JP2005223233A - 極異方性円筒状磁石成形用金型 - Google Patents

極異方性円筒状磁石成形用金型 Download PDF

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Abstract

【課題】成形される円筒状磁石の表面磁束密度分布を安価に調整することができる極異方性円筒状磁石成形用金型を得ることにある。
【解決手段】成形すべき極異方性円筒状磁石の材料を含むコンパウンドが充填される円筒状キャビティ10と、円筒状キャビティの内周側に設けられ、磁石材料を磁気的に配向させる配向用磁界発生部18,20と、円筒状キャビティの外周側に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する強磁性体より成る円筒状補助ヨーク16とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、極異方性円筒状磁石成形用の金型に関し、特に大きな配向磁界を必要とする希土類系磁石材料を用いて極異方性円筒状磁石を製造するための極異方性円筒状磁石成形用金型に関する。
一般に、磁石の使用形態としては、モータなどの動力用,センサなどの信号用,そして吸着などの雑貨用に分類される。円筒状磁石は、動力用や信号用としての使用が多い。動力用の円筒状磁石は、通常4〜8極の多極着磁を行って用いられる。また、センサ用の円筒状磁石は、通常4極以上の多極着磁を行って用いられる。
モータ用円筒状磁石に要求される特性は多岐であるが、例えば高トルク,低振動,高効率などがあげられる。モータの高トルク化には、磁石体積を増す,高特性の磁石を用いるなどで対応できる。一方、モータを高トルク化することで回転時に発生する振動は大きくなる。モータを低振動化するための方法には、例えばモータの鋼板の積層を回転して行うスキュー,磁石の着磁角度を軸方向に対して少しずらしたスキューなどがある。しかしながら、これらは磁石のトルクを低下させる要因となる。他のモータ低振動化の方法に、磁石の表面磁束波形を正弦波に近づける方法がある。この方法は、同時に磁界の高調波成分を低下でき、モータの更なる効率アップにもつながるため、近年多く用いられるようになってきている。
上記の円筒状磁石を作製する方法として、磁石粉と熱可塑性樹脂とを混練したコンパウンドを、金型キャビティ内に射出成形する方法がある。このとき用いる成形用金型は、成形すべき磁石の極数に合わせて配向用磁石特性を生かせる配向用磁界分布を構成する必要がある。
極異方性円筒状磁石の成形用金型としては、磁石として電磁石(たとえば特開昭54−23997号公報),または永久磁石(たとえば特開昭64−32611号公報)を用いる2種類がある。このうち電磁石を用いる方法は、電磁石のコイル位置等の問題からキャビティ1つ当たりに必要な体積が大きくなることから、製品の多数個取りができないという欠点がある。一方、永久磁石を用いたものは、金型を比較的小型に構成できることから製品の多数個取りが可能であるが、標準型配置(永久磁石の磁極が半径方向に交互に現れる配置)および反発型配置(永久磁石の磁極が円周方向に現れ同じ磁極が対向するような配置)のいずれの場合においても、十分な磁気特性を持つ製品が得られなかった。その原因には、キャビティ内磁界が小さく、着磁の際に特に配向に大きな磁界を必要とする希土類系磁石材料を用いた成形では、配向に十分な磁界が得られないこと、永久磁石と成形体との間に存在するスリーブの厚さを、強度上0.5mm程度以下まで十分薄くできないことなどが挙げられる。
永久磁石を用いた極異方性円筒状磁石成形用の金型の上記欠点を解消するものとして、特開昭61−125011号公報では、金型の円筒状キャビティの周囲に半径方向に磁気異方性を付与した永久磁石を多数配置し、円筒状キャビティの表面にN極とS極とを交互に配置した金型が提案されている。
さらに、特開平5−144649号公報では、上記課題を解決して成形磁石の磁気特性の向上を図る手段として、N極,S極いずれかの磁極がキャビティ面に対向する向きでかつ各領域の隣接相互間で極性を互いに逆として密接配置すると共に、永久磁石の外周に強磁性材料のバックヨークを配置した金型構造が提案されている。
特開昭54−23997号公報 特開昭64−32611号公報 特開昭61−125011号公報 特開平5−144649号公報
特開平5−144649号公報等で紹介されている構造の成形用金型で円筒状磁石成形を行った場合、キャビティ内のコンパウンドの透磁率は、空間の透磁率と同じではなく通常高いために、配向用磁石からの磁束はキャビティに集中した構成となり、多極着磁され成形された円筒状磁石の表面磁束密度の大きさを計測して得られる波形は歪み、例えば三角波状となる。この様に表面磁束密度波形が三角波状を有する磁石を用いてモータを構成した場合、発生トルクの低下やコギングトルクの増加を招くことがわかってきている。
また、モータによっては大きなトルクを得るために、表面磁束密度波形を矩形状にする必要があるが、従来方法で矩形状波形を得ることは困難があった。
上記のように、所望のモータ性能に適した成形円筒状磁石を得るためには、円筒状磁石の表面磁束密度波形を調整する必要があるが、その方法としては、配向用磁石を複雑な形状に加工,配置する方法があげられる。しかし、実際には、加工が困難である、加工誤差や配置誤差等が生じる、金型が高価になるといった問題が生じる。加えて、表面磁束密度波形調整のために配向用磁石を修正することは非常に困難で、再度始めから作り直す必要が生じる。この場合はコストもさることながら、長い作製期間を要するという問題があった。
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、配向用磁石を修正することなく、さらに配向用磁石のパーミアンスを低下することなく、成形される円筒状磁石の表面磁束密度分布を安価に調整することができ、成形される円筒状磁石のコストダウンに加えて開発時間を著しく短縮することができる極異方性円筒状磁石成形用金型を得ることにある。特に、着磁の際に大きな配向磁界を必要とする希土類系磁石材料を用いて極異方性円筒状磁石を製造するための極異方性円筒状磁石成形用金型を得ることにある。
本発明者等は、成形すべき極異方性円筒状磁石の材料を含むコンパウンドが充填される円筒状キャビティを有し、円筒状キャビティの内周側あるいは外周側に、コンパウンドを磁気的に配向させる配向用磁界発生部を設けた構造の金型において、強磁性体よりなる円筒状補助ヨークを、円筒状キャビティの外周側あるいは内周側に設けることで、容易に極異方性円筒状磁石の表面磁束密度波形を調整することができることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明の第1の態様の極異方性円筒状磁石成形用金型によれば、成形すべき極異方性円筒状磁石の材料を含むコンパウンドが充填される円筒状キャビティと、前記円筒状キャビティの内周側に設けられ、前記磁石材料を磁気的に配向させる配向用磁界発生部と、前記円筒状キャビティの外周側に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する強磁性体より成る円筒状補助ヨークとを備える。
前記配向用磁界発生部は、断面が長方形あるいは扇形の平板型の磁石と、磁性材料より成り断面が扇形の平板型のセンターヨークとが、平板面を密接させて交互に配置されるとともに、前記磁石はN極,S極の磁極が平板面に現れるように配向されており、前記各センターヨークの両方の平板面に密接する2個の磁石は、同じ極性の磁極が前記各センターヨークの両方の平板面に対向するように配置されている、円筒状磁石構造体と、前記円筒状キャビティの内周側に設けられ、前記円筒状磁石構造体を覆う非磁性材料より成る円筒状スリーブとを有するのが好適である。
また、前記配向用磁界発生部は、N極,S極の磁極が平板面に現れるように配向された、断面が扇形の平板型の第1の磁石と、N極またはS極の磁極が円筒状キャビティ側の面に現れるよう、平板面に略平行に配向された、断面が扇形の平板型の第2の磁石とが、平板面を密接させて交互に配置されるとともに、前記各第2の磁石の両方の平板面に密接する2個の第1の磁石は、前記第2の磁石の円筒状キャビティ側の面に現れる磁極と同じ極性の磁極が、前記第2の磁石の両方の平板面に対向するように配置されている、円筒状磁石構造体と、前記円筒状キャビティの内周側に設けられ、前記円筒状磁石構造体を覆う非磁性材料より成る円筒状スリーブとを有するのが好適である。
上記第1の態様の極異方性円筒状磁石成形用金型では、前記磁石を、永久磁石とするのが好適である。永久磁石の材質には特に制限はないが、例えば特性の高いNd−Fe−B焼結磁石や、Sm−Co焼結磁石が好ましい。特にNd−Fe−B焼結磁石は、Sm−Co焼結磁石に比べて加工性がよいため、加工精度,組立精度が要求される場合にはより好ましいが、この材料を選択する場合には熱による減磁に注意を払う必要がある。
スリーブの材質である非磁性材料は、特に限定されないが、SUS304で代表されるオーステナイト系ステンレス鋼やIPM75のような時効処理鋼が用いられ、硬度の高いものが好ましく、焼き入れや表面処理等により表面の硬度を上げて用いるとより好ましい。
また、本発明の第2の態様の極異方性円筒状磁石成形用金型によれば、成形すべき極異方性円筒状磁石の材料を含むコンパウンドが充填される円筒状キャビティと、前記円筒状キャビティの外周側に設けられ、前記磁石材料を磁気的に配向させる配向用磁界発生部と、前記円筒状キャビティの内周側に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する強磁性体よりなる円筒状補助ヨークとを備える。
配向用磁界発生部は、断面が長方形の複数の磁石であって、N極またはS極の磁極が円筒状キャビティの外周面側に交互に現れるように、平板面に略平行に配向された複数の磁石が、非磁性材料より成る保持体内に埋込まれた円筒状磁石構造体と、前記円筒状磁石構造体の外周面に設けられた強磁性体より成る円筒状バックヨークと、前記円筒状磁石構造体の内周面に設けられ、非磁性材料より成る円筒状スリーブとを有する。
上記第2の態様の極異方性円筒状磁石成形用金型では、前記磁石を、永久磁石または電磁石で構成することができる。
また、センターヨーク,補助ヨーク,バックヨーク等の強磁性体としては、特に限定されることはないが、S50C等の普通鋼や,SKD11等のダイス鋼など飽和磁化が大きいものが好ましい。
上記第1および第2の態様の極異方性円筒状磁石成形用金型では、補助ヨークの円筒状キャビティ側の内周面あるいは外周面に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する非磁性材料より成るスペーサをさらに備えるのが好適である。希土類系磁石材料を用いた成形円筒状磁石では、材料が高価であることから、成形円筒状磁石は厚さが極力薄くなるように設計される。この場合、希土類系磁石材料の透磁率が高いため、この材料を含むコンパウンドが金型のキャビティ内に充填されたときは、キャビティ内に磁束が集中する傾向となる。キャビティの外側もしくは内側に設けたスペーサは、強磁性体補助ヨークとの構成でコンパウンドが充填されたキャビティ内の磁束の集中を防ぎ、磁束を調整する役割を果たす。
スペーサの厚さは、配向用磁石の構成、成形する磁石材料、成形する円筒状磁石の厚さ,極数により適時設計すればよい。また、スペーサの非磁性材料には、SUS304で代表されるオーステナイト系ステンレス鋼や、IPM75のような時効処理鋼を用いることができ、硬度の高いものが好ましく、焼き入れや表面処理等により表面の硬度を上げて用いても構わない。
成形する磁石材料がフェライト系の場合は、材料単価が安価であり、成形円筒状磁石の極幅に対して十分な厚さが確保できるよう設計されることや、およびフェライト系磁石材料の透磁率が比較的低いため、コンパウンドが充填されたキャビティ内では空間と類似磁界分布となることから、スペーサは特に必要としないこともある。また、スペーサは、目的とする成形円筒状磁石の表面磁束密度波形によっては使用しなくてもよい。成形円筒状磁石の磁極間隔にもよるが、一般にはスペーサがない場合の成形磁石の表面磁束密度波形は、台形から矩形となる傾向にある。
本発明の極異方性円筒状磁石成形用金型は、金型の配向用磁石に修正を加えることなく、さらに配向用磁石のパーミアンスを低下することなく、円筒状キャビティとを挟んで配向用磁石と反対側に強磁性体の円筒状補助ヨークを設けることによって、キャビティ内に充填された磁石材料へ集中する磁束を制御することが可能となり、成形される極異方性円筒状磁石の表面磁束密度分布を容易に調整することができ、円筒状磁石のコストダウンに加えて開発時間を著しく短縮することができるので、工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の極異方性円筒状磁石成形用金型の実施例を詳細に説明する。
図1は、本発明による極異方性円筒状磁石成形用の金型であって、12極の内周磁石配置型金型の断面図である。
この金型は、成形すべき極異方性円筒状磁石の材料であるコンパウンドが充填される円筒状キャビティ10を有している。円筒状キャビティ10の内周側に、配向用磁界発生部を設ける。この磁界発生部は、複数に分割した各扇形領域に配置した永久磁石20とセンターヨーク18とが交互に配列された円筒状磁石構造体と、この円筒状磁石構造体の外周面を覆う円筒状の非磁性体のスリーブ12とで構成される。他方、円筒状キャビティ10の外周に沿って、非磁性体の円筒状スペーサ14が設けられ、さらにこのスペーサ14の外周面を覆うように強磁性体の円筒状補助ヨーク16が設けられている。
磁界発生部を構成するセンターヨーク18および永久磁石20は、それぞれ断面が扇形の平板状であり、径方向に同じ長さを有している。図2に、永久磁石20の斜視図を示す。図2に示す平板状の永久磁石において、長手方向の側面を平板面と言うものとする。この永久磁石は、N極,S極の磁極が平板面22に現れるように配向されている。
センターヨーク18も、永久磁石20と同一形状であり、長手方向の側面を、永久磁石と同様に、平板面と言うものとする。
これら永久磁石20とセンターヨーク18とは、互いの平板面を隣接して交互に密接配置される。この場合において、センターヨークの両方の平板面に密接する2個の永久磁石は、同じ極性の磁極が各センターヨークの両方の平板面に対向するように配置されている。図1において、センターヨーク18aの両隣りの永久磁石20はN極が対向し、センターヨーク18bの両隣りの永久磁石20はS極が対向している。このような構成の円筒状磁石構造体において、中心部24は、空胴または非磁性材料のコアとすることができる。
本実施例の構成の極異方性円筒状磁石成形用金型において、配向用磁界は磁界発生部により生じる。センターヨーク18の両側に配した永久磁石20の起磁力は、センターヨーク18を磁気的に飽和するのに十分な磁束を発生することが望ましい。センターヨーク18が十分飽和に達すると、1600kA/m(20kG)以上の磁界を得ることもでき、高い透磁率を有する希土類系磁石材料を用いたコンパウンドを射出成形する場合により有効である。
永久磁石20の起磁力によりセンターヨーク18に生じた磁束は、キャビティ10内に充填されたコンパウンドに集中しようとするが、キャビティ10の外周側に設けた補助ヨーク16にも集中しようとする。ここで、キャビティ10と補助ヨーク16との間に設けた非磁性材からなるスペーサ14の厚さを変更することで、キャビティ10から補助ヨーク16への配向磁界分布を制御することが可能となる。
成形すべき極異方性円筒状磁石の極数にもよるが、キャビティ10の内外径差が1〜4mm程度と小さい場合、すなわち円筒状成形磁石の厚さが薄い場合には、スペーサ14の厚さを適当に選択することで、成形磁石の表面磁束密度分布波形を正弦波とすることも可能となる。成形磁石の厚さに対する1極当たりの極幅の比が0.2以下で成形磁石の表面磁束密度分布波形を正弦波としたい場合には、スペーサ14は必要である。
図1では、永久磁石20の断面形状が扇形である例を示したが、断面形状が長方形やキャビティ側にテーパーを設けた構造等でも構わない。加工コストや組立を考慮して、断面形状は長方形が一般的である。図3は、永久磁石の断面形状が長方形の場合の構成を示す。図中、この永久磁石を26で示す。その他の構成は、図1と同じであり、図1と同一の構成要素には、同一の参照番号を付して示す。
また、図1および図3では、センターヨークと永久磁石の径方向長さは同じとしているが、永久磁石の径方向長さがセンターヨークの径方向長さよりも長い構成としたほうが、センターヨークに磁束が集中するので好ましい。図1の構成において、センターヨークの径方向長さを短くした例を、図4に示す。図中、センターヨークを28で示す。
図1,図3,図4に示した永久磁石の配向方向は、センターヨークの平板面に対して90度となるような方向である。配向方向はこれに限るものではなく、センターヨークの平板面に対して100度,120度等の角度を設けてもよい。永久磁石の配向方向については、キャビティ内で十分な配向用磁界が得られれば、いずれの角度であっても構わない。
図1の構成の金型において、一例として、円筒状キャビティ10の寸法は、内径36mm,外径42mm,長さ40mmとし、センターヨーク18と補助ヨーク16は強磁性炭素鋼S45Cを、円筒状スリーブ12および円筒状スペーサ14は常磁性ステンレス鋼SUS304を、永久磁石20は352kJ/m(44MGOe)級のNd−Fe−B焼結磁石をそれぞれ加工して組み込んだ。円筒状スペーサ14の厚さは0.5mm、円筒状補助ヨーク16の厚さは2mmとした。
この極異方性円筒状磁石成形用金型を母型に組み込み、住友金属鉱山(株)製Sm−Fe−N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS3A−12M)を原料に、シリンダー温度を210〜260°C、金型温度60〜80°Cで、射出成形円筒状磁石を作製した。
得られた円筒状磁石の表面磁束密度分布を測定したところ、図9の実施例1に示すようにピーク値は0.24T(2.4kG)であった。さらにピーク値で規格化した表面磁束密度分布は、図10に示すように正弦波に非常に近い特性であった。
図5は、本発明による極異方性円筒状磁石成形用金型であって、12極の内周配置型金型の断面図である。
図1の構成の金型において、センターヨーク18を、断面が扇形の平板状の永久磁石で置き換えたものである。図5に、この永久磁石を30で示す。図1と同一の構成要素には、同一の参照番号を付して示す。
永久磁石30は、N極,S極の磁極が円筒状キャビティ側の面に現れるよう、平板面に平行に配向されている。
永久磁石20と30とは、互いに平板面を隣接して交互に密接配置するとともに、永久磁石30は、永久磁石30の円筒状キャビティ側の面に現れる磁極と同じ磁極が現れている永久磁石20の平板面と密接して挟まれて配置されている。
図5において、永久磁石30aの円筒状キャビティ側の面に現れる磁極はN極であり、両隣りの永久磁石20は、N極が現れている平板面が永久磁石30aに接している。また、永久磁石30bの円筒状キャビティ側の面に現れる磁極はS極であり、両隣りの永久磁石20は、S極が現れている平板面が永久磁石30aに接している。
実施例2の磁界発生部によれば、永久磁石30の両側の永久磁石20は、永久磁石30のパーミアンスを上げて、キャビティ10に大きな配向用磁界を生み出す。したがって、本実施例の磁界発生部は、図1に示した磁界発生部において、永久磁石20だけでは十分な大きさの配向磁界が得られない、あるいはセンターヨーク18を励磁するだけの十分な起磁力を作り出す永久磁石のスペースがない場合に有効である。また、成形される円筒状磁石の極数が多い場合に有効な構成である。
永久磁石30と永久磁石20の断面形状は、図5ではいずれも扇形としたが、加工性,組立性の観点から、いずれか一方を長方形としてもよい。
また、永久磁石30をなくして適当な配向角度を有する永久磁石20のみで構成することもできる。この場合はさらにスペースを小さくすることができるが、あまり大きな配向用磁界は期待できない。いずれも実施例1と同様にキャビティ10内で十分な配向用磁界が得られれば特に構成は問わない。
補助ヨーク16およびスペーサ14の機能は、実施例1と同様であるので、再度の説明は行わない。
図5の金型の構成において、一例として、円筒状キャビティ10の寸法は、内径36mm,外径42mm,長さ40mmとし、補助ヨーク16は強磁性炭素鋼S45Cを、スリーブ12およびスペーサ14は常磁性ステンレス鋼SUS304を、永久磁石30および20は352kJ/m(44MGOe)級のNd−Fe−B焼結磁石を、それぞれ加工して組み込んだ。円筒状スペーサ14の厚さは0.5mm、円筒状補助ヨーク16の厚さは2mmとした。
この極異方性円筒状磁石成形用金型を母型に組み込み、住友金属鉱山(株)製Sm−Fe−N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS3A−12M)を原料に、シリンダー温度を210〜260°C、金型温度60〜80°Cで射出成形円筒状磁石を作製した。
得られた円筒状磁石の表面磁束密度分布を測定したところ、図9の実施例2に示すようにピーク値は0.26T(2.6kG)であった。さらにピーク値で規格化した表面磁束密度分布は、図10に示すように正弦波に非常に近い特性であった。
(比較例1)
図6は、実施例2の金型において補助ヨーク16を無くして、その部分を非磁性体のスペーサ32にし、それ以外は実施例1と同じ構成の極異方性円筒状磁石成形用金型を示す。この金型を母型に組み込み、住友金属鉱山(株)製Sm−Fe−N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS3A−12M)を原料に、シリンダー温度を210〜260°C、金型温度60〜80°Cで射出成形円筒状磁石を作製した。
得られた円筒状磁石の表面磁束密度分布を測定したところ、図9の比較例1に示すようにピーク値は0.26T(2.6kG)と実施例1の場合と同等であったが、ピーク値で規格化した表面磁束密度分布は、図10に示すように正弦波から歪んでやせた形状であった。
以上のことから、補助ヨーク16の存在が、表面磁束密度分布を正弦波にしていることがわかる。
実施例2において、スペーサ12を無くし、他は実施例2と同じ構成で異方性射出成形用金型を作製した。
この金型を母型に組み込み、住友金属鉱山(株)製Sm−Fe−N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS3A−12M)を原料に、シリンダー温度を210〜260°C、金型温度60〜80°Cで射出成形円筒状磁石を作製した。
得られた円筒状磁石の表面磁束密度分布を測定したところ、図9の実施例3に示すようにピーク値は0.22T(2.2kG)であった。さらにピーク値で規格化した表面磁束密度分布は、図10に示すように正弦波に非常に近い特性であった。
本発明の構成は、外周磁石配置型金型に対しても適用できる。図7は、本発明による極異方性円筒状磁石成形用金型であって、8極の外周磁石配置型金型の断面図である。
配向用磁界発生部は、非磁性材料より成る円筒状の磁石保持体34内に形成された凹部内に埋込まれた永久磁石36と、保持体34の外周に設けられたバックヨーク38と、保持体34の内周に設けられたスリーブ40とで構成される。
キャビティ10の内周側には、円筒状補助ヨーク42と円筒状スペーサ44とが設けられている。補助ヨーク42の中心部46は、空胴または非磁性材料のコアとすることができる。
以上の構成において、キャビティ10の寸法は、外径40mm,内径36mm,長さ40mmとし、バックヨーク38と補助ヨーク42はS45Cを、スリーブ40およびスペーサ44はSUS304を、永久磁石36は352kJ/m(44MGOe)級のNd−Fe−B焼結磁石を、それぞれ加工して組み込んだ。スペーサ44の厚さは2mm、補助ヨーク42の厚さは6mmとした。
この極異方性円筒状磁石成形用金型を母型に組み込み、住友金属鉱山(株)製Sm−Fe−N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS3A−12M)を原料に、シリンダー温度を210〜260°C、金型温度60〜80°Cで射出成形円筒状磁石を作製した。
得られた円筒状磁石の表面磁束密度分布を測定したところ、図11の実施例4に示すように、ピーク値は0.13T(1.3kG)の正弦波状の波形を得た。
本実施例において、非磁性材料から成るスペーサ44は、目的とする成形円筒状磁石の表面磁束波形によっては無くても構わない。成形円筒状磁石の磁極間隔にもよるが、スペーサ44がない場合の成形磁石の表面磁束密度分布波形を、台形から矩形とすることができる。
なお、本実施例の外周磁石配置型金型では、磁石がキャビティの外周側に設けられているため、内周磁石配置型金型に較べて、磁石を設けるスペースが大きい。したがって、永久磁石に代えて電磁石を用いることもできる。
(比較例2)
図8は、図7の実施例4で補助ヨーク42を無くして、その部分を非磁性材料から成る内側コア48にし、それ以外は実施例4と同じ構成の金型を示す。この金型を母型に組み込み、住友金属鉱山(株)製Sm−Fe−N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS3A−12M)を原料に、シリンダー温度を210〜260°C、金型温度60〜80°Cで射出成形円筒状磁石を作製した。
得られた磁石の表面磁束密度分布を測定したところ、図11の比較例2に示すようにピーク値は0.13T(1.3kG)と実施例4の場合と同等であったが、表面磁束密度分布の形状は図11に示すように正弦波から歪んでやせた形状であった。このことから、補助ヨーク42の存在が、表面磁束密度分布を正弦波にしていることがわかる。
また、図8の金型の構成では、キャビティ10の磁界は、永久磁石36より生じる磁界(磁束密度)以上にすることはできないため、既存の永久磁石では高々1040kA/m(13kG)程度しか得られない。
また、図8の金型の配向用磁石構成では、永久磁石36より生じる磁束は、キャビティ10内に充填されたコンパウンドが磁気的に飽和するまでキャビティ10に集中するため、キャビティ10内の配向制御が困難である。
本発明の極異方性円筒状磁石成形用金型の実施例1の断面図である。 永久磁石の斜視図である。 図1の金型の変形例を示す断面図である。 図1の金型の変形例を示す断面図である。 本発明の極異方性円筒状磁石成形用金型の実施例2の断面図である。 比較例1の極異方性円筒状磁石成形用金型の断面図である。 本発明の極異方性円筒状磁石成形用金型の実施例4の断面図である。 比較例2の極異方性円筒状磁石成形用金型の断面図である。 本発明の実施例1,2,3および比較例1で得られた成形磁石の表面磁束密度分布を示すグラフである。 本発明の実施例1,2,3および比較例1で得られた成形磁石のピーク磁束密度で規格化した表面磁束密度分布を示すグラフである。 本発明の実施例4および比較例2で得られた成形磁石の表面磁束密度分布を示すグラフである。
符号の説明
10 キャビティ
12,40 スリーブ
14,44 スペーサ
16,32,42 補助ヨーク
18,28 センターヨーク
20,26,30,36 永久磁石
22 平板面
24,46,48 非磁性体コア
34 磁石保持体
38 バックヨーク

Claims (9)

  1. 成形すべき極異方性円筒状磁石の材料を含むコンパウンドが充填される円筒状キャビティと、
    前記円筒状キャビティの内周側に設けられ、前記磁石材料を磁気的に配向させる配向用磁界発生部と、
    前記円筒状キャビティの外周側に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する強磁性体より成る円筒状補助ヨークと、
    を備える極異方性円筒状磁石成形用金型。
  2. 前記配向用磁界発生部は、
    断面が長方形あるいは扇形の平板型の磁石と、磁性材料より成り断面が扇形の平板型のセンターヨークとが、平板面を密接させて交互に配置されるとともに、前記磁石はN極,S極の磁極が平板面に現れるように配向されており、前記各センターヨークの両方の平板面に密接する2個の磁石は、同じ極性の磁極が前記各センターヨークの両方の平板面に対向するように配置されている、円筒状磁石構造体と、
    前記円筒状キャビティの内周側に設けられ、前記円筒状磁石構造体を覆う非磁性材料より成る円筒状スリーブと、
    を有する請求項1に記載の極異方性円筒状磁石成形用金型。
  3. 前記配向用磁界発生部は、
    N極,S極の磁極が平板面に現れるように配向された、断面が扇形の平板型の第1の磁石と、N極またはS極の磁極が円筒状キャビティ側の面に現れるよう、平板面に略平行に配向された、断面が扇形の平板型の第2の磁石とが、平板面を密接させて交互に配置されるとともに、前記各第2の磁石の両方の平板面に密接する2個の第1の磁石は、前記第2の磁石の円筒状キャビティ側の面に現れる磁極と同じ極性の磁極が、前記第2の磁石の両方の平板面に対向するように配置されている、円筒状磁石構造体と、
    前記円筒状キャビティの内周側に設けられ、前記円筒状磁石構造体を覆う非磁性材料より成る円筒状スリーブと、
    を有する請求項1に記載の極異方性円筒状磁石成形用金型。
  4. 前記円筒状補助ヨークの円筒状キャビティ側の内周面に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する非磁性材料より成るスペーサをさらに備える、請求項2または3に記載の極異方性円筒状磁石成形用金型。
  5. 前記磁石は永久磁石である、請求項2,3または4に記載の極異方性円筒状磁石成形用金型。
  6. 成形すべき極異方性円筒状磁石の材料を含むコンパウンドが充填される円筒状キャビティと、
    前記円筒状キャビティの外周側に設けられ、前記磁石材料を磁気的に配向させる配向用磁界発生部と、
    前記円筒状キャビティの内周側に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する強磁性体よりなる円筒状補助ヨークと、
    を備える極異方性円筒状磁石成形用金型。
  7. 前記配向用磁界発生部は、
    断面が長方形の複数の磁石であって、N極またはS極の磁極が円筒状キャビティの外周面側に交互に現れるように、平板面に略平行に配向された複数の磁石が、非磁性材料より成る保持体内に埋込まれた円筒状磁石構造体と、
    前記円筒状磁石構造体の外周面に設けられた強磁性体より成る円筒状バックヨークと、
    前記円筒状磁石構造体の内周面に設けられ、非磁性材料より成る円筒状スリーブと、
    を有する請求項6に記載の極異方性円筒状磁石成形用金型。
  8. 前記補助ヨークの円筒状キャビティ側の外周面に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する非磁性材料より成るスペーサをさらに備える、請求項7に記載の極異方性円筒状磁石成形用金型。
  9. 前記磁石は、永久磁石または電磁石である請求項6,7または8に記載の極異方性円筒状磁石成形用金型。
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