JPWO2020009012A1 - キュウリモザイクウイルス弱毒株 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ウリ科植物にて発生する植物ウイルス由来の植物病を防除できる、新規なキュウリモザイクウイルス弱毒株、前記CMV弱毒株を含有するウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤、前記CMV弱毒株を用いたウリ科植物のモザイク病防除方法およびウリ科植物に関する。具体的には、2bタンパク質をコードする配列番号1に示されるRNAの5’側から279番目〜282番目の塩基配列から1または2個の塩基が欠失されているRNAまたは前記279番目〜282番目の塩基配列中に1または2個の塩基が挿入されているRNAをゲノム中に有するキュウリモザイクウイルス弱毒株に関し、このキュウリモザイクウイルス弱毒株は、2bタンパク質をコードするRNAが配列番号2に示される塩基配列または配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる2bタンパク質を有する。

Description

本発明は、植物ウイルスの感染を予防する新規のキュウリモザイクウイルス弱毒株に関する。また、本発明は、前記キュウリモザイクウイルス弱毒株を含有するウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤、前記キュウリモザイクウイルス弱毒株を用いたウリ科植物のモザイク病防除方法およびモザイク病抵抗性ウリ科植物に関する。
従来、野外で栽培している野菜などの作物に見られる植物病は、虫により媒介される植物ウイルスの感染が一因であることが知られている。
例えば、ウリ科植物に見られるモザイク病では、アブラムシなどがウリ科植物から吸汁した際にキュウリモザイクウイルス(cucumber mosaic virus:CMV)、スイカモザイクウイルス(watermelon mosaic virus:WMV)などの植物ウイルスに感染することにより、この植物に葉と果実が輪点、モザイクまたは奇形を形成し、植物体では萎凋などが生じることが知られている。
キュウリモザイクウイルス(CMV)は、世界各地で発生する非常に宿主範囲が広い植物ウイルスの1つで、1000種以上の植物に感染する。CMVは、ブロモウイルス(Bromoviridae)科ククモウイルス(Cucumovirus)属に属する、直径約30nmの球状ウイルスである。ウイルスゲノムは3分節の1本鎖の(+)鎖RNAで、それぞれRNA1、RNA2またはRNA3とされている。RNA1は1aタンパク質を、RNA2は2aタンパク質とサブゲノムRNAの4Aから翻訳される2bタンパク質を、RNA3は3aタンパク質とサブゲノムRNAの4から翻訳される外被タンパク質(coat protein:CP、構造タンパク質)をコードしている。CMVの2bタンパク質は、キュウリやタバコにおける全身感染や細胞内分布、各植物における病原性に重要な多機能因子として同定されている。
ところで、植物は自身に不要となる2本鎖RNAを分解するRNAサイレンシングを備えており、これが植物ウイルスに対する防御機構として活用されている。しかしながら、CMVが持つ2bタンパク質は、植物ウイルスを標的としたRNAサイレンシングによる分解を回避するための抑制因子(サプレッサー)として機能しているため、CMVが感染を成立させ作物はウイルス病を発症すると考えられる。
また、スイカモザイクウイルス(WMV)が属するポティウイルス(Potyviridae)科ポティウイルス(Potyvirus)属のウイルスは、個々の宿主範囲は非常に狭いが、世界各地で様々な植物から分離されている。WMVは世界各地のウリ科植物の他、マメ科など23科の植物に感染が認められている。WMVは12〜13×700〜800nmのひも状で、ウイルスゲノムは1本鎖の(+)鎖RNA(約10,000塩基)ウイルスである。まず、1つのポリプロテインが翻訳され、自身が有するプロテアーゼによって10種のタンパク質が生み出される。ポティウイルスのヘルパーコンポーネントプロテアーゼ(HC−Pro)はRNAサイレンシングのサプレッサーとして同定されており、RNA結合、ウイルス増殖性及び病原性などにも関与している。これらの多機能性は、RNAサイレンシングを抑制する機能と密接に関与している。
従来、前記のような植物ウイルスに対しては、有効な抗ウイルス剤はなかったため、作物の栽培現場では、対処法として、植物ウイルスを作物に伝搬する虫を駆除するために殺虫剤などの化学農薬に依存しているが、このような方法は、化学農薬による環境汚染が懸念されていた。
そこで、近年、植物ウイルス病防除法として、弱毒ウイルスの接種による防除技術が注目されている。これは、あるウイルス(1次ウイルス)に感染した植物は近縁のウイルス(2次ウイルス)には感染しないという干渉効果を利用した防除方法である。つまり、病原性の非常に弱い弱毒株を1次ウイルスとして接種しておくと、病原性の強い強毒株による2次感染を阻止できるという、いわばワクチンのような作用である。
本件出願人も、以前に、弱毒ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)を用いたウイルス病防除作用を有する弱毒ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(特許文献1)を開発している。近年でも本発明者らは植物ワクチン接種が可能な植物苗の固定化装置や植物ワクチン接種方法を開発している(特許文献2)。
また、他の弱毒化ウイルスとしては、サテライトRNAにより弱毒化されたキュウリモザイクウイルス(CMV)が知られており、トマト、ピーマン及びリンドウなどで利用されている。サテライトRNAという短いRNAは、CMVに寄生してそのゲノムRNAの増殖を抑える作用に関連し、これによりCMVが弱毒化されていることが報告されている(非特許文献1)。
しかしながら、ウリ科植物での実用的な弱毒ウイルス株はこれまで知られていない。
例えば、キュウリなどのウリ科露地産地では、CMVやWMVの慢性的な甚発生、さらにはCMVとWMVとの重複感染による病徴激化が多数報告されており、その被害は甚大となっている。
特許第4045358号公報 特許第5938798号公報
佐山春樹、「植物ワクチン」、化学と生物41(7)(2003)454〜459頁)
本発明は、ウリ科植物にて発生する植物ウイルス由来の植物病を防除できる、新規なキュウリモザイクウイルス(CMV)弱毒株を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記CMV弱毒株を含有するウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤、前記CMV弱毒株を用いたウリ科植物のモザイク病防除方法およびウリ科植物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、キュウリ圃場からCMV強毒株を分離し、弱毒化を繰り返すことで、キュウリなどのウリ科植物に対する病原性が極めて低いCMV弱毒株を作出すること成功し、しかもこのCMV弱毒株をウリ科植物に接種することで、モザイク病抵抗性をウリ科植物に誘導できることを初めて見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて本発明者らが完成させたものである。
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕2bタンパク質をコードする配列番号1に示されるRNAの5’側から279番目〜282番目の塩基配列から1または2個の塩基が欠失されているRNAまたは前記279番目〜282番目の塩基配列中に1または2個の塩基が挿入されているRNAをゲノム中に有するキュウリモザイクウイルス弱毒株、
〔2〕2bタンパク質をコードするRNAが配列番号2に示される塩基配列を含む、前記〔1〕に記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株、
〔3〕配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる2bタンパク質を有する、前記〔1〕または〔2〕に記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株、
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株を有効成分として含有する、ウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤、
〔5〕さらにヘルパーコンポーネントプロテアーゼをコードする配列番号4に示されるRNAをゲノム中に有するスイカモザイクウイルス弱毒株を含む、前記〔4〕に記載のウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤、
〔6〕前記スイカモザイクウイルス弱毒株が配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるヘルパーコンポーネントプロテアーゼを有する、前記〔5〕に記載のウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤、
〔7〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株をウリ科植物に接種することを特徴とする、ウリ科植物のモザイク病防除方法、
〔8〕さらにヘルパーコンポーネントプロテアーゼをコードする配列番号4に示されるRNAをゲノム中に有するスイカモザイクウイルス弱毒株をウリ科植物に接種する、前記〔7〕に記載のウリ科植物のモザイク病防除方法、
〔9〕前記スイカモザイクウイルス弱毒株が配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるヘルパーコンポーネントプロテアーゼを有する、前記〔7〕または〔8〕に記載のウリ科植物のモザイク病防除方法、
〔10〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株が接種された、モザイク病抵抗性を有するウリ科植物、
〔11〕さらにヘルパーコンポーネントプロテアーゼをコードする配列番号4に示されるRNAをゲノム中に有するスイカモザイクウイルス弱毒株が接種された、前記〔10〕に記載のウリ科植物、
〔12〕前記スイカモザイクウイルス弱毒株が配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるヘルパーコンポーネントプロテアーゼを有する、前記〔11〕に記載のウリ科植物、
〔13〕モザイクウイルス弱毒株の抽出方法であって、モザイクウイルス弱毒株感染葉からのポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテルを含むノニオン系界面活性剤添加抽出バッファーを用いるモザイクウイルス弱毒株の抽出方法、
〔14〕前記抽出方法が、モザイクウイルス弱毒株感染葉の磨砕物の遠沈後の上清と、沈査からの前記ノニオン系界面活性剤添加抽出バッファーを用いる抽出物との混液、または前記ノニオン系界面活性剤添加抽出バッファーを用いる磨砕物の遠沈上清である、前記〔13〕に記載の抽出方法、
〔15〕前記モザイクウイルスがキュウリモザイクウイルスまたはスイカモザイクウイルスである前記〔13〕または〔14〕に記載の抽出方法
に関する。
本発明のCMV弱毒株は、遺伝子の塩基配列またはアミノ酸配列において極めて新規性の高いものであり、キュウリのみならずCMVあるいはWMVの被害が大きいウリ科植物に接種することで、モザイク病に対する有効な防除手段となり得る。
また、本発明と既に実用化されているZYMVワクチンなどと合わせれば、アブラムシなどの虫媒介により混発する主要ウイルスを網羅的に防除することが可能となり、作物の生産性の向上、防除コスト・作業の低減・省力化を可能とすることで、野外でウリ科植物を栽培している各産地の持続的発展に貢献し得る。
図1は、CMVのゲノム構造を示す概略図である。 図2は、CMV弱毒株であるCM14株の2bタンパク質の塩基配列と強毒株H23との比較を示す概略図である。 図3は、CMV弱毒株であるCM14株の2bタンパク質のアミノ酸配列と強毒株H23との比較を示す概略図である。 図4は、CMV弱毒株の2bタンパク質を示す概略図である。 図5−1〜図5−3は、WMV弱毒株であるWM14株のHC−Proの塩基配列と強毒株MIYAとの比較を示す概略図である。 図5−2は、図5−1に続く図である。 図5−3は、図5−2に続く図である。 図6は、WMV弱毒株であるWM14株のHC−Proのアミノ酸配列と強毒株MIYAとの比較を示す概略図である。
1.キュウリモザイクウイルス(CMV)弱毒株
本発明のCMV弱毒株は、2bタンパク質をコードする配列番号1に示されるRNAの5’側から279番目〜282番目の塩基配列から1または2個の塩基が欠失されているRNAまたは前記279番目〜282番目の塩基配列中に1または2個の塩基が挿入されているRNA(以下、弱毒化2bRNAともいう)をゲノム中に有することを特徴とする。
配列番号1に示されるRNAは、CMV強毒株が有する2bタンパク質をコードする塩基配列であり、全長で333bpのものである。
本発明のCMV弱毒株は、前記のような弱毒化2bRNAを有することで、配列番号1に示されるRNAの5’側から279番目〜282番目以降の塩基配列にコードされるアミノ酸配列が改変された弱毒化2bタンパク質を産生する。この弱毒化2bタンパク質は、正常な2bタンパク質と比べて分子量などは類似しているものの、2bタンパク質の特に病原性因子としての機能を損なっているために、本発明のCMV弱毒株を接種したウリ科植物ではモザイク病の病徴を示さない、もしくは、極めて軽微な病徴しか示さないという弱毒性に優れたものである。
また、本発明のCMV弱毒株が接種されたウリ科植物は、CMV弱毒株および/または弱毒化2bタンパク質が植物体内に存在するため、ウリ科植物が有する干渉効果の働きにより、野外に存在しているアブラムシから媒介される他のCMV強毒株の感染に対しても、優れたモザイク病抵抗性を発揮する。
なお、本発明においてモザイク病抵抗性とは、モザイク病の原因となる植物ウイルスがウリ科植物の感染に対して抵抗する性質をいい、具体的には、CMV強毒株から攻撃を受けても感染させない、CMV強毒株に感染したウリ科植物がモザイク病の病徴を示さない、極めて軽微な病徴しか示さない、もしくは、モザイク病を発病しても生育を抑制させないという性質をいう。
本発明のCMV弱毒株が有する弱毒化2bRNAとしては、前記配列番号1に示されるRNAの塩基配列中、5’側から279番目〜282番目の4個のチミン(T)が連続する配列において、1または2個の塩基が欠失されているRNA、前記279番目〜282番目の4個のチミンが連続する配列に1または2個の塩基が挿入されているRNAなどが挙げられる。
前記欠失または挿入は、279番目〜282番目以降の塩基配列から翻訳されるアミノ酸配列が、正常な2bタンパク質と異なるようになっていればよく、欠失または挿入される塩基の数や、挿入させる塩基の種類については、特に限定はない。
例えば、前記弱毒化2bRNAとしては、配列番号2に示される塩基配列を有するものが挙げられる。
配列番号2は、塩基配列1に示される2bタンパク質遺伝子の5’側から279番目〜282番目の塩基において、強毒株の場合チミン(T)が4個連続するのに対し、チミン(T)が3連続になっており、1塩基のチミン(T)が欠損している塩基配列である。なお、配列番号2では、塩基配列1に示される2bタンパク質遺伝子の5’側から319番目の塩基に相当するアデニン(A)がチミン(T)に変換されている。
前記弱毒化2bRNAとしては、配列番号2の塩基配列そのものには限られず、前記配列番号2に示す塩基配列と80%以上の相同性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列であって、前記弱毒化2bRNAと同程度の弱毒性およびモザイク病抵抗性を発現させるRNAも本発明に含まれる。
本発明のCMV弱毒株は、前記弱毒化2bRNAで翻訳することで産生される弱毒化2bタンパク質を有する。
弱毒化2bタンパク質は、正常な2bタンパク質と比べて、分子量などはほぼ同じであり、N末端から93番目付近までは相同性の高いアミノ酸配列になっている一方で、94番目以降のアミノ酸配列が相違したアミノ酸配列となっている。また、弱毒化2bタンパク質を構成するアミノ酸の数は、正常な2bタンパク質と比べて、1もしくは複数個のアミノ酸配列が欠失もしくは付加されていてもよい。
前記弱毒化2bタンパク質としては、例えば、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。配列番号3に示される弱毒化2bタンパク質は、106個のアミノ酸からなる配列であり、強毒株であるH23強毒株の2bタンパク質のアミノ酸配列(全長110個のアミノ酸配列)と比べて、94番目以降のアミノ酸配列が相違している。
なお、前記配列番号3に示すアミノ酸配列と、80%以上の相同性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、前記弱毒化2bタンパク質と同程度の弱毒性およびモザイク病抵抗性を奏するタンパク質も本発明に含まれる。
例えば、前記配列番号3に示すアミノ酸配列から、1もしくは複数個のアミノ酸配列が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
前記のような配列番号2に示す弱毒化RNAを有する本発明のCMV弱毒株としては、例えば、後述の実施例に記載のCMV弱毒株であるCM14株が挙げられる。
前記CM14株は、配列番号3に示すアミノ酸配列からなる2bタンパク質をコードするRNAをゲノムRNA中に持つウイルスであり、2bタンパク質遺伝子の5‘側から279番目〜282番目の塩基において、強毒株の場合チミン(T)が4個連続するのに対し(図4の「強毒株」)、チミン(T)が3連続のみと1塩基のチミン(T)が欠損しているという特徴的な塩基配列を有した弱毒株である(図4の「弱毒株」)。
前記CM14株では、前記のようにチミン(T)1塩基が欠損することに伴って、アミノ酸翻訳への読み枠にずれが生じる。つまり、2bタンパク質遺伝子の5’側から280番目〜282番目の塩基以降におけるタンパク質の生合成が、本来の2bタンパク質とは異なる特徴を有している。
本発明のCMV弱毒株の作製は、天然から分離したまたは市販のCMV強毒株、CMV弱毒株に、周知の技術である部位特異的変異誘発法により塩基配列もしくはアミノ酸配列の欠失、置換あるいは付加を導入することで実施することができる。
また、本発明のCMV弱毒株は、天然に存在するものであっても、遺伝子組み換え技術などにより人為的に弱毒化したものであってもよい。
また、本発明のCMV弱毒株は、低温処理した植物体からモザイク葉の緑色部を磨砕して分離する手法で作製してもよい。
この手法としては、Kosaka and Fukunishi (1997)Plant disease 81(7)733〜738、Kobori et al. (2005)Plant disease 89(8)879〜882)などに記載の方法が挙げられる。
ここで、アミノ酸が欠失または付加された場合におけるCMV弱毒株の塩基配列番号の算定は、このような欠失または付加された塩基の数も考慮し、欠失した場合には欠失分だけ番号を増やし、付加された場合には付加分だけ番号を減らして定められる。例えば、配列番号1の塩基配列番号279に相当する塩基について、これよりも上流に塩基が2つ付加された場合、対象とする塩基チミン(T)は実際には281番目の塩基であるが、付加された塩基数に相当する2を減じることにより、この281番目の塩基を塩基配列番号279であるとする。
2.ウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤
本発明に係るウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤(以下、本発明の誘導剤という)は、前記の本発明のCMV弱毒株を有効成分として含有するものである。
本発明においてウリ科植物とは、キュウリ、メロン、スイカ、ズッキーニ、トウガン、シロウリ、ヘチマ、ニガウリ、ユウガオなど食用の植物、ラカンカ、カラスウリなどの生薬として用いられる植物などが挙げられるが、特に限定はない。
本発明の誘導剤は、前記のとおり、ウリ科植物に接種させることで、CMVに対する抵抗性(モザイク病抵抗性)を引き起こす作用を有する。
本発明の誘導剤に含まれる本発明のCMV弱毒株の量としては、接種されたウリ科植物に所望のモザイク病抵抗性を引き起こすことができる量であればよく、特に限定はない。
また、本発明の誘導剤は、さらにヘルパーコンポーネントプロテアーゼ(HC−Pro)をコードする配列番号4に示されるRNAをゲノム中に有するスイカモザイクウイルス(WMV)弱毒株を含有していてもよい。
前記WMV弱毒株とは、HC−Proをコードする配列番号4に示されるRNAが、選抜元のWMV強毒株と比べて、HC−Pro遺伝子の5’側から434番目と1048番目の塩基配列がチミン(T)とアデニン(A)に変異しているという特徴的な塩基配列(以下、弱毒化HC−Pro RNA)に変異した弱毒株である。
前記弱毒化HC−Pro RNAとしては、配列番号4の塩基配列そのものには限られず、前記配列番号4に示す塩基配列と80%以上の相同性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列であって、前記弱毒化HC−Pro RNAと同程度の弱毒性を奏するRNAも本発明に含まれる。
また、前記WMV弱毒株としては、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるHC−Proを有していてもよい。
前記配列番号5に示されるアミノ酸配列は、前記配列番号4に示される弱毒化HC−Pro RNAでコードされるアミノ酸配列であり、WMV強毒株と比べてHC−ProのN末端から145番目と350番目のアミノ酸配列がロイシン(L)とスレオニン(T)に変異したアミノ酸配列である。前記配列番号5に示されるアミノ酸配列は前記部位が変異していることで、正常な化HC−Proと比べて、分子量などは同じであるものの、サプレッサーとしての機能を損なっていると推察されるために、前記WMV弱毒株を接種したウリ科植物ではモザイク病の病徴を示さない、もしくは、極めて軽微な病徴しか示さないという弱毒性に優れたものであり、また、ウリ科植物が有する干渉効果の働きにより、野外に存在している様々な虫から媒介される他のWMV強毒株の感染に対しても、優れたモザイク病抵抗性を発揮する。
なお、前記配列番号5に示すアミノ酸配列と、80%以上の相同性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、前記弱毒化HC−Proと同程度の弱毒性およびモザイク病抵抗性を奏するタンパク質も本発明に含まれる。
例えば、前記配列番号5に示すアミノ酸配列から、1もしくは複数個のアミノ酸配列が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
前記WMV弱毒株も、前記CMV弱毒株と同様にして、天然から分離したまたは市販のWMV強毒株、WMV弱毒株に、周知の技術である部位特異的変異誘発法により塩基配列もしくはアミノ酸配列の欠失、置換あるいは付加を導入することで実施することができる。
また、本発明のWMV弱毒株は、天然に存在するものであっても、遺伝子組み換え技術などにより人為的に弱毒化したものであってもよい。
また、本発明のWMV弱毒株は、低温処理した植物体からモザイク葉の緑色部を磨砕して分離する手法で作製してもよい。
この手法としては、Kosaka and Fukunishi (1997)Plant disease 81(7)p733〜738、Kobori et al. (2005)Plant disease 89(8)p879〜882などに記載の方法が挙げられる。
本発明の誘導剤に含まれる本発明のWMV弱毒株の量としては、接種されたウリ科植物に所望のモザイク病抵抗性を引き起こすことができる量であればよく、特に限定はない。
本発明の誘導剤は、本発明のCMV弱毒株、さらにはWMV弱毒株を水、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液またはクエン酸緩衝液などに混合し、必要に応じて、界面活性剤、糖類、キレート剤あるいは還元剤なども混合することで調製することができる。
また、本発明のCMV弱毒株を接種したウリ科植物の植物体の葉部等の磨砕物から得られる汁液や、この汁液を濃縮または希釈した液体を本発明の誘導剤として用いてもよい。CMV弱毒株を接種したウリ科植物の植物体から得られる汁液に、WMV弱毒株を接種したウリ科植物の植物体から得られる汁液や、この汁液を濃縮または希釈した液体を混合して本発明の誘導剤としてもよい。
前記磨砕とは、細かく砕き、すり潰すことをいい、例えば、乳鉢、石臼、ホモジナイザー、スーパーブレンダーなどの公知の破砕機に植物体および水などの媒体を供して磨砕処理することで得ることができる。なお、磨砕は、前記植物体に存在するCMV弱毒株やWMV弱毒株が抽出できる程度に、植物体が砕かれたり、すり潰されていればよく、特に限定はない。
葉部の磨砕物から汁液を得る際には、抽出液として水、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液またはクエン酸緩衝液等の各種抽出バッファー、各種界面活性剤溶液、n−ブタノール、クロロホルムおよび四塩化炭素等の有機溶剤を単独であるいはこれらの混液として用いてもよい。
界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤溶液、アニオン系界面活性剤溶液、ノニオン系界面活性剤溶液が挙げられる。
中でもポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテルを含むノニオン系界面活性剤が抽出効率の観点から好ましい。好ましくはTriton(登録商標) X-100が用いられる。
3.ウリ科植物のモザイク病防除方法
本発明のCMV弱毒株をウリ科植物に接種することで、ウリ科植物のモザイク病を予防(防除)できる。
本発明において、「モザイク病防除」とは、ウリ科植物におけるモザイク病の症状の発生を防ぐ、発病の程度を緩和する、もしくは、症状の発生を遅らせることをいう。
ウリ科植物からモザイク病防除を行うことで、順調な生育を促して、ウリ科植物の収量および商品価値を高めることができる。
また、本発明のCMV弱毒株に加えて、前記WMV弱毒株をウリ科植物に接種することで、CMVおよびWMVという2種類の植物ウイルスに関連するモザイク病の防除を行うことができる。
前記接種には、CMV弱毒株を含有する本発明の誘導剤を用いればよい。また、本発明の誘導剤は、さらに前記WMV弱毒株を含有していてもよい。
前記接種の方法としては、例えば、特に限定されることなく、公知の手法を採用することができる。例えば、カーボランダム法による擦り付け接種やスプレーガンやエアブラシなどを用いた高圧噴霧接種が挙げられる。
また、WMV弱毒株を用いる場合、接種はCMV弱毒株、WMV弱毒株をそれぞれ単独で接種したり、CMV弱毒株またはWMV弱毒株を混合したのち接種したり、CMV弱毒株を接種した後にWMV弱毒株を接種したり、あるいはWMV弱毒株を接種した後にCMV弱毒株を接種することができる。
なお、接種の回数についは、接種するCMV弱毒株の濃度、ウリ科植物のサイズなどを考慮して決定すればよく、例えば、1回でもよいし、初回の接種後に弱毒株の感染が確認できなかった場合は2回以上でもよい。
4.モザイクウイルス病抵抗性を有するウリ科植物
前記のように、本発明のCMV弱毒株が接種されたウリ科植物は、CMVに対するモザイク病抵抗性を有する。
本発明に係るウリ科植物は、植物体中において、本発明のCMV弱毒株、配列番号4に示されるRNA、または、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含んでいることで、非接種のウリ科植物と区別できる。
本発明のCMV弱毒株を接種する時期としては、特に限定はない。例えば、育苗の段階でCMV弱毒株を接種することで、モザイク病抵抗性を有するウリ科植物の苗を作製することができる。また、CMV弱毒株を、比較的清浄な環境で生育しているウリ科植物に接種して露地などの圃場に定植したり、販売用に搬出する前に接種することで、不特定の様々な環境下でも安全な生育を図ることもできる。
また、CMV弱毒株と同様の方法で、WMV弱毒株をさらに接種することで、ウリ科植物のモザイク病抵抗性をさらに向上させることができる。
したがって、モザイク病抵抗性を有するウリ科植物の状態としては、苗および成長した植物体などが含まれるが、限定はない。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例1
CMV弱毒株CM14株の作出
福島県内で栽培された、激しいモザイク症状を引き起こしているキュウリを選択し、DAS-ELISA法によるCMV検定及びニコチアナ・ルスチカ(Nicotiana rustica)への接種検定を用いることで、キュウリに激しいモザイク症状を引き起こすCMVの強毒株(以下、「H23株」という)を分離した。
次いで、H23株をタバコ属のニコチアナ・ルスチカに接種し、これを低温処理とモザイク葉(モザイク症状が目視で確認できる葉)の緑色部を分離する方法に用いた。前記の低温処理と緑色部の分離は、植物体中に存在する植物ウイルスの弱毒株を選抜する手法としては、すでに報告がなされている(Kosaka and Fukunishi (1997)Plant disease 81(7)733〜738、Kobori et al. (2005)Plant disease 89(8)879〜882)。
具体的には、まず、CMV強毒株であるH23株を接種したニコチアナ・ルスチカの幼苗を、直ちに15℃で2ヵ月間人工気象器で育成した(低温処理)。
その後、前記苗のモザイク葉の緑色部を切り出して葉重量の10〜50倍量の0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0を加えて磨砕した汁液を接種源とし、別のニコチアナ・ルスチカの幼苗に接種した。ウイルス接種後、25℃のガラス温室で11〜25日間育成した。
その後、育成した各ニコチアナ・ルスチカの病徴調査を行った。症状が軽くなったと思われるニコチアナ・ルスチカからさらに緑色部を切り出して葉重量の10〜50倍量の0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0を加えて磨砕した汁液を接種源とし、15〜18℃で14日〜2か月間の低温処理または緑色部の分離を計10回繰り返すことで、接種しても軽微なモザイク症状にとどまる弱毒株を1株分離した。
次いで、前記弱毒株感染葉について葉重量の10倍量の0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0を加えて磨砕した汁液を接種源としてケノポディウム・キノア(Chenopodium quinoa)に接種した後、2〜3日後の接種葉上にウイルス感染によって生じた多数の局部病斑を1個ずつ切り出して、葉重量の50倍量の0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0を加えて磨砕した汁液を接種源とし、ニコチアナ・ルスチカの幼苗に接種した(単病斑分離)。この単病斑分離を4回繰り返したところ、キュウリとズッキーニに接種した場合において病徴が軽微なCM14株を得た。
さらに、キュウリまたはズッキーニの幼苗の子葉に、カーボランダム法によってH23株またはCM14株のウイルス感染葉の粗汁液を擦り付け接種したところ、H23株は激しいモザイク症状を引き起こしたのに対し、CM14株はキュウリとズッキーニには一過的な退緑斑のみであった。その結果を表1に示す。
Figure 2020009012
実施例2
CMV弱毒株の2bタンパク質遺伝子の解析
実施例1で得られたCM14株の2bタンパク質遺伝子を解析し、選抜元であるH23株との相違を検討した。
CM14株を感染させたニコチアナ・ルスチカ葉からRNA抽出を行い、RT−PCR法で2bタンパク質遺伝子を合成した。
プライマーはPeR2-2367F:TAGTACAGAGTTCAGAGTTGAGCG(配列番号6)、及びPeR2-2967R:GTCCTTCCGAAGAAACCTAGG(配列番号7)、酵素は「Onestep RT−PCR kit」(QIAGEN社)を使用した。
DNAの解析はユーロフィンジェノミクス社のDNAシーケンスサービスを利用し、その結果を取りまとめ2bタンパク質遺伝子の塩基配列を決定した。
配列番号2、3に塩基配列とアミノ酸配列を、図1にCMVのゲノム構成を、図2に2bタンパク質に関する弱毒株と強毒株の塩基配列の比較を、図3に同様にしてアミノ酸配列の比較を、図4に2bタンパク質の模式図をそれぞれ示す。
実施例3
WMV弱毒株WM14の作出
宮崎県内で栽培された、モザイク症状を引き起こしているキュウリを選択し、DAS-ELISA法によるWMV検定及びカボチャとキュウリへの接種検定を用いることで、キュウリにモザイク症状を引き起こすWMVの強毒株(以下、「MIYA株」という)を分離した。
次いで、MIYA株をカボチャに接種して、これを既述の低温処理とモザイク葉緑色部からウイルスを分離する方法に用いた。さらに、WMV弱毒株の選抜では、single plant isolation(SPI)を組み合わせた。SPIは感染葉から葉重量に対して100〜500倍量の0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0を加えて磨砕した汁液すなわち高希釈倍率液を作製した後、選抜植物に接種する公知の方法である。
具体的には、まず、WMV強毒株であるMIYA株を接種したカボチャ幼苗を、直ちに15℃で2ヵ月間人工気象器で育成した(低温処理)。
その後、前記苗のモザイク葉の緑色部を切り出して作製した磨砕汁液をSPIの接種源とし、別のカボチャ幼苗に接種した。ウイルス接種後、25℃のガラス温室で14〜21日間育成した。
その後、育成した各カボチャの病徴調査を行った。症状が軽くなったと思われるカボチャからさらに緑色部を切り出して作製した磨砕汁液をSPIの接種源とし、18〜20℃で2〜3ヵ月間の低温処理または緑色部の分離及びSPIを計7回繰り返すことで、接種しても軽微なモザイク病の症状にとどまる弱毒株を1株分離した。
次いで、前記弱毒株感染葉について葉重量の10倍量の0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0を加えて磨砕した汁液を接種源としてケノポディウム・ムラーレ(Chenopodium murale)に接種した後、12〜26日後の接種葉上にウイルス感染によって生じた多数の局部病斑を1個ずつ切り出して、葉重量の50倍量の0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0を加えて磨砕した汁液を接種源とし、カボチャ幼苗に接種した。この単病斑分離を7回繰り返したところ、カボチャとズッキーニのいずれに接種した場合においても病徴が軽微なWM14株を得た。
さらに、キュウリ、ズッキーニまたはカボチャの幼苗の子葉に、カーボランダム法によってMIYA株またはWM14株のウイルス感染葉の粗汁液を擦り付け接種したところ、MIYA株は激しいモザイク症状を引き起こしたのに対し、WM14株はキュウリ、ズッキーニまたはカボチャには軽微な退緑斑あるいは極めて軽微なモザイクであった。その結果を表2に示す。
Figure 2020009012
実施例4
WMV弱毒株のHC−Pro遺伝子の解析
実施例3で得られたWM14株のHC−Pro遺伝子を解析し、選抜元であるMIYA株との相違を検討した。
WM14株を感染させたカボチャ葉からRNA抽出を行い、RT−PCR法でHC−Pro遺伝子を合成した。
プライマーはWMV-1389F:TGTGCGAGGTAGAGAGAATGG(配列番号8)、及び、WMV-2865R:TTCACACTTCATCCTTTGTTG(配列番号9)、酵素は「Onestep RT−PCR kit」(QIAGEN社)を使用した。
DNAの解析はユーロフィンジェノミクス社のDNAシーケンスサービスを利用し、その結果を取りまとめ、HC−Pro遺伝子の塩基配列を決定した。配列番号4、5に塩基配列とアミノ酸配列を、図5−1〜図5−3にHC−Proに関する弱毒株と強毒株の塩基配列の比較を、図6に同様にしてアミノ酸配列の比較をそれぞれ示す。
実施例5
CMVとWMVの重複感染による病徴激化は、キュウリなどのウリ科作物でよく知られている。CMV弱毒株とWMV弱毒株をキュウリ苗(品種:エクセレント節成2号)に混合接種したところ、表3に示すように各単独感染と比べて病徴が強まることはなかった。
Figure 2020009012
実施例1、3および5の結果から、CM14株は、ウリ科植物に対して単独で接種した場合に弱毒性を示すことに加えて、WM14株を併用した場合でも、優れた弱毒性を示すことから、安全性に優れた弱毒株であることがわかる。
実施例6
CM14株接種により生じるキュウリ苗の干渉効果
CM14株及びWM14株を接種したウリ科植物におけるCMV強毒株やWMV強毒株に対する発病抑制の効果、つまり干渉効果を温室内のポット植えのキュウリ苗(品種:おおのぞみ)への接種試験により検証した。
あらかじめCM14株を感染させたニコチアナ・ルスチカの葉汁液またはWM14株を感染させたカボチャの葉汁液を単独または混合してカーボランダム法によって試験用キュウリ苗の子葉に擦り付け接種した。
次いで、18日後にCMV強毒株であるH23株を感染させたニコチアナ・ルスチカの葉汁液あるいはWMV強毒株であるMIYA株を感染させたカボチャの葉汁液を、試験用キュウリ苗の第1本葉に擦り付け接種した。
その後、試験用キュウリ苗の上位葉に強毒ウイルス特有のモザイク症状が現れるか否かで、干渉効果を判定した。CMV強毒株に対する干渉効果を表4に、WMV強毒株に対する干渉効果を表5に示す。
その結果、表4に示すように無接種区ではCMV強毒株接種の11日後にはすべての試験株で激しいモザイク症状が現れたため、CMV強毒株の感染が確認された。
それに対して、CM14株単独またはWM14株との混合接種では、接種31日後においてもCMV強毒株の発病株数が10株中5株あるいは2株と少なく、CMV弱毒株であるCM14株の接種により試験用キュウリ苗に高い干渉効果が生じていること認められた。
Figure 2020009012
WMVの干渉効果試験では、表5に示すように、無接種区ではWMV強毒株接種の11日後にはすべての試験株で激しいモザイク症状が現れたため、WMV強毒株の感染が確認された。
それに対して、WM14株単独またはCM14株との混合接種では、接種31日後においてもWMV強毒株の発病株数が10株中3株あるいは2株と少なく、WMV弱毒株であるWM14株の接種により試験用キュウリに高い干渉効果が生じていることが確認された。
Figure 2020009012
実施例7
CM14株接種により生じるキュウリ接ぎ木苗における干渉効果
CM14株及びWM14株を接種したウリ科植物におけるCMV強毒株やWMV強毒株に対する干渉効果を、温室内のポット植えの接ぎ木キュウリ苗(穂木品種:パイロット2号、台木品種:GT−II)への接種試験により検証した。
あらかじめCM14株を感染させたニコチアナ・ルスチカの葉汁液及びWM14株を感染させたカボチャの葉汁液を混合し、カーボランダム法によって試験用接ぎ木キュウリ苗の子葉に擦り付け接種した。
次いで、台木カボチャとの接ぎ木と育苗を実施し、CM14株及びWM14株を接種した16日後にCMV強毒株であるH23株を感染させたニコチアナ・ルスチカの葉汁液及びWMV強毒株であるMIYA株を感染させたカボチャの葉汁液の混合液を試験用接ぎ木キュウリ苗の第1本葉に擦り付け接種した。
その後、試験用接ぎ木キュウリ苗の上位葉に強毒ウイルス特有のモザイク病が現れるか否かで、干渉効果を判定した。結果を表6に示す。
その結果、表6に示すように無接種区ではCMV強毒株及びWMV強毒株接種の12日後にはすべての試験株で激しいモザイク病の症状が現れたため、強毒株の感染が確認された。
それに対して、CM14株及びWM14株を接種した試験用接ぎ木キュウリ苗には、モザイク病は認められなかったことから、CM14株及びWM14株の接種により接ぎ木キュウリ苗に非常に高い干渉効果が生じていることが認められた。
Figure 2020009012
実施例8
ビニルハウスにおける弱毒株のモザイク病に対する防除効果
CM14株及びWM14株のモザイク病に対する防除効果を、ビニルハウス圃場にキュウリ苗(品種:エクセレント節成2号)を定植して検証した。
あらかじめCM14株を感染させたニコチアナ・ルスチカの葉汁液及びWM14株を感染させたカボチャの葉汁液どうしを混合して、この混合液をカーボランダム法によって試験用キュウリ苗の子葉に擦り付け接種し、本葉が4枚程度になるまで温室内で育成した。
その後、試験用キュウリ苗をビニルハウス圃場に定植して栽培した。
定植24〜37日後までにCMV強毒株であるH23株及びWMV強毒株であるMIYA株が感染したキュウリ苗にアブラムシをのせ、その苗を伝染源として畝間に配置しモザイク病を誘発させた。
その後、強毒株によるモザイク病と萎凋症が現れるか否かで、防除効果を判定した。モザイク病が発生した株の割合を表7に、萎凋症が確認された株の割合を表8に、果実の収量調査の結果を表9に示す。なお、表9に記載の商品果実率は、
(優品果実数+良品果実数)/全収穫果実数×100
で計算した。
また発病果実率は、
発病果実数/全収穫果実数×100
で計算した。
表7、8の結果より、定植60日後において無接種区では、モザイク病が12株中10株、萎凋症が12株中3株で確認されたが、接種区では、モザイク病が12株中5株と低く推移し、萎凋症はまったく認められなかった。
Figure 2020009012
Figure 2020009012
また、表9の結果より、無接種区の商品果実率は60.6%、発病果実率は35.6%であるのに対し、接種区の商品果実率は90.7%で発病果実率は8.9%であった。
したがって、CM14株およびWM14株を接種することで、無接種区に対して、商品として使用できる果実数は1.56倍と顕著に向上し、また、発病果実の数も顕著に低減したことがわかる。この結果から、CM14株およびWM14株は、ウリ科植物の生産性の向上に大きく寄与し、また圃場に定植する前の苗に接種すれば、その後の生育においてもモザイク病を防除できるため、防除を圃場で行うコストや作業の省力化が可能になることがわかる。
Figure 2020009012
実施例9
CMV弱毒株の抽出
CMV弱毒株の抽出には、あらかじめCM14株を感染させたニコチアナ・ルスチカ接種葉を−80℃で凍結保存して使用した。
凍結感染葉を葉重量の3倍量の抽出バッファー(0.1Mクエン酸緩衝液、0.01Mエチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(以下EDTA)、pH7.2、0.1%チオグリコール酸ナトリウム)を加えてホモジナイザーで磨砕(15,000rpm、5分、4℃)した。その後、磨砕汁液に対してクロロホルムを等量加えてさらに磨砕、撹拌した後、遠心分離(7,000rpm、15分間、4℃)して上清を得た。クロロホルムの代用として、ブタノールを磨砕汁液の5%量加えたもの、あるいは有機溶媒無添加の汁液も同様に遠心分離し上清を得た。各CM14株含有上清のウイルス含有量は、以下のようにして測定した。
CMV弱毒株を感染させた植物感染葉からウイルスを抽出した際、その含有量(濃度)は50%感染価(ID50)を指標として表わすこととした。ウイルスを含有する試料を希釈して植物1株あたり0.3mLを接種し、接種した希釈試料ごとの感染率を調べ、ベーレンス・ケルバー法の計算式に各感染率(実測値)を代入して50%感染価(ID50)を求めた(ウイルス実験学総論(改訂二版) 23.ウイルス学に必要な数値の扱い方、国立予防衛生研究所学友会編、丸善株式会社発行、1973年6月)。
このようにして感染が起こる限界の希釈度を求めた。限界の希釈度とは接種された50%の個体に感染が認められた希釈倍率(対数)のことで、ウイルス含有量(濃度)はこの時の希釈倍率の逆数で表し、50%感染価(ID50)という単位を用いた。これを試料0.3mLあたりのウイルス含有量とした。
ベーレンス・ケルバー法の計算式
50%感染価 (対数の指数)=χ−(h1 +h2 +…+hK−1)×d−0.5×d
χ:感染率100%を示す試料の希釈度(対数指数))
1 +h2 +…+hK−1:各希釈での感染率の和
0.5:定数
d:希釈間隔の対数指数(10倍階段希釈の場合d=1)
50%感染価の計算例
ウイルス含有量を測定したい試料を10倍段階希釈し、各感染率を表10とした場合の計算例を以下に示す。表10の結果をベーレンス・ケルバー法の計算式に入れると、
ID50=−1−(0.8+0.2+0)×1−0.5×1=−(1+1+0.5)=−2.5
すなわち、この試料が50%感染を示す希釈度は10−2.5となり、従って、このウイルス液のウイルス含有量(濃度)は希釈度の逆数である、0.3mLあたり102.5ID50となる。言い換えると、この試料は、102.5(約316)倍希釈した場合に50%が感染する感染量を有していることになる。
Figure 2020009012
次に、各CM14株含有上清のウイルス含有量を測定するために、0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0で10倍階段希釈した試料を調整し、各試料の0.3mLを綿棒に吸い込ませてニコチアナ・ルスチカ幼苗へカーボランダム法によって擦り付け接種した。接種は各試料に付き4株に実施した。接種後直ちに接種葉へ散水し、10,000〜18,000ルックス(14時間照射)の人工光又は自然光下、 20〜30℃で栽培した。接種14〜21日後に病徴を観察し、各試料の感染率を求めた。結果を表11に示す。
Figure 2020009012
表11の結果より、CM14株の含有量は有機溶媒無添加の試料が102.0ID50/0.3mLと最も低く、クロロホルムまたは5%ブタノール添加の含有量は102.50ID50/0.3mLまたは102.75ID50/0.3mLと高い傾向にあった。
実施例10
CMV弱毒株の遠心沈渣からの抽出
実施例9では、CM14株の含有量は有機溶媒無添加の遠心上清が102.0ID50/0.3mLと低い値であった。そこで、遠心沈渣からCMV弱毒株を抽出する条件を検証した。凍結感染葉に実施例9と同じ抽出バッファー(0.1Mクエン酸緩衝液、0.01M EDTA、pH7.2、0.1%チオグリコール酸ナトリウム)を葉重量の2.5倍量加えてスーパーブレンダーで磨砕(15分、4℃)した。その後、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して上清とともに遠心沈渣を得た。この遠心沈渣へ、抽出バッファーを沈渣容量の3倍量加えて再びスーパーブレンダーにて10分再懸濁し、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して再懸濁上清を得た。この際、抽出バッファーは、Triton(登録商標) X-100無添加、最終濃度0.12%または0.5%となるように加えた液を使用した。得られた各CM14株含有液のウイルス含有量を実施例9と同様にして測定した。
結果を表12に示す。遠心沈渣におけるCM14株の含有量はTriton(登録商標) X-100無添加では102.00ID50/0.3mL、Triton(登録商標) X-100が0.12%または0.5%において各々103.50ID50/0.3mLまたは103.25ID50/0.3mLであったことから、遠心沈渣にはCM14株が遠心上清へ浮遊せずに大量に残っていることが明らかになった。また、Triton(登録商標) X-100の添加によって遠心沈渣からCM14株を高効率で抽出できることが確認された。
Figure 2020009012
実施例11:CMV弱毒株の高抽出条件の確立
CMV弱毒株の抽出効率を高める条件を検証した。凍結感染葉に実施例9と同じ抽出バッファー(0.1Mクエン酸緩衝液、0.01M EDTA、pH7.2、0.1%チオグリコール酸ナトリウム)を葉重量の2.5倍量加えてスーパーブレンダーで磨砕(15分、4℃)した。その後、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して上清(1)と沈渣を得た。上記抽出バッファーにTriton(登録商標) X-100を最終濃度0.5%加え、得られた沈渣へ沈渣容量の3倍量加えて再びスーパーブレンダーにて10分再懸濁し、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して上清(再懸濁上清(2))を得た。その後、(1)と(2)液を混合した。得られた各CM14株含有液のウイルス含有量を実施例9と同様にして測定した。
結果を表13に示す。CM14株の含有量は遠心上清が102.0ID50/0.3mLと低い値であったが、再懸濁上清は102.75ID50/0.3mLと高い値であった。また、遠心上清(1)と得られた沈渣の再懸濁上清(2)の混合液は102.50ID50/0.3mLと高い値であった。以上のことから、Triton(登録商標) X-100添加による遠心沈渣の再懸濁は、CM14株の抽出に有効であることが明らかになった。
Figure 2020009012
Triton(登録商標) X-100添加済の抽出バッファーを使用して、CM14株の抽出を試みた。抽出バッファーとして、実施例10と同じもの(0.1Mクエン酸緩衝液、0.01MEDTA、pH7.2、0.1%チオグリコール酸ナトリウム)へTriton(登録商標) X-100が最終濃度0.12%または0.5%となるように添加したものを感染葉の磨砕に使用した。凍結感染葉にTriton(登録商標) X-100を添加した抽出バッファーを葉重量の2.5倍量加えてスーパーブレンダーで磨砕(15分、4℃)した。その後、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して上清を得た。得られた各CM14株含有液のウイルス含有量を実施例9と同様にして測定した。
結果を表13に示す。CM14株の含有量はTriton(登録商標)X-100が無添加の遠心上清102.0ID50/0.3mLと比べてTriton(登録商標)X-100が0.12%または0.5%添加とも102.75ID50/0.3mLと高い値であったことから、Triton(登録商標)X-100を添加した抽出バッファーで感染葉を磨砕することはCM14株の抽出に有効であることが明らかになった。
実施例12:WMV弱毒株の抽出
WMV弱毒株の抽出には、あらかじめWM14株を感染させたカボチャ品種えびす感染葉を−80℃で凍結保存して使用した。
凍結感染葉を葉重量の2.5倍量の抽出バッファー(0.1Mリン酸カリウム緩衝液、0.01MEDTA、0.01M N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(DIECA)、pH7.0、0.1%メルカプトエタノール)を加えてホモジナイザーで磨砕(15,000rpm、5分、4℃)した。その後、磨砕汁液に対して四塩化炭素を15容量%加えてさらに磨砕、撹拌した後、遠心分離(7,000rpm、15分間、4℃)して上清を得た。有機溶媒無添加の汁液も同様に遠心分離し上清を得た。
次に、各WM14株含有上清のウイルス含有量を、実施例9と同様にして測定した。0.1Mリン酸カリウム緩衝液、0.01MDIECA、pH7.0で10倍階段希釈した試料を調整し、各試料の0.3mLを綿棒に吸い込ませてカボチャ幼苗へカーボランダム法によって擦り付け接種した。接種は各試料に付き4株または8株に実施した。接種後直ちに接種葉へ散水し、自然光下、20〜30℃のガラス温室で栽培した。接種14〜21日後にカボチャ葉を採取し、DAS-ELISA法によりWMVの感染を確認した。
結果を表14に示す。四塩化炭素の添加によって遠心上清の清澄化は確認されたものの、WM14株の含有量は四塩化炭素の添加・無添加で同量であった。
Figure 2020009012
実施例13:WMV弱毒株の遠心沈渣からの抽出
実施例10では、CM14株を遠心沈渣から再抽出する際にTriton(登録商標) X-100は有効であることを明らかにした。
そこで、WM14株についても、遠心沈渣におけるウイルスの残存とその抽出を試みた。WMV弱毒株の抽出には、あらかじめWM14株を感染させたカボチャ品種えびす感染葉を−80℃で凍結保存して使用した.
凍結感染葉を葉重量の2.5倍量の抽出バッファー(0.3Mリン酸カリウム緩衝液、0.01M EDTA、pH7.5、0.1%メルカプトエタノール)を加えてスーパーブレンダーで磨砕(15分、4℃)した。その後、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して上清とともに遠心沈渣を得た。この遠心沈渣へ、抽出バッファーを沈渣容量の3倍量加えて再びスーパーブレンダーにて10分再懸濁し、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して再懸濁上清を得た。この際、抽出バッファーは、Triton(登録商標) X-100無添加、最終濃度0.5容量%となるように加えた液を使用した。得られた各WM14株含有液のウイルス含有量は実施例12と同様にして測定した。
結果を表15に示す。遠心沈渣におけるWM14株の含有量はTriton(登録商標) X-100無添加では102.25ID50/0.3mL、Triton(登録商標) X-100が0.5容量%において102.75ID50/0.3mLであったことから、WM14株の遠心沈渣にはCM14株と同様に遠心上清へ浮遊せずに大量に残っていることが明らかになった。また、Triton(登録商標) X-100の添加によって遠心沈渣からWM14株を高効率で抽出できることが確認された。
Figure 2020009012
実施例14:WMV弱毒株の高抽出条件の確立
WMV弱毒株の抽出効率を高める条件を検証した。凍結感染葉に実施例13と同じ抽出バッファー(0.3Mリン酸カリウム緩衝液、0.01M EDTA、pH7.5、0.1%メルカプトエタノール)を葉重量の2.5倍量加えてスーパーブレンダーで磨砕(15分、4℃)した。その後、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して上清(1)と沈渣を得た。上記抽出バッファーにTriton(登録商標) X-100を最終濃度0.5%加え、得られた沈渣へ沈渣容量の3倍量加えて再びスーパーブレンダーにて10分再懸濁し、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して上清(再懸濁上清(2))を得た。その後、(1)と(2)液を混合した。得られた各WM14株含有液のウイルス含有量を実施例12と同様にして測定した。
結果を表16に示す。WM14株の含有量は遠心上清が102.5ID50/0.3mLであったが、再懸濁上清は102.75ID50/0.3mLと高い値であった。また、遠心上清(1)と得られた沈渣の再懸濁上清(2)の混合液は102.75ID50/0.3mLであった。以上のことから、Triton(登録商標) X-100添加による遠心沈渣の再懸濁は、WM14株の抽出に有効であることが明らかになった。
Figure 2020009012
Triton(登録商標) X-100添加済の抽出バッファーを使用して、WM14株の抽出を試みた。抽出バッファーとして、実施例13と同じもの(0.3Mリン酸カリウム緩衝液、0.01M EDTA、pH7.5、0.1%メルカプトエタノール)へTriton(登録商標) X-100が最終濃度0.5容量%となるように添加したものを感染葉の磨砕に使用した。凍結感染葉にTriton(登録商標) X-100添加抽出バッファーを葉重量の2.5倍量加えてスーパーブレンダーで磨砕(15分、4℃)した。その後、遠心分離(7,000rpm、25分間、4℃)して上清を得た。得られた各WM14株含有液のウイルス含有量を実施例12と同様にして測定した。
結果を表16に示す。WM14株の含有量は、Triton(登録商標) X-100が無添加の遠心上清102.50ID50/0.3mLと比べてTriton(登録商標)X-100が0.5容量%添加では103.25ID50/0.3mLと高い値であったことから、Triton(登録商標) X-100を添加した抽出バッファーで感染葉を磨砕することはWM14株の抽出に有効であることが明らかになった。

Claims (15)

  1. 2bタンパク質をコードする配列番号1に示されるRNAの5’側から279番目〜282番目の塩基配列から1または2個の塩基が欠失されているRNAまたは前記279番目〜282番目の塩基配列中に1または2個の塩基が挿入されているRNAをゲノム中に有するキュウリモザイクウイルス弱毒株。
  2. 2bタンパク質をコードするRNAが配列番号2に示される塩基配列を含む、請求項1に記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株。
  3. 配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる2bタンパク質を有する、請求項1または2に記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株を有効成分として含有する、ウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤。
  5. さらにヘルパーコンポーネントプロテアーゼをコードする配列番号4に示されるRNAをゲノム中に有するスイカモザイクウイルス弱毒株を含む、請求項4に記載のウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤。
  6. 前記スイカモザイクウイルス弱毒株が配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるヘルパーコンポーネントプロテアーゼを有する、請求項5に記載のウリ科植物用のモザイク病抵抗性誘導剤。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株をウリ科植物に接種することを特徴とする、ウリ科植物のモザイク病防除方法。
  8. さらにヘルパーコンポーネントプロテアーゼをコードする配列番号4に示されるRNAをゲノム中に有するスイカモザイクウイルス弱毒株をウリ科植物に接種する、請求項7に記載のウリ科植物のモザイク病防除方法。
  9. 前記スイカモザイクウイルス弱毒株が配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるヘルパーコンポーネントプロテアーゼを有する、請求項7または8に記載のウリ科植物のモザイク病防除方法。
  10. 請求項1〜3のいずれかに記載のキュウリモザイクウイルス弱毒株が接種された、モザイク病抵抗性を有するウリ科植物。
  11. さらにヘルパーコンポーネントプロテアーゼをコードする配列番号4に示されるRNAをゲノム中に有するスイカモザイクウイルス弱毒株が接種された、請求項10に記載のウリ科植物。
  12. 前記スイカモザイクウイルス弱毒株が配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるヘルパーコンポーネントプロテアーゼを有する、請求項11に記載のウリ科植物。
  13. モザイクウイルス弱毒株の抽出方法であって、モザイクウイルス弱毒株感染葉からのポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテルを含むノニオン系界面活性剤添加抽出バッファーを用いるモザイクウイルス弱毒株の抽出方法。
  14. 前記抽出方法が、モザイクウイルス弱毒株感染葉の磨砕物の遠沈後の上清と、沈査からの前記ノニオン系界面活性剤添加抽出バッファーを用いる抽出物との混液、または前記ノニオン系界面活性剤添加抽出バッファーを用いる磨砕物の遠沈上清である、請求項13に記載の抽出方法。
  15. 前記モザイクウイルスがキュウリモザイクウイルスまたはスイカモザイクウイルスである請求項13または14に記載の抽出方法。
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