JP2005187897A - 金属粉末の製造用薬液 - Google Patents

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Abstract

【課題】 導電性フィラーとして、塗料、樹脂、ゴム、ペースト、接着剤、インク等に混練して使用することができる粒径のそろった金属微粉末を安定して製造するための薬液を提供する。
【解決手段】 ケタジンを加水分解して得られる水加ヒドラジンを含有する金属微粉末の製造用薬液であって、該水加ヒドラジン中のアミド類が0.001重量%以下、及び/又は該水加ヒドラジン中のフェノール類が0.0003重量%以下であることを特徴とする金属微粉末の製造用薬液。
【選択図】 なし

Description

本発明は、金属微粉末の製造用薬液に関する。得られた金属微粉末は、導電性フィラーとして、塗料、樹脂、ゴム、ペースト、接着剤、インク等に混練して使用することができる。
粒径のそろった金属微粉末を安定して製造する方法として、金属塩または金属イオンを含有する水溶液と還元剤を混合して金属粉末を還元析出させる湿式還元法が提案されている。用いられる還元剤として水加ヒドラジン、ホルマリン、次亜リン酸アルカリ、水素化ホウ素アルカリなどがあるが、中でも水加ヒドラジンは還元力の強さと残存イオンの問題がないことから広く用いられている。
例えばニッケル微粉末については、水溶性ニッケル塩の水溶液に強アルカリを添加して水酸化ニッケルを析出させたのち、水加ヒドラジンを添加して金属ニッケルに還元する方法がある(特許文献1、2参照)。しかし、特にニッケルの微粉末を製造する際に、高い生産性を保ちながら所望の粒径の金属粉末を得ることが困難であった。また、ニッケル塩と錯化剤を溶解させたニッケル水溶液を、強アルカリを混合したヒドラジン中へ添加して金属ニッケルに還元する方法があるが(特許文献3参照)、添加する錯化剤の量が多く、経済的でない問題があった。
特開昭53−95165号公報 特開平5−51610号公報 特開平11−302709公報
本発明は、前記の問題点を解決するためであり、具体的には、水加ヒドラジンを用いた金属微粉末の製造用薬液を提供することにある。
本発明者らは前記の問題を解決するべく鋭意検討した結果、水加ヒドラジンがケタジンを加水分解して得られる場合、特定の副生成物を低減させれば効率よく金属微粉末を製造できることを見出し本発明を完成させた。すなわち本発明は、ケタジンを加水分解して得られる水加ヒドラジンを含有する金属微粉末の製造用薬液であって、該水加ヒドラジン中のアミド類が0.001重量%以下、及び/又は該水加ヒドラジン中のフェノール類が0.0003重量%以下である金属微粉末の製造用薬液に関するものである。
本発明の薬液により、粒径が細かく均一な金属粒子を短時間且つ経済的に製造することが可能になる。
本発明のケタジンは、アンモニア、酸化剤およびカルボニル基を有する化合物を触媒含有作動液の存在下で反応させることによって得られる。酸化剤は、過酸化水素または次亜塩素酸ソーダを使用するのが好ましい。カルボニル基を有する反応物は、アルデヒドまたはケトンが好ましく、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノンが挙げられる。触媒は、有機または無機のアミド、アンモニウム塩またはニトリルを使用することが好ましい。好ましいアミドの例として、ホルムアミド、アセトアミド、モノクロルアセトアミド及びプロピオンアミドがある。アンモニウム塩では、蟻酸塩、酢酸塩、モノクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、特にカコジル酸塩、モノメチルアルソン酸塩が好ましい。ニトリルでは、アセトニトリル、プロピオニトリルが好ましい。触媒を含有する作動液は、水溶液、アルコール溶液または水とアルコールの混合溶液にすることができる。この場合のアルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
酸化剤、アンモニア、カルボニル基を有する化合物と作動液の接触は、任意の方法で行うことができる。好ましくは、均質媒体中またはケタジンを得るのに十分なだけ各反応物を可溶化できる媒体中で操作する。上記反応はきわめて広範囲な温度で行えるが、30〜70℃が好ましい。また、この反応は任意の圧力で行えるが、大気圧で操作するのがより簡便である。各反応物は、作動液に同時または個別に任意の順序で添加できる。反応装置としては、各反応物と作動液との接触が良好に行われる、攪拌混合槽または流動槽が好ましい。
ケタジンの加水分解は、特に制限はないが好ましくは反応蒸留塔を用いることが挙げられる。条件としては、好ましくは100KPa〜20MPaの圧力で塔底温度を100〜200℃に保持した充填塔または棚段塔の中間部に、上記のケタジンと水とを1:2〜1:20の比率で供給し、留出液としてケトンを、缶出液として水加ヒドラジン水溶液を得ることによって行われる。
本発明においてアミド類は、構造式(I)で表わされる。具体例として、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N−プロピルアセトアミド、N−ブチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミドが挙げられる。
Figure 2005187897
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素を示す。)
本発明においてフェノール類は、構造式(II)で表わされる。具体例として、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、キシレノール、エチルメチルフェノール、ブチルメチルフェノール、ジブチルフェノール、ジブチルメチルフェノールがある。
Figure 2005187897
(式中、R1からR5はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素を示す。)
本発明では、アミド類の含有率を水加ヒドラジンに対し、0.001重量%以下、好ましくは0.00001〜0.001重量%、さらに好ましくは0.00001〜0.0005重量%以下にする。また、フェノール類の含有率を水加ヒドラジンに対し、0.0003重量%以下、好ましくは0.00001〜0.0003重量%、さらに好ましくは0.00001〜0.001重量%以下にする。アミド類は0.001重量%より、フェノール類は0.0003重量%より大きいと金属還元反応を著しく阻害し、反応時間が延長する原因となる。一方0.00001重量%より小さくなるとほとんど反応を阻害しないことから、更なる低減は経済的観点から必ずしも必要でない。また、水加ヒドラジンの全有機炭素(以下TOCと称す)含有率は、水加ヒドラジンに対し0.02重量%以下が好ましい。
アミド類及び/又はフェノール類、TOC成分を低減する方法としては、例えば、水加ヒドラジン水溶液に対して蒸留あるいは吸着材料への接触等を行う方法が挙げられる。蒸留を行う場合、特にヒドラジンに近い比揮発度を持つ物質を効率よく低減するために、特公平5−55445号公報に示されている、水加ヒドラジン水溶液を塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩あるいは炭酸塩の共存下、濃縮してTOC成分を水とともに塔頂より蒸留除去した後、さらにその濃縮液から水加ヒドラジンを蒸留する方法を行うことが好ましい。また、水加ヒドラジン濃度が100重量%になるよう濃縮してから、必要に応じて希釈して使用するのが好ましい。
吸着材料への接触を行う場合、吸着材料としては、ヒドラジンに対して反応性の官能基を有せず、平均細孔直径が50nm以上の微孔質粒子によって構成される吸着樹脂であることが好ましい。また、接触速度は吸着樹脂1mlに対し、好ましくは1g/h以下、さらに好ましくは0.6g/h以下である。1g/hを超えると、アミド類、フェノール類が樹脂へ吸着する効率が低下する。また、吸着樹脂1mlに対し、水加ヒドラジン30g以下で通液を終了し樹脂を再生することが好ましい。30gを超えて通液を続けると、一旦吸着したアミド類、フェノール類が再び水加ヒドラジン中へ溶出する。樹脂は、メタノール、アセトン等の有機溶剤や純水で再生することで、繰り返し使用できる。また、接触温度は0〜40℃が好ましく、特に0〜25℃が好ましい。具体的には、ダイヤイオンHP50(三菱化学製)、アンバーライトXAD761(オルガノ製)が挙げられる。
次に、本発明の薬液の使用方法を説明する。まず金属塩を予め溶解し、かつpH調整した、金属イオンを含有する金属水溶液を用意する。ここで金属水溶液に、界面活性剤、分散剤、保護コロイド等を添加すれば、得られた金属微粉末の物性を変化させることができる。次いで、金属水溶液を、0℃〜沸点に温度調整した後、本発明の薬液を滴下し、金属イオンの還元反応を行わせる。薬液の添加量は、金属塩1mol当たり、水加ヒドラジン2〜15mol程度になる量である。薬液中の水加ヒドラジン濃度は、特に制限はないが50重量%以上である。反応終了後、析出した金属微粉末をろ過し、沈殿物を洗浄し、乾燥することにより、金属微粉末を取り出すことができる。このとき、洗浄には、通常、水を使用するが、用途に応じて、有機溶剤を使用してもよい。また、洗浄後、脱水(脱液)処理を行って乾燥してもよい。乾燥には、自然乾燥のほか、減圧乾燥や加熱乾燥を適用してもよい。
上述した金属塩としては、塩化塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩など、水に対して溶解性を持つものであれば、特に限定されることなく、広範囲のものを使用できる。また、これら金属塩の2種以上のものを混合して用いてもよい。また、金属としては、ニッケル、銅、銀などの遷移金属を使用できる。また、上記の反応は任意のpHで行うことができる。pH調整剤としては、たとえば、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
参考例
カコジル酸アンモニウム30重量%、モノメチルアルソン酸アンモニウム4重量%、酢酸アンモニウム14重量%、水9重量%、エチレングリコール43重量%を含有する作動溶液21200kgを60℃に加熱し、アンモニア850kgを20分かけて吹き込んだ。次いで激しく撹拌しながら、60重量%過酸化水素水1700kg、及びメチルエチルケトン4200kgを40分かけて供給すると同時に、アンモニア1600kgを50分かけて吹き込んだ。アンモニア吹き込み終了後さらに30分撹拌することにより、供給した過酸化水素に対し86%の収率でケタジンを得た。
得られたケタジンは、セトラーで作動溶液と分離した。次いで、180℃、830KPaの蒸留塔へ、ケタジン3500kg/h、水3900kg/hで供給することにより、缶出液として40重量%水加ヒドラジン水溶液を1800kg/hで得た。この水溶液を103℃の蒸留塔へ、2300kg/hで供給して気化させてから、40段の蒸留塔の下から10段目に供給した。一方、中性硫酸ヒドラジンを75%含有するヒドラジン水溶液を7000kg/hで40段の蒸留塔の塔頂から10段下へ供給した。常圧下で塔頂から水を850kg/hで留出させ、得られた缶出液を7.3kPaで蒸留することにより水加ヒドラジンを1100kg/hで得た。
得られた水加ヒドラジンは、ガスクロマトグラフィー分析でを2−ブチルアセトアミド0.0011重量%、o−クレゾール0.00058重量%含有する、TOC0.057重量の100重量%水加ヒドラジン(以下、HH1液と称す)であった。
このHH1液7500gを、直径30mmのガラスカラムに充填した吸着樹脂ダイヤイオンHP50(三菱化学製)250mlへ25℃、150g/hの速度で通液した。通液後の水加ヒドラジンを水で希釈し、水加ヒドラジンに対して2−ブチルアセトアミド0.00008重量%、o−クレゾール0.00001重量%以下、TOC0.006重量%の60%水加ヒドラジン水溶液(以下、HH2液と称す)を得た。
実施例1
60℃に加熱した純水80mlに塩化ニッケル6水和物7.99gを添加後、8N−NaOH水溶液を14ml添加した。このときの溶液のpHは13であった。分散剤として1重量%カルボキシメチルセルロース水溶液を1.2g添加した後、450rpmで撹拌しながら、HH2液を5分かけて添加した。ニッケル用イオン試験紙でニッケルイオンが検出されなくなるまで温度を保ちながら撹拌を継続した後、ニッケル粉末を濾別し、次いで300mlの純水で洗浄し、90℃で乾燥することによりニッケル粉末を得た。水加ヒドラジンの添加を開始した時点からニッケルイオンが検出されなくなるまでの時間(以下、反応時間と称す)は100分であった。得られたニッケル粒子について電子顕微鏡で撮影した写真を用いて一次粒子の平均粒径(フェレ−径)およびその標準偏差を求めたところ、平均粒径0.42μm、標準偏差0.16μmであった。
実施例2
HH1液に対して通液温度を40℃にした以外は、参考例と同様に吸着樹脂に通液した。これにより、水加ヒドラジンに対して2−ブチルアセトアミド0.00066重量%、o−クレゾール0.00026重量%、TOC0.0090重量%の60%水加ヒドラジン溶液を得た。この薬液を用いて実施例1と同様の製造を行ったその結果、反応時間は115分であった。また、得られたニッケル粒子の平均粒径0.52μm、標準偏差0.23μmであった。
比較例1
HH2液の代わりに、HH1液を水で希釈して得た60重量%水加ヒドラジン水溶液を用いて実施例1と同様にニッケルの製造を行ったが、180分経過しても反応液からはニッケルイオンは検出され、反応は完結しなかった。
比較例2
HH2液に試薬t−ブチルアセトアミドを水加ヒドラジンに対して0.001重量%添加し、実施例1と同様にニッケルの製造を行った。その結果、反応時間は125分であった。また、得られたニッケル粒子の平均粒径は0.58μm、標準偏差は0.27μmであった。
比較例3
HH2液に試薬o−クレゾールを水加ヒドラジンに対して0.001重量%添加し、実施例1と同様にニッケルの製造を行った。その結果、反応時間は140分であった。また、得られたニッケル粒子の平均粒径は0.58μm、標準偏差は0.28μmであった。
比較例4
参考例で使用した樹脂を用い、更にHH1液1250gを通液した。通液後の水加ヒドラジンを水で希釈し、水加ヒドラジンに対して2−ブチルアセトアミド0.0019重量%、o−クレゾール0.00052重量%、TOC0.011重量%の60%水加ヒドラジン水溶液を得た。この液を用いて、実施例1と同様にニッケルの製造を行ったが、180分経過しても反応液からはニッケルイオンは検出され、反応は完結しなかった。

Claims (5)

  1. ケタジンを加水分解して得られる水加ヒドラジンを含有する金属微粉末の製造用薬液であって、該水加ヒドラジン中のアミド類が0.001重量%以下、及び/又は該水加ヒドラジン中のフェノール類が0.0003重量%以下であることを特徴とする金属微粉末の製造用薬液。
  2. 全有機炭素含有率が水加ヒドラジンに対して0.02重量%以下である請求項1記載の薬液。
  3. ケタジンを加水分解して得られる水加ヒドラジンを吸着樹脂に通液することを特徴とする請求項1記載の金属微粉末の製造用薬液の製造方法。
  4. 水加ヒドラジンを吸着樹脂1mlに対し、1g/h以下の速度で通液する請求項3記載の製造方法。
  5. 吸着樹脂1mlに対し、水加ヒドラジン30g以下で通液を終了し樹脂を再生することを特徴とする請求項4記載の製造方法。
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