JP2005218439A - 核酸検出用チップ - Google Patents

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Abstract

【課題】 標的核酸の検出に用いられる検査用チップの提供。
【解決手段】 液体サンプルから標的核酸を検出するための検査用チップであって、
支持体、前記支持体上に設けられたサンプル導入部、ならびに前記支持体の内部または表面上に位置する、標的核酸を増幅するための増幅試薬が固定化された検査領域を少なくとも含んでなる、検査用チップ。
【選択図】 なし

Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、遺伝子検査において、サンプルからの標的核酸の検出に用いることのできる核酸検出用チップに関する。
背景技術
遺伝子検査は疾患または障害の診断方法として有効であり、様々な技術が臨床の場において実用化されている。このような技術としては、遺伝子をクローニングする方法、サザンブロッティング法、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の核酸増幅法、ハイブリダイゼーション法などを利用するものが知られている。
上述のような方法には、一般的に、複数の複雑な工程が含まれる。例えば、サザンブロッティング法では、サンプルを前処理した後に電気泳動によってDNAを分離し、これを検出する必要がある。PCR法では、サンプルを前処理した後に核酸増幅反応を行ない、反応産物を電気泳動した後に増幅産物を検出する必要がある。ハイブリダイゼーション法では、サンプル中に含まれる核酸を熱処理またはアルカリ処理によって変性させて一本鎖とした後に、この一本鎖核酸を固相担体上に固定化し、固定化された核酸と標識プローブとのハイブリダイゼーションを行なう必要がある。
また、これらの工程は、通常、複数の容器または装置を用いて行われており、実験室内の複数の領域において行なわれることも多い。従って、遺伝子検査においては、生物学的サンプルや試薬を他の容器に移したり、または他の領域に輸送する必要があるため、他の臨床サンプルや増幅産物によるサンプルの汚染、ならびにサンプルの飛散、エアロゾル化等による他のサンプルの汚染が問題となっている。さらに、サンプルにはいかなる病原体が含まれているか不明であるため、その取り扱いには十分に注意する必要がある。また、遺伝子検査は、特殊かつ高価な器具および装置を用いて行なわれることが多い。さらに、多くのサンプルを同時に処理する場合には、サンプルを取り違える可能性もある。
従来、これらの問題点を解決するためにいくつかの試みがなされてきた。例えば、米国特許第5229297号明細書(特許文献1)には、サンプル、増幅用試薬および廃物部を連結する通路からなる遺伝子増幅および検出のためのキュベットが記載されている。これは、ローラーという特殊な装置を用いて、サンプルを一定方向に圧搾・圧迫していくことにより、サンプルおよび検出試薬を隔離していた隔壁が破れ、これらの混合物が通路を通って検出部、さらには廃物部へ押し出されるように構成されている。このキュベットを用いた核酸の検出には、特殊で複雑な手段および容器を使用する必要がある。
国際公開第95/11083号パンフレット(特許文献2)には、核酸増幅アッセイに用いられる使い捨て反応チューブが記載されている。この反応チューブは、密閉するための蓋が貫通可能なものとされており、これにより、増幅反応の後にピペッターを蓋に貫通させ、蓋を開けることなくサンプルを検出部に移動させることが可能となる。この反応チューブは、サンプルの飛散およびエアロゾルの発生による他のサンプルへの汚染を防止し、さらには、偽陽性の可能性も低減するが、サンプル中に含まれる病原体の感染の危険性、操作の複雑性、特殊な装置の必要性などは排除していない。
最近では、等温での反応により標的核酸を増幅する方法、例えば、ICAN法(特許文献3:国際公開第02/16639号パンフレット)、LAMP法(特許文献4:国際公開第00/28082号パンフレット)などを利用して標的核酸を検出するための検査用キットが市販されている。これらのキットを用いた核酸の検出では、サンプルを前処理する必要があり、また、核酸増幅反応を行なった後に、反応溶液をクロマトグラフ用基材で展開する必要がある。
米国特許第5229297号明細書 国際公開第95/11083号パンフレット 国際公開第02/16639号パンフレット 国際公開第00/28082号パンフレット
発明の概要
本発明者らは、支持体上に標的核酸を増幅するための増幅試薬を固定化したチップを用いることにより、液体サンプル中に存在する前記標的核酸を検出しうることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
従って、本発明の目的は、標的核酸の検出に用いられる検査用チップを提供することにある。
そして、本発明による検査用チップは、液体サンプルから標的核酸を検出するための検査用チップであって、支持体、前記支持体上に設けられたサンプル導入部、ならびに前記支持体の内部または表面上に位置する、標的核酸を増幅するための増幅試薬が固定化された検査領域を少なくとも含んでなるものである。
本発明によれば、サンプルからの標的核酸の検出を迅速かつ簡便に行なうことが可能となり、これにより、生物学的実験に精通していない者であっても、家庭やベッドサイドにおいて容易に遺伝子検査を行なうことが可能となる。また、本発明による検査用チップは使い捨てとすることができるため、他のサンプルによる汚染を防止することが可能となる。
発明の具体的説明
本発明による検査用チップは、まず、標的核酸を増幅するための増幅試薬が固定化された検査領域を含んでなり、該検査領域は、支持体の内部または表面上に配置される。この検査領域に含まれる試薬は特に制限されるものではなく、当業者に知られている様々な核酸増幅法を実行可能なものとすることができる。増幅試薬の組成は、利用する核酸増幅法に応じて、当業者であれば適宜決定することができる。
本発明において「標的核酸」または「標的核酸配列」とは、増幅しようとする核酸またはその配列そのものだけでなく、これに相補的な配列または該配列を有する核酸をも意味する。
核酸増幅法は、サンプルより抽出された核酸(すなわち、RNAまたはDNA)を含む溶液から目的とする標的核酸を増幅させうる方法であればよく、このような方法としては様々なものが知られている(一般的には、D.KwohとT.Kwoh, Am. Biotechnol. Lab. 8, 14-25, 1990を参照されたい)。適切な核酸増幅法としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法;米国特許第4683195号明細書、米国特許第4683202号明細書、米国特許第4800159号明細書および米国特許第4965188号明細書)、逆転写PCR法(RT−PCR法;Trends in Biotechnology 10, pp146-152, 1992)、リガーゼ連鎖反応法(LCR法;欧州特許出願公開第0320308号明細書、R.Weiss, Science 254, 1292, 1991)、鎖置換増幅法(SDA法;G.Walkerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 392-396, 1992;G.Walkerら, Nucleic Acids Res. 20, 1691-1696, 1992)、転写に基づく増幅法(D.Kwohら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 1173-1177, 1989)、自己維持配列複製法(3SR法;J.Guatelliら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 1874-1878, 1990)、Qβレプリカーゼ法(P.Lizardiら, BioTechnology 6, 1197-1202, 1988)、核酸配列に基づく増幅法(NASBA法;R.Lewis, Genetic Engineering News 12(9), 1, 1992)、修復鎖反応法(RCR法;R.Lewis, Genetic Engineering News 12(9), 1, 1992)、ブーメランDNA増幅法(BDA法;R.Lewis, Genetic Engineering News 12(9), 1, 1992)、LAMP法(国際公開第00/28082号パンフレット)、ICAN法(国際公開第02/16639号パンフレット)などが挙げられる。
例えば、PCR法では、通常、熱安定性DNAポリメラーゼ、標的核酸の両端のヌクレオチド配列に基づいて設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマー、dNTPなどを含む緩衝液が用いられる。従って、PCR法を利用する場合には、前記検査領域はこれらの試薬を含むものとされる。PCR法では、鋳型となる二本鎖核酸の一本鎖核酸への解離(変性)、一本鎖核酸へのプライマーのアニーリング、およびプライマーからの相補鎖合成(伸長)の3つの段階からなる反応を繰り返すことにより、DNAからの標的核酸の増幅が可能とされる。この方法では、反応溶液を上記3段階のそれぞれに適した温度に調節する計3工程が繰り返される。
また、LCR法では、通常、2対のオリゴヌクレオチドプローブが用いられ、一つの対は標的核酸の一方の鎖に結合し、他方の対は標的核酸の他方の鎖に結合する。各対は共に対応する鎖と完全にオーバーラップする。反応は、第一に、核酸試料中の二本鎖核酸を変性(即ち、分離)し、次に、熱安定性リガーゼの存在下で2対のオリゴヌクレオチドプローブを鎖に反応させることにより、各対のオリゴヌクレオチドプローブが共に連結され、次に反応産物を分離し、そして配列が所望の程度に増幅されるまで、循環して繰り返される。従って、LCR法を利用する場合には、前記検査領域は、上記の2対のオリゴヌクレオチドプローブ、熱安定性リガーゼ、緩衝液等を含むものとされる。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記増幅試薬組成物は、一定の温度下での標的核酸の増幅を可能とするものとされる。従って、前記検査領域に含まれる増幅試薬は等温増幅法を実行可能なものとされ、このような等温増幅法としては、例えば、上述の3SR法、Qβレプリカーゼ法、NASBA法、SDA法、LAMP法、ICAN法などが挙げられる。好ましい等温増幅法としては、SDA法、LAMP法、およびICAN法が挙げられる。
例えば、SDA法では、制限酵素認識部位を有する一対の増幅プライマーと、その増幅領域をはさむような、さらにもう一対のバンパープライマーの合計4本のプライマーを用いることにより、等温条件下で標的核酸を増幅することができる。制限酵素により増幅プライマー上の制限部位にニックが入り、次いでDNAポリメラーゼにより該ニックから増幅プライマーの3’側に伸長合成がなされ、前に形成された標的鎖の下流相補鎖が置換される。この工程は無限に繰り返されるが、それは、制限酵素が制限部位から形成される新たな相補鎖に連続してニックを入れ、そしてDNAポリメラーゼがニックの入った制限部位から新たな相補鎖を連続して形成するからである。従って、SDA法を利用する場合には、前記検査領域は、上記の4本のプライマー、制限酵素、DNAポリメラーゼ、緩衝液等を含むものとされる。
等温増幅法としては、また、本発明者らにより開発された等温増幅プライマーを用いる増幅法(以下「等温増幅プライマー法」という)も好適に利用することができる。この方法は、鎖置換反応を利用した核酸の増幅法において、特殊なプライマー(等温増幅プライマー)を用いるものである。等温増幅プライマー法に用いられる第一のプライマーは、標的核酸配列の3’末端部分の配列(A)にハイブリダイズする配列(Ac')を3’末端部分に含んでなり、前記標的核酸配列において前記配列(A)よりも5’側に存在する配列(B)の相補配列(Bc)にハイブリダイズする配列(B')を前記配列(Ac')の5’側に含んでなるものである。
本発明において「ハイブリダイズする」とは、本発明によるプライマーの一部がストリンジェントな条件下で標的核酸にハイブリダイズし、標的核酸以外の核酸分子にはハイブリダイズしないことを意味する。ストリンジェントな条件は、本発明によるプライマーとその相補鎖との二重鎖の融解温度Tm(℃)およびハイブリダイゼーション溶液の塩濃度などに依存して決定することができ、例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)等を参照することができる。例えば、使用するプライマーの融解温度よりわずかに低い温度下でハイブリダイゼーションを行なうと、プライマーを標的核酸に特異的にハイブリダイズさせることができる。このようなプライマーは、市販のプライマー構築ソフト、例えば、Primer3(Whitehead Institute for Biomedical Research社製)などを用いて設計することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、ある標的核酸にハイブリダイズするプライマーは、その標的核酸に相補的な核酸分子の全部または一部の配列を含んでなるものである。
等温増幅プライマー法に用いられる第一のプライマーによる核酸合成の作用機序を図1に模式的に示す。まず、鋳型となる核酸中の標的核酸配列を決定し、その標的核酸配列の3’末端部分の配列(A)、および配列(A)よりも5’側に存在する配列(B)を決定する。第一のプライマーは、配列(Ac')を含んでなり、さらにその5’側に配列(B')を含んでなる。配列(Ac')は、配列(A)にハイブリダイズするものであり、配列(B')は、配列(B)の相補配列(Bc)にハイブリダイズするものである。ここで、第一のプライマーは、前記配列(Ac')と前記配列(B')の間に、反応に影響を与えない介在配列を含んでいてもよい。このようなプライマーを鋳型核酸にアニーリングさせると、プライマー中の配列(Ac')が標的核酸配列の配列(A)にハイブリダイズした状態となる(図1(a))。この状態でプライマー伸長反応が起こると、標的核酸配列の相補配列を含む核酸が合成される。そして、合成された核酸の5’末端側に存在する配列(B')が、同核酸中に存在する配列(Bc)にハイブリダイズし、これにより、合成された核酸の5’末端部分においてステム−ループ構造が形成される。その結果、鋳型核酸上の配列(A)が一本鎖となり、この部分に先の第一のプライマーと同一の配列を有する他のプライマーがハイブリダイズする(図1(b))。その後、鎖置換反応により、新たにハイブリダイズした第一のプライマーからの伸長反応が起こると同時に、先に合成された核酸が鋳型核酸から分離される(図1(c))。
上記の作用機序において、配列(B')が配列(Bc)にハイブリダイズする現象は、典型的には、同一鎖上に相補領域が存在することにより起こる。一般に、二本鎖核酸が一本鎖に解離するときは、その末端あるいはそれ以外の比較的不安定な部分から部分的な解離が始まる。上記第一のプライマーによる伸長反応で生成した二本鎖核酸は、比較的高温では末端部分の塩基対は解離と結合の平衡状態にあり、全体としては二本鎖を保っている。そのような状態で末端の解離した部分に相補的な配列が同一鎖上に存在すると、準安定な状態としてステム−ループ構造を形成することができる。このステムループ構造は安定的には存在しないが、その構造の形成により剥き出しとなった相補鎖部分(鋳型核酸上の配列(A))に同一の他のプライマーが結合し、すぐさまポリメラーゼが伸長反応を行うことにより、先に合成された鎖が置換されて遊離すると同時に、新たな二本鎖核酸を生成することができる。
等温増幅プライマー法において、本発明の好ましい態様における第一のプライマーの設計基準は次のとおりである。まず、プライマーの伸長により鋳型核酸の相補鎖が合成された後に新たなプライマーが効率よく同鋳型核酸にアニーリングするためには、合成された相補鎖の5’末端におけるステム−ループ構造形成により、鋳型核酸上の前記配列(A)の部分を一本鎖とする必要がある。そのためには、配列(Ac')の塩基数Xと標的核酸配列中における前記配列(A)と前記配列(B)に挟まれた領域の塩基数Yとの差(X−Y)の、Xに対する割合(X−Y)/Xが重要となる。ただし、鋳型核酸上において配列(A)よりも5’側に存在する、プライマーのハイブリダイズとは関係無い部分まで一本鎖とする必要はない。また、新たなプライマーが効率よく鋳型核酸にアニーリングするためには、上述のステム−ループ構造形成を効率よく行なうことも必要となる。そして、効率の良いステム−ループ構造形成、すなわち、効率の良い配列(B')と配列(Bc)とのハイブリダイゼーションには、前記配列(B')と前記配列(Bc)との間の距離(X+Y)が重要となる。一般に、プライマー伸長反応のための最適温度は最高でも72℃付近であり、そのような低い温度では、伸長鎖が長い領域にわたって解離することは困難である。従って、配列(B')が配列(Bc)に効率よくハイブリダイズするためには、両配列の間の塩基数は少ないほうが好ましいと考えられる。一方で、配列(B')が配列(Bc)にハイブリダイズして鋳型核酸上の前記配列(A)の部分を一本鎖とするためには、配列(B')と配列(Bc)との間の塩基数は多い方が好ましいと考えられる。
以上のような観点から、本発明の好ましい実施態様による前記第一のプライマーは、プライマーを構成する配列(Ac')と配列(B')の間に介在配列が存在しない場合において、(X−Y)/Xが−1.00以上、好ましくは0.00以上、さらに好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上となり、また、1.00以下、好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.25以下となるように設計される。さらに、(X+Y)は、好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上とされ、また、好ましくは50以下、さらに好ましくは48以下、さらに好ましくは42以下とされる。
また、プライマーを構成する配列(Ac')と配列(B')の間に介在配列(塩基数はY’)が存在する場合には、本発明の好ましい実施態様による前記第一のプライマーは、{X−(Y−Y’)}/Xが−1.00以上、好ましくは0.00以上、さらに好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上となり、また、1.00以下、好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.25以下となるように設計される。さらに、(X+Y+Y’)は、好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上とされ、また、好ましくは100以下、さらに好ましくは75以下、さらに好ましくは50以下とされる。
前記第一のプライマーは、与えられた条件下で必要な特異性を維持しながら標的核酸との塩基対結合を行うことができる程度の鎖長を有するものである。このプライマーの鎖長は、好ましくは15〜100ヌクレオチド、より好ましくは20〜60ヌクレオチドとする。また、前記第一のプライマーを構成する配列(Ac')と配列(B')の長さは、それぞれ、好ましくは5〜50ヌクレオチド、より好ましくは7〜30ヌクレオチドである。また、必要に応じて、配列(Ac')と配列(B')の間に、反応に影響を与えない介在配列を挿入してもよい。
等温増幅プライマー法に用いられる第二のプライマーは、前記標的核酸配列の相補配列について前記第一のプライマーと同様に設計されたものとすることができる。従って、このような第二のプライマーは、前記標的核酸配列の相補配列の3’末端部分の配列(C)にハイブリダイズする配列(Cc')を3’末端部分に含んでなり、前記標的核酸配列の相補配列において前記配列(C)よりも5’側に存在する配列(D)の相補配列(Dc)にハイブリダイズする配列(D')を前記配列(Cc')の5’側に含んでなるものである。第二のプライマーの好ましい設計基準は、第一のプライマーについて上述したとおりである。
あるいは、等温増幅プライマー法に用いられる第二のプライマーは、前記標的核酸配列の相補配列(第一のプライマーがハイブリダイズする鎖に対して反対側の鎖)の3’末端部分の配列(C)にハイブリダイズする配列(Cc')を3’末端部分に含んでなり、かつ相互にハイブリダイズする2つの核酸配列を同一鎖上に含む折返し配列(D-Dc')を前記配列(Cc')の5’側に含んでなるものとしてもよい。このような第二の態様による等温増幅プライマー法において、第二のプライマーの構造は、例えば、図2に示すようなものであるが、図2に示される配列やヌクレオチド数に限定されるものではない。第二の態様による第二のプライマーを構成する配列(Cc')の長さは、好ましくは5〜50ヌクレオチド、より好ましくは10〜30ヌクレオチドである。また、前記折返し配列(D-Dc')の長さは、好ましくは2〜1000ヌクレオチド、より好ましくは2〜100ヌクレオチド、さらに好ましくは4〜60ヌクレオチド、さらに好ましくは6〜40ヌクレオチドであり、折返し配列の内部におけるハイブリダイゼーションによって形成される塩基対のヌクレオチド数は、好ましくは2〜500bp、より好ましくは2〜50bp、さらに好ましくは2〜30bp、さらに好ましくは3〜20bpである。折返し配列(D-Dc')のヌクレオチド配列はいかなる配列であってもよく、特に限定されるものではないが、好ましくは標的核酸配列にハイブリダイズしない配列とされる。また、必要に応じて、配列(Cc')と折返し配列(D-Dc')の間に、反応に影響を与えない介在配列を挿入してもよい。
第二の態様による等温増幅プライマー法において、前記第一のプライマーおよび第二のプライマーによる核酸増幅反応について考えられる作用機序を、図3(図3aおよび図3b)を用いて説明する。なお、図3では、説明を簡略化するため、ハイブリダイズする2つの配列を相互に相補的な配列としているが、これにより本発明が限定されるものではない。まず、第一のプライマーが標的核酸のセンス鎖にハイブリダイズし、該プライマーの伸長反応が起きる(図3(a))。次いで、伸長鎖(−)上においてステム−ループ構造が形成され、これにより一本鎖となった標的核酸センス鎖上の配列(A)に新たな第一のプライマーがハイブリダイズし(図3(b))、該プライマーの伸長反応が起きて、先に合成された伸長鎖(−)が脱離する。次に、脱離した伸長鎖(−)上の配列(C)に第二のプライマーがハイブリダイズし(図3(c))、該プライマーの伸長反応が起き、伸長鎖(+)が合成される(図3(d))。生成した伸長鎖(+)の3’末端と伸長鎖(−)の5’末端ではステム−ループ構造が形成され(図3(e))、遊離型の3’末端である伸長鎖(+)のループ先端から伸長反応が起こると同時に、前記伸長鎖(−)が脱離する(図3(f))。ループ先端からの前記伸長反応により、伸長鎖(+)の3’側に配列(A)および配列(Bc)を介して伸長鎖(−)が結合したヘアピン型の二本鎖核酸が生成し、その配列(A)および配列(Bc)に第一のプライマーがハイブリダイズし(図3(g))、その伸長反応により伸長鎖(−)が生成する(図3(h)および(i))。また、前記ヘアピン型二本鎖核酸の3’末端に存在する折返し配列によって遊離型の3’末端が提供され(図3(h))、そこからの伸長反応により(図3(i))、両端に折返し配列を有し、第一および第二のプライマーに由来する配列を介して伸長鎖(+)と伸長鎖(−)とを交互に含む一本鎖核酸が生成する(図3(j))。この一本鎖核酸では、その3’末端に存在する折返し配列により遊離型の3’末端(相補鎖合成起点)が提供されるため(図3(k))、同様の伸長反応が繰り返され、1回の伸長反応あたり2倍の鎖長となる(図3(l)および(m))。また、図3(i)において脱離した第一のプライマーからの伸長鎖(−)では、その3’末端に存在する折返し配列により遊離型の3’末端(相補鎖合成起点)が提供されるため(図3(n))、そこからの伸長反応により、両端にステム−ループ構造が形成され、プライマーに由来する配列を介して伸長鎖(+)と伸長鎖(−)とを交互に含む一本鎖核酸が生成する(図3(o))。この一本鎖核酸においても、3’末端におけるループ形成によって相補鎖合成起点が順次提供されるため、そこからの伸長反応が次々に起こる。このようにして自動的に延長される一本鎖核酸には、第一のプライマーおよび第二のプライマーに由来する配列が伸長鎖(+)と伸長鎖(−)との間に含まれているため、各プライマーがハイブリダイズして伸長反応を起こすことが可能であり、これにより標的核酸のセンス鎖およびアンチセンス鎖が顕著に増幅される。
等温増幅プライマー法では、第一のプライマーおよび第二のプライマー以外に、第三のプライマーを用いることができる。第三のプライマーは、前記標的核酸配列またはその相補配列にハイブリダイズするものであって、標的核酸配列またはその相補配列へのハイブリダイゼーションについて他のプライマーと競合しないものとされる。
本発明において「競合しない」とは、そのプライマーが標的核酸にハイブリダイズすることによって他のプライマーによる相補鎖合成起点の付与が妨げられないことを意味する。
特に、第二の態様による等温増幅プライマー法において、前記第一のプライマーおよび第二のプライマーにより標的核酸が増幅された場合には、上述のように、増幅産物は標的核酸配列とその相補配列とを交互に有するものとなる。その増幅産物の3’末端には折返し配列またはループ構造が存在し、これにより提供される相補鎖合成起点から次々に伸長反応が起こっている。第三のプライマーは、このような増幅産物が部分的に一本鎖の状態になった時に、その一本鎖部分に存在する標的配列にアニ−リングすることができる。これにより、増幅産物中の標的核酸配列内に新たな相補鎖合成起点が提供され、そこからの伸長反応が起こるため、核酸増幅反応がより迅速に行われるようになる。
等温増幅プライマー法に用いられる第三のプライマーは必ずしも1種類に限定されるわけではなく、核酸増幅反応の迅速性および特異性を向上させるためには2種類以上の第三のプライマーを同時に用いてもよい。これら第三のプライマーは、典型的には第一のプライマーおよび第二のプライマーとは異なる配列からなるが、これらのプライマーと競合しない限りにおいて、部分的に重なる領域にハイブリダイズするものとしてもよい。第三のプライマーの鎖長は、好ましくは2〜100ヌクレオチド、より好ましくは5〜50ヌクレオチド、さらに好ましくは7〜30ヌクレオチドとされる。
等温増幅プライマー法に用いられる第三のプライマーは、第一のプライマーおよび第二のプライマーによる核酸増幅反応をより迅速に進めるための補助的な働きをその主目的とするものである。従って、第三のプライマーは、第一のプライマーおよび第二のプライマーの各3’末端のTmよりも低いTmを有するものとすることが好ましい。また、第三のプライマーの増幅反応液への添加量は、第一のプライマーおよび第二のプライマーのそれぞれの添加量よりも少ない方が好ましい。
等温増幅プライマー法に用いられる第三のプライマーとしては、国際公開第02/24902号パンフレットに記載のような、ループを形成できる構造をもつものを鋳型として、そのループ部分に相補鎖合成の起点を与えるものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。すなわち、標的核酸配列内であれば、いかなる部位に相補鎖合成起点を提供するものであってもよい。
等温増幅プライマー法に用いられるプライマーは、デオキシヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドにより構成される。本発明において、「リボヌクレオチド」(単に「N」ということもある)とは、リボヌクレオチド3リン酸をいい、例えば、ATP,UTP,CTP,GTP等がある。さらに、リボヌクレオチドにはこれらの誘導体が含まれ、例えば、α位のリン酸基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたリボヌクレオチド(α−チオ−リボヌクレオチド)等がある。
また、等温増幅プライマー法に用いられるプライマーには、未修飾デオキシヌクレオチドおよび/または修飾デオキシヌクレオチドで構成されたオリゴヌクレオチドプライマー、および未修飾リボヌクレオチドおよび/または修飾リボヌクレオチドで構成されたオリゴヌクレオチドプライマー、未修飾デオキシヌクレオチドおよび/または修飾デオキシヌクレオチドおよび未修飾リボヌクレオチドおよび/または修飾リボヌクレオチドを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマー等も含まれる。
等温増幅プライマー法において使用するDNAポリメラーゼは、鎖置換(strand displacement)活性(鎖置換能)を有するものであればよく、常温性、中温性、もしくは耐熱性のいずれのものも好適に使用できる。また、このDNAポリメラーゼは、天然体もしくは人工的に変異を加えた変異体のいずれであってもよい。さらに、このDNAポリメラーゼは、実質的に5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないものであることが好ましい。このようなDNAポリメラーゼとしては、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus、以下「B.st」という)、バチルス・カルドテナックス(Bacilluscaldotenax、以下「B.ca」という)等の好熱性バチルス属細菌由来DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失した変異体、大腸菌(E.coli)由来DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント等が挙げられる。
等温増幅プライマー法において使用するその他の試薬としては、例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の触媒、dNTPミックス等の基質、トリス塩酸バッファー、トライシンバッファー、リン酸ナトリウムバッファー、リン酸カリウムバッファー等の緩衝液を使用することができる。さらに、ジメチルスルホキシド(DMSO)やベタイン(N,N,N−trimethylglycine)等の添加物、国際公開第99/54455号パンフレットに記載の酸性物質、陽イオン錯体等を使用してもよい。
等温増幅プライマー法に用いられるプライマーは、制限酵素認識部位を含むものとすることができ、これにより、核酸増幅の効率を向上させることが可能となる。すなわち、プライマー内の制限酵素認識部位に対応する制限酵素により増幅産物中にニックが生じるため、このニックを合成起点として鎖置換型の相補鎖合成反応を生じさせることが可能になる。この方法は、基本的には先行技術として記載したSDA法の原理に基づく。この方法では、ニックを入れるリバースプライマーの相補鎖となる部分には、制限酵素による2本鎖の切断が生じないよう、ヌクレアーゼ耐性となるようにdNTP誘導体が取りこまれるように設計する必要がある。
また、等温増幅プライマー法に用いられるプライマーは、RNAポリメラーゼのプロモーター配列を含むものとすることができ、これにより、核酸増幅の効率を向上させることが可能となる。この方法は、基本的には先行技術として記載したNASBA法の原理に基づく。
さらに、等温増幅プライマー法において、LAMP法またはSDA法において利用される「アウタープライマー」を使用することができ、これにより、核酸増幅の効率を向上させることが可能となる。アウタープライマーとしては、鋳型核酸上において標的核酸配列の外側に位置する部分に相補鎖合成起点を提供しうるプライマーを用いることができる。
本発明者らによる等温増幅プライマー法は、等温増幅プライマーが目的核酸にアニーリングし、プライマーの3’端側から伸長反応を起こし、その伸長産物が目的の配列を含む場合のみ、そのプライマーの5’端の配列が、その伸長産物にハイブリダイゼーションを起こし、これにより次に同様な等温増幅プライマーがアニーリングすることができ、連続した増幅反応が可能となる。逆に、誤って等温増幅プライマーが目的核酸以外にアニーリングし、プライマーの3’端側から伸長反応を起こした場合、その伸長産物は目的の配列を含まないので、そのプライマーの5’端の配列が、その伸長産物にハイブリダイズできなくなり、これにより次に同様な等温増幅プライマーがアニーリングしにくくなり、連続した増幅反応が困難となるため、目的とする増幅産物が得られない。そのため、この増幅法は、他の増幅法に比べ、非常に特異性の高い増幅法といえる。さらに、非常に特異性が高い増幅法であることにより、増幅産物をDNAプローブ等を用い、ハイブリダイゼーションを行い、増幅産物が目的の増幅産物であるかどうか確認するような作業が必ずしも必要とされない。
本発明者らによる等温増幅プライマー法は、使用する酵素の活性を維持できる温度に保つことにより実施することができる。また、プライマーが標的核酸にアニーリングするためには、例えば、反応温度を、そのプライマーの融解温度(Tm)付近の温度、もしくはそれ以下に設定することが好ましく、さらには、プライマーの融解温度(Tm)を考慮し、ストリンジェンシーのレベルを設定することが好ましい。従って、この温度は、好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは約35℃〜約65℃とする。
検査領域は、核酸増幅反応における核酸の増幅効率を高めるために、融解温度調整剤を含むものとすることができる。核酸の融解温度(Tm)は、一般的に、核酸中の二本鎖形成部分の具体的なヌクレオチド配列によって決定される。反応溶液中に融解温度調整剤を添加することにより、この融解温度を変化させることができ、従って、一定の温度下では、核酸における二本鎖形成の強度を調整することが可能となる。一般的な融解温度調整剤は、融解温度を下げる効果を有する。このような融解温度調整剤を添加することにより、2本の核酸の間の二本鎖形成部分の融解温度を下げることができ、換言すれば、その二本鎖形成の強度を下げることが可能となる。従って、前記核酸増幅反応においてこのような融解温度調整剤を反応溶液中に添加すると、強固な二本鎖を形成するGCの豊富な核酸領域や複雑な二次構造を形成する領域において効率的に二本鎖部分を一本鎖とすることが可能となり、これにより、プライマーによる伸長反応が終わった後に次のプライマーが目的領域にハイブリダイズしやすくなるため、核酸の増幅効率を上げることができる。本発明において用いられる融解温度調整剤およびその反応溶液中での濃度は、ハイブリダイゼーション条件に影響を与える他の反応条件、例えば塩濃度、反応温度等を考慮して、当業者により適切に選択される。従って、融解温度調整剤は特に制限されるものではないが、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)、ベタイン、ホルムアミドもしくはグリセロール、またはこれらの任意の組み合わせとされ、より好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)とされる。
検査領域は、酵素安定化剤を含むものとすることもできる。これにより酵素が安定化されるため、核酸の増幅効率を高めることが可能となる。本発明において用いられる酵素安定化剤は、グリセロール、ウシ血清アルブミン、糖類などの、当技術分野において知られているいかなるものであってもよく、特に制限されない。
検査領域は、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素などの酵素の耐熱性を増強するための試薬を含むものとすることもできる。これにより酵素が安定化されるため、核酸の増幅効率を高めることが可能となる。このような試薬は当技術分野において知られているいかなるものであってもよく、特に制限されないが、好ましくは糖類、より好ましくは単糖またはオリゴ糖、さらに好ましくはトレハロース、ソルビトールもしくはマンニトール、またはこれらの2種以上の混合物とされる。
検査領域は、ミスマッチ認識タンパク質を含むものとすることができる。これにより、より正確な標的核酸の検出が可能となる。
DNAの2本鎖において部分的に対合できない(ミスマッチ)塩基対が生じたときに、細菌や酵母等には、これを修復するための機構があることが既に知られている。この修復は「ミスマッチ結合タンパク質」(「ミスマッチ認識タンパク質」とも称される)と呼ばれるタンパク質によって行なわれるものであり、MutSタンパク質(特表平9−504699号公報)、MutMタンパク質(特開2000−300265号公報)、GFP(Green Fluorescence Protein)に結合したMutSタンパク質(国際公開第99/06591号パンフレット)などの様々なミスマッチ結合タンパクの使用が報告されている。さらに、近年、ミスマッチ結合タンパク質を利用してミスマッチを検出する遺伝子診断法が開発されている(M. Gotoh et al., Genet. Anal., 14, 47-50, 1997)。核酸中における特定のヌクレオチドにおける多型および突然変異の検出法としては、例えば、変異のない対照核酸と、変異が存在することが疑われる被検核酸とをハイブリダイズさせ、そこにミスマッチ認識タンパク質を導入することによりミスマッチを検出する方法が知られている。
本発明において「ミスマッチ」とは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、およびチミン(T)(RNAの場合はウラシル(U))から選択される一組の塩基対が正常な塩基対(AとTの組み合わせ、またはGとCの組み合わせ)ではないことを意味する。ミスマッチには、1つのミスマッチのみならず、複数の連続したミスマッチ、1または複数の塩基の挿入および/または欠失により生じるミスマッチ、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
本発明による検査用チップを用いた標的核酸の検出においても、これらのミスマッチ結合タンパク質を利用することにより、その特異性(正確さ)を向上させることができる。例えば、核酸増幅反応においては、プライマーと鋳型核酸との間で、少量のヘテロ二本鎖構造が生ずる場合がある。本発明において「ヘテロ二本鎖構造」とは、実質的には相補的な二本鎖構造であるが、1または複数のミスマッチを有することにより非相補的な領域を含む二本鎖構造を意味する。このようなヘテロ二本鎖構造により、本来的には生成しないはずの誤った増幅産物がもたらされる。そこで、核酸増幅反応に用いられる反応系中にミスマッチ結合タンパク質を添加しておけば、上記のようなヘテロ二本鎖構造にこのミスマッチ結合タンパク質が結合し、その後の増幅反応が妨げられる。従って、ミスマッチ結合タンパク質を利用することにより、誤った増幅産物の生成を防ぐことが可能となる。
本発明に用いられるミスマッチ結合タンパク質は、二本鎖核酸におけるミスマッチを認識し、そのミスマッチの部位に結合することが可能なタンパク質であればよく、当業者に公知のいずれのものであってもよい。また、本発明に用いられるミスマッチ結合タンパク質は、二本鎖核酸中のミスマッチを認識しうる限り、野生型タンパク質のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質(変異体)であってもよい。このような変異体は、自然界において生じることもあるが、人為的に作製することも可能である。タンパク質にアミノ酸変異を導入する方法としては、多くの方法が知られている。例えば、部位特異的変異導入法としては、 W.P. DengとJ.A. Nickoloffの方法(Anal. Biochem., 200, 81, 1992)、K.L. MakamayeとF. Ecksteinの方法(Nucleic Adids Res., 14, 9679-9698, 1986)などが知られており、ランダム変異導入法としては、基本的な修復系を欠損した大腸菌 XL1-Red 株(Stratagene社)を用いる方法、亜硝酸ナトリウム等を用いて化学的に塩基を修飾する方法(J.-J. Diaz et al., BioTechnique, 11, 204-211, 1991)などが知られている。このようなミスマッチ結合タンパク質としては、MutM、MutSおよびそれらの類似体など、多くのものが知られている(Radman,M.et al.,Annu.Rev.Genet.20:523-538(1986);Radaman,M.etal.,Sci.Amer.,August 1988,pp40-46;Modrich,P.,J.Biol.Chem.264:6597-6600(1989); Lahue,R.S. et al.,Science 245:160-164(1988);Jiricny,J.et al,.Nucl.Acids Res.16:7843-7853(1988);Su,S.S.et al.,J.Biol.Chem.263;6829-6835(1988);Lahue,R.S.et al.,Mutat.Res.198:37-43(1988);Dohet,C.et al.,Mol.Gen.Gent.206:181-184(1987); Jones,M.et al.,Gentics 115:605-610(1987); Salmonella typhimuriumのMuts(Lu,A.L.,Genetics 118:593-600(1988);HaberL.T. et al.,J.Bacteriol.170:197-202(1988);Pang,P.P.et al.,J.Bacteriol.163:1007-1015(1985));およびPriebe S.D.et al.,J.Bacterilo.170:190-196(1988))。本発明に用いられるミスマッチ結合タンパク質は、好ましくはMutS、MutH、MutL、または酵母に由来するものとされ、より好ましくはMutS、MutH、またはMutLとされる。
ミスマッチ結合タンパク質は、一本鎖核酸にも結合することがあり、このようなミスマッチ結合タンパク質の一本鎖核酸への結合は、一本鎖結合タンパク質により阻害されることが知られている。従って、本発明においてミスマッチ結合タンパク質を用いる場合には、一本鎖結合タンパク質を併用することが好ましい。また、ミスマッチ結合タンパク質は、ミスマッチを含まない二本鎖核酸にも結合することがあり、このようなミスマッチ結合タンパク質の誤った結合は、あらかじめ活性剤を用いてミスマッチ結合タンパク質を活性化しておくことにより阻害されることが知られている。従って、本発明においてミスマッチ結合タンパク質を用いる場合には、活性剤によりあらかじめ活性化されたものを用いることが好ましい。
一本鎖核酸にミスマッチ結合タンパク質が結合するのを阻害するために使用する一本鎖結合タンパク質(SSB)は、当技術分野において公知の任意のSSBとすることができる。好ましいSSBとしては、エシェリキア・コリ、ショウジョウバエ、およびアフリカツメガエルに由来する一本鎖結合タンパク質、およびT4バクテリオファージ由来の遺伝子32タンパク質、ならびに他の種に由来するこれらの相当物が挙げられる。この場合に使用されるミスマッチ結合タンパク質としては、MutS、HexA、MSH1−6、Rep3、RNaseA、ウラシル−DNAグリコシダーゼ、T4エンドヌクレアーゼVII、レゾルバーゼなどが挙げられる。
ミスマッチ結合タンパク質を活性化するための活性剤は、当業者であれば適宜選択することができるため、特に限定されないが、好ましくは、ATP(アデノシン5'−3リン酸)、ADP(アデノシン5'−2リン酸)、ATP−γ−S(アデノシン5'−O−(3−チオ3リン酸))、AMP−PNP(アデノシン5'−[β,γ−イミド]3リン酸)などの化合物とされ、あるいは、ミスマッチ結合タンパク質に結合できるヌクレオチドの一つとされる。ミスマッチ結合タンパク質の活性化は、ミスマッチ結合タンパク質と活性剤とを、室温で数秒間から数分間インキュベートすることにより行うことができる。
検査領域は、これに液体サンプルが接触したときに、該液体サンプルと増幅試薬との接触が可能となるように形成される。例えば、検査領域は、吸水性材料によって増幅試薬を固定化することにより形成することができる。これにより、検査領域に接触した液体サンプルが速やかにその内部に吸収され、そこで増幅試薬に接触することが可能となる。また、吸水性材料に吸収された液体サンプルは、増幅試薬とともに該吸水性材料中に保持されるため、核酸増幅反応を行なうのに十分な時間にわたって検査領域の内部での液体サンプルと増幅試薬との接触を維持することが可能となる。
前記吸水性材料としては、例えば、セルロースを主成分とする材料、例えばろ紙などの紙類、多孔質材料、吸水性ポリマーなどが挙げられる。吸水性ポリマーとしては、例えば、澱粉またはその誘導体からなるポリマー、セルロースまたはその誘導体からなるポリマー、ポリアクリル酸塩またはその誘導体からなるポリマー、ポリビニルアルコール、澱粉/アクリル共重合体、ポリエチレンオキシド、アクリル酸塩/ビニルアルコール共重合体、イソブチレン/マレイン酸塩共重合体、澱粉/アクリル酸塩共重合体、架橋カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。吸水性材料としては、1種類の材料を単独で用いてもよいが、2種以上の材料の混合物として用いてもよい。
前記吸水性材料への増幅試薬の固定化は、当技術分野において周知の標準的な方法によって行なうことができ、その具体的な手順は特に制限されない。このような方法としては、例えば、吸水性材料を調製した後に、増幅試薬溶液を添加してこれを膨潤させ、乾燥させる方法が挙げられる。他の方法としては、増幅試薬をビーズなどの微粒子に結合させ、得られた微粒子を、吸水性材料の調製に用いられる溶液中に混合し、この混合液を用いて吸水性材料を調製する方法が挙げられる。さらに他の方法としては、増幅試薬を吸水性材料に共有結合させる方法が挙げられる。例えば、プライマーなどのオリゴヌクレオチドを吸水性材料に結合させる方法としては、ビオチンとアビジンとの結合反応を利用する方法、またはヌクレオチド分子中のアミノ基、水酸基などの反応性基を利用する方法などが挙げられる(例えば、「実験と応用 アフィニティクロマトグラフ」、千畑一郎ら、第16〜106頁、講談社サイエンティフィク社発行を参照)。また、酵素を吸水性材料に結合させる方法としては、固定化酵素の分野において用いられる標準的な方法が挙げられる(例えば、「固定化酵素」、千畑一郎編、1975年、講談社発行を参照)。増幅試薬は、液体サンプルと接触した後に、検出領域から流出せずに、検出領域の内部に保持されるように固定化されることが好ましい。
前記吸水性材料は、当技術分野において周知の標準的な方法によって支持体の内部または表面上に配置することができ、その具体的な手順は特に制限されない。このような方法としては、例えば、支持体となる材料を成形するときに、検査領域を形成しようとする位置に吸水性材料を組み込む方法が挙げられる。他の方法としては、支持体となる材料中に、吸水性材料を微粒子の形態で混合ておき、この微粒子を含んだ部分が検査領域を形成しようとする位置に配置されるように支持体を成形する方法が挙げられる。さらに他の方法としては、支持体を作製した後に、検査領域を形成しようとする位置に吸水性材料を塗布し、これを乾燥させる方法が挙げられる。さらに他の方法としては、支持体を作製した後に、検査領域を形成しようとする位置に吸水性材料を重層し、これを水透過性の材料で被覆する方法が挙げられる。このような被覆材としては、水を透過しうるものであればよく、とくに制限されない。また、被覆材の形状も、膜、メッシュなどの様々な形状とすることができる。前記被覆材として、例えば、一方向性の水透過性を有するもの、すなわち、外部から検査領域に向けて水を透過するが、検査領域から外部に向けて水を透過しないものを用いることができる。あるいは、前記被覆材として、水を透過するが、血液中の赤血球およびヘモグロビンを透過しないもの(例えば、特開平6−86696号公報参照)を用いてもよく、これにより、液体サンプルとして血液を用いる場合に標的核酸の可視検出を容易に行なうことが可能となる。
本発明による検査用チップは、さらに、支持体上に設けられたサンプル導入部を含んでなる。このサンプル導入部は、支持体の表面上に設けられ、導入された液体サンプルが検査領域に接触できるように配置される。例えば、検査領域が支持体表面上に位置している場合には、検査領域に直接的に液体サンプルを導入することが可能であり、従って、検査領域そのものをサンプル導入部とすることができる。あるいは、サンプル導入部は、検査領域とは別の場所に配置することもでき、この場合には、必要に応じて、サンプル導入部から検査領域まで液体サンプルを輸送するための輸液手段が設けられる。このような輸液手段としては、例えば、支持体中のサンプル導入部から検査領域までの間の領域を、毛細管現象によって輸液可能な材料(例えば、ろ紙)で形成することなどが挙げられる。
本発明による検査用チップを用いて増幅された標的核酸は、一般的な方法、例えば、検出可能な標識を付された特異的プローブを用いる方法等、によって検出してもよいが、増幅産物の存在に基づくシグナルの発生が可能となるように検査用チップを構成することも可能である。従って、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明による検査用チップは、増幅産物に由来するシグナルを発生させるシグナル発生手段をさらに含んでなるものとされる。また、その場合には、本発明による検査用チップは、核酸増幅産物からのシグナルを透過可能なものであることが好ましい。
前記シグナル発生手段としては、当業者に知られているものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、エチジウムブロミド、SYBRグリーンI(Molecular Probe社)などのインターカレーターを用いることができる。これらのインターカレーターは二本鎖DNAに結合するため、その蛍光強度と二本鎖DNAの濃度は正比例する。よって、インターカレーターによる蛍光が強ければ、増幅産物が高濃度で存在することが示され、これにより標的核酸が検出される。従って、このようなインターカレーターを予め増幅試薬中に混入しておくことにより、増幅産物に基づくシグナルを発生させることが可能となる。また、シグナル発生手段として、蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resornance Energy Transfer:FRET)などを利用してもよい。FRETは,2つのプローブが近接して増幅産物にハイブリダイズした場合にのみ発生し、ハイブリダイゼーションプローブが互いに隣接してハイブリダイズすることのできる特異的なDNAが存在しない場合には発生しない。従って、標的核酸の近接した2つの領域にそれぞれ特異的にハイブリダイズしうる2つのプローブを予め増幅試薬中に混入しておけばよい。また、核酸増幅の過程においては、基質(dNTPs)からピロリン酸イオンが遊離され、これと増幅試薬組成物中のマグネシウムイオンとが結合し、ピロリン酸マグネシウムが産生され、これにより反応溶液が白濁する。これにより、増幅産物の有無を目視で判定することが可能である。また、増幅産物に挿入剤を挿入し、これを用いて増幅産物に電気を流すことにより、その電流や電圧の差を読み取ることによって検出を行なうこともできる。さらに、プライマーを予めビーズや金コロイド粒子などの担体と結合させておいてもよい。この場合には、標的核酸が増幅されると前記担体が凝集するので、これを目視で確認することにより増幅産物を検出することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、シグナル発生手段としては、そのシグナルが目視によって検出可能なものとされる。
本発明による検査用チップは、必要に応じて、液体サンプルから核酸を抽出するための核酸抽出試薬が固定化された核酸抽出試薬固定化部をさらに含んでなるものとすることができ、この核酸抽出試薬固定化部は、支持体の内部または表面上において、前記サンプル導入部と前記検査領域との間に配置することができる。これにより、液体サンプル中に標的核酸が剥き出しの状態で存在しない場合、例えば、液体サンプル中の細胞内に標的核酸が存在する場合であっても、標的核酸を容易に検出することが可能となる。この抽出試薬に含まれる試薬は特に制限されるものではなく、当業者に知られている様々な核酸抽出法を実行可能なものとすることができる。抽出試薬の組成は、利用する核酸抽出法に応じて、当業者であれば適宜決定することができる。
核酸抽出法としては、例えば、アルカリ抽出法、フェノール抽出法、カオトロピック試薬抽出法、界面活性剤を用いる方法、クロマトグラフィー精製法(WO 95/01359)および超遠心分離法(Maniatisら, 1982, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)が知られている。また、プロテイナーゼK、プロテアーゼ、スブチリシン等の非特異的なタンパク質分解酵素を用いてサンプル中のタンパク質を分解することにより核酸を抽出する方法も知られている。タンパク質分解酵素を用いる場合には、核酸抽出試薬と増幅試薬とが混合されないように、核酸抽出試薬固定化部にタンパク質分解酵素を共有結合によって固定化するか、または核酸抽出試薬固定化部と検査領域とを十分に離しておくことが好ましい。界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両イオン性および非イオン性のいずれのものを用いてもよい。このような界面活性剤としては、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)等が例示されるが、これらに限定されない。また、リゾチームを利用して細胞を溶解させることもできる。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記核酸抽出試薬はアルカリ抽出用試薬、プロテアーゼ反応用試薬もしくは界面活性剤、またはこれらの組み合わせとされ、より好ましくはアルカリ抽出用試薬、さらに好ましくは水酸化ナトリウムとされる。
アルカリ抽出用試薬は、上述の界面活性剤を含むものとしてもよい。アルカリ抽出用試薬中の界面活性剤の濃度は特に制限されないが、好ましくは0.005〜5%(w/v)、より好ましくは0.01〜2%(w/v)とされる。
核酸抽出法としては、タンパク質変性剤を用いて、サンプル中のタンパク質およびその他の混在物を分解または変性することにより核酸を抽出する方法を利用することもでき、この方法は、特にRNAを抽出する場合に有効である。タンパク質変性剤としては、タンパク質を可溶化しうるものであればよく、特に制限されないが、例えば、グアニジン塩酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン炭酸塩などのグアニジン塩、尿素などを含むカオトロピック物質などが挙げられる。特に、グアニジン塩酸塩、グアニジンチオシアン酸塩などが好ましい。タンパク質変性剤を用いることにより、生体試料に混在する可能性のあるRNaseの作用を効率よく抑制することが可能である。また、核酸分解酵素の作用を抑制しうるクエン酸ナトリウム、EDTA等のキレート剤や、ジチオスレイトール(DTT)、βメルカプトエタノール等の還元剤を用いてもよい。
本発明による検査用チップにおいて核酸抽出試薬固定化部を設ける場合には、前記増幅試薬は、前記核酸抽出試薬を経由する液体サンプルと混合されたときに、増幅反応にとって適切なpHとなるように構成することが好ましい。例えば、核酸抽出試薬としてアルカリ抽出用試薬を用いる場合において、これを経由した液体サンプルのpHが増幅反応にとって高すぎるときは、水に溶解したときの増幅試薬のpHが予め低くなるように設定しておくことが好ましい。増幅反応にとって適切なpHは、概ね5〜12の範囲、好ましくは7〜10の範囲である。
本発明の他の実施態様によれば、本発明による検査用チップは、必要に応じて、検査領域において形成される核酸増幅反応溶液のpHを増幅試薬による増幅反応に適したものとするためのpH調整試薬が固定化されたpH調整試薬固定化部をさらに含んでなるものとすることができ、このpH調整試薬固定化部は、支持体の内部または表面上において、前記核酸抽出試薬固定化部と前記検査領域との間に配置することができる。
pH調整試薬として用いることのできる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、酢酸、クエン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機スルホン酸が挙げられるが、好ましくは鉱酸とされ、さらに好ましくは塩酸とされる。また、pH調整試薬として用いることのできるアルカリとしては、典型的には水酸化ナトリウムが挙げられる。
核酸抽出試薬固定化部およびpH調整試薬固定化部における試薬の固定化は、増幅試薬について上述した方法によって行なうことができる。例えば、各試薬の溶液を多孔性担体に染み込ませた後にこれを乾燥させ、得られる多孔性担体を検査用チップ上の所定の位置に配置することにより、核酸抽出試薬固定化部およびpH調整試薬固定化部を形成することができる。
本発明による検査用チップは、核酸増幅反応を妨害する夾雑物を吸着するための夾雑物吸着試薬をさらに含んでなることができ、これは、前記検査領域中、または前記核酸抽出試薬固定化部もしくはpH調整試薬固定化部の中に配置することができる。あるいは、サンプル導入部と検査領域との間のいずれかの位置において、夾雑物吸着試薬が固定化された夾雑物吸着試薬固定化部を設けることもできる。このような夾雑物吸着試薬としては、典型的には活性炭が挙げられる。
本発明による検査用チップの形状は特に制限されないが、好ましくは試験片、シートまたはテープの形態とされる。本発明による検査用チップはまた、複数種の標的核酸のそれぞれを増幅するための複数の検査領域を含んでなるものとすることもできる。この場合には、必要に応じて、サンプル導入部から全ての検査領域まで液体サンプルを輸送するための上述の輸液手段が設けられる。また、各検査領域に含まれる、それぞれの標的核酸に特異的な試薬(例えば、プライマー)が混合されないように、複数の検査領域をサンプル導入部に対して並列に配置するか、またはこのような試薬を各検査領域に共有結合によって固定化しておくことが好ましい。
本発明による検査用チップは、液体サンプルから標的核酸を検出するために用いられる。従って、本発明の他の態様によれば、本発明による検査用チップを用いて液体サンプルから標的核酸を検出する方法であって、
(a)液体サンプルを前記検査用チップ上のサンプル導入部と接触させる工程、
(b)前記検査用チップを、検査領域に含まれる増幅試薬による核酸増幅反応に適した条件下でインキュベートする工程、および
(c)前記核酸増幅反応による核酸増幅産物からのシグナルを検出する工程
を含んでなる方法が提供される。
液体サンプルとしては、標的核酸が含まれることが疑われるものであればよく、特に制限されないが、例えば、生物に由来するサンプル、加工食品、排水、飲料水などが挙げられる。また、生物は、動物、植物および微生物のいずれであってもよい。さらに、動物は、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトとされる。動物からのサンプルとしては、血液、便、痰、粘膜(口腔、鼻腔など)、粘液、血清、尿、唾液、涙液、生検サンプル、組織学的組織サンプル、組織培養物などが挙げられる。また、植物は、農作物、観葉植物、天然の食用植物などが挙げられる。このような液体サンプルは、水分を含むものであればいかなるものであってもよい。また、水含有量の少ないサンプルは、水を添加することによって液体サンプルとしてもよい。
標的核酸は、検出することにより有用な情報が得られるものであればよく、特に制限されないが、例えば、野生型遺伝子もしくは変異型遺伝子または病原体に特異的な核酸配列を有するものが挙げられる。病原体としては、例えば、ウイルス、細菌、真菌などが挙げられる。例えば、野生型遺伝子を標的核酸とした場合には、これが検出されないことにより、その遺伝子欠損に起因する疾患が検出される。また、変異型遺伝子を標的核酸とした場合には、これが検出されることにより、遺伝子変異に起因する疾患が検出される。さらに、病原体に特異的な配列を有する核酸を標的核酸とした場合には、これが検出されることにより、その病原体による感染症が検出される。
本発明による核酸検出法における上記各工程は、本発明による検査用チップの構成に応じて、例えば、該検査用チップにおいて利用される核酸増幅法に応じて、容易に実施することができる。また、核酸増幅産物からのシグナルの検出は、検出可能な標識が付された特異的プローブを用いる方法などの一般的な方法により、当業者であれば適宜行なうことができる。また、シグナル発生手段が予め検査用チップ中に存在する場合には、これを利用して簡便にシグナル検出を行なうことができる。
本発明による核酸検出法の結果を有効に活用する手段として、上記工程(c)において検出されたシグナルまたは該シグナルにより得られた結果を遺伝子解析用コンピュータに入力し、該コンピュータによる解析結果を出力することも可能である。従って、本発明によれば、上記工程(a)〜(c)の後に、
(d)検出されたシグナルを遺伝子解析用コンピュータに入力する工程、
(e)前記コンピュータにおいて、前記シグナルと該コンピュータにより利用可能な情報とが比較され、これにより前記シグナルの特徴づけおよび/または前記シグナルに関連する情報の検索がなされる工程、および
(f)前記コンピュータから、前記シグナルの特徴および/または前記シグナルに関連する情報を出力する工程
を含んでなる、遺伝子解析方法が提供される。上記工程(e)におけるコンピュータへの入力および上記工程(g)におけるコンピュータからの出力は、好ましくはインターネットなどの通信ネットワークを介して行なわれる。
本発明による遺伝子解析方法によれば、例えば、シグナルの検出装置と通信装置を連結させておき、得られたシグナルを遺伝子解析センターなどに送信し、そこでより詳細な解析を行い、その詳細な解析結果およびその関連情報を受信することにより、より詳細な情報を得ることが可能になる。前記通信装置としては、インターネットなどの通信ネットワークを介して情報の送受信を行なうことのできる、パーソナルコンピュータ、携帯電話などの携帯用端末等が好適に用いられる。あるいは、本発明による検査用チップを装着することによって本発明による遺伝子解析方法を実行しうる装置を用いることも可能である。このような装置としては、例えば、核酸増幅反応に適した条件を保持するための保温手段、保湿手段等を備えた、携帯電話などの携帯用端末などが挙げられ、さらには、シグナル検出手段をさらに含んでいてもよい。
本発明の好ましい実施態様による遺伝子解析法の概念図を図10に示す。本発明による検査用チップ1001において標的核酸の増幅反応を行なった後、シグナル検出装置1002により増幅産物に基づくシグナルが検出される。検出されたシグナルは、携帯用端末1003により、インターネット1004を介して遺伝子解析用コンピュータ1005に入力される。この遺伝子解析用コンピュータ1005では、入力されたシグナルと、情報記憶装置1006に記憶されている標的核酸の存否により示される情報およびこれに関連する情報とが比較され、これにより前記シグナルの特徴づけおよび/または前記シグナルに関連する情報の検索がなされる。次いで、遺伝子解析用コンピュータ1005から、前記シグナルの特徴および/または前記シグナルに関連する情報が、インターネット1004を介して携帯用端末1003により出力される。出力された情報は、携帯用端末1003により情報記憶装置1007に記憶される。
本発明による遺伝子解析法は、例えば、標的核酸が、その存在または不存在により疾患または障害を示すものであれば、疾患または障害の検出方法、さらには、その疾患または障害に関する情報を取得する方法となる。この場合には、出力される上記シグナルの特徴としては、該シグナルにより示される疾患または障害の名称、標的核酸を含有する遺伝子の名称等が挙げられ、出力される関連情報としては、前記疾患または障害の説明文、該疾患または障害に対する対処方法および有効な治療薬、さらに精密に診断するための方法等が挙げられる。特に、遺伝子解析用コンピュータにおいては、複雑な解析が可能であるため、対象とする疾患または障害に関与する遺伝子が複数存在する場合には、それぞれの遺伝子についての核酸検出法を行なってその結果(シグナル)を全て送信することにより、より正確な解析結果を得ることが可能となる。
特に、本発明による核酸検出法は、被検者自ら実行することが可能であり、その後、通信装置を用いた遺伝子解析をも被検者自ら行なうことにより、遺伝子情報の漏洩が防止される。さらに、個人が所有する携帯用端末などを利用して個人情報を管理することにより、複雑な遺伝子情報を保持・管理することが可能となる。また、その遺伝子情報をもとに、個人の目的に応じた病院や店を選択することも可能となる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
例1:ヒトSTS DYS237遺伝子中の標的核酸配列の検出
本例では、サンプル溶液中に含まれるヒトSTS DYS237遺伝子の検出を行なった。プライマーとしては、下記の配列を有するプライマーペアを用いた。また、テンプレートに対する各プライマー領域の位置関係は図4(配列番号9)に示す通りとした。フォワードプライマーF1は、その3’末端側にある配列(22mer:下線部)が鋳型にアニーリングし、5’末端側にある配列(16mer:下線部以外)がその領域内で折り畳まれて図2に示す構造をとるように設計されている。リバースプライマーR1は、その3’末端側にある配列(20mer:下線部)が鋳型にアニーリングし、伸長反応の後、5’末端側にある配列(10mer:下線部以外)が、そのプライマーによる伸長鎖上の、該プライマーの3’末端残基の16塩基下流から始まる領域にハイブリダイズするように設計されている。
プライマーペア:
F1:GGATATATATATATCCACTGAACAAATGCCACATAAAG(配列番号1);
R1:GCAGCATCACCAACCCAAAAGCACTGAGTA(配列番号2)。
次いで、次の組成を有する増幅反応液:Tris−HCl(20mM,pH8.8)、KCl(10mM)、(NHSO(10mM)、MgSO(8mM)、DMSO(3%)、Triton X−1000(1%)、dNTP(1.4mM)、640U/mlのBst DNAポリメラーゼ(NEW ENGLAND BioLabs)、それぞれ2000nMの上記のプライマーペアおよびエチジウムブロミド(0.5μg/ml)を含有;を調製した。ポリアクリル酸塩系高吸水性樹脂(商品名:レオジック;日本純薬株式会社製)に、その50倍量(重量)の前記増幅反応液を添加し、十分に膨潤させた後に、4℃で粉末状になるまで乾燥させた。得られた粉末を、0.5mmの厚さを有するろ紙からなる検査用チップ(図5)中の検査領域1(503)に散布した。この検査領域1(503)に上部から圧力を加えることによってろ紙の表面上に粉末を保持させた後、図6に示すように、該検査領域をメッシュ(603)で被覆した。検査領域2(504)は、陰性対照として、プライマーを含まない増幅反応液を用いて同様に作製した。
次に、サンプル液として、100ngのHuman Genomic DNA(Clontech社製)を0.1mlの水に溶解した溶液を調製した。このサンプル液を上述の検査用チップに染み込ませ、この検査用チップが乾燥しない条件下、60℃で1時間インキュベートした。
得られた検査用チップに紫外線を照射して各検査領域における蛍光強度を観察したところ、検査領域1(503)では強い蛍光発色が認められたのに対し、陰性対照である検査領域2(504)では蛍光発色が認められなかった。この結果から、上述の検査用チップを用いることにより、サンプル中に存在する標的核酸の増幅および検出が可能となることが明らかとなった。
例2:ヒトアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子中の一塩基変異の検出
本例では、サンプル溶液中に含まれるヒトアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子中の一塩基変異の検出を行なった。検出の対象とする一塩基変異は、同遺伝子の第12エクソン中に存在するSNP(一塩基多型)とした。この一塩基変異の周辺の配列(配列番号10)を、プライマーの設計に用いた領域の位置とともに図7に示す。プライマーとしては、下記の配列を有する2組のプライマーペアを用いた。フォワードプライマーALDH2FWおよびALDH2FMは、その3’末端側にある配列(18mer:下線部)が鋳型にアニーリングし、伸長反応の後、5’末端側にある配列(10mer:下線部以外)が、そのプライマーによる伸長鎖上の、該プライマーの3’末端残基の19塩基下流から始まる領域にハイブリダイズするように設計されている。リバースプライマーALDH2RWおよびALDH2RMは、その3’末端側にある配列(19mer:下線部)が鋳型にアニーリングし、伸長反応の後、5’末端側にある配列(10mer:下線部以外)が、そのプライマーによる伸長鎖上の、該プライマーの3’末端残基の13塩基下流から始まる領域にハイブリダイズするように設計されている。また、これらのプライマーは、その5’末端残基が変異に係るヌクレオチド残基に対応するように設計されている。
野生型DNA検出用プライマーペア:
ALDH2FW:CAGTGTATGCGGGAGTGGCCGGGAGTTG(配列番号3);
ALDH2RW:GAAGTGAAAACCTGAGCCCCCAGCAGGTC(配列番号4)。
変異型DNA検出用プライマーペア:
ALDH2FM:TAGTGTATGCGGGAGTGGCCGGGAGTTG(配列番号5);
ALDH2RM:AAAGTGAAAACCTGAGCCCCCAGCAGGTC(配列番号6)。
次いで、次の組成を有する増幅反応液:Tris−HCl(20mM,pH8.8)、KCl(10mM)、(NHSO(10mM)、MgSO(2mM)、DMSO(8%)、Triton X−1000(1%)、dNTP(0.2mM)、320U/mlのBst DNAポリメラーゼ(NEW ENGLAND BioLabs)、それぞれ1200nMの上記のプライマーペア、MutS(10μg/ml)およびエチジウムブロミド(0.5μg/ml)を含有;を調製した。ポリアクリル酸塩系高吸水性樹脂(商品名:レオジック;日本純薬株式会社製)に、その50倍量(重量)の前記増幅反応液を添加し、十分に膨潤させた後に、4℃で粉末状になるまで乾燥させた。得られた粉末を、0.5mmの厚さを有するろ紙からなる検査用チップ(図5)中の検査領域に散布した。この検査領域に上部から圧力を加えることによってろ紙の表面上に粉末を保持させた後、図6に示すように、該検査領域をメッシュ(603)で被覆した。検査領域1(503)は、陰性対照として、プライマーを含まない増幅反応液を用いて作製した。検査領域2(504)は、野生型DNA検出用プライマーペアを含む増幅反応液を用いて作製し、検査領域3(505)は、変異型DNA検出用プライマーペアを含む増幅反応液を用いて作製した。
次に、3種のゲノムDNA、すなわち、上記のSNPにおいてG/Gの遺伝子型を有する野生型検体、A/Aの遺伝子型を有する変異型検体、およびG/Aの遺伝子型を有するヘテロ型検体を用意し、10ngのそれぞれのDNAを0.1mlの水に溶解した溶液を調製し、これらをサンプル液とした。これらのサンプル液を上述の検査用チップに染み込ませ、この検査用チップが乾燥しない条件下、60℃で1時間インキュベートした。得られた検査用チップについて、UVイルミネーター上で各検査領域における蛍光強度を観察した結果を、下記の表1に示す。
Figure 2005218439
この結果から、上述の検査用チップを用いることにより、サンプル中に存在する野生型遺伝子または変異型遺伝子のいずれかを標的核酸として特異的に増幅および検出することができ、これにより一塩基変異の検出が可能となることが明らかとなった。
例3:B型肝炎ウイルスの検出
本例では、サンプル溶液中に含まれるB型肝炎ウイルスの検出を行なった。プライマーとしては、B型肝炎ウイルスに特異的な標的核酸配列を増幅するものとして、下記の配列を有するプライマーペアを用いた。また、テンプレートに対する各プライマー領域の位置関係は図8(配列番号11)に示す通りとした。フォワードプライマーHBVFは、その3’末端側にある配列(18mer:下線部)が鋳型にアニーリングし、伸長反応の後、5’末端側にある配列(22mer:かっこ内)が、そのプライマーによる伸長鎖上の、該プライマーの3’末端残基の20塩基下流から始まる領域にハイブリダイズするように設計されている。リバースプライマーHBVRは、その3’末端側にある配列(21mer:下線部)が鋳型にアニーリングし、伸長反応の後、5’末端側にある配列(24mer:かっこ内)が、そのプライマーによる伸長鎖上の、該プライマーの3’末端残基の21塩基下流から始まる領域にハイブリダイズするように設計されている。
プライマーペア:
HBVF:[GATAAAACGCCGCAGACACATC]CTTCCAACCTCTTGTCCTCCAA(配列番号7);
HBVR:[CCTGCTGCTATGCCTCATCTTCTT]TGACAAACGGGCAACATACCTT(配列番号8)。
次いで、増幅試薬を固定化するためのデンプン+ポリアクリル酸・ポリビニルアルコール混合吸水性ポリマーを、三宅ら(滋賀県東北部工業技術センター平成10年度報告書「汎用性吸水性材料の開発研究(1)」)の方法に従って調製した。まず、デンプンとアクリル酸とを20:80の重量比で含有する混合物を10重量%の濃度で水に溶解した。得られた水溶液50gに、重合開始剤としてのペルオキソ二硫酸カリウム0.25gおよび架橋剤としてのN,N−メチレンビスアクリルアミド0.01gを添加した。得られた溶液を、不活性ガスを充填したフラスコ中で攪拌しながら、室温から80℃まで約40分間かけて加熱した後、80℃にて2時間攪拌を続けた。得られた粘性液を1N水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、2倍量(重量比)の10重量%PVAゲルを添加し、加熱しながら2時間攪拌した。
得られたポリマー溶液に、次に示す増幅試薬をそれぞれの最終濃度となるように添加した:Tris−HCl(20mM,pH8.8)、KCl(10mM)、(NHSO(10mM)、MgSO(2mM)、DMSO(8%)、Triton X−1000(1%)、dNTP(0.2mM)、800U/mlのBst DNAポリメラーゼ(NEW ENGLAND BioLabs)、2000nMのDNAポリメラーゼアプタマー、それぞれ2000nMの上記のプライマーペアおよびサイバーグリーン(0.5μg/ml)。
増幅試薬を含有するこのポリマー溶液10μlを、ろ紙からなる検査用チップ(図9)中の検査領域1(904)に塗布し、自然乾燥させた。検査領域2(905)は、陰性対照として、プライマーを除く増幅試薬を含有する上記ポリマー溶液を用いて同様に作製した。
上記検査用チップ(図9)上の核酸抽出試薬固定化部(903)は、0.2N水酸化ナトリウム水溶液をろ紙に染み込ませた後に、これを乾燥させることにより作製した。
サンプル液として、B型肝炎ウイルス(HBV)感染者およびHBV非感染者から採取した血液を用いた。このサンプル液を、上述の検査用チップの、細胞溶解剤固定化部を挟んで検査領域とは反対側の端部に染み込ませ、この検査用チップが乾燥しない条件下、60℃で1時間インキュベートした。
得られた検査用チップに紫外線を照射して各検査領域における蛍光強度を観察した結果を、下記の表2に示す。
Figure 2005218439
また、紫外線を照射しない場合においても、表2に示す蛍光強度に比例した強度の発色を観察することができた。この結果から、上述の検査用チップを用いることにより、ヒトから採取した血液サンプル中に存在するB型肝炎ウイルスの検出が可能となることが明らかとなった。
図1は、等温増幅プライマー法における、第一のプライマーを用いた核酸増幅反応の作用機序を模式的に示した図である。 図2は、第二の態様による等温増幅プライマー法に用いられる第二のプライマーの構造を例示した図である。 図3aは、第二の態様による等温増幅プライマー法における核酸増幅反応の作用機序を模式的に示した図である。 図3bは、第二の態様による等温増幅プライマー法における核酸増幅反応の作用機序を模式的に示した図である。 図4は、ヒトSTS DYS237遺伝子の増幅に用いた第一および第二のプライマーの該遺伝子上での位置を示す図である。 図5は、本発明による検査用チップの一つの態様を示す図である。 図6は、本発明による検査用チップの一つの態様における検査領域の断面図である。 図7は、ヒトアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子における一塩基変異の検出に用いた第一および第二のプライマーの、該遺伝子上での位置を示す図である。 図8は、B型肝炎ウイルスに特異的な標的核酸の増幅に用いた第一および第二のプライマーの位置を示す図である。 図9は、本発明による検査用チップの一つの態様を示す図である。 図10は、本発明の好ましい実施態様による遺伝子解析法の概念図である。
符号の説明
501 検査用チップ
502 ろ紙からなる支持体
503 検査領域1
504 検査領域2
505 検査領域3
506 持ち手部
601 ろ紙からなる支持体
602 増幅試薬が固定化された吸水性材料
603 メッシュ
901 検査用チップ
902 ろ紙からなる支持体
903 核酸抽出試薬固定化部
904 検査領域1
905 検査領域2
906 持ち手部
1001 本発明による検査用チップ
1002 シグナル検出装置
1003 携帯用端末
1004 インターネット
1005 遺伝子解析用コンピュータ
1006 情報記憶装置
1007 情報記憶装置

Claims (25)

  1. 液体サンプルから標的核酸を検出するための検査用チップであって、
    支持体、前記支持体上に設けられたサンプル導入部、ならびに前記支持体の内部または表面上に位置する、標的核酸を増幅するための増幅試薬が固定化された検査領域を少なくとも含んでなる、検査用チップ。
  2. 前記増幅試薬が、一定の温度下での標的核酸の増幅を可能とするものである、請求項1に記載の検査用チップ。
  3. 前記増幅試薬に含まれる第一のプライマーが、標的核酸配列の3’末端部分の配列(A)にハイブリダイズする配列(Ac')を3’末端部分に含んでなり、前記標的核酸配列において前記配列(A)よりも5’側に存在する配列(B)の相補配列(Bc)にハイブリダイズする配列(B')を前記配列(Ac')の5’側に含んでなるものである、請求項2に記載の検査用チップ。
  4. 前記第一のプライマーにおいて、前記配列(Ac')と前記配列(B')との間に介在配列が存在しない場合には、前記配列(Ac')の塩基数をXとし、標的核酸配列中における前記配列(A)と前記配列(B)に挟まれた領域の塩基数をYとしたときに、(X−Y)/Xが−1.00〜1.00の範囲にあり、プライマー中において前記配列(Ac')と前記配列(B')との間に介在配列が存在する場合には、XおよびYを前記の通りとし、該介在配列の塩基数をY’としたときに、{X−(Y−Y’)}/Xが−1.00〜1.00の範囲にある、請求項3に記載の検査用チップ。
  5. 前記増幅試薬に含まれる第二のプライマーが、前記標的核酸配列の相補配列の3’末端部分の配列(C)にハイブリダイズする配列(Cc')を3’末端部分に含んでなり、前記標的核酸配列の相補配列において前記配列(C)よりも5’側に存在する配列(D)の相補配列(Dc)にハイブリダイズする配列(D')を前記配列(Cc')の5’側に含んでなるものである、請求項3に記載の検査用チップ。
  6. 前記第二のプライマーにおいて、前記配列(Cc')と前記配列(D')との間に介在配列が存在しない場合には、前記配列(Cc')の塩基数をXとし、標的核酸配列中における前記配列(C)と前記配列(D)に挟まれた領域の塩基数をYとしたときに、(X−Y)/Xが−1.00〜1.00の範囲にあり、プライマー中において前記配列(Cc')と前記配列(D')との間に介在配列が存在する場合には、XおよびYを前記の通りとし、該介在配列の塩基数をY’としたときに、{X−(Y−Y’)}/Xが−1.00〜1.00の範囲にある、請求項5に記載の検査用チップ。
  7. 前記増幅試薬に含まれる第二のプライマーが、前記標的核酸配列の相補配列の3’末端部分の配列(C)にハイブリダイズする配列(Cc')を3’末端部分に含んでなり、かつ相互にハイブリダイズする2つの核酸配列を同一鎖上に含む折返し配列(D-Dc')を前記配列(Cc')の5’側に含んでなるものである、請求項3に記載の検査用チップ。
  8. 前記第二のプライマーにおいて、前記折返し配列(D-Dc')が2〜1000ヌクレオチド長である、請求項7に記載の検査用チップ。
  9. 前記増幅試薬が、吸水性材料によって固定化されたものである、請求項1に記載の検査用チップ。
  10. 前記増幅試薬が、共有結合によって固定化されたものである、請求項1に記載の検査用チップ。
  11. 前記検査領域が、増幅産物に由来するシグナルを発生させるシグナル発生手段をさらに含んでなるものである、請求項1に記載の検査用チップ。
  12. 前記シグナルが、目視によって検出可能なものである、請求項11に記載の検査用チップ。
  13. 前記支持体の内部または表面上において、前記サンプル導入部と前記検査領域との間に、液体サンプルから核酸を抽出するための核酸抽出試薬が固定化された核酸抽出試薬固定化部をさらに含んでなる、請求項1に記載の検査用チップ。
  14. 前記核酸抽出試薬が、アルカリ抽出用試薬、プロテアーゼ反応用試薬もしくは界面活性剤、またはこれらの組み合わせである、請求項13に記載の検査用チップ。
  15. 前記支持体の内部または表面上において、前記核酸抽出試薬固定化部と前記検査領域との間に、前記検査領域において形成される核酸増幅反応溶液のpHを前記増幅試薬による増幅反応に適したものとするためのpH調整試薬が固定化されたpH調整試薬固定化部をさらに含んでなる、請求項13に記載の検査用チップ。
  16. 試験片、シートまたはテープの形態を有する、請求項1に記載の検査用チップ。
  17. 複数種の標的核酸のそれぞれを増幅するための複数の検査領域を含んでなる、請求項1に記載の検査用チップ。
  18. 前記標的核酸が、野生型遺伝子もしくは変異型遺伝子または病原体に特異的な核酸配列を有するものである、請求項1に記載の検査用チップ。
  19. 前記病原体が、ウイルス、細菌、または真菌である、請求項16に記載の検査用チップ。
  20. 請求項1〜19のいずれか一項に記載の検査用チップを用いて、液体サンプルから標的核酸を検出する方法であって、
    (a)液体サンプルを前記検査用チップ上のサンプル導入部と接触させる工程、
    (b)前記検査用チップを、検査領域に含まれる増幅試薬による核酸増幅反応に適した条件下でインキュベートする工程、および
    (c)前記核酸増幅反応による核酸増幅産物からのシグナルを検出する工程
    を含んでなる、方法。
  21. 前記標的核酸が、野生型遺伝子もしくは変異型遺伝子または病原体に特異的な核酸配列を有するものである、請求項20に記載の方法。
  22. 前記病原体が、ウイルス、細菌、または真菌である、請求項21に記載の方法。
  23. 請求項1〜19のいずれか一項に記載の検査用チップを用いて、遺伝子を解析する方法であって、
    (a)液体サンプルを前記検査用チップ上のサンプル導入部と接触させる工程、
    (b)前記検査用チップを、検査領域に含まれる増幅試薬による核酸増幅反応に適した条件下でインキュベートする工程、
    (c)前記核酸増幅反応による核酸増幅産物からのシグナルを検出する工程
    (d)検出されたシグナルを遺伝子解析用コンピュータに入力する工程、
    (e)前記コンピュータにおいて、前記シグナルと該コンピュータにより利用可能な情報とが比較され、これにより前記シグナルの特徴づけおよび/または前記シグナルに関連する情報の検索がなされる工程、および
    (f)前記コンピュータから、前記シグナルの特徴および/または前記シグナルに関連する情報を出力する工程
    を含んでなる、方法。
  24. 工程(d)におけるコンピュータへの入力および工程(f)におけるコンピュータからの出力が、通信ネットワークを介して行なわれる、請求項23に記載の方法。
  25. 工程(d)におけるコンピュータへの入力または工程(f)におけるコンピュータからの出力が、通信ネットワークに接続された携帯電話を介して行なわれる、請求項23に記載の方法。
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