JP2005206471A - 軟質裏装材用硬化性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 自然な咀嚼感を感じさせる適度な粘弾性を有し、かつ、口腔内で長期間使用してもこの粘弾性が維持される、義歯床補修用の硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ラジカル重合性単量体、(B)分子量が2万〜500万の重合体、及び(C)重合開始剤、及び、(D)(1)分子量が1000〜1万の範囲にあり、(2)前記(A)成分と相溶性があり、(3)非水溶性であり、且つ(4)前記(A)成分と共重合性を示さない化合物を含む組成物を用いる。上記(D)成分としては、分子量が1000〜1万の範囲にあるポリブチル(メタ)アクリレート、ポリ{ブチル(メタ)アクリレート−メトキシエチル(メタ)アクリレート}、{ブチル(メタ)アクリレート−スチレン}共重合体、{ブチル(メタ)アクリレート−酢酸ビニル}共重合体等の(メタ)アクリレート系の重合性単量体の重合体が好適に使用できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、歯科治療において、義歯の適合性の改善のために用いられる義歯床軟質裏装材用硬化性組成物に関する。
義歯使用者が義歯を長期にわたって使用していると顎堤を形成する歯槽骨の吸収等が原因となり口腔の形状が次第に変化することが知られている。この様な場合、義歯床と口腔粘膜との適合が悪くなり、義歯が不安定になる。この場合一般に義歯床を一層削除し義歯裏装材とよばれる樹脂材料を義歯の粘膜面へ積層する、いわゆる裏装を行うことで義歯と口腔粘膜の適合回復を図る。
このような義歯裏装材には義歯本体を形成する部分、いわゆる義歯床を形成する樹脂とほぼ同等の硬度を有する樹脂組成物からなる硬質裏装材と、該硬質裏装材より柔らかな素材からなる軟質裏装材があり、症例によって使い分けがなされている。一般的な義歯不適合症例に対しては硬質裏装材が用いられるが、近年、患者の高齢化が進み、歯槽骨の吸収と歯槽膜の薄化が著しい患者が多くなってきている。このような患者は咬合、咀嚼圧の衝撃が緩衝されずに歯槽骨等に直接伝えられる。一般的に義歯床はメタクリレートやポリカーボネート等の硬い樹脂でできており、硬い義歯床と硬い歯槽骨との間に挟まれた薄い粘膜が咬合するたびに締め付けられて傷つき、激しい痛みを発することになる。この様な難症例には硬質裏装材の代わりに柔らかい樹脂材料を用いて失われた歯槽膜の弾性を補い、クッション性を与えて咬合時の衝撃を緩和する。この様な用途に用いられる裏装材が軟質裏装材である。
従来、このような軟質裏装材としては、主にポリ(メタ)アクリレート系のもの(例えば、特許文献1参照)と、シリコーンゴム系のもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
ポリ(メタ)アクリレート系の軟質裏装材は、一般にメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等の(メタ)アクリレート系のラジカル重合性単量体の重合硬化体を主成分とする。代表的な製品形態としては、(メタ)アクリレート系の単量体を主成分とする液材と、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリレート系の重合体を主成分とする粉材からなっており、さらに重合開始剤が液材と粉材に適宜分配して配合されており、この両材を混合することにより、(メタ)アクリレート系の単量体が重合する。(メタ)アクリレート系の重合体は一種の充填材として作用すると共に、混合時に(メタ)アクリレート系の単量体に溶解あるいは膨潤して、組成物全体をペースト状あるいは餅状にする効果があり、これにより適度な操作性を得ることができる。
このようなポリ(メタ)アクリレート系の重合硬化体は、強度に優れる一方でそのままでは軟質裏装材として必要な柔軟さを有さないため、可塑剤を配合する必要がある。このような可塑剤としては、ジオクチルフタレートやジブチルフタレート、ジブチルセバケート等の可塑剤が主に用いられている。
他方、シリコーンゴムは本来的に生体適合性が高いため、シリコーンゴム系の軟質裏装材も幅広く用いられている。一般に、シリコーンゴムは弾性に富む柔らかい材料であるため、このようなシリコーンゴム系の軟質裏装材においては別途可塑剤の配合を必要としない。
特開平10−236913 特許第3478521号
前記のように軟質裏装材は義歯床の補修に用いるものである。したがって、軟質裏装材により裏装した義歯においても、できるだけ自然な咀嚼感を得ることのできる材料であることが望まれる。
義歯等を装着していない健康な者では、歯槽骨と歯の間に存在する歯根膜といわれる組織がクッションの役割を果たしており、この歯根膜が咀嚼時の咬哈圧力をうけて粘弾性的に変形し、その圧力を逃がす働きがある。ところが、シリコーンゴムの柔軟性は弾性に依存しており、粘性はほとんどないため、咬哈圧力による変形に対して、同等の力で元に戻ろうとする力が直接的に作用する。従って、このようなシリコーンゴム系の軟質裏装材で裏装を行った義歯を装着しての咀嚼では、若干の違和感を感じる場合があり、近年特に高まっている生活の質に対する要求という点から改善の余地がある。
他方、ポリ(メタ)アクリレート系の軟質裏装材では、可塑剤が配合されているため、該可塑剤の作用により裏装材全体に適度な粘弾性が付与されることになっており、相対的にシリコーンゴム系の軟質裏装材に比べて咀嚼時の違和感は少ない。しかしながら用いるフタレート系の可塑剤が長期の使用により徐々に溶出し、経時的にその柔軟性が失われ硬くなるという問題が生じる。さらに、溶出した可塑剤は唾液や食物と共に飲み込まれるため、用いる可塑剤によっては健康への影響が懸念される。
したがって本発明は、自然な咀嚼感を感じさせる適度な粘弾性を有し、かつ、口腔内で長期間使用してもこの粘弾性が失われることの少ない、義歯床を補修するために用いる軟質の材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、分子量が1000〜10000の範囲にある重合体を配合すると、適度な粘弾性が付与できるのみならず、該成分は溶出することもほとんどなく、クッション性を長期間維持させることのできる場合があることを見出した。そしてこの知見に基づき更に検討を進めた結果、本発明を完成した。
即ち本発明は、(A)ラジカル重合性単量体、(B)分子量が2万〜50万の重合体、及び(C)重合開始剤を含んでなる、義歯床を裏装する際に用いる組成物であって、該組成物は、さらに(D)
(1)分子量が1000〜10000の範囲にあり、
(2)前記(A)成分と相溶性があり、
(3)非水溶性であり、且つ
(4)前記(A)成分と共重合しない
化合物を含むことを特徴とする軟質裏装材用硬化性組成物である。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物を用いて義歯床を補修(裏装)することにより、歯槽骨の吸収や歯槽膜の薄化が著しい場合でも、義歯床と口腔粘膜との適合性、咬哈圧力の緩和性に優れ、また咀嚼時の違和感が少なく、かつ、口腔内で長期に渡って使用しても上記特性の変化が少ない優れた補修義歯を得ることができる。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物は、上記の通り、(A)ラジカル重合性単量体、(B)分子量が2万〜500万の重合体、及び(C)重合開始剤を含んでなる、義歯床を裏装する際に用いる組成物であって、該組成物は、さらに(D)
(1)分子量が1000〜10000の範囲にあり、
(2)前記(A)成分と相溶性があり、
(3)非水溶性であり、且つ
(4)前記(A)成分と共重合性を示さない
化合物を含む。なお、本発明において軟質であるとは、硬化体を手で押したときに変形を伴う程度の硬さを有するものであり、具体的に示すと硬化体の硬度(JIS−K7215:デュロメータ タイプA)が、おおよそ60以下であることを意味する。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物において、上記(A)成分のラジカル重合性単量体としては、歯科用の義歯床裏装材用の成分として公知のラジカル重合性単量体を採用すればよく特に制限されるものではない。
このようなラジカル重合性単量体としては、重合性の良さなどから(メタ)アクリレート系の単量体が主に用いられている。当該(メタ)アクリレート系の単量体を具体的に例示すると下記(1)〜(4)に示すものが挙げられる。
(1)単官能ラジカル重合性単量体
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、以下に例示する含フッ素(メタ)アクリレート;1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート等、下記式(a)〜(g)で示される(メタ)アクリレート
Figure 2005206471
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なお、上記各式中のRは、水素原子又はメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立なアルキレン基であり、Rはアルキル基であり、mは0または1であり、nは1〜10の整数(但し、m+nは2〜10の整数である。)である。上記R又はRとしてのアルキレン基は特に限定されないが、合成樹脂粉末と併用する場合の溶解性あるいは膨潤性を勘案すると、前記式(a)で示される化合物においては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、1,2−ジメチルエチレン基及びヘキサメチレン基等の炭素数1〜6のアルキレン基、これらの中でも特に炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。また、前記式(a)に示される化合物におけるRのアルキル基としては同じ理由により、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、これらの中でもメチル基又はエチル基であるのが好適である。
(2)二官能ラジカル重合性単量体
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、2,2−ビス(メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジプロポキシフェニルプロパン、2−(4−メタクリロキシエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロキシジプロポキシフェニル−2−(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシイソプロポキシフェニルプロパン、及びこれらのアクリレート。
(3)三官能ラジカル重合性単量体
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート。
(4)四官能ラジカル重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート。
本発明においては、このようなラジカル重合性単量体は単独で用いてもよく、また2種類以上のラジカル重合性単量体を併用してもよい。さらに、ラジカル重合性を有する官能基数が異なる複数種の組み合わせも自由に選択しうる。中でも単官能ラジカル重合性単量体と二官能ラジカル重合性単量体の組み合わせが好適に用いられ、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートや、以下の化合物AE−1〜AE−3
Figure 2005206471
Figure 2005206471
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からなる群から選ばれる単官能ラジカル重合性単量体と、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレートからなる群から選ばれる二官能ラジカル重合性単量体の中からそれぞれ1種もしくは2種以上を選び、これらを20/80〜80/20の重量比で組み合わせたものが特に好適に用いられる。
本発明において、(B)成分の分子量が2万〜500万の重合体としては、歯科用の義歯床裏装材に配合される重合体成分として公知の重合体を採用すればよく、本発明の軟質裏装材用硬化性組成物を構成する他の成分の全てと混合した時点で、該組成物(混合物)の性状がペースト状あるいは餅状になるものであれば特に制限されるものではない。このような性状を得るためには(A)成分のラジカル重合性単量体に完全にあるいは部分的に溶解するか又はラジカル重合性単量体によって膨潤するものが好ましく、一般に化学的安定性、透明性などの点で、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系の重合性単量体や、酢酸ビニル、スチレン等のその他のラジカル重合性単量体の単独重合体、あるいはこれらから選ばれる2種若しくはそれ以上のラジカル重合性単量体の共重合体を用いるのが好ましい。中でも、(メタ)アクリレート系の重合性単量体に基づく重合単位を含む重合体(以下、ポリ(メタ)アクリレート系重合体)が好ましく、特に、メチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体、又は、メチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートに基づく重合単位が50モル%以上である共重合体を採用することにより、特に溶解あるいは膨潤しやすく好適である。
上記重合体の分子量が2万未満であると組成物の性状をペースト状あるいは餅状に粘性を十分にコントロールさせることができず、また、分子量が500万を越えるものは通常の合成法では極めて得られにくく、現実的ではない。入手の容易さと、組成物の性状のコントロールのし易さから分子量が5万〜100万のものがより好適である。
なお、上記(B)成分、及び後述する(D)成分の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)により測定される、標準ポリスチレン換算分子量である。
上記(B)成分である重合体の配合量は、配合する他の成分の種類やその物性、配合量などを考慮し、適宜決定すればよい。一般的には、配合量が多いほど初期の流動性が減少し、垂れなどが生じ難くなるが、極端に多くなると初期の粘度が高くなりすぎ、所望の形状に賦形することが困難になる場合がある。(B)成分の配合量は、好ましくは、(A)ラジカル重合性単量体と後述する(D)成分の化合物との合計100質量部に対して、30〜300質量部であり、より好ましくは50〜250重量部である。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物に配合される重合開始剤は、前記(A)成分であるラジカル重合性単量体を重合させることができるものであればよく、公知のラジカル重合性単量体を、後述する本発明の軟質裏装材用組成物の包装形態や使用形態にあわせて適宜採用すればよく、加熱重合開始剤、常温重合開始剤、光重合開始剤のいずれも制限なく使用できる。
加熱重合開始剤としては、主に有機過酸化物や、アゾ化合物が用いられる。有機過酸化物としては芳香族を有するジアシルパーオキサイド類や過安息香酸エステル類似のパーオキサイド類が好ましい。そのような有機過酸化物を例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジシクロベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。またアゾ化合物としてはアゾビスイソブチロニトリル等が用いられる。
常温重合開始剤は、常温(室温;15〜40℃程度)で単独で用いた場合には重合開始能のあまり高くない重合開始剤に、さらに重合開始助剤を加えることで室温条件下においてラジカル重合反応を起こすものである(なお歯科分野においては、常温重合開始剤は、化学重合開始剤と呼ばれることもある)。代表的な組み合わせとしては有機過酸化物と第三級アミンの組み合わせが挙げられる。有機過酸化物としては前述の加熱重合開始剤で例示した有機過酸化物が好適に用いられる。またそのとき重合開始助剤として好適に使用される第三級アミンは窒素原子が芳香環に直接結合した芳香族第三級アミンが好ましく、そのような芳香族第三級アミンを例示するとN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N−メチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン等のアニリン類、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジプロピル−p−トルイジン、N,N−ジブチル−p−トルイジン、p−トリルジエタノールアミン、p−トリルジプロパノールアミン等のトルイジン類、N,N−ジメチル−p−アニシジン、N,N−ジエチル−p−アニシジン、N,N−ジプロピル−p−アニシジン、N,N−ジブチル−p−アニシジン等のアニシジン類、N−フェニルモルフォリン、N−トリルモルフォリン等のモルフォリン類、ビス(N,N−ジメチル網のフェニル)メタン、ビス(N,N−ジメチルアミノフェニル)エーテル等が挙げられる。
また、他の常温重合開始剤としては、バルビツール酸誘導体と、有機金属化合物及び有機ハロゲン化合物の重合開始助剤の組み合わせが挙げられる。バルビツール酸誘導体としては、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−フェニルバルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸等が好適に用いられる。
有機金属化合物としては、アセチルアセトン銅、4−シクロヘキシル酪酸銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅、アセチルアセトンマンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸マンガン、アセチルアセトンコバルト、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトンリチウム、酢酸リチウム、アセチルアセトン亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトンニッケル、酢酸ニッケル、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンカルシウム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトン鉄、ナフテン酸ナトリウム等が好適に用いられる。
有機ハロゲン化合物としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド等が好適に用いられる。
光重合開始剤としては、増感剤と還元剤の組み合わせが一般に用いられる。増感剤には、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アシルフォスフィンオキサイド誘導体、アジド基含有化合物等があり、単独もしくは混合して用いることができる。還元剤としては前述の常温重合開始剤で例示した第3級アミン等が一般に用いられる。
上記各種重合開始剤は必要に応じて異なる種類のものを併用してもよい。
これらの(C)重合開始剤の好適な使用量については、該重合開始剤を配合した本発明の軟質裏装材用硬化性組成物を、所望の時間で硬化させることができる範囲であれば良く、前記(A)ラジカル重合性単量体や(C)重合開始剤の種類によって異なるため一概に限定できないが、一般には(A)ラジカル重合性単量体の100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲である。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物における最大の特徴は、(D)成分として、(1)分子量が1000〜10000の範囲にあり、(2)前記(A)成分と相溶性があり、(3)非水溶性であり、且つ(4)前記(A)成分と共重合しない化合物が含まれる点にある。このような化合物を配合することにより、本発明の軟質裏装材用硬化性組成物を硬化させた場合、得られる硬化物が軟質裏装材として好適な粘弾性を有すものとなり、さらに、口腔内で長期間使用しても硬度が上昇してしまうこともほとんどなくなる。
一方、分子量が1000未満の化合物や水溶性の化合物では、該化合物は口腔内のような環境では溶出しやすく、比較的短時間で粘弾性が失われたり、あるいは変形してしまう場合がある。なお、非水溶性であるとは、本発明の軟質裏装材用硬化性組成物の硬化体の使用温度、即ち、口腔内の平均的な温度(通常、35〜40℃程度)での水に対する溶解度が5質量%以下であることを意味し、好ましくは水に対する溶解度が3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。
他方、分子量が10000を超える化合物を用いても、該化合物では硬化体に適度の粘弾性を付与することができず、軟質の裏装材とすることが困難となる。
また、物性の均一な硬化体とするために、使用時(硬化前)にも組成物に配合される各成分がほぼ均一に混合されたものである必要があるが、(A)ラジカル重合性単量体と相溶性のない化合物では、均一な混合物とすることが困難であり、さらに硬化後にもブリードアウトしやすく、長期に渡って使用できる軟質裏装材を得ることができない。なおここで、相溶性であるとは、使用する量の(A)成分と(D)成分を混合した場合、2相に分離することなく、均一な状態の混合物を得ることができることを示す。(D)成分が液状である場合には、該(D)が前記(B)成分とも相溶性を示す化合物であることが好ましい。
さらに、(A)成分と共重合してしまう化合物では、やはり硬化体に対して適度な粘弾性を付与することが困難である。なお(A)成分と共重合しないとは、本発明の軟質裏装材用硬化性組成物の使用条件において、即ち前記(C)成分により(A)成分であるラジカル重合性単量体を重合・硬化させる際に共重合しないことを示す。
上記(1)〜(4)の性質を持つ化合物としては、(メタ)アクリレート系の重合体、即ち、(メタ)アクリレート系の重合性単量体、又は(メタ)アクリレート系の重合性単量体と該(メタ)アクリレート系の重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体とを、分子量1000〜10000の範囲となるように重合させたものが特に好適である。
(メタ)アクリレート系の重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、(メタ)アクリレート系の重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体としては、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
これら重合性単量体を重合させて得られる重合体としては、ただ一種の(メタ)アクリレート系の重合性単量体のみを重合させて得られる単独重合体、2種又はそれ以上の異なる(メタ)アクリレート系の重合性単量体を重合させて得られる共重合体、あるいは、1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系の重合性単量体と、1種又はそれ以上のその他の重合性単量体を重合させて得られる共重合体で前記(メタ)アクリレート系重合性単量体に基づく重合単位を50モル%以上を含んでなるものなどが挙げられる。
中でも、前記(B)成分の分子量が2万〜500万の重合体が、ポリ(メタ)アクリレート系の重合体である場合に、該重合体との相溶性が良好であることから、(D)成分としてはエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から、1種を選んで重合させた単独重合体、もしくはこれらのうちの2種又はそれ以上の種類の重合性単量体を重合させた共重合体として得られる重合体が特に好適に使用される。
このような重合体をより具体的に例示すると、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリ{2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート}等の(メタ)アクリレート系重合性単量体の単独重合体;ポリ{エチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート}、ポリ{エチル(メタ)アクリレート−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート}、ポリ{エチル(メタ)アクリレート−メトキシエチル(メタ)アクリレート}、ポリ{エチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート}、ポリ{ブチル(メタ)アクリレート−メトキシエチル(メタ)アクリレート}、ポリ{ブチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート}等の(メタ)アクリレート系重合性単量体の共重合体;{ブチル(メタ)アクリレート−スチレン}共重合体、{ブチル(メタ)アクリレート−酢酸ビニル}共重合体等が挙げられる。
このような分子量が1000〜10000の範囲にある重合体を得る方法は、一般的な重合反応を用いた方法から得ることができる。即ち、単量体と開始剤の配合比を制御することで、所望の分子量並びに分子量分布を有する液状重合体を得ることができる。分子量並びに分子量分布の制御が容易なイオン重合やリビングラジカル重合が好適に用いられる。
本発明において(D)成分としては、分子量や化学構造の異なるものを併用しても良い。むしろ上記のようなラジカル重合性単量体の重合により得られる重合体を用いる場合などには、ある程度の分子量分布を有する混合物として得られるため、完全に単一の分子量のものを入手、使用するよりも、そのようなある程度の分子量分布を有する混合物を用いる方が容易である。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物において、上記(D)成分の配合量は、その効果を得られる範囲であれば特に限定されるものではなく、適宜決定すれば良いが、一般的には、(A)成分のラジカル重合性単量体100質量部に対して40質量部〜4000質量部の範囲であり、好ましくは50重量部〜3000重量部、より好ましくは80重量部〜2000重量部である。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、軟質裏装材用硬化性組成物の成分として公知の他の成分が配合されていてもよい。このような成分としては、分子量が1万〜2万の重合体、分子量が1000未満の重合体;ブチルヒドロキシトルエン、メトキシハイドロキノン等の重合禁止剤;色素、顔料、染料;香料;無機フィラー等が挙げられる。
分子量が1万〜2万の重合体、及び分子量が1000未満の重合体は、(D)成分を前記のような(メタ)アクリレート系の重合性単量体の重合により得た場合に混入してくることがある。分子量が1万〜2万の重合体の重合体は、硬化体に対して粘弾性を与える効果をほとんど有さないだけで、軟質裏装材用硬化性組成物中に存在しても最終的な硬化体の物性にあまり影響はないが、分子量が1000未満の重合体は、溶出しやすいため、このような重合体はできるだけ存在しない方が好ましく、本発明の軟質裏装材用硬化性組成物中に5質量%未満、好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%未満の存在量としたほうが良い。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物は、全成分が混合された状態で使用されるものであるが、保存安定性等を考慮して、適宜分割して包装された形態で製造、保存することができる。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物の一般的な保管もしくは使用温度、即ち、10〜50℃程度の温度下では、前記(A)成分及び(D)成分は液体であり、(B)成分は固体である。これら各成分の性状を考慮すると、以下に示す(い)〜(に)のような包装形態が挙げられる。
(い);(A)成分と(D)成分を含む液材と、(B)成分と(C)成分を含む粉材とからなり、(C)成分として加熱重合開始剤を用いた粉/液型の加熱重合型軟質裏装材用硬化性組成物。この場合には、使用時に液材と粉材とを所定量計り取り、混合・練和して均一のペースト状物もしくは餅状物を得、これを補修すべき義歯床上に築盛、直接口腔内あるいは石膏模型で必要な形状に賦形した後、加熱重合器等により硬化させる。
(ろ);(A)成分と(D)成分を含む液材と、(B)成分と含む粉材とからなり、(C)成分として常温重合開始剤を用い、かつ、該常温重合開始剤を構成する成分を液材と粉材に分けて配合した粉/液型の常温重合型軟質裏装材用硬化性組成物。この場合にも使用時に液材と粉材とを所定量計り取り、混合・練和して均一のペースト状物もしくは餅状物を得、これが硬化してしまう前に、補修すべき義歯床上に築盛、必要な形状に賦形する。常温重合開始剤を構成する成分を液材又は粉材のどちらか一方に全て配合してしまうと、該常温重合開始剤が分解してしまうため、粉材と液材に分割して包装する必要がある。
例えば有機過酸化物と第三級アミンの組み合わせからなる常温重合開始剤系では、有機過酸化物を粉材に、第三級アミンを液材にそれぞれ配合すると、特に優れた保存安定性を得ることができる。
(は);(A)成分、(B)成分及び(D)成分を含むペーストIと、やはり(A)成分、(B)成分及び(D)成分を含むペーストIIとからなり、(C)成分として常温重合開始剤を用い、かつ、該常温重合開始剤を構成する成分をペーストIとペーストIIとに分けて配合したペースト/ペースト型の常温重合型軟質裏装材用硬化性組成物。この場合には、混合前の形態が粉/液ではなく、ペースト/ペーストである以外は、上記(ろ)の包装形態と同様である。
(に);配合される全成分が混合された状態であり、かつ重合開始剤として光重合開始剤を用いる、1ペースト型の光重合型軟質裏装材用硬化性組成物。この場合には、遮光容器に入れるなどして光の当たらない条件下で保存しておけば、全成分が混合されていても通常の温度条件下では重合が始まることはない。一方、補修すべき義歯床上に築盛、必要な形状に賦形した後、光照射を行って硬化させればよい。光源としては、用いた光重合開始剤に合わせて適宜選択すればよく、各種水銀灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、キセノンランプ、アルゴンイオンレーザーなどを使用することができる。
包装形態が、粉/液型である場合には、液材と粉材との混合・練和性を良好なものとするために、(B)成分は、平均粒子径が0.1〜100μmの粉末であることが好ましい。
本発明の軟質裏装材用硬化性組成物の製造方法は、上記したような各包装形態にあわせて適宜設定すればよく、一般的には、各包装に配合される成分を所定量秤取り、均一になるまで混合や練和すればよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例で使用した各種略号はそれぞれ次のような化合物であることを意味する。
(A)成分:
単官能ラジカル重合性単量体:
Figure 2005206471
二官能ラジカル重合性単量体:
ND;1,9−ノナンジオールジメタクリレート(「ライトエステル1.9HD」共栄社化学)
HD;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(「ライトエステル1.6HX」共栄社化学)
(B)成分:
PBMA;ポリn−ブチルメタクリレート;重量平均分子量260000(2万〜200万の成分95%以上)。(根上工業社製「M6003」)
PEMA;ポリエチルメタクリレート;重量平均分子量500000(2万〜200万の成分95%以上)の粉末。(根上工業社製「EMA−35」)
P(BMA−st);ポリ(n−ブチルメタクリレート−スチレン)共重合体;重量平均分子量220000(2万〜200万の成分95%以上)、n−ブチルメタクリレート−スチレン共重合比85:15(モル比)。(根上工業社製「M6701」)
(C)成分:
BPO;ベンゾイルパーオキシド(川口工業)
PEAT;ジエチル−p−トルイジン(純正化学)
また以下の製造方法により各種重合体を製造した。D−1〜D−5を本発明における(D)成分として使用した。一方、分子量の異なるd−1、d−2及び水溶性であるd−3は本発明における(D)成分には相当しない。
製造例1
D−1(重量平均分子量2900のポリブチルアクリレート):トリ(n−ブチル)アルミニウムのトルエン溶液(1.0mol/l)2.1ml(2.1mmol)をトルエン40mlと混合し、−78℃に冷却した。これにt−ブチルリチウムのトルエン溶液(1.0mol/l)5.3ml(5.3mmol)を加え、数分間攪拌させた後、ブチルアクリレート16.1g(126mmol)を、反応系中の温度が上がらないように注意しながら加えた。この反応は窒素雰囲気下、標準的なシュレンク管中で行い、試薬の移動は注射器を用いて行った。トルエンはナトリウム上で還流した後、窒素雰囲気下で蒸留したものを用いた。ブチルアクリレートは塩基性アルミナカラム及びモレキュラーシーブス4Aのカラムを通して精製したものを用いた。24時間攪拌させた後、メタノールを加えて反応を停止させた。分液漏斗を用いて50%メタノール水溶液で洗浄した後120℃で真空乾燥して、11.6gの無色透明の液状化合物を得た(収率72%)。GPC測定したところ重量平均分子量が2900(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=1.15、であり、分子量1000以上10000以下のものが99%以上であった。
製造例2
D−2(重量平均分子量が8000のポリブチルアクリレート):トリ(n−ブチル)アルミニウムのトルエン溶液(1.0mol/l)0.76ml(0.76mmol)、t−ブチルリチウムのトルエン溶液(1.0mol/l)1.9ml(1.9mmol)を用いて上記方法で合成し、10.9gの無色透明の液状化合物を得た(収率68%)。GPC測定したところ重量平均分子量が8000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=1.15、であり、分子量1000以上10000以下のものが99%以上であった。
製造例3
d−1(重量平均分子量が300のポリブチルアクリレート):トリ(n−ブチル)アルミニウムのトルエン溶液(1.0mol/l)20ml(20mmol)、t−ブチルリチウムのトルエン溶液(1.0mol/l)50ml(50mmol)を用いて上記方法で合成し、8.7gの無色透明の液状化合物を得た(収率54%)。GPC測定したところ重量平均分子量が300(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=1.15、であり、分子量1000以上のものは含まれていなかった。
製造例4
d−2(重量平均分子量が17000のポリブチルアクリレート):トリ(n−ブチル)アルミニウムのトルエン溶液(1.0mol/l)50μl(50μmol)、t−ブチルリチウムのトルエン溶液(1.0mol/l)124μl(124μmol)を用いて上記方法で合成し、12.3gの無色透明の液状化合物を得た(収率76%)。GPC測定したところ重量平均分子量が17000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=1.14、であり、分子量10000以下のものは含まれていなかった。
製造例5〜8
製造例1の方法に準じ、表1に示す割合で混合した重合性単量体を用いて重合反応を行い、収率65〜70%で共重合体を得た。用いた重合性単量体の比と、得られた重合体の物性を表1に示した。
Figure 2005206471
(その他使用材料)
ソフリライナーMS;ソフリライナーミディアムソフト(シリコーン系軟質裏装材、トクヤマデンタル社製)
各種物性は以下の方法により測定した。
(1)硬化体の硬度の測定方法:
硬度はJIS−K7215(デュロメータ タイプA)に基づいて測定した。
(2)クリープ試験:
クリープ試験は粘弾性測定装置「CVO−120HR(BOHLIN社製)」を用いて行い、60秒間の応力印加後にその応力を開放した時の変形(回復)量が定常値に達するまでの時間によって以下のように評価した。
○:0.01秒以上の時間を要して変形(回復)
×:0.01秒よりも短い時間で変形(回復)
なお、CVO−120HRによる試験条件は、クリープモードで印加応力5000Paであり、直径20mmパラレルプレート(材質:SUS)を用い、ギャップ1000μm、プレート温度23℃で試験を行った。
(3)耐久性:
耐久性は直径8mm、厚さ12mmの硬化体10個に対して、荷重負荷試験機「サーボパルサー(SHIMADZU社製)」を用いて咬合圧に相当する圧力(0.30MPa)を37℃水中で連続的に1000000回負荷させた後の硬化体の硬度及び変形率より評価した。なお、サーボパルサーによる試験条件は、疲労試験プログラムで最大荷重14N、最小荷重0.1N、周波数1.2Hz、正弦波に基づく荷重負荷である。また変形率pは以下の式より算出した。
p=(a−b)/a×100 (%)
式中aは試験前の試験片の高さを、bは負荷試験後の試験片の高さをそれぞれ示している。得られたpを、◎:変形率5%未満、○:変形率10%未満、△:変形率30%未満、×:変形率30%以上として示した。
実施例1
(A)成分のラジカル重合性単量体であるAE−1とNDの質量比1:1の混合物100質量部に対して、(D)成分であるD−1を300質量部、(C)成分の一部として重合開始助剤としてPEATを0.3質量部、重合禁止剤としてメトキシハイドロキノン(和光純薬製)0.025質量部を溶解させて液材を調製した。別途、(B)成分であるPBMAの粉末100質量部に対して、(C)成分の一部としてBPO0.075質量部を加えてよく分散させて粉材を調製した。
上記液材と粉材を、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が50質量部になるように計量・混合してペースト状とした。このペーストを径8mm×高さ12mmモールドに流しいれ、37℃のインキュベーターで10分間硬化させた後、37℃水中に24時間浸漬させ、硬度試験用硬化体及び耐久性評価用硬化体をそれぞれ得た。この硬化体について各種物性を測定した結果を表2に示した。
Figure 2005206471
実施例2〜13
用いた成分を表2に記載のように変化させた以外は、実施例1と同様にして硬化体を得、各種物性を測定した。結果を表2に示した。表2に示したように、いずれの組成物の硬化体も軟質裏装材用組成物として適した軟質性(硬度60以下)を有していると同時に、耐久性評価においても硬度変化及び変形が少なく、良好な結果を示していることがわかった。
比較例1、2
実施例1において、D−1の代わりにジブチルフタレート(東京化成)又はジブチルセバケート(東京化成)を用い、その他は実施例1と同様に硬化体を作成し評価した。表2に結果を示しているように、これらは初期の物性には優れているが、耐久性試験において硬度変化及び変形率が大きく、耐久性に乏しいことがわかった。
比較例3
実施例1において、D−1に代えて、平均分子量が300で、分子量が1000以上の成分を含まないd−1を用い、その他は実施例1と同様に硬化体を作成し評価した。表2に結果を示しているように、これは初期の物性には優れているが、耐久性試験において硬度変化及び変形率が大きく、耐久性に乏しいことがわかった。
比較例4
実施例1において、D−1に代えて、平均分子量が17000で、分子量が1000以下の成分を含まないd−2を用い、その他は実施例1と同様に硬化体を作成し評価した。表2に結果を示しているように、得られた硬化体は硬いままであり、液状重合体の分子量を上げると軟質効果が得られなくなることがわかった。
比較例5
実施例1において(D)成分であるD−1を配合せず、その他は実施例1と同様に硬化体を作成し評価した。表2に結果を示しているように、得られた硬化体は硬く、軟質裏装材として使用できないものであった。
比較例6
実施例1において(B)成分を配合せず、その他は実施例1と同様に硬化体を作成し評価した。硬化前の組成物には粘度が低く極めて流動性の高い液体であり、ペースト状もしくは餅状にならなかったため、裏装材として用いることができないものであった。
比較例7
実施例1において、D−1に代えて、水溶性の化合物であるd−3を用い、その他は実施例1と同様に硬化体を作成し評価した。表2に結果を示しているように、耐久性試験において硬度変化及び変形率が大きく、耐久性に乏しいことがわかった。
比較例8
シリコーン系軟質裏装材「ソフリライナーMS」ペーストを径8mm×高さ12mmモールドに流しいれ、37℃のインキュベーターで10分間硬化させた後、37℃水中に24時間浸漬させ、硬度試験用硬化体及び耐久性評価用硬化体をそれぞれ得た。それぞれ評価した結果を表1に示した。
表2に結果を示しているように、クリープ試験において印加応力解放後に瞬時に変形が戻っており、応力に対する変形挙動が本発明の材料とは異なることがわかった。

Claims (3)

  1. (A)ラジカル重合性単量体、(B)分子量が2万〜500万の重合体、及び(C)重合開始剤を含んでなる、義歯床を裏装する際に用いる組成物であって、該組成物は、さらに(D)
    (1)分子量が1000〜10000の範囲にあり、
    (2)前記(A)成分と相溶性があり、
    (3)非水溶性であり、且つ
    (4)前記(A)成分と共重合しない
    化合物を含むことを特徴とする軟質裏装材用硬化性組成物。
  2. (D)成分が、(メタ)アクリレート系単量体の単独重合体或いは共重合体、又は(メタ)アクリレート系単量体と(メタ)アクリレート系単量体以外の単量体との共重合体である請求項1記載の軟質裏装材用硬化性組成物。
  3. (A)成分100質量部に対して、(D)成分が40〜4000質量部の範囲で配合されており、且つ(B)成分が、(A)成分と(D)成分の合計100質量部に対して、30〜300質量部の範囲で配合されている請求項1又は2記載の軟質裏装材用硬化性組成物。
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