JP2005193157A - 熱分解装置及びその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】被処理物の発熱量の変動を事前に予測してフィードフォワード制御することにより、制御遅れを少なくしてより均一かつ安定した熱分解を行うことができる熱分解装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】加熱ガス受入部29と加熱ガスを通す加熱管28と加熱ガス排出部30とを有し、供給された加熱ガスで被処理物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラム12と、前記加熱ガス排出部30からの戻りガスを加熱して前記加熱ガス受入部29に供給する加熱ガス供給部103と、前記熱分解ドラム12に被処理物を供給する被処理物供給部10とを備える熱分解装置において、前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部29に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する制御手段136を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、廃棄物等の被処理物を無酸素あるいは低酸素雰囲気で熱分解ガスと熱分解残渣とに熱分解するための熱分解装置及びその制御方法に関する。
従来より、家庭ゴミ等の一般廃棄物やシュレッダーダスト等の産業廃棄物の処理プラントとして、図5に示すような、熱分解ガス化溶融プラントなどが使用されてきた。図示した熱分解ガス化溶融プラントは、前処理設備1、熱分解設備2、熱分解残渣選別設備3、高温燃焼溶融設備4、ボイラ発電設備5、排ガス処理設備6からなる。
前処理設備1では、廃棄物ピット7に貯留された廃棄物を破砕機で破砕し、破砕廃棄物を搬送装置等で熱分解設備2に送る。熱分解設備2では、その廃棄物を熱分解ドラム12に搬送供給し、加熱ガス供給部102から熱分解ドラム12に加熱ガスを供給して循環させる。この加熱ガスにより500〜550℃程度の温度で廃棄物を間接的に加熱しながら、廃棄物を無酸素あるいは低酸素雰囲気で熱分解ガスと熱分解残渣とに熱分解し、熱分解ガスを後述の高温燃焼溶融炉13に送り、熱分解残渣を熱分解残渣選別設備3に送る。加熱ガス供給部102には、自己の熱分解ガス燃焼排ガスを利用する方式と、外部燃料を利用する方式とが存在する。
熱分解残渣選別設備3では、熱分解ドラム12からの熱分解残渣を、振動フィーダ70・冷却振動コンベア14を介してバケットコンベア55側に送り、バケットコンベア55からの熱分解残渣をシール用振動コンベア59を介して熱分解残渣選別装置91に送る。熱分解残渣選別装置91で鉄・アルミ等を選別された後の熱分解残渣を粉砕して、カーボン残渣を得る。カーボン残渣はカーボン残渣サイロ61に送り、カーボン残渣サイロ61内のカーボン残渣を高温燃焼溶融炉13にその炉頂側から吹き込む。また、磁選機(図示せず)で選別した鉄類を鉄類コンテナ96に回収するとともに、アルミ選別機(図示せず)で選別したアルミをアルミコンテナ97に回収する。
高温燃焼溶融設備4では、熱分解ガス、カーボン残渣、集塵ダストを高温燃焼溶融炉13に炉頂側から吹き込み、これらを旋回燃焼する。焼却灰・集塵ダストは溶融し、炉底から連続排出し、排ガスはボイラ発電設備5に供給される。ボイラ発電設備5では、排ガスがボイラ輻射ゾーンで冷却され、蒸発管群で均一な温度にした後、過熱蒸気管群に送る。ボイラ18で蒸気を熱回収し、タービン・発電機(図示せず)で電気として回収する。排ガス処理設備6では、排ガスをガス冷却室21、第1集じん器17、第2集じん器22等で処理して煙突25から排気する。
ところで、回転キルン式のガス化溶融炉は、熱分解ドラム内で1時間程度かけてゆっくりゴミを熱分解するため、ゴミの低位発熱量が変動しても熱分解ガスの発生量は比較的安定しており、後段の燃焼溶融炉で安全運転が可能であるという特長がある。しかし、ゴミ処理設備に搬入されるゴミの性状は、通常一定でないため、昼夜の差でもゴミの低位発熱量の変動は大きく、溶融炉の安定運転に大きな影響を与えることがある。また、ゴミの供給量が変化する場合もあり、ガス化溶融炉に供給する加熱ガスの熱量を調節する必要がある。ゴミ供給量の変化の要因としては、ゴミの種類によるかさ比重の変化などが挙げられる。
そこで、加熱ガス供給部から熱分解ドラムに供給した加熱ガスの戻りガスの温度を検出する排出ガス温度検出計を設け、その検出結果に基づいて循環ファンを制御することにより、循環流量によって熱分解ドラムに供給する熱量を制御する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、熱分解ドラムからの戻りガスの温度によるフィードバック制御のみでは、制御の遅れによって、一部の廃棄物が完全に熱分解しない状態で熱分解ドラムから排出される場合が生じる。例えば、供給されるゴミの水分が多いため低位発熱量が急激に低下した場合、ゴミ質の変化が熱分解ドラム内の温度変化として検出されるのは、そのゴミが熱分解ドラムの中央付近に到達した時点であり、その時点から循環ガス量を多くしても、残りの滞留時間内に熱分解に十分な加熱が行われ難く、ゴミの熱分解が完了せずに熱分解ドラムから排出される。また、ゴミの供給量が変化する場合にも、同様の問題が生じ易い。
特開2002−263626号公報
そこで、本発明の目的は、被処理物の低位発熱量の変動を事前に予測してフィードフォワード制御することにより、制御遅れを少なくしてより均一かつ安定した熱分解を行うことができる熱分解装置及びその制御方法を提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の熱分解装置は、加熱ガス受入部と加熱ガスを通す加熱管と加熱ガス排出部とを有し、供給された加熱ガスで被処理物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムと、前記加熱ガス排出部からの戻りガスを加熱して前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガス供給部と、前記熱分解ドラムに被処理物を供給する被処理物供給部とを備える熱分解装置において、前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する制御手段を備えることを特徴とする。本発明における「フィードフォワード制御」とは、外乱の影響を予め予測して、先回りして制御の操作量に反映させるものであり、フィードバック制御と併用されていてもよい。
本発明の熱分解装置によると、被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する制御手段を備えるため、被処理物の供給量の変化による熱分解必要熱量の変動を事前に予測してフィードフォワード制御することにより、制御遅れを少なくしてより均一かつ安定した熱分解を行うことができる。
また、本発明の別の熱分解装置は、加熱ガス受入部と加熱ガスを通す加熱管と加熱ガス排出部とを有し、供給された加熱ガスで被処理物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムと、前記加熱ガス排出部からの戻りガスを加熱して前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガス供給部と、前記熱分解ドラムに被処理物を供給する被処理物供給部とを備える熱分解装置において、被処理物に含有される水分を計測する水分計を備え、その水分計からの信号と前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する制御手段を備えることを特徴とする。
本発明の別の熱分解装置によると、被処理物に含有される水分を計測する水分計を備え、その水分計からの信号と前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する制御手段を備えるため、被処理物の供給量及び水分量の変化による発熱量の変動を事前に予測してフィードフォワード制御することにより、制御遅れを少なくしてより均一かつ安定した熱分解を行うことができる。
上記において、前記制御手段は、前記加熱ガス受入部に供給される加熱ガスの温度及び/又は流量の制御目標値を、前記信号に基づいて設定することで、前記加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御することが好ましい。その際、例えば加熱ガスの循環路に設けたファンの流量を検出しながらフィードバック制御する制御部の流量の設定値として、前記信号に基づく制御目標値を入力したり、加熱ガスの循環路の温度を検出しながら加熱ガス供給部の燃焼をフィードバック制御する制御部の設定値として、前記信号に基づく制御目標値を入力したりすることで、フィードバック制御を併用することができる。
また、前記水分計は中性子水分計であり、その線源と検出部とを前記被処理物供給部に設けていることが好ましい。中性子水分計によると、鋼板越しに非接触で被処理物の水分を計測することができ、被処理物の流れを阻害せずに連続的に水分を直接的に計測して、その結果をフィードフォワード制御に反映させることができる。
一方、本発明の熱分解装置の制御方法は、加熱ガス受入部と加熱ガスを通す加熱管と加熱ガス排出部とを有し、供給された加熱ガスで被処理物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムと、前記加熱ガス排出部からの戻りガスを加熱して前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガス供給部と、前記熱分解ドラムに被処理物を供給する被処理物供給部とを備える熱分解装置の制御方法において、前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御することを特徴とする。
本発明の制御方法によると、被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御するため、被処理物の供給量の変化による熱分解必要熱量の変動を事前に予測してフィードフォワード制御することにより、制御遅れを少なくしてより均一かつ安定した熱分解を行うことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の熱分解装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、熱分解ドラム12には、廃棄物ピット7からの被処理物である廃棄物をシュート11内に受け入れて、これを搬送するスクリューコンベア10を、横型の熱分解ドラム本体27(以下、「ドラム本体27」と略称する)にその軸芯方向一端側から前記軸芯方向に沿う状態に挿入しており、熱分解ドラム12に被処理物を供給する被処理物供給部を構成している。また、熱分解ドラム12には、加熱ガス供給部103からの廃棄物加熱用のガスを流通させる複数本の加熱管28を、ドラム本体27の中空内の軸芯方向一端側の隔壁36と他端側の隔壁37とにわたって、ドラム本体27の長手方向に沿う状態に架設して構成してある。
そして、前記ドラム本体27の軸芯方向他端側に、加熱ガス受入部29と熱分解ガス・熱分解残渣排出部31とを、また、ドラム本体27の軸芯方向一端側に加熱ガス排出部30を設けてある。
前記ドラム本体27の軸芯方向他端側の隔壁37から、ドラム本体27よりも小径の残渣排出管38を前記搬送方向下手側にドラム本体27と同芯状に延出してある。この残渣排出管38の内周面側に残渣送りスクリュー101を設けてある。前記加熱ガス受入部29は、加熱ガス受入口39を備えた加熱ガス受入ケース40を、残渣排出管38の長手方向中間部分を囲む状態に、かつ、ドラム本体27の回転を許す状態に支持台35に支持させて構成してある。
前記熱分解ガス・熱分解残渣排出部31は、熱分解ガス・熱分解残渣排出ケース45を、前記残渣排出管38の排出口を覆う状態に設けて構成し、この熱分解ガス・熱分解残渣排出ケース45の上端側の熱分解ガス排出口46から熱分解ガスを排出して高温燃焼溶融炉13に送り、熱分解残渣は熱分解ガス・熱分解残渣排出ケース45の下端側の熱分解残渣排出口47から排出して、熱分解残渣選別設備に送るようにしてある。熱分解ガスは排ガス処理設備における煙突の上流側の誘引ファン等で誘引する。つまり、ドラム本体27では、供給された加熱ガスで廃棄物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する。
前記加熱ガス排出部30は、加熱ガス排出口42を備えた加熱ガス排出ケース43を、スクリューコンベア10の所定長さにわたるコンベアケース部分を囲む状態に、かつ、ドラム本体27の回転を許す状態に支持台35に支持させて構成してある。
加熱ガス供給部103は、図1に示すように、加熱ガス排出部30からの戻りガスを加熱して加熱ガス受入部39に供給するものであり、運転開始用の加熱ガスの供給手段と、運転開始後の運転用の加熱ガスの供給手段とを、切り換え可能に構成してある。運転開始後では、熱分解ドラム12の熱分解ガス・熱分解残渣排出ケース45からの熱分解ガスを高温燃焼溶融炉13に流通案内する熱分解ガス管路108から熱分解ガス分岐管路109を分岐して、熱分解ガスを利用する。つまり、前記熱分解ガス分岐管路109に導入した熱分解ガスを燃焼させる熱分解ガス燃焼炉110(熱分解ガス燃焼器に相当)を設け、熱分解ガス燃焼炉110に対する空気供給装置124を設けてある。前記空気供給装置124は、空気供給管路122に、燃焼器用押し込みファン121と押し込み空気加熱器123とを設けて構成してある。
また、熱分解ドラム12の加熱ガス排出ケース43から排出されてガス回収路105側に回収されたガスを、熱分解ガス燃焼炉110からの燃焼排ガスと混合させて加熱ガスを生成するガス混合機111を設け、前記ガス回収路105には集じん器114を設けてある。加熱ガス排出ケース43からのガスは、ガス混合機111と集じん器114の間の循環ファン116でガス回収路105側に導入する。
ガス回収路105は集じん器114の上流側で分岐してあり、ガス回収路105側に導入したガスのうちの所定量のガスを、排気ダンパ133の開閉操作により、高温燃焼溶融炉13などに送るように構成してある。この排気ダンパ133の開度が大きくなると、そこから排出されるガス量が多くなり、加熱ガスを所定の量に保持するために、熱分解ガス排出口46から排出された熱分解ガスのうち、熱分解ガス分岐管路109を経て熱分解ガス燃焼炉110に導入されるガス量が大きくなる。
一方、熱分解ガス燃焼炉110には、灯油などの燃料を燃焼させるバーナー106を設けてあり、灯油供給装置107によって灯油の供給量を調節できるようにしている。灯油の供給量の調節は、例えばポンプの回転数や弁の開度の調節などで行うことができる。そして、熱分解ドラム12の運転を開始する場合、熱分解ガス燃焼炉110に空気供給装置124で空気を供給しながら、バーナー106で灯油を燃焼させて、循環ファンで回収された加熱ガスと混合機で混合され加熱ガスを生成する。そして、この加熱ガスを熱分解ドラム12の加熱ガス受入ケース40に供給する。
加熱ガス受入ケース40に供給する加熱ガスの流路には、温度を検出する加熱ガス温度検出センサ131を設けてあり、これをセンサ部とする温度指示調節計(TIC)132によって、加熱ガス温度検出センサ131の検出結果(PV)に基づいて、温度制御を行う。運転開始時には、灯油供給装置107の操作部に送る操作信号(MV)を変動させることによって、温度制御を行うことができる。また、定常運転時には、灯油供給装置107を停止した状態で、温度指示調節計(TIC)132から排気ダンパ133の操作部に送る操作信号(MV)を変動させることによって、温度制御を行うことができる。
本発明では、被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、加熱ガス受入部29に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する制御手段を備えることを特徴とする。本実施形態では、被処理物に含有される水分を計測する水分計137を備え、その水分計137からの信号と被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、加熱ガス受入部29に供給する加熱ガスの熱量を制御すべく、加熱ガス受入部29に供給される加熱ガスの流量の制御目標値を前記信号に基づいて設定する例を示す。従って、本実施形態では、制御手段は、演算器136、流量指示調節計(FIC)135、排出ガス温度センサ134、水分計137などで構成される。
演算器136は、排出ガス温度センサ134、水分計137、および回転速度センサ10aからの信号が入力され、加熱ガスの流量の制御目標値を算出して、これを流量指示調節計(FIC)135に出力する。排出ガス温度センサ134は、加熱ガス排出ケース43からのガス回収路105に設けられ、水分計137のセンサ部(線源と検出部)は、スクリューコンベア10のシュート11の外壁面に設けられ、回転速度センサ10aは、スクリューコンベア10の回転軸に対して設けられている。
水分計137は、中性子水分計であることが好ましい。中性子水分計は、放射性物質から放出された中性子が水素原子と衝突すると減速されて熱中性子になる現象を応用したものであり、熱中性子を検出する検出部を用いて熱中性子をカウントし、予め求めておいた水分と熱中性子のカウント数との関係から、測定対象物の水分率を求めることができる。
図2には、約1.5MeVのエネルギーをもつ高速中性子を使用した高感度中性子水分計を用いて、下水汚泥に対して、厚み16.9mmの鋼板を隔てて、鋼板と水分計との隙間を2mmとし、60秒間、熱中性子をカウントした場合の水分率とカウント値との関係を示す。この関係は再現性が高いため、熱中性子のカウント数から測定対象物の水分率を求めることができる。
中性子水分計では鋼板越しに非接触で被処理物の水分を計測することができるため、中性子水分計の線源及び検出部(センサ部)は、被処理物供給部のシュート11の外壁面に設けることができる。センサ部は、更に上流側のホッパー等に設けたり、逆にスクリューコンベア10の外壁面に設けることも可能である。
一方、流量指示調節計(FIC)135の流量センサ138は、ガス回収路105の循環ファン116より下流側に設けられ、その位置での流量を検出し、その検出結果(PV)に基づいて循環ファン116の回転数などを操作量(PV)の変動によって調節することで、その位置での流量が設定値(SV)になるように制御する。前記の制御手段によって、加熱ガスの流量の制御目標値(即ちSV)を変動させることにより、加熱ガス受入部29に供給される加熱ガスの流量が変動し、加熱ガスの熱量を変動させることができる。
演算器136による演算は、例えば次のようにして行うことができる。熱分解に必要な熱量qは、被処理物の供給量にほぼ比例して増加し、また供給量が一定であるとその水分率にほぼ比例して増加する。一方、熱分解に必要な熱量qと加熱ガスの供給量とは、比例関係になり、また、加熱ガスの供給量と流量センサ138を設けた位置の流量とは、ほぼ比例関係になる。従って、被処理物の供給量および水分率に比例する値を、必要な熱量qを供給するための流量として演算器136により算出し、この値を設定値(SV)として、循環ファン116を制御する流量指示調節計(FIC)135に入力すれば、熱分解に必要な熱量qを予測して、実際に供給される加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御することができる。なお、上記の設定値(SV)の演算には、循環ガスの比熱、比重、出入口の温度などが考慮される。
その際、ガス回収路105に設けた排出ガス温度センサ134の検出結果(PV)に基づいて、演算器136により算出する前記設定値(SV)を補正するのが好ましい。この補正は、例えば回収されるガス温度の目標値と実際の温度との偏差(温度差)、及び回収されるガス量などから、温度を目標値に修正するための熱量を計算し、この熱量を前記の必要な熱量qに加算する方法が挙げられる。この制御を行う場合、フィードバック制御が併用されたことになる。
また、上記の演算において、熱分解に必要な熱量qは、リアルタイムに算出されることになるが、熱分解ドラム本体27内での被処理物の滞留時間は1時間程度であるため、時間のズレを考慮した制御を行うのが好ましい。例えば、水分率について1時間の平均値を計算し、これを水分率として上記演算を行ったり、熱分解に必要な熱量qを計算する際に、1時間の平均値を計算する方法を採用してもよい(より短時間の平均値でもよい)。
このような演算器136は、プラントの集中管理・制御に用いられる分散型制御システム(DCS)の機能を利用して構成することができる。つまり、DCSには、上記のような検出信号の入力部、演算のプログラム機能、データの入力機能、データの保存機能、算出した信号の出力部などを備えており、前記の演算を行うことができる。なお、パーソナルコンピュータ、各種インターフェース、及び市販の制御用ソフトなどを用いて、演算器136を構成することも可能である。
以上のような本発明の熱分解装置は、図5に示すような一般および産業廃棄物の処理プラントに適用することができる。また、本発明の熱分解装置は、次のように運転することができる。
1)熱分解ドラム12の運転を開始する場合、熱分解ガス燃焼炉110に設けたバーナ106で灯油を燃焼させて加熱ガスを生成する。そして、この加熱ガスを熱分解ドラムの加熱ガス受入ケース40に供給する。熱分解ドラム12の加熱管28を流通して熱分解ドラム12の加熱ガス排出ケース43から排出された加熱ガスをガス混合機111側に回収し、バーナ106で再び加熱して加熱ガス受入ケース40に戻す。加熱ガス排出ケース43からの余分な加熱ガスは分岐管路119を通して高温燃焼溶融炉13などの入口に供給する。
2)熱分解ドラム12の熱分解ガス・熱分解残渣排出ケース45から熱分解ガスや熱分解残渣が排出されるようになると、熱分解ガス・熱分解残渣排出ケース45からの熱分解ガスのうちの所定量の熱分解ガスを熱分解ガス燃焼炉110に導いて燃焼させる。熱分解ドラム12の加熱管28を流通して加熱ガス排出ケース43から排出されたガスをガス回収路105側に回収し、そのガスから集じん器114でダストを除去し、ダストが除去されたガスをガス混合機111に供給する。このガス混合機111によって、前記ガスと、熱分解ガス燃焼炉110からの燃焼排ガスとを混合させて加熱ガスを生成し、加熱ガス受入ケース40に供給する。
3)バーナー106で燃焼させる灯油の量を徐々に少なくしていき、熱分解ガス・熱分解残渣排出ケース45から排出される熱分解ガスの量が設定量になると、バーナー106の運転を停止し、熱分解ガス燃焼炉110、ガス混合機111だけで加熱ガスを加熱ガス受入ケース40に送り込む。この状態で定常運転に入る。
上記の1)〜3)において、前記加熱ガス排出ケース43から排出されるガスの温度は300℃程度に設定するのが好ましい。この温度が300℃よりも低くなったことを排出ガス温度検出計134が検出すると、循環ファン116の回転数を上げてガスの循環量を上げる。
一方、前記加熱ガス受入ケース40に供給する加熱ガスの温度は530℃程度に設定するのが好ましい。この温度が530℃よりも低くなったことを加熱ガス温度検出センサ131が検出すると、排気ダンパ133の開度を上げ、熱分解ガス燃焼炉110への熱分解ガスの供給量を増やして前記温度を530℃に近づける。
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、被処理物に含有される水分を計測する水分計を備え、その水分計からの信号と前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する例を示したが、本発明では、水分計からの信号を利用せずに、被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、フィードフォワード制御を行ってもよい。
その場合、特に被処理物の水分率の変化が比較的少なく、被処理物の供給量の変化が大きい運転条件に対して有効である。なお、被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、フィードフォワード制御する場合も、前述した構成や制御方法、例えば排出ガス温度センサ134からの信号に基づく温度補正など、を何れも採用することができる。
(2)前述の実施形態では、加熱ガス受入部に供給される加熱ガスの流量の制御目標値を設定することで、フィードフォワード制御を行う例を示したが、本発明では、加熱ガス受入部に供給される加熱ガスの温度の制御目標値を設定することで、フィードフォワード制御を行ったり、図3に示すように、加熱ガスの流量および温度の制御目標値を設定するようにしてもよい。
図3に示す熱分解装置では、被処理物に含有される水分を計測する水分計137を備え、その水分計137からの信号と前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部29に供給する加熱ガスの流量および温度をフィードフォワード制御する制御手段を備える。その際、加熱ガスの流量の制御は前述の実施形態と同様にして行うことができるが、この実施形態では排出ガス温度センサ134からの信号に基づく温度補正を省略している。
加熱ガスの温度の制御は、加熱ガス受入ケース40に供給する加熱ガスの流路に設けた、加熱ガス温度検出センサ131をセンサ部とする温度指示調節計(TIC)132によって、加熱ガス温度検出センサ131の検出結果(PV)に基づいて、温度制御を行う際に、その設定値として、演算器136からの信号を入力する。なお、温度指示調節計(TIC)132が、運転開始時には、灯油供給装置107の調節を行い、定常運転時には、排気ダンパ133の調節を行うのは、前述と同様である。
加熱ガスの温度を制御する場合、この実施形態のように流量の制御と併用する場合と、単独で加熱ガスの温度を制御する場合がある。まず、後者の単独の場合の演算について説明する。熱分解に必要な熱量qは、被処理物の供給量にほぼ比例して増加し、また供給量が一定であるとその水分率にほぼ比例して増加する。一方、熱分解に必要な熱量qと供給する加熱ガスの温度とは、ほぼ比例関係になる。従って、被処理物の供給量および水分率に比例する値を、必要な熱量qを供給するための温度として演算器136により算出し、この値を設定値(SV)として、温度指示調節計(TIC)132に入力すれば、熱分解に必要な熱量qを予測して、実際に供給される加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御することができる。
一方、流量の制御と温度の制御とを併用する場合、上記のように計算される熱分解に必要な熱量qに対して、流量で制御する分と温度で制御する分とを分配し(例えば50%と50%)、それぞれの熱量に対して、上記のような演算を行えばよい。
(3)前述の実施形態では、水分計からの信号と被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、1つの演算器で演算を行い、加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する例を示したが、本発明では、図4に示すように、水分計137からの信号に基づく演算と被処理物の供給量に対応する信号に基づく演算とを、別々の演算器136a,136bを用いて行ってもよい。
即ち、図4に示す熱分解装置では、回転速度センサ10aからの信号を演算器136bに入力して、演算結果の信号を循環ファン116を制御する流量指示調節計(FIC)135に出力するようにし、水分計137からの信号を演算器136aに入力して、演算結果の信号を温度指示調節計(TIC)132に出力するように構成している。
演算に関しては、演算器136bでは被処理物の供給量の変動に応じた要求熱量を計算して流量の設定値を計算し、演算器136aでは水分計137からの信号の変動に応じた要求熱量を計算して温度の設定値を計算すればよい。その計算方法は、前述と同様にして行うことができる。
(4)前述の実施形態では、水分計として中性子水分計を用いる例を示したが、本発明では、中性子水分計の他に、赤外吸収型水分計、マイクロ波式等の非接触計測タイプや、その他、サンプリングを行って乾燥重量から水分率を求める接触計測タイプを用いることも可能である。
(5)前述の実施形態では、図1に示すように、常時運転時に、ガス回収路105から分岐した分岐管路119に設けた排気ダンパ133の開度調節により、熱分解ガス分岐管路109を経て熱分解ガス燃焼炉110に導入する熱分解ガスの流量を調節する例を示したが、本発明では、排気ダンパ133の代わりに、熱分解ガス分岐管路109に別のダンパを設けて、その開度を調節することによって、熱分解ガス燃焼炉110に導入する熱分解ガスの流量を調節してもよい。
本発明の熱分解装置の一例を示す概略構成図 中性子水分計を用いて測定したカウント値と水分率との関係を示すグラフ 本発明の熱分解装置の他の例を示す概略構成図 本発明の熱分解装置の他の例を示す概略構成図 熱分解装置を備える産業廃棄物処理プラントの一例を示す概略構成図
符号の説明
10 スクリューコンベア(被処理物供給部)
10a 回転速度センサ
12 熱分解ドラム
28 加熱管
29 加熱ガス受入部
30 加熱ガス排出部
103 加熱ガス供給部
107 灯油供給装置
109 熱分解ガス管路
110 熱分解ガス燃焼器
132 TIC(制御手段)
135 FIC(制御手段)
136 演算器(制御手段)
137 水分計

Claims (5)

  1. 加熱ガス受入部と加熱ガスを通す加熱管と加熱ガス排出部とを有し、供給された加熱ガスで被処理物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムと、前記加熱ガス排出部からの戻りガスを加熱して前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガス供給部と、前記熱分解ドラムに被処理物を供給する被処理物供給部とを備える熱分解装置において、
    前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する制御手段を備えることを特徴とする熱分解装置。
  2. 加熱ガス受入部と加熱ガスを通す加熱管と加熱ガス排出部とを有し、供給された加熱ガスで被処理物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムと、前記加熱ガス排出部からの戻りガスを加熱して前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガス供給部と、前記熱分解ドラムに被処理物を供給する被処理物供給部とを備える熱分解装置において、
    被処理物に含有される水分を計測する水分計を備え、その水分計からの信号と前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する制御手段を備えることを特徴とする熱分解装置。
  3. 前記制御手段は、前記加熱ガス受入部に供給される加熱ガスの温度及び/又は流量の制御目標値を前記信号に基づいて設定することで、前記加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御する請求項1又は2に記載の熱分解装置。
  4. 前記水分計は中性子水分計であり、その線源と検出部とを前記被処理物供給部に設けている請求項2又は3に記載の熱分解装置。
  5. 加熱ガス受入部と加熱ガスを通す加熱管と加熱ガス排出部とを有し、供給された加熱ガスで被処理物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムと、前記加熱ガス排出部からの戻りガスを加熱して前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガス供給部と、前記熱分解ドラムに被処理物を供給する被処理物供給部とを備える熱分解装置の制御方法において、
    前記被処理物の供給量に対応する信号に基づいて、前記加熱ガス受入部に供給する加熱ガスの熱量をフィードフォワード制御することを特徴とする熱分解装置の制御方法。
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