JP2005204803A - Pcb処理方法およびpcb処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 PCB含有物を有する廃棄物からPCBを乾留によって分離させると共に、その分離されるPCBを乾留およびアルカリ反応によって脱塩素化させるPCB処理方法及びPCB処理装置を提供すること。
【解決手段】 PCBを略27.4%含んだPCB含有物が略32kgf混入した変圧器は略48kgfのプラスチック廃材と共に乾留炉2内で略750℃にて乾留される。結果、PCBの濃度は略5.37%にまで低減され、PCB含有物は油分52となって回収される。油分52は生石灰及びアルミニウム金属粉末の添加剤が添加されて攪拌され、反応炉15の内部温度が略80℃に達すると、苛性ソーダ溶液55が添加される。この後、反応炉15では略380℃で反応処理が行われてPCBが更に脱塩素化され、PCBの濃度が略0.014%にまで低減される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、PCB含有物を有する廃棄物からPCBを分離させると共に、その分離されたPCBを脱塩素化して無害化させることができるPCB処理方法及びPCB処理装置に関するものである。
ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という)は、化学的に極めて安定で且つ高温での不燃性を有するため、過去に数多くの製品に多用されていた。ところが、約30年前、PCBが生体に対して極めて高い毒性を有することが明らかになると、それ以降はPCBの使用が全面的に中止されると共に、既存のPCBを無害化して廃棄処分する方法が現在の大きな問題となった。
PCBを無害化させる処理方法については以前より種々の提案がなされる一方で、その処理方法については「廃棄物処理と清掃に関する法律」で規制がなされている。かかる法ではPCB処理方法として、例えば、焼却処理法、アルカリ触媒化学分解法、化学抽出法、t−BuOK法、触媒水素化脱塩素化法、及び、超臨界水酸化法が規定されている。
特開平8−141107号公報 特開2000−70401号公報 特開平11−189671号公報 特開2003−56834号公報
しかしながら、上記した法定のPCB処理方法はいずれも一面では有効であるが、その反面では種々の問題点を抱えている。しかも、いずれのPCB処理方法についても、その設備コストなどの経済性まで考慮に入れると実用的ではなく、未だ経済的かつ機能的に有効なPCB処理方法が確立されていないという問題点がある。例えば、PCBは電気絶縁性があり且つ不燃性を有することから、大型コンデンサーや大型変圧器における電気絶縁材料として多用され、その使用されたPCBの総量は膨大なものである。
具体的にコンデンサーや変圧器には、トルエンなどの希釈油に高濃度(例えば略20%以上)でPCBを含有させたもの(以下「高濃度PCB含有物」という)が電気絶縁材料として使用されており、コンデンサーや変圧器などを廃棄処分する場合には高濃度PCB含有物中のPCBを無害化させる処理が必須条件となる。
高濃度PCB含有物を有するコンデンサーや変圧器の廃棄処分は、一般に、これらに使用される金属材料などの無機質系物質と高濃度PCB含有物とを分別した後に、高濃度PCB含有物ごとPCBの無害化処理が行われる。このため、PCBの無害化処理に当たってコンデンサーや変圧器を解体しつつ、高濃度PCB含有物を抜き取る必要があり、廃棄処分に伴う作業工程が煩雑となるという問題点がある。
しかも、コンデンサーや変圧器から抜き取られる高濃度PCB含有物は全体の略90%程度に止まり、残りの略10%程度の高濃度PCB含有物はコンデンサーや変圧器の構成部材に付着したまま残存してしまう。このため高濃度PCB含有物を抜き取った後、コンデンサーや変圧器の構成部材に付着した高濃度PCB含有物を洗浄用の油で洗浄して除去させる必要があり、かかる高濃度PCB含有物を完全に除去させるには大量の洗浄油の使用と作業時間とが必要となり、作業効率が低く処理コストも大きくなるという問題点がある。
加えて、上記したPCB処理方法によって、高濃度PCB含有物中のPCBに無害化の分解処理を施す場合には、高濃度PCB含有物を大量の希釈油で希釈して、極めて低濃度のPCB含有物にした状態でPCBを分解処理させるので、自ずと処理量や処理時間も大きくなり、更なるコスト高を招来してしまうという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、PCB含有物を有する廃棄物からPCBを乾留によって分離させると共に、その分離されるPCBを乾留およびアルカリ反応によって脱塩素化させるPCB処理方法及びPCB処理装置を提供することを目的としている。
この目的を達成するために請求項1記載のPCB処理方法は、密閉かつ低酸素雰囲気での乾留が可能な乾留炉内に、その乾留炉内の気体に接触させつつ、PCB含有物を有する被乾留物とその被乾留物中のPCB含有物の重量以上の水素供与物とを一緒に収容させる収容工程と、その収容工程の後、乾留炉を加熱して乾留炉の内部温度を乾留温度にまで上昇させて、その乾留温度の下で被乾留物及び水素供与物を熱分解させる熱分解工程と、その熱分解工程によって乾留炉から排出される乾留ガスを冷却して乾留ガスから油分を分離して採取する油採取工程と、その油採取工程によって採取された油分に生石灰及びアルミニウム金属粉末を添加して反応炉内に被分解物を生成する被分解物生成工程と、その生成された被分解物を反応炉内で密閉状態にて攪拌し、反応炉の内部温度が一次反応温度に達した場合に苛性ソーダ溶液を反応炉内へ供給する一次反応工程と、その一次反応工程の後、反応炉内で被分解物の攪拌を続けつつ、その反応炉を加熱して、その反応炉の内部温度を二次反応温度にまで上昇させて、その二次反応温度の下で反応ガスを発生させる二次反応工程と、その二次反応工程で発生した反応ガスを冷却して液状分解生成物を回収する回収工程とを備えている。
請求項2記載のPCB処理方法は、請求項1記載のPCB処理方法において、前記収容工程における水素供与物の収容重量はPCB含有物の重量の略1.2倍から略2.0倍であり、前記熱分解工程における乾留温度は略400℃から略800℃の範囲である。
請求項3記載のPCB処理方法は、請求項2記載のPCB処理方法において、前記一次反応工程における一次反応温度は略70℃から略100℃の範囲であり、前記二次反応工程における二次反応温度は略300℃から略400℃の範囲である。
請求項4記載のPCB処理方法は、請求項3記載のPCB処理方法において、前記二次反応工程では、反応炉の内部の気圧を略3.0kgf/cmから略4.5kgf/cmの範囲に調節させる。
請求項5記載のPCB処理方法は、請求項1から4のいずれかに記載のPCB処理方法において、前記収容工程では、水素供与物として生石灰、プラスチック廃材、若しくは廃タイヤ又はこれらを組み合わせたものを乾留炉内に収容させる。
請求項6記載のPCB処理装置は、内部に空間を有し、その空間内に存在する気体、PCB含有物を有する被乾留物、及び、その被乾留物中のPCB含有物の重量以上の水素供与物を一緒に収容可能で、且つ、その空間内にて密閉かつ低酸素雰囲気で乾留可能に形成される乾留炉と、その乾留炉を加熱してその乾留炉の内部温度を乾留温度にまで加熱し、その乾留温度を維持させる乾留加熱装置と、その乾留加熱装置により加熱される前記乾留炉から乾留ガスを導入して冷却し、その乾留ガスから油分を分離する油分離装置と、その油分離装置により分離された油分と共にその油分に添加される生石灰及びアルミニウム金属粉末を一緒に密閉状態にて収容可能に形成される反応炉と、その反応炉内で油分、生石灰、及び、アルミニウム金属粉末を含んだ被分解物を攪拌させる攪拌装置と、その攪拌装置により被分解物が内部で攪拌されている前記反応炉の内部温度が一次反応温度に達する場合に前記反応炉内へ苛性ソーダ溶液を供給する苛性ソーダ供給装置と、その苛性ソーダ供給装置により苛性ソーダ溶液が供給される前記反応炉の内部温度を二次反応温度にまで加熱してその二次反応温度を維持させる反応加熱装置と、その反応加熱装置の加熱に伴って前記反応炉内で気化したガスをその反応炉から導入させて冷却して液状分解生成物を回収する回収装置とを備えている。
請求項7記載のPCB処理装置は、請求項6記載のPCB処理装置において、請求項1から5のいずれかに記載のPCB処理方法を実行可能に形成されている。
本発明のPCB処理方法又は装置によれば、PCB含有物を有する被乾留物は、そのPCB含有物が乾留炉内の気体と接触するように水素供与物と共に乾留炉内に収容される。この収容後、乾留炉はその内部が密閉状態でかつ低酸素雰囲気とされて加熱される。この加熱によって乾留炉の内部温度は乾留温度にまで加熱され、この乾留温度が維持されると、乾留炉内で被乾留物が水素供与物と共に無酸素に近い状態にて熱分解される。
この乾留炉内での熱分解では、被乾留物が有するPCB含有物中のPCBに化合する塩素が水素供与物に化合している水素と置換され、PCBが脱塩素化されて比較的低分子状の無害な油分に分解される。もっとも、乾留炉内での熱分解によれば、被乾留物中のPCB含有物中のPCB全体のうち、その大部分が脱塩素化されて無害な油分となって気化されるが、その残りは未反応のまま有害なPCBの状態のまま気化させられる。なお、被乾留物中の有機系成分や、PCB含有物中のPCB以外の有機系成分も、乾留によって乾留炉内で気化される。
このように被乾留物が有するPCB含有物を含めた有機系成分が乾留時の熱によって気化されることによって、被乾留物の他の成分、具体的には金属類成分やその他の残渣などの無機質系成分から分離される。こうしてPCB含有物は、気化されて一旦は乾留ガスの一部となるが、その乾留ガスを冷却することで乾留ガスから分離されて油分として採取される。この採取された油分であるところのPCB含有物は、PCBを更に分解させるために反応炉内へ移される。
反応炉へ移された油分すなわち乾留後のPCB含有物には、生石灰及びアルミニウム金属粉末が添加される。この添加によって反応炉内には被分解物が生成され、かかる被分解物が反応炉内で攪拌される。かかる攪拌によって被分解物が反応して、その反応熱によって反応炉の内部温度が一次反応温度に達すれば、反応炉内へ苛性ソーダ溶液が更に徐々に供給されて、被分解物に苛性ソーダ溶液が添加される。
この添加後は、反応炉が加熱されて、反応炉の内部温度は、二次反応温度にまで加熱された後、その二次反応温度で維持される。すると、反応炉内ではアルミニウム金属粉末を触媒として被分解物のアルカリ反応が行われる。このアルカリ反応によって、反応炉内の油分に含まれるPCBは更に脱塩素化されて無害化され、他の無害な油分と共に、反応炉内で気化される。気化されたPCB含有物は、反応炉内の加熱によって一旦反応ガスの一部となるが、かかる反応ガスが冷却されると分離されて、液状分解生成物として回収される。
本発明によれば、乾留炉内で水素供与物と共にPCB含有物を乾留することによってPCB含有物中のPCBの大部分を脱塩化させ、更に、残りのPCBを反応炉内でのアルカリ反応させて分解させることで、PCBの分解除去率を大幅に向上させることができるという効果がある。しかも、PCB含有物が分離された被処理物の残りの成分、例えば金属類成分やその他の残渣などの無機質系成分も同時に回収できるという効果がある。
また、被乾留物が有するPCB含有物は、乾留炉における乾留により気化され被乾留物から分離されるので、被乾留物を予め解体せずとも、被乾留物からPCB含有物を除去できるという効果がある。よって、PCBを含んだ廃棄物、例えば、コンデンサーや変圧器などを分別処理する場合に、廃棄物からPCB含有物を手作業で抜き取らずともPCB含有物を採取できるので、廃棄物の分解作業を簡素化でき、PCB含有物を安全に回収できるという効果がある。
従って、廃棄物からPCB含有物を手作業で取り除く場合における希釈油などによるPCB含有物の更なる希釈化や、廃棄物に付着したPCB含有物の油洗浄が不要となるので、PCBを含む廃棄物の分解工程を簡素化できるという効果がある。特に、高濃度でPCBを含む廃棄物を処理する場合に、PCB含有物を極低濃度に希釈させる大量の希釈油も不要となり、且つ、廃棄物に付着したPCB含有物を洗浄させる大量の洗浄油も不要となるので、PCBを有する廃棄物の分解作業に伴うコストも低減できるという効果がある。
特に、請求項2記載のPCB処理方法又は、その方法が実行される請求項7記載のPCB処理装置によれば、例えば、略28重量%という高濃度でPCBが含まれるPCB含有物を有した被乾留物を乾留させるだけで、そのPCB全体の略80重量%から略90重量%を脱塩素化して、PCB含有物中のPCB濃度を略2%から略5%程度にまで低減できるという効果がある。
更に、請求項3記載のPCB処理方法又は、その方法が実行される請求項7記載のPCB処理装置によれば、例えば、略28重量%という高濃度のPCB含有物について、PCB濃度を略0.014%にまで低減させることができるという効果がある。従って、PCBの含有率を略28%から略0.014%にまで希釈させる場合にはPCB含有物の略200倍の重量にも及ぶ希釈油が使用されるのであるが、本発明によれば、かかる大量の希釈油も不要となるのである。
しかも、請求項5記載のPCB処理方法又は、その方法が実行される請求項7記載のPCB処理装置によれば、水素供与物として熱分解による反応性が比較的低い生石灰、プラスチック廃材、若しくは廃タイヤ又はこれらを組み合わせたものが用いられるので、乾留炉内で大量の水素ガスが急激に発生して爆発を生じることを防止できるという効果がある。また、水素供与物がプラスチック廃材や廃タイヤであれば、これらの廃材も、PCBと共に乾留させて無害化できるのである。
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明装置の一実施例であるPCB処理装置1の概略図である。図1に示すように、PCB処理装置1は、被乾留物を収容するための内部空間を有した乾留炉2を備えている。なお、PCB処理装置1では、その以下に説明する各部の動作、例えば、各部の始動時期及び停止時期、並びに温度条件などが図示しない制御装置によって制御される。
乾留炉2は、被乾留物50と水素供与物51とを一緒に密閉状態で収容し、それら被乾留物50及び水素供与物51を無酸素状態に近い低酸素雰囲気下にて乾留するためのものである。ここで、被乾留物50としては、PCB含有物を有する廃棄物、例えば、例えば、電気絶縁材料としてPCBをトルエンなどの希釈油で希釈させた絶縁油を使用したコンデンサー又は変圧器である。
また、水素供与物51とは、例えば、生石灰、若しくは、プラスチック廃材若しくは廃棄タイヤなどの炭化水素化合物の廃材、又はこれらのいずれかを組み合わせたものである。乾留炉2内には、被乾留物50が有するPCB含有物の重量に対して、その略1.2倍から略2.0倍の重量に相当する水素供与物51を収容可能なサイズに形成されている。
乾留炉2の上部には乾留炉2内を密閉状態に閉塞させるために開閉可能な開閉蓋3が取着されており、この乾留炉2は、加熱炉4の上部に嵌合されている。加熱炉4は、被乾留物50及び水素供与物51を熱分解させるため、乾留炉2の内部温度を乾留温度(略400℃から略800℃の範囲)にまで加熱して維持させるためのものであり、加熱炉4の底部には加熱用バーナ5が配設されている。

加熱用バーナ5は加熱炉4内を火炎で加熱するための燃焼装置であり、加熱炉4の外側となる乾留炉2の上部側面には、ガス導入管6の一端部が連結されている。ガス導入管6は、乾留炉2から排出される乾留ガスを流通させる配管であり、その他端部が油分離タンク7の上部側面に連結されている。ガス導入管6の中間部には乾留ガスの逆流防止装置6aが設けられており、この逆流防止装置6aによって油分離タンク7から乾留炉2への乾留ガスの逆流が防止されている。
油分離タンク7は、その内側上部にガス導入管6を通じて乾留ガスが導入される気体層7aが設けられており、その気体層7aの下方であって油分離タンク7の内側下部には、油分離タンク7へ導入した乾留ガスのうち、油分離タンク7への導入により冷却され液化した油分52が貯留される。
この油分離タンク7は、図示しない冷却装置から供給される冷媒によって強制的に冷却されており、この冷却によって乾留ガスの一部が液化されて油分52が抽出されるのである。なお、油分52は、油分離タンク7に開閉可能に設けられる取出し口(図示せず)から油分離タンク7の外へ取り出される。
ここで、油分52は、乾留ガスに含まれる不揮発性ガス成分が液化したものであり、PCBが脱塩素化され無害化された比較的低分子状の無害な油分と、脱塩素化されず未反応のままの有害なPCBとの混合物も含んでいる。また、油分52の上方にある気体層7aは、油分離タンク7の上部側面に一端部が連結されるガス導入管8とも連通されている。
ガス導入管8は、油分離タンク7で液化されず気体層7aに残留する乾留ガスの揮発性ガス成分をガス洗浄タンク9へ流通させる配管であり、ガス導入管6の連結部から離れた箇所にて油分離タンク7と連結されている。このガス導入管8は、その他端部がガス洗浄タンク9の底部に連結されており、油分離タンク7の気体層7aに残留する乾留ガスの揮発性ガス成分をガス洗浄タンク9の底部へ導入させる。
ガス洗浄タンク9は、その内側底部に乾留ガスを洗浄するための洗浄水53が貯留されており、油分離タンク7の気体層7aからガス導入管8を通じて導入された乾留ガスの揮発性ガス成分を洗浄水53中へ放出させて洗浄するものである。この洗浄によって、乾留ガスに含まれる不燃性ガス成分である塩化水素ガスが洗浄水53に水溶して塩酸となって捕捉される。また、洗浄水53の上方であってガス洗浄タンク9の内側上部には気体層9aが設けられており、この気体層9aには、洗浄水53に水溶せずに浮上した乾留ガスの可燃性ガス成分が貯留される。
ガス導入管10は、その一端部が気体層9aと連通するようにガス洗浄タンク9の側部に連結されており、ガス導入管10の他端部は、加熱炉4の底部に加熱用バーナ5と共に配設される加熱用バーナ11と連結されている。加熱用バーナ11は、ガス導入管10を通じてガス洗浄タンク9の気体層9aから導入される可燃性ガスを燃焼させて、加熱炉4内を加熱するための燃焼装置である。
反応炉15は、油分離タンク7に貯留される油分52を反応処理してPCBの濃度を低減させるものであり、その内部に被分解物54を密閉状態で収容可能な空間が設けられている。反応炉15の上部側面には開閉蓋16が開閉可能に取着されており、かかる開閉蓋16が開放させることで、油分52を反応炉15内へ投入することができ、生石灰及びアルミニウム金属粉末の添加剤を油分52へ添加できる。この投入及び添加によって、反応炉15内には、油分52と生石灰及びアルミニウム金属粉末の添加剤との混合物である被分解物54が、生成される。なお、図1では開閉蓋16の開放状態を2点鎖線で図示している。
反応炉15の内部には、羽根状の旋回体である攪拌部材17が配設されており、この攪拌部材17の旋回中心部には回転軸18の下端部が連結されている。回転軸18は、その上端部が反応炉15外の上部に配設される駆動装置19と連結されており、この駆動装置19の駆動によって回転されて攪拌部材17を反応炉15内で旋回させることができる。なお、駆動装置19には、例えば、減速機を有する電動モータが使用される。
反応炉15の上部には、駆動装置19の他に、反応炉15内へ苛性ソーダ溶液55を供給させる給液管20の一端部が連結されており、この給液管20の他端部には苛性ソーダ溶液55が充填された苛性ソーダ供給タンク21が連結されている。給液管20には、その給液管20の流路を開閉させる開閉弁(図示せず)が配設されており、かかる開閉弁を開閉させることによって、苛性ソーダ供給タンク21から反応炉15へ供給される苛性ソーダ溶液55の供給量を適宜調節させることができる。
なお、苛性ソーダ溶液は、反応炉15の内部温度が一次反応温度(略70℃から略100℃の範囲)に達すると、反応炉15へ徐々に少量ずつ供給される。
一方、反応炉15の底部には、その反応炉15を加熱する加熱ヒータ22が配設されている。この加熱ヒータ22は、苛性ソーダ溶液55の添加後、反応炉15の底部を加熱して反応炉15の内部温度を二次反応温度(略300℃から略400℃の範囲)にまで加熱して維持させるためのものである。加熱ヒータ22による加熱とその後の温度維持とによって、反応炉15内では、被分解物54に含まれる油分52中のPCBの脱塩素化反応が促進される。この加熱によって反応して気化したガスは、反応炉15の内側下部に収容される固体成分の上方にある気体層15aに放出され、かかる気体層15aからガス導入管23を通じて排出される。
ガス導入管23は、反応炉15の気体層15aにある反応ガスを流通させて冷却タンク24へ導入させる配管であり、その一端部が気体層15aに連通して反応炉15の上部に、その他端部が冷却タンク24の側部上側に、それぞれ連結されている。このガス導入管23には安全装置23aが設けられており、この安全装置23aは、反応炉15内部の気圧を適正気圧(略3.0kgf/cmから略4.5kgf/cmの範囲)に維持するためのものである。
この安全装置23aによれば、反応炉15内が適正気圧に達するまではガス導入管23の流路を閉塞させ、一旦、反応炉15内が適正気圧を超えると、ガス導入管23の流路を開放させて、反応炉15内の反応ガスを冷却タンク25へ排出させて、反応炉15内を適正気圧となるように逐次調節させる。
冷却タンク24は、反応炉15から排気される反応ガスを冷却するためのものであり、その内側上部にガス導入管23を通じて反応ガスが導入される気体層24aが設けられている。気体層24aの下方であって冷却タンク24の内側下部には、気体層24aへ導入に伴う反応ガスの冷却によって、その反応ガスの状態から液化された油状の液状分離生成物56が貯留される。ここで、冷却タンク24は図示しない冷却装置から供給される冷媒によって強制的に冷却されているので、気体層24aへ導入した反応ガスの冷却を行うことができる。
また、冷却タンク24の上部にはガス導入管25の一端部が連結されており、このガス導入管25は気体層24aに連通されている。このガス導入管25は、冷却タンク24の気体層24aにあるガスを流通させて気液分離タンク26へ導入させる配管であり、その他端部が気液分離タンク26の上部側面に連結されている。
気液分離タンク26は、その上流部分26a(図1左側)と下流部分26b(図1右側)とが隔壁26cによって隔離されており、この隔壁26cの下端面とタンク26の底面との間に設けられる間隙26dのみを通じて上流部分26a及び下流部分26bが連通されている。間隙26dは、気液分離タンク26の上流部分26a及び下流部分26bの双方の内側下部に貯留される液体57に沈下されている。
このように構成された気液分離タンク26の上流部分26aは、液体57よりも上方でこのガス導入管25と連通されている。このため、ガス導入管25を通じて気液分離タンク26の上流部分26aへ導入された反応ガスは、下流部分26bへ移動する場合、液体57中の間隙26dを通じて下流部分26bへ排出される。よって、液体57中を通過する際に反応ガスに含まれる油分や水分は除去される。
気液分離タンク26の下流部分26b側であって液体57の上方の空間にはガス導入管27が連通されており、このガス導入管27を介して、気液分離タンク26とガス洗浄タンク28とが連結されている。ガス洗浄タンク28は、上記したガス洗浄タンク9と同様に内側下部に洗浄水58が貯留されており、気液分離タンク26の下流部分26bからガス導入管28を通じて導入された反応ガスの揮発性ガス成分を洗浄水58中へ放出させて洗浄するものである。
この洗浄によって、反応ガスに含まれる不燃性ガス成分である塩化水素ガスが洗浄水58に水溶して塩酸となって捕捉される。また、洗浄水58の上方であってガス洗浄タンク28の内側上部には気体層28aが設けられており、この気体層28aには、洗浄水58に水溶せずに浮上した反応ガスの可燃性ガス成分が貯留される。この反応ガスの可燃性ガス成分は、ガス導入管29を通じてガス洗浄装置30の内部に収容される活性炭層(図示せず)を通過した後、ガス洗浄装置30から排出される。
次に、本発明方法の一実施例である上記したPCB処理装置1を使用したPCB処理方法について説明する。まず、乾留炉2の開閉蓋3が開放され、乾留炉2内に被乾留物50と水素供与物51が一緒に収容される。ここで、被乾留物50として、PCBを略27.4%含むPCB含有物が略32kgf混入された変圧器(トランス)を収容させるものとし、かかる変圧器のケース体の蓋部分は除去された状態とされる。変圧器内に混入されるPCB含有物を乾留時に気化させて乾留炉2内へ放出させるためである。また、水素供与物51として、被乾留物50のPCB含有物の重量の1.5倍の略48kgfのプラスチック廃材を収容させる。
被乾留物50及び水素供与物51の収容後、開閉蓋3が閉塞され、乾留炉2が密閉かつ低酸素雰囲気とされる。そして、加熱用バーナ5が点火されると、加熱炉4内部が加熱され、この加熱炉4内の熱で乾留炉2の底部が加熱され、乾留炉2の内部温度が乾留温度にまで加熱される。ここで、乾留温度としては略750℃が設定される。乾留炉2が乾留温度に達すると、その乾留温度に乾留炉2内の温度を乾留が終了するまでの間維持させる。なお、本実施例では乾留終了までに略7時間30分間を要した。
この間に、乾留炉2内では被乾留物50のPCB含有物と水素供与物51であるプラスチック廃材とが熱分解され、その熱分解によって発生した乾留ガスは、ガス導入管6を通じて油分離タンク7の気体層7aへ導入される。気体層7a内で乾留ガスは冷却され、乾留ガスに含まれていたPCB含有物が液状の油分52として、油分離タンク7の底部に貯留される。この油分52となったPCB含有物には、脱塩素化されて無害となった油分と未反応のままのPCBとが含まれるが、PCBの濃度は略5.37%にまで低減される。
油分離タンク7の冷却でも液化されない乾留ガス中の揮発性ガス成分は、気体層7aを上流側から下流側へ移動し、ガス導入管8を通じてガス洗浄タンク9の底部から洗浄水53中へ放出される。この放出によって、揮発性ガス成分に含まれる塩化水素は、洗浄水53に水溶され塩酸となって捕捉される。一方、洗浄水53に溶解されずに通過した乾留ガスの可燃性ガス成分は、ガス洗浄タンク9の気体層9aに貯留され、ガス導入管10を通じて加熱用バーナ11へ供給され燃焼される。
油分離タンク7に採取された油分52は回収され、開閉蓋16が開放された反応炉15へ投入される。また、反応炉15内へは生石灰及びアルミニウム金属粉末の添加剤も投入され、油分52に添加される。ここで、油分52には、略4kgfの生石灰と、略0.500kgfのアルミニウム金属粉末とが添加剤として添加され、この添加によって被分解物54が生成される。この後、開閉蓋16は閉塞され反応炉15が密閉状態とされる。そして、駆動装置19が稼動されると、回転軸18が回転されて、攪拌部材17が反応炉15内で旋回され、この旋回する攪拌部材17によって被分解物54が攪拌される。
この攪拌によって被分解物54の温度が上昇して、反応炉15の内部温度が略80℃の一次反応温度にまで達すると、攪拌部材17の旋回を継続させながら、苛性ソーダ供給タンク21から給液管20を通じて苛性ソーダ溶液55が少量ずつ反応炉15内へ供給される。この供給によって、苛性ソーダ溶液55は被分解物54に添加され、攪拌部材17の旋回によって混合される。
また、一次反応温度に達すると、反応炉15は加熱ヒータ22によって外部から加熱され、反応炉15の内部温度は略380℃の二次反応温度まで上昇された後、その二次反応温度で反応処理が終了するまでの間(略4時間)維持される。この間に、反応炉15内では被分解物54のアルカリ反応がアルミニウム金属粉末を触媒として行われ、油分52のPCBが脱塩素化される。この反応によって発生した反応ガスは気体層15aに貯留され、反応炉15内の気圧は、安全装置23aによって略3.8kf/cmの適正気圧に維持される。
一方、反応炉15内の気圧が略3.8kf/cmを越えると安全装置23aによってガス導入管23の流路が開放され、反応ガスが反応炉15からガス導入管23を通じて冷却タンク24の気体層24aへ導入されて冷却される。この冷却によって、反応ガスに含まれるPCB含有物は、液化して油状となった液状分解生成物56として冷却タンク24の内側下部に貯留される。この液状分解生成物56であるPCB含有物はPCBの濃度が略0.014%にまで低減されている。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、本実施例では、本実施例では被乾留物50として変圧器を例に説明したが、被乾留物50は必ずしもこれに限定されず、コンデンサなどのPCB含有物を有する装置や、高濃度でPCBを含むPCB自体であっても良い。
また、本実施例では、水素供与物51としてプラスチック廃材を例に説明したが、水素供与物は必ずしもこれに限定されるものではなく、PCBに化合する塩素と置換させる水素を有して水素の発生速度が低速なものであれば、生石灰、若しくは廃タイヤ、又は生石灰、プラスチック廃材、若しくは廃タイヤを組み合わせたものであっても良い。
また、本実施例では、PCB処理方法としてPCB含有物の略1.5倍の重量に相当する水素供与物51を用いる場合について説明したが、水素供与物の使用重量はPCB含有物の重量の略1.2倍から略2.0倍であれば良い。更に、反応炉15内の適正気圧は略3.8kgf/cmに限定されず、略3.0kgf/cmから略4.5kgf/cmの範囲であれば良い。
また、本実施例では、乾留温度を略750℃に、一反応温度を略80℃に、二次反応温度を略380℃に設定したが、乾留温度は略400℃から略800℃の範囲であれば良く、一次反応温度は略70℃から略100℃の範囲であれば良く、二次反応温度は略300℃から略400℃の範囲であれば良い。
本発明装置の一実施例であるPCB処理装置の概略図である。
符号の説明
1 PCB処理装置
2 乾留炉
4 加熱炉(乾留加熱装置の一部)
5 加熱用バーナ(乾留加熱装置の一部)
7 油分離タンク(油分離装置)
11 加熱用バーナ(乾留加熱装置の一部)
15 反応炉
17 攪拌部材(攪拌装置の一部)
18 回転軸(攪拌装置の一部)
19 駆動装置(攪拌装置の一部)
20 給液管(苛性ソーダ供給装置の一部)
21 苛性ソーダ供給タンク(苛性ソーダ供給装置の一部)
22 加熱ヒータ(反応加熱装置)
24 冷却タンク(回収装置の一部)
26 気液分離タンク(回収装置の一部)
50 被乾留物
51 水素供与物
52 油分
54 被分解物
55 苛性ソーダ溶液
56 液状分解生成物

Claims (7)

  1. 密閉かつ低酸素雰囲気での乾留が可能な乾留炉内に、その乾留炉内の気体に接触させつつ、PCB含有物を有する被乾留物とその被乾留物中のPCB含有物の重量以上の水素供与物とを一緒に収容させる収容工程と、
    その収容工程の後、乾留炉を加熱して乾留炉の内部温度を乾留温度にまで上昇させて、その乾留温度の下で被乾留物及び水素供与物を熱分解させる熱分解工程と、
    その熱分解工程によって乾留炉から排出される乾留ガスを冷却して乾留ガスから油分を分離して採取する油採取工程と、
    その油採取工程によって採取された油分に生石灰及びアルミニウム金属粉末を添加して反応炉内に被分解物を生成する被分解物生成工程と、
    その生成された被分解物を反応炉内で密閉状態にて攪拌し、反応炉の内部温度が一次反応温度に達した場合に苛性ソーダ溶液を反応炉内へ供給する一次反応工程と、
    その一次反応工程の後、反応炉内で被分解物の攪拌を続けつつ、その反応炉を加熱して、その反応炉の内部温度を二次反応温度にまで上昇させて、その二次反応温度の下で反応ガスを発生させる二次反応工程と、
    その二次反応工程で発生した反応ガスを冷却して液状分解生成物を回収する回収工程とを備えていることを特徴とするPCB処理方法。
  2. 前記収容工程における水素供与物の収容重量はPCB含有物の重量の略1.2倍から略2.0倍であり、
    前記熱分解工程における乾留温度は略400℃から略800℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載のPCB処理方法。
  3. 前記一次反応工程における一次反応温度は略70℃から略100℃の範囲であり、
    前記二次反応工程における二次反応温度は略300℃から略400℃の範囲であることを特徴とする請求項2記載のPCB処理方法。
  4. 前記二次反応工程では、反応炉の内部の気圧を略3.0kgf/cmから略4.5kgf/cmの範囲に調節させることを特徴とする請求項3記載のPCB処理方法。
  5. 前記収容工程では、水素供与物として生石灰、プラスチック廃材、若しくは廃タイヤ又はこれらを組み合わせたものを乾留炉内に収容させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のPCB処理方法。
  6. 内部に空間を有し、その空間内に存在する気体、PCB含有物を有する被乾留物、及び、その被乾留物中のPCB含有物の重量以上の水素供与物を一緒に収容可能で、且つ、その空間内にて密閉かつ低酸素雰囲気で乾留可能に形成される乾留炉と、
    その乾留炉を加熱してその乾留炉の内部温度を乾留温度にまで加熱し、その乾留温度を維持させる乾留加熱装置と、
    その乾留加熱装置により加熱される前記乾留炉から乾留ガスを導入して冷却し、その乾留ガスから油分を分離する油分離装置と、
    その油分離装置により分離された油分と共にその油分に添加される生石灰及びアルミニウム金属粉末を一緒に密閉状態にて収容可能に形成される反応炉と、
    その反応炉内で油分、生石灰、及び、アルミニウム金属粉末を含んだ被分解物を攪拌させる攪拌装置と、
    その攪拌装置により被分解物が内部で攪拌されている前記反応炉の内部温度が一次反応温度に達する場合に前記反応炉内へ苛性ソーダ溶液を供給する苛性ソーダ供給装置と、
    その苛性ソーダ供給装置により苛性ソーダ溶液が供給される前記反応炉の内部温度を二次反応温度にまで加熱してその二次反応温度を維持させる反応加熱装置と、
    その反応加熱装置の加熱に伴って前記反応炉内で気化したガスをその反応炉から導入させて冷却して液状分解生成物を回収する回収装置とを備えていることを特徴とするPCB処理装置。
  7. 請求項1から5のいずれかに記載のPCB処理方法を実行可能に形成されていることを特徴とする請求項6記載のPCB処理装置。
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