JP2005206596A - 芳香療法用組成物 - Google Patents

芳香療法用組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2005206596A
JP2005206596A JP2004377391A JP2004377391A JP2005206596A JP 2005206596 A JP2005206596 A JP 2005206596A JP 2004377391 A JP2004377391 A JP 2004377391A JP 2004377391 A JP2004377391 A JP 2004377391A JP 2005206596 A JP2005206596 A JP 2005206596A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
composition
linalool
group
essential oil
stimulation
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2004377391A
Other languages
English (en)
Inventor
Katsuya Nagai
克也 永井
Akira Niijima
旭 新島
Mamoru Tanida
守 谷田
Kyo Chin
キョウ チン
Hiroko Horii
裕子 堀井
Keiko Maeda
景子 前田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka Industrial Promotion Organization
Original Assignee
Osaka Industrial Promotion Organization
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka Industrial Promotion Organization filed Critical Osaka Industrial Promotion Organization
Priority to JP2004377391A priority Critical patent/JP2005206596A/ja
Publication of JP2005206596A publication Critical patent/JP2005206596A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】 嗅覚を刺激することにより、発熱や悪疫質などの消耗性疾患、痩せ(るい痩)、栄養不良、組織損傷治癒低下、糖尿病、高血圧、免疫低下、皮膚代謝低下等を含む好ましくない身体状態を改善するために用いられる芳香療法用組成物を提供する。詳細には、食欲増進用、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進用、栄養不良改善、組織損傷治癒促進、抗糖尿病用、血圧降下用、免疫賦活用、皮膚代謝促進用の芳香療法用組成物を提供する。さらに本発明はこれらの芳香療法用組成物を含有することで、上記各効果を有する付香製品を提供する。
【解決手段】上記芳香療法用組成物及び付香製品の有効成分として、リナロールまたはそれを含む精油、好ましくはラベンダー精油を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、発熱や悪疫質などの消耗性疾患、痩せ(るい痩)、栄養不良、組織損傷治癒低下、糖尿病、高血圧、免疫低下、及び皮膚代謝の低下等を含む好ましくない身体状態を改善するために用いられる芳香療法用組成物(身体改善用芳香組成物)に関する。詳細には、本発明は、匂い刺激による副交感神経興奮または交感神経抑制作用に基づいて、上記各種の身体状態を改善するために用いられる芳香療法用組成物、例えば、食欲増進用組成物、エネルギー消耗抑制用/エネルギー蓄積促進用組成物、栄養不良改善用組成物、組織損傷治癒促進用組成物、抗糖尿病用組成物、血圧降下用組成物、免疫賦活用組成物、及び皮膚代謝促進用組成物に関する。
さらに本発明はこれらの芳香療法用組成物を含有することで、上記各種の効果を有しその用途で使用される付香製品に関する。
古来より、香りには種々の心理的及び生理的作用があることが経験的に知られている。「アロマテラピー」とは、植物から採取した芳香油(エッセンス、精油)を心身状態の改善に利用する芳香療法のことを意味するが、現在のアロマテラピーは、1928年フランスの科学者ルネ・モーリス・ガットフォッセが「芳香療法」を、また1964年に医師ジャン・ヴォルネが「植物=芳香療法」を出版したことに端を発して広められたと言われている。
最近では、アロマテラピーといえば、主に精神安定、ストレス解消、及び不眠症の芳香療法として広く普及している。植物のエッセンス(香り)の神経精神生理学的作用については、1973年に、Rovesti 及びColomboが、香りの向精神作用を鎮静と賦活に分けて、香りの精神疾患療法に対する応用の可能性を報告したことを発端に(非特許文献1参照)、数多くの研究報告がなされている(例えば、非特許文献2〜5等参照のこと)。例えば、ラベンダーやカモミールなどの精油エキスには鎮静及び催眠効果があることが知られている(例えば、非特許文献6、特許文献1等参照のこと)。またラベンダーのもつ鎮静作用は、呼吸器系の疾患、特に不安神経症など極度の精神的緊張に起因する喘息の発作に効果的であることが知られている(例えば、非特許文献7等参照のこと)。また、ラベンダー精油には、上記神経精神生理学的作用とは別に、傷の治りを促す作用(瘢痕形成作用)と抗炎症作用があり、皮膚の様々なトラブル(皮膚炎、やけど、掻痒症、潰瘍、切り傷、打撲など)に効果があること、また抗凝血作用を有しており血液循環の疾患(静脈炎、冠動脈炎、動脈炎、毛細血管の循環不良、浮腫)の治療に使用できることが知られている(例えば、非特許文献7等参照のこと)。
しかしながら、植物のエッセンス(香り)が病気の治療に効果を発揮する理由については未だ不明な点が多く、植物のもつ生命力がヒトの心身に生じているアンバランスを調和させて健康な状態を取り戻す作用を持っているという漠然とした説明しかなされていないのも事実である。これは漢方薬による治療が陰と陽のバランスを重視しているのと共通する。また、エッセンス(香り)による上記治療効果が、抗生物質や鎮痛剤のような薬理学的作用に基づくものなのか、あるいは香水のように心理的な効果に基づくものなのかについても、現在のところ明確には分かっていないのが実情である。
Rovesti,P. and Colombo,E. (1973) Aromatherapy and aerosol. Soap, Perfumery and Cosmetics,46: 475-477 柳生隆視「香りの精神医学的臨床応用とその課題−神経精神生理学的検討−」FOOD & FOOD INGREDIENTS JOURNAL No.156, 1993, p.50-57 古賀良彦「ストレスとアロマテラピー」フレグランスジャーナルNo.86 (1987) p.25-28 小森照久など「香りによるうつ病治療の試み−科学的検証と臨床応用−」日本神経精神薬理学雑誌(Jpn. J. Psychopharmacol.) 15:39-42 (1995) 古賀良彦「脳機能からみたアロマテラピーの効果」フレグランスジャーナルNo.86 (1987) p.47-51 月刊フードケミカル,Vol.10, No.12 日本エステル社ホームページhttp://www.esters.co.jp/index.html 実開平06-50570号公報
本発明は、発熱や悪疫質などの消耗性疾患、痩せ(るい痩)、栄養不良、組織損傷治癒低下、糖尿病、高血圧、免疫低下、及び皮膚代謝の低下等を含む好ましくない身体状態を改善するために用いられる芳香療法用組成物(身体改善用芳香組成物)を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、匂いを嗅ぐことによって副交感神経を興奮させるかまたは交感神経を抑制させて、上記のような好ましくない身体状態を改善するために用いられる芳香組成物、例えば、食欲を増進させるために用いられる芳香組成物、エネルギー消耗を抑制するためまたはエネルギー蓄積を促進するために用いられる芳香組成物、栄養不良を改善するために用いられる芳香組成物(るい痩を改善するために用いられる芳香組成物)、組織損傷の治癒(修復)を促進するために用いられる芳香組成物、糖尿病を改善しまた糖尿病併発症を予防するために用いられる芳香組成物、血圧を降下させるため(または高血圧状態を改善するため)に用いられる芳香組成物、免疫活性を向上させるために用いられる芳香組成物、及び皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を促進するために用いられる芳香組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、匂い成分として上記芳香療法用組成物を含有することで上記各種の機能を有し、その用途に用いられる付香製品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、各種の植物精油の匂い成分に注目して鋭意検討していたところ、リナロール及びそれを含む精油の嗅覚に対する刺激(匂い刺激)によって、脂肪分解が抑制されて脂肪蓄積が促進(エネルギー消費の減少)されること、併せて食欲が亢進して体重が増加することを見いだし、かかる知見から、リナロールの匂い刺激が体内の栄養状態を同化的状態(anabolic)に変化させて、食欲増進、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進、栄養不良の改善(るい痩の改善)、組織損傷の治癒(修復)促進に有効に利用できることを確信した。また本発明者らは、リナロール及びそれを含む精油の嗅覚に対する刺激(匂い刺激)によって血圧が降下することを見いだし、リナロールの匂いが高血圧症に対する血圧降下のために有効に利用できることを確信した。さらに本発明者らは、リナロール及びそれを含む精油の嗅覚に対する刺激(匂い刺激)によって、糖尿病モデル動物の高血糖症状を改善することができることを見いだし、リナロールの匂いが糖尿病の症状の改善や糖尿病合併症の予防に有効に利用できることを確信した。
ところで、ヒトなどの高等動物において、嗅覚情報は大脳皮質のうち主として辺縁系で処理されている。当該辺縁系では、かかる嗅覚情報の処理以外に、食欲や性欲などのの本能、情動、自律神経機能などのコントロールが行われている。また血圧調節、心臓、肺、胃及び腸管などの内臓機能の調節は、視床下部を中心とする皮質下の部位で行われるが、辺縁系はそれを支配する上位中枢としての役割をも担っている。このため、こうした辺縁系の種々の機能に対して嗅覚刺激は少なからず影響を与えるものと考えられる。
本発明者らは、こうした考えのもとで、さらに研究を重ねたところ、リナロール及びそれを含む精油の匂い刺激による上記の同化作用(エネルギー消耗抑制/エネルギー蓄積促進、食欲増進、体重増加、体蛋白増加、損傷治癒)が、白色脂肪組織、褐色脂肪組織及び副腎を支配する交感神経の活動の抑制により、また腸管を支配する副交感神経の活動の亢進によって生じていること;リナロール及びそれを含む精油の匂い刺激による上記血圧降下作用が、副腎を支配する交感神経の活動抑制と腎臓を支配する交感神経の活動抑制が相俟って生じていること;さらにリナロール及びそれを含む精油の匂い刺激による上記抗糖尿病作用が、副腎を支配する交感神経の活動抑制に伴うアドレナリンの分泌抑制によって生じていることを突き止め、リナロール及びそれを含む精油の匂いを利用することによって、その副交感神経興奮または交感神経抑制作用に基づいて、発熱や悪疫質などの消耗性疾患、痩せ症(るい痩)、栄養不良、組織損傷治癒低下、糖尿病、及び高血圧等を含む好ましくない身体状態を改善方向に導くことができることを確信した。
こうした研究の裏付けに基づいて、本発明者らは、さらに研究を重ねていたところ、リナロール及びそれを含む精油の嗅覚に対する刺激(匂い刺激)によって、胸腺を支配する迷走神経(副交感神経)の活動が亢進し且つ脾臓を支配する交感神経の活動が抑制されることを確認し、この知見からリナロールの匂いに生体の免疫活性を向上させる作用があることを確信した。さらに、本発明者らは、リナロール及びそれを含む精油の嗅覚に対する刺激(匂い刺激)によって、皮膚の血管収縮に関わる皮膚の交感神経の活動が抑制されることを確認し、この知見からリナロールの匂いに皮膚の血流量を増加させて皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を促進する作用があることを確信した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は下記に記載する各種の目的で用いられる芳香療法用組成物である:
項1. リナロールまたはリナロールを含む精油を有効成分として含有する、副交感神経興奮または交感神経抑制作用に基づく芳香療法用組成物。
項2. リナロールを含む精油がラベンダー精油である項1に記載する芳香療法用組成物。
項3. 食欲増進用組成物である項1または2に記載する芳香療法用組成物。
項4. エネルギー消耗抑制用またはエネルギー蓄積促進用組成物である項1または2に記載する芳香療法用組成物。
項5. 栄養不良改善用組成物である項1または2に記載する芳香療法用組成物。
項6. 組織損傷治癒促進用組成物である項1または2に記載する芳香療法用組成物。
項7. 抗糖尿病用組成物である項1または2に記載する芳香療法用組成物。
項8. 血圧降下用組成物である項1または2に記載する芳香療法用組成物。
項9. 免疫賦活用組成物である項1または2に記載する芳香療法用組成物。
項10. 皮膚代謝促進用組成物である項1または2に記載する芳香療法用組成物。
さらに本発明は、下記に記載する各種の目的で用いられる付香製品である:
項11.項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有する付香製品。
項12.食欲増進用付香製品である項11に記載する付香製品。かかる付香製品には、項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有することによって食欲増進作用を有するものであって、食欲を増進するために用いられる旨の表示が付されてなる付香製品が含まれる。
項13.エネルギー消耗抑制用またはエネルギー蓄積促進用付香製品である項11に記載する付香製品。かかる付香製品には、項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有することによってエネルギー消耗抑制作用またはエネルギー蓄積促進作用を有するものであって、エネルギーの消耗を抑制するかまたはエネルギーの蓄積を促進するために用いられる旨の表示が付されてなる付香製品が含まれる。
項14.栄養不良改善用付香製品である項11に記載する付香製品。かかる付香製品には、項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有することによって栄養不良改善作用を有するものであって、栄養不良を改善するために用いられる旨の表示が付されてなる付香製品が含まれる。
項15. 組織損傷治癒促進用付香製品である項11に記載する付香製品。かかる付香製品には、項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有することによって組織損傷治癒促進作用を有するものであって、組織損傷の治癒(修復)を促進するために用いられる旨の表示が付されてなる付香製品が含まれる。
項16.抗糖尿病用付香製品である項11記載する付香製品。かかる付香製品には、項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有することによって抗糖尿病作用(血糖上昇抑制作用、過血糖改善作用)を有するものであって、抗糖尿病(血糖上昇の抑制、過血糖状態の改善)のために用いられる旨の表示が付されてなる付香製品が含まれる。
項17.血圧降下用付香製品である項11に記載する付香製品。かかる付香製品には、項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有することによって血圧降下作用(高血圧改善作用)を有するものであって、血圧降下(高血圧改善)のために用いられる旨の表示が付されてなる付香製品が含まれる。
項18.免疫賦活用付香製品である項11記載する付香製品。かかる付香製品には、項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有することによって免疫活性を向上させる作用(免疫賦活作用)を有するものであって、免疫賦活のために用いられる旨の表示が付されてなる付香製品が含まれる。
項19.皮膚代謝促進(皮膚のターンオーバー促進)用付香製品である項11に記載する付香製品。かかる付香製品には、項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有することによって皮膚の新陳代謝を促進する作用(皮膚のターンオーバー促進作用)を有するものであって、皮膚の新陳代謝促進のために用いられる旨の表示が付されてなる付香製品が含まれる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
I.芳香療法用組成物
本発明は、悪疫質や発熱などの消耗性疾患、痩せ(るい痩)、栄養不良、組織損傷治癒低下、糖尿病及び高血圧、免疫低下、及び皮膚代謝の低下等を含む身体の好ましくない状態を改善するために用いられる芳香組成物に関する。より詳細には、本発明は、匂い刺激を利用して上記の身体の好ましくない状態を改善するために用いられる芳香組成物に関する。この意味で、本発明では単なる芳香組成物と区別するために「芳香療法用組成物」と称する。
本発明の芳香療法用組成物は、リナロール(linalool、3,7-dimethyl-1,6-octadien-3-ol; 2,6-dimethyl-2,7-octadien-6-ol)を有効成分として含有することを特徴とする。なお、リナロールにはl体〔R(−)型、本発明では「(−)-リナロール」と称する〕、d体〔S(+)型、本発明では「(+)-リナロール」と称する〕及びdl体〔ラセミ体、本発明では(±)-リナロールと称する〕)があり、本発明が対象とするリナロールにはこれらのいずれもが含まれる。なお、これらのリナロールの由来は特に制限されず、植物の精油等から抽出精製される天然由来のもの、または合成由来のもののいずれであってもよい。ただ、後記の実験例の結果からわかるように、リナロールは、合成品についても、本発明の効果が認められているので、経済的な観点からは合成品を好適に選択することができる。なお、合成及び天然由来のリナロールは、(+)-リナロール、(±)-リナロール、及び(−)-リナロールのいずれも商業的に入手することができる。
本発明の芳香療法用組成物は、リナロールに代えて、またはリナロールと共に、リナロールと同じ作用を有する類縁成分を有することもできる。
また本発明の芳香療法用組成物は、本発明の効果を損なわないことを限度として、リナロールを単品として含むものに限らず、リナロールを、それを含む精油(エッセンシャル・オイル)の形態で含有するものであってもよい。リナロールを含む精油としては、ローズウッド、タイム・リナロール、コリアンダー、ネロリアブソリュート、イランイラン、ラベンダー、バジルスィート、ネロリ、オレガノ、マジョラム、プリグレン、バジル、クラリセージ、ベルガモット、カモマイル・ブルー、マートル等を挙げることができる。好ましくはリナロールを20%以上の割合で含む精油(例えば、ローズウッド、タイム・リナロール、コリアンダー、ネロリアブソリュート、イランイラン、ラベンダー、バジルスィート、ネロリ、オレガノ、マジョラム、プリグレン、及びバジル)であり、より好ましくはリナロールを30%以上の割合で含む精油(例えば、ローズウッド、タイム・リナロール、コリアンダー、ネロリアブソリュート、イランイラン、ラベンダー、バジルスィート、及びネロリ)であり、特に好ましくは後述する実験例で用いたラベンダーである。
これらの精油は、各種の植物の特定部位を例えば水蒸気蒸留することによって調製することができるが、簡便には商業的に入手することもできる。
本発明の芳香療法用組成物は、リナロールまたは上記精油(好ましくはラベンダー)だけからなるものであっても、又、本発明の効果を奏する範囲においてリナロールまたは上記の精油以外の成分を含有するものであってもよい。精油以外の成分としては、通常香料組成物の調製に使用される基剤や添加剤等を挙げることができる。
本発明の芳香療法用組成物がリナロールまたは上記精油(好ましくはラベンダー)以外に他の成分を含有する場合、当該組成物中に含まれるリナロールの含有割合としては、本発明の効果を奏することを限度として、例えば0.0001〜99%(w/w)の範囲から適宜選択することができる。
本発明の芳香療法用組成物は、その形状を特に問うものではない。例えば、通常の香料の溶剤として使用されるエタノール、プロピルアルコールまたはイソプロピルアルコールなどの炭素数1〜6の低級アルコール、並びにプロピレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールに溶解した溶液状;アラビアガムやトラガントガム等の天然ガム質類、またはグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルなどを用いて乳化した乳化状;アラビアガムなどの天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの香料の賦形剤として公知の材料で被覆した粉末状;界面活性剤などを用いて可溶化(分散化)した可溶化状(分散状);公知のカプセル化剤で処理して得られるマイクロカプセルなど、目的に応じて任意の形状を選択し、常法に従って調製することができる。また、サイクロデキストリンなどの公知の賦形剤で包接して、徐放性を持たせることもできる。
後述する実験例1に示すように、リナロールまたはこれを含む精油の1つであるラベンダー精油の匂いを嗅ぐことによって、体内の脂肪分解が抑制されて、エネルギー消耗が抑制されて脂肪が蓄積される方向に進む。なお、この身体現象は、白色脂肪組織を支配する交感神経の抑制による脂肪分解抑制作用(または脂肪蓄積促進作用)に加えて、褐色脂肪組織を支配する交感神経の抑制による熱産生の低下及び副腎を支配する交感神経の抑制による代謝の低下が相俟って生じるものと考えられる(実験例3)。
また、実験例2に示すように、リナロールまたはこれを含む精油の1つであるラベンダー精油の匂いを嗅ぐことによって、食欲が亢進されて、体重及び組織重量が増加する。なお、かかる食欲亢進は腸管を支配する副交感神経の亢進によって生じるものと考えられるが(実験例3)、体重増加現象は、当該食欲亢進に加えて、白色脂肪組織を支配する交感神経の抑制による脂肪分解抑制作用(または脂肪蓄積促進作用)、並びに褐色脂肪組織を支配する交感神経の抑制による熱産生の低下及び副腎を支配する交感神経の抑制による代謝の低下が相俟って生じていると考えられる(実験例3、実験例4)。
このことから、本発明の芳香療法用組成物は、その匂い刺激によって体内の栄養状態を同化的状態(anabolic)に変化させる作用を有していると考えられる。すなわち、本発明の芳香療法用組成物は、同化作用を利用してそれを用途(効能)とする組成物、具体的にはエネルギー消耗を抑制するかまたはエネルギー蓄積を促進するための組成物、食欲を増進するための組成物、栄養不良を改善するための組成物、または組織における蛋白質の増加蓄積を促し、組織損傷の治癒修復を促進するための組成物として好適に用いることができる。
また、後述する実験例6に示すように、リナロールまたはこれを含む精油の1つであるラベンダー精油の匂いを嗅ぐことによって、胸腺を支配する迷走神経(副交感神経)の活動が亢進し、かつ脾臓を支配する交感神経の活動が抑制される。一般に胸腺の迷走神経が興奮すると胸腺からのリンパ球の放出が増加し、かつ脾臓の交感神経の活動が低下するとリンパ球のNK(natural killer)活性が増加する。このことから、本発明の芳香療法用組成物は、その匂い刺激によって生体の免疫活性が向上させる作用(免疫賦活作用)を有していると考えられる(A. Niijima and M.M.Meguid, ” Influence of systemic arginine-lysine on immune organ function: an electrophysiological study. Brain Res. Bull. 45: 437-441 (1998) )。すなわち、本発明の芳香療法用組成物は、その免疫賦活作用を利用してそれを用途(効能)とする組成物、例えば術後・病中病後・産前産後等の患者や幼児や高齢者などの免疫が低下した身体状態を改善するための組成物(生体の免疫力を活性化するための組成物)として好適に用いることができる。特に、本発明の芳香療法用組成物は、前述するようにその匂い刺激によって体内の栄養状態を同化的状態(anabolic)に変化させる作用を併せもつため、疾病・創傷の治癒や回復、並びに予防に効果的に利用することができる。
また、後述する実験例4に示すように、リナロールまたはこれを含む精油の1つであるラベンダー精油の匂いを嗅ぐことによって血圧が降下する。なお、かかる血圧降下現象は、腎臓を支配する交感神経の抑制と副腎を支配する交感神経の抑制とが併行して働いて生じるものと考えられる。このことから、本発明の芳香療法用組成物は、血圧を降下するための組成物として、また高血圧状態を改善するために組成物として好適に用いることができる。
さらに、後述する実験例5に示すように、糖尿病モデル動物にリナロールまたはこれを含む精油の1つであるラベンダー精油の匂いを嗅がせると、該動物の耐糖能障害が改善する(糖負荷時における血糖上昇が抑制される)。なお、かかる血糖上昇抑制現象は、副腎を支配する交感神経が抑制される結果、アドレナリン分泌が抑制されるために生じるものと考えられる。このことから、本発明の芳香療法用組成物は、糖尿病症状を改善し、また糖尿病の合併症を予防するための組成物として好適に用いることができる。
また、後述する実験例7に示すように、リナロールまたはこれを含む精油の1つであるラベンダー精油の匂いを嗅ぐことによって、皮膚を支配する交感神経の活動が抑制される。皮膚の血管の収縮は交感神経の活動によって決定され、皮膚の交感神経の活動が低下すると皮膚の血流量が増加する。皮膚の血流量の増加に伴い、皮膚に運搬される酸素と栄養素は増加し、その結果、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)が促進される。このことから、本発明の芳香療法用組成物は、その匂い刺激によって皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を促進する作用(皮膚代謝促進作用)を有していると考えられる。すなわち、本発明の芳香療法用組成物は、その皮膚代謝促進作用を利用してそれを用途(効能)とする組成物、例えば皮膚の代謝を促進してみずみずしさや弾力性を維持するための組成物(皮膚の老化を抑制するために組成物)、皮膚の代謝を促進してしわや色素沈着(しみやくすみ)を予防または改善するための組成物として好適に用いることができる。また、本発明の芳香療法用組成物は、上記皮膚代謝促進作用とともに、前述する同化作用(蛋白質増加蓄積作用)を有するため、皮膚の障害(創傷を含む)の治癒を促進するための組成物としても好適に用いることができる。
II.付香製品
前述する本発明の芳香療法用組成物は、各種の製品に上記特定の作用を有する香料(芳香成分)として、対象の製品に当該機能(効能)を付する目的で配合することができる。本発明は、上記本発明の芳香療法用組成物を含有する付香製品を提供する。
本発明において付香製品とは、上記本発明の芳香療法用組成物を含有し、その結果、リナロールに起因する匂い(香り)を発生する製品を意味する。本発明が対象とする付香製品は、上記リナロールに起因する匂いを発することに基づいて、好ましくない身体状態を改善する作用、例えば食欲を増進させる作用、エネルギー消耗を抑制する作用またはエネルギー蓄積を促進する作用、栄養不良を改善する作用、組織損傷の治癒修復を促進する作用、糖尿病の高血糖症状を改善する作用、血圧を降下させる作用(高血糖状態を改善する作用)、生体の免疫活性を向上する作用(免疫賦活作用)、または皮膚の新陳代謝を促進する作用(皮膚代謝促進作用)を有するものである。
本発明の付香製品は、これらのいずれかの作用を有し、好ましくは、さらにその作用を利用した用途(食欲増進用、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進用、栄養不良改善用、組織損傷治癒促進用、抗糖尿病用(高血糖改善用)、血圧降下用(高血糖改善用)、免疫賦活用、または皮膚代謝促進用)に使用されるものであれば、特に制限されない。具体的な付香製品としては、例えば、芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品用洗剤、繊維製品、建材、食品、医薬品、医薬部外品または日用品(雑貨)などを挙げることができる。好ましくは芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品、建材及び食品であり、さらに好ましくは芳香剤、香粧品、繊維製品、建材及び食品である。なお、これらの付香製品は、本発明の芳香療法用組成物を含有することに基づいて、それが有する上記の各種作用や用途に応じて、特定の機能(効能)や用途を示す表示が付されてなる製品であってもよい。
例えば、食欲増進用付香製品には、食欲増進のために用いられる旨;エネルギー消耗抑制用またはエネルギー蓄積促進用付香製品には、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進のために用いられる旨;栄養不良改善用付香製品には、栄養不良を改善するために用いられる旨;組織損傷治癒促進用付香製品には、組織損傷の治癒修復を促進するために用いられる旨;抗糖尿病用付香製品には、血糖上昇を抑制するか、または高血糖状態を改善するために用いられる旨;血圧降下用付香製品には、血圧上昇を抑制するかまたは高血圧状態を改善するために用いられる旨;免疫賦活用付香製品には、免疫力を高めるために用いられる旨;皮膚代謝促進用付香製品には、皮膚の新陳代謝を促進するために用いられる旨の表示を付することができる。
芳香剤としては、本発明の芳香療法用組成物を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有し、当該作用に基づいてその特定の用途(食欲増進用、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進用、栄養不良改善用、組織損傷治癒促進用、抗糖尿病用(高血糖改善用)、血圧降下用(高血糖改善用)、免疫賦活用、または皮膚代謝促進用)に使用される芳香剤を挙げることができる。この限りにおいて、室内用芳香剤、トイレ用芳香剤、自動車用芳香剤、玄関用芳香剤、浴室用芳香剤、クローゼット用芳香剤、衣類等の繊維用芳香剤、タンス用芳香剤等のいずれの芳香剤であってもよい。なお、消臭効果を兼ね備えているものもここでいう芳香剤に含まれる。芳香剤の形態も固体状、半固体状(ゼリー状、ゲル状等)、液体状、エアゾール状等の様々な形態が使用される。
香粧品には、本発明の芳香療法用組成物を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有し、当該作用に基づいてその特定の用途(食欲増進用、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進用、栄養不良改善用、組織損傷治癒促進用、抗糖尿病用(高血糖改善用)、血圧降下用(高血糖改善用)、免疫賦活用、または皮膚代謝促進用)に使用される香粧品を挙げることができる。これらの香粧品には、化粧料、石鹸等の生体洗浄剤や入浴剤、香水などのフレグランス、練歯磨、液体歯磨、洗口剤、マウスペット、及び口中清涼剤等が包含される。香粧品として、具体的には、例えばクリーム、乳液、化粧パウダー、ボディーローション、整髪料、洗髪料、石鹸、ボディーソープ、制汗剤、シャンプー、リンス、香水、化粧水、口紅、リップクリーム、サンスクリーン、マッサージオイル、マッサージクリーム、及びスキンケアオイル等が挙げられる。
吸入投与剤としては、本発明の芳香療法用組成物を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有し、当該作用に基づいてその特定の用途(食欲増進用、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進用、栄養不良改善用、組織損傷治癒促進用、抗糖尿病用(高血糖改善用)、血圧降下用(高血糖改善用)、免疫賦活用、または皮膚代謝促進用)に使用される吸入投与剤を挙げることができる。これらの具体的な形態は特に制限されないが、スプレーや芳香成分の揮発等によって鼻付近で芳香を発生させ、意図的に芳香を吸入させるもの等をいい、例えば、点鼻薬、噴霧剤、吸入液等を挙げることができる。
食品としては、本発明の芳香療法用組成物を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであって、当該作用に基づく効果(食欲増進、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進、栄養不良改善、組織損傷治癒促進、糖尿病の高血糖症状の改善、血圧降下(高血糖改善用)、免疫賦活、または皮膚代謝促進)を目的として摂取されるものを挙げることができる。また食品は、上記作用に基づいて特定の効能や用途〔食欲増進用、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進用、栄養不良改善用、組織損傷治癒促進用、抗糖尿病用(高血糖改善用)、血圧降下用(高血糖改善用)、免疫賦活用、または皮膚代謝促進用〕に使用される食品であることができる。
本発明の芳香療法用組成物の匂い成分(リナロール)による効果を効率よく得るためには、口中に比較的長い時間留まり鼻腔を経由して芳香が吸入されるものや、口に入れる前に香り成分が鼻腔から吸入されるものが好ましい。具体的には、ガム、飴、グミ、及びトローチなどの菓子類;ヨーグルトやアイスクリーム等の冷菓やデザート;茶等の清涼飲料水:口中清涼剤;サプリメントなどを挙げることができる。
繊維製品用洗剤としては、本発明の芳香療法用組成物を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであって、例えば、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性若しくは両性イオン性の洗剤、繊維製品柔軟剤、繊維製品柔軟用製品、ドライヤー用繊維柔軟剤製品等が挙げられる。
繊維製品としては、本発明の芳香療法用組成物を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであって、肌着(靴下、タイツ及びストッキングも含まれる)や上着などの衣料品、ハンカチやタオル類、マスクや汗吸収パットなどの衛生用品、敷物、バッグや袋、カーテン、寝装品(掛布団、敷布団、敷きマット、ブランケット、タオルケット、枕、ベッドマット、ソファー、クッション、座布団、及びこれらのカバー等)及び小物等を挙げることができる。
また、医薬部外品には、本発明の芳香療法用組成物を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであって、当該作用に基づいてその特定の用途(食欲増進用、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進用、栄養不良改善用、組織損傷治癒促進用、抗糖尿病用(高血糖改善用)、血圧降下用(高血糖改善用)、免疫賦活用、または皮膚代謝促進用)に使用される医薬部外品を挙げることができる。これらの具体的な形態は特に制限されないが、練歯磨、液体歯磨、洗口剤、マウスペット、口中清涼剤、パップ剤などが含まれる。
建材には、本発明の芳香療法用組成物を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであって、好ましくは当該作用に基づいてその特定の用途(食欲増進用、エネルギー消耗抑制またはエネルギー蓄積促進用、栄養不良改善用、組織損傷治癒促進用、抗糖尿病用(高血糖改善用)、血圧降下用(高血糖改善用)、免疫賦活用、または皮膚代謝促進用)に使用される建材を挙げることができる。これらの具体的な形態は特に制限されないが、壁紙、障子紙、フスマ紙、ボード、及び塗材等が含まれる。
付香製品における本発明の芳香療法用組成物の含有量は、目的とする作用を有する限り特に制限されず、リナロールの含有量に換算して0.0001〜99.9%(w/w)の範囲から適宜選択することができる。ただし、本発明の芳香組成物の効果は、年令、性別、心理状態、及び身体状態等の個人差などにより影響を受けるので、0.0001%(w/w)未満の香料組成物を含有する付香製品を用いることもある。
芳香剤には、本発明の芳香療法用組成物に加えて、従来芳香剤に使用されてきた基剤、添加剤等の成分を含有させることができる。芳香剤用基剤としては、固体、液体、半固体状(ゼリー状、ゲル状等)、エアゾール状等の形態をとるものが一般的である。例えば、水、エタノール、固体又は液体の陰イオン性、陽イオン性、非イオン性活性剤、高分子剤、油脂、グアガム、キサンタンガム、アラビアガム、ジェランガム、カラギーナン、ゼラチン、寒天等が挙げられる。さらに、固体ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン)、ケイ酸カルシウム等の保持用担体に含浸させた製品形態で用いることができる。
香粧品には、本発明の芳香療法用組成物に加えて、従来香粧品に使用されてきた基剤、添加剤等の成分を含有させることができる。基剤としては、特に制限されないが、例えば、水、エタノール、タルク、ゼラチン、等が挙げられる。添加剤としては、特に制限されないが、例えば、保湿剤、皮膚柔軟剤、防腐剤、溶解剤等が挙げられる。
香粧品が香水の場合には、本発明による芳香療法用組成物をそのまま単独で何も加えずに使用するか、アルコール(例えば、エチルアルコール)または水性アルコールに本発明の香料療用組成物を溶解した状態で使用することができる。香水には、本発明の芳香療法用組成物を、リナロールの含有量に換算して0.0001〜99.9(w/w)%の割合で配合することができる。水とアルコールとの配合比は、50:50〜0:100(容量比)の範囲を挙げることができる。コロンは、溶解剤、柔軟化剤、ヒューメクタン、濃化剤、静菌剤、またはその他化粧品に通常用いられる材料を含有することができる。通常の調香手段を用いて、本発明の芳香療法用組成物に調和する香料成分を更に添加して変調し、保留性やこくなどを加えて仕上げたり、あるいはトップノート、ミドルノート、ベースノートを適当に組み合わせて経時的にも魅力的な芳香を発する配合物を調製することができる。
吸入投与剤には、本発明の芳香療法用組成物に加えて、従来吸入投与剤に使用されてきた基剤、添加剤等の成分を含有させることができる。また、吸入用の気体を使用する場合も従来の吸入投与剤に使用されてきた気体を使用することができる。
繊維製品用洗剤には、本発明の芳香療法用組成物に加えて、従来から繊維製品用洗剤に使用されている他の成分を使用することができる。
以上説明する本発明の付香製品は、その香り成分としてリナロールを含有するものである。従って、本発明の付香製品によれば、それが発するリナロールの匂いが嗅覚を刺激することによって、副交感神経の活動亢進(興奮)または交感神経の活動抑制に起因する身体改善作用、例えば食欲を増進させる作用、エネルギー消耗を抑制するかまたはエネルギー蓄積を促進する作用、栄養不良を改善する作用、組織損傷の治癒修復を促進する作用、糖尿病の高血糖状態を改善する作用、血圧を降下させる作用、免疫力を向上させる作用、または皮膚の新陳代謝を促進する作用を発揮することができる。すなわち、本発明の付香製品は、食欲を増進する用途、エネルギー消耗を抑制するか又はエネルギー蓄積を促進する用途、栄養不良を改善する用途、組織損傷の治癒修復を促進する用途、糖尿病の高血糖状態を改善し、糖尿病やその合併症の予防しまた治療する用途、血圧を降下させる用途、免疫力を賦活化する用途、皮膚の新陳代謝を促進する用途で、好適に使用することができる。
以上述べるように、リナロールを有効成分とする本発明の芳香療法用組成物、及び当該組成物に起因して匂いを有する付香製品によれば、リナロールの匂い刺激によって、食欲増加、エネルギー消耗抑制/エネルギー蓄積促進、栄養不良改善または組織損傷治癒促進など、体内の栄養状態を同化的状態にすることができる。従って、かかる組成物や付香製品は、食欲不振の改善、発熱性消耗性疾患や悪疫質等のエネルギー消耗性疾患の改善、るい痩の改善、栄養障害の改善、組織損傷の治癒修復促進、術後・病中病後・産前産後の体力回復などに有効に使用することができる。
また、リナロールを有効成分とする本発明の芳香療法用組成物、及び当該組成物に起因して匂いを有する付香製品によれば、リナロールの匂い刺激によって、免疫力を高めることができる。従って、かかる組成物や付香製品は、免疫力が低下または低下傾向にある被験者(術後・病中病後・産前産後の被験者を含む)、若齢者並びに高齢者について免疫力を向上させて、病原菌(ウイルスを含む)等への感染や罹患の予防、疾病の早期治癒に有効に使用することができる。
さらに、リナロールを有効成分とする本発明の芳香療法用組成物、及び当該組成物に起因して匂いを有する付香製品によれば、リナロールの匂い刺激によって、血圧を降下することができる。従って、かかる組成物や付香製品は、高血圧症またはその傾向にある被験者(患者)の血圧を降下するのに有効に使用することができる。
さらにまた、リナロールを有効成分とする本発明の芳香療法用組成物、及び当該組成物に起因して匂いを有する付香製品によれば、リナロールの匂い刺激によって、糖尿病患者の高血糖症状を改善することができる。従って、かかる組成物や付香製品は、糖尿病患者の血糖降下や合併症の予防に有効に使用することができる。
また、リナロールを有効成分とする本発明の芳香療法用組成物、及び当該組成物に起因して匂いを有する付香製品によれば、リナロールの匂い刺激によって、皮膚の新陳代謝を促進することができる。従って、かかる組成物や付香製品は、皮膚の新陳代謝を促進して、皮膚年齢の若返り(肌のみずみずしさや弾力性の回復や維持)、しわや色素沈着を抑制または改善するのに有効に使用することができる。また本発明の芳香療法用組成物、及び当該組成物に起因して匂いを有する付香製品は、前述する同化作用(組織における蛋白質増加蓄積作用)と当該皮膚代謝促進作用を有することから、皮膚の損傷(創傷)の治癒修復を促進するのに有効に使用することができる。
以下、被験物質としてリナロール及びそれを含む香料の例としてラベンダー精油を用いて行った実験を例として本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例に何ら限定されるものではない。なお下記の実験例において、リナロールとして、(±)-リナロール((±)-3,7-Dimethyl-3-hydroxy-1,6-octadiene)〔dl-リナロール(dl-3,7-Dimethyl-3-hydroxy-1,6-octadiene)〕(合成品、純度97%以上)( Aldrich Chem. Co., Milwaukee)、または(+)-リナロール((+)-3,7-Dimethyl-3-hydroxy-1,6-octadiene)〔S-リナロール(S-(+)-3,7-Dimethyl-3-hydroxy-1,6-octadiene)〕(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、コリアンダーを水蒸気蒸留後、精密分留して取得。純度99%以上)を用いた。またラベンダー精油として、真正ラベンダー(Lavender angustifola)の花を水蒸気蒸留して調製したエッセンシャルオイル(Pranarom社製、Pranarom International, 581 parc d’activites St-Maritin, 84120 Pertuis, France)を用いた。
実験例1 匂い刺激による脂肪分解反応に対する影響
1.始めに
哺乳類の脂肪分解を個体レベルで測定する方法としては、脂肪組織に蓄積された中性脂肪がリパーゼにより分解されて生じる遊離脂肪酸もしくはグリセロールの血中濃度を測定する方法を挙げることができる。この際、分解により生じた遊離脂肪酸はその場で脂肪組織の中性脂肪合成の基質となり得るが、グリセロールが脂肪合成に利用されるためには一旦肝臓でリン酸化される必要がある。従って、個々の被験者(被験動物)における脂肪分解反応をより精度高く測定するためには、血中のグリセロール濃度を測定する方法を用いるのが好ましい。そこで、本実験では、被験物質((±)-リナロール、ラベンダー)の匂い刺激が体内の脂肪分解反応に与える影響について、血中のグリセロール濃度(血漿グリセロール濃度)を測定することによって調べた。
2.被験動物
ラット(雄、Wistar rat、250〜300g)を被験動物として用いて、下記の実験を行った。なお、ラットは、予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で一匹ずつ個別のプラスチックケージに収容して、飼料(MF type; Oriental Yeast)と水は自由に摂取させながら、飼育した。但し、実験開始直前から採血終了までは、一切食餌を与えなかった。各実験開始の3日前、ペントバルビタール麻酔下(35mg/kg)で、SILASTIC製(Dow Corning, Midland MI)及びPE-50製(Clay Adams, Parsippany, NJ)からなる心臓カテーテルを右心房に挿入した。
3.実験及び結果
(3-1).リナロール匂い刺激試験
<実験>
実験当日、ラットを2群に分けて(各群:5匹)、第1群のラットに無麻酔下で下記の方法で(±)-リナロールによる匂い刺激を与えた。第2群のラットはコントロール群である。なお、(±)-リナロールは、1.5万倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁して用いた(1.5万倍希釈)。
第1群(リナロール匂い刺激群):リナロール懸濁液(1.5万倍希釈)を、7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)に十分に吸収させて、被験ラットを収容したプラスチックケージの上蓋(金属製)の上に置き、ケージを上からナイロン布で被った。
第2群(コントロール群):7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)に蒸留脱イオン水を十分に吸収させて、被験ラットを収容したプラスチックケージの上網蓋(金属製)の上に置き、ケージを上からナイロン布で被った。
各群のラットについて、上記ガーゼを置く直前(0分)、ガーゼを配置後15分、30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液にEDTA(300nmol/10μl)をそれぞれ10μlずつ添加し、遠心して血漿を取得した後、直ちに血漿中のグリセロール濃度を測定した。なお、血漿中のグリセロール濃度は、glycerokinase、pyruvate kinase及びlactate dehydrogenaseの酵素とNADH、ATP及びphosphoenolpyruvateの基質を用いる酵素法によるグリセロール測定キット(F-キット・グリセロール、J.K.インターナショナル社、東京)を用いて測定した。
<結果>
結果を図1に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の括弧内の数字は被験ラット数を意味する。また図中、−●−は、第1群(リナロール匂い刺激群)のラット、---○---は第2群(コントロール群)のラットの結果を、それぞれ示す。図1に示すように、第1群(リナロール匂い刺激群)(―●―)の血漿中のグリセロール濃度は、第2群(コントロール群)(---○---)と比較して有意に低かった[P<0.0005 (F=14.7) by ANOVA]。
<考察>
この実験結果は、リナロールの匂い刺激によって血中のグリセロール濃度の上昇が抑制されることを示す。すなわち、この結果は、リナロールの匂いを吸入することによって体内における脂肪分解が抑制されること、言い換えればリナロールの匂い刺激は体内のエネルギー消費の抑制(エネルギー蓄積促進)に働くことを示すものである。
(3-2).ラベンダー精油匂い刺激試験
<実験>
実験当日、ラットを2群に分けて(各群:7匹)、一匹ずつ個別のプラスチックケージに収容し、第1群のラットに無麻酔下でラベンダー精油による匂い刺激を与えた。第2群のラットはコントロール群である。なお、ラベンダー精油は、10万倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁して用いた(10万倍希釈)。
第1群(ラベンダー精油匂い刺激群):ラベンダー精油懸濁液(10万倍希釈)を、7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)に十分に吸収させて、被験ラットを収容したプラスチックケージの上蓋(金属製)の上に置き、ケージを上からナイロン布で被った。
第2群(コントロール群):7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)に蒸留脱イオン水を十分に吸収させて、被験ラットを収容したプラスチックケージの上網蓋(金属製)の上に置き、ケージを上からナイロン布で被った。
各群のラットについて、上記ガーゼを置く直前(0分)、ガーゼを配置後30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液にEDTA(300nmol/10μl)をそれぞれ10μlずつ添加し、遠心して血漿を取得した後、直ちに血漿中のグリセロール濃度を、上記リナロールと同様にF-キット・グリセロール(J.K.インターナショナル社)を用いて測定した。
<結果>
結果を図2に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の括弧内の数字は被験ラット数を意味する。また図中、−●−は、第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)のラット、---○---は第2群(コントロール群)のラットの結果を、それぞれ示す。図2に示すように、第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(―●―)の血漿中のグリセロール濃度は、第2群(コントロール群)(---○---)と比較して有意に低かった[P<0.05 (F=4.38) by ANOVA]。
<考察>
この実験結果は、ラベンダー精油の匂い刺激によって血中のグリセロール濃度の上昇が抑制されることを示している。すなわち、この結果は、ラベンダー精油の匂いを吸入することによって体内における脂肪分解が抑制されること、言い換えればラベンダー精油の匂い刺激は体内のエネルギー消費の抑制(エネルギー蓄積促進)に働くことを示すものである。
実験例2 匂い刺激の摂食量、体重及び組織重量の変化に対する影響
1.はじめに
実験例1の結果は、リナロール及びラベンダー精油による匂い刺激が脂肪組織における脂肪分解(脂肪動員)を抑制することを示している。従って、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激によって脂肪分解(脂肪動員)の抑制に伴うエネルギー消費の減少が生じていれば、脂肪組織重量が増加し、体重が増加することが考えられる。そこで、本実験では、摂食量、体重および組織重量に与えるリナロール〔(±)- リナロール〕とラベンダー精油の匂い刺激の影響を調べた。
2.被験動物
ラット(雄、Wistar rat、200〜250g)を被験動物として用いて、下記の実験を行った。なお、ラットは、予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で1匹ずつ個別のケージで、飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させながら飼育した。
3.実験、結果及び考察
(3-1).リナロール匂い刺激試験
<実験>
ラットを2群(第1群、第2群)に分けて(各群:4匹)、下記の方法で、第1群のラットに毎日13時より無麻酔下で15分間匂い刺激を与えた。なお、第2群のラットはコントロール群である。各群のラットについて毎週1回摂食量と体重を測定した。さらに6週間の飼育後に、断頭屠殺して、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、白色脂肪組織(腸間膜、副睾丸および腎臓周囲脂肪組織)及び膵臓を採取して、各臓器及び組織の重量を測定した。なお、リナロールは、3万倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁して用いた(3万倍希釈)。
第1群(リナロール匂い刺激群):リナロール懸濁液(3万倍希釈)を、7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)に十分に吸収させて、被験ラットを収容したプラスチックケージの上蓋(金属製)の上に置き、ケージを上からナイロン布で被った。
第2群(コントロール群):7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)に蒸留脱イオン水を十分に吸収させて、被験ラットを収容したプラスチックケージの上網蓋(金属製)の上に置き、ケージを上からナイロン布で被った。
<結果>
結果を図3〜5に示す。なお、各図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の括弧内の数字は被験ラット数を意味する。また図中、−●−は、第1群(リナロール匂い刺激群)のラット、---○---は第2群(コントロール群)のラットの結果を、それぞれ示す。
図3に示すように、各週におけるラット1匹当たりの1日摂食量(g/day/rat)は第2群(コントロール群)(---○---)では約22g位であるが、第1群(リナロール匂い刺激群)(―●―)では実験後半(4〜6週目)において増加傾向[0.05<P<0.1 (F=3.509) by ANOVA]を示した。図4はこの時のラットの体重変化を示す。体重は両群共に増加しているが、第2群(コントロール群)(---○---)と比較して第1群(リナロール匂い刺激群)(―●―)では全期間に亘って体重増加傾向[0.05<P<0.1 (F=2.991) by ANOVA;]であった。図5は、6週間に亘って毎日リナロールの匂い刺激もしくはコントロール実験として水の匂い刺激を与えた時の組織重量(心臓、肝臓、脾臓、腎臓、白色脂肪組織(腸間膜、副睾丸および腎臓周囲脂肪組織)、膵臓)を示す。第2群(コントロール群)(□カラム)と比較して、第1群(リナロール匂い刺激群)(■カラム)は、いずれの組織の重量も増加傾向にあった(但し、肝臓及び白色脂肪組織[腸間膜、副睾丸および腎臓周囲脂肪組織]については、統計的な有意差は認められなかった)。
<考察>
これらの実験結果は、リナロールによる匂い刺激が食欲を亢進させて体重を増加させることを示す。また、リナロールの匂い刺激は肝臓や白色脂肪組織の重量を増加させる傾向にあった。このことから、リナロールの匂い刺激によって体内の代謝を同化的(anabolic)に変化させることがわかる。
(3-2).ラベンダー精油匂い刺激試験
<実験>
ラットを2群(第1群、第2群)に分けて(各群:6匹)、下記の方法で、第1群のラットに毎日13時より無麻酔下で15分間匂い刺激を与えた。なお、第2群のラットはコントロール群である。各群のラットについて毎週1回摂食量と体重を測定した。さらに6週間の飼育後に、断頭屠殺して、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、及び白色脂肪組織(腸間膜、副睾丸および腎臓周囲脂肪組織)を採取して、各臓器及び組織の重量を測定した。なお、ラベンダー精油は、10万倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁して用いた(10万倍希釈)。
第1群(ラベンダー精油匂い刺激群):ラベンダー精油懸濁液(10万倍希釈)を、7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)に十分に吸収させて、被験ラットを収容したプラスチックケージの上蓋(金属製)の上に置き、ケージを上からナイロン布で被った。
第2群(コントロール群):7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)に蒸留脱イオン水を十分に吸収させて、被験ラットを収容したプラスチックケージの上網蓋(金属製)の上に置き、ケージを上からナイロン布で被った。
<結果>
結果を図6〜8に示す。なお、各図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の括弧内の数字は被験ラット数を意味する。また図中、−●−は、第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)のラット、---○---は第2群(コントロール群)のラットの結果を、それぞれ示す。
図6に示すように、各週におけるラット1匹当たりの1日摂食量(g/day/rat)は第2群(コントロール群)(---○---)では約20g位であるが、第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(―●―)では約23gと、コントロール群に比して有意に増加していた[P<0.0005 (F=20.85) by ANOVA]。図7はこの時のラットの体重変化を示す。体重は両群共に増加しているが、第2群(コントロール群)(---○---)と比較して第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(―●―)では全期間に亘って有意に体重が増加した[P<0.0005 (F=21.69) by ANOVA;]。図8は、6週間に亘って毎日ラベンダー精油の匂い刺激もしくはコントロール実験として水の匂い刺激を与えた時の組織重量(心臓、肝臓、脾臓、腎臓、及び白色脂肪組織(腸間膜、副睾丸および腎臓周囲脂肪組織))を示す。第2群(コントロール群)(斜線ボックスカラム)と比較して、第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(黒カラム)は、いずれの組織の重量も増加傾向にあった(但し、肝臓及び白色脂肪組織[腸間膜、副睾丸および腎臓周囲脂肪組織]については、統計的な有意差は認められなかった)。
<考察>
これらの実験結果は、ラベンダー精油による匂い刺激が食欲を亢進させて体重を増加させることを示す。統計的有意差はみられなかったが、ラベンダー精油の匂い刺激は肝臓や白色脂肪組織の重量を増加させる傾向にあった。このことから、ラベンダー精油の匂い刺激は体内の代謝を同化的(anabolic)に変化させることがわかる。
実験例3 匂い刺激の自律神経活動に対する影響
1.はじめに
上記の実験結果からリナロール及びラベンダー精油による匂い刺激は、自律神経活動の変化を介して脂肪分解や体重増加などに影響を与えていると考えられた。そこで、本実験では、麻酔ラットを用いて、リナロール((±)- リナロール)及びラベンダー精油の匂い刺激が与える、交感神経〔副睾丸脂肪組織(白色脂肪組織)、肩甲間(背側)褐色脂肪組織および副腎を神経支配する交感神経〕と副交感神経(胃を神経支配する迷走神経)の電気活動に対する影響を検討した。
2.被験動物
ラット(雄、Wistar rat、200〜250g、5匹)を被験動物として用いて、下記の実験を行った。なお、ラットは、予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で1匹ずつ個別のケージで、飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させながら飼育した。
3.実験、結果及び考察
<実験>
実験は、上記ラットを第1〜3群の計3群(各群5匹)に分けて、6時間絶食後ウレタン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投与)で、開腹した後、下記の方法で、10分間匂い刺激を与えて、各自律神経の遠心枝について電気活動の変化を測定することにより、行った(図9参照)。
第1群(ラベンダー精油匂い刺激群):ラベンダー精油を100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを直径5cm深さ6cmのガラス製ビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
第2群(リナロール匂い刺激群):(±)-リナロールを100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを第1群と同様にビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
第3群(コントロール群):蒸留脱イオン水をろ紙に十分に吸収させて、第1群と同様にビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
各自律神経(遠心枝)の電気活動の測定は、具体的には、開腹したラットの各自律神経の遠心枝を、実体顕微鏡下で銀製記録電極で釣り上げて行った。乾燥を防ぐ為に電極は予め液体パラフィンとペトロレウムゼリーの混合物に十分浸しておいた。得られた神経の電気活動はコンデンサー式差動増幅器にて増幅し、オッシロスコープにてモニターし、磁気テープに記録した。全ての神経活動は、その生データをバックグランド・ノイズと分離するためにスライサーとウィンドウ・ディスクリミネーターを用いて標準パルスに変換した後に解析した。放電頻度はレイトメーターにより5秒間のリセットタイムにてペンレコーダー上に表示した。電気活動の記録は90分間以上行った(図9B)。
<結果>
各自律神経〔副睾丸脂肪組織(白色脂肪組織)を神経支配する交感神経、肩甲間(背側)褐色脂肪組織を神経支配する交感神経、副腎を神経支配する交感神経、胃を神経支配する迷走神経(副交感神経)〕の遠心枝の神経活動(電気活動)の変化を示す代表的な結果を図10に示す。図10の左から順に、第3群(コントロール群)、第2群(ラベンダー精油匂い刺激群)、及び第1群(リナロール匂い刺激群)の、匂い刺激による神経活動の結果を示す。
この結果からわかるように、蒸留水刺激(コントロール群)は、白色脂肪組織、褐色脂肪組織および副腎を支配する交感神経の活動にも、また胃を支配する副交感神経(迷走神経)の活動にも何ら変化も起こさなかった。一方、ラベンダー精油の匂い刺激(図10の中欄)、及びリナロールの匂い刺激(図10の右欄)は、いずれも、白色脂肪(副睾丸)脂肪組織、褐色脂肪組織および副腎を支配する交感神経の活動を低下させ、且つ胃を支配する副交感神経(迷走神経)の活動を上昇させた。
<考察>
これらの実験結果は、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激によって、白色脂肪組織、褐色脂肪組織および副腎を支配する交感神経活動がいずれも抑制されることを示す。これらの事実は、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激によって脂肪分解が抑制(エネルギー消耗抑制/エネルギー蓄積促進)された実験例1の結果を理論的に実証するものである。
白色脂肪組織の交感神経が興奮すると、ホルモン感受性リパーゼが活性化されて中性脂肪が脂肪酸とグリセリンに分解され、一方、その交感神経が抑制されると当該中性脂肪の分解が抑制されて、脂肪の合成が高まることが知られている。褐色脂肪組織はヒトの新生児には認められるが、成人の場合は肉眼的に認められない組織である。しかしながら、熱産生機能を有する非共役蛋白質(uncoupling protein 1-3、UCP1-3、以下「UCP蛋白質」という)は、成人でも脂肪組織や筋肉などに存在することが知られている。そして、その脂肪組織(褐色脂肪細胞に相当する)や筋肉の交感神経が興奮すると上記UCP蛋白質の量や機能が高まり、熱産生が亢進し、一方、その交感神経が抑制されると、逆に熱産生が減少することが明らかになっている。
従って、上記実験例で得られた結果は、リナロール及びラベンダー精油による匂い刺激が、白色脂肪組織での脂肪分解を抑制し、UCP蛋白質が存在する脂肪組織や筋肉での熱産生(エネルギー消費)を抑制してエネルギーを貯えるように作用することを示す。
また、副腎を支配する交感神経の活動が抑制されると、交感神経興奮を引き起こすアドレナリンの血中への分泌が抑制されて交感神経の興奮が抑制されることが知られているので、上記の脂肪分解抑制作用とエネルギー消費抑制作用(エネルギー蓄積促進作用)は、一層増強されることになる。
また上記の実験結果は、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激によって、腸管を神経支配する副交感神経活動が亢進することを示している。一般に腸管を神経支配する副交感神経の活動が高まれば腸管の消化吸収機能が高まることになるが、それは食欲の高まりと連動する。実験例2に示されたリナロール及びラベンダー精油の匂い刺激による食欲の増進(摂食量の増加)は、匂い刺激が鼻粘膜上のにおい受容体を介して嗅神経を興奮させてその情報が脳の梨状皮質に伝達され、視床下部の神経活動の変化を引き起こして生じているものと考えられる。そして、上記実験例3の結果は、その際(リナロール及びラベンダー精油による匂い刺激の時)に、腸管での消化吸収能も高まることを示している。この点から、リナロールとラベンダー精油の匂い刺激は、エネルギーの吸収を高め、組織におけるエネルギーや蛋白質の貯蓄を亢進させることを示す。
実験例4 (+)-リナロールの匂い刺激の自律神経活動に対する影響
リナロールとして、(±)-リナロールおよび(+)-リナロール(いずれも100倍容量の蒸留脱イオン水にて懸濁)(100倍希釈)を用いて、実験例3と同様にして、副腎を神経支配する交感神経(交感神経副腎枝)の神経活動(電気活動)に対するリナロールの匂い刺激による影響を調べた。(±)-リナロールの結果を図11(A)に、(+)-リナロールの結果を図11(B)に示す。
<結果>
図11に示すように、(±)-リナロールの匂い刺激および(+)-リナロールの匂い刺激はいずれも、副腎を支配する交感神経の活動を低下させた。当該実験例の結果から、リナロールは、異性体の別なく、(±)-リナロールおよび(+)-リナロールのいずれもその匂い刺激によって交感神経の活動を低下させ、副交感神経優位の生理的機能を発揮することがわかる。
実験例5 匂い刺激の腎臓交感神経活動と血圧に対する影響
1.はじめに
上記実験例3の実験結果から、リナロールとラベンダー精油の匂い刺激は、麻酔ラットにおいて副睾丸脂肪組織(白色脂肪組織)、肩甲間(背側)褐色脂肪組織および副腎を神経支配する交感神経の活動と、胃を神経支配する迷走神経(副交感神経)の活動に対して影響を与えることが示された。このことから、リナロールとラベンダー精油の匂い刺激は、腎臓を神経支配する交感神経の活動にも影響を与える可能性がある。また、当該交感神経は血圧も支配しているので、リナロールとラベンダー精油の匂い刺激は同時に血圧にも影響を与える可能性がある。そこで、本実験では、リナロール((±)-リナロール)及びラベンダー精油による匂い刺激の、ウレタン麻酔ラットにおける腎臓交感神経活動ならびに血圧に対する影響を調べた。
2.被験動物
ラット(雄、Wistar rat、200〜250g)を被験動物として用いて、下記の実験を行った。なお、ラットは、予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で1匹ずつ個別のケージで、飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させながら飼育した。
3.実験、及び結果
(3-1).リナロール匂い刺激試験
<実験>
ラットを2群(第1群、第2群)に分けて(各群:5匹)、6時間絶食後ウレタン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投与)で、開腹した後、下記の方法で、10分間匂い刺激を与えて、交感神経の活動については、腎臓を支配する交感神経の遠心枝について電気活動の変化を測定することにより(図9参照)、また血圧測定は、谷田、永井及び金子らの文献(in vivo 17:213-218 (2003))に記載される方法に従って、大腿動脈にカテーテルを挿入し、トランスジューサーを用いる観血的方法を用いて行った。
第1群(リナロール匂い刺激群):リナロールを100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを直径5cm深さ6cmのガラス製ビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
第2群(コントロール群):蒸留脱イオン水をろ紙に十分に吸収させて、第1群と同様にビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
なお、交感神経活動の測定は、具体的には、開腹したラットの腎臓支配交感神経の遠心枝を、実体顕微鏡下で銀製記録電極に釣り上げて、実験例3と同様にして行った(図9参照)。放電頻度はレイトメーターにより5秒間のリセットタイムにてペンレコーダー上に表示した。電気活動の記録は90分間以上行った。
<結果>
リナロールによる匂い刺激時の腎臓交感神経活動および血圧の変化を、それぞれ図12および図13に示す。なお、実験結果は各群の匂い刺激前の値を100%とする百分率にて示す。また、各図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の括弧内の数字は被験ラット数を意味する。また図中、−●−は、第1群(リナロール匂い刺激群)のラット、---○---は第2群(コントロール群)のラットの結果を、それぞれ示す。
この図から分かるように、リナロール匂い刺激は腎臓を支配する交感神経の活動を有意に抑制し[P<0.0005 (F=140) by ANOVA]、血圧も有意に低下させる[P<0.0005 (F=32.3) by ANOVA]ことが明らかとなった。
(3-2).ラベンダー精油匂い刺激試験
<実験>
ラットを2群(第1群、第2群)に分けて(各群:3匹)、6時間絶食後ウレタン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投与)で、開腹した後、下記の方法で、10分間匂い刺激を与えて、(3-1)と同様にして腎臓交感神経の活動及び血圧を測定した。
第1群(ラベンダー精油匂い刺激群):ラベンダー精油を100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを直径5cm深さ6cmのガラス製ビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
第2群(コントロール群):蒸留脱イオン水をろ紙に十分に吸収させて、第1群と同様にビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
<結果>
ラベンダー精油による匂い刺激時の腎臓交感神経活動および血圧の変化を、それぞれ図14および図15に示す。なお、実験結果は各群の匂い刺激前の値を100%とする百分率にて示す。また、各図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の括弧内の数字は被験ラット数を意味する。また図中、−●−は、第1群(ラベンダー匂い刺激群)のラット、---○---は第2群(コントロール群)のラットの結果を、それぞれ示す。
この図から分かるように、ラベンダー精油匂い刺激は、リナロールと同様、腎臓を支配する交感神経の活動を有意に抑制し[P<0.0005 (F=350) by ANOVA]、血圧も有意に低下させる[P<0.0005 (F=46.36) by ANOVA]ことが明らかとなった。
4.考察
上記の実験結果から、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激が、腎臓を支配する交感神経の活動を抑制して血圧低下させる作用を有することがわかった。
ところで前述する実験例3において、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激が副腎を支配する交感神経活動を抑制することを示したが、かかる副腎交感神経の活動低下は副腎髄質からのアドレナリン分泌を抑制する結果、同時に血圧低下をもたらすことが知られている。すなわち、上記の実験結果は、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激が、副腎を支配する交感神経活動の抑制と併行して、腎臓を支配する交感神経の活動をも抑制し、血圧低下作用を持つことを示す。
実験例6 匂い刺激によるストレプトゾトシン糖尿病ラットの耐糖能促進効果
1.始めに
実験例3において、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激が副腎を支配する交感神経の活動を抑制することが示された。ところで、副腎髄質から分泌されるアドレナリンは血糖調節にも関与している。従って、リナロールとラベンダー精油の匂い刺激が、副腎交感神経を抑制してアドレナリン分泌を抑制する結果、糖尿病動物の血糖値を低下させる効果を有する可能性がある。糖尿病動物として、ストレプトゾトシン糖尿病ラット(STZ糖尿病ラット)を用いて、リナロール((±)-リナロール)及びラベンダー精油の匂い刺激が、当該糖尿病ラットに対する糖負荷時の血糖上昇に与える影響について検討した。
2.被験動物
ストレプトゾトシン糖尿病ラット(雄、Wistar rat、250〜300g)を被験動物として用いて、下記の実験を行った。なお、糖尿病ラットは、streptozotocin(60 mg/kg)を腹腔内投与して作成した。当該ラットは、予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で1匹ずつ個別のケージで、飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させながら飼育した。但し、実験開始2時間前から採血終了までは、一切食餌を与えなかった。実験開始の3日前、ペントバルビタール麻酔下(35mg/kg)で、SILASTIC製(Dow Corning, Midland MI)及びPE-50製(Clay Adams, Parsippany, NJ)からなる心臓カテーテルを右心房に挿入した。
3.実験、及び結果
(3-1).リナロール匂い刺激試験
<実験>
実験当日、ラットを2群に分けて(各群:5匹)、第1群のラットに無麻酔下で下記の方法でリナロールによる匂い刺激を与えた。第2群のラットはコントロール群である。なお、リナロールは、1.5万倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁して用いた(1.5万倍希釈)。
第1群(リナロール匂い刺激群):体重300g当たり0.5gのグルコースを胃内投与用の針と注射筒を用いて、ラットに経口投与し、同時にリナロール懸濁液(1.5万倍希釈)を吸収させた7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)を、ラットを収容したプラスチックケージの上蓋(金属製)の上に置き、ゲージを上からナイロン布で被い、15分間匂い刺激を与えた。
第2群(コントロール群):体重300g当たり0.5gのグルコースを胃内投与用の針と注射筒を用いて、ラット経口投与し、同時に蒸留脱イオン水を吸収させた7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)を、ラットを収容したプラスチックケージの上蓋(金属製)の上に置き、ゲージを上からナイロン布で被い、15分間匂い刺激を与えた。
各群のSTZ糖尿病ラットについて、上記ガーゼを置く直前(0分)、ガーゼ配置後30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液にEDTA(300nmol/10μl)をそれぞれ10μlずつ添加し、遠心して血漿を取得した後、直ちに血漿中のグルコース濃度を測定した。なお、血漿中のグルコース濃度は、glucose oxidaseを用いた生化学検査システム(Fuji Dri-chem System:富士フィルム社製)にて測定した。
<結果>
結果を図16に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の括弧内の数字は被験ラット数を意味する。また図中、−●−は、第1群(リナロール匂い刺激群)のSTZ糖尿病ラット、---○---は第2群(コントロール群)のSTZ糖尿病ラットの結果を、それぞれ示す。図16に示すように、リナロール匂い刺激群(第1群)(―●―)は、コントロール群(第2群)(---○---)と比較して、経口糖負荷時の血中グルコース濃度の上昇を有意に抑制した[P<0.05 (F=5.23) by ANOVA; 30分から60分後の値を群として比較]。
(3-2).ラベンダー精油匂い刺激試験
<実験>
実験当日、ラットを2群に分けて(各群:5匹)、第1群のラットに無麻酔下で下記の方法でラベンダー精油による匂い刺激を与えた。第2群のラットはコントロール群である。なお、ラベンダー精油は、10万倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁して用いた(10万倍希釈)。
第1群(ラベンダー精油匂い刺激群):体重300g当たり0.5gのグルコースを胃内投与用の針と注射筒を用いて、ラットに経口投与し、同時にラベンダー精油懸濁液(10万倍希釈)を吸収させた7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)を、ラットを収容したプラスチックケージの上蓋(金属製)の上に置き、ゲージを上からナイロン布で被い、15分間匂い刺激を与えた。
第2群(コントロール群):体重300g当たり0.5gのグルコースを胃内投与用の針と注射筒を用いて、ラット経口投与し、同時に蒸留脱イオン水を吸収させた7.5 cm角の医療用不織布ガーゼ(レーヨン100%、重量1g、ネオガーゼ、川本産業株式会社)を、ラットを収容したプラスチックケージの上蓋(金属製)の上に置き、ゲージを上からナイロン布で被い、15分間匂い刺激を与えた。
各群のSTZ糖尿病ラットについて、上記ガーゼを置く直前(0分)、ガーゼ配置後30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液にEDTA(300nmol/10μl)をそれぞれ10μlずつ添加し、遠心して血漿を取得した後、(3-1)と同様にして、直ちに血漿中のグルコース濃度を測定した。
<結果>
結果を図17に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の括弧内の数字は被験ラット数を意味する。また図中、−●−は、第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)のSTZ糖尿病ラット、---○---は第2群(コントロール群)のSTZ糖尿病ラットの結果を、それぞれ示す。図17に示すように、第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(―●―)は、第2群(コントロール群)(---○---)と比較して、経口糖負荷時の血中グルコース濃度の上昇を有意に抑制した[P<0.01 (F=8.93) by ANOVA; 60分から120分後の値を群として比較]。
4.考察
これらの実験結果は、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激が、糖尿病ラットの耐糖能を改善することを示している。すなわち、この結果は、リナロール及びラベンダー精油の匂いによる刺激が、糖尿病治療に有効であることを示すものである。
実験例7 匂い刺激の免疫神経活動に対する影響
1.はじめに
交感神経は胸腺の皮質部分、脾臓の白髄の中心動脈周囲のリンパ球鞘、リンパ節の傍皮質などの免疫反応に関係の深い部分に分布している。そこで本実験では、リナロール及びラベンダー精油の匂いによる刺激が生体の免疫活動にどのように関わっているかを明らかにするため、麻酔ラットを用いて、胸腺を支配する副交感神経の遠心枝(迷走神経胸腺枝)及び脾臓を支配する交感神経の遠心枝(交感神経脾臓枝)の電気活動に対してこれらの匂い刺激が与える影響を調べた。なお、リナロールとして(±)-リナロールを用いた。
2.被験動物
ラット(雄、Wistar rat、200〜250g)を被験動物として用いて、下記の実験を行った。当該ラットは、予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で、飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させながら飼育した。
3.実験、結果及び考察
<実験>
上記ラットを4群(A群:(1)と(2)、B群:(1)と(2))に分けて、6時間絶食後ウレタン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投与)で、開腹した後、下記の方法で、10分間匂い刺激を与えて、各自律神経の遠心枝について電気活動の変化を測定した(図9参照)。
A群:迷走神経胸腺枝測定群
(1)(ラベンダー精油匂い刺激群):ラベンダー精油を100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを直径5cm深さ6cmのガラス製ビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
(2)(リナロール匂い刺激群):リナロールを100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを(1)と同様にビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
B群:交感神経脾臓枝測定群
(1)(ラベンダー精油匂い刺激群):ラベンダー精油を100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを直径5cm深さ6cmのガラス製ビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
(2)(リナロール匂い刺激群):リナロールを100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを(1)と同様にビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
各自律神経(遠心枝)の電気活動の測定は、具体的には、開腹したラットの各自律神経の遠心枝を、実体顕微鏡下で銀製記録電極で釣り上げて行った。乾燥を防ぐ為に電極は予め液体パラフィンとペトロレウムゼリーの混合物に十分浸しておいた。得られた神経の電気活動はコンデンサー式差動増幅器にて増幅し、オッシロスコープにてモニターし、磁気テープに記録した。全ての神経活動は、その生データをバックグランド・ノイズと分離するためにスライサーとウィンドウ・ディスクリミネーターを用いて標準パルスに変換した後に解析した。放電頻度はレイトメーターにより5秒間のリセットタイムにてペンレコーダー上に表示した。電気活動の記録は90分間以上行った(図9B参照)。
<結果>
ラベンダー精油及びリナロールの匂い刺激による迷走神経胸腺枝の神経活動(電気活動)の変化を図18(A)に、ラベンダー精油及びリナロールの匂い刺激による交感神経脾臓枝の神経活動(電気活動)の変化を図18(B)に、それぞれ示す。いずれの図も上から順に(1)ラベンダー精油匂い刺激群、及び(2)リナロール匂い刺激群の結果を示す。図19(B)は、上記と同様にして測定したリナロール匂い刺激による交感神経脾臓枝の直接の神経活動(電気活動)の変化(図19(A))をグラフにして示したものである。
これらの結果からわかるように、ラベンダー精油の匂い刺激及びリナロールの匂い刺激のいずれも、胸腺を支配する迷走神経(副交感神経)の活動を亢進させ、且つ脾臓を支配する交感神経の活動を低下させた。
<考察>
胸腺の迷走神経の興奮は胸腺からのリンパ球の放出を増加させ、脾臓の交感神経の活動低下はリンパ球のNK(natural killer)活性を増加させ、その結果、免疫賦活化を起こすことが知られている(A. Niijima and M.M.Meguid, ” Influence of systemic arginine-lysine on immune organ function: an electrophysiological study. Brain Res. Bull. 45: 437-441 (1998) )。従って、上記実験例で得られた結果は、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激が、胸腺の迷走神経を興奮させてリンパ球の放出を増加させ、脾臓の交感神経の活動を低下させてリンパ球のNK活性を増加させるように作用すること、すなわち、生体の免疫賦活化に作用することを示している。
実験例8 匂い刺激の皮膚神経活動に対する影響
1.はじめに
本実験では、麻酔ラットを用いて、皮膚を支配する交感神経(皮膚交感神経)の遠心枝の電気活動に対して、リナロール((±)-リナロール)及びラベンダー精油の匂いによる刺激が与える影響を調べた。
2.被験動物
ラット(雄、Wistar rat、200〜250g)を被験動物として用いて、下記の実験を行った。当該ラットは、予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で、飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させながら飼育した。
3.実験、結果及び考察
<実験>
上記ラットを2群(第1群、第2群)に分けて、6時間絶食後ウレタン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投与)で、開腹した後、下記の方法で、10分間匂い刺激を与えて、皮膚交感神経の遠心枝について神経活動(電気活動)の変化を測定した(図9参照)。なお、皮膚交感神経(遠心枝)の電気活動の測定は実験例7に記載する方法に従った。
A群(ラベンダー精油匂い刺激群):ラベンダー精油を100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを直径5cm深さ6cmのガラス製ビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
B群(リナロール匂い刺激群):リナロールを100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁し(100倍希釈)、ろ紙に十分吸収させて、それを(1)と同様にビーカーの底に置き、ラットの鼻の部分をビーカーの中に置いて匂い刺激を与えた。
<結果>
リナロールの匂い刺激による皮膚交感神経の神経活動(電気活動)の変化を図20(A)に示す。図20(B)は、図20(A)に示す結果をグラフ化したものである。
この結果からわかるように、リナロールの匂い刺激は、皮膚を支配する交感神経の活動を低下させた。また、結果は示さないが、ラベンダー精油の匂い刺激によってもリナロールの場合と同様に、皮膚を支配する交感神経の活動が低下した。
<考察>
皮膚の血管の収縮は交感神経の活動によって決定され、皮膚の交感神経の活動が低下すると皮膚の血流量が増加することが知られている。皮膚の血流量が増加すると、それに伴って皮膚に運搬される酸素と栄養素量は増加し、その結果、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)が促進される。従って、上記実験例で得られた結果は、リナロール及びラベンダー精油の匂い刺激が皮膚の交感神経の神経活動を低下させて血流量を増加させて、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を促進するように作用することを示している。皮膚の新陳代謝が促進されると、肌が本来持っている機能が引き出されてうるおいや弾力のある健康な皮膚状態が取り戻され、また肌のしわ、色素沈着によるくすみやシミや雀斑形成が抑制ないしは改善されるといった効果が期待される。
実験例9 匂い刺激の自律神経活動に対する影響
1.はじめに
以上の実験結果から、リナロール及びラベンダー精油による匂い刺激が、自律神経活動の変化を介して、脂肪分解抑制(エネルギー消費抑制)、摂食量及び体重の増加、組織重量の増加(組織蛋白増加蓄積)、血圧低下、血糖低下、免疫賦活化、及び皮膚代謝促進をもたらすことが明らかとなった。上記リナロール及びラベンダー精油による匂い刺激の作用機作としては、鼻粘膜の匂い受容体を介して匂い情報が脳で処理されて自律神経を変化させる場合と、匂いが鼻粘膜や肺から吸収されて血流を介して自律神経を変化させる場合の2つが考えられる。本実験では、上記匂い刺激の作用機作が、上記のいずれかであるかを明らかにする。
2.被験動物
ラット(雄、Wistar rat、200〜250g)を被験動物として用いて、下記の実験を行った。当該ラットは、予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で1匹ずつ個別のケージで、飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させながら飼育した。
3.実験及び結果
<実験>
ラットを4群(第1〜4群)に分けて、6時間絶食後ウレタン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投与)で、下記方法により、10分間ラベンダー精油による匂い刺激を与えて、胃を支配する副交感神経の電気活動の変化を測定した。なお、ラベンダー精油は、100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁したものを使用し(100倍希釈)、それをろ紙に十分吸収させて、直径5cm深さ6cmのガラス製ビーカーの底に置いて調製した(ラベンダー精油吸収ろ紙入りビーカー)。
第1群:被験ラットの頚部で気管を切開し、肺へ向かう方の気管にチューブを挿入しそのチューブの端を、ラベンダー精油吸収ろ紙入りビーカーの底に向けて置き、ラベンダー精油が鼻粘膜には行かずに直接肺の方にいくようにして匂い刺激を与え(図21(1)参照)、胃を支配する副交感神経の電気活動の変化を測定した(気管匂い刺激)。
第2群:被験ラットの頚部で気管を切開し、肺に向かう気管は開放して呼吸ができるようにしておき、鼻腔に向かう方の気管に注射筒を挿入して、鼻先にラベンダー精油吸収ろ紙入りビーカーをおき、ろ紙に吸収させたラベンダー精油の匂いを注射筒にてパンピングして10分間鼻粘膜を匂い刺激し(図21(2)参照)、胃を支配する副交感神経の電気活動の変化を測定した(鼻腔パンピング匂い刺激)。
第3群:胃の副交感神経の電気活動を記録しながら、被験ラットにラベンダー精油を100倍容量の蒸留脱イオン水に懸濁したラベンダー懸濁液を0.1ml及びまた時間をおいて0.5ml皮下投与した。次いで、第2群と同様にして10分間、鼻粘膜部をラベンダー精油で匂い刺激した(鼻腔パンピング匂い刺激)(図22(3)参照)。
第4群:胃の副交感神経の電気活動を記録しながら、第2群と同様にして10分間、鼻粘膜部をラベンダー精油で匂い刺激し(鼻腔パンピング匂い刺激)、神経活動が上昇した時点で2%キシロカインを0.2 ml鼻腔内に注入して、局所麻酔による影響を調べた。更に、局所麻酔後、再度上記と同様に10分間鼻腔パンピング匂い刺激を行った(図21(4)参照)。
なお、胃を支配する副交感神経の電気活動の測定は、具体的には、6時間絶食後ウレタン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投与)で開腹したラットの胃の副交感神経の遠心枝を、実体顕微鏡下で銀製記録電極に釣り上げて、実験例3と同様にして行った(図9参照)。放電頻度はレイトメーターにより5秒間のリセットタイムにてペンレコーダー上に表示した。電気活動の記録は90分間以上行った。
<結果>
図21の(1)及び(2)に、それぞれ第1群及び第2群の実験結果を示す。第1群の肺に向かってラベンダー精油の匂い成分を吸わせたとき(第1群)には、胃副交感神経の活動は上昇しなかったが、鼻腔に向かって注射筒を用いて強制的にラベンダー精油の匂いを吸わせたとき(第2群)には、胃副交感神経の活動が上昇した。この事実は少なくともラベンダー精油の匂い成分は鼻腔内で作用する事を示している。図22の(3)及び(4)にそれぞれ第3群及び第4群の実験結果を示す。
図22の(3)に示すように、ラベンダー精油(ラベンダー懸濁液)を皮下投与しても胃副交感神経の活動は上昇しなかったが、ラベンダー精油の匂いを吸わせると胃副交感神経の活動が上昇した。さらに図22の(4)に示すように、ラベンダー精油による鼻腔への匂い刺激によって上昇した胃副交感神経の活動は、キシロカイン注入による鼻腔の局所麻酔により迅速に低下することが認められた。また、局所麻酔後は、ラベンダー精油によって鼻腔に匂い刺激を行っても胃副交感神経の活動は上昇しなかった。これらの事実は上記の知見を裏付けるものである。
4.考察
これらの事実は、リナロールやラベンダー精油の匂い成分は、鼻粘膜の匂い受容体を介して匂い情報を脳内に伝達し、それによって末梢各組織を神経支配する自律神経活動が変化すること(白色脂肪組織、褐色脂肪組織、副腎、脾臓及び皮膚を支配する交感神経活動の抑制、胃及び胸腺を支配する副交感神経の促進)、その結果、脂肪分解抑制、エネルルギー消費抑制/エネルギー蓄積促進、組織蛋白蓄積増加(組織損傷治癒促進)、血圧低下、血糖低下、免疫賦活及び皮膚代謝促進などが生じることを示している(図23)。また他方で、リナロールやラベンダー精油の匂い成分は、鼻粘膜の匂い受容体を介して視床下部にある摂食調節中枢に伝達されることによって食欲を増進することを示している(図23)。
<処方例>
以下の処方例に示す本発明の芳香療法用組成物を含有する付香製品を調製した。但し、当該付香製品は、本発明が対象とする付香製品の一例にすぎない。なお、下記のリナロールとして、(±)-リナロール(dl-3,7Dimethyl-3-hydroxy-1,6-octadiene, Aldrich Chem. Co., Milwaukee)(合成品、純度97%以上)または(+)-リナロール(三栄源エフ・エフ・アイ(株)より入手。水蒸気蒸留後、精密分留して取得。純度99%以上)を、またラベンダー精油として、真正ラベンダー(Lavender angustifola)の花を水蒸気蒸留して調製したエッセンシャルオイル(Pranarom社製、Pranarom International, 581 parc d’activites St-Maritin, 84120 Pertuis, France:リナロール含有量約34%)を使用した。
処方例1:液体芳香剤
リナロール(又はラベンダー精油) 1.0(3.0)重量%
アルコール系溶剤(ソルフィット:クラレ製) 6.0
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 4.5
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5
イオン交換水 残部
合 計 100.00 重量%。
処方例2:ゲル芳香剤
リナロール(又はラベンダー精油) 1.0(3.0)重量%
ジェランガム 0.8
乳酸カルシウム 0.05
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 6.0
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5
イオン交換水 残部
合 計 100.00 重量%。
処方例3:芳香エアゾール剤
リナロール(又はラベンダー精油) 0.17(0.5)重量%
エタノール 19.8
LPG 残部
合 計 100.00 重量%。
処方例4:芳香剤
リナロール(又はラベンダー精油) 30(88.2)重量%
イソパラフィン 残部
合 計 100.00 重量%
リナロール(またはラベンダー精油)及びイソパラフィンからなる混合物を担持体(ケイ酸カルシウム)に含浸させて、素焼き容器に入れ、芳香剤を調製した。
処方例5:吸入用液体芳香剤
リナロール(又はラベンダー精油) 1.0(3.0)重量%
エタノール 50.0
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 2.25
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 2.25
イオン交換水 残部
合 計 100.00 重量%。
処方例6:マッサージオイル
リナロール(又はラベンダー精油) 0.5(1.5)
ホホバ油 残部
合 計 100.00 重量%。
処方例7:マッサージクリーム
リナロール(又はラベンダー精油) 1(3.0)
ミツロウ 10.0
流動パラフィン 50.0
ホウ砂 1.0
精製水 残部
合 計 100.00 重量%。
処方例8:ガム
リナロール(又はラベンダー精油) 0.01(0.03)
還元麦芽糖 20.0
還元麦芽糖水飴 5.0
ガムベース 残部
合計 100.0 重量%。
処方例9: 繊維製品(布帛)
リナロールを常法により平均粒子径3μm、膜厚0.5μmのメラミン樹脂壁膜を有するマイクロカプセルに内包〔リナロール(又はラベンダー精油)の含有割合60重量%〕させて、芳香療法用組成物をマイクロカプセル形態に調製した。このマイクロカプセル100g/L、シリコーン樹脂バインダー100g/L、リン酸エステル型帯電防止剤10g/L、エチレンジアミン防錆剤10g/Lの組成の水分散液を調合した。この水分散液を布帛にスプレーを用いて噴霧し、150℃に設定した乾燥機で10分間乾燥して、マイクロカプセル(芳香療法用組成物)を、シリコーン樹脂バインダーを介して布帛表面に固着させ、芳香療法用組成物を含有する布帛を調製した。
本発明の芳香療法用組成物及び付香製品は、食欲不振の改善(食欲増進)、発熱性消耗性疾患や悪疫質等のエネルギー消耗性疾患の改善、るい痩の改善、栄養障害の改善、組織損傷治癒促進、術後・病中病後・産前産後の体力回復などに有効に使用することができる。また、本発明の芳香療法用組成物及び付香製品は、免疫力が低下または低下傾向にある被験者(術後・病中病後・産前産後の被験者を含む)、若齢者並びに高齢者について免疫力を向上させて、病原菌(ウイルスを含む)等への感染や罹患の予防、疾病の早期治癒に有効に使用することができる。
本発明の芳香療法用組成物及び付香製品は、血圧降下作用を有するため、高血圧症またはその傾向にある被験者(患者)の血圧を降下に有効に使用することができる。さらに本発明の芳香療法用組成物及び付香製品は、糖尿病患者の高血糖状態を改善する作用を有するため、糖尿病患者の症状の改善や合併症の予防に有効に使用することができる。
さらに本発明の芳香療法用組成物及び付香製品は、皮膚の新陳代謝を促進して、皮膚年齢の若返り(肌のみずみずしさや弾力性の回復や維持)、しわや色素沈着を抑制または改善するのに、さらに創傷の治癒促進に有効に使用することができる。
リナロールの匂い刺激の血漿グリセロール濃度に対する影響を示す図である(実験例1)。図中、−●−は第1群(リナロール匂い刺激群)(図中、「Linalool」と表記)のラット、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)のラットの結果を示す。データは平均値±標準誤差で示す(以下の図において同じ)。図中の括弧内の数字は被験ラット数を意味する(以下の図においても同じ)。横軸は、ケージの上に被験試料を含浸させたガーゼを配置した後の経過時間(分)を、また、縦軸は、匂い刺激前(0分)の血漿中のグリセロール濃度(%)を100%として換算した、血漿中のグリセロール濃度(%)(相対値)を示す(図2においても同じ)。 ラベンダー精油の匂い刺激の血漿グリセロール濃度に対する影響を示す図である(実験例1)。図中、−●−は第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(図中、「Lavender」と表記)のラット、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)のラットの結果を示す。 リナロールの匂い刺激の摂食量に対する影響を示す図である(実験例2)。図中、−●−は第1群(リナロール匂い刺激群)(図中、「Linalool」と表記)のラット、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)のラットの結果を示す。横軸は、ケージの上に被験試料を含浸させたガーゼを配置した後の経過時間(週)を、縦軸はラット1匹の1日あたりの摂食量(g/day/rat)を示す(図6においても同じ)。 リナロールの匂い刺激の体重に対する影響を示す図である(実験例2)。図中、−●−は第1群(リナロール匂い刺激群)(図中、「Linalool」と表記)のラット、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)のラットの結果を示す。横軸は、ケージの上に被験試料を含浸させたガーゼを配置した後の経過時間(日)を、縦軸はラット1匹の体重(g)を示す(図7においても同じ)。 リナロールの匂い刺激の組織重量(g)〔右から、心臓(Heart)、肝臓(Liver)、脾臓(Spleen)、腎臓(Kidney)、白色脂肪組織〔(腸間膜周囲脂肪組織(Mesenteric)、腹睾丸周囲脂肪組織(Epididymal)、腎臓周囲脂肪組織(Perirenal)〕、膵臓(Pancreas)〕に対する影響を示す図である(実験例2)。図中、■カラムは第1群(リナロール匂い刺激群)(図中、「Linalool」と表記)のラット、□カラムは第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)のラットの結果を示す。 ラベンダー精油の匂い刺激の摂食量に対する影響を示す図である(実験例2)。図中、−●−は第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(図中、「Lavender」と表記)のラット、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)のラットの結果を示す。 ラベンダー精油の匂い刺激の体重に対する影響を示す図である(実験例2)。図中、−●−は第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(図中、「Lavender」と表記)のラット、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)のラットの結果を示す。 ラベンダー精油の匂い刺激の組織重量に対する影響を示す図である(実験例2)。図中、■カラムは第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(図中、「Lavender」と表記)のラット、□カラムは第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)のラットの結果を示す。 実験例3〜5及び7〜9の実験手法を示す図である。Aは被験ラットに匂い刺激を与える方法を示す模式図であり、Bは被験ラットの各神経遠心枝の神経活動(電気活動)を測定する方法を示す模式図である。 匂い刺激による各自律神経〔上段から、副睾丸脂肪組織(白色脂肪組織)を神経支配する交感神経、肩甲間(背側)褐色脂肪組織を神経支配する交感神経、副腎を神経支配する交感神経、胃を神経支配する迷走神経(副交感神経)〕の遠心枝の神経活動(電気活動)の変化を示す図である(実験例3)。図10の左から順に、コントロール群、ラベンダー精油匂い刺激群、及びリナロール匂い刺激群の、匂い刺激による神経活動の結果を示す。なお、各グラフの上の横線は、各匂い刺激の付与期間(10分間)を示す。 (±)-リナロール(図A)、および(+)-リナロール(図B)の匂い刺激による、副腎を神経支配する交感神経の遠心枝の神経活動(電気活動)の変化を示す図である(実験例4)。 リナロールによる匂い刺激時の腎臓交感神経活動(renal sympathetic nerve activity)の経時的変化(%)を示す図である(実験例5)。なお、実験結果は各試験群の匂い刺激前の腎臓交感神経活動の値を100%として算出した百分率にて示す。図中、−●−は第1群(リナロール匂い刺激群)(図中、「Linalool」と表記)、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)の結果をそれぞれ示す。 リナロールによる匂い刺激時の血圧(mean arterial pressure)の経時的変化(%)を示す図である(実験例5)。なお、実験結果は各試験群の匂い刺激前の血圧値を100%として算出した百分率にて示す。図中、−●−は第1群(リナロール匂い刺激群)(図中、「Linalool」と表記)、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)の結果をそれぞれ示す。 ラベンダー精油による匂い刺激時の腎臓交感神経活動(renal sympathetic nerve activity)の変化(%)を示す図である(実験例5)。なお、実験結果は各試験群の匂い刺激前の腎臓交感神経活動の値を100%として算出した百分率にて示す。図中、−●−は第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(図中、「Lavender」と表記)、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)の結果をそれぞれ示す。 ラベンダー精油による匂い刺激時の血圧(mean arterial pressure)の変化(%)を示す図である(実験例5)。なお、実験結果は各試験群の匂い刺激前の血圧値を100%として算出した百分率にて示す。図中、−●−は第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(図中、「Lavender」と表記)、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)の結果をそれぞれ示す。 リナロールの匂い刺激が、ストレプトゾトシン糖尿病ラットに対する糖負荷時の血糖上昇に与える影響について調べた結果を示す図である(実験例6)。図中、−●−は第1群(リナロール匂い刺激群)(図中、「Linalool」と表記)の糖負荷後の血漿グルコース(plasma glucose)濃度(mg/dl)の経時的変化を、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)の糖負荷後の血漿グルコース濃度(mg/dl)の経時的変化をそれぞれ示す。 ラベンダー精油の匂い刺激が、ストレプトゾトシン糖尿病ラットに対する糖負荷時の血糖上昇に与える影響について調べた結果を示す図である(実験例6)。図中、−●−は第1群(ラベンダー精油匂い刺激群)(図中、「Lavender」と表記)の糖負荷後の血漿グルコース(plasma glucose)濃度(mg/dl)の経時的変化を、---○---は第2群(コントロール群)(図中、「Water」と表記)の糖負荷後の血漿グルコース濃度(mg/dl)の経時的変化をそれぞれ示す。 匂い刺激による自律神経〔(A)胸腺を神経支配する副交感神経(迷走神経胸腺枝)、(B)脾臓を神経支配する交感神経(交感神経脾臓枝)〕の遠心枝の神経活動(電気活動)の変化を示す図である(実験例7)。(A)及び(B)ともに上から順に、(1)ラベンダー精油匂い刺激群、及び(2)リナロール匂い刺激群の神経活動の結果を示す。なお、各図の上の横線は、各匂い刺激の付与期間(10分間)を示す。 リナロール匂い刺激による交感神経脾臓枝の神経活動(電気活動)の変化図(A)とそれをグラフ化した図(B)である(実験例7)。 (A)はリナロール匂い刺激による自律神経〔皮膚を神経支配する交感神経〕の遠心枝の神経活動(電気活動)の変化を示す図である(実験例8)。(B)はそれをグラフ化したものである。 ウレタン麻酔ラットの胃副交感神経活動に対するラベンダー精油の肺(気管)刺激および鼻腔刺激による影響を示す図である(実験例9)。(1)は第1群の実験方法とその結果を、(2) は第2群の実験方法とその結果を示す。 (3)は、ウレタン麻酔ラットの胃副交感神経活動に対するラベンダー精油の皮下投与および鼻腔刺激による影響を示す図である(実験例9の第3群)。また(4)は、ウレタン麻酔ラットの胃副交感神経活動に対するラベンダー精油の鼻腔刺激による促進効果に対する、鼻粘膜局所麻酔の影響を示す図である(実験例9の第4群)。 リナロールとラベンダー精油の匂い刺激の、自律神経に与える影響を纏めた図である。

Claims (19)

  1. リナロールまたはリナロールを含む精油を有効成分として含有する、副交感神経興奮または交感神経抑制作用に基づく芳香療法用組成物。
  2. リナロールを含む精油がラベンダー精油である請求項1に記載する芳香療法用組成物。
  3. 食欲増進用組成物である請求項1または2に記載する芳香療法用組成物。
  4. エネルギー消耗抑制用またはエネルギー蓄積促進用組成物である請求項1または2に記載する芳香療法用組成物。
  5. 栄養不良改善用組成物である請求項1または2に記載する芳香療法用組成物。
  6. 組織の損傷治癒促進用組成物である請求項1または2に記載する芳香療法用組成物。
  7. 抗糖尿病用組成物である請求項1または2に記載する芳香療法用組成物。
  8. 血圧降下用組成物である請求項1または2に記載する芳香療法用組成物。
  9. 免疫賦活用組成物である請求項1または2に記載する芳香療法用組成物。
  10. 皮膚代謝促進用組成物である請求項1または2に記載する芳香療法用組成物。
  11. 請求項1または2に記載する芳香療法用組成物を含有する付香製品。
  12. 食欲増進用付香製品である請求項11に記載する付香製品。
  13. エネルギー消耗抑制用またはエネルギー蓄積促進用付香製品である請求項11に記載する付香製品。
  14. 栄養不良改善用付香製品である請求項11に記載する付香製品。
  15. 組織の損傷治癒促進用組成物である請求項11に記載する芳香療法用組成物。
  16. 抗糖尿病用付香製品である請求項11記載する付香製品。
  17. 血圧降下用付香製品である請求項11に記載する付香製品。
  18. 免疫賦活用付香製品である請求項11記載する付香製品。
  19. 皮膚代謝促進用付香製品である請求項11に記載する付香製品。

JP2004377391A 2003-12-26 2004-12-27 芳香療法用組成物 Withdrawn JP2005206596A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004377391A JP2005206596A (ja) 2003-12-26 2004-12-27 芳香療法用組成物

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003434271 2003-12-26
JP2004377391A JP2005206596A (ja) 2003-12-26 2004-12-27 芳香療法用組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005206596A true JP2005206596A (ja) 2005-08-04

Family

ID=34914322

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004377391A Withdrawn JP2005206596A (ja) 2003-12-26 2004-12-27 芳香療法用組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005206596A (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009139371A (ja) * 2007-11-15 2009-06-25 Anbas:Kk 血行促進作用の評価方法、血行促進物質のスクリーニング方法、および血行促進剤
WO2009113287A1 (ja) * 2008-03-13 2009-09-17 パナソニック株式会社 芳香性血圧降下剤、および哺乳類の血圧を下げる方法
JP2009235015A (ja) * 2008-03-28 2009-10-15 Shiseido Co Ltd 自律神経調整剤
JP2013538847A (ja) * 2010-10-18 2013-10-17 アニル・クマール・グプタ 低血糖症のリスクなしに血糖を制御するための新規ハーブ油
WO2016049298A1 (en) * 2014-09-24 2016-03-31 Cornell University A device for delivering odors and methods of using the same
JP2017075132A (ja) * 2015-10-16 2017-04-20 丸善製薬株式会社 皮膚化粧料および飲食品
KR101810228B1 (ko) 2017-01-13 2018-01-18 주식회사 아미코스메틱 천연 향료 조성물 및 이를 함유하는 화장료 조성물
JP2019147777A (ja) * 2018-02-28 2019-09-05 株式会社ファンケル マイオカイン産生促進用組成物
JP2019163248A (ja) * 2018-03-16 2019-09-26 三井農林株式会社 自律神経調節剤

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009139371A (ja) * 2007-11-15 2009-06-25 Anbas:Kk 血行促進作用の評価方法、血行促進物質のスクリーニング方法、および血行促進剤
WO2009113287A1 (ja) * 2008-03-13 2009-09-17 パナソニック株式会社 芳香性血圧降下剤、および哺乳類の血圧を下げる方法
CN101969968B (zh) * 2008-03-13 2012-06-20 松下电器产业株式会社 芳香性降血压剂和降低哺乳类血压的方法
JP2009235015A (ja) * 2008-03-28 2009-10-15 Shiseido Co Ltd 自律神経調整剤
JP2013538847A (ja) * 2010-10-18 2013-10-17 アニル・クマール・グプタ 低血糖症のリスクなしに血糖を制御するための新規ハーブ油
WO2016049298A1 (en) * 2014-09-24 2016-03-31 Cornell University A device for delivering odors and methods of using the same
JP2017075132A (ja) * 2015-10-16 2017-04-20 丸善製薬株式会社 皮膚化粧料および飲食品
KR101810228B1 (ko) 2017-01-13 2018-01-18 주식회사 아미코스메틱 천연 향료 조성물 및 이를 함유하는 화장료 조성물
JP2019147777A (ja) * 2018-02-28 2019-09-05 株式会社ファンケル マイオカイン産生促進用組成物
JP2019163248A (ja) * 2018-03-16 2019-09-26 三井農林株式会社 自律神経調節剤

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1941870B1 (en) Perfume Composition comprising perilla aldehyde
JP2021102767A (ja) 有機化合物におけるまたは関連する改良
TW309428B (ja)
JP2009509917A (ja) スポロポレニンの使用
JP6347916B2 (ja) フィラグリン遺伝子発現促進剤
JP2005206596A (ja) 芳香療法用組成物
JP2009235015A (ja) 自律神経調整剤
JP2005206597A (ja) 鎮静・安眠用組成物、鎮静・安眠材、及びそれを用いた付香製品
JP5558016B2 (ja) 概日リズム調整剤
JP2007197334A (ja) 自律神経調整剤、睡眠改善剤又はストレス緩和剤用組成物
JP3951271B2 (ja) 体脂肪燃焼促進剤
JP3590274B2 (ja) 気化吸引用鎮静剤及びそれを有効成分とする鎮静香料組成物
WO2020004182A1 (ja) 睡眠改善剤
JP2008247894A (ja) ストレス応答力改善剤
JP5019016B2 (ja) 睡眠改善剤及び香料製剤
JP5024579B2 (ja) カテコールアミン誘発剤
JP2012012386A (ja) 副交感神経抑制剤、並びにそれを含有する化粧料、食品及び雑貨
JP2001207188A (ja) 過酸化脂質消去用の香料組成物
CN103458928B (zh) (r)-1,2-丙二醇用作治疗性冷却剂组合物中的溶剂
JP6097342B2 (ja) 交感神経活性化剤、並びにそれを含有する交感神経活性化用化粧料及び交感神経活性化用食品
JP6076832B2 (ja) メントール誘導体、並びにこれを用いた冷感剤、trpm8活性化剤、冷感付与方法及びtrpm8活性化方法
WO2011152007A1 (ja) 交感神経抑制剤及び皮膚温度低下剤並びにそれを含有する化粧料、食品、及び雑貨
KR20140103723A (ko) 숙면 효과를 갖는 향료 조성물
JPH11343497A (ja) 化粧料
JP3220275B2 (ja) しわ改善剤

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071227

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20100630