JP2005211029A - 感染性植物ウイルスの濃縮方法 - Google Patents

感染性植物ウイルスの濃縮方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 宿主植物から抽出した感染性植物ウイルスの感染性を失わせることなく、省力的かつ大規模に感染性ウイルスを濃縮することができ、植物のウイルス感染症を予防するための弱毒植物ウイルス製剤、特に植物ウイルス感染症ワクチンの実用化を可能とする。
【解決手段】 ウイルス感染葉に緩衝液を加えて磨砕し、磨砕汁液をメッシュ、ガーゼに通して粗汁液を得、粗汁液に有機溶媒を加えて攪拌し、低温下で遠心分離して得た上清液を限外ろ過器に通してフィルターから溶媒を排出させながら循環させて目的とする濃縮度になるまで濃縮して高濃度のウイルス液を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、宿主植物から抽出した感染性植物ウイルスを濃縮する方法に関し、更に詳しくは、前記ウイルスの感染性を失わせることなく、省力的かつ大規模に感染性植物ウイルスを濃縮する方法に関する。
ヒトを含む動物体では、体に備わった免疫能力を利用するワクチン投与は、ウイルス感染症に対する最も有効な予防方法である。このワクチン投与によるウイルス感染症に対する予防方法は、無毒または弱毒のウイルスを予め動物に投与し、その結果産生させた免疫により、その後の類似種ウイルス、特に病原性の強いウイルスの感染を防ぐ方法である。
また、植物界でもウイルスによる病気は多く、種々の農作物におけるウイルス感染症による農家の被害は少なくない。例えば、ポティウルス属(Potyvirus)のジャガイモYウイルス(PVY)は、ジャガイモにモザイク病を起こし、ジャガイモ栽培における経済的に最も重要な病気である。また、同属のズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)は、キュウリなどのウリ科作物でモザイク病や萎縮症を起こし、栽培農家に大きな被害を与えている。さらに、ククモウイルス属(Cucumovirus)のキュウリモザイクウイルス(CMV)は、トマトやキュウリなど広い宿主範囲を有し、農業上重要なウイルスである。また、トマトでは、トバモウイルス属(Tobamovirus)のタバコモザイクウイルスの感染も栽培農家に甚大な被害を与えている。これらの農作物におけるウイルス感染症による栽培農家の被害は、多くの場合、20〜30%もの減収になるといわれている。
植物体には、前記のような動物体における免疫機構は備わっていない。しかし、植物体においても、ウイルスに感染した経歴を持つ植物体が、その後、同種または近縁のウイルスの感染や増殖を抑制し、発病を免れるか、病害の程度が軽くなる現象が知られている。その抵抗性の程度は、最初のウイルスの感染・増殖力が強く、また、より近縁なウイルス株間で顕著である。このような植物体における前記の現象は、Mckinney(1929)による最初の報告以後、多くの研究者により確認された。このような、動物体の免疫機構によらない、植物体における感染性ウイルスに対する抵抗性獲得の現象は、干渉作用または干渉効果と呼ばれている。弱毒ウイルスを用いて前記干渉効果を利用した農作物などの植物体におけるウイルス感染症の予防方法は、ウイルス感染症に対する有効な農薬がない現状においては極めて有効な病害防除手段となる可能性がある。また、この予防方法は、植物体における現在の主な病害防除手段である化学農薬で問題となる環境汚染がないという点においても社会的に望ましい方法である。
植物ワクチンとすべき弱毒ウイルスの作出およびその利用方法に関する実用化研究は、1960年代から公立の農業研究機関を中心に行われてきた。しかし、生産現場で利用されている植物ワクチンは極めて限られており、利用規模も小さく、限定的で、植物ワクチンが十分に普及しているとは言い難いのが現状である。この最も大きな原因の一つは、有効成分であるウイルスの感染性を長期間安定に保ち、かつ広く流通させることが可能な剤型が開発されていなかったことである。この課題は、凍結乾燥製剤にすることで4℃での長期保存が可能になり、広く流通にのせて供給することができる剤型となった(特許文献1参照。)。それまでは、植物体の弱毒ウイルスを感染させた葉を、採取後、直ちに磨り潰してその汁液をその場で苗に接種するか、保存する場合は、感染葉のままか、あるいは汁液を−70℃以下に凍結保存しなければ感染性を保つことはできず、ワクチンとして流通させることはできなかった。
植物ワクチンが普及していない、もう一つの原因は、ワクチンの製造工程において、有効成分である目的とする植物ウイルスを植物体から効率的に抽出し、さらに感染性を保ちながら高濃度に、しかも大量に濃縮する方法が確立されていないことであり、この課題は、現在に至っても解決されていない。ワクチンとしての効果は、有効成分である弱毒ウイルスの感染力に依存し、さらにウイルスの濃度にも依存する。また、含有するウイルスが高濃度の製剤であれば、より多くの苗に接種することができる。従って、高濃度ウイルス液の作製方法の確立は、植物ウイルス感染症ワクチンの商業的実用化には不可欠である。従来、感染性ウイルスを植物体から回収し、これを濃縮精製する方法は、研究室レベルでの方法が知られていた。その方法は、ポリエチレングリコール(PEG)による沈殿濃縮法と、ショ糖などの濃度勾配遠心法あるいはクッション遠心法を組み合わせた方法である。その工程の1例を挙げると以下の通りである(図1における[PEG、ショ糖クッション遠心の組み合わせ法」参照。)。
(1) 目的ウイルスを感染させた葉などの植物体に適当量の緩衝液を加え、乳鉢またはホモジナイザーを用いて磨砕する。通常、緩衝液には粗汁液の酸化防止のためにメルカプトエタノール(2−ME)などの還元剤を加えたり、またウイルス粒子の凝集防止のためにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などが加えられる。
(2) 磨砕液から植物体の組織片を除くためにメッシュまたはガーゼに通してろ過し、粗汁液を得る。
(3) 前記粗汁液には、なお細胞片などの植物体由来成分が含まれていて濁っており、これらの濁りを取るために清澄化処理が行われることもある。この清澄化処理は、粗汁液にクロロホルムや四塩化炭素などの有機溶媒を概ね1/4容量加えて攪拌し、その後、遠心処理して上清液を得る。
(4) 前記上清液に界面活性剤(TritonX-100)を最終濃度0.5〜2%の割合で加えて攪拌し、完全に溶解する。さらに、NaClを0.1mol/lの濃度に加え、続いてPEG(分子量6000)を4〜7%の割合で加えて4℃などの低温下で1〜2時間攪拌し、溶解する。
(5) 溶解後は、低温で8,000rpm、約20分間、遠心分離して沈殿物を得る。
(6) 沈殿物に、磨砕に用いた緩衝液またはその他の緩衝液を加えて懸濁する。また、TritonX-100を0.5%、EDTAを0.01mol/lの濃度に添加した緩衝液が用いられることもある。
(7) 懸濁液を低温下で遠心分離して上清液を得る。
(8) 上清液をショ糖などの密度勾配にのせて、超遠心分離器にかける。例えば、4℃、100,000×g、90分間の遠心で目的のウイルスの浮上密度に濃縮される。または、ある特定濃度のショ糖クッションにのせて超遠心する簡易法も用いられる。
(9) 超遠心後、ショ糖密度勾配中に現れたウイルス濃縮分画を採取し、これに緩衝液を加えてホモジナイズして溶解し、これを例えば4℃、5分間の冷却遠心分離して上清液を濃縮ウイルス液として得る。目的の濃縮度合いは、加える緩衝液量で調整される。
このような研究室レベルの濃縮・精製法は、植物ウイルスに関する多くの手引き書に掲載されている(例えば、非特許文献1参照。)。
しかし、上記のような植物ウイルスの濃縮・精製方法は、実験的手法であり、多くの工程を必要とする煩雑なものであり、しかも超遠心器を用いるために、一度に多くの材料を処理できないことから、商業的に採用され得る方法ではない。また、植物体から限外ろ過法によりウイルスや可溶性タンパク質およびペプチドを抽出、精製する方法も提案されている(特許文献2参照。)。この方法は、粗汁液をpH5.2またはそれ未満に調整し、その後、約45〜50℃に加熱し、さらに酸および加熱処理された粗汁液をPEGによる沈殿法または限外ろ過して単離および精製するというものである。しかし、ウイルスは、タンパク質やペプチドとは異なり、感染性を有する。ウイルスの感染性は、所定のpHの範囲内のみで保護されるが、強い酸またはアルカリの存在下ではウイルスは感染性を失う。例えば、前記のポティウイルス属のPVYはpH4.5で、またTMVはpH3で感染力を失う(植物のウイルス病、養賢堂、p381、1986)。また、ウイルスは一般に加熱に対しても不安定で、例えばポティウイルス属のウイルスでは44℃で感染性を失うものもある。ククモウイルス属においても50〜55℃で感染性を失う(Plant Viruses Online. Descriptions and Lists from the VIDE Databese. Potyviruses.<URL; http://image.fs.uidaho.edu/vide/genus039.htm)。従って、前記の方法では、植物ウイルス感染症ワクチンの製造に最も重要な、感染性を失わずにウイルスを濃縮、精製するという課題を解決することはできない。
特許第3012972号公報 特表2002−506080号公報 脇本哲監修、植物病原微生物研究法 5.ウイルス研究法、ソフトサイエンス社、p170-175
本発明は、ウイルスの感染性を失することなく、目的のウイルスを植物体から抽出し、これを効率よく大量に濃縮、精製する方法を提供し、植物ウイルス感染症ワクチンの商業的実用化を可能せんとするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ウイルスに感染している植物体の磨砕して粗汁液を得るときに加える緩衝液のpHを所定の範囲に規定し、かつ抽出したウイルス液、即ち粗汁液の濃縮、精製に際しては、タンパク質などの高分子量の濃縮、分離に用いられる限外ろ過法により、好ましくは中空糸型膜を採用することで、ウイルスの感染性を失わせることなく、省力的に大量の濃縮、精製ウイルスが得られることを見出し、さらに、得られた濃縮ウイルスで作製した製剤をワクチンとして植物に接種した結果、ウイルスは植物体内で感染、増殖することを確認した。
即ち、本発明の第一は、
(1)目的とするウイルスが感染した植物体にpH6.0〜9.0の緩衝液を加えてホモジナイズした乳剤(粗汁液)の上清液を、限外ろ過膜を用いて濃縮することで、前記上清液に含まれる前記ウイルスの感染性濃度を高めることを特徴とする感染性植物ウイルスの濃縮方法、
(2)前記(1)において、目的とするウイルスが感染した植物体に、前記緩衝液を加えて磨砕し、メッシュまたはガーゼでろ過して植物組織を除去して粗汁液を得、これに有機溶媒を加え、遠心分離により得た上清液を限外ろ過膜を用いて濃縮することを特徴とする請求項1記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法、
(3)前記(1)、(2)において、前記植物体が植物の葉である感染性植物ウイルスの濃縮方法、
(4)前記(1)〜(3)において、前記緩衝液のpHが6.0〜8.0の範囲である感染性植物ウイルスの濃縮方法、
(5)前記(1)〜(4)において、前記緩衝液が、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液およびトリス緩衝液からなる群から選ばれ、その濃度が0.01mol/l以上である感染性植物ウイルスの濃縮方法、
(6)前記(1)〜(5)において、前記限外ろ過膜が、中空糸フィルターである感染性植物ウイルスの濃縮方法、
(7)前記(6)において、前記中空糸フィルターが、フィルターポアサイズ10〜400kDの範囲である感染性植物ウイルスの濃縮方法、
(8)前記(1)〜(7)において、前記目的とするウイルスが、ポディウイルス属(Potyvirus)のウイルスである感染性植物ウイルスの濃縮方法、
(9)前記(1)〜(7)において、前記目的とするウイルスが、ククモウイルス属(Cucumovirus)のウイルスである請求項1〜7のいずれかに記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法、
(10)前記(1)〜(7)において前記目的とするウイルスが、トバモウイルス属(Tobamovirus)のウイルスである請求項1〜7のいずれかに記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法、
である。また、本発明の第二は、
(11)前記(1)〜(10)で濃縮された植物ウイルスを含有する植物ウイルス感染症予防剤、
である。さらに、本発明の第三は、
(12)前記(1)〜(10)の方法で濃縮された植物ウイルスを含有してなる植物ウイルス感染症ワクチン、
である。
本発明に係る感染性植物ウイルスの濃縮方法によれば、宿主植物から抽出した感染性植物ウイルスの感染性を失わせることなく、省力的かつ大規模に感染性ウイルスを濃縮することができ、植物のウイルス感染症を予防するための弱毒植物ウイルス製剤、特に植物ウイルス感染症ワクチンの実用化を可能とする。
さらに、前記濃縮方法において限外ろ過膜として中空糸フィルターを用いることで、前記植物ウイルスを効率よく濃縮することができる。
また、本発明に係る植物ウイルス感染症予防剤および植物ウイルス感染症ワクチンは、感染性を有したままの植物ウイルスを高濃度に含有することから、該ウイルスによる干渉作用(干渉効果)により、植物に、前記ウイルスと同種または近縁の感染性ウイルスに対する抵抗性を付与し、それら感染性ウイルスによる感染症を予防することができる。
目的とするウイルスが感染した植物体からウイルスを抽出し、本発明に係る濃縮方法により濃縮して、ウイルスを単離、精製する場合に、植物体からウイルスを抽出する部位としては、前記ウイルスが感染した植物体の葉を用いることが好ましい。すなわち、ウイルスに感染、増殖した植物体の葉を使用し、これを磨砕して粗汁液を得、必要により清澄化したうえ、前記粗汁液の上清液を限外ろ過膜を用いて濃縮することで、高濃度のウイルス液を得ることができる。以下、本発明に係る感染性植物ウイルスの濃縮方法を、工程にしたがって、さらに詳細に説明する(図1における[限外ろ過法」参照。)。
(1) ウイルス感染葉に、適当量、通常の場合は葉の重量の3〜5倍量の緩衝液を加えて乳鉢またはホモジナイザーを用いて磨砕し、磨砕汁液を得る。
前記磨砕汁液に加える緩衝液は、その後の濃縮工程におけるウイルスの安定性に関わることから重要である。本発明においては、前記緩衝液として、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液またはトリス・HCl緩衝液などで、濃度が0.01mol/l以上、更には濃度が0.1mol/l以上のものを用い、pHを6.0〜9.0の範囲、好ましくはpH6.0〜8.0の範囲に調整する。pHが前記の範囲を外れて酸性またはアルカリ性の緩衝液では、多くの感染性植物ウイルスで、その感染性が失われるおそれがある。さらに、前記磨砕汁液には、酸化防止のために、2−MEを加えたり、ウイルス粒子の凝集を防止するためにEDTAを加えてもよい。
(2) 次ぎに、前記磨砕汁液から細胞片を除くため、磨砕汁液をメッシュまたはガーゼに通して、粗汁液の状態で抽出ウイルス(液)を得る。
前記のようにして得た粗汁液には、なお細胞片などの植物由来成分を含んで濁っている。そこで、限外ろ過膜によるウイルス液の濃縮工程に先立ち、粗汁液を清澄化して濁りをとることが好ましい。清澄化は、粗汁液にクロロホルムや四塩化炭素などの有機溶媒を1/4〜1/3容量加えて攪拌し、その後、遠心処理した上清を清澄化ウイルス液として得る。清澄化に用いる前記有機溶媒は、ウイルスの感染性に影響を与えないものを選択して用いる。なお、省力的な工程とするなら、前記清澄化操作は必須ではなく、これを省いても、最終的に得られるウイルス液の感染性に大きな影響はないが、清澄化により前記植物由来成分を除去することで、限外ろ過膜によるウイルス液の濃縮効率が向上するとともに、得られるウイルス液の純度も向上する。
(3) さらに、前記粗汁液を、約4℃に冷却された環境下、約8,000rpmで遠心分離器にかけて微細な固形物を落とし、上清に透明な液汁を得る。
(4) 上記のようにして得た液汁(上清液)を限外ろ過器に通して溶媒を排出させながら循環させ、目的とする濃縮度になるまで汁液量を減じる。この限外ろ過により、元の汁液(出発液)のウイルスの感染性を有意に高めるため、5倍以上の濃縮、すなわち、フィルターから溶媒を排出させて、容易に、最終的に元の汁液の1/5以下の容量にすることができる。また、この限外ろ過による濃縮工程中は、汁液量の観察以外、人手を必要とすることはなく、極めて省力的な操作である。濃縮に要する時間は、濃縮度や用いるフィルターのポアサイズによって変わるが、出発液(処理液)量に応じた、ろ過面積を有するフィルターモジュールを選択する。前記限外ろ過に用いるフィルターとしては、中空糸フィルターを用いることが好ましい。さらに、そのフィルターポアサイズが10〜400kDの範囲のものを用いることが好ましい。前記ポアサイズが10kD未満であると、ろ過に著しく時間を要するし、目的ウイルスの大きさからみても、ポアサイズを10kD未満にする必要はない。また前記ポアサイズが400kDを超える場合には、フィルターが目的ウイルスを補足することができず、溶媒とともに排出されてしまうおそれがある。
上記中空糸フィルターとしては、例えば東洋紡エンジニアリング(株)の中空糸膜モジュール(製品名;ミニクロス)などを用いることができる。
上記のような本発明に係る感染性植物ウイルスの濃縮方法は、図1に示したように、従来の研究室レベルの方法(PEG、ショ糖クッション遠心の組み合わせ法)に比べて濃縮工程が非常に簡略化され、しかも省力的である。また、限外ろ過に際して、フィルター面積の広いモジュールを選択することで、安価に大量処理することができ、このようにして濃縮したウイルス液を用いることで、植物ウイルス感染症を予防するワクチンなどの製剤を商業的に実用化することができる。
上記のようにして濃縮した濃縮ウイルス液から前記植物ウイルス感染症に対する予防用の製剤を製造する方法は、例えば、上記のようにして濃縮したウイルス液または該濃縮ウイルス液を適量の緩衝液で希釈したものに等量の凍結乾燥用の安定剤を混合し、これをガラス瓶に適量小分けして凍結乾燥装置にかけて凍結乾燥製剤とする。安定剤は、例えば、ショ糖10重量%、ポリペプトン2重量%およびL-リシン一塩酸塩5重量%を含む水溶液である。この乾燥製剤は、保存安定性に優れ、使用時には、水または緩衝液で溶解して植物に接種する。
以下、実施例に基づいて、本発明を更に詳細に説明し、本発明によるウイルス濃縮法が、ウイルスの収量のロスの少ない、濃縮効率に優れた方法であることを明らかにする。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV;ポティウイルス属)を感染させたカボチャ(品種;えびす)の本葉200gに、EDTAを0.01mol/lおよび2−MEを0.1容量%添加した0.1mol/l濃度のリン酸緩衝液(pH7.2)を500ml加えてホモジナイザーにかけ磨砕した。得られた磨砕汁液を、メッシュ(メッシュサイズ120)を用いて、ろ過した後、四塩化炭素を25容量%の割合で加えて強く攪拌し、これを4℃、8,000rpm、15分で遠心処理して得られた上清をウイルス抽出液とし、これを限外ろ過により20倍に濃縮して、感染性ウイルス濃度が理論値(20倍)と比べて、どの程度高まったかを調べた。感染性ウイルスの濃度は、検体の希釈列を作り、その各希釈液を6株のカボチャ苗の子葉に接種し、接種後15日の本葉からELISA法によりウイルス感染の有無を判定し、その結果から、50%感染価(ID50)を算出した。濃縮前後の検体の感染価の差を濃縮効率を示す指標とした。
ウイルス抽出液の濃縮は、抽出液を2つに分け、ポアサイズ(分画分子量)400kDと50kDとの2種類のポリスルホン酸フィルター(東洋紡)を用いた中空糸膜限外ろ過装置(膜面積245cm2)で行った。各220mlの抽出ウイルス液は容量で11mlまで濃縮された。20倍濃縮に要した時間は、400kDで70分、50kDで150分であった。ウイルス抽出液の感染価は102.7ID50であった。これを限外ろ過により濃縮した濃縮ウイルス液の感染価は、ポアサイズが400kDのフィルターによる濃縮液の感染価は104.0ID50、同じく50kDのフィルターによる濃縮液では103.8ID50と、いずれも上昇し、特に400kDのフィルターでは容量の濃縮度どおり20倍(101.3)まで感染性が高まり、優れた濃縮効率を示した。この結果を表1に示す。
Figure 2005211029
表1および表2の結果から、本発明に係る感染性植物ウイルスの濃縮方法は、製剤の製造方法として有用であることが明らかである
キュウリモザイクウイルス(CMV;ククモウイルス属)を感染させたタバコ(品種;Nicotiana rustica)の本葉1,000gに、EDTAを0.01mol/lおよびチオグリコール酸を0.1容量%添加した0.1mol/l濃度のクエン酸緩衝液(pH7.2)を3,000ml加えてホモジナイザーにかけ磨砕した。この磨砕汁液をメッシュ(メッシュサイズ120)でろ過した後、クロロホルムを25容量%の割合で加え強く攪拌し、これを4℃、8,000rpm、15分の遠心処理して得られた上清をウイルス抽出液とし、限外ろ過により30倍に濃縮して、感染性ウイルス濃度が理論値と比べてどの程度高まったかを調べた。
感染性ウイルスの濃度は、検体の希釈例を作り、各希釈液を4株のタバコ苗の本葉に接種し、接種後8日に接種葉の上位本葉からELISA法によりウイルス感染の有無を判定し、その結果より、50%感染価(ID50)を算出した。濃縮前後の検体の感染価の差を濃縮効率を示す指標とした。
ウイルス抽出液の濃縮は、50kDのポリスルホン酸フィルター(東洋紡)を用いた中空糸膜限外ろ過装置(膜面積3,900cm2)で行った。3300mlの抽出ウイルス液は容量で110mlまで濃縮された。30倍濃縮に要した時間は1時間であった。この濃縮液に等量の凍結乾燥用安定剤を加えてバルクとし、バルクを2mlずつバイアルに充填して凍結乾燥製剤を作製した。ウイルス抽出液の感染価は102.25ID50であった。ポアサイズが50kDのフィルターによる濃縮の結果、濃縮液に安定剤を等量加えたバルクの感染価は103.5ID50に上昇し、理論値を上回る1.25(理論値は1.18、15倍)と優れた濃縮効率を示した。また、このバルクを用いて凍結乾燥した製剤においてもバルクと差のない感染価を示した。すなわち、凍結乾燥においても感染性が失われることなく、濃縮に応じた感染性ウイルス濃度を保持していた。この結果を表2に示す。
Figure 2005211029
キュウリ(品種:つや太郎)の子葉に、実施例1の濃縮ZYMVウイルス液を用いて調製したワクチンの5倍あるいは20倍希釈液を0.3mlずつ擦り付け接種した後、12日目にELISA法によってワクチンの感染を確認した株に強毒ZYMVを上位葉に攻撃接種した。攻撃接種後10日、15日目の強毒ZYMVによる発病(葉のモザイク症状)の有無でワクチンの予防効果を判定した。結果を表3に示す。
Figure 2005211029
トマト(品種:桃太郎T93)の子葉に、実施例2の濃縮CMVウイルス液を用いて調製したワクチンの5倍あるいは20倍希釈液を0.3mlずつ擦り付け接種した後、14日目にELISA法によってワクチンの感染を確認した株に強毒CMVを上位葉に攻撃接種した。攻撃接種後20日、40日目の強毒CMVによる発病(葉のモザイク症状)の有無でワクチンの予防効果を判定した。結果を表4に示す。
Figure 2005211029
表3および表4の結果から、本発明方法で濃縮された感染性植物ウイルスを含有してなる植物ウイルス感染症ワクチンのウイルス感染症に対する予防効果は明らかである。
本発明に係る感染性植物ウイルスの濃縮方法は、ウイルス感染症に対する予防に極めて有用である。
本発明に係る感染性植物ウイルスの濃縮方法を従来方法と比較して示した工程説明図である。

Claims (12)

  1. 目的とするウイルスが感染した植物体にpH6.0〜9.0の範囲の緩衝液を加えてしてホモジナイズした乳剤の上清液を、限外ろ過膜を用いて濃縮することで、前記上清液に含まれる前記ウイルスの感染性濃度を高めることを特徴とする感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  2. 目的とするウイルスが感染した植物体に、前記緩衝液を加えて磨砕し、メッシュまたはガーゼでろ過して植物組織を除去して粗汁液を得、これに有機溶媒を加え、遠心分離により上清液を得、これを限外ろ過膜を用いて濃縮することを特徴とする請求項1記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  3. 前記植物体が植物の葉である請求項1または2に記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  4. 前記緩衝液のpHが6.0〜8.0の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  5. 前記緩衝液が、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液およびトリス緩衝液からなる群から選ばれ、その濃度が0.01mol/l以上である請求項1〜4のいずれかに記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  6. 前記限外ろ過膜が、中空糸フィルターである請求項1〜5のいずれかに記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  7. 前記中空糸フィルターが、ポアサイズ10〜400kDの範囲である請求項6記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  8. 前記目的とするウイルスが、ポディウイルス属(Potyvirus)のウイルスである請求項1〜7のいずれかに記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  9. 前記目的とするウイルスが、ククモウイルス属(Cucumovirus)のウイルスである請求項1〜7のいずれかに記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  10. 前記目的とするウイルスが、トバモウイルス属(Tobamovirus)のウイルスである請求項1〜7のいずれかに記載の感染性植物ウイルスの濃縮方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の方法で濃縮された感染性植物ウイルスを含有する植物ウイルス感染症予防剤。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の方法で濃縮された感染性植物ウイルスを含有してなる植物ウイルス感染症ワクチン。
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