JP2005213189A - 無水トリメリット酸エステルの製造方法 - Google Patents

無水トリメリット酸エステルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高収率且つ高純度で無水トリメリット酸クロリドを製造する。
【解決手段】 トリメリット酸無水物と塩化チオニルとを反応させて無水トリメリット酸クロリドを得、次いで該無水トリメリット酸クロリドとアルコール類とを反応させて無水トリメリット酸エステル類を製造する方法において、塩化チオニルとの反応により得られた無水トリメリット酸クロリドを精製処理した後、アルコール類との反応に供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、無水トリメリット酸エステルの製造方法に関する。詳しくは、無水トリメリット酸エステルを、高収率且つ高純度で製造する方法に関する。
無水トリメリット酸エステルは耐熱性樹脂であるポリイミドの原料となる他、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂の硬化剤としても工業的に有用な化学品であり、その製法が各種検討されている。
その中で製造法の一つとして、無水トリメリット酸クロリドとエチレングリコールを反応させて、エチレングリコールジ無水トリメリテートが得られることが報告されている。(非特許文献1参照)。
また、トリメリット酸クロリドとアルコール類として、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、またはドデカメチレングリコールを反応させ、対応するジ無水トリメリテートを製造する例が開示されている(非特許文献2参照)。
さらに、トリメリット酸クロリドとアルコール類との反応において、溶媒として誘電率4以上のエーテル系溶媒を用いて反応を行うことにより収率が改善されることが開示されている(特許文献1参照)。
Journal of Polymer Materials, (英国)1985年, 2巻, p.64-68. Polymer News, (米国)2001年, 26巻, p.335-340. 特開平4−29986号公報
しかしながら、これらの方法においては高純度の製品を得るには限界があり、例えば情報電子材料など特に純度の高い材料が要求される用途では品質上の問題があった。
本発明の目的は、簡便な操作で高純度の無水トリメリット酸エステル類を得る方法を提供することにある。
本課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、最終的に得られる無水トリメリット酸エステルの純度は、意外にも該エステルを製造するための原料の1つである無水トリメリット酸クロリドを製造する工程に大きく依存することを見出した。従来、トリメリット酸無水物と塩化チオニルとを反応させて無水トリメリット酸クロリドを製造し、これとアルコール類とを反応させて目的生成物である無水トリメリット酸エステルを得た後にこれを精製しても、95%程度の純度までしか到達することができなかった。ところが本発明者らの検討によれば、無水トリメリット酸クロリドを得た段階でこれに精製処理を施しておくことにより、驚くべきことに、目的生成物である無水トリメリット酸エステルを精製する際の精製効率が格段に向上し、従来は不可能であった100%に近い純度を達成することができることに知見し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の要旨は、トリメリット酸無水物と塩化チオニルとを反応させて無水トリメリット酸クロリドを得、次いで該無水トリメリット酸クロリドとアルコール類とを反応させて無水トリメリット酸エステル類を製造する方法において、塩化チオニルとの反応により得られた無水トリメリット酸クロリドを精製処理した後、アルコール類との反応に供することを特徴とする無水トリメリット酸エステルの製造方法、に存する。
本発明によれば、工業上簡便な操作により収率良く、かつ純度の高いトリメリット酸エステル類を製造することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<トリメリット酸無水物と塩化チオニルとの反応>
本発明におけるトリメリット酸無水物の酸クロリド化においては、いずれも工業的な製品として入手可能なトリメリット酸無水物、塩化チオニルを使用することが可能である。
反応は、無溶媒で行うことも、溶媒を使用して行うことも共に可能である。溶媒を使用する場合は、特に使用する溶媒に制限はないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメリツエーテルなどのエーテル系化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、などが好適に用いられる。
溶媒を使用する場合、その量は、原料であるトリメリット酸無水物の濃度が、下限が通常0.1%以上、好ましくは1%以上であり、上限は特に制限はないが、通常80%以下、好まし
くは50%以下である。
また、反応の際、活性化剤としてジメチルホルムアミド等を添加をして反応を実施することも可能である。
トリメリット酸無水物に対する塩化チオニルの使用量に制限はないが、トリメリット酸無水物が完全に転化するのに十分な量の塩化チオニルを使用することが好ましい。一般的には、トリメリット酸無水物に対する塩化チオニルのモル比が、下限が通常1.0以上、好ましくは1.05以上さらに好ましくは1.1以上であり、上限が通常10.0以下、好ましくは5.0以下、さらに好ましくは2.0以下の間で実施されるのが好ましい。
反応温度は、十分な反応速度を得るために加温して実施するのが好ましい。具体的には、下限が通常30℃以上、好ましくは40℃以上、上限が通常200℃以下、好ましくは150℃以下の範囲で実施される。
反応の進行と共に、塩化水素と二酸化硫黄のガスが発生するのが観察されるが、これらのガスの発生が無くなるまで反応を継続すると原料であるトリメリット酸無水物の残存量を減らすことができる。一般的な反応時間は、下限が通常10分以上、好ましくは30分以上、上限は特に限定はされないが通常24時間以下、好ましくは12時間以下である。
<無水トリメリット酸クロリドの精製処理>
反応終了後、生成した無水トリメリット酸クロリド(以下、この精製処理前の無水トリメリット酸クロリドを「粗無水トリメリット酸クロリド」と称することがある。)の精製処理を行う。反応で塩化チオニルを過剰に使用した場合は、減圧、もしくは常圧で残存した塩化チオニルを留去するのが好ましい。また適当な共沸溶媒を添加して共沸により留去しても良い。その際に使用する共沸溶媒は、塩化チオニルと共沸する溶媒であれば制限はないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物が好適に使用される。
粗無水トリメリット酸クロリドの精製処理は、例えば、蒸留、晶析、再結晶等で実施することが可能である。
蒸留で行う場合は、常圧、減圧ともに採用可能である。
晶析とはここでは、あらかじめ溶質の溶解に十分な量の溶媒を添加して溶解させた溶液から溶媒を徐々に留去する事、もしくは溶液を冷却することにより結晶を晶出させる方法などをさすものとする。
ここで使用する溶媒の制限は特にないが、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、などが好適に用いられる。中でも芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素が特に好ましい。これらの中でも、トルエン、キシレン(単品、位置異性体の混合物を含む)、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。また、必要に応じてこれら溶媒を複数組み合わせた混合溶媒を用いても良い。この場合、使用する溶媒の組成比に関しては任意である。
再結晶とはここでは、溶質を溶媒に溶解し、再度、結晶として析出させる操作であり、具体的には、高温の飽和溶液を冷却する方法、ならびに溶液に他の溶媒を添加して溶解度を低下させる方法、などを指すものとする。
ここで使用する溶媒は、晶析の場合と同様である。本発明においては、晶析と再結晶とは区別なく採用する事ができる。
この無水トリメリット酸クロリドの精製は本発明における本質的部分であり、この精製処理を省略すると好ましい収率、純度で目的物を得られなくなる。なぜ、この無水トリメリット酸クロリドでの精製を実施しないと収率、純度の低下をまねくのか、という点に関しては詳細不明であるが、例えば、酸クロリドの精製前には無水トリメリット酸クロリドの芳香核部が塩素化された化合物や、酸無水物部分が解裂して生成したカルボキシル基が酸クロリド化されたもの、等の副生物が少量混在する可能性が考えられる。この段階で精製を行わないとこれら副生物が次工程にそのまま持ち込まれ、アルコール類と反応してエステル化されると、目的物とは異なる生成物を与えるので目的物の純度を低下させる原因となる。またそればかりではなく、こうして得られる副生物の構造は、基本的にトリメリット酸と、ジオール類のジエステル、トリエステル、等のポリエステルであり目的物の構造と近いため、これら副生物の溶媒に対する溶解挙動が目的物のそれに類似する可能性がある。このため、繰り返し粗体の再結晶化を実施しても目的物から不純物が除去できず、純度の向上が達成されなくなる事が考えられる。従って、このような構造を有する副生物をあらかじめ生成しないようにプロセス系を構築することが必要であり、無水トリメリット酸クロリドの精製は、この点で大きな寄与をしていると思われる。次工程で使用可能となる無水トリメリット酸クロリドの純度であるがおおよそ90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。
<無水トリメリット酸クロリドとアルコール類との反応>
本反応で使用する無水トリメリット酸クロリドは前述した精製工程を経て精製されたもののみである。 適用できるアルコール類については、炭素数が2以上30以下であり、水酸基数が2以上4以下であれば特に制限はなく使用可能である。例えば、ジオール類としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコールエーテル、p−キシリレン−α、α‘−ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、水素化ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、等の環式ジオールが上げられる。 また、3個以上の水酸基を有するポリアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール等があげられる。
アルコール類と無水トリメリット酸クロリドとの使用の量比は、アルコール類の水酸基1モルに対して無水トリメリット酸クロリド1モル等量あれば十分である。しかしながら、反応の押し切りをはかる目的で無水トリメリット酸クロリドを水酸基に対して過剰に用
いることもできる。その際の無水トリメリット酸クロリドの使用量であるが、水酸基1モ
ルに対して1.0モル等量から1.5モル等量、好ましくは1.0モル等量から1.2モル等量である。水酸基の量に対して無水トリメリット酸クロリドの量が不足すると、水酸基と酸無水物部分との反応が起こり副生物を生成する可能性があるので好ましくない。
本反応においては、反応の進行と共に塩化水素を副生する。この塩化水素を中和するために塩基を用いて反応を行っても良い。塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基、塩基性のイオン交換樹脂、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機3級アミン、ピリジン等の芳香族アミン等の使用が可能である。中でもピリジンが好適に用いられる。塩基の使用量であるが、生成する塩化水素の等量ないし、等量以上用いられる。 具体的には生成する塩化水素に対して、下限が通常1.0モル等量、上限は通常2.0モル等量、好ましくは1.5モル等量用いられる。
反応は通常溶媒を用いて行う。用いることのできる溶媒は、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、t-ブチル
メチルエーテルなどのエーテル系溶媒、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素溶媒、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、酢酸エチルやガンマブチロラクトンなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒などがあげられるが、反応試剤であるジオール類、無水トリメリット酸クロリド、ピリジンの溶解性に問題がない限り、使用される溶媒は特に限定されない。また、ジオール類を溶解する溶媒と、無水トリメリット酸クロリドを溶解する溶媒、ピリジンを溶解する溶媒が異なり、反応のために混合後、これらの混合溶媒を形成してもかまわない。具体的には、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましく用いられる。また、必要に応じてこれら溶媒を組み合わせ混合して用いることもできる。この場合、使用する溶媒の組成比に関しては任意である。
溶媒の使用量は、原料であるトリメリット酸無水物、ジオール類の濃度でともに、下限が通常1%以上、好ましくは5%以上であり、上限が通常80%以下、好ましくは50%以下である。
各試剤の添加順序は任意であり特に限定はされない。例えば中和剤としてアミンを使用する場合、アルコール類とアミンの混合物あるいは混合溶液中に、無水トリメリット酸クロリドあるいはその溶液を添加する方法、逆に無水トリメリット酸クロリドあるいはその溶液中にアルコール類とアミンの混合物あるいは混合溶液を添加する方法、無水トリメリット酸クロリドあるいはその溶液中にアルコール類とアミンをあるいはそれぞれの単独の溶液を同時に添加する方法、などである。
試剤を添加する際の温度、さらに添加後引き続き行う反応における温度は、下限が通常−10℃以上であり、上限が通常100℃以下、好ましくは50℃以下である。温度が高すぎると副生生物が増加する傾向にある。
反応に要する時間は、早い場合では試剤添加後直後には反応は終了しており、また遅い場合でも24時間反応させれば十分である。
<生成した無水トリメリット酸エステルの精製処理>
反応終了後、中和剤を使用した場合、その除去を行う。アミン類を使用した場合は、その塩酸塩が生成しているので濾過等により除去する。中和剤を使用しなかった場合には、窒素ガスでのバブリングや加温攪拌等により、溶解した塩化水素ガスをなるべく系から除去してから次の生成工程に進むのが好ましい。
こうして得られた無水トリメリット酸エステル(以下、この精製処理前の無水トリメリット酸エステルを「粗無水トリメリット酸エステル」と称することがある。)は再結晶あるいは晶析により精製処理を行い純度を高める。
本発明において言う再結晶とは、溶質である粗無水トリメリット酸クロリドを溶媒に溶解し、再度、結晶として析出させる操作であり、具体的には、高温の飽和溶液を冷却する方法、ならびに溶液に他の溶媒を添加して溶解度を低下させる方法、などを指すものとする。また、晶析とはあらかじめ溶質の溶解に十分な量の溶媒を添加して溶解させた溶液から溶媒を徐々に留去する事、もしくは溶液を冷却することにより結晶を晶出させる方法などをさすものとするが、本発明における粗無水トリメリット酸エステルの精製においては、この両者は区別することなく採用できる。
再結晶、晶析工程において使用される溶媒は、溶質である無水トリメリット酸エステル類が溶解し化学変化をもたらさない溶媒であれば制限無く使用可能である。具体的には、無水トリメリット酸エステル類の25℃における溶解度が1〜100g/100g溶媒である溶媒が好ましく、中でも例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、無水酢酸、無水プロピオン酸などのカルボン酸無水物溶媒、などが好適に用いられる。これらの中でも、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、無水酢酸、無水プロピオン酸が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用してもいいし、複数を組み合わせて用いてもよい。複数の溶媒を組み合わせる場合、使用する溶媒の組成比に関しては任意である。
以上により得られる無水トリメリット酸エステルの純度は、通常、96%以上、好ましく
は98%以上、より好ましくは99%以上である。
<用途>
本発明で得られる無水トリメリット酸エステル類は、耐熱性樹脂であるポリイミドやポリアミド酸の原料となる他、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂の硬化剤としても有利に利用する事が可能である。特に高い純度ものもが得られるため、近年高純度の品質が求められている電子部品材料や光学用途に特に適している。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
<高速液相クロマトグラフィーによる純度の分析>
下記条件の液相クロマトグラフィーで、安息香酸フェニルを内標として分析を行った。
・カラム; GLサイエンス社製 Inertsil ODS-3V 4.6I.D.*150mm
・溶離液; (0.1vol% TFA/MeCN) / (0.1vol% TFA H2O) = 60/40
・流 速; 1.0mL/min.
・カラム温度;40℃
・検出器; RI 検出器

実施例1
<無水トリメリット酸クロリドの合成及び精製処理>
反応容器を窒素ガスで置換、流通させながら、トリメリット酸無水物30.0g(156mmol)、塩化チオニル29.7g(250mmol、トリメリット酸無水物に対して1.6mol等量)、ジメチルホルムアミド30mg(0.4mmol)を仕込みオイルバスにて加熱し反応した。この間のバスの温
度は85℃、内温は始め72℃であったが徐々に上がり最終的には85℃まで上昇した。反応中、ガスの発生と共に無水トリメリット酸が溶解するのが観察され、3.5時間加熱した後に
は薄い黄色のクリアーな溶液となった。
この溶液にトルエン30mLを添加し150Torr、バス温度95℃でトルエンと共に過剰に添加
した塩化チオニルを留去した。同様の操作を再度繰り返した。留去後の油状物の重量は51.9gであった。
この油状物は再結晶化により精製を実施する。このものにトルエン30mLを添加しバス温度75℃のオイルバスで加温した。このトルエン溶液にヘプタン15mLを添加したのち、オイルバスをはずして放冷し、無水トリメリット酸クロリドの結晶を種晶として少量添加して再結晶化を実施した。十分に結晶が析出した後、ヘプタン215mL添加して濾過した。濾別
した結晶はヘプタンで洗浄後、減圧乾燥し白色の結晶を28.8g(単離収率88%)得た。
<ドデカンジオールと無水トリメリット酸クロリドのエステル化反応及び精製処理>
上記のように精製して得た無水トリメリット酸クロリド9.0g(42.7mmol)をテトラヒドロフラン(THF)36mLに溶解し窒素気流下で反応器に仕込み、氷−水浴にて15℃に冷却した。ここへ、ドデカンジオール4.14g(20.4mmol)とピリジン3.22g(40.7mmol)をTHF54mLに溶解した溶液を35分かけて滴下した。この間にピリジンの塩酸塩が析出し、反応液の内温が22℃に上昇した。この温度を保ってさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過によりピリジン塩酸塩を濾別し、得られた濾液をロータリーエバポレーターにより濃縮して結晶を晶出した。この時のTHFの残量は20mLである。このものにMEKを25mL添加して濾過により結晶を濾別し、減圧乾燥して白色結晶を9.28g(82.9%収率)得た。この結晶を高速液体クロマトグラフィーの内標法により純度を検定したところ、93.5%であった(
表−1中、第1回精製処理品)。
こうして得られた白色結晶を、再度再結晶化により精製した。上記結晶6.50gを無水酢
酸32.5mLを添加し100℃に加熱して完全に溶解した。結晶が完全に溶解した後、放冷して
結晶を析出させた。 析出した結晶は濾過により濾別後、減圧乾燥し、白色の結晶6.08g
(回収率93.5%)を得た。このものを上記と同様純度検定をしたところ、99.0%の純度を有していた(表−1中,第2回精製処理品)。
最終的に2回の再結晶化後の単離収率は77.5%で、またLC純度は99.0%と十分に高いものであった。
比較例1
<無水トリメリット酸クロリドの合成>
実施例1と同様に無水トリメリット酸クロリドを合成したが、塩化チオニル留去後の油状物にTHF66mLを添加して溶解し、次のエステル化に使用した。すなわち、過剰に使用した塩化チオニルの除去はしたものの、実施例1に示すような結晶化による精製は行わなかった。
<ドデカンジオールと無水トリメリット酸クロリドのエステル化反応及び精製処理>
このようにして得た無水トリメリット酸クロリドのTHF溶液(基質10.96g、52.1mmol)を反応器に入れ、実施例1と同様にドデカンジオールとエステル化反応を行った。さらに、実施例1と同様にTHF溶液を濃縮して結晶を析出させ、MEKを添加して固形物を濾過、減圧乾燥して白色結晶を得たが、その量は6.40g(第1晶;49.2%収率)にとどまった。そこで、第1晶を濾別して得た濾液を濃縮してさらに結晶を析出させ、濾別、真空乾燥して第2晶を2.11g(16.2%)得た。この第1晶と第2晶とを混合して第1回精製処理品とした。8.51g(65.4%収率)。この第1回精製処理品の純度を高速液体クロマトグラフィーにより検定したところ、93.2%であった。
こうして得られた結晶のうち7.00gを実施例1と同様に無水酢酸を溶媒として再結晶
精製を実施して第2回精製処理品6.12g(回収率87.4%)を得た。このものを上記と同様純度検定をしたところ、95.9%にとどまっていた。そこで、さらに同様にして無水酢酸を溶媒
として再結晶化を繰り返したところ、回収率95.2%で結晶を得たものの、その純度は95.8%
とほとんど向上しなかった(表−1中、第3回精製処理品)。
結局、晶析と再結晶を合わせて3回の精製処理での収率は54.4%と少なく、また純度
も95.8%と十分な値が得られなかった。
以上から判るように、途中原料の無水トリメリット酸クロリドを精製しないで使用すると、エステル体の収率が低下し、かつ再結晶を繰り返しても純度を向上させることができず、高純度の無水トリメリット酸ドデカンジオールエステルを得られないことが判る。
実施例2
<無水トリメリット酸クロリドの合成>
実施例1と同様にして無水トリメリット酸クロリドを合成し、精製処理を行った。
<デカンジオールと無水トリメリット酸クロリドのエステル化反応及び精製処理>
上記で得られた無水トリメリット酸クロリド5.0g(23.75mmol)をテトラヒドロフラン(
THF)20mLに溶解し窒素ガス気流下、反応器に仕込み、氷−水浴にて15℃に冷却した。ここへ、ドデカンジオール2.30g(11.3mmol)とピリジン1.79g(22.6mmol)をTHF30mLに溶解した溶液を35分かけて滴下した。この間にピリジンの塩酸塩が析出し、反応液の内温が22℃に上昇した。この温度を保ってさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過によりピリジン塩酸塩を濾別しTHFで洗浄後、ロータリーエバポレーターによりTHFを留去した。残存物にはTHFが4.5mL含まれているのでそれを加味して、さらに5.5mLのTHF、10mLのMEK、10mLの無水酢酸を添加(結局THF/MEK/無水酢酸 10mL/10mL/10mLの混合溶媒の溶液)して85℃のオイルバスで加熱した。結晶が完全に溶解したことを確認して放冷、再結晶化を行った。得られた白色結晶を濾過、減圧乾燥して5.25g(84.3%)の目的物を得た。このものを高速液体クロマトグラフィーで内標法により純度を検定したところ、98.1%であった(表−1中、第1回精製処理品)。
こうして得られた白色結晶を、再度再結晶化により精製した。上記第一回精製品のうち2.70gをTHF/MEK 13.5mL/13.5mLの混合溶媒から再結晶化した。 析出した結晶
を濾過により濾別後、減圧乾燥し、白色の結晶2.35g(回収率87.0%)を得た。このものを上記と同様純度検定をしたところ、100.0%の純度を有していた(表−1中、第2回精製処理品)。
最終的に2回の再結晶化後の単離収率は73.1%であった。
比較例2
<ドデカンジオールと無水トリメリット酸クロリドのエステル化反応及び精製処理>
比較例1と同様にして得た無水トリメリット酸クロリドのTHF溶液(基質10.96g、52.1mmol)を反応器に入れ、実施例1と同様にドデカンジオールとエステル化反応を行った。さらに、実施例2と同様にTHF−MEK−無水酢酸の混合溶液から結晶を再結晶により析出させ、濾過、減圧乾燥して白色結晶を得たが、その量は6.45g(47.3%収率)にとどまった。このものの純度を高速液体クロマトグラフィーにより検定したところ、89.6%であ
った(表−1中、第一回精製処理品)。
こうして得られた第一回精製品のうち3.00gを実施例2と同様にTHF/MEK 7.5mL/7,5mLの混合溶媒から再結晶化した。析出した結晶を濾過により濾別後、減圧乾燥し
、白色の結晶2.27g(回収率75.7%)を得た。このものを上記と同様純度検定をしたところ、93.3%の純度を有していた(表−1中、第2回精製処理品)。
結局、2回の再結晶化後の単離収率は35.8%、LC純度93.3%と、実施例2の結果を大きく下回る結果となった。
Figure 2005213189

Claims (5)

  1. トリメリット酸無水物と塩化チオニルとを反応させて無水トリメリット酸クロリドを得、次いで該無水トリメリット酸クロリドとアルコール類とを反応させて無水トリメリット酸エステル類を製造する方法において、塩化チオニルとの反応により得られた無水トリメリット酸クロリドを精製処理した後、アルコール類との反応に供することを特徴とする無水トリメリット酸エステルの製造方法。
  2. 精製処理が、晶析、再結晶及び蒸留から選ばれる少なくともいずれかである、請求項1に記載の無水トリメリット酸エステルの製造方法。
  3. 精製処理が、晶析または再結晶であり、その際に使用する溶媒が、溶質である無水トリメリット酸エステル類の25℃における溶解度が1〜100g/100gである有機溶媒から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の無水トリメリット酸エステルの製造方法。
  4. 無水トリメリット酸クロリドとアルコール類との反応により得られた無水トリメリット酸エステル類をさらに精製処理する、請求項1〜3のいずれかに記載の無水トリメリット酸エステルの製造方法。
  5. アルコール類が、炭素数2以上30以下であり、且つ水酸基数が2以上4以下のポリオールである、請求項1〜4のいずれかに記載の無水トリメリット酸エステルの製造方法。
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