JP2005200774A - 蓄光繊維およびそれを用いた釣り糸および漁具 - Google Patents

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Abstract

【課題】
暗所での優れた発行特性と明所での優れた視認性とを兼ね備え、さらに耐吹かれ性が高く、沈降速度が高い蓄光繊維を提供する。
【解決手段】
芯成分と被覆成分から構成され、比重1.4〜2.0、引張強度2.8〜6.5GPa、引張弾性率50〜600GPaの有機合成繊維からなる芯成分が蓄光剤10〜50重量%を含有してなる熱可塑性合成樹脂により被覆形成され、繊維軸に垂直な断面における芯成分の面積割合が50〜95%の複合繊維であることを特徴とする蓄光繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、光による外部刺激により発光し、この外部刺激を取り除いた後でも暗所で残光を持続して自己発光する性能を有する蓄光繊維に関するものであり、さらに詳しくは、暗所での優れた発光特性と、高弾性率、高比重である蓄光繊維、および前記蓄光繊維の釣り糸や漁具などに代表される用途に関するものである。
光による外部刺激により発光し、この外部刺激を取り除いた後でも暗所で残光を持続して自己発光する性能を有する発光性合成繊維は、従来から夜釣り用釣り糸やカーペットなどの用途において広く利用されている。
発光特性が優れるアルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料を使用した発光繊維および発光釣り糸が従来から知られており、例えば、熱可塑性合成樹脂に式Srm Aln Om+3n/2(但し、m≧2、n≧3)で表されるアルミン酸ストロンチウムを含有させた組成物を少なくとも一部の構成成分とする繊維からなる釣り糸、もしくは合成繊維の表面に上記アルミン酸ストロンチウムを含有する樹脂コーティング層を形成させた釣り糸が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
上記釣り糸はポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなることを特徴としたものである。
しかし、ポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなる釣り糸は弾性率が低いため魚が餌を銜えた時の感覚(所謂当たり)がわかりにくい。また、樹脂コーティング層自体は釣り糸の強度を担っていないため、それぞれの樹脂単独成分からなる釣り糸と比較すると低強度となり釣り糸としては不適である。
一方、ポリエチレン樹脂でも特に超高分子量ポリエチレンからなる釣り糸は高弾性率であるため高感度であり、また、元々の強度が高いため、樹脂コーティングによる釣り糸としての強度の低下があっても使用に十分耐えたれるものとなる。
しかしながら超高分子量ポリエチレンからなる釣り糸は比重が水よりも小さく(0.97)、波や風で糸自体が流され(所謂吹かれ)やすい。また、糸の沈降速度も小さいため目的とする魚が存在する棚に針がたどり着く前に狙った種類以外の魚(所謂雑魚)に餌を食べられるという問題がある。
また、特許文献1以外にも蓄光顔料をポリマーへ練り込んだ糸、または蓄光顔料を含む樹脂を糸の表面にコーティングした糸が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら上記提案で得られる繊維は強度が低く、釣り糸や漁網、漁網用アンカーロープなど強度を要求される用途への適用は困難である。
特開2002−125548号公報 特開2000−83564号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の課題として検討した結果、達成されたものである。
すなわち、本発明の目的は、暗所での長時間持続可能な発光特性に加え、高弾性率であることによる当たりの取りやすさと高比重である蓄光繊維およびこれらの特性による吹かれにくさを備えた、特に夜釣り用に適した釣り糸や漁網、漁網用アンカーロープに代表される漁具を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の物性を有する有機合成繊維からなる芯に特定の蓄光性蛍光体を含有する樹脂を被覆した釣り糸が、上記の目的に合致するものであることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は以下の構成からなる。
(1)繊維軸に垂直な断面における芯成分の面積割合が50〜95%、被覆成分の面積割合が5〜50%の複合繊維であって、複合繊維であって、該芯成分が比重1.4〜2.0、引張強度2.8〜6.5GPa、引張弾性率50〜600GPaの有機合成繊維からなり、その表面が平均粒径(累積粒度分布率50%(D50))が3.0〜20.0μmの範囲にある蓄光剤10〜50重量%を含有してなる熱可塑性合成樹脂で被覆形成されていることを特徴とする蓄光繊維。
(2)前記蓄光剤がアルミ酸化物のアルカリ土類金属塩に希土類をドープさせてなり、かつ蓄光剤のレーザー回折散乱法により測定した平均粒径(累積粒度分布率50%(D50))が3.5〜5.0μmの範囲にあることを特徴とする(1)に記載の蓄光繊維。
(3)前記芯成分を構成する有機合成繊維が全芳香族ポリアミド繊維または全芳香族ポリエステル繊維であることを特徴とする(1)または(2)のいずれか1項に記載の蓄光繊維。
(4)前記被覆成分を構成する熱可塑性合成樹脂がフッ素系樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の蓄光繊維。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の蓄光繊維を少なくとも一部に使用したことを特徴とする釣り糸。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の蓄光繊維を少なくとも一部に使用したことを特徴とする漁具。
本発明の蓄光繊維は、高強度、高弾性率であるうえに、光による外部刺激により発光し、この外部刺激を取り除いた後でも暗所で残光を持続して自己発光し、比重が大きく水中での沈降速度が高い蓄光繊維およびこれらの特性を生かした水中での吹かれが小さい夜釣り用に好適な釣り糸や漁網、漁網用アンカーロープに代表される漁具を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の蓄光繊維は有機合成繊維の表面が蓄光剤を含有した樹脂で被覆形成されたものであり、芯成分となる有機合成繊維は比重1.4〜2.0、引張強度2.8〜6.5GPa、引張弾性率50〜600GPaの特性を有する有機合成繊維である。
芯成分を構成する有機合成繊維は、例えば釣り糸で使用する際に要求される良沈降性、耐吹かれ性を維持するために比重1.4〜2.0であることが重要である。比重が1.4未満では釣り糸の沈降速度が遅く、釣り人が餌を投下してから目標とする深さ(所謂タナ)まで餌が到達する時間がかかるため、雑魚に餌を食べられる恐れがある。また、比重が1.4未満では風や潮、波によって釣り糸が流されやすくなり好ましくない。一方、比重が2.0より大きい場合、沈降速度や耐吹かれ性は良好であるが、樹脂被覆されて得られた釣り糸の自重が大きくなることにより取り扱いづらくなるため好ましくない。
また、芯成分を構成する有機合成繊維の引張強度は2.8〜6.5GPaであることが重要である。引張強度が2.8GPa未満では樹脂被覆されて得られた釣り糸の強度が低下するため好ましくない。一方、引張強度が6.5GPaより大きい有機合成繊維は現在の技術では得ることが困難である。
また、芯成分を構成する有機合成繊維の引張弾性率は50〜600GPaであること重要である。引張弾性率が50GPa未満では魚の当たりがわかりづらくなり低感度な釣り糸になる。一方、引張弾性率が600GPaより大きい場合は高感度ではあるが、釣り人が当たりを関知して竿を引き上げる動作(所謂合わせ)を行ったときに竿先にかかる負荷が大きく、竿先を破損する恐れがあるため好ましくない。
本発明の芯成分を構成する上記の特性を満たす有機合成繊維としては、例えば全芳香族ポリアミドの乾湿式紡糸で得られるパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン(株)製ケブラー(登録商標)、テイジン・トワロン(株)製トワロン(登録商標)、帝人(株)製テクノーラ(登録商標))、全芳香族ポリエステルの溶融液晶紡糸で得られる全芳香族ポリエステル繊維(クラレ(株)製ベクトラン(登録商標))、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールの液晶紡糸で得られるPBO繊維(東洋紡(株)製ザイロン(登録商標))、PAN系炭素繊維(東レ(株)製トレカ(登録商標)、東邦テナックス(株)製ベスファイト(登録商標))、ピッチ系炭素繊維(三菱化成(株)製ダイアリード(登録商標))などが挙げられるが、上記の特性を満たす限りこれらに限定されるものではない。
本発明の蓄光繊維における被覆成分は蓄光性能を担うものであり、強度、引張弾性率、伸度などの機械的物性はほとんど担っていない。すなわち本発明の蓄光繊維の機械的物性は、繊維全体に対する芯成分の比率に依存する。よって本発明の蓄光繊維において繊維軸に垂直な断面における芯成分の面積割合(芯成分比率)は50〜95%であることが重要である。芯成分比率が50%未満では被覆繊維の機械的物性が不足するため好ましくない。一方、芯成分比率が95%を越えると蓄光性能を担う被覆成分量が不足し発光特性が低下するため好ましくない。
本発明における被覆成分は平均粒径(累積粒度分布率50%(D50))が3.0〜20.0μmの範囲にある蓄光剤を10〜50重量%含有してなる熱可塑性樹脂である。本発明において、平均粒径(累積粒度分布率50%(D50))とはレーザー回折散乱法により測定した平均粒径(累積粒度分布率50%(D50))をいい、その測定方法は具体的には後述するとおりである。
蓄光剤の平均粒径(累積粒度分布率50%(D50))が20.0μm以上であると、表面の凹凸が大きく平滑性に劣るものとなり、また、被覆樹脂の流動性が劣るため安定生産が困難となる。一方、3.0μm以下であると、溶融時に蓄光剤粒子同士が凝集してしまう結果、一部が粗大粒となり、表面の凹凸が大きく平滑性に劣るものとなる。
蓄光剤の含有量は10重量%未満では発光性能が不足するため好ましくない。一方、50重量%を越えると樹脂の流動性が著しく低下し、均一に被覆できない。
本発明における蓄光剤はアルミ酸化物のアルカリ土類金属塩に希土類をドープさせてなる、蓄光性蛍光体の1種であり、光による外部刺激により発光し、この外部刺激を取り除いた後でも暗所でかなりの時間にわたって残光を肉眼で認めることができる性能を有するものが好ましく、蓄光剤自体は公知のものである。
たとえば式MAl2 O4、式Mm Aln Om+3n/2(但し、m≧2、n≧3)の組成で表される。ここでMはCa(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)から選ばれる少なくとも1つのアルカリ土類金属である。
なお、上記式MAl2 O4、式Mm Aln Om+3n/2(但し、m≧2、n≧3)で表されるアルミ酸化物のアルカリ土類金属塩には、さらに賦活剤として希土類元素であるEu(ユウロピウム)および/またはDy(ジスプロシウム)および/またはNd(ネオジム)を、Mに対しモル比で0.001〜10%ドープされているものが、発光輝度が高いことから特に好ましく使用される。
さらに、上記の式MAl2 O4、式Mm Aln Om+3n/2(但し、m≧2、n≧3)で表されるアルミ酸化物のアルカリ土類金属塩は、これをエタノール中に分散させてレーザー回折散乱法により測定した平均粒径(累積粒度粒径分布率50%(D50)が3.0〜20.0μm、好ましくは3.5〜5.0μmの範囲の微粒子である。3.0μm未満では粒子が凝集してしまい好ましくない。一方、20.0μmを越えると釣り糸の表面凹凸が大きくなり好ましくない。
また、上記の式MAl2 O4、式Mm Aln Om+3n/2(但し、m≧2、n≧3)で表されるアルミ酸化物のアルカリ土類金属塩の中でも、特に式SrAl2O4、CaAl2O4、Sr4 Al14O25で表される化合物が、発光輝度や製造コストの面から好ましく使用される。
このようなアルミ酸化物のアルカリ土類金属塩の具体例としては、SrAl2O4では例えば根本特殊化学(株)製N夜光ルミノーバ(登録商標)G−300FF、CaAl2O4では例えば根本特殊化学(株)製N夜光ルミノーバ(登録商標)V−300M、Sr4 Al14O25では例えば根本特殊化学(株)製N夜光ルミノーバ(登録商標)BG−300Fなどが該当するが、これに限定されるものではない。
ここで、上記の式MAl2 O4、式Mm Aln Om+3n/2(但し、m≧2、n≧3)を構成するAl(アルミニウム)の一部をB(ホウ素)に置き換えることなどは、通常行われている範囲内で可能である。
また、m、nは通常は整数であるが、SrとAlの比の異なった化合物を混合することもあり、必ずしも整数である必要はない。
本発明において前記蓄光剤を含有させる熱可塑性合成樹脂について特に制限はなく、例えばポリフッ化ビニリデン(以下、PVdF)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデンの3元共重合体(以下、THV)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などのフッ素樹脂類。ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン。ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類またはその共重合体。ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートおよびポリブチレン(サクシネート/アジペート)共重合体などの生分解性ポリエステル。ナイロン6、ナイロン66、ナイロンMXD6、ナイロン610、ナイロン612、6/66共重合体などのポリアミド樹脂またはその共重合体。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン類。ポリカーボネート類、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSという)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、液晶ポリエステルなどの溶融形成できる熱可塑性合成樹脂が挙げられる。
中でもフッ素系樹脂は熱可塑性合成樹脂の中では比較的比重が大きく、また、撥水性、耐摩耗性、低摩擦性などの優れた特性を持つものが多く被覆樹脂として特に好ましい。
なお、前記蓄光剤を含有する熱可塑性合成樹脂は、公知の方法、たとえば2軸混練押出機やドウミキサーなどにより溶融状態で混練することにより得られる。
ここで本発明の蓄光繊維の製造方法について述べる。
本発明の蓄光繊維は、エクストルーダー型押出機、クロスヘッド、ダイス、ニップル、ブレーカープレートからなる一般的な電線被覆装置を用いて有機合成繊維の表面にアルミ酸化物のアルカリ土類金属塩を含有する熱可塑性合成樹脂を溶融被覆する方法により効率的に製造される。
また、被覆装置は一定張力で芯成分となる有機合成繊維を送り出す繰り出し機、芯成分である繊維と被覆成分との接着性を高めるために被覆部の直前で繊維を加熱するヒーター、被覆した熱可塑性合成樹脂を冷却・固化するための冷却水槽、繊維表面に油剤を付与するための油剤付与装置、一定速度で巻き取ることのできる巻取り機も備えている。さらに被覆された釣り糸の肉厚や外径を測定し、その結果をフィードバックして樹脂吐出量を自動調整する機構を備えることで長さ方向の直径均一性が高い被覆繊維を生産できる。
溶融被覆する際の各種条件は使用する熱可塑性合成樹脂によって異なるが、ポリマー温度は100〜400℃、押出圧力1〜30MPa、被覆速度1〜1000m/分、冷却水温5〜90℃などの条件を適宜選択することができる。
ところで芯となる有機合成繊維の形態は無加工(フラットヤーン)、撚糸加工、製紐加工など、いずれの状態であってもよい。
このようにして得られる本発明の蓄光繊維は、光による外部刺激により発光し、この外部刺激を取り除いた後でも暗所で残光を持続して自己発光し、さらに高比重、高強度という特性を兼備していることから、仕掛けの沈降性が飛躍的に向上し、夜釣り用釣り糸、漁網や漁網用アンカーロープとして極めて有用である。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、実施例における蓄光繊維の評価は以下の方法に準じて行った。
[直径]
アンリツ(株)製レーザー外径測定機”KL−151A”を使用した。繊維300mを30m/分の速度で計測部を走行させることにより測定し平均直径を算出した。
[引張強伸度、引張弾性率]
JIS−L1013の規定に準じて、試料を20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置後、(株)オリエンテック社製“テンシロン”UTM−4−100型引張試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で強力−伸度曲線を求め強度を算出した。
[比重]
比重測定機((株)島津製作所製”SGM300P”)を使用し、施行回数5回の平均値を採用した。
[沈降速度]
JIS−L1034の規定に準じて、30mmの長さにカットしたサンプルをピンセットで挟み、直径が200mm、高さ500mmのガラス容器の中に入れた蒸留水中に、水面に平行の状態でサンプルを離し、サンプルが落下する時間をストップウォッチで測定して速度に換算した。水中落下の際、サンプルが水面に対して垂直になったものは測定から除外した。
[発光性(残光輝度)]
JIS−Z8720の規定に準じて、蓄光繊維をD65常用光源400lxの光で20分間照射した後、その光源を取り除き60分間経過した時点での蓄光繊維の残光輝度(mcd/m2 )を測定した。残光輝度(mcd/m2 )の数値が大きいほど発光性が優れる。なお、通常肉眼の視感度は残光輝度が0.3mcd/m2 までといわれるが、夜釣り用の釣り糸として用いる場合、15mcd/m2以上あることが実用上好ましいことから、15mcd/m2以上を良好とした。
[平均粒径(累積粒度分布率50%(D50)]
樹脂に添加する前の蓄光剤を、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製SALD−2100)を使用し、測定した。
(実施例1)
東レ・デュポン(株)製のパラ系アラミド繊維”ケブラー29”220dtexを2本引き揃えて、リング撚糸機で、124t/m(より方向S)の下撚りを与えた後、この下撚り糸を2本合わせて、65t/m(より方向Z)の上撚りを与えて撚り糸A1を得た。
ASTM−D2116の規定に準じて測定されるメルトフローレートが7g/10分(372℃)であるFEP(三井・デュポンフロロケミカル(株)製テフロン(登録商標)FEP 100−J)に、根本特殊化学(株)製”N夜光ミルノーバBG−300FF”(Sr4Al14O25:Eu,Dy)を20重量%含有させた樹脂組成物B1を得た。
樹脂組成物B1を、エクストルーダー型押出機で樹脂温度が350℃となるように加熱・押出し、クロスヘッド部で撚り糸A1に溶融被覆し蓄光繊維C1を得た。被覆条件を表1、蓄光繊維C1の各物性測定結果を表3に示す。
(実施例2)
クラレ(株)製の全芳香族ポリエステル繊維”ベクトランHT”220dtex4本をブレード角度19度で製紐し、組み紐A2を得た。
組み紐A2に実施例1に記載の樹脂組成物B1を実施例1と同様の方法で溶融被覆し蓄光繊維C2を得た。被覆条件を表1、蓄光繊維C2の各物性測定結果を表3に示す。
(実施例3)
ASTM−D2116の規定に準じて測定されるメルトフローレートが7g/10分(372℃)であるFEP(三井・デュポンフロロケミカル(株)製テフロン(登録商標)FEP”100−J”)に、根本特殊化学製”N夜光ミルノーバBG−300FF”(Sr4Al14O25:Eu,Dy)を40重量%含有させた樹脂組成物B2を得た。
樹脂組成物B2を、エクストルーダー型押出機で樹脂温度が350℃となるように加熱・押出し、クロスヘッド部で実施例1に記載の撚り糸A1に溶融被覆し蓄光繊維C3を得た。被覆条件を表1、蓄光繊維C3の各物性測定結果を表3に示す。
(実施例4)
東洋紡績(株)製のポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維”ザイロンAS”555dtexをリング撚糸機で、124t/m(より方向S)の下撚りを与えた後、この下撚り糸を2本合わせて、65t/m(より方向Z)の上撚りを与えて撚り糸A3を得た。
実施例1に記載の樹脂組成物B1を、エクストルーダー型押出機で樹脂温度が350℃となるように加熱・押出し、クロスヘッド部で撚り糸A3に溶融被覆し蓄光繊維C4を得た。被覆条件を表1、蓄光繊維C4の各物性測定結果を表3に示す。
(実施例5)
東レ(株)製の炭素繊維”トレカM60JB”1030dtexをリング撚糸機で、120t/mの下撚りを与え、撚り糸A4を得た。
実施例1に記載の樹脂組成物B1を、エクストルーダー型押出機で樹脂温度が350℃となるように加熱・押出し、クロスヘッド部で撚り糸A4に溶融被覆し蓄光繊維C5を得た。被覆条件を表1、蓄光繊維C4の各物性測定結果を表3に示す。
(実施例6)
ASTM−D1238の規定に準じて測定されるメルトフローレートが120g/10分(230℃、5kg)であるPVdF(SOLVAY製「SOLEF1006」)に、根本特殊化学製”N夜光ミルノーバG−300FF”(SrAl2O4:Eu,Dy)を20重量%含有させた樹脂組成物B3を得た。
樹脂組成物B3を、エクストルーダー型押出機で樹脂温度が260℃となるように加熱・押出し、クロスヘッド部で実施例1に記載の撚り糸A1に溶融被覆し蓄光繊維C3を得た。被覆条件を表1、蓄光繊維C3の各物性測定結果を表3に示す。
(実施例7)
実施例2に記載の組み紐A2と実施例6に記載の樹脂組成物B3を実施例7と同様の方法で溶融被覆し蓄光繊維C7を得た。被覆条件を表1、蓄光繊維C4の各物性測定結果を表3に示す。
(比較例1)
東洋紡(株)製の超高分子量ポリエチレン繊維”ダイニーマSK60”220dtex4本をブレード角度19度で製紐し、組み紐a1を得た。
組み紐a1に実施例3に記載の樹脂組成物B2を、溶融温度以外は実施例3と同様の方法で溶融被覆し蓄光繊維c1を得た。被覆条件を表2、蓄光繊維c1の各物性測定結果を表4に示す。
(比較例2)
ASTM−D2116の規定に準じて測定されるメルトフローレートが7g/10分(372℃)であるFEP(三井・デュポンフロロケミカル(株)製テフロン(登録商標)FEP 100−J)に、根本特殊化学製”N夜光ミルノーバG300FF”(SrAl2O4:Eu,Dy、)を5重量%含有させた樹脂組成物b1を得た。
実施例1に記載の撚り糸A1に樹脂組成物B2を、エクストルーダー型押出機で樹脂温度が350℃となるように加熱・押出し、クロスヘッド部で撚り糸A1に溶融被覆し蓄光繊維c2を得た。被覆条件を表2、蓄光繊維c2の各物性測定結果を表4に示す。
(比較例3)
ASTM−D2116の規定に準じて測定されるメルトフローレートが7g/10分(372℃)であるFEP(三井・デュポンフロロケミカル(株)製テフロン(登録商標)FEP 100−J)に、根本特殊化学製”N夜光ミルノーバG300FF”(SrAl2O4:Eu,Dy)を55重量%含有させた樹脂組成物b2を得た。
実施例1に記載の撚り糸A1に樹脂組成物b2を、エクストルーダー型押出機で樹脂温度が350℃となるように加熱・押出し、クロスヘッド部で撚り糸A1に溶融被覆した。しかしながら被覆樹脂の流動性が悪くダイス部で閉塞してしまい蓄光繊維を製造できなかった。
(比較例4)
実施例1に記載の撚り糸A1と樹脂組成物B1を、実施例1と同様の方法で溶融被覆し、蓄光繊維c3を得た。ただし、実施例1で得られた蓄光繊維C1とは芯成分比率が異なる。被覆条件を表2、蓄光繊維c3の各物性測定結果を表4に示す。
(比較例5)
実施例1に記載の撚り糸A1と樹脂組成物B1を、実施例1と同様の方法で溶融被覆し、蓄光繊維c4を得た。ただし、実施例1で得られた蓄光繊維C1とは芯成分比率が異なる。被覆条件を表2、蓄光繊維c4の各物性測定結果を表4に示す。
(比較例6)東レ(株)製のポリエチレンテレフタレート繊維(560dtex−96fir)をリング撚糸機で、124t/m(より方向S)の下撚りを与えた後、この下撚り糸を2本合わせて、65t/m(より方向Z)の上撚りを与えて撚り糸a2を得た。
撚り糸a2に実施例3に記載の樹脂組成物B2を実施例3と同様の方法で溶融被覆し蓄光繊維c5を得た。被覆条件を表2、蓄光繊維c5の各物性測定結果を表4に示す。
(比較例7)
ASTM−D2116の規定に準じて測定されるメルトフローレートが7g/10分(372℃)であるFEP(三井・デュポンフロロケミカル(株)製テフロン(登録商標)FEP 100−J)に、根本特殊化学(株)製”N夜光ミルノーバBG−300M”(Sr4Al14O25:Eu,Dy)を20重量%含有させた樹脂組成物b3を得た。
実施例1に記載の撚り糸A1に樹脂組成物b3を、エクストルーダー型押出機で樹脂温度が350℃となるように加熱・押出し、クロスヘッド部で撚り糸A1に溶融被覆し蓄光繊維C1を得た。被覆条件を表1、蓄光繊維c6の各物性測定結果を表4に示す。
(比較例8)
ASTM−D2116の規定に準じて測定されるメルトフローレートが7g/10分(372℃)であるFEP(三井・デュポンフロロケミカル(株)製テフロン(登録商標)FEP 100−J)に、根本特殊化学(株)製”N夜光ミルノーバG−300FFS”(SrAl2O4:Eu,Dy)を乳鉢で粉砕・微粉末化したものを20重量%含有させ、樹脂組成物b4を得た。
実施例1に記載の撚り糸A1に樹脂組成物b4を、エクストルーダー型押出機で樹脂温度が350℃となるように加熱・押出し、クロスヘッド部で撚り糸A1に溶融被覆し蓄光繊維C1を得た。被覆条件を表1、蓄光繊維c7の各物性測定結果を表4に示す。
表2から明らかなように、実施例1〜7の蓄光繊維は、いずれも高強度であり残光輝度が高く、視認性に優れている。また、沈降速度も速い。
これに対し比較例1の蓄光繊維は、繊維の比重が1.0以上であるが沈降速度が遅い。さらに強度が低い。これは溶融被覆時の熱により芯ポリエチレンが強度低下したためである。
また、比較例6の蓄光繊維は芯が他の実施例で用いたものと比較して強度、弾性率共に低いため、低強度、低弾性率となった。
一方、比較例2の蓄光繊維は、高強度であり沈降速度も速いが、残光輝度が低いものであった。
比較例4の蓄光繊維は残光輝度が高く、視認性に優れているが強度が低いものであった。
比較例5の蓄光繊維は高強度だが、残光輝度が低いものであった。
比較例7の蓄光繊維は蓄光剤の平均粒径(累積粒度分布率50%(D50))が29.3μmと大きく、表面の凹凸が大きく平滑性に劣るものであった。また、粒子径が大きく被覆樹脂の流動性が劣るため安定生産が困難であった。
比較例8の蓄光繊維は蓄光剤の平均粒子径(累積粒度分布率50%(D50))が1.7μmと小さく、溶融時に蓄光剤粒子同士が凝集してしまい、一部が粗大粒となり表面の凹凸が大きく平滑性に劣るものであった。
(実施例8)
実施例1に記載の蓄光繊維1本を夜釣り用道糸として使用した。
闇夜でも仕掛けを投入した場所がわかりやすく、また、吹かれにくいため竿捌き性は良好であった。さらに沈降速度が速いため雑魚に餌を食べられにくく、釣果は良好であった。
(実施例9)
実施例2に記載の蓄光繊維1本を夜釣り用道糸として使用した。
闇夜でも仕掛けを投入した場所がわかりやすく、また、吹かれにくいため竿捌き性は良好であった。さらに沈降速度が速いため雑魚に餌を食べられにくく、釣果は良好であった。
(実施例10)
実施例3に記載の蓄光繊維1本を夜釣り用道糸として使用した。
闇夜でも仕掛けを投入した場所がわかりやすく、また、吹かれにくいため竿捌き性は良好であった。さらに沈降速度が速いため雑魚に餌を食べられにくく、釣果は良好であった。
(実施例11)
実施例4に記載の蓄光繊維1本を夜釣り用道糸として使用した。
闇夜でも仕掛けを投入した場所がわかりやすく、また、吹かれにくいため竿捌き性は良好であった。さらに沈降速度が速いため雑魚に餌を食べられにくく、釣果は良好であった。
(比較例9)
比較例2に記載の蓄光繊維1本を夜釣り用道糸として使用した。
闇夜での視認性は良好であったが、吹かれ易いため竿捌き性に劣るものであった。また、沈降速度が遅く、雑魚に餌を食べられてしまうため、釣果は不良であった。
(実施例12)
実施例1に記載の蓄光繊維C1を4本用いて通常の方法によって、竪型無結節編網機を用いて目合い150mmの無結節定置網を製造した。
網糸の直線強力は680Nと高く、また漁網の比重は1.75であり、定置網としての強度、耐吹かれ性にも優れたものであった。さらに得られた定置網により漁を行ったところ、視認性に優れており船上での取り扱いが良好であった。
(実施例13)
実施例2に記載の蓄光繊維(C2)を3本用いて、通常の方法により三つ打ち構造のロープを製造した。
ロープの直径は0.75mm、直線強力は590Nと高く、暗所における視認性に優れた高強度ロープであった。
以上説明したように、本発明の蓄光繊維は釣り糸や漁網、漁網用アンカーロープなどの漁具として使用したときに高強度であるうえに、光による外部刺激により発光し、この外部刺激を取り除いた後でも暗所で残光を持続して自己発光し、比重が大きく沈降速度が高いため水中での吹かれが小さいといった夜釣りに好適な特性を有する釣り糸や漁網、漁網用アンカーロープなどの漁具を提供できる。
Figure 2005200774
Figure 2005200774
Figure 2005200774
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本発明の実施態様の一例の繊維軸に垂直な断面図である。 本発明の蓄光繊維を製造するための電線被覆装置概略図である。 本発明の蓄光繊維を製造するための電線被覆装置クロスヘッド部の拡大図である。
符号の説明
1.被覆成分(熱可塑性合成樹脂)
2.芯成分(有機合成繊維)
3.送り出し機
4.送り出しロール
5.加熱ヒーター
6.クロスヘッド
7.冷却水槽
8.巻取りロール
9.油剤付与ロール
10.巻取り機
11.エクストルーダー型押出機
12.ブレーカープレート
13.ニップル
14.ダイス

Claims (6)

  1. 繊維軸に垂直な断面における芯成分の面積割合が50〜95%、被覆成分の面積割合が5〜50%の複合繊維であって、該芯成分が比重1.4〜2.0、引張強度2.8〜6.5GPa、引張弾性率50〜600GPaの有機合成繊維であり、該被覆成分が平均粒径(累積粒度分布率50%(D50))が3.0〜20.0μmの範囲にある蓄光剤10〜50重量%を含有してなる熱可塑性合成樹脂からなることを特徴とする蓄光繊維。
  2. 前記蓄光剤がアルミ酸化物のアルカリ土類金属塩に希土類をドープさせてなり、かつ蓄光剤の3.5〜5.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の蓄光繊維。
  3. 前記有機合成繊維が全芳香族ポリアミド繊維または全芳香族ポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の蓄光繊維。
  4. 前記被覆成分を構成する熱可塑性合成樹脂がフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄光繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄光繊維を少なくとも一部に使用したことを特徴とする釣り糸。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄光繊維を少なくとも一部に使用したことを特徴とする漁具。
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