図3のステップS150及び図7のステップS410〜ステップS450の処理は前記エンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして前記エンジンのオーバーホール実施時期に係わるエンジン回転数のトレンドデータを作成する手段を構成し、図7のステップS480の処理及び画面29aは前記エンジン回転数のトレンドデータと前記エンジンのオーバーホール実施時期の判定基準値とを表示する表示手段を構成する。
また、図6のステップS310〜ステップS330及び図7のステップS460〜ステップS470の処理は前記エンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして前記エンジン異常に係わるエンジン回転数のトレンドデータを作成する手段を構成し、図7のステップS480の処理及び画面29aは前記エンジン回転数のトレンドデータと前記エンジン異常の判定基準値とを表示する表示手段を構成し、図6のステップS340〜ステップS350及び図7のステップS490〜ステップS500の処理及び画面29a及びインジケータ25は前記エンジン回転数のトレンドデータと前記エンジンの異常の判定基準値と比較し、警報を出力する警報手段を構成する。
以上のように構成した本実施の形態においては、管理事務所28側では、図7のステップS480の処理により、図9の表示内容1が演算表示装置29の画面29aに写し出され、エンジン回転数のオーバーホール実施時期に係わるトレンドデータがその判定基準値とともに表示される。管理者はこの表示内容1を使用することにより、30日毎の平均値である平均値D3の変化を読みとり、エンジン回転数のトレンドデータの低下傾向の解析を行なう。このとき、表示内容1には警告回転数N1が同時に表示されるため、比較が容易に行え、エンジン回転数が警告回転数N1を下回る時期を正確に予測することができる。これにより、管理者はオーバーホールの実施時期を正確に決定することができ、エンジン13の予防保全を正確に図ることが可能になる。
また、万一エンジン13に例えば衝撃によるピストンリングの損傷等の異常が生じエンジン回転数が低下したときは、図3のステップS160でそのことが検出され、油圧ショベルの作業者はエンジン13の異常を知り、早急にエンジン13を停止させる等の処置を行うことができ、これによりエンジン破損を未然に防止することができる。また、管理事務所28側でも図7のステップS480の処理により、図8の表示内容2が演算表示装置29の画面29aに写し出され、かつエンジン回転数のトレンドデータとその異常警告が表示される。その結果、管理者はエンジン異常が発生した事実とそれに至るまでのエンジン回転数の変化つまりトレンドデータを知ることができ、エンジン異常に対する適切な措置を行うことができる。
以上のように本実施の形態によれば、エンジン13の状態を正確に把握して、エンジンの正確な予防保全を図ることができる。
また、エンジン13のオーバーホール実施時期を正確に予測することができ、オーバーホールのための事前の準備が可能となり、油圧ショベルによる生産作業の中断による影響を最小にとどめることができる。
更に、例えば衝撃によるピストンリングの損傷等のエンジン13の異常を正確に予測することができ、エンジン破損を未然に防止することができる。
なお、本実施の形態においては大型油圧ショベル1を例に取り説明したが、他の建設機械について本発明の建設機械のエンジン管理装置を実施してもよく、例えば、建設機械としてホイルローダを使用し、予め定められた負荷をリフトアームのチルト操作としてもよい。
本発明の適用対象となる建設機械の一例として大型油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。 本発明の適用対象となる建設機械のエンジン管理装置の一実施形態の構成を建設機械の油圧駆動装置とともに表す図である。 本発明の適用対象となる建設機械のエンジン管理装置のエンジンモニタ部で行われる処理のメインフローチャートである。 本発明の適用対象となる建設機械の一例として大型油圧ショベルにおいて、オートアイドルスイッチOFF、スロットルダイヤル最大の状態で操作レバー装置に非操作状態から、ブーム上げ操作を入力し、その後非操作状態に戻した場合のエンジンの実回転数の変化を示す図である。 本発明の適用対象となる建設機械のエンジン管理装置のオーバーホールデータ作成処理を示すフローチャートである。 本発明の適用対象となる建設機械のエンジン管理装置の異常検出処理を示すフローチャートである。 本発明の適用対象となる建設機械のエンジン管理装置の管理事務所に設置された演算表示装置の処理を示すフローチャートである。 本発明の適用対象となる建設機械のエンジン管理装置の管理事務所に設置された演算表示装置に表示される表示内容2の一例を示す図である。 本発明の適用対象となる建設機械のエンジン管理装置の管理事務所に設置された演算表示装置に表示される表示内容1の一例を示す図である。
符号の説明
1 大型油圧ショベル
6 フロント作業機
7 ブーム
10 ブーム用油圧シリンダ
13 エンジン
15 主油圧ポンプ(油圧ポンプ)
19 電気レバー制御部
20 エンジン制御部
21 エンジンモニタ部
23 エンジン回転数センサー(回転数検出手段)
25 インジケータ
29 演算表示装置

Claims (8)

  1. エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプからの吐出圧油により駆動される油圧アクチュエータとを備えた建設機械のエンジン管理装置において、
    前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、
    前記エンジンに予め定められた負荷が投入されたことを検出し、この検出結果を信号として出力する負荷投入検出手段と、
    この負荷投入検出手段の検出信号に基づいて前記回転数検出手段で検出された検出値を取り込み、エンジン回転数の一次データとして記憶する第1処理手段と、
    前記第1処理手段におけるエンジン回転数の一次データを集計し、所定時間毎のエンジン回転数の二次データを作成し、これを前記エンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして出力する第2処理手段とを備えることを特徴とする建設機械のエンジン管理装置。
  2. 請求項1記載の建設機械のエンジン管理装置において、
    前記負荷投入検出手段は、前記油圧アクチュエータにより駆動される所定の作業部材が所定の操作をされたかどうかを検出する手段であることを特徴とする建設機械のエンジン管理装置。
  3. 請求項2記載の建設機械のエンジン管理装置において、
    前記建設機械はブームを有するフロント作業機を備え、
    前記所定の作業部材は前記ブームであり、
    前記負荷投入検出手段は、前記ブームが上げ操作されたかどうかを検出する手段であることを特徴とする建設機械のエンジン管理装置。
  4. 請求項1記載の建設機械のエンジン管理装置において、
    前記第1処理手段は、前記回転数検出手段の検出値として、前記予め定められた負荷投入後、所定時間経過後のエンジン回転数を取り込むことを特徴とする建設機械のエンジン管理装置。
  5. 請求項1記載の建設機械のエンジン管理装置において、
    前記第1処理手段は、前記回転数検出手段の検出値として、前記予め定められた負荷投入後の最も低いエンジン回転数を取り込むことを特徴とする建設機械のエンジン管理装置。
  6. 請求項1記載の建設機械のエンジン管理装置において、
    前記第2処理手段は、前記エンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして前記エンジンのオーバーホール実施時期に係わるエンジン回転数のトレンドデータを作成する手段と、前記エンジン回転数のトレンドデータと前記エンジンのオーバーホール実施時期の判定基準値とを表示する表示手段とを有することを特徴とする建設機械のエンジン管理装置。
  7. 請求項1記載の建設機械のエンジン管理装置において、
    前記第2処理手段は、前記エンジンの予防保全に係わるエンジン回転数のトレンドデータとして前記エンジンの異常に係わるエンジン回転数のトレンドデータを作成する手段と、前記エンジン回転数のトレンドデータと前記エンジンの異常の判定基準値とを表示する表示手段とを有することを特徴とする建設機械のエンジン管理装置。
  8. 請求項7記載の建設機械のエンジン管理装置において、
    前記第2処理手段は、前記エンジン回転数のトレンドデータと前記エンジンの異常の判定基準値と比較し、警報を出力する警報手段を更に有することを特徴とする建設機械のエンジン管理装置。
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