JP2005211545A - コンタクトレンズの消毒方法及びコンタクトレンズ用消毒液 - Google Patents

コンタクトレンズの消毒方法及びコンタクトレンズ用消毒液 Download PDF

Info

Publication number
JP2005211545A
JP2005211545A JP2004025003A JP2004025003A JP2005211545A JP 2005211545 A JP2005211545 A JP 2005211545A JP 2004025003 A JP2004025003 A JP 2004025003A JP 2004025003 A JP2004025003 A JP 2004025003A JP 2005211545 A JP2005211545 A JP 2005211545A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
contact lens
disinfecting
visible light
disinfection method
disinfection
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004025003A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Morikawa
健志 森川
Tsunetake Aoki
恒勇 青木
Takeshi Owaki
健史 大脇
Yasunori Taga
康訓 多賀
Kazuhiko Nakada
和彦 中田
Kotaro Sakanishi
弘太郎 阪西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Menicon Co Ltd
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Menicon Co Ltd
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Menicon Co Ltd, Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Menicon Co Ltd
Priority to JP2004025003A priority Critical patent/JP2005211545A/ja
Publication of JP2005211545A publication Critical patent/JP2005211545A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
  • Eyeglasses (AREA)
  • Apparatus For Disinfection Or Sterilisation (AREA)
  • Catalysts (AREA)

Abstract

【課題】 優れた消毒効果を発揮することが出来る消毒液を用いて、コンタクトレンズを消毒する、新規な消毒方法を提供すること。
【解決手段】 水系媒体中に、可視光励起型光触媒を分散させると共に、過酸化水素を含有せしめてなる消毒液を用いて、その消毒液中に、消毒すべきコンタクトレンズを浸漬させて、光照射することにより、かかるコンタクトレンズの消毒を行なうようにした。
【選択図】 なし

Description

本発明は、コンタクトレンズ(以下、CLと略称する)の消毒方法及びコンタクトレンズ用消毒液に係り、特に、優れた消毒効果乃至は殺菌効果を発揮することの出来る消毒液を用いて、CLを消毒する技術に関するものである。
従来から、CLは、非含水性CLと含水性CLとに分類されたり、また、ハードCLとソフトCLとに分類されたりしている。而して、それら何れのCLにあっても、継続して使用される場合において、レンズを眼から外して保存している間に、かかるレンズ表面に付着した細菌等の微生物が増殖する恐れがあり、そして、それら微生物によって、眼に対して感染症等の悪影響がもたらされることがあることから、一般にCLに対しては、その装用前において消毒を施すことが必要とされている。特に、ソフトCLの場合には、微生物感染の危険性が高いために、装用前の消毒が極めて重要となっている。
そして、CLを消毒する方法としては、これまで煮沸消毒器を用いた熱消毒法と、殺菌剤乃至は防腐剤による化学的消毒法が、主として採用されているが、前者の熱消毒法においては、長い時間を要する煮沸操作が必要とされるために、近年においては、後者の化学的消毒法が広く用いられるようになっている。
ところで、このような化学的消毒法においては、所定の殺菌/防腐剤を含有させてなるCL用液剤が用いられ、それにCLが浸漬させられて、目的とする消毒処理が施されることとなるが、このような液剤に含有される殺菌/防腐剤としては、これまでに各種のものが提案されており、例えば、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、チメロサール等が知られている(特許文献1〜特許文献3等参照)。
しかしながら、かかる化学的消毒方法において、充分な消毒効果を得るべく、上記に例示する如きクロルヘキシジン等の殺菌/防腐剤を高濃度において含有する液剤を用いる場合にあっては、かかる殺菌/防腐剤が分子レベルにおいてCLに吸着され易いものであることに起因して、レンズ表面の濡れ性が低下する等、レンズ物性や形状が変化したり、場合によっては、その装用時に、眼障害が惹起される恐れがあり、その一方で、レンズ物性及び形状保持や眼に対する安全性を重視して、殺菌/防腐剤の使用濃度を低く抑えた液剤を使用すると、消毒効果が低下することは免れ得ず、その結果、細菌等の微生物によるCLの汚染が惹起されるようになる等の理由から、そのような液剤の取扱いに際しては、殺菌/防腐剤の濃度等に細心の注意を払わなければならず、それによって、消毒処理作業が著しく面倒なものとなっている。
また、化学的消毒法で用いられる殺菌/消毒剤としては、過酸化水素も、よく知られているところであるが、所望とする消毒効果を得るためには、通常、3%(3万ppm)もの濃度が必要であると共に、消毒後においては、CL表面や内部に残存する過酸化水素を分解して無毒化させる中和処理が必要となる。即ち、過酸化水素が残留していると、例え僅かな量であっても、眼に重大な障害をもたらす危険性があるため、従来から、生理食塩水で濯いだり、白金黒等の金属触媒や、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ピルビン酸等の還元剤、或いはカタラーゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素触媒等を用いることにより、残存する過酸化水素を完全に分解除去する中和処理が実施されている。従って、このような過酸化水素を用いる化学的消毒法にあっても、消毒後における中和処理によって、消毒処理作業が著しく煩雑なものとなっている。
さらに、上述するような化学的消毒法で用いられる殺菌/防腐剤含有のCL用液剤において、その消毒効果は、通常、殺菌/防腐剤が細菌等の微生物に直接に作用することにより発揮されるものであることから、液剤の使用に従って、殺菌/防腐剤は徐々に分解,消失して、所期の消毒効果が充分に奏され得なくなるという問題があり、従って、このような液剤を繰り返して用いることは必然的に困難となるために、液剤使用者の経済的負担を増加させる等の問題をも内在している。
特開昭52−109953号公報 特開昭62−153217号公報 特開昭63−59960号公報 国際公開第01/010552号パンフレット 国際公開第01/010553号パンフレット
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にしてなされたものであって、その解決課題とするところは、優れた消毒効果を発揮することが出来る消毒液を用いて、CLを消毒する新規な消毒方法を提供することにある。また、そのような消毒方法において有利に用いられ得るCL用消毒液を提供することも、その課題とするものである。
ところで、従来より、チタン化合物等の可視光励起型光触媒は、酸化還元能を有する触媒として作用することが知られており、この可視光励起型光触媒の酸化力により殺菌を行うことが可能であることも知られている(上記特許文献4,5参照)。しかしながら、このような可視光励起型光触媒の殺菌作用をCLの消毒に適用した例はなく、従って、現状において、可視光励起型光触媒を用いてCLの消毒を安全に且つ有効に実施する方法については、何等明らかにされていない。
かかる状況下、本発明者らは、上述せる如き課題を解決するために、先ず、水系媒体中に、所定の可視光励起型光触媒を分散させて消毒液を調製し、そして、その消毒液中に、消毒対象とするCLを浸漬させ、更に、その浸漬された状態下において、かかる消毒液に光を照射することにより、CLに対して有効な消毒効果乃至は殺菌効果が得られることを確かめた。そして、更に、そのような可視光励起型光触媒を含有する消毒液について、本発明者らが更なる研究を重ねた結果、そのような可視光励起型光触媒を含有する消毒液に、更に、低濃度の過酸化水素を含有させて光照射を行えば、それら可視光励起型光触媒や過酸化水素を同濃度においてそれぞれ単独で使用する場合に比べて、消毒効果乃至は殺菌効果が相乗的に有利に増大され得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
従って、本発明は、そのような知見に基づいて完成されたものであって、その第一の態様とするところは、水系媒体中に、可視光励起型光触媒を分散させると共に、過酸化水素を含有せしめてなる消毒液を用い、該消毒液中に、消毒すべきCLを浸漬させて、光照射することにより、かかるCLの消毒を行うことを特徴とするCLの消毒方法にある。
また、本発明に従うCLの消毒方法における第二の態様にあっては、前記可視光励起型光触媒として、酸化チタン結晶格子中にアニオン(X)を含有させたチタン化合物:Ti−O−Xが、有利に採用されることとなる。
そして、本発明の第三の態様おいては、かかる酸化チタン結晶格子中にアニオン(X)を含有させたチタン化合物:Ti−O−Xとして、酸窒化チタンが採用されるのである。
さらに、本発明に従うCLの消毒方法の第四の態様においては、前記可視光励起型光触媒として、電荷分離物質によりコーティング(担持)される構成が、採用される。
ところで、本発明に従うCLの消毒方法の第五の態様では、前記電荷分離物質として、Pt,Ag,Cu及びZnからなる群より選択される少なくとも一つの金属が、用いられることとなる。
そして、本発明の好ましい第六の態様にあっては、前記可視光励起型光触媒が、5nm〜10μmの平均粒子径を有する粒子からなることを特徴としている。
なお、かかる本発明に従うCLの消毒方法においては、前記可視光励起型光触媒が、前記消毒液中に、1ppm〜300ppmの濃度で含有せしめられる構成を、第七の態様として採用する。
また、本発明の望ましい第八の態様においては、前記過酸化水素が、前記消毒液中に、1ppm〜500ppmの濃度で含有せしめられることとなる。
さらに、本発明における第九の態様では、前記光照射の照射光が、360nm〜520nmの波長の光を含んでいる。
更にまた、本発明に従うCLの消毒方法における第十の態様によれば、前記消毒液が、金属イオン及び/又は金属−EDTA錯体を、更に、含有している構成が、有利に採用される。
そして、本発明の第十一の態様においては、前記消毒液が、等張化剤、緩衝剤、界面活性剤、増粘剤及び防腐剤のうちの少なくとも1種を、更に、含有しているのである。
加えて、本発明は、上述せる如きCLの消毒に有利に用いられる消毒液も、また、その対象とするものであって、光照射によってCLに消毒作用を発揮する消毒液にして、水系媒体中に、可視光励起型光触媒と共に、更に、過酸化水素が含有せしめられていることを特徴とするCL用消毒液を、その態様としている。
かかる本発明に従うCLの消毒方法における、先述した第一の態様によれば、消毒液として、水系媒体中に、可視光励起型光触媒と過酸化水素とが組み合わされて、含有せしめられたものが採用され、そして、そのような消毒液に対して、消毒対象であるCLを浸漬させた状態下において、光を照射するようにしていることから、可視光励起型光触媒による消毒乃至は殺菌作用と過酸化水素による消毒乃至殺菌作用とが相俟って、極めて高度な殺菌効果及び消毒効果が、効果的に得られることとなる。
そして、そのような消毒液中に含有された可視光励起型光触媒は、CLの周囲において凝集することなく均一に分散され、以てこの均一な分散により、光の照射時には、かかる可視光励起型光触媒分子の各々に対し、光が均一に且つ万遍なく照射されるようになるのである。このため、光を受けた可視光励起型光触媒分子の発揮する酸化力に基づく消毒作用が、CLの表面全体に対して効果的に働くこととなり、加えて、消毒液中には、過酸化水素も存在しているところから、CLに対する消毒作用が有利に向上せしめられ得るのである。つまり、本発明に従うCLの消毒方法によれば、可視光励起型光触媒と過酸化水素とが含有せしめられた消毒液にCLを浸漬し、その消毒液に対して光を照射するだけで、容易に且つ効果的に、CLの消毒を実施することが出来るのである。
しかも、光触媒として、可視光励起型光触媒が用いられていることによって、紫外光領域よりも長波長側の可視光領域の光で、消毒を行うことが出来るところから、低波長側の紫外線を照射する必要が無くなり、以て紫外線によるCLの黄変等の劣化を極めて効果的に抑制乃至は防止することが出来るのである。また、消毒時に、CL使用者が、消毒液に照射される光を誤って直視した場合にも、眼の網膜への悪影響が効果的に防止され得るといった利点も得られることとなる。
また、本発明に従うCLの消毒方法の第二、第三の態様によれば、可視光励起型光触媒による消毒乃至は殺菌効果が、より一層有利に実現され得るのである。
さらに、本発明に従うCLの消毒方法における第四の態様に従って、電荷分離物質によりコーティングされた可視光励起型光触媒を採用すれば、即ち、前記可視光励起型光触媒の表面に金属の如き電荷分離物質をコーティングすれば、そのような電荷分離物質が光照射によって生じた電荷の分離を助けるように働き、助触媒として作用するところから、光触媒反応により発生した電子と正孔が再結合する確率が低くなるため、電子と正孔の再結合による触媒活性の低下を、効果的に防止することが出来るようになり、以て、より一層長期に亘って、優れた消毒乃至は殺菌効果が実現されることとなる。
加えて、本発明に従うCLの消毒方法の第五の態様によれば、上述せる如き電荷分離物質による効果が、有利に発現され得るようになる。
また、本発明に従うCLの消毒方法の上記した第六、第七の態様によれば、消毒液の透明性を有利に確保することが出来るようになることから、可視光励起型光触媒の微粒子に対する光照射性が効果的に向上され、以てCLの消毒乃至は殺菌効果が有利に高められ得ると共に、従来のCL用液剤の場合と同様に、消毒液中でのCLの存在を肉眼にて確認することが出来るようになるといった利点が享受される。
さらに、本発明に従うCLの消毒方法の第八の態様によれば、過酸化水素の濃度が極めて低く設定されている。本発明においては、このような低濃度であっても、優れた消毒乃至は殺菌効力が有利に発揮され得るようになっているのである。また、このような低い濃度を採用すれば、消毒液中の過酸化水素の殆んどが光照射によって効果的に分解されることとなり、消毒後における残存過酸化水素の中和処理を省略することが可能となったり、また、眼への悪影響が著しく低減されて、安全性が高度に確保されることとなる。
更にまた、本発明に従うCLの消毒方法の第九の態様によれば、所定の波長の光が照射せしめられることから、前記可視光励起型光触媒の光触媒作用が効果的に促進され、より一層優れた消毒乃至は殺菌効果を有利に得ることが出来る。
加えて、本発明に従うCLの消毒方法の第十の態様によれば、金属イオン及び/又は金属−EDTA錯体によって、過酸化水素の分解時に生成されるヒドロキシラジカル(・OH)の強い酸化力による細菌等の有害微生物等を殺菌する作用が、顕著に向上され、より一層優れた消毒乃至は殺菌効果が実現される。
さらに、本発明に従うCLの消毒方法における第十一の態様によれば、消毒液に含有される成分に応じた更なる作用が、CLの消毒に際して発揮されるようになる。
また、本発明に従うコンタクトレンズ用消毒液にあっては、水系媒体中に、所定の可視光励起型光触媒が分散せしめられ、更に、過酸化水素が含有せしめられているところから、そのような消毒液中にCLを浸漬させた状態下において、消毒液に光を照射することにより、CLに対して、可視光励起型光触媒の光触媒作用による消毒乃至は殺菌作用が有利に発揮され得、しかも、そのような可視光励起型光触媒による消毒作用が、過酸化水素による消毒作用と相俟って、更に促進され、より一層優れた消毒乃至は殺菌効力が実現され得ることとなるのである。また、消毒液中に含有せしめられる可視光励起型光触媒は、触媒として機能するものであるところから、その消毒乃至は殺菌効力を長期に亘って確保することも出来るのである。
ところで、上述せる如き本発明に従うCLの消毒方法は、本発明に従って構成されるCL用消毒液、具体的には、可視光励起型光触媒と低濃度の過酸化水素とを、精製水等の水系媒体中に分散乃至は含有せしめてなる液剤を用いて、そのような消毒液中に、消毒の施されるべきCLを浸漬させた状態下、かかる消毒液に光を照射することによって、該消毒液中のCLを消毒せしめるようにしたものであって、そこに、本発明の大きな特徴が存している。
そして、かくの如き本発明に係るCL用消毒液において、そこで用いられる可視光励起型光触媒は、二酸化チタン(TiO2 )等の紫外光励起型光触媒とは異なり、基本的に、より長波長側の可視光領域の光によって励起されて、酸化還元能を発揮する光触媒であって、そのような可視光励起型光触媒が、水系媒体中において均一に分散せしめられてなる状態において、光を受けることによって、強い酸化力が発現され、以て、かかる酸化力に基づく有効な消毒乃至は殺菌作用が、CLに対して、効果的に発揮されるようになっているのである。
ここで、そのような可視光励起型光触媒としては、可視光領域の光により励起されて、消毒乃至は殺菌作用を発現するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、従来から同様な光触媒として知られている、酸化チタン系化合物等のチタン含有化合物等を用いることが出来る。中でも、本発明にあっては、上記特許文献4,5等に示される如き、酸化チタン結晶格子中にアニオン(X)を含有させたチタン化合物(以下、Ti−O−Xとして示す)が、特に好適に用いられることとなる。
なお、かかるTi−O−Xは、(1)酸化チタン結晶の酸素サイトの一部をアニオン(X)で置換すること、(2)酸化チタン結晶の格子間にアニオン(X)をドーピングすること、或いは(3)酸化チタン結晶の多結晶集合体の粒界にアニオン(X)をドーピングすること、のうちの何れか1つ又はこれらのうちの2つ以上を組み合わせることによって、酸化チタン結晶にアニオン(X)が含有せしめられてなるものである。中でも、このTi−O−Xとしては、酸化チタン結晶中に、チタン原子と化学結合を有する状態でドーピングされたアニオン(X)を含むものが、好適に採用されることとなる。
また、上記Ti−O−Xを構成する、アニオン(X)としては、例えば、B、C、N、P、S、Cl、As、Se、Br、Sb、Te及びI等を挙げることが出来、これらのうちの少なくとも1種が選択される。特に、これらアニオン(X)のうち、可視光における光触媒性能が高いという観点から、N,Sが、好適であり、また、その中でも、製造が容易であるという理由から、Nが、特に好ましく採用される。そして、そのようなNが構成成分とされた、酸窒化チタン:Ti−O−Nが、本発明にあっては、可視光励起型光触媒として、特に好適に用いられるのである。
而して、上述せる如き可視光励起型光触媒が用いられることにより、かかる光触媒が可視光領域の光を吸収して、触媒作用が効果的に発現されることとなる。このため、太陽光の下、更には蛍光灯等の光を受ける室内においても、充分な光触媒機能が発揮され得るのである。
なお、かかる可視光励起型光触媒は、その表面が、電荷分離物質によってコーティング(担持)されていることが、望ましい。そのような電荷分離物質としては、例えば、Pt、Pd、Ni、Ag、Cu、Zn等の金属や、RuOx (例えば、RuO2 )、NiOx (例えば、NiO)、SnOx (例えば、SnO2 )、Alxy(例えば、Al23)、ZnOx (例えば、ZnO)等の酸化物を挙げることが出来、それらのうちの少なくとも1種が適宜に選択されて用いられることとなる。そして、これらの電荷分離物質は、光照射によって生じた電荷の分離を助ける働きを有し、助触媒として作用するものである。即ち、上記電荷分離物質のうち、Pt、Pd、Ni、Ag、Cu及びZn等の金属元素は、電子を選択的に捕捉する作用を奏する一方、RuOx 、NiOx 、SnOx 、Alxy、ZnOx 等の酸化物は、正孔を選択的に捕捉する作用を奏するのである。そして、これらの物質を、可視光励起型光触媒の表面にコーティング(担持)することにより、光触媒反応により発生した電子と正孔とが再結合する確率が低くなり、これにより、電子と正孔の再結合による触媒活性の低下を有利に防ぐことが出来るようになる。特に、上述せる如き電荷分離物質の中でも、Ptにあっては、担持による光触媒性能の向上が大きいという点から、好適に用いられる。また、Ag、Cu、Znにあっては、抗菌作用を有しているところから、それぞれ、好適に用いられるのであり、それらの中でも、抗菌性能が大きなAgが、特に好適である。
また、本発明において採用される可視光励起型光触媒としては、その平均粒子径、具体的には、レーザー光拡散法で求められる粒子径の平均が、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは6nm〜1μmであるものが、望ましい。何故なら、平均粒子径が上記した範囲より小さいものは、作製が困難で、製造コストが高くなると共に、量子サイズ効果により可視光での光触媒性能が低下するため、好ましくないのであり、一方、平均粒子径が上記範囲より大きいものは、比表面積の低下により光触媒性能が低下すると共に、光触媒自体が水系媒体中に分散しきれず、その粉末が沈降し易くなるため、取扱いが困難となり、好ましくない。
さらに、消毒液中における、前記可視光励起型光触媒の含有量としては、特に制限されるものではないものの、その含有量が少な過ぎると、目的とする消毒効果を充分に実現することが出来なくなることから好ましくなく、逆に多過ぎると、消毒液の透明性を確保出来なくなり、可視光励起型光触媒の微粒子に対する光照射効果が低下して、CLの消毒作用が著しく低下してしまったり、更には、消毒液中でのCLの存在を肉眼にて確認することが出来なくなってしまうところから、一般に1ppm〜300ppm、好ましくは10ppm〜250ppmの濃度で、消毒液中に含有されることが望ましい。
一方、上述せる如き可視光励起型光触媒と共に、本発明に従うCL用消毒液に含有せしめられる過酸化水素にあっては、それが単独で使用されても、過酸化水素の分解によって生成するヒドロキシラジカルの強い酸化作用により、細菌等の微生物等の殺菌を行うことが可能であるが、本発明においては、可視光励起型光触媒と組み合わせて用いられ、これによって、可視光励起型光触媒による消毒乃至は殺菌作用と過酸化水素により消毒乃至は殺菌作用とが相俟って、それらを単独で使用する場合に比して、極めて優れた消毒効果が実現せしめられることとなるのである。
このように、過酸化水素と可視光励起型光触媒を組み合わせることで、極めて高い消毒効果が得られることから、かかる過酸化水素の濃度としては、該過酸化水素のみを殺菌乃至は消毒成分として使用する際に必要とされる濃度(一般に、3%=30000ppm)の1/60以下にすることが出来、通常、1〜500ppm程度の濃度、より好ましくは10ppm〜300ppm程度の濃度が、好適に採用される。そして、特に、このような低い過酸化水素濃度が採用されることによって、従来から過酸化水素を含有する消毒液を使用する際に一般に必要とされていた中和処理(過酸化水素を分解して無毒化させる処理)が不要となり、経済性及び消毒作業性が良好となるといった利点が享受され得るようになるのである。また、例え、このようなCL消毒液で処理されたCLが、その表面や内部に、該消毒液が分解されずに残留したまま、装用されるようなことがあっても、装用者の眼に対する悪影響が、有利に低減され得るという特徴を発揮する。
なお、消毒液中における過酸化水素の含有量が、上記した範囲よりも少なくなると、過酸化水素による効果が充分に発揮され得なくなる問題があり、また逆に、上記した範囲より多くなると、優れた消毒効果は得られるものの、CL表面やCL内部に過酸化水素が残存し易くなって眼に重大な障害が惹起される等、眼への悪影響が懸念され、場合によっては中和処理が必要となり、消毒処理作業が煩雑となる問題を内在する。
また、かくの如き過酸化水素を含有するCL用消毒液には、必要に応じて、過酸化水素の活性を促進せしめて、ヒドロキシラジカルを効果的に生成せしめるようにするために用いられる、フェントン反応を起こすような物質、例えば、金属イオン又は金属−EDTA錯体を添加、含有させることも有効であり、このような物質の添加によって、より一層優れた消毒乃至は殺菌効果が発揮され得るようになる。
そして、かかるフェントン反応を生じる金属イオンとしては、例えば、鉄イオン、ニッケルイオンや銅イオン等を挙げることが出来る一方、金属−EDTA錯体としては、そのような金属イオンのEDTA錯体、例えば、Fe−EDTA錯体、Ni−EDTA錯体やCu−EDTA錯体等を挙げることが出来、これらのうちの少なくとも1種が適宜に選択されて、用いられることが望ましい。
さらに、そのような金属イオン及び/又は金属−EDTA錯体が、過酸化水素を含有せしめてなる消毒液に含有されることによって、過酸化水素の活性が促進されて、消毒液中のヒドロキシラジカル濃度が高められ、より一層優れた消毒効果が得られるようになるのである。
なお、上記した金属イオン及び/又は金属−EDTA錯体は、消毒液中での濃度が、好ましくは10ppm〜500ppm、より好ましくは10ppm〜300ppmとなるように含有せしめられることが望ましい。何故なら、10ppm未満であると、上述のフェントン反応が有利に行われ得ず、添加効果が得られないからであり、また、上記した範囲より濃くなると、消毒対象であるCLに吸着する恐れがあるからである。ここにおいて、上記金属イオンと金属−EDTA錯体とを併用する場合には、金属イオン及び金属−EDTA錯体の含有量が、それぞれ、前記した濃度範囲となるように、消毒液中に含有されることが望ましい。
また、本発明に従うCL用消毒液には、上記したフェントン反応を生じさせる物質以外にも、必要に応じて、通常のCL用液剤の調製において使用されている、公知の各種の添加成分、例えば、等張化剤、緩衝剤、界面活性剤、増粘剤及び防腐剤のうちの1種或いは2種以上が組み合わされて含有せしめられても良い。但し、それらの各成分は、何れも、生体に対して安全で、眼科生理学的に許容し得るものであると共に、先述せる如き可視光励起型光触媒と過酸化水素によってもたらされる効果を阻害しないものである必要があり、また、その効果を損なわない量的範囲において、それぞれ使用される。
さらに、そのようなCL用消毒液に必要に応じて含有させられる成分のうち一つである等張化剤は、一般に、CL用消毒液の浸透圧を涙液の浸透圧(280〜300mOsm/kg)に近づけ、CLの浸漬保存時に、CLを所望とする形状に有利に維持し易くする特徴を有する成分であって、上述するように眼科生理的に許容し得るものであればよく、特に限定はされないものの、代表的な具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の無機塩や、後述する緩衝剤等を例示することが出来る。
なお、上述した等張化剤のCL用消毒液における含有量としては、充分な浸透圧となるように、一般に、0.01mol/L以上、好ましくは0.05mol/L以上であることが望ましい。また、その含有量が余りにも多い場合には、浸透圧が高くなり過ぎ、CL形状に影響を及ぼす恐れがあるところから、一般に、0.5mol/L以下、好ましくは0.15mol/L以下であることが望ましい。これによって、CLを消毒した際に、消毒液の浸透圧が、涙液の浸透圧と同程度となり、そのため、表面に消毒液が残留付着したCLがそのまま装用されて、眼内に消毒液が入るようなことがあっても、装用者の眼に刺激が発生するようなことが、有利に防止され得るといった利点も得られる。
また、前記緩衝剤は、消毒液のpHを、涙液に近い約5〜9の範囲において一定にすると共に、外的要因によるpHの変化を抑え、且つ保存時のCL形状、光学性等の物性を保護するために用いられる成分であって、眼科生理学的に許容し得るものであれば、特に限定はされないが、その代表的なものとしては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、グルコン酸、リン酸、ホウ酸、グリシンやグルタミン酸等のアミノ酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等の酸や、それらの塩(例えば、ナトリウム塩)等を挙げることが出来る。
さらに、本発明に従うCL用消毒液中に必要に応じて含有せしめられる前記界面活性剤は、微生物の殺菌とは別に、CLの洗浄を目的として、添加、含有させられる成分であって、従来から、CL用液剤等に一般的に用いられている、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤と併用したもの等の何れもが有利に利用され得、その添加によって、消毒液には、脂質の除去作用等の洗浄効果が付与される。
具体的には、アニオン系界面活性剤の代表例としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキロイルメチルタウリンナトリウム、アルキロイルザルコシンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジ(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)リン酸ナトリウム等を例示することが出来る。これらの中でも、特に、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムにあっては、優れた洗浄効果を発現し、また、ノニオン系界面活性剤と併用した場合に、短時間の浸漬保存で極めて有効な洗浄効果を発揮するようになる特徴を有している。
また、かかるアニオン系界面活性剤の含有量は、CL用消毒液に充分な洗浄効果を付与するために、通常、0.01w/v%以上、好ましくは、0.02w/v%以上であることが望ましく、また、その含有量が多過ぎる場合には、含有量に見合うだけの効果が得られず、逆に手荒れ等を惹起する原因となる恐れがあるため、10w/v%以下、好ましくは5w/v%以下であることが望ましい。
一方、ノニオン系界面活性剤の代表例としては、例えば、高級アルキルアミンのポリエチレングリコール付加物、高級脂肪酸アミドのポリエチレングリコール付加物、高級脂肪酸のポリグリセリンエステル、高級脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、高級脂肪酸のポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコールコポリマーエステル、高級脂肪酸のポリエチレングリコールの付加した多価アルコールエステル、高級アルコールのポリエチレングリコールエーテル、高級アルコールのポリグリセリンエーテル、アルキルフェノールのポリエチレングリコールエーテル、アルキレンフェノールのポリエチレングリコールエーテルのホルムアルデヒド縮合物、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール共重合体、リン酸エステル、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ステロールのポリエチレングリコール付加物、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール(ポロクサマー)等を例示することが出来る。これらの中でも、高級アルコールのポリエチレングリコールエーテル、高級脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、高級脂肪酸のポリグリセリンエステル、アルキルフェノールのポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール(ポロクサマー)にあっては、特に優れた洗浄効果を発揮することから、有利に用いられることとなる。
なお、かかるノニオン系界面活性剤の含有量は、上記したアニオン系界面活性剤と同様に、CL用消毒液に充分な洗浄効果を付与するために、通常、0.01w/v%以上、好ましくは、0.02w/v%以上であることが望ましく、また、その含有量が多過ぎる場合には、含有量に見合うだけの効果が得られず、逆に手荒れ等を惹起する原因となる恐れがあるところから、10w/v%以下、好ましくは5w/v%以下であることが望ましい。
また、特に、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を併用する場合には、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤の含有量は、それぞれ、前記した濃度範囲となるように、且つそれらの合計含有量が、一般に、0.02〜20w/v%、好ましくは0.04〜10w/v%となるように消毒液中に含有されることが望ましい。
加えて、前述せる如き増粘剤は、消毒液の粘度を調整して、保存時に、CLを外部の物理的な力から守る目的において添加されるものであり、眼科生理学的に許容し得るものであれば、特に限定はされない。具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド及びその加水分解物、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、キサンタンガム、アラビアガム、ガールガム等を例示することが出来る。
また、そのような増粘剤の含有量としては、保存時にCLを外的応力から充分に保護するために、下限としては、0.01w/v%以上、好ましくは、0.02w/v%以上であることが望ましく、一方、含有量が多過ぎる場合には、消毒剤がゲル化し、保存性が低下する恐れがあるため、上限としては、10w/v%以下、好ましくは、5w/v%以下であることが望ましい。
さらに、前述せる如き防腐剤は、本発明で採用される可視光励起型光触媒や過酸化水素と同様に、消毒液が細菌等の微生物に汚染されるのを防ぎ、且つ保存時にCLが細菌等の微生物で汚染されるのを防止するための成分であって、本発明においては、補助的に用いられ、このような防腐剤が消毒液に更に含有せしめられることによって、より一層優れた殺菌効果乃至は消毒効果が得られるようになる。なお、そのような防腐剤としては、眼科生理学的に許容し得るものであれば、特に限定はなく、代表例としては、例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール等の水銀系防腐剤;塩化ベンザルコニウム、臭化ピリジニウム等の界面活性剤系防腐剤;クロロヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロロブタノール等のアルコール系防腐剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、ジメチロールジメチルヒダントイン、イミダゾリウムウレア等を例示することが出来る。
そして、この防腐剤の含有量は、更なる消毒効果を発現させるためには、下限として、0.05ppm以上、好ましくは0.1ppm以上であることが望ましく、また防腐剤の含有量が多過ぎる場合には、防腐剤が直接眼に入り、眼に障害を与える恐れが生じたり、防腐剤の種類によっては、CLの規格や物性等に悪影響を与える恐れがあるところから、上限として、50ppm以下、好ましくは、30ppm以下が望ましい。
ところで、上述の如き可視光励起型光触媒や過酸化水素等を含有せしめてなる、本発明に従うCL用消毒液を調製するにあたっては、何等特殊な方法を必要とせず、通常のCL用液剤を調製する場合と同様に、水系媒体中に各成分を、添加順序に関係なく順次乃至は同時に又は適宜に組み合わせて添加して、それぞれ分散させたり、溶解することによって、目的とする消毒液を、容易に得ることが出来る。
また、上述せる如き各種の成分が含有される水系媒体としては、精製水や蒸留水等の、水そのものの他にも、水を主体とする溶液であれば、例えば、生理食塩水や、CL用保存液や洗浄液等の公知の水系液剤を利用することも可能であることは、言うまでもないところである。
そして、本発明にあっては、可視光励起型光触媒及び過酸化水素と共に、以上のような各種の成分が適宜に添加、含有せしめられたCL用消毒液を用いて、その消毒液中に、消毒すべきCLを浸漬させ、そして、かかるCLが浸漬された状態下において、消毒液に対して光照射を行うことにより、CLの消毒処理が実施されるのである。
なお、このような消毒処理に際しては、例えば、先ず、少なくとも一部において光の通過を許容する適当な容器を用いて、その容器内に、上記の本発明に従うCL用消毒液を収容し、次いで、かかる消毒液中に消毒すべきCLを浸漬させた後、又は、容器内にCLを配置した状態において、本発明に従うCL用消毒液を注入して、該消毒液中にCLが浸漬されるようにした後、所定の光照射を行い、光を容器内に入射せしめて消毒液に当てることによって、可視光励起型光触媒及び過酸化水素による消毒作用を発現させ、CLを消毒する手法が、有利に採用されることとなる。なお、かくの如き例示の手法を用いる場合においては、前記容器として、透明な材料からなるものを使用して、複数方向より光を照射せしめるようにすることで、光の照射効率を高めることが、より望ましい。
また、光照射に先立って、若しくは光照射時において、CL用消毒液に対して超音波を照射させたり、或いは消毒液を振動させる(例えば、上記例示の方法においては、消毒液の入った容器を振盪せしめる)ことが好ましく、そうすることによって、消毒液に溶解しない可視光励起型光触媒を、消毒液中により一層均一に分散させて、消毒効果の一段の向上を図ることが出来る。
ところで、この本発明に従う手法において、CLを浸漬させた消毒液に照射せしめられる光としては、可視光励起型光触媒における光触媒反応が有利に促進され得るように、360nm〜520nmの波長領域の光を含むものが、望ましい。また、特に、かかる波長範囲の中でも、410nm〜480nmの波長領域の光を含むものが、望ましい。何故なら、かかる波長の下限が410nmとされると、紫外線によるCLの黄変等の劣化が極めて効果的に抑制乃至は防止され得ると共に、また光を誤って直視した場合にも、眼の網膜への悪影響が有利に阻止され得ることとなるからである。また、480nm以下とすることによって、可視光励起型光触媒による触媒作用が、より一層有利に発揮され得るのである。
なお、上記した360nm〜520nmの波長の光を含むものであれば、光源は、特に限定されるものではなく、例えば、太陽光等の自然光であっても良いし、LED(Light-Emitting Diode)、白熱ランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、蛍光灯、クセノンランプ、レーザー光等の人工光源であっても良い。また、そのような光の強度にあっては、特に限定されるものではないものの、弱くなり過ぎると、可視光励起型光触媒の触媒作用を効果的に発現させることが困難となる一方、強過ぎると、消毒液中に浸漬されたCLに黄変等のレンズの劣化が起こる恐れがあるところから、使用する光源に応じて、適宜に設定されることが望ましい。
また、このような光を消毒液に照射させて、目的とするCLの消毒を行うCL消毒時間は、求められる消毒の程度に応じて、消毒対象となるCLの種類や採用する光の波長,強度等を考慮しつつ、適宜決定されるものであるが、所望とする消毒効果を充分に得るためには、少なくとも5分以上の照射時間が必要であり、また、照射時間の上限としては、消毒作業の能率の向上を図る上で、通常、12時間以下、好適には6時間以下とされることとなる。
このように、本発明手法に従えば、可視光励起型光触媒及び過酸化水素が含有された消毒液に対して、所定時間、光を照射するだけの操作で、CLに悪影響(ベースカーブの変化等)を与えることなく、また、消毒液の取り扱いに困難を伴うことなく、CLを充分に且つ容易に消毒することが出来るのである。
なお、このような本発明手法に従う消毒処理の後において、その消毒処理の施されたCLは、通常、消毒液中から取り出されて、眼に装用されることとなるが、その際、消毒液として、過酸化水素の濃度が上述する如き範囲(1ppm〜500ppm)を採用したものを用いた場合には、消毒液中に残存する過酸化水素量が極めて少なく、限りなく0に近いことから、過酸化水素の中和処理を実施する必要はなく、消毒液中から取り出したレンズを、直接眼に装用しても、或いは生理食塩水等にて濯いだ後に装用するようにしても、何等差し支えない。
また、上述の如き本発明に従う消毒処理の対象となるCLとしては、その種類が何等限定されるものではなく、例えば、含水性や非含水性、また、軟質や硬質に拘わらず、全ての種類のCLが、その対象となり得るのであり、CLの材質等が本発明の適用に際して何等問われることはない。なお、ここにおいて、含水性CLは、含水率が10%以上であるCLを意味する一方、非含水性CLは、含水率が10%未満であるCLを意味する。
さらに、本発明に係るCL用消毒液は、CLを消毒するために用いられるものであることは勿論、それが受光によって消毒効果を奏し得るものであることから、CLの保存液等として使用することも出来、例えば、CLの流通に際して、その運搬容器として光を通し得るものを用いて、そのような運搬容器内に、CLを、本発明の消毒液と共に、封入するようにすれば、運搬中に、かかる容器が自然光を浴びることによって、容器内のレンズが自然に消毒された状態で保存されることとなる。
以下に、本発明の実施例を含む幾つかの実験例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実験例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記載以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
−可視光励起型光触媒の分散液の調製−
1.Ag担持酸窒化チタン(NPS−BWA)分散液
国際公開第01/010552号パンフレット(特許文献4)に記載された方法に従って製造された酸窒化チタン:Ti−O−N粉末を準備し、これを湿式分散法により分散せしめて、濃度が10w/w%の水スラリーを得た。次いで、この水スラリー2Lに、0.1w/w%のAgNO3 水溶液100mLを加えて、紫外線を照射しながら1時間撹拌することにより、Agにて酸窒化チタン粒子をコーティングしたAg担持酸窒化チタン粒子の分散液を得た。そして、これを乾燥した後、不純物を除去するために水洗いした。その後、かかる水洗いしたAg担持酸窒化チタン粒子を、湿式分散法により分散して、濃度が0.1w/w%のAg担持酸窒化チタン(NPS−BWA)分散液(平均粒子径:0.5μm)を調製した。
2.Pt担持酸窒化チタン(NPS−BWP)分散液
国際公開第01/010552号パンフレット(特許文献4)に記載された方法に従って製造された酸窒化チタン粉末を準備し、これを湿式分散法により分散せしめて、濃度が10w/w%の水スラリーを得た。次いで、この水スラリー2Lに、2.7w/w%のH2PtCl6・H2O水溶液100mLを加え、紫外線を照射しながら1時間撹拌することにより、Ptにて酸窒化チタン粒子をコーティングしたPt担持酸窒化チタン粒子の分散液を得た。そして、これを乾燥した後、不純物を除去するために水洗いした。その後、かかる水洗いしたPt担持酸窒化チタン粒子を、湿式分散法により分散して、濃度が0.1w/w%のPt担持酸窒化チタン(NPS−BWP)分散液(平均粒子径:0.5μm)を得た。
−消毒液試料の調製−
1.酸窒化チタン分散液の調製
上記で得られたAg又はPt担持酸窒化チタン(NPS−BWA又はNPS−BWP)の分散液を、それぞれ、蒸留水で希釈、分散せしめて、所定濃度の酸窒化チタン分散液を調製した。
2.過酸化水素水の調製
市販の過酸化水素水を蒸留水で希釈して、所定の濃度の過酸化水素水を調製した。
3.(1)FeCl3・6H2O水溶液の調製
塩化鉄・6水和物(FeCl3・6H2O)を蒸留水に溶解して、所定濃度のFeCl3 水溶液を調製した。
(2)エチレンジアミン4酢酸−ナトリウム鉄(III)の調製
エチレンジアミン4酢酸−ナトリウム鉄(III)を蒸留水に溶解して、所定濃度のEDTA−Na−Fe錯体水溶液を調製した。
4.酸窒化チタン(NPS−BWA又はNPS−BWP)、過酸化水素、塩化鉄、及びEDTA−Na−Fe錯体の濃度が、それぞれ、下記表1又は表2に示される濃度となるように、上記1〜3で調製した液を適宜に調合して、実験例1〜19に係る消毒液試料を調製した。
−消毒効果試験−
上記で得られた各消毒液試料を用いて、それぞれ、消毒(殺菌)効果の確認試験を行った。具体的には、先ず、各消毒液試料に、供与菌として、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens IFO 13880)を接種し、各消毒液試料が、1×106 〜1×107 cfu/mLとなるようにした。そして、かかる各消毒液試料の10mLを、滅菌済の透明なシャーレに、それぞれ、収容した。
次いで、実験例1〜16,18及び19に係る消毒液試料の入ったシャーレには、下記表1又は表2に示される光源からの光を、3時間の間、静置下において、照射した。また一方、実験例17に係る消毒液試料の入ったシャーレは、3時間の間、暗室で常温下において保持した。
その後、それぞれの試料が入ったシャーレに、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地を混釈し、32℃にて培養した後、培地上に生育したコロニーをカウントして、各消毒液試料1mL中の生菌数を算出した。そして、下記の計算式に従って、対数に換算した菌減少量(log reduction)を求め、その結果を、下記表1又は表2に示した。
菌減少量=log(供試菌接種直後の試料1mL中の生菌数)
−log(光照射後又は所定時間保持後の試料1mL中の生菌数)
Figure 2005211545
Figure 2005211545
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従って、可視光励起型光触媒と過酸化水素とが組み合わされ、含有せしめられてなる消毒液を用いて、光照射が実施された実験例1〜16に係る消毒液試料にあっては、その何れにおいても、菌減少量(log reduction)の値が3以上となっており、強い消毒(殺菌)効力が発現され得ていることが認められ、かかる消毒液にCLを浸漬せしめて、光照射を行えば、高い消毒効果が得られるということが、理解されるのである。
一方、光照射が施されていない実験例17や、可視光励起型光触媒又は過酸化水素が含有されていない実験例18,19にあっては、実験例1〜16と比べて、消毒効果が低いことが、分かる。

Claims (12)

  1. 水系媒体中に、可視光励起型光触媒を分散させると共に、過酸化水素を含有せしめてなる消毒液を用い、該消毒液中に、消毒すべきコンタクトレンズを浸漬させて、光照射することにより、かかるコンタクトレンズの消毒を行なうことを特徴とするコンタクトレンズの消毒方法。
  2. 前記可視光励起型光触媒が、酸化チタン結晶格子中にアニオン(X)を含有させたチタン化合物:Ti−O−Xである請求項1に記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  3. 前記酸化チタン結晶格子中にアニオン(X)を含有させたチタン化合物:Ti−O−Xが、酸窒化チタンである請求項2に記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  4. 前記可視光励起型光触媒が、電荷分離物質によりコーティングされている請求項1乃至請求項3の何れかに記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  5. 前記電荷分離物質が、Pt,Ag,Cu及びZnからなる群より選択される少なくとも一つの金属である請求項4に記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  6. 前記可視光励起型光触媒が、5nm〜10μmの平均粒子径を有する粒子からなる請求項1乃至請求項5の何れかに記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  7. 前記可視光励起型光触媒が、前記消毒液中に、1ppm〜300ppmの濃度で含有されている請求項1乃至請求項6の何れかに記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  8. 前記過酸化水素が、前記消毒液中に、1ppm〜500ppmの濃度で含有されている請求項1乃至請求項7の何れかに記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  9. 前記光照射の照射光が、360nm〜520nmの波長の光を含んでいる請求項1乃至請求項8の何れかに記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  10. 前記消毒液が、金属イオン及び/又は金属−EDTA錯体を、更に、含有している請求項1乃至請求項9の何れかに記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  11. 前記消毒液が、等張化剤、緩衝剤、界面活性剤、増粘剤及び防腐剤のうちの少なくとも1種を、更に、含有している請求項1乃至請求項10の何れかに記載のコンタクトレンズの消毒方法。
  12. 光照射によってコンタクトレンズに消毒作用を発揮する消毒液にして、水系媒体中に、可視光励起型光触媒と共に、過酸化水素が含有せしめられていることを特徴とするコンタクトレンズ用消毒液。
JP2004025003A 2004-02-02 2004-02-02 コンタクトレンズの消毒方法及びコンタクトレンズ用消毒液 Pending JP2005211545A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004025003A JP2005211545A (ja) 2004-02-02 2004-02-02 コンタクトレンズの消毒方法及びコンタクトレンズ用消毒液

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004025003A JP2005211545A (ja) 2004-02-02 2004-02-02 コンタクトレンズの消毒方法及びコンタクトレンズ用消毒液

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005211545A true JP2005211545A (ja) 2005-08-11

Family

ID=34907506

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004025003A Pending JP2005211545A (ja) 2004-02-02 2004-02-02 コンタクトレンズの消毒方法及びコンタクトレンズ用消毒液

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005211545A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010500154A (ja) * 2006-08-16 2010-01-07 ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト 有色レンズケア溶液の時間的光漂白及びその使用
JP4499830B1 (ja) * 2009-06-29 2010-07-07 株式会社メニコン コンタクトレンズの消毒システム
WO2010147098A1 (ja) * 2009-06-15 2010-12-23 東レ株式会社 黒色複合微粒子、黒色樹脂組成物、カラーフィルター基板および液晶表示装置
JP2013525426A (ja) * 2010-04-26 2013-06-20 ユニベルシテット ヤギエロンスキ コンタクトレンズおよび医療材料を維持するための液体形態の組成物
JP2015531009A (ja) * 2012-07-23 2015-10-29 ユニヴェルシテット・ヤジェロンスキ 可視光で活性化される、ポリマー表面上の光触媒TiO2コーティング、その調製方法、及びその使用
CN105934188A (zh) * 2014-01-24 2016-09-07 宝洁公司 用于处理基底的套件
CN111820239A (zh) * 2020-06-30 2020-10-27 东莞东阳光科研发有限公司 一种液体组合物及其制备方法与应用

Cited By (17)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8091568B2 (en) * 2006-08-16 2012-01-10 Novartis Ag Temporal photo-bleaching of colored lens care solutions and use thereof
JP2010500154A (ja) * 2006-08-16 2010-01-07 ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト 有色レンズケア溶液の時間的光漂白及びその使用
JP5875179B2 (ja) * 2009-06-15 2016-03-02 東レ株式会社 黒色複合微粒子、黒色樹脂組成物、カラーフィルター基板および液晶表示装置
WO2010147098A1 (ja) * 2009-06-15 2010-12-23 東レ株式会社 黒色複合微粒子、黒色樹脂組成物、カラーフィルター基板および液晶表示装置
JPWO2010147098A1 (ja) * 2009-06-15 2012-12-06 東レ株式会社 黒色複合微粒子、黒色樹脂組成物、カラーフィルター基板および液晶表示装置
KR101833352B1 (ko) 2009-06-15 2018-02-28 도레이 카부시키가이샤 흑색 복합 미립자, 흑색 수지 조성물, 컬러 필터 기판, 및 액정 표시 장치
US10137218B2 (en) 2009-06-29 2018-11-27 Menicon Co., Ltd. Disinfection system of contact lens
WO2011001461A1 (ja) * 2009-06-29 2011-01-06 株式会社メニコン コンタクトレンズの消毒システム
US12042567B2 (en) 2009-06-29 2024-07-23 Menicon Co., Ltd. Disinfection system of contact lens
JP4499830B1 (ja) * 2009-06-29 2010-07-07 株式会社メニコン コンタクトレンズの消毒システム
US9427488B2 (en) 2009-06-29 2016-08-30 Menicon Co., Ltd. Disinfection system of contact lens
US11331404B2 (en) 2009-06-29 2022-05-17 Menicon Co., Ltd. Disinfection system of contact lens
JP2013525426A (ja) * 2010-04-26 2013-06-20 ユニベルシテット ヤギエロンスキ コンタクトレンズおよび医療材料を維持するための液体形態の組成物
KR101841303B1 (ko) * 2010-04-26 2018-03-22 유니버시테트 야기엘론스키 콘텍트 렌즈 및 의료 재료의 유지를 위한 액체 형태의 조성물
JP2015531009A (ja) * 2012-07-23 2015-10-29 ユニヴェルシテット・ヤジェロンスキ 可視光で活性化される、ポリマー表面上の光触媒TiO2コーティング、その調製方法、及びその使用
CN105934188A (zh) * 2014-01-24 2016-09-07 宝洁公司 用于处理基底的套件
CN111820239A (zh) * 2020-06-30 2020-10-27 东莞东阳光科研发有限公司 一种液体组合物及其制备方法与应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4481470B2 (ja) コンタクトレンズの消毒方法及びそのための消毒液
US20040234569A1 (en) Disinfection method
US12042567B2 (en) Disinfection system of contact lens
EP1416975B1 (en) Disinfecting and cleansing system for contact lenses
JP4484468B2 (ja) コンタクトレンズの消毒方法及びそのための消毒液
US20110280763A1 (en) Light-activated disinfection system
JP2005211545A (ja) コンタクトレンズの消毒方法及びコンタクトレンズ用消毒液
JP4244129B2 (ja) 消毒方法
JP2003135572A (ja) 消毒方法
EP0819968A1 (en) Disinfecting/washing composition for contact lenses and method for disinfecting and washing contact lenses by using the same
CA2035764A1 (en) Electrolytic cleaning and disinfecting solution
JP2013515001A (ja) 改善された消毒プロファイルを有する眼用溶液
JP2004361714A (ja) コンタクトレンズの保存/消毒方法
JPH03275063A (ja) 過酸化水素分解触媒およびそれを用いたコンタクトレンズの消毒方法
JPS6175319A (ja) コンタクトレンズ洗浄剤及び洗浄法
JP2000271194A (ja) コンタクトレンズの消毒方法
JP2005084349A (ja) コンタクトレンズ用液剤およびそれを用いたコンタクトレンズの汚れ付着防止方法
JPH0519218A (ja) ソフトコンタクトレンズの処理方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061120

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090812

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090818

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091215