JP2005187564A - 成型用ポリエステルフィルム及び成型部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱成型時の成型性に優れ、かつ成型体として常温雰囲気下で使用する際に、剛性及び形態安定性(熱収縮特性、厚みムラ)に優れた成型用ポリエステルフィルム及びそれを成型してなる成型部材を提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成された共重合ポリエステルを含む成型用ポリエステルフィルムであって、前記フィルムは長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で180〜1000MPa及び100℃で1〜100MPaであり、かつ固有粘度が0.58dl/g以上であることを特徴とする成型用ポリエステルフィルム。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成された共重合ポリエステルを含む成型用ポリエステルフィルムであって、前記フィルムは長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で180〜1000MPa及び100℃で1〜100MPaであり、かつ固有粘度が0.58dl/g以上であることを特徴とする成型用ポリエステルフィルム。
Description
本発明は、インサート成型性、エンボス成型性等の成型性、特に金型成型やインサート成型における成型性に優れ、さらに、透明性、耐熱性に優れ、家電、自動車の銘板用又は建材用部材等として好適な成型用ポリエステルフィルム及びそれを成形してなる成型部材に関する。
従来、加工用シートとしては、ポリ塩化ビニルフィルムが代表的であり、加工性などの点で好ましく使用されてきた。一方、該フィルムは火災などによりフィルムが燃焼した際の有毒ガス発生の問題、可塑剤のブリードアウトなどの問題があり、近年の耐環境性のニーズにより新しい素材が求められてきている。
従来、炭素数が3以上の、長鎖の直鎖状脂肪族ジカルボン酸成分及び/又は長鎖の直鎖状脂肪族グリコール成分を含む共重合ポリエステルをフィルム原料として使用することにより、成型性を改良しようとする技術開示は多数見られる。しかしながら、それらの共重合成分によりポリエステル樹脂は柔軟化し、成型時のみならず実際に成型体として使用される場合も強度や剛性に乏しく、安定性が悪いという欠点を有している。安定性を高めるために、前記成分の共重合組成比を小さくすると成型性が低下し、成型性と、強度や剛性とを両立させることが困難であった。
例えば、前記共重合ポリエステルとしてネオペンチルグリコールを共重合成分とするポリエステルからなる成型用ポリエステルフィルムが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの従来技術に記載された共重合成型用ポリエステルフィルムは、厚さが50μm以下のものであるため、比較的製膜が容易である。
特開平1−252658号公報
特開平1−45699号公報
しかしながら、厚さが50μmを越える場合には、共重合ポリエステルが本質的に有する、延伸時の応力低下及び結晶化度の点から、分子配向の制御が不十分となる傾向があり、剛性や形態安定性が不十分となる場合がある。そのため、成型性を維持しながら、常温雰囲気下の成型体使用時には剛性や形態安定性(熱収縮特性、厚みムラ)に優れた成型用ポリエステルフィルムが望まれていた。
すでに、本発明者等は、フィルムの長手方向および幅方向における、25℃および100℃での100%伸張応力を特定の範囲とした成型用ポリエステルフィルムに係る発明を提案した(特許文献3参照)。該発明によれば、従来技術の問題点を解消し、加熱成型時の成型性に優れ、かつ成型体として常温雰囲気下で使用する際に、剛性及び形態安定性(熱収縮特性、厚みムラ)に優れる成型用ポリエステルフィルムが得られるようになった。
特願2002−233694号
しかしながら、特に、金型成型やインサート成型など、成型時の変形度が高く、かつその成型速度が高い成型方法で成型する場合、基材フィルムの破断による生産性低下の点で、さらに改善の余地があった。
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解消し、加熱成型時の成型性に優れ、かつ成型体として常温雰囲気下で使用する際に、剛性及び形態安定性(熱収縮特性、厚みムラ)に優れた成型用ポリエステルフィルム及びそれを成形してなる成型部材を提供することにある。
すなわち、本発明は、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成された共重合ポリエステルを含む成型用ポリエステルフィルムであって、前記フィルムは長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で180〜1000MPa及び100℃で1〜100MPaであり、かつ固有粘度が0.58dl/g以上であることを特徴とする成型用ポリエステルフィルムである。
また、本発明は、前記成型用ポリエステルフィルムを金型成型法またはインサート成型法を用いて成型してなる成型部材である。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向の100%伸張時応力を25℃と100℃で独立して制御し、かつ該成型用ポリエステルフィルムの固有粘度を特定の範囲としているため、加熱時の成型性と、成型体としての使用時の剛性及び形態安定性(厚みムラ、熱収縮特性)に優れており、家電、自動車用銘板用及び建材用部材などにも好適な成型部材である。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とからなる共重合ポリエステルを含むポリエステルから構成されている。前記分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールは、分子の自由回転などの運動性を抑制する側鎖あるいは環状の構造を有しており、このようなモノマーを共重合することにより、ガラス転移温度(Tg)を下げることなく、融点(Tm)を低下させ、かつ破断伸度を大きくすることができる。
このような共重合ポリエステルをフィルム原料として用いた、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、成型時の高温雰囲気下では成型性に優れ、成型体として使用される常温雰囲気下では剛性及び形態安定性(熱収縮特性、厚みムラ)にも優れるという特長を有し、特に金型成型法やインサート成型法などの成型方法で成型するのに好適な成型用ポリエステルフィルムである。
前記特長は、長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で180〜1000MPa及び100℃で1〜100MPaという物性で表現することができる。
フィルムの長手方向及び幅方向における25℃雰囲気下での100%伸張時応力は、剛性や形態安定性(厚みムラ、150℃での熱収縮率)と成型性を両立させる点から、180〜1000MPaであることが重要である。
前記の25℃における100%伸長時応力の下限値は、成型体使用時の常温雰囲気下での剛性及び厚みムラの点から、210MPaであることが好ましく、特に好ましくは220MPaである。
一方、前記の25℃雰囲気下での100%伸長時応力は、1000MPaを越えるような高剛性のフィルムでは、加熱成型時の成型性が悪化しやすくなる。
フィルムの長手方向及び幅方向における100℃雰囲気下での100%伸張時応力は、成型性の点から、1〜100MPaであることが重要である。
前記の100℃雰囲気下での100%伸長時応力の下限値は、5MPaであることが好ましく、特に好ましくは10MPaである。高変形性が要求される分野では、100℃雰囲気下での100%伸張時応力が小さいことは成型性の点からは望ましい方向である。しかしながら、100℃雰囲気下での100%伸張時応力が小さくなると、25℃における100%伸長時応力も小さくなり、常温雰囲気下での剛性及び厚みムラが悪化しやすくなる。
一方、前記の100℃における100%伸長時応力は、加熱成型時の成型性の点から、90MPaであることが好ましく、特に好ましくは80MPaである。
また、成型性の点からは、100℃での破断伸度は、150%以上であることが好ましく、さらに好ましくは170%以上、特に好ましくは200%以上である。
また、形態安定性の点からは、25℃での破断伸度は、130%以上であることが好ましく、さらに好ましくは150%以上、特に好ましくは170%以上である。
本発明において、加工適性の経時安定性として、100℃での長手方向及び幅方向の100%伸張時応力の変化率((製膜1ヶ月経時後−製膜直後)×100/製膜直後)が、いずれも±20%以下であることが好ましい。さらに好ましくは±10%以下であり、特に好ましくは±5%以下である。
本発明の成型用ポリエステルフィルムの厚みは、成型性、フィルムに意匠性を高めるために印刷層を設ける際の被覆性、フィルム表面の保護性、意匠性の点から、50〜500μmであることが好ましい。フィルム厚みの下限値は、60μmが好ましく、特に好ましくは70μmである。一方、フィルム厚みの上限値は300μmが好ましく、特に好ましくは200μmである。
また、フィルムの厚みムラは、5.5%以下であることが好ましい。前記厚みムラが5.5%を越えると、印刷性、寸法安定性が悪化しやすくなる。
さらに、フィルムの150℃における長手方向及び幅方向の熱収縮率が6.0%以下であることが、意匠を高めるために成型用ポリエステルフィルムに印刷層を設けた後の印刷ずれを低減する点から好ましい。
また、前記フィルムは、厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)が0.030以下であることが、透明性及び印刷鮮明性の点から好ましい。前記H/dは、0を越え0.025以下が好ましく、特に好ましくは0.015以下である。
前記H/dの下限値はゼロに近いほど好ましいが、必要最小限の凹凸をフィルム表面に形成しないと、滑り性や巻き性などのハンドリング性が悪化し、フィルム表面に傷がつく場合や、生産性が悪化する場合があった。バックライトなどを用いた透光銘板の場合には、高度な透明性が要求されるので、前記H/dがさらにゼロに近いほど好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、該フィルムの固有粘度が0.58dl/g以上であるため、特に金型成型法やインサート成型法などの成型時の変形度が高く、かつその成型速度を高い成型方法により成型しても、フィルムが破断することなく、美麗に、かつ高速での成型に耐えることができる。
以下に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルとは、エステル結合により構成される高分子量体の総称を意味する。
本発明におけるポリエステルとは、エステル結合により構成される高分子量体の総称を意味する。
本発明の成型用ポリエステルフィルムでは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成された共重合ポリエステルをフィルム原料の一部として、あるいは100%使用する。
前記共重合ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分が主としてテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体からなるが、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸成分の量は70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。
また、分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールなどが例示される。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
これらのなかでも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましく、本発明で規定したフィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で180〜1000MPa及び100℃で1〜100MPaを満足させるために有効である。さらに、成型性や透明性に優れるだけでなく、耐熱性にも優れ、印刷層などの塗布層との密着性を向上させる点からも好ましい。
さらに、必要に応じて、前記共重合ポリエステルに下記のようなジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分を1種又は2種以上を共重合成分として併用してもよい。
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とともに併用することができる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(2)シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(3)シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(4)p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
一方、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールとともに併用することができる他のグリコール成分としては、例えば1,3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、前記共重合ポリエステルに、さらにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合させることもできる。
前記共重合ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
前記共重合ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、前記共重合ポリエステルをそのままフィルム原料として用いてもよいし、共重合成分が多い共重合ポリエステルをホモポリエステルとブレンドして、共重合成分量を調整しても構わない。
また、前記共重合ポリエステルを2種以上ブレンドして本発明の成型用ポリエステルフィルムの原料として使用することは、成型性の点から好ましい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートにポリネオペンテンテレフタレート及び/又はポリシクロへキサンジメチレンテレフタレートをブレンドした混合ポリマーが柔軟性、成型性の点から特に好ましい。
前記ポリエステル基材フィルムの融点は、耐熱性及び成型性の点から、220〜245℃であることが好ましい。ここで、融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。なお、DSCの測定は、示差走査熱量計(デュポン社製、V4.OB2000型)を用い、昇温速度20℃/分で行った。融点の下限値は、225℃がさらに好ましく、特に好ましくは230℃である。融点が220℃未満であると、耐熱性が悪化する傾向がある。そのため、成型時や成型品の使用時に高温にさらされた際に、問題となる場合がある。
融点は耐熱性の点からは高いほうがよいが、ポリエチレンテレフタレート単位を主体とした場合、高い透明性と柔軟性を確保しようとすると、融点245℃を超えるフィルムでは、透明性の確保が困難である。そのため、共重合ポリエステルの共重合成分の比率を調節して融点を低くすることが重要であり、共重合ポリエステルの融点の上限は245℃とすることが好ましい。さらに、透明性を高くする必要がある場合は、共重合ポリエステルの融点の上限を240℃とする。
これらを満足させるためには、例えば、高融点ポリエステル(PETなど)と低融点の共重合ポリエステルを溶融混合することが好ましい。溶融ブレンド法を用いてフィルムを製膜することによって、共重合ポリエステルのみを用いた場合と同等の適度の剛性を維持しながら透明性と高い融点(耐熱性)を実現し、高融点ポリエステルのみを用いた場合に対しては、高い透明性を維持しながら適度の剛性と実用上問題のない融点(耐熱性)を実現することができる。
また、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性の改善のために、フィルム表面に凹凸を形成させることが好ましい。フィルム表面に凹凸を形成させる方法としては、一般にフィルム中に粒子を含有させる方法が用いられる。
前記粒子としては、平均粒子径が0.01〜10μmの公知の内部粒子、無機粒子及び/又は有機粒子などの外部粒子が挙げられる。平均粒子径が10μmを越える粒子を使用すると、フィルムの欠陥が生じ易くなり、意匠性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。
なお、粒子の平均粒子径は、少なくとも200個以上の粒子を電子顕微鏡法により複数枚写真撮影し、OHPフィルムに粒子の輪郭をトレースし、該トレース像を画像解析装置にて円相当径に換算して算出する。
前記外部粒子としては、例えば湿式及び乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を使用することができる。なかでも、乾式、湿式及び乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等が、好ましく使用される。これらの内部粒子、無機粒子及び/又は有機粒子は二種以上を、特性を損ねない範囲内で併用してもよい。
さらに、前記粒子のフィルム中での含有量は0.001〜10質量%の範囲であることが好ましい。0.001質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、10質量%を越えると、粗大突起や製膜性の悪化などの原因となりやすい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、厳しい成型性が必要な用途には未延伸フィルムが好適である。また、耐熱性や寸法安定性の点からは、二軸延伸成型用ポリエステルフィルムが好適である。かかる二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、種類の異なるポリエステルを用い、公知の方法で積層構造とすることができる。かかる積層フィルムの形態は、特に限定されないが、例えばA/Bの2種2層構成、B/A/B構成の2種3層構成、C/A/Bの3種3層構成の積層形態が挙げられる。
本発明の成型用ポリエステルフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えばポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸シートを得た後、かかる未延伸シートを二軸延伸する方法が例示される。
かかる延伸方式としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれでもよいが、要するに該未延伸シートをフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸、熱処理し、目的とする面内配向度を有する二軸延伸フィルムを得る方法が採用される。これらの方式の中でも、フィルム品質の点で、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸するMD/TD法、又は幅方向に延伸した後、長手方向に延伸するTD/MD法などの逐次二軸延伸方式、長手方向及び幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。さらに、必要に応じて、同一方向の延伸を多段階に分けて行う多段延伸法を用いても構わない。
二軸延伸する際のフィルム延伸倍率としては、長手方向と幅方向に1.6〜4.2倍とすることが好ましく、特に好ましくは1.7〜4.0倍である。この場合、長手方向と幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよいし、同一倍率としてもよい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムにおいて、(1)テレフタル酸とエチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなる共重合ポリエステル、あるいは(2)テレフタル酸とエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルを使用する場合、長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で180〜1000MPa及び100℃で1〜100MPaとするためには、長手方向の延伸倍率は2.8〜4.0倍、幅方向の延伸倍率は3.0〜4.5倍で行うのがよい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムを製造する際の延伸条件は、特に限定されるものではない。しかしながら、本発明で規定した25℃及び100℃における100%伸張時応力の範囲を満足させるためには、例えば、下記の条件を採用することが取ることが好ましい。
縦延伸においては、後の横延伸がスムースにできるよう延伸温度は50〜110℃、延伸倍率は1.5〜4.0倍とすることが好ましい。
横延伸においては、長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で180〜1000MPa及び100℃で1〜100MPaとするために特に重要である。
通常、ポリエチレンテレフタレートを延伸する際に、適切な条件に比べ延伸温度が低い場合は、横延伸の開始初期で急激に降伏応力が高くなるため、延伸ができない。また、たとえ延伸ができても厚みや延伸倍率が不均一になりやすいため好ましくない。
また、適切な条件に比べ延伸温度が高い場合は初期の応力は低くなるが、延伸倍率が高くなっても応力は高くならない。そのため、25℃における100%伸張時応力が小さいフィルムとなる。よって、最適な延伸温度をとることにより、延伸性を確保しながら配向の高いフィルムを得ることができる。
しかしながら、前記共重合ポリエステルが共重合成分を1〜40モル%含む場合、降伏応力をなくすように延伸温度を高くしていくと、延伸応力は急激に低下する。特に、延伸の後半でも応力が高くならないため、配向が高くならず、25℃における100%伸張時応力が低下する。
このような現象は、フィルムの厚さが60〜500μmで発生しやすく、特に厚みが100〜300μmのフィルムで顕著に見られる。そのため、例えばネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルを用いたフィルムの場合、横方向の延伸温度は、以下の条件とすることが好ましい。
まず、予熱温度は90〜120℃とし、横延伸の前半部の延伸温度は予熱温度よりも5〜25℃高くし、また横延伸の後半部の延伸温度は、前半部の延伸温度よりも15〜40℃低くすることが好ましい。このような条件を採用することにより、横延伸の前半では降伏応力が小さいため延伸しやすく、また後半では配向しやすくなる。なお、横方向の延伸倍率は、2.5〜5.0倍とすることが好ましい。その結果、長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で180〜1000MPa及び100℃で1〜100MPaを満足するフィルムを得ることが可能である。
さらに、二軸延伸後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理は、オーブン中、あるいは、加熱されたロール上など、従来公知の方法で行うことができる。また、熱処理温度及び熱処理時間は必要とされる熱収縮率のレベルによって任意に設定することができる。熱処理温度は120〜245℃の範囲が好ましく、特に好ましくは150〜230℃である。熱処理時間は、1〜60秒間行うことが好ましい。なお、かかる熱処理はフィルムをその長手方向及び/又は幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。
フィルムの150℃における長手方向及び横方向の熱収縮率を小さくするためには、熱処理温度を高くすること、熱処理時間を長くすること、弛緩処理を行うことが好ましい。しかしながら、ラインを長くして熱処理時間を長くする方法は、設備上の制約により困難である。また、フィルムの送り速度を遅くして熱処理時間を長くする方法では、生産性が低下するという問題がある。
150℃における長手方向及び幅方向の熱収縮率を6.0%以下とするためには、熱処理温度は200〜220℃で、弛緩率1〜8%で弛緩させながら行うことが好ましい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行ってもよい。
本発明においては、前記の成型用ポリエステルフィルムの固有粘度が0.58dl/g以上であることが重要であり、0.60dl/g以上がより好ましい。固有粘度が0.58dl/g未満では、成型時の変形度が高く、かつその成型速度を高めた場合には、該成型用の基材フィルムの破断頻度が増加する傾向がある。固有粘度の上限は、溶融押出時の吐出安定性の点から1.0dl/g以下が好ましい。
前記の固有粘度の値を達成する手段は制限なく任意であるが、原料であるポリエステル樹脂の固有粘度を高める、フィルム製造工程でのポリエステルの分解を抑える方策を採り、該工程での固有粘度の低下を抑制する等を挙げることができる。
後者のフィルム製造工程での固有粘度の低下を抑制する方策としては、原料ポリエステル樹脂中の水分量を低くする、溶融押し出し工程の押し出し温度を低くする、溶融押し出し工程の雰囲気の酸素濃度や水分量を低減させる等の手段を挙げることができる。また、請求項6に記載のごとく原料のポリエステル樹脂に対して0.05〜5質量%の酸化防止剤を配合しフィルム製造工程等でのポリエステル樹脂の酸化劣化を抑制することは好ましい実施態様である。
前記の酸化防止剤の種類は限定なく任意であるが、例えばヒンダードフェノール、2級芳香族アミン、ヒンダードアミン等のラジカルトラップ型酸化防止剤、ホスホナイト、トリアルキルホスフィット、ジラウリルジプロピオネート等の過酸化物分解型酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用が特に好ましい。
前記のヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−トルエン、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネ−ト、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6’−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−モノエチル−フォスフェ−ト)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンテリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス[3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸]グリコールエステル、トリフェロ−ル、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、2,2’−オキサミドビス[エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、1,1,3−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレ−ト、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミックアヒドトリエステルウイズ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)などを挙げることができる。
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ポリエステル樹脂組成物に対して0.05〜5質量%を含有させることが好ましい。前記酸化防止剤の含有量の下限値は、熱劣化や耐熱老化性の点から、0.1質量%が特に好ましい。一方、前記酸化防止剤の上限値は、ブリードアウトにともなう製品外観悪化の点から、4質量%が特に好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤が5質量%を越える場合では、前記酸化防止剤がフィルム表面にブリ−ドアウトすることから製品外観を損ないやすくなる。また、前記酸化防止剤が0.05質量%未満では、押出し時や成型時に発泡などの熱劣化や耐熱老化性が低下しやすくなる。
なお、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は1種類でもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤と他の酸化防止剤を併用することで、耐熱老化性、滞留安定性、製品外観をさらに向上させることができる。他の酸化防止剤としては、硫黄系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などを挙げることができる。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、特に成型用途に使用することが好ましい。成型用ポリエステルフィルムとは、熱や圧力などを加え変形させることにより使用されるものである。成型手段としては、特に金型成型法やインサート成型法が特に好適である。このように成型された成型体は、家電用銘板、自動車用銘板、ダミー缶、建材、化粧板、化粧鋼鈑、転写シートなどの成型部材に用いられる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(2)厚みムラ
横延伸方向に3m、縦延伸方向に5cmの長さの連続したテープ状サンプルを巻き取り、フィルム厚み連続測定機(アンリツ株式会社製)にてフィルムの厚みを測定し、レコーダーに記録する。チャートより、厚みの最大値(dmax)、最小値(dmin)、平均値(d)を求め、下記式にて厚みムラ(%)を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。また、横延伸方向の長さが3mに満たない場合は、つなぎ合せて行う。なお、つなぎの部分はデータから削除する。
厚みムラ(%)=((dmax−dmin)/d)×100
横延伸方向に3m、縦延伸方向に5cmの長さの連続したテープ状サンプルを巻き取り、フィルム厚み連続測定機(アンリツ株式会社製)にてフィルムの厚みを測定し、レコーダーに記録する。チャートより、厚みの最大値(dmax)、最小値(dmin)、平均値(d)を求め、下記式にて厚みムラ(%)を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。また、横延伸方向の長さが3mに満たない場合は、つなぎ合せて行う。なお、つなぎの部分はデータから削除する。
厚みムラ(%)=((dmax−dmin)/d)×100
(3)ヘイズ
JIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
JIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
(4)フィルムの厚み
ミリトロンを用い、1枚当たり5点を計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
ミリトロンを用い、1枚当たり5点を計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
(5)100%伸張時応力、破断伸度
二軸延伸フィルムの長手方向及び幅方向に対して、それぞれ長さ180mm及び幅10mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出し、この試料を引っ張り試験機(東洋精機株式会社製)を用いて試料を引っ張り、得られた荷重−歪曲線から各方向の100%伸張時応力(MPa)及び破断伸度(%)を求めた。
二軸延伸フィルムの長手方向及び幅方向に対して、それぞれ長さ180mm及び幅10mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出し、この試料を引っ張り試験機(東洋精機株式会社製)を用いて試料を引っ張り、得られた荷重−歪曲線から各方向の100%伸張時応力(MPa)及び破断伸度(%)を求めた。
なお、測定は25℃の雰囲気下で、初期長40mm、チャック間距離100mm、クロスヘッドスピード100mm/min、記録計のチャートスピード200mm/min、ロードセル25kgfの条件にて行った。測定は10回行い平均値を用いた。
また、100℃の雰囲気下でも、上記と同様の条件で引っ張り試験を行った。この際、試料は100℃の雰囲気下で30秒保持した後、測定を行った。測定は10回行い平均値を用いた。
(6)150℃での熱収縮率
フィルムの長手方向及び幅方向に対し、それぞれ長さ250mm及び幅20mmの短冊状試料を切り出す。各試料の長さ方向に200mm間隔で2つの印を付け、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で2つの印の間隔Aを測定する。続いて、短冊状の各試料の片側をカゴに無荷重下でクリップにてつるし、150℃の雰囲気下のギアオーブンに入れると同時に時間を計る。30分後、ギアオーブンからカゴを取り出し、30分間室温で放置する。次いで、各試料について、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で、2つの印の間隔Bを金指により0.25mm単位で読み取る。読み取った間隔A及びBより、各試料の150℃での熱収縮率を下記式により算出する。
熱収縮率(%)=((A−B)/A)×100
フィルムの長手方向及び幅方向に対し、それぞれ長さ250mm及び幅20mmの短冊状試料を切り出す。各試料の長さ方向に200mm間隔で2つの印を付け、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で2つの印の間隔Aを測定する。続いて、短冊状の各試料の片側をカゴに無荷重下でクリップにてつるし、150℃の雰囲気下のギアオーブンに入れると同時に時間を計る。30分後、ギアオーブンからカゴを取り出し、30分間室温で放置する。次いで、各試料について、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で、2つの印の間隔Bを金指により0.25mm単位で読み取る。読み取った間隔A及びBより、各試料の150℃での熱収縮率を下記式により算出する。
熱収縮率(%)=((A−B)/A)×100
(7)成型性
フィルムに印刷を施した後、130℃で5秒間加熱後、金型温度80℃、保圧時間5秒にてプレス成形を行った。得られたプレス成型品に射出成形機で樹脂温度210℃のABS樹脂を流し込むインサート成形をし、表面がフィルムで覆われた高さ3.0mmのキートップを作成した。作成した10個について印刷ずれを測定し、かつ成形状態を目視観察し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
フィルムに印刷を施した後、130℃で5秒間加熱後、金型温度80℃、保圧時間5秒にてプレス成形を行った。得られたプレス成型品に射出成形機で樹脂温度210℃のABS樹脂を流し込むインサート成形をし、表面がフィルムで覆われた高さ3.0mmのキートップを作成した。作成した10個について印刷ずれを測定し、かつ成形状態を目視観察し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:印刷ずれが0.1mm以下で、外観は極めて良好である。
○:印刷ずれが0.1mm以上0.2mm以下で、若干のしわが見うけられるが、実用
上問題ないレベルである。
×:印刷ずれが0.2mmを越えている。または、フィルムに破断が見うけられる。ま
たは、大きな皺が入り著しく外観が悪い。
○:印刷ずれが0.1mm以上0.2mm以下で、若干のしわが見うけられるが、実用
上問題ないレベルである。
×:印刷ずれが0.2mmを越えている。または、フィルムに破断が見うけられる。ま
たは、大きな皺が入り著しく外観が悪い。
(8)成型操業性
下記の金型成型を実施し、50回の成型を行い、穴あきなどのトラブル無く成型できた比率を算出し、下記の判断基準に基づき○を合格とした。
<金型成型条件>
(a)金型形状
(a-1)カップ状、(a-2)直径:50mmΦ、(a-3)高さ:20mm、
(a-4)すべての面に対し、半径0.5mmの面取り加工、
(a-5)雄型と雌型のクリアランス:0.5mm
(b)成型条件
(b-1)フィルム温度:130℃、(b-2)金型温度:80℃、
(b-3)ストローク:50mm、(b-4)型締め速度:10cm/秒、
(b-5)保圧時間:5秒
<判定基準>
○:95%以上
△:50%以上95%未満
×:50%未満
下記の金型成型を実施し、50回の成型を行い、穴あきなどのトラブル無く成型できた比率を算出し、下記の判断基準に基づき○を合格とした。
<金型成型条件>
(a)金型形状
(a-1)カップ状、(a-2)直径:50mmΦ、(a-3)高さ:20mm、
(a-4)すべての面に対し、半径0.5mmの面取り加工、
(a-5)雄型と雌型のクリアランス:0.5mm
(b)成型条件
(b-1)フィルム温度:130℃、(b-2)金型温度:80℃、
(b-3)ストローク:50mm、(b-4)型締め速度:10cm/秒、
(b-5)保圧時間:5秒
<判定基準>
○:95%以上
△:50%以上95%未満
×:50%未満
実施例1
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位92モル%及びネオペンチルグリコール単位8モル%を構成単位とし、平均粒子径1.5μmの無定形シリカを400ppmおよび酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバガイギー製、イルガノックス1010)をポリエステル100質量部に対して1質量部、さらにベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)をポリエステル100質量部に対して0.5質量部を含有する、固有粘度0.69dl/gの共重合ポリエステル組成物を作製した。この共重合ポリエステル組成物を予備結晶化後、本乾燥し、Tダイを有する押出し機を用いて290℃で溶融押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位92モル%及びネオペンチルグリコール単位8モル%を構成単位とし、平均粒子径1.5μmの無定形シリカを400ppmおよび酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバガイギー製、イルガノックス1010)をポリエステル100質量部に対して1質量部、さらにベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)をポリエステル100質量部に対して0.5質量部を含有する、固有粘度0.69dl/gの共重合ポリエステル組成物を作製した。この共重合ポリエステル組成物を予備結晶化後、本乾燥し、Tダイを有する押出し機を用いて290℃で溶融押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。
得られたシートを加熱ロールと冷却ロールの間で長手方向に80℃で3.5倍に延伸した後、その一軸延伸シートをテンターに導いた。次いで、100℃で15秒予熱し、横延伸の前半部を115℃、後半部を95℃で3.6倍延伸し、7%の横方向の弛緩を行いながら205℃で熱処理を行い、厚さ188μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの固有粘度は0.61dl/gであった。
実施例2
実施例1において、フィルムの厚さを100μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
実施例1において、フィルムの厚さを100μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
実施例3
実施例1の方法において、ポリエステル樹脂を、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位90モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位10モル%を構成単位とし、固有粘度0.71dl/gの共重合ポリエスルに変更する以外は実施例1と同様にして無定形シートを得た。
実施例1の方法において、ポリエステル樹脂を、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位90モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位10モル%を構成単位とし、固有粘度0.71dl/gの共重合ポリエスルに変更する以外は実施例1と同様にして無定形シートを得た。
得られたシートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に75℃で3.0倍に延伸した後、その一軸延伸シートをテンターに導いた。次いで、105℃で15秒予熱し、横延伸の前半部を125℃、後半部を98℃で3.6倍に延伸し、横方向に7%の弛緩を行いながら205℃で熱処理を行い、厚さ188μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの融点は228℃、固有粘度は0.62dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
比較例1
実施例1においてポリエステル樹脂をポリエチレンテレフタレートに変更し、90℃で3.7倍に縦延伸し、次いで120℃で4.0倍に横延伸を行った後、横方向に10%弛緩させながら200℃にて熱処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの融点は265℃、固有粘度は0.61dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
実施例1においてポリエステル樹脂をポリエチレンテレフタレートに変更し、90℃で3.7倍に縦延伸し、次いで120℃で4.0倍に横延伸を行った後、横方向に10%弛緩させながら200℃にて熱処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの融点は265℃、固有粘度は0.61dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
比較例2
実施例1において、125℃で3.5倍に縦延伸し、次いで130℃で3.5倍に横延伸を行った後、230℃で熱処理したこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
実施例1において、125℃で3.5倍に縦延伸し、次いで130℃で3.5倍に横延伸を行った後、230℃で熱処理したこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
比較例3
実施例1において、ポリエステル組成中のエチレングリコールとネオペンチルグリコールの組成比をそれぞれ85モル%と15モル%にし、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合を止め、かつ溶融押し出し温度を280℃とする以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの融点は205℃、固有粘度は0.57dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
実施例1において、ポリエステル組成中のエチレングリコールとネオペンチルグリコールの組成比をそれぞれ85モル%と15モル%にし、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合を止め、かつ溶融押し出し温度を280℃とする以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの融点は205℃、固有粘度は0.57dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
比較例4
実施例3の方法において、ポリエステル組成中のエチレングリコール単位と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位の組成比をそれぞれ75モル%と25モル%とし、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合を止める以外は、実施例3と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの固有粘度は0.55dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
実施例3の方法において、ポリエステル組成中のエチレングリコール単位と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位の組成比をそれぞれ75モル%と25モル%とし、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合を止める以外は、実施例3と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの固有粘度は0.55dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
比較例5
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位90モル%及びアジピン酸を10モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位100モル%を構成単位とすし、平均粒子径1.4μmの不定形シリカを800ppm含有する、固有粘度0.71dl/gの共重合ポリエステルを用いた以外は、比較例3と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの融点は230℃、固有粘度は0.55dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位90モル%及びアジピン酸を10モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位100モル%を構成単位とすし、平均粒子径1.4μmの不定形シリカを800ppm含有する、固有粘度0.71dl/gの共重合ポリエステルを用いた以外は、比較例3と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの融点は230℃、固有粘度は0.55dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
比較例6
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位95モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位3モル%、及びジエチレングリコール単位2モル%を構成単位とし、平均粒子径0.6μmのケイ酸アルミニウムを2000ppm含有する、固有粘度0.67dl/gの共重合ポリエステル組成物を作製した。この共重合ポリエステル組成物を予備結晶化後、本乾燥し、Tダイを有する押出し機を用いて280℃で溶融押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位95モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位3モル%、及びジエチレングリコール単位2モル%を構成単位とし、平均粒子径0.6μmのケイ酸アルミニウムを2000ppm含有する、固有粘度0.67dl/gの共重合ポリエステル組成物を作製した。この共重合ポリエステル組成物を予備結晶化後、本乾燥し、Tダイを有する押出し機を用いて280℃で溶融押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
得られたシートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に96℃で3.4倍に延伸したあと、その一軸延伸シートをテンターに導いた。次いで、100℃で15秒予熱し、横方向に115℃で3.3倍延伸し、5%の横方向の弛緩を行いながら180℃で熱処理を行い、厚さは188μmのニ軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの固有粘度は、0.55dl/gであった。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び2に示す。
実施例1〜3で得られたフィルムは成型時の印刷ズレが少なく、金型成型時の穴あきのトラブルも少ない成型性の良好なフィルムであった。
実施例4
実施例1〜3で得られた二軸延伸ポリエステルフィルム表面に、UVインキを用いてオフセット印刷で図柄を印刷した。次いで、該印刷体を金型温度100℃でプレス成型を行い、押し込み深さ2.0mmのスイッチ用銘板を作成した。成型時の穴あきトラブル等の発生はなく成型作業の操業性は良好であった。
実施例1〜3で得られた二軸延伸ポリエステルフィルム表面に、UVインキを用いてオフセット印刷で図柄を印刷した。次いで、該印刷体を金型温度100℃でプレス成型を行い、押し込み深さ2.0mmのスイッチ用銘板を作成した。成型時の穴あきトラブル等の発生はなく成型作業の操業性は良好であった。
比較例7
比較例1〜5で得られた二軸延伸成型用ポリエステルフィルムを、実施例4と同様にしてプレス成型をした。比較例1、2、5および6のフィルムは成型性が、比較例1、3、4、5および6のフィルムは成型作業の操業性が劣っていた。
比較例1〜5で得られた二軸延伸成型用ポリエステルフィルムを、実施例4と同様にしてプレス成型をした。比較例1、2、5および6のフィルムは成型性が、比較例1、3、4、5および6のフィルムは成型作業の操業性が劣っていた。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、加熱時の成型性、成型体としての使用時の剛性及び形態安定性(厚みムラ、熱収縮特性)に優れている。特に、金型成型やインサート成型における成型性に優れており、成型用ポリエステルフィルムとして好適である。また、家電、自動車用銘板、建材用などの成型部材として好適に利用できるものである。
Claims (10)
- 芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成された共重合ポリエステルを含む成型用ポリエステルフィルムであって、前記フィルムは長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で180〜1000MPa及び100℃で1〜100MPaであり、かつ固有粘度が0.58dl/g以上であることを特徴とする成型用ポリエステルフィルム。
- 前記分岐状脂肪族グリコールが、ネオペンチルグリコールであることを特徴とする請求項1記載の成型用ポリエステルフィルム。
- 前記脂環族グリコールが、1,4−シクロヘキサンジメタノールであることを特徴とする請求項1又は2記載の成型用ポリエステルフィルム。
- 前記芳香族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、又はそれらのエステル形成性誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
- 前記フィルムは共重合ポリエステルに対して酸化防止剤を0.05〜5質量%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
- 前記フィルムは、厚みが60〜500μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
- 前記フィルムは、厚みムラが5.5%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
- 前記フィルムは、150℃における長手方向及び幅方向の熱収縮率が6.0%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
- 前記フィルムは、厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)が0.030以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルムを金型成型法またはインサート成型法を用いて成型してなる成型部材。
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JP (1) | JP2005187564A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008059826A (ja) * | 2006-08-30 | 2008-03-13 | Dainippon Printing Co Ltd | 触媒層転写フィルム及び触媒層−電解質膜積層体 |
CN114525016A (zh) * | 2022-02-22 | 2022-05-24 | 广东卓尔新材料有限公司 | 一种低收缩率聚酯薄膜 |
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2003
- 2003-12-25 JP JP2003428777A patent/JP2005187564A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008059826A (ja) * | 2006-08-30 | 2008-03-13 | Dainippon Printing Co Ltd | 触媒層転写フィルム及び触媒層−電解質膜積層体 |
CN114525016A (zh) * | 2022-02-22 | 2022-05-24 | 广东卓尔新材料有限公司 | 一种低收缩率聚酯薄膜 |
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