JP2005226159A - 亜鉛系めっき鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 プレス成形に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供することが課題である。
【解決手段】 亜鉛系めっき層を少なくとも鋼板の片面に有し、該亜鉛系めっき層の表面に平均かさ厚さ20nm以上、500nm以下、かつ平均の空隙率が30%以上の皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板。亜鉛系めっき層を少なくとも鋼板の片面に有し、該亜鉛系めっき層の表面に平均かさ厚さ20nm以上、500nm以下、かつ平均の空隙率が50%以上の皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板。
【選択図】 図1

Description

この発明は、自動車用薄鋼板等の用途において、高い潤滑特性を有し、優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板に関するものである。
亜鉛系めっき鋼板は、冷延鋼板と比較して耐食性にすぐれることから、自動車や家電製品等に広く利用されている。
このような亜鉛系めっき鋼板は、プレス成形を施されて目的の用途に供される。しかし、亜鉛系めっき鋼板は、冷延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。これは亜鉛系めっき鋼板とプレス金型との摺動抵抗が、冷延鋼板の場合に比較して大きくかつ不安定であることが原因である。これは、亜鉛系めっき成分が金型との凝着することにより摺動抵抗を著しく高めることによる。プレス時のビード通過部など亜鉛系めっき鋼板との摺動抵抗が著しく大きい部分で、亜鉛系めっき鋼板がプレス金型に流入しにくくなったり、鋼板の延びを阻害したりすることにより、鋼板の破断を起こしやすい。
そこで亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を向上させる方法としては、一般に高粘度の潤滑油を塗布する方法が広く用いられている。しかしこの方法では、潤滑油の高粘性のために、塗装工程で脱脂不良による塗装欠陥が発生したり、またプレス時の油切れにより、プレス性能が不安定になる等の問題がある。前記問題を解決するには、潤滑油の塗布量を極力低減できることが必要であり、そのためには、亜鉛系めっき鋼板自体のプレス成形性を改善することが必要となる。
ここで亜鉛系めっき鋼板は、鋼板に溶融亜鉛めっきを施した溶融亜鉛めっき鋼板、さらに加熱処理を行い、鋼板中のFeとめっき層中のZnが拡散する合金化反応が生じることにより、鉄-亜鉛合金層を形成させた合金化溶融亜鉛めっき鋼板、および亜鉛あるいは亜鉛-ニッケルなどを電気めっき法で形成させる亜鉛系の電気めっき鋼板のことである。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合、鉄-亜鉛合金層は、通常、Γ相、δ1相、ζ相からなる皮膜であり、Fe濃度が低くなるに従い、すなわち、Γ相→δ1相→ζ相の順で、硬度ならびに融点が低下する傾向がある。このため、摺動性の観点からは、高硬度で、融点が高く凝着の起こりにくい高Fe濃度の皮膜が有効であり、プレス成形性を重視する合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、皮膜中の平均Fe濃度を高めに製造されている。
しかしながら、高Fe濃度の皮膜では、めっき−鋼板界面に硬くて脆いΓ相が形成されやすく、加工時に界面付近から剥離する現象、いわゆるパウダリングが生じ易い問題を有している。このため、特許文献1に示されているように、摺動性と耐パウダリング性を両立するために、上層に第二層として硬質の鉄系合金を電気めっきなどの手法により付与する方法がとられている。しかしながら、めっき皮膜を二層とすることは製造コストが余計にかかるという問題を有している。
この問題を解決する方法として、特許文献2および特許文献3は、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理、または加熱処理を施すことにより、ZnOを主体とする酸化膜を形成させて溶接性、または加工性を向上させる技術を開示している。
特許文献4は、亜鉛系めっき鋼板の表面に、リン酸ナトリウム5〜60g/lを含みpH2〜6の水溶液中にめっき鋼板を浸漬するか、電解処理、また、上記水溶液を散布することによりP酸化物を主体とした酸化膜を形成して、プレス成形性及び化成処理性を向上させる技術を開示している。
特許文献5は、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処理、または加熱処理により、ニッケル酸化物を生成させることによりプレス成形性および化成処理性を向上させる技術を開示している。
以下に先行技術文献情報について記載する。
特開平1-319661号公報 特開昭53-60332号公報 特開平2-190483号公報 特開平4-88196号公報 特開平3-191093号公報
しかしながら、上述した特許文献2〜5を亜鉛系めっき鋼板に適用した場合、プレス成形性の改善効果を安定して得ることはできない。特に皮膜を厚く形成させた場合は、潤滑性の改善はそれなりに見られるものの、溶接性など他の性能に弊害が現れる。この発明は先行技術の問題点を解決するためになされたもので、プレス成形に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した目的を達成すべく、鋭意研究を重ねた結果、付着量や厚さを制御して皮膜を形成させるだけではなく、亜鉛系めっき鋼板のめっき表面に一定値以上の空隙率を有する皮膜を形成させることが、同一の皮膜付着量であっても、皮膜の潤滑性の大幅な向上に有効であり、皮膜の潤滑性を向上することでプレス成形時の摺動抵抗が減少し、プレス成形を向上できることを知見した。これは、皮膜の空隙に潤滑油が侵入し、皮膜成分と潤滑油が一体となった潤滑皮膜を厚く形成するためである。空隙率の高い皮膜は、少ない皮膜物質量で摺動抵抗を効果的に下げることができる点もメリットである。皮膜物質量を多くすると、溶接性や接着性、また化成処理のための脱膜性に悪影響を及ぼす場合があり、望ましくはない。
皮膜の平均空隙率としては、30%以上必要で、50%以上であるとさらに潤滑性に優れる。また、空隙率が上記範囲内にあっても、潤滑性向上効果を得るためには、断面方向から観察した皮膜の平均厚さが20nm以上、500nm以下である必要があることもわかった。皮膜の空隙率は透過電子顕微鏡を用いて空隙に充填した元素の分析により評価する。
空隙を有する皮膜では、断面方向からの観察で評価される皮膜厚さは、皮膜物質の量に基づき評価される皮膜厚さとは異なる。前者は空隙を含んでいるため,後者より厚くなる。そして、断面厚さで評価される皮膜厚さと、皮膜物質の量に基づき評価される皮膜厚さの比は皮膜の空隙率と相関がある。そこで、空隙率に基づいて皮膜の潤滑性を評価する代わりに、空隙を含んだ(例えば断面厚さで評価される)皮膜の平均厚さ(A)と、皮膜物質の量に基づき評価される皮膜の平均厚さ(B)の比、A/Bによって皮膜の潤滑性を評価したところ、A/Bが1.5以上であると良好な潤滑性改善効果が得られることがあきらかになった。
本明細書では、断面厚さで評価される皮膜厚さ(空隙を含んだ見かけの厚さ)と、皮膜物質の量に基づき評価される皮膜厚さとを区別するため、断面厚さで評価される皮膜厚さを「かさ厚さ」と記載し、皮膜物質の量に基づき評価される皮膜厚さを「物質厚さ」と記載する。
断面厚さで評価される皮膜厚さである「かさ厚さ」は、皮膜を形成する物質量から求められる厚さではなく、空隙も含んだ皮膜厚さであり、例えば透過電子顕微鏡により断面観察から評価する。皮膜物質の量に基づき評価される皮膜厚さを「物質厚さ」は、例えば電子線マイクロアナリシス(EPMA)やオージェ電子分光法により評価する。
また、前述の空隙率を有する皮膜に、かさ厚さに、となり合う厚さの極大部と極小部の厚さの比が平均して2倍以上となるような不均一性を持たせると潤滑性がさらに向上することがわかった。
本発明は以上の知見に更に検討を加えることでなされたものである。上記課題を解決する本発明の要旨は次のとおりである。
第1発明は、亜鉛系めっき層を少なくとも鋼板の片面に有し、該亜鉛系めっき層の表面に平均かさ厚さ20nm以上、500nm以下、かつ平均の空隙率が30%以上の皮膜を有することを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供する。
第2発明は、亜鉛系めっき層を少なくとも鋼板の片面に有し、該亜鉛系めっき層の表面に平均かさ厚さ20nm以上、500nm以下、かつ平均の空隙率が50%以上の皮膜を有することを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供する。
第3発明は、亜鉛系めっき層を少なくとも鋼板の片面に有し、かつ該亜鉛系めっき層の表面に平均かさ厚さが平均物質厚さの1.5倍以上である皮膜を有することを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供する。
第4発明は、第1〜第3発明において、となり合う皮膜厚さの極大値と極小値の比の平均が2以上であることを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供する。
第5発明は、第1〜第4発明において、前記皮膜がZnおよびFeを含む酸化物および/または水酸化物であることを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
第6発明は、第1〜第5発明において、前記亜鉛系めっき層は溶融亜鉛系めっき層であることを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
第7発明は、第6発明において、前記溶融亜鉛系めっき層は鉄-亜鉛合金めっき層であり、かつ該鉄-亜鉛合金めっき層はめっき面に平坦部を有し、該平坦部は、その表面に第1〜第5発明の皮膜を有することを特徴とする、プレス成形性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明の亜鉛系めっき鋼板は、めっき層表面に潤滑性に優れる皮膜を有するのでプレス成形時の摺動抵抗が小さく、安定して優れたプレス成形性が得られる。
前記皮膜をZnおよびFeを含む酸化物および/または水酸化物とすると、めっき皮膜中に含まれる金属成分を利用できるため、比較的簡便な処理により所定の空隙率を有する皮膜をめっき表面に形成できる。また、皮膜中に新たな元素が添加されないので、添加元素による特性劣化のおそれが少ない。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板においては、めっき表面に平坦部を設けてプレス成形時に金型が直接接触する部分をこの平坦部に限定し、その平坦部に前記の空隙率を有する皮膜を形成させることで、優れたプレス成形性が得られる。
本発明は、亜鉛系めっき鋼板全般に効果があるが、自動車用途に用いられる溶融亜鉛めっき鋼板、および合金化溶融亜鉛めっき鋼板に適用するとその効果が高い。
以下、本発明について詳しく説明する。
亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性が、冷延鋼板より劣るのは、プレス成形時に金型が接触して摺動を受けた際、亜鉛や亜鉛合金が金型との凝着を起こしやすいことによる。プレス成形性を向上させるためには、プレス成形時に金型が直接めっき表面(亜鉛または亜鉛合金相)と接触することを抑制することが必要である。そのために、めっき表面に様々な処理層を設けて、金型とめっき表面の接触を極力押さえようとする試みがなされている。このような技術において、金型とめっき表面の直接接触の抑制力は、処理皮膜の物質と厚さに依存している。前者としては、高融点あるいは硬い物質が有利とされ、先行技術ではニッケルや酸化物(特許文献5)、あるいはリン酸塩(特許文献4)が選ばれている。また、処理皮膜の厚さは、当然ながら厚いほうが有利である。皮膜厚さの例としては、溶融亜鉛めっき鋼板の上に施される電気鉄-亜鉛合金(Feがリッチである)は、数百ナノメートル程度である。
上記目的に、亜鉛系めっき鋼板上に厚い皮膜、すなわち多量の物質を付与することは、下記の点で不利が生じる。第一に、めっき鋼板の特性面では、潤滑性は確かに向上するが、同時に満たされるべき溶接性や化成処理性、接着性が、処理層の厚みとともに低下することがある。また、皮膜形成に多量の物質を必要とするため、製造コストが高くなる。さらに、通常皮膜形成時間は皮膜厚さに応じて長くなるため、厚い皮膜を形成させる場合、生産性が低下することが多い。
上記の観点から、少ない物質量で高潤滑皮膜を形成することが重要である。発明者らは、物質量と皮膜の厚さを分けて考え、検討を重ねた結果、物質量の多少ではなく、処理層の空隙部を含んだ厚さであるかさ厚さが重要であることを発見した。具体的には、付与する物質量が同じであれば、空隙率の高い皮膜、すなわちかさ密度が低く、かさ厚さが厚い皮膜は、膜物質が密に詰まっている皮膜に比べて、より優れた潤滑性を有することを発見した。かさ厚さは例えば透過電子顕微鏡(TEM)による断面観察から評価される。
この理由は、次のように考えられる。プレス成形あるいは摺動試験は、潤滑油を鋼板に塗布した後に行われる。空隙を有する皮膜の場合、空隙に潤滑油が入り込み、疎な膜物質と共働して実質的に物質量から得られる厚さよりも厚い潤滑層を形成すると考えられる。一方、密な処理層ではこのような層の形成は期待できない。プレス加工時の、めっき表面から金型の表面までは、空隙率の高い処理層では、めっき表面−(皮膜物質+潤滑油)の層−潤滑油−金型であるのに対して、膜物質が密な処理層では、めっき表面−皮膜物質の層−潤滑油−金型となる。空隙に潤滑油を取り込んで少ない膜物質で実質的に厚い潤滑層を形成させるのが本発明の特徴である。
このことを証明するために発明者らは、表面に平坦部を設けた合金化溶融亜鉛めっき上にZn、Fe、S、P、およびOで構成される本発明の皮膜を形成させ、先端の曲率半径が100μmの針を使用したナノスクラッチ試験機(Hysitron社製Triboscope)により、平坦部の局所的な摩擦特性を測定した。測定は、潤滑油を塗布した試料と、脱脂により潤滑油を除去した試料について実施した。1000μNの縦荷重(試料表面に垂直な荷重)、10μmの摺動距離で横荷重(針を試料表面に平行な方向に引くのに必要な力)を測定した、摩擦係数(横荷重/縦荷重)は、潤滑油がある場合は0.18、潤滑油がない場合は0.26であった。一方、本発明の皮膜を形成しない未処理材の場合、潤滑油がある場合は0.24、潤滑油がない場合は0.25であった。本発明の皮膜を形成した場合、潤滑油がない場合は未処理材と同等の潤滑性しか示さないが、潤滑油存在下で良好な潤滑性を有することがわかる。この結果は、本発明の皮膜が潤滑油と共働することで潤滑性に優れる皮膜として作用することを示している。本発明の皮膜を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板はプレス成形時の摺動抵抗が少なく、プレス成形性に優れる。
皮膜の平均空隙率としては、少しでも空隙があると効果はあるが、30%以上あると良好な潤滑性を示し、50%以上であるとさらに潤滑性に優れる。上限は特に規定しないが、発明者らは少なくとも空隙率85%までは効果があることを確認した。潤滑性向上効果を得るためには、一定以上のかさ厚さが必要である。平均かさ厚さは20nm以上とすることが必要である。20nm未満のかさ厚さであると、充分な潤滑性を有する皮膜を形成できない。また、かさ厚さの上限を500nm以下とした理由は、皮膜が500nmより厚くなると先述の溶接性その他特性の低下や生産コスト上昇等の不利な点が生じることによる。皮膜の空隙率は後述するように、例えば透過電子顕微鏡の元素分析手法により評価する。
皮膜の厚さは、オージェ電子分光法(AES)などの表面分析法とイオンエッチングにより測定した深さ方向分析結果から評価されることが多い。この方法では、皮膜中の空隙はあまり考慮されず、皮膜のかさ厚さというよりも皮膜を構成する物質量の指標に近い。例えばTEMによる断面厚さで評価される、皮膜厚さ(かさ厚さ)と、例えばAESによる深さ方向分析により評価される、皮膜厚さ(物質厚さ)の比は、皮膜の空隙率と相関がある。従って、前述の皮膜の空隙率に代えて、平均かさ厚さ;Aと、平均物質厚さ;Bの比、すなわち平均厚さ比A/Bを空隙率の指標として用いることができる。
この場合、平均厚さ比A/Bが1.5以上であると良好な潤滑性改善効果が得られる。上限はとくに規定しないが、発明者らは平均厚さ比A/Bが5までは効果があることを確認している。
空隙を有する皮膜には、様々な形態がある。本発明における皮膜は、空隙の大部分が空間的に皮膜表面に外部に開口した開口部を有していることが必要である。これはめっき表面に塗布した潤滑油が皮膜に入り込むために必要であることによる。本発明では、このような空隙を有していれば、その形状を特に限定するものではない。例えば、図1(b)に示すように、複数の空隙部分が少なくとも一部分が互いに連通して空隙が三次元的に分布し、前記空隙は皮膜表面で外部に開口した開口部を有する形態の皮膜が例示される。あるいは、柱状の物質が集まって、その間に潤滑油を保持できるものであってもよい。空隙を有する皮膜の構造は前記のものに限定されず、空隙部分に潤滑油が入り込むことで潤滑油を保持できるものであればよい。図1(b)に示すような皮膜の場合、空隙の表面への開口部の面積は、これを円と仮定した場合、その平均直径が5nm〜200nmであることが望ましい。下限は、潤滑油分子が効率的に空隙に入り込むことにより規定され、上限は、空隙に入りこんだ潤滑油が金型との摺動時に容易に吐き出されないようにすることにより規定される。空隙の大きさは潤滑油の粘度、平均分子量、あるいは使用温度により最適値は多少異なる。前述の空隙の表面における開口部の平均直径は、高分解能の走査電子顕微鏡で、低加速電圧を用いて観察することで評価することができる。
上記の空隙を有する皮膜にかさ厚さの不均一を付与すると、潤滑性がさらに向上する。ここで、かさ厚さの不均一とは、面内で300nm〜2000nmの周期を有する不均一性である。このような不均一があると、皮膜の薄い部分(皮膜の凹部)が潤滑油溜りとなり、以下に説明するように潤滑性向上にさらに寄与する。
前述のかさ厚さの不均一は高面圧での潤滑性向上には大きい寄与はないが、プレス加工時に摺動面圧が低面圧となる条件での潤滑性向上には顕著な効果を示す。この理由として次のような機構を考えている。前述の不均一性を有する皮膜のかさ厚さの薄い部分(皮膜の凹部)は、前述の空隙よりも単位面積当りの体積が大きいため潤滑油を保持できる体積は大きいが、広い開口部を有しているためプレス加工時に摺動面圧が高面圧になると潤滑油が吐き出されやすく潤滑油を保持する効果が相対的に低い。
前述のかさ厚さの不均一は、かさ厚さのとなり合う厚さの極大部と極小部の厚さの比が平均して2倍以上となる場合潤滑性向上効果が顕著である。となり合う厚さの極大部と極小部の厚さの比が平均して2倍より小さいと、潤滑油を保持する作用が低下するため、潤滑性向上効果が小さいと考えている。
図1は、前述した本発明の皮膜を説明する断面模式図で、(a)は空隙を有する皮膜にかさ厚さの不均一を付与した状態を説明する断面模式図である。(b)は空隙を有する皮膜の空隙部分の形態の一例を説明する模式図で、(a)の点線部分(A部分)の断面を拡大して示した概略模式図である。図1(a)、(b)において、11はめっき層、12はめっき表面に形成された皮膜、13は皮膜の空隙である。
図1(a)に示される皮膜には、かさ厚さの不均一が示されている。tmaxは極大厚さ部分、tminはとなり合う極小厚さ部分の、それぞれ一例で、tavは平均かさ厚さ、Lは不均一性の周期を示している。なお、図1(a)では、空隙は省略されている。
図1(b)に示されるように、空隙13の多くは、複数の空隙部分が少なくとも一部分互いに連通して三次元的に分布し、該空隙13は皮膜12表面で外部に開口した開口部を有するように構成されている。しかし、空隙は前記の構造例に限定されず、空隙13は1つの空隙部分で構成され、その空隙部分が皮膜12表面で外部に開口した開口部を有するものであってもよい。また外部に開口した開口部を有しない空隙が少量含まれていてもよい。図1(b)中、dは開口部面積を面積が等価な円とした場合の開口部直径を示している。
となり合う極大厚さ部と極小厚さ部の厚さ(tmax、tmin)、平均かさ厚さtav、不均一性の周期Lおよび空隙の開口部大きさdは、断面方向からの透過電子顕微鏡を用いた皮膜観察により行う。
本発明の皮膜は、単独で使用されても良いが、他の皮膜と組合わせて使用することも可能である。たとえば、FeやNiを含有する硬い合金層を亜鉛めっき上に施し、その表面に本発明の皮膜を付与すると、摺動抵抗がより低減する。また、本発明の皮膜の上に、さらに形態の異なる潤滑皮膜を付与することも、摺動抵抗の低減に効果がある。ただし、この場合は、本発明の皮膜に潤滑油がいきわたるように、緻密な潤滑皮膜でないことが必要である。酸化物など高融点で微細な粒子からなる潤滑皮膜などが望ましい。
これまで述べてきた空隙率を有する高潤滑性皮膜は、高融点の物質であることが望ましい。高融点の物質としては、高融点の金属、酸化物、炭化物、窒化物、あるいはグラファイトなどの炭素材料等から選ぶことができる。Znを主体とする酸化物および/または水酸化物とすることが工業上有利である。その理由は、他の金属や金属化合物を形成させるためには、新たな工程を追加する必要があるが、上記酸化物および/または水酸化物であれば、めっき皮膜中に含まれる金属成分を利用できる可能性があり、比較的簡便な処理により所定の空隙率およびかさ厚さを有する皮膜をめっき表面に形成できるからである。新たな工程を追加する必要が少ないため、亜鉛めっき鋼板本来の特性を劣化させるおそれが少なく、新たな元素を追加する必要がないため添加元素による諸特性への影響のおそれもない。
次に、本発明のめっき表面に形成された空隙率を有する皮膜の評価方法について説明する。
皮膜のかさ厚さおよび空隙率の測定はTEMの断面形状観察およびエネルギー分散型X線分光器(EDS)を併用して行う。観察用試料は、めっき表面にカーボンコーターで表面保護カーボン層を付与したのち、集束イオンビーム加工(FIB)法により皮膜を含むめっき表面の断面試料を作製する。次いで、TEMにその試料を導入し、明視野像を観察する。皮膜厚さ(平均かさ厚さtav)は、皮膜とめっき表面の界面から、皮膜の先端までの距離を、複数の視野について計測し平均化する。このとき、となり合う皮膜の極大厚さ(tmax)と極小厚さ(tmin)も記録する。なお、酸化物皮膜の観察には、デフォーカス条件(焦点をずらして観察することにより酸化物層を明瞭に観察できる条件)での観察が有効である。厚さの計測は、少なくとも断面で、めっき表面に平行に10μmの長さについて実施する。
空隙率は、EDSにより、表面保護カーボン層中C-K X線強度の平均値に対する皮膜中のC-K X線強度の平均値により(1)式を用いて評価する。
Figure 2005226159
FIBで加工した観察・分析用試料は、カーボン保護層と皮膜の断面でほぼ同じ厚さである。最初に付与したカーボンが皮膜の空隙に完全に侵入していると、カーボン保護層のC-K強度(カーボン100%の標準)に対する、カーボン保護層のC-K強度の割合は、カーボンが皮膜中で占める体積率と考えてよい。従って、(1)式より、皮膜の空隙率を評価することができる。実際には、カーボンが皮膜の空隙を完全に埋めているとは限らない。従って、皮膜の空隙率を若干過小評価している可能性があるが、本発明は空隙率の下限を規定しているため、この方法で空隙率が本発明例を満たせば、優れたプレス成形性を得ることができる。
前記したように、TEMで評価した平均かさ厚さ(A)とAES等で評価した平均物質厚さ(B)の比でも(2)式により皮膜の空隙率の指標として用いることができる。
Figure 2005226159
この際、めっき表面における処理層の厚さ(物質厚さ)は、Ar+イオンスパッタリングと組み合わせた走査オージェ電子顕微鏡法(SAM)やEPMAにより、処理層の構成元素の量により評価する。例えばSAMの場合、SAMに備わっている、二次電子像観察機能により、測定個所を確認し(容易に可能である)、その表面を分析対象領域とする。SAMの場合は、Ar+イオンスパッタリングにより所定深さまでスパッタした後、測定対象の各元素のピーク強度から相対感度因子補正により、その深さでの濃度(即ち物質量比)を求めることができる。皮膜の主要元素(酸化物であれば酸素)の濃度は、ある深さで最大値となった後(これが最表層の場合もある)、減少し一定となる。皮膜の厚さは、その元素の濃度が、最大値より深い位置で、最大値と内部での一定値との和の1/2となるスパッタリング時間を、膜厚既知のSiO2膜などのスパッタレートをもとに、換算して求めることができる。
本発明では、(1)あるいは(2)により評価される空隙率あるいは厚さの比のいずれか一方が満たされれば、効果がある。
本発明が対象とする亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛系めっき層が電気めっき法で形成された亜鉛めっき鋼板、亜鉛-ニッケル合金めっき鋼板、亜鉛-鉄合金めっき鋼板などの電気電気系亜鉛めっき鋼板、亜鉛系めっき層が溶融めっき法で形成され、合金化処理が施されていない溶融亜鉛めっき鋼板、合金化処理が施された合金化溶融亜鉛めっき鋼板などの溶融亜鉛系めっき鋼板を含む。溶融亜鉛系めっき層は、溶融めっき後合金化処理されていないZnめっき層、合金化処理された鉄-亜鉛合金層を含む。
プレス成形性を向上させる効果は、亜鉛系めっき鋼板全般に効果があるが、自動車用途に用いられる溶融亜鉛めっき鋼板、および合金化溶融亜鉛めっき鋼板に適用するとその効果が高い。
亜鉛系めっき鋼板が合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合、めっき鋼板に平坦部を設けてその平坦部に本発明で規定する皮膜を形成させることが特に効果がある。これは、プレス成形時に金型が接触する部分はこの平坦部に限定されるため、めっき表面すべてに処理を施すよりも効率的であるからである。平坦部の作製は調質圧延を兼ねて行うことが有効である。平坦部の面積率は、めっき表面の30%〜70%の範囲内であることが望ましい。
本発明で規定する皮膜は、必ずしもめっき表面のすべてを覆っている必要はない。表面の30%以上に存在していれば、潤滑性向上効果を得ることができる。金型と優先的に接する凸部に存在することが有利であり、平坦部を有する合金化溶融亜鉛の場合は、この平坦部の面積のうちで30%以上を皮膜が覆っていれば潤滑性向上効果がある。
本発明の実施の形態に係る亜鉛系めっき鋼板の製造方法の一例を合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造を例に挙げて説明する。鋼板表面に亜鉛めっき浴でめっきし、合金化処理を行う。亜鉛めっき浴中にAlが添加されていることが必要であるが、Al以外の添加元素成分は特に限定されない。すなわち、Alの他にFe、Pb、Sb、Si、Sn、Mn、Ni、Ti、Li、Cuなどが含有または添加されていても、本発明の効果が損なわれるものではない。
次いでめっき表面に平坦部を形成する。その際、平坦部の面積率は30%〜70%の範囲内であることが望ましい。平坦部を形成する方法は特に限定されない。例えば、調質圧延によってめっき表面に平坦部を形成できる。その際、圧延条件を調整し、平坦部の面積率を前記で説明した範囲にする。
次いで、めっき表面の平坦部に本発明の皮膜を形成させる。空隙率を有する皮膜の製造方法は、これを特に限定するものではないが、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、処理液に浸漬して皮膜を形成させることが工業的に有利である。
一例として、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、pH緩衝剤とFeイオン(II)を含む硫酸を主体とする酸性溶液に浸漬し、一定時間放置し、水洗する。次いで、pHやFeイオン(II)濃度の異なる酸性溶液に浸漬し一定時間放置後に水洗することで製造することができる。ここで、溶液にFeイオン(II)を付与したのは、酸化物および/または水酸化物の大きさすなわち、空隙率を制御するためである。Feイオン(II)量を減らせば空隙率は上がり、Feイオン(II)を増やせば空隙率は下がる。Znの酸化物および/または水酸化物を微細化する元素であればFeイオン(II)に限るものではない。例えば他の3d遷移金属元素を使用することができる。前段の酸性溶液処理では、表面にZn主体(ここで主体とは金属元素の割合でZnが50%以上であることを意味する)の粒子サイズが比較的大きな酸化物および/または水酸化物を形成させる。後段の溶液処理では、より微細な酸化物および/または水酸化物を前段の粒子の隙間に形成させることにより、皮膜の空隙率を調整する。この方法で、かさ厚さが厚く空隙率の高い皮膜を効率よく形成させることができる。溶液への浸漬は、これをスプレーやロールを用いた塗布とすることもできる。
これらの場合、水酸化物中に、処理液などに含まれるF、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Baなどの元素あるいは吸着水が含有されていても、本発明のプレス成形性改善効果が損なわれることはない。
本発明の皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性は、摩擦係数が良い指標となる。一般的な摺動試験装置を使用して、摩擦係数を求めることができる。測定する試料表面には潤滑油を塗布する。しかし、摩擦係数の絶対値は、摺動面積、摺動距離、あるいは縦方向に加える荷重等により変化する。本発明の摺動抵抗低減効果は、未処理材と比較することにより明確となる。
次に、本発明を実施例により説明する。
板厚0.8mmの冷延鋼板上に、常法の合金化溶融亜鉛めっき法によりFe濃度が10質量%(±1質量%)のめっき皮膜を片面あたり45〜50g/m2形成し、更に調質圧延を行った。この際、調質圧延の圧下荷重を調整して、表面における平坦部の面積率を40〜60%にした。
この合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、製造直後に防錆油を塗布することなく、硫酸第一鉄(2g〜5g/リットル)および酢酸ソーダ(20〜40g/リットル)を含む酸性溶液(pH=1.4、34℃)に浸漬し、ゴム製ロールを用いて溶液を絞った後、大気中で2〜7秒放置し、次いでスプレーにより水洗を実施した。さらにpH2〜3の硫酸第一鉄(30g〜50g/リットル)および酢酸ソーダ(30〜40g/リットル)を含む酸性溶液に2〜15秒間浸漬しゴム製ロールを用いて溶液を絞った後、大気中で2〜10秒放置し、水洗する処理を行った(処理X)。ここで、前段の酸性溶液処理は比較的大きい酸化物あるいは/および水酸化物を形成させ、後段の酸性溶液処理は、微細な酸化物あるいは/および水酸化物を大きい酸化物あるいは/および水酸化物の隙間へ形成させ、空隙の多い皮膜が作られる。前記処理Xの条件で、硫酸Zn(5g/リットル)、硫酸第一鉄を(220g/リットル)として、後段の酸性溶液処理を行わない処理を行った(処理Z)。なお、処理Xでは、処理液組成、浸漬時間および放置時間を変えて、皮膜の厚さと空隙率の異なる試料を作製した。また、処理X、Zを行っていない試料も作製した。
前記で得られた試料について下記の評価を行った。
(1)皮膜かさ厚さの評価
皮膜のかさ厚さは透過電子顕微鏡(TEM:フィリップス社製CM20FEG)の明視野像観察より行った。観察用試料は、めっき表面にカーボンコーターで表面保護カーボン層を付与したのち、集束イオンビーム加工(FIB)装置日立製FIB-2000により、めっき表面の平坦部から皮膜を含むめっき表面の断面試料を作製した。ジャストフォーカス(フォーカスを合わせた状態)と少しずらせたデフォーカス条件で明視野像を観察、写真撮影し、皮膜に平行に約10μmの長さの断面について、平均かさ厚さとかさ厚さのとなり合う皮膜厚さの極大値と極小値との比を求めた。膜厚の不均一さは、求めた極大値と極小値とのかさ厚さ比を平均することにより評価した。なお、平均かさ厚さやかさ厚さの極大値と極小値は、TEMの明視野像から、開口部の直径が300nm未満の凹部は該部分に皮膜があるものと想定して皮膜表面プロフィールを描いて、そのプロフィール曲線に基づいて求めた。かさ厚さの極大値と極小値は、プロフィール曲線で周期が300〜2000nmの範囲にあるものについて求めた。
(2)空隙率の評価
皮膜の空隙率は前記TEMとそれに装着したエネルギー分散型X線分光器(EDS:EDAX社製Phoenix)を用いて行った。観察用試料は、皮膜厚さ評価用と同じものである。EDSにより、めっき表面からカーボン保護層までを表面の断面方向に多点分析を行った。その際試料のドリフト修正機能を利用した。カーボン保護層のC-K強度および皮膜中のC-K X線強度をそれぞれ測定し、(1)式を用いて、皮膜の空隙率を評価した。
また、(1)式に代えて、(2)式を用いて、走査オージェ顕微鏡で評価した膜厚(平均物質厚さ)と前記(1)で述べたTEMにより評価した平均膜厚(平均かさ厚さ)の比によっても評価した。SAMによる皮膜厚さの評価には、PHI社製のSAM660を用いた。二次電子像により、めっき表面の平坦部を確認し、電子ビームを走査し、平坦部表面で約3μm×3μmの領域を測定した。加速電圧3kVのAr+イオンスパッタリングにより酸素の濃度がほぼ一定となる深さまでスパッタと測定を繰返し、検出されたの元素のピーク強度から相対感度因子補正により、各々の深さでの組成を求めた。処理層の厚さは、Oの濃度が、最大値より深い位置で、最大値と内部での一定となった値との和の1/2となるスパッタリング時間を、膜厚既知のSiO2膜で求めたスパッタレートをもとに深さに換算して求めた。なお、測定は1試料あたり最低3箇所の平坦部について実施し、その平均値とした。
(3)プレス成形性評価試験「摩擦係数測定試験」
プレス成形性を評価するために、各供試体の摩擦係数を、以下のようにして測定した。
図2は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。図2に示すように、供試体から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取付けられている。上記押付力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油として、日本パーカライジング社製ノックスラスト550HNを試料1の表面に塗布して試験を行った。
図3と図4は、使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押しつけられた状態で摺動する。ビード6の形状は、圧子Aが幅10mm、試料の摺動方向長さ12mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成されたもの、で試料が押付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有するもの(図3)と、低面圧条件の圧子Bが幅10mm、試料の摺動方向長さ59mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成されたもの、で試料が押付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ50mmの平面を有するもの(図4)、を用いた。摩擦係数測定試験は、以下に示す条件で行った。図3と図4に示すビードを用い、押付荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):100cm/minとした。この時、供試体とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
得られた結果を表1に示す。
Figure 2005226159
皮膜の平均空隙率が30%以上かつ平均かさ厚さAが20nm以上の本発明例1〜7は、未処理材(比較例1)や、平均かさ厚さAが20nm未満の比較例2、および平均空隙率が30%未満の比較例3よりも摩擦係数が低く潤滑性に優れることがわかる。また、空隙率の代わりに、平均かさ厚さAと平均物質厚さBの比A/Bで評価した場合、厚さ比A/Bが1.5以上のものは摩擦係数が低く潤滑性に優れることがわかる。さらに、皮膜の平均空隙率が50%以上の本発明例3〜7はより低い摩擦係数を有している。
本発明例2と3を比較すると、平均物質厚さBは同程度であるが、平均かさ厚さAが厚く、平均厚さ比A/Bが2以上の本発明例3のほうが、低い摩擦係数を有している。
となり合うかさ厚さの極大値と極小値の比の平均値が2以上で皮膜かさ厚さの不均一性が高い本発明例5〜7は、となり合うかさ厚さの極大値と極小値の比の平均値が2未満で比較的かさ厚さが均一な本発明例1〜4より、圧子Aで評価した低面圧条件での摩擦係数が低い。
表1には示していないが、本発明例における空隙の平均サイズは30nm〜100nm、面内の不均一周期は、250nm〜1700nmであった。なお、本発明例および比較例2の皮膜構成元素は、酸化物あるいは水酸化物で、Znを主体とし(酸素、炭素をのぞく元素の割合で60原子%以上)、その他にFeおよび微量のP、Sを含有していた。比較例3ではPは検出限界以下であった。
また、本発明例の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、求められるその他の性能、溶接性、接着性、鮮鋭性、および化成処理性は、未処理の比較例1と同等であった。
板厚0.8mmの冷延鋼板上に、常法により付着量が片面当り45〜50g/m2の合金化溶融亜鉛めっき層を形成した後、表面における平坦部の面積率が30〜60%になるように調質圧延を行った。引き続き、硫酸第一鉄(3g〜20g/リットル)および酢酸ソーダ(25g/リットル)とクエン酸(10g/リットル)を含む酸性溶液(pH=2.0、45℃)を鋼板表面にスプレーし、ただちにゴム製ロールで溶液を絞った後、10℃〜40℃の大気中で10〜25秒放置し、水洗の後ドライヤで乾燥することによる皮膜生成を行った(処理A)。pHは硫酸を添加することにより調節した。このとき、放置時の温度および放置時間を調節して、酸化物層の物質厚さ(生成酸化物量)を調節した。放置時の温度を高くし、放置時間を長くすることにより、物質厚さを厚くすることができる。また、処理液中の硫酸第一鉄濃度を変化させて酸化物層のかさ厚さを調節した。物質厚さが同程度であっても、硫酸第一鉄濃度を低くすることで酸化物層のかさ厚さを厚くすることができる。また、処理Aにおいて硫酸第一鉄の代わりに、硫酸ニッケル(5g〜25g/リットル)を添加した処理液(pH=1.5、40℃)用いて同様の処理を行った(処理B)。さらに処理Cとして、前記の調質圧延まで行った合金化溶融亜鉛めっきを脱脂したのち、反応性スパッタリング法によりめっき表面に酸化亜鉛層を形成させる処理を行った。金属Znターゲットを用いスパッタ中に酸素ガスを導入することで酸化Zn皮膜とした。処理時間を変化させて酸化層の厚さを変化させた。処理時間が長いほど酸化層は厚く形成される。
以上のように作製した試料について、実施例1で示した方法により、平均かさ厚さAと平均物質厚さBを測定し、皮膜の空隙率を平均かさ厚さAの平均物質厚さBに対する比として評価した。処理Aおよび処理Bにより形成される皮膜では、皮膜中空隙のサイズがTEM用に作製した薄い試料の厚み(200nm〜300nm)よりも大きいものが多くなるため、カーボン保護層のC-K強度を測定する方法で平均的な空隙率を評価することが困難になる。そのため、厚さ比による評価を採用した。
プレス成形性の指標としての実施例1と同様の装置を用い、図3のビード(圧子A)を用いた条件で摩擦係数を測定した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2005226159
物質厚さが20nm以上で、かつ厚さ比(平均かさ厚さA/平均物質厚さB)が1.5以上の本発明例1〜9は、低い摩擦係数を示しており、プレス加工性に優れることがわかる。特に、平均物質厚さが同程度で厚さ比が1.5よりも小さい比較例と厚さ比が1.5以上である本発明例(本発明例6、9と比較例3、本発明例4、8と比較例4、本発明例3と比較例5)を比較すると、本発明例は、平均物質厚さ(すなわち酸化物量)が同じ程度であっても厚さ比すなわち空隙率が高いことにより高い潤滑性を有することがわかる。さらに、厚さ比が1.5未満で平均物質厚さを100nm程度まで増加させた比較例6は摩擦係数が0.141であり、平均物質厚さがこれより薄い本発明例の摩擦係数のレベル、たとえば平均物質厚さが75nmの本発明例2の摩擦係数0.117に比べて劣ることから、単に酸化層を付与するだけでなく、酸化層の空隙率を増加させることがプレス加工性の向上に有効であることがわかる。また、実施例2の発明例は厚さ比が5以上であり、実施例1の発明例よりもと高い厚さ比であり、その結果、0.130以下の低い摩擦係数が安定して得られていることがわかる。
本発明の亜鉛系めっき鋼板は、プレス成形される自動車、家電製品などの用途に利用することができる。特に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板、および合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、優れたプレス成形性が求められている自動車用途に対して好適に利用できる。
本発明の皮膜を説明する断面模式図で、(a)は空隙を有する皮膜がかさ厚さの不均一を付与されている状態を説明する断面模式図、(b)は空隙を有する皮膜の空隙部分の形態の一例を説明する模式図で、(a)の点線部分(A部)を拡大して示した概略断面模式図である。 摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。 図2中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。 図2中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。
符号の説明
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール
11 めっき層
12 皮膜(空隙を有する皮膜)
13 空隙
N 押付荷重
F 摺動抵抗力
P 引張荷重

Claims (7)

  1. 亜鉛系めっき層を少なくとも鋼板の片面に有し、該亜鉛系めっき層の表面に平均かさ厚さ20nm以上、500nm以下、かつ平均の空隙率が30%以上の皮膜を有することを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
  2. 亜鉛系めっき層を少なくとも鋼板の片面に有し、該亜鉛系めっき層の表面に平均かさ厚さ20nm以上、500nm以下、かつ平均の空隙率が50%以上の皮膜を有することを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
  3. 亜鉛系めっき層を少なくとも鋼板の片面に有し、かつ該亜鉛系めっき層の表面に平均かさ厚さが平均物質厚さの1.5倍以上である皮膜を有することを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
  4. 請求項1〜3において、となり合う皮膜厚さの極大値と極小値の比の平均が2以上であることを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
  5. 請求項1〜4において、前記皮膜がZnおよびFeを含む酸化物および/または水酸化物であることを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
  6. 請求項1〜5において、前記亜鉛系めっき層は溶融亜鉛系めっき層であることを特徴とする、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
  7. 請求項6において、前記溶融亜鉛系めっき層は鉄-亜鉛合金めっき層であり、かつ該鉄-亜鉛合金めっき層はめっき面に平坦部を有し、該平坦部は、その表面に請求項1〜5記載の皮膜を有することを特徴とする、プレス成形性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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