JP2005199386A - メカノケミカル研磨・研削方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 被加工物の研磨、切削速度の向上と、マイクロクラック発生の抑制や、表面粗さの改善を同時に達成することができるメカノケミカル研磨・研削方法を提供する。
【解決手段】 被加工物に対して圧縮気体と共に噴射粒体を噴射して、被加工物を研磨、切削するブラスト加工において、
前記噴射粒体として、被加工物に対する反応(メカノケミカル反応)性を有し、かつ、被加工物と反応して機械的に脆弱な生成物を生成する反応成分を含む反応性粒体を噴射する。
【選択図】 なし
【解決手段】 被加工物に対して圧縮気体と共に噴射粒体を噴射して、被加工物を研磨、切削するブラスト加工において、
前記噴射粒体として、被加工物に対する反応(メカノケミカル反応)性を有し、かつ、被加工物と反応して機械的に脆弱な生成物を生成する反応成分を含む反応性粒体を噴射する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、圧縮気体と共に噴射粒体を被加工物に吹き付けて研磨や切削を行うメカノケミカル研磨・研削方法に関し、より詳細には、マイクロクラックの発生を抑制し、表面粗さを改善しつつ加工時間を短縮することができるメカノケミカル研磨・研削方法に関する。
被加工物を研磨、切削する方法として、圧縮空気等の圧縮気体と共に噴射粒体である研磨材を噴射して被加工物を研磨、切削するブラスト加工方法は公知である。
このブラスト加工方法は、研磨や切削を行う被加工物と同等以上の硬度を有する研磨材を、噴射ガンより圧縮気体と共に噴射することで、この研磨材の切削力と運動エネルギーにより被加工物の表面を機械的に削り取る加工方法であり、例えば被加工物の材質がガラスの時、アルミナ(アランダムA、ホワイトアランダムWA)、カーボランダム(カーボランダムC、グリーンカーボランダムGC)、ジルコニア、酸化ケイ素、ダイヤモンド、スチールなどの研磨材を噴射して加工が行われている。
また、被加工物の研磨方法としては、前述のブラスト加工の他、ラッピング等による研磨も公知であり、このラッピングにおいても前記ブラスト加工と同様に砥粒等により機械的に被加工物の表面を削り取ることにより、被加工物の表面を例えば鏡面等に加工している。
なお、ラッピングによる研磨にあっては、砥粒が被加工物の表面を機械的に削り取ることにより、被加工物の表面に微小なスクラッチが生じ、また、加工変質層が被加工物の機械的強度の低下等を引き起こす点に鑑み、被加工物の表面にスクラッチや加工変質層を生じさせることなく高精度の鏡面加工を行う方法として、所謂「メカノケミカル研磨」がある。
このようなメカノケミカル研磨の方法として、後掲の特許文献1には、被加工物との反応性に富む粒子をラップ工具と被加工物間に例えばラップ液等と共に供給し、被加工物と前記粒子との接触点で摩擦エネルギーによって被加工物と前記粒子とを反応させて機械的に脆弱な生成物を生ぜしめ、この生成物を摩擦力によって除去する研磨方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、前述の如きメカノケミカル研磨において、研磨効率を促進するために、ラップ液として反応効率を向上させ得る薬液を使用することにより、研磨能率の向上を図ったものもある(特許文献2参照)。
なお、本明細書において、被加工物と反応して機械的に脆弱な生成物を生じさせる成分を「反応成分」と、このような反応成分を含む粒体を「反応性粒体」といい、該反応性粒体中の反応成分と被加工物との反応により生成された物質を「反応生成物」という。
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
特公昭56−23746号公報(第1−2頁)
特開2001−205555号公報(第6−10頁)
前述のように、研磨材が機械的に被加工物の表面を削り取ることにより研磨・切削を行う既知のブラスト加工方法において、その加工速度を向上しようとする場合、噴射される研磨材の運動エネルギーを大きくすることが考えられ、このような運動エネルギーの向上を目的として、噴射ガンより噴射される圧縮気体の流速を上昇させて研磨材の噴射速度を上げることも考えられる。
しかし、研磨材の運動エネルギーは、物体(研磨材)の質量をM、速度をVとすると、(1/2)MV2 に等しく、質量(M)が一定の研磨材を用いて運動エネルギーを2倍にするためには、研磨材の速度(V)を約1.4倍にする必要があり、このような速度(V)を得るためには、これに対応した流速の圧縮気体を発生し得るブラスト加工装置が必要となる。
また、研磨材の運動エネルギーを変更することなく加工速度を向上する方法としては、ブラスト加工装置に複数の噴射ガンを設置し、これらの複数の噴射ガンより同時に研磨材を噴射することにより加工速度を向上させることも考えられる。
この方法によれば、増加する噴射ガンの数に比例して加工速度を向上させることができるものの、噴射ガンの数が増加すればする程、ブラスト加工装置が高価となり、また、研磨材の使用量が増加する等、加工の際のコストが嵩むという問題点がある。
さらに、前述のブラスト加工にあっては、噴射された研磨材の運動エネルギーにより、被加工物の表面に衝突した研磨材が被加工物の表面を切削することにより研磨を行うものであるために、硬質で、かつ、脆性を有する材料であるガラス、石英などの被加工物に対してブラスト加工を行う場合、研磨材の衝突により表面に多数の微小なクラック(マイクロクラック)が発生する。
このようなマイクロクラックは、被加工物の破壊の起点となり材料強度を著しく劣化させると共に、被加工物表面の脆性破壊を伴うブラスト加工では、加工面の表面粗さも粗くなるという問題を有する。
このようにして発生したマイクロクラックや、表面粗さの低下を解消するために、例えば被加工物がガラスの場合には、これをブラスト加工した後、被加工物の表面にフッ酸による化学的エッチングを施すことで、マイクロクラックの除去と表面粗さの改善を図ることも行われている。しかし、このような化学的エッチングを行う場合には、加工のための工程数が増加するだけでなく、フッ酸の使用による環境問題への充分な配慮が必要となる。そのため、このようなフッ酸処理を行うことなく、マイクロクラックの発生を抑制でき、かつ、表面粗さの改善を行うことができるブラスト加工方法への要望は大きい。
一方、前述のメカノケミカル研磨によれば、被加工物の表面にスクラッチや加工変質層を生じさせることなく鏡面に研磨することができる。しかし、メカノケミカル研磨の前提を成す、前述の反応性粒体と被加工物との反応は、被加工物の表面と反応性粒体との接触点において発生する摩擦エネルギーに基づくものであるため、このメカノケミカル研磨はラッピング装置のような摩擦エネルギーを発生させることのできる装置を使用した研磨方法においてのみ実施されているのが現状である。
そのため、メカノケミカル研磨を行うためには比較的大掛かりな装置が必要であると共に、これにより行うことができる加工は被加工物の研磨に限定され、例えば被加工物に穿孔や溝を形成する等の切削加工に使用することはできない。
また、この方法により研磨をすることができる被加工物の形状も、ラッピング装置による研磨に対応し得るものに限定される。
さらに、前述のメカノケミカル研磨は、ラップ工具と被加工物間に反応性粒子を供給して摩擦エネルギーを与えるものであることから、これを乾式で行う場合には、研磨により除去された反応生成物や、反応後の反応性粒子等がラップ工具と被加工物表面間に研磨屑として溜まりやすく、そのために時間の経過と共に研磨速度が遅くなるという問題がある。
そのため、反応性粒体の供給は、通常ラップ液と共に行っているが、ラップ液の供給により被加工物と反応性粒体間の摩擦エネルギーが減少して加工速度が遅くなり、前掲の特許文献2に記載の研磨方法のようにラップ液として反応効率を向上させ得る薬液等を使用する必要が生じている。
本発明は、上記従来技術における欠点を解消するためになされたもので、被加工物の研磨、切削速度の向上と、マイクロクラック発生の抑制や、表面粗さの改善を同時に達成することができ、しかも、該加工を施す被加工物の形状等による制約がなく、また、乾式で行うことができる、メカノケミカル反応を利用した研磨・切削加工を、ブラスト加工方法という比較的簡易な方法により提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のメカノケミカル研磨・研削方法は、被加工物に対して圧縮気体と共に噴射粒体を噴射するブラスト加工により、前記噴射粒体として、被加工物に対する反応性を有し、かつ、被加工物と反応して機械的に脆弱な生成物を生成する反応成分を含む反応性粒体を用いることを特徴とする(請求項1)。
前記噴射粒体の噴射は、好ましくは80m/s以上の流速の圧縮気体により行う(請求項2)。
前記メカノケミカル研磨・研削方法において、前記反応性粒体に含有される前記反応成分は、これを金属酸化物とすることができ(請求項3)、酸化セリウム、酸化クロム、酸化マンガン、硫酸バリウム、酸化ニッケル中より選択されたいずれか1以上の成分を前記反応成分とすることができる(請求項4)。
また、前記反応性粒体としては、前記反応成分を50wt%以上含有するものを使用する(請求項5)。
前述のメカノケミカル研磨・研削方法において、被加工物に対して噴射される噴射粒体として前述の反応性粒体のみを噴射するものとしても良いが、前記反応性粒体と共に、既知の研磨材を噴射するものとしても良い(請求項6)。
この場合、前記研磨材として前記反応性粒体以上の質量を有するものを使用することが好ましい(請求項7)。
また、前記研磨材は、被加工物の硬度以下の硬度のものを使用するものとしても良い(請求項8)。
以上の構成を備えた本発明のメカノケミカル研磨・研削方法によれば、反応性粒体の衝突による被加工物の機械的な研磨、切削のみならず、メカノケミカル反応による化学的な研磨、切削が行われるために、両者の相乗効果により加工速度を飛躍的に向上させることができると共に、被加工物の機械的強度を低下させる原因となるマイクロクラックの発生をも抑制することができ、また、加工後の被加工物の表面粗さについてもこれを改善することができた。
特に、噴射粒体として前述の反応性粒体と共に研磨材を噴射する構成にあっては、被加工物に対する機械的な研磨、切削作用を向上させることができると共に、研磨材として反応性粒体以上の質量を有するものを使用することにより、メカノケミカル反応の反応性を向上させることができ、その結果、より一層の加工速度の向上を得ることができた。
また、メカノケミカル反応を利用した研磨、切削をブラスト加工により行うことにより、従来のラッピングによる加工によっては行うことができなかった複雑な形状の被加工物に対しても加工を施すことができ、また、被加工物の研磨のみならず、被加工物に穿孔を形成し、又は溝を形成する等の切削作業においても、マイクロクラック等の発生を抑制しつつ、かつ、表面粗さの改善された加工を比較的短時間で行うことができた。
次に、本発明の実施形態につき以下説明する。
本発明のメカノケミカル研磨・研削方法は、前述のようなラッピングによる研磨時に加えられる摩擦エネルギーのみならず、反応性粒体に対して所定の運動エネルギーを与え、これを被加工物に対して衝突させた際にも反応を引き起こさせることができることを見出すことによりなされたもので、被加工物に対する反応性(メカノケミカル反応性)を有する金属酸化物等の反応物質を含有する反応性粒体を、一例として80m/s以上の流速の圧縮気体と共に被加工物に対して噴射することにより、被加工物を研磨、切削するものである。
このような反応性粒体の噴射により、噴射された反応性粒体が被加工物の表面に衝突すると、被加工物の表面温度は理論解析によると衝突後0.1μsで最大値1500Kに達し、被加工物の表面温度は瞬時に高温になる。そしてこのようにして発生した熱が、反応性粒体と被加工物との反応(メカノケミカル反応)を生じさせる。
このようにして発生した熱は、急激に冷却されてその温度は低下するが、被加工物の表面には噴射ガンより噴射された反応性粒体が連続して衝突しているために、継続的に化学反応を起すに必要な熱量を確保できるものとなっている。
従って、反応性粒体と被加工物との衝突点において、前述のメカノケミカル反応により機械的に脆弱な反応生成物が生成され、この反応生成物が順次被加工物に衝突する反応性粒体によって削り取られて除去されると共に、被加工物との衝突により新たに反応生成物を生じさせ、この作業が繰り返されて被加工物の研磨、切削が行われる。
また、噴射された反応性粒体は、既知のブラスト加工における研磨材と同様に被加工物の表面に衝突してこれを機械的に切削する作用をも有している。
このように、本発明方法は、メカノケミカル作用を利用することにより、従来のブラスト加工のように噴射された研磨材がその運動エネルギーにより被加工物の表面を削り取ることのみにより行われる加工ではなく、化学的作用をも併用した加工である。このため加工速度の向上とともに衝突エネルギーによる被加工物表面でのクラック発生頻度が少なくなり材料強度が向上する。
また、前述のように圧縮空気と共に反応性粒体を噴射することにより、被加工物の表面には常に新たな反応性物質が衝突すると共にメカノケミカル作用により発生した反応生成物や反応性粒体は、被加工物の表面に滞留することなく順次除去されているために、従来技術として説明したラッピングによる研磨の場合のように反応性粒体を供給するに際してラップ液等を伴う必要がなく、メカノケミカル研磨を乾式によっても好適に行うことができる。
このように、反応性粒体の供給にラップ液等を伴う必要がないことから、反応性粒体と被加工物との衝突点において発熱が生じ易く、反応性粒体の衝突エネルギーによる発熱によってメカノケミカル反応を生じさせるに必要な発熱をブラスト加工により比較的容易に得ることができるものとなっている。
一例として、被加工物をガラスとし、この被加工物に対して反応性粒体として酸化セリウム(CeO2)を噴射する場合、モース硬度5.5〜6.0の酸化セリウム(CeO2)から成る反応性粒体によって、これよりも高い硬度であるモース硬度6.5の被加工物(板ガラス)を加工することができる。
〔加工装置〕
以上のようなメカノケミカル研磨・研削方法に使用する加工装置としては、圧縮気体により前述の反応性粒体を被加工物に向けて噴射し、衝突させることができるものであれば如何なるものを使用しても良く、既知の各種のブラスト装置をそのまま使用することができる。
以上のようなメカノケミカル研磨・研削方法に使用する加工装置としては、圧縮気体により前述の反応性粒体を被加工物に向けて噴射し、衝突させることができるものであれば如何なるものを使用しても良く、既知の各種のブラスト装置をそのまま使用することができる。
反応性粒体を噴射するための圧縮気体としては、各種の気体を使用することができ、空気、窒素、アルゴンなどその種類を問わない。また、単一の気体により噴射するのみでなく、複数種類の気体を混合して使用しても良い。
〔被加工物〕
被加工物としては、後述する反応性粒体のいずれかとの関係においてメカノケミカル反応を生じるものであれば、如何なるものであってもこれを対象とすることができ、一例としてガラス、石英、サファイヤ、水晶、シリコン、フェライト、SiC,Si3N4,AlN,Cr2O3等のセラミックスを対象とすることができる。
被加工物としては、後述する反応性粒体のいずれかとの関係においてメカノケミカル反応を生じるものであれば、如何なるものであってもこれを対象とすることができ、一例としてガラス、石英、サファイヤ、水晶、シリコン、フェライト、SiC,Si3N4,AlN,Cr2O3等のセラミックスを対象とすることができる。
〔反応性粒体〕
前述の反応性粒体としては、前記被加工物に対するメカノケミカル反応性を有する反応成分を含有するものを使用し、この反応成分としては、一例として酸化セリウム(CeO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化マンガン、硫酸バリウム(Ba2SO4)、酸化ニッケル(NiO)等の金属酸化物が挙げられる。
前述の反応性粒体としては、前記被加工物に対するメカノケミカル反応性を有する反応成分を含有するものを使用し、この反応成分としては、一例として酸化セリウム(CeO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化マンガン、硫酸バリウム(Ba2SO4)、酸化ニッケル(NiO)等の金属酸化物が挙げられる。
なお、被加工物に対する前述の反応性粒体の噴射は、反応性粒体のみを単独で噴射することもできるが、後述するように既知の研磨材等と共に噴射するものであっても良い。
酸化セリウム等の反応成分を含有する反応性粒体のみを単独で噴射する場合には、研磨、切削量を確保し得る程度に被加工物への衝突エネルギーを高くするため、噴射ガンより噴射される圧縮気体の速度を80m/s以上の速度とすることが望ましい。これより低速度であるとメカノケミカル反応に必要な熱エネルギーが充分得られず、所望の研磨、切削速度、表面粗さを得ることができないためである。
この反応成分の一例として、前述の酸化セリウムは鉱物のバストネサイトを精製して得られるものであり、主に希土類元素の酸化物およびフッ化物より構成されている。
反応成分としてこのような酸化セリウムを含む反応性粒体にあっては、重量比で全希土類酸化物の割合(TERO)が90%以上、CeO2が50%以上のものを使用する。これは、CeO2の含有率が50%以下であるとメカノケミカル反応が不十分となるためである。
なお、反応成分であるCeO2の含有率が高い分については使用上問題を生じるものではないが、CeO2の含有率が高い程、精製工程が増加してコストアップとなり、ブラスト用の噴射粒体としてはコスト的に不適当なものとなることから、その含有率は、前記条件に加え、重量比でTERO95%以下、CeO2を70%以下とすることが好ましい。
なお、上記の例では、反応成分として酸化セリウムを含有する反応性粒体の例について説明したが、他の酸化金属を反応成分として含有する反応性粒体についても、反応成分が50wt%以上の含有率で含まれていることが必要である。
前述の反応性粒体の粒径は、ブラストにより加工される被加工物の表面粗さや表面形態等を決める要因となると共に、メカノケミカル反応の速度等に影響を与える要素でもある。
すなわち、メカノケミカル反応を利用した本発明のメカノケミカル研磨・研削方法にあっては、反応性粒体が単位時間当たりに被加工物に衝突する頻度が大きい程、被加工物に与えられる機械的作用と化学的作用の頻度を高くすることができ、効率的な研磨・切削を行うことができる。従って、反応性粒体はこれを微粒子とすることが好ましい。
しかも、反応性粒体を微粒子とすることは、反応性粒体の速度を噴射ガンより噴射される圧縮気体の流速に近似させるため、噴射ガンより噴射する気体の流速が80m/s以上であれば、メカノケミカル作用を生じさせるに充分な衝突エネルギーを得ることができる。
以上のような観点より、反応性粒体の粒子径(D)は、マイクロトラックによる測定においてD50=10μm以下、最大粒子径Dmax=30μm以下が良く、好ましくは、
D50=5μm以下、Dmax=20μm以下が良い。
D50=5μm以下、Dmax=20μm以下が良い。
なお、「D50」とは、マイクロトラック-レーザー式粒度分布計により測定した粒子の篩通過側の累計体積が50%の粒子径をいう。
〔研磨材〕
前述の反応性粒体は、前述のようにこれを単独で噴射するものとしても良いが、この反応性粒体と共に既知の研磨材であって、前述の反応性粒体よりも質量の大きい研磨材を噴射するよう構成しても良い。これにより、反応性粒体と共に噴射された研磨材が被加工物の表面に衝突した際に機械的な切削作用が生じ、メカノケミカル反応による化学的な研磨・切削との相乗効果により研磨・切削の効率を向上させることができる。
前述の反応性粒体は、前述のようにこれを単独で噴射するものとしても良いが、この反応性粒体と共に既知の研磨材であって、前述の反応性粒体よりも質量の大きい研磨材を噴射するよう構成しても良い。これにより、反応性粒体と共に噴射された研磨材が被加工物の表面に衝突した際に機械的な切削作用が生じ、メカノケミカル反応による化学的な研磨・切削との相乗効果により研磨・切削の効率を向上させることができる。
また、反応性粒体の粒径が10μm以下である場合のように、その質量が小さく充分な運動エネルギーを得られない場合には、反応性粒体よりも質量が大きい研磨材を前記反応性粒体に一種又は複数種類混合して噴射することにより、メカノケミカル反応についてもこれを向上させることができる。
このように、反応性粒体を研磨材と共に噴射ガンより同時噴射することにより、反応性粒体よりも質量が大きく、運動エネルギーの大きな研磨材の表面に反応性粒体が吸着した状態でこれらを被加工物の表面に衝突させることができる。そのため、反応性粒体はこれを単独で噴射する場合より大きな運動エネルギーを保有して被加工物の表面に衝突することとなり、その結果メカノケミカル反応の反応速度が早くなるのである。
また、被加工物表面に到達した反応性粒体は、質量の大きな研磨材によって被加工物表面に打ち付けられ、当該物質が単独の場合に比較してより効果的なメカノケミカル反応によるブラストを行う事ができる。
反応性粒体と共に研磨材を噴射する場合において、前述の例では反応性粒体と研磨材とを予め混合しておいたものを、共通の噴射ガンにより同時に噴射するものとして説明したが、この方法に代えて、例えば反応性粒体と研磨材とをそれぞれ別の噴射ガンより噴射し、反応性粒体と研磨材とを噴射中に合体させてこれを被加工物の表面に衝突させ、または被加工物の表面に到達した反応性粒体を、研磨材により被加工物の表面に打ち込むようにしても良い。
このようにして、反応性粒体と共に被加工物の表面に噴射される研磨材としては、既知の一般的なブラスト加工方法において使用されている研磨材を使用することができる。これにより、研磨材がその運動エネルギーにより被加工物の表面を削り取ることにより行われる研磨の作用に加え、メカノケミカルによる化学的な研磨の作用を得ることができ、研磨、切削性を高めることができる。
反応性粒体と共に噴射される前述の研磨材としては、一般的なブラスト加工の場合とは異なり被加工物の硬度よりも低硬度の研磨材を使用することもできる。この場合において使用する研磨材は、反応性粒体よりも質量の大きなものを使用する。
このように、被加工物の硬度よりも低硬度の研磨材を使用することにより、研磨材が衝突時に被加工物を機械的に切削する作用は低下するが、この機械的な切削作用の低下は、一方でブラスト加工に伴うマイクロクラックの発生を防止し、表面粗さの改善に貢献する。また、この研磨材は反応性粒体よりも質量の大きなものを使用していることから、前述のように反応性粒体の被加工物表面への衝突時における運動エネルギーの不足を補う機能を果たすことができる。
なお、前述の研磨材は、いずれの場合においても被加工物の表面に衝突した際に、その運動エネルギーにより溶融し、また、被加工物の表面に付着しないものを使用することが好ましい。
研磨材の材質は、樹脂系、植物系、ガラス系、金属系、セラミック系、無機系等の各種材質のものを使用することができ、その一例を下記の表1に示す。
次に、本発明の方法により被加工物に対してブラスト加工を行った結果を以下に示す。なお、本実施例における試験条件は、下表2に示す通りである。
〔実施例1〕
実施例1として、反応性粒体のみを噴射したブラスト加工を行った。使用した反応性粒体は、セイミケミカル社製「TE1000」(反応性成分;酸化セリウム:CeO2)で、粒径は、マイクロトラックによる測定においてD50=1.3μm、Dmax=15μm、粒形状を多角形とするものを使用した。
実施例1として、反応性粒体のみを噴射したブラスト加工を行った。使用した反応性粒体は、セイミケミカル社製「TE1000」(反応性成分;酸化セリウム:CeO2)で、粒径は、マイクロトラックによる測定においてD50=1.3μm、Dmax=15μm、粒形状を多角形とするものを使用した。
〔実施例2〕
実施例2として、反応性粒体と研磨材とを混合して噴射することにより、ブラストによる研磨加工を行った。
実施例2として、反応性粒体と研磨材とを混合して噴射することにより、ブラストによる研磨加工を行った。
反応性粒体としては、前述の実施例1と同様にセイミケミカル社製「TE1000」を使用し、この反応性粒体に研磨材としてフジランダムWA#320(ホワイトアランダム;不二製作所製)を混合して同時に噴射した。反応性粒体と研磨材との混合比率は、重量比で50:50である。
〔比較例1〕
比較例1は、反応性粒体を使用することなく、1種の研磨材のみの噴射によりブラスト加工を行った例であり、研磨材としてフジグリーンカーボランダム(GC、不二製作所製)を使用した。研磨材の粒径は、マイクロトラックによる粒度分布において、D50=1.5μm、Dmax=16μmである。
比較例1は、反応性粒体を使用することなく、1種の研磨材のみの噴射によりブラスト加工を行った例であり、研磨材としてフジグリーンカーボランダム(GC、不二製作所製)を使用した。研磨材の粒径は、マイクロトラックによる粒度分布において、D50=1.5μm、Dmax=16μmである。
〔比較例2〕
比較例2は、反応性粒体を使用することなく、2種の研磨材を混合して噴射することによりブラスト加工を行った例であり、前述のフジグリーンカーボランダム(GC、不二製作所製)と、フジランダムWA#320(不二製作所製)を重量比で50:50の比率で混合したものを使用した。
比較例2は、反応性粒体を使用することなく、2種の研磨材を混合して噴射することによりブラスト加工を行った例であり、前述のフジグリーンカーボランダム(GC、不二製作所製)と、フジランダムWA#320(不二製作所製)を重量比で50:50の比率で混合したものを使用した。
〔試験結果〕
以上の条件において同一噴射時間のブラスト加工を行った結果を下表3に示す。
以上の条件において同一噴射時間のブラスト加工を行った結果を下表3に示す。
表3に示す結果からも明らかな通り、噴射粒体として反応性粒体を使用した実施例1及び実施例2によれば、研磨材のみの噴射によりブラスト加工を行う場合に比較して、表面粗さを低下させることなく、同一加工時間あたりの切削量を飛躍的に向上させることができた。
また、反応性粒体を使用したメカノケミカル研磨・研削方法にあっては、被加工物にチッピング(欠損)等を生じさせていないことから、このようなチッピング(欠損)発生の起点となるマイクロクラック等も、その発生が抑制されているものと考えられる。
以上説明した本発明のメカノケミカル研磨・研削方法は、ガラス、石英、サファイヤ、水晶、シリコン、フェライト、SiC,Si3N4,AlN,Cr3C2等のセラミックス等の高硬度で脆性を有する材料の研磨に好適に使用することができ、一例として、電気・電子部品等に使用される、前記材質の絶縁基板等の研磨、切削加工に好適に使用することができる。さらに、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)用基材,マイクロリアクター用基材、ウエハ等基板を保持する静電チャック、真空チャック基材、各種センサー、ディスプレイ分野での基材の切削加工、研磨に用いられる。
Claims (8)
- 被加工物に対して圧縮気体と共に被加工物に対する反応性を有し、かつ、被加工物と反応して機械的に脆弱な生成物を生成する反応成分を含む反応性粒体から成る噴射粒体を噴射することを特徴とするメカノケミカル研磨・研削方法。
- 前記噴射粒体を、80m/s以上の流速の前記圧縮気体により噴射することを特徴とする請求項1記載のメカノケミカル研磨・研削方法。
- 前記反応性粒体に含有される前記反応成分が、金属酸化物であることを特徴とする請求項1又は2記載のメカノケミカル研磨・研削方法。
- 前記反応性粒体に含有される前記反応成分が、酸化セリウム、酸化クロム、酸化マンガン、硫酸バリウム、酸化ニッケル中より選択されたいずれか1以上の成分であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のメカノケミカル研磨・研削方法。
- 前記反応性粒体が、前記反応成分を50wt%以上含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のメカノケミカル研磨・研削方法。
- 前記噴射粒体として、前記反応性粒体と共に研磨材を噴射することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のメカノケミカル研磨・研削方法。
- 前記研磨材が、前記反応性粒体以上の質量を有することを特徴とする請求項6記載のメカノケミカル研磨・研削方法。
- 前記研磨材が、被加工物の硬度以下の硬度であることを特徴とする請求項6又は7記載のメカノケミカル研磨・研削方法。
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JP2004008233A JP2005199386A (ja) | 2004-01-15 | 2004-01-15 | メカノケミカル研磨・研削方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010149208A (ja) * | 2008-12-24 | 2010-07-08 | Toyota Motor Corp | 多孔平板体の表面処理方法、多孔平板体、及び燃料電池 |
JP2016097466A (ja) * | 2014-11-20 | 2016-05-30 | 東洋製罐株式会社 | 硬質表面の研磨方法 |
JP7467273B2 (ja) | 2020-08-07 | 2024-04-15 | ショット アクチエンゲゼルシャフト | 気密端子 |
-
2004
- 2004-01-15 JP JP2004008233A patent/JP2005199386A/ja active Pending
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JP2010149208A (ja) * | 2008-12-24 | 2010-07-08 | Toyota Motor Corp | 多孔平板体の表面処理方法、多孔平板体、及び燃料電池 |
JP2016097466A (ja) * | 2014-11-20 | 2016-05-30 | 東洋製罐株式会社 | 硬質表面の研磨方法 |
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