JP2005335095A - 熱収縮性ポリ乳酸系フィルム - Google Patents

熱収縮性ポリ乳酸系フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】環境問題を発生することなく、透明性を保持しつつ、耐破断性に優れた熱収縮性ポリ乳酸系のフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】所定のD−乳酸とL−乳酸との構成割合を有するポリ乳酸系重合体、融点が100〜170℃、かつ、0℃以下にガラス転移温度を少なくとも1つ有する第1脂肪族ポリエステル、及び融点が50〜100℃、かつ、0℃以下にガラス転移温度を少なくとも1つ有する第2脂肪族ポリエステルの混合物であり、上記混合物100質量部に、溶解パラメータ(SP値)が8.5〜9.5(cal/cm31/2の範囲にある可塑剤を0.5〜15質量部添加した層を中心層とし、所定のD−乳酸とL−乳酸との構成割合を有するポリ乳酸系重合体を最外層とし、上記中心層と最外層とを有し、少なくとも一方向に1.5〜6倍に延伸した、熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを用いる。
【選択図】なし






Description

この発明は、熱収縮性のポリ乳酸系フィルムに関する。
従来から、収縮包装、収縮結束包装、収縮ラベル等に利用される熱収縮性フィルムとして、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、ポリエステル系樹脂等を主たる材料としたものが知られており、産業界で広く利用され、消費されている。
しかし、これらのフィルムは、熱収縮性フィルムとしての特性は非常に優れているが、使用後に自然環境下に廃棄されると、その安定性のため、分解されることなく残留し、景観を損ない、魚、野鳥等の生活環境を汚染する等の問題を引き起こす。
これに対し、環境問題を生じない分解性樹脂からなる材料が種々、検討されている。その1つとして、ポリ乳酸があげられる。ポリ乳酸は、土壌中において、自然に加水分解が進行して土中に原形が残らず、また、微生物により無害な分解物となることが知られている。
上記ポリ乳酸からなる熱収縮性フィルムとしては、ポリ乳酸を主成分とする熱可塑性ポリマー組成物からなるラベル用収縮フィルムが特許文献1等に記載されている。しかし、ポリ乳酸は、素材本来が有する脆性のため、これをこのままシート状やフィルム状に成形しても、十分な強度を得難く、実用に供し難いという問題を有していた。特に、一次延伸して一軸収縮性フィルムを製造する場合、延伸しない方向の脆性が延伸によって改善されないため、その方向に衝撃を受けた場合、裂けが生じ易いという問題を有する。
これに対し、ポリ乳酸に、脂肪族ポリエステルやポリカプロラクトンをブレンドすることが特許文献2〜4等に記載されている。ところが、これらの樹脂混合物を延伸すると、延伸時のポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとの変形挙動が異なるため、延伸した際に表面荒れを起こし、透明性が低下する傾向がある。この現象は、ポリ乳酸以外の成分の含有量が増えるに従って大きくなり、透明性が求められる用途には使用困難となる場合が多い。
これに対し、上記の混合樹脂からなる層の外側にポリ乳酸からなる外層を設けることにより、透明性を確保する旨が特許文献5に記載されている。
特開平5−212790号公報 特開平9−169896号公報 特開平8−300481号公報 特開2001−11214号公報 特開2001−47583号公報
しかしながら、最近、ラベル印刷やラベリング工程で高速化が進んでいるため、使用される熱収縮性ラベルには、このような高速化に十分耐えうるだけの高い耐破断性が求められるようになった。
そこで、この発明は、環境問題を発生することなく、透明性を保持しつつ、耐破断性に優れた熱収縮性ポリ乳酸系のフィルムを提供することを目的とする。
この発明は、D−乳酸とL−乳酸との構成割合が98.0:2.0〜85.0:15.0、又は、2.0:98.0〜15.0:85.0であるポリ乳酸系重合体、融点が100〜170℃、かつ、0℃以下にガラス転移温度を少なくとも1つ有する第1脂肪族ポリエステル、及び融点が50〜100℃、かつ、0℃以下にガラス転移温度を少なくとも1つ有する第2脂肪族ポリエステルの混合物であり、上記混合物100質量部に、溶解パラメータ(SP値)が8.5〜9.5(cal/cm31/2の範囲にある可塑剤を0.5〜15質量部添加した層を中心層とし、D−乳酸とL−乳酸との構成割合が95.0:5.0〜88.0:12.0、又は、5.0:95.0〜12.0:88.0であるポリ乳酸系重合体を最外層とし、上記中心層と最外層とを有し、少なくとも一方向に1.5〜6倍に延伸した、熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを用いることにより、上記課題を解決したのである。
この発明にかかる熱収縮性ポリ乳酸系フィルムは、ポリ乳酸系重合体を有する特定の中心層と、ポリ乳酸系重合体を有する特定の最外層とを有するので、環境問題を発生することなく、透明性を保持しつつ、耐破断性に優れる。
この発明にかかる、熱収縮性ポリ乳酸系フィルムは、所定のポリ乳酸系重合体と、所定の2種類の脂肪族ポリエステルとの樹脂混合物に、所定の可塑剤を添加した樹脂からなる層を中心層とし、所定のポリ乳酸系重合体を最外層とし、これらの中心層と最外層とを有する積層フィルムである。
まず、上記中心層について説明する。
上記の中心層を構成するポリ乳酸系重合体とは、乳酸の重合体、具体的には構造単位がL−乳酸又はD−乳酸の単独重合体、すなわち、ポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)、又は、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸の両方を有する共重合体、すなわち、ポリ(DL−乳酸)や、これらの混合体をいう。
上記ポリ乳酸系重合体の重合法としては、縮重合法、開環重合法等公知の方法を採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸又はD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合して、任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合をして任意の組成をもつポリ乳酸系重合体を得ることができる。
上記ラクチドには、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸との2量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて、混合し、重合することにより、任意の組成や結晶性を有するポリ乳酸を得ることができる。
D−乳酸とL−乳酸との構成割合が100:0又は0:100であるポリ乳酸系重合体は、非常に高い結晶性樹脂となり、融点も高く、耐熱性、機械的物性に優れる傾向となる。しかし、熱収縮性フィルムとして使用する場合には、結晶性が非常に高くなると、延伸時に延伸配向結晶化が進行してしまい、熱収縮率を調整することが困難となりやすい。また、延伸条件において非結晶状態のフィルムを得た場合であっても、収縮時の熱によって結晶化が進み、収縮仕上り性が低下する傾向がある。これに対し、D−乳酸とL−乳酸との両方を構成成分として有するポリ乳酸系重合体の場合、含有量の少ない光学異性体の含有割合が増加するにしたがって、結晶性が低下することが知られている。
このため、熱収縮性フィルムとして使用する場合、重合時に使用されるD−乳酸とL−乳酸との混合割合を調整することが好ましい。また、D−乳酸とL−乳酸との混合割合の異なる2種類以上のポリ乳酸系重合体を混合することによって、D−乳酸とL−乳酸との混合割合を調整することができる。
この発明において、上記中心層を構成する樹脂に使用されるポリ乳酸系重合体のD−乳酸とL−乳酸との構成割合は、98.0:2.0〜85.0:15.0、又は、2.0:98.0〜15.0:85.0がよく、97.0:3.0〜87.0:13.0、又は、3.0:97.0〜13.0:87.0が好ましい。D−乳酸とL−乳酸との構成割合を上記範囲内とすることにより、延伸時の配向結晶化を適宜に調整することが可能となり、また、収縮時の結晶化も低減するので、良好な収縮仕上り性を得ることが可能となる。
上記ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量の好ましい範囲としては5万〜40万であり、より好ましくは10万〜25万である。重量平均分子量が小さすぎると、破断しやすくなる傾向がある。一方、重量平均分子量が大きすぎると、成形加工がしづらくなる。
次に、上記の中心層を構成する脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸系樹脂を除く生分解性脂肪族ポリエステル、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステル等があげられる。
上記の肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等があげられる。また、上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等があげられる。
さらに、後述の芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸等があげられる。
これらの脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステルは、上記の各化合物の中からそれぞれ1種類以上を選んで縮重合し、さらに、必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマーを得ることができる。
上記脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート等があげられる。また、後述の脂肪族芳香族ポリエステルとしては、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート・アジペートテレフタレート等があげられる。
上記環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルは、環状モノマーとして、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の1種類又はそれ以上を重合することによって得られる。
上記合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等との共重合体があげられる。
上記菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルとしては、アルカリゲネスユートロファスをはじめとする菌体内でアセチルコエンチームA(アセチルCoA)により生合成される脂肪族ポリエステルがあげられる。この菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ヒドロキシ酪酸(ポリ3HB)であるが、プラスチックスとしての実用特性向上のために、ヒドロキシ吉草酸(HV)を共重合し、ポリ(3HB−CO−3HV)の共重合体(ヒドロキシブチレートとヒドロキシバリレートとの共重合体)にすることが工業的に有利である。HV共重合比は、一般的に0〜40mol%が好ましい。さらに、ヒドロキシ吉草酸のかわりに、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシオクタデカノエート等の長鎖のヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。3HBに3−ヒドロキシヘキサノエートと共重合したものとして、ヒドロキシブチレートとヒドロキシヘキサノエートとの共重合体があげられる。
下記するように、上記中心層には、2種類の上記脂肪族ポリエステルが使用されるが、これらは、下記の融点やガラス転移温度(Tg)の要件を満たせば、上記の重合体以外に、芳香族ジカルボン酸成分を含む芳香族脂肪族ポリエステルや、1,4−ブタンジオール/コハク酸重合体にカーボネート基を有する構造を持つ共重合体等で示される、カーボネート基を有する脂肪族ポリエステルカーボネート等の生分解性を有する樹脂を用いることができる。
上記中心層に用いられる上記脂肪族ポリエステルとして、2種類のものが用いられる。第1の脂肪族ポリエステル(以下、「第1脂肪族ポリエステル」と称する。)としては、融点が100〜170℃、好ましくは100〜140℃のものがあげられる。融点を100℃以上とすることにより、縦収縮を低減させることが可能となるからである。これは、脂肪族ポリエステルは、収縮前、フィルム中で結晶化しているため、ポリ乳酸系重合体が収縮する60〜100℃の温度域の範囲では、上記脂肪族ポリエステルの融点が100℃以上なので、収縮時においても結晶状態を保つことができ、その結果、柱のような役割を果たすことにより、縦収縮を抑えるためと考えられる。一方、融点を170℃以下とすることにより、押出時の溶融温度を170〜200℃に設定することができ、押出時のポリ乳酸系重合体の熱分解を抑制することができるからである。
また、上記第1脂肪族ポリエステルは、0℃以下にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1つ有することが必要であり、−20℃以下にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1つ有することが好ましい。ポリ乳酸系重合体のガラス転移温度(Tg)である60℃付近で延伸するため、第1脂肪族ポリエステルが延伸時に結晶化していると、延伸破壊をおこすおそれがあり、これを防ぐため、ガラス転移温度(Tg)が低い方が好ましいからである。また、この第1脂肪族ポリエステルは、耐破断性を付与することを担っており、このためにも、上記のガラス転移温度(Tg)を満たすことが好ましい。
上記第2の脂肪族ポリエステル(以下、「第2脂肪族ポリエステル」と称する。)の融点は、50〜100℃である。この範囲を満たすことにより、得られるフィルムの透明性や耐破断性を向上させることができる。
また、上記第2脂肪族ポリエステルとしては、0℃以下にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1つ有することが必要であり、−20℃以下にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1つ有することが好ましい。ガラス転移温度(Tg)を0℃以上に有すると、耐破断性に劣る傾向がある。
このような条件を満たす第2脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート・アジペート(融点:94℃、Tg:−45℃)、ポリカプロラクトン(融点:61℃、Tg:−58℃)等があげられる。
上記中心層を構成する樹脂混合物、すなわち、上記のポリ乳酸系重合体、第1脂肪族ポリエステル、及び第2脂肪族ポリエステルの混合物に対する、第1脂肪族ポリエステルの含有割合は、5〜25質量%が好ましく、5〜20質量%が好ましい。5質量%より少ないと、縦収縮低減や耐破断性向上の効果が少なくなり、一方、25質量%より多いと、透明性が大幅に低下する傾向がある。
また、上記中心層を構成する樹脂混合物、すなわち、上記のポリ乳酸系重合体、第1脂肪族ポリエステル、及び第2脂肪族ポリエステルの混合物に対する、第2脂肪族ポリエステルの含有割合は、5〜25質量%が好ましく、5〜20質量%が好ましい。5質量%より少ないと、耐破断性向上の効果が少なくなり、一方、25質量%より多いと、縦収縮が大きくなる傾向があり、収縮仕上りが低下することがある。
上記中心層には、上記樹脂混合物に、所定の可塑剤が添加される。この可塑剤の溶解パラメータ(SP値)は、8.5〜9.5(cal/cm31/2の範囲にあることがよく、8.6〜9.4(cal/cm31/2の範囲にあることが好ましい。この範囲のSP値を有する可塑剤を用いることにより、得られるフィルムの耐破断性を向上させること、特に耐破断性を付与する上記脂肪族ポリエステル、特に第1脂肪族ポリエステルの使用量を低減させても、耐破断性を保持させることができるので、得られるフィルムの透明性の低下を最小限に抑えることができる。すなわち、上記の所定のSP値を有する可塑剤を用いることにより、用いない場合と比較して、透明性を保持したまま、耐破断性を向上させることができるのである。
上記の所定のSP値を有する可塑剤を添加することにより、耐破断性が向上する理由は明確ではないが、次のことが考えられる。ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルとを比較した場合、SP値は、理論的にポリ乳酸系重合体の方が大きい。このため、可塑剤のSP値が上記範囲より大きいと、ポリ乳酸系重合体相に可塑剤が移行しやすくなり、ポリ乳酸系重合体のガラス転移温度(Tg)を低下させる作用が大きく働いてしまう傾向がある。一方、SP値が上記の範囲内だと、ポリ乳酸系重合体より脂肪族ポリエステルにSP値が近くなるため、可塑剤が脂肪族ポリエステル相に移行しやすくなる。ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルの混合系においては、ポリ乳酸系重合体から形成される海相に、脂肪族ポリエステルから形成される島相が分散している、いわゆる海−島構造となっている。このため、所定のSP値を有する可塑剤は、海相のガラス転移温度(Tg)の低下を抑え、島相の脂肪族ポリエステルの軟質性を向上させ、かつ屈折率を低下させると考えられるため、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルの屈折率差が小さくなり、これらから、耐破断性を向上させ、かつ、透明性も向上するものと考えられる。
ところで、SP値が上記範囲より小さすぎると、可塑剤の脂肪族ポリエステルへの移行が起こり難くなり、耐衝撃性の改良効果が十分得られなくなる傾向がある。
なお、上記SP値は、Fedors法(Polym.Eng.Sci.,14(2),152,(1974)参照)によって算出される値である。
上記SP値を有する可塑剤の例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(n−オクチル)アジペート、ジ(n−デシルアジペート)、ジブチルジクリコールアジペート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ(n−ヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)ドデカンジオネート等の脂肪酸エステル系可塑剤、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤等があげられる。
上記中心層に添加される上記可塑剤の量は、この中心層を構成する樹脂混合物100質量部に対し、0.5〜15質量部が好ましく、1〜10質量部が好ましく、1.5〜5質量部が好ましい。15質量部より多いと、上記樹脂混合物のガラス転移温度(Tg)が室温付近まで低下する傾向があり、熱収縮性フィルムとしての使用が困難となる場合がある。一方、0.5質量部より少ないと、上記可塑剤の添加効果を十分に発揮し得ないことがある。
次に、上記最外層について説明する。
上記の最外層を構成するポリ乳酸系重合体とは、上記の中心層を構成するポリ乳酸系重合体と同様のものを使用することができる。ただし、D−乳酸とL−乳酸との構成割合は、95.0:5.0〜88.0:12.0、又は、5.0:95.0〜12.0:88.0がよく、94.0:6.0〜90.0:10.0、又は、6.0:94.0〜10.0:90.0が好ましい。
上記の中心層を構成する、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルとは、延伸時の変形挙動が異なるので、両樹脂の混合物を延伸することにより平面荒れが生じ、ヘーズが大幅に低下する傾向がある。この傾向は、ポリ乳酸系重合体以外の成分が増えるにしたがって大きくなり、透過光の拡散が起きるため、ヘーズが上昇し、透明性が低下する。この表面荒れを抑えることにより、透明性を保持することができるが、この方法として、上記のD−乳酸とL−乳酸との構成割合を有する層を最外層に設けることがあげられる。
上記の最外層を構成するポリ乳酸系重合体を構成するポリ乳酸系重合体のD−乳酸又はL−乳酸の量が5.0%より少ないと、結晶性が高くなってしまい、熱収縮時に不具合を生じる場合がある。すなわち、熱収縮時に結晶化が同時に進行するので、温度ムラの大きい熱風シュリンカーを用いると、収縮率がフィルム位置で不均一となり、仕上り性が低下する傾向がある。一方、蒸気シュリンカーを用いると、収縮不均一による仕上り性の低下は特に目立たないものの、結晶化の影響でフィルムが白化し、最近の外観重視のフィルムには好ましくない傾向となる。また、ラベル用途のような一方向の収縮のみを必要とする用途では、主収縮方向と直交する方向の収縮率は低い方が好ましく、一般的には横一軸延伸フィルムとなる。しかし、フィルムの結晶性が高くなると、横方向の延伸のみにもかかわらず、縦方向の収縮率が高くなってしまい、収縮仕上り性を低下させるおそれがある。
一方、上記の最外層を構成するポリ乳酸系重合体を構成するポリ乳酸系重合体のD−乳酸又はL−乳酸の量が12.0%より多いと、結晶性がほぼなくなってしまうため、PETボトルや瓶ボトルに用いられる熱収縮ラベルとして使用される場合、ラベリング後でフィルムが熱い状態のまま被覆されたボトル同士がぶつかり合うことによってフィルムが融着し、穴が開いてしまうというトラブルが生じやすくなるからである。
ところで、最外層を上記のポリ乳酸系重合体を用いることにより、得られるフィルムの滑り性を向上させることが可能となる。また、さらなる滑り性の改良法として、無機粒子を添加してもよい。この無機粒子の例としては、シリカ、タルク、カリオン等の無機粒子があげられる。
この無機粒子の平気粒子径は、0.5〜5μmが好ましい。また、添加量は、最外層を構成する樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がより好ましい。
上記無機粒子は、延伸時に表面に移行することにより、表面が荒らされるので、フィルムに滑り性が付与される。しかし、この表面への移行の度合いは、延伸条件に依存するが、主に横一軸延伸フィルムでは、延伸による面性倍率が大きくないため、滑り性を十分に付与できず、多量の無機粒子が必要となる場合がある。ただ、多量の無機粒子を用いると、透明性が低下したり、添加した無機粒子が凝集し、その凝集物が押出時にフィルム表面に現れ、外観不良となってしまうおそれがある。このため、無機粒子の添加量を減らすためにも、最外層を構成するポリ乳酸系重合体のD−又はL−乳酸の存在比を上記範囲内として結晶性を調整することが特に重要となる。
上記最外層中の上記ポリ乳酸系重合体の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。90質量%未満だと、上記フィルムを延伸したとき、表面荒れが顕著となり、外層としての役割を果たすことができない傾向がある。
上記最外層の厚みは、表面荒れの凹凸の大きさより上回る程度の厚みを設ける必要があり、具体的には、1μm以上、好ましくは2μm以上とすることにより、透明性の改良することができる。また、滑り性や耐熱融着性をも付与する場合、3μm以上がより好ましく、4μm以上がさらに好ましい。
ところで、この発明にかかるフィルムの外側に形成される2つの最外層は、同一厚み及び同一組成を有すると、収縮特性やカール防止等の点から好ましいが、必ずしも同一である必要はない。
さらに、この発明にかかるフィルムは、上記の中心層及び2つの最外層の3層構造に限定されるものではなく、上記中心層をフィルムの内層の1つとして有し、かつ、表面の外層として上記最外層を有していれば、この発明の特性を阻害しない限り、他の内層が存在してもよい。
次に、この発明にかかるフィルムの製造方法について説明する。上記中心層を構成する樹脂混合物や、上記最外層を構成する樹脂であるポリ乳酸系重合体からシートを形成する方法は、上記樹脂混合物又は樹脂を押出機によって溶融させ、必要に応じて、押出機の途中のベント溝や注入溝からの液添加によって可塑剤を所定量添加し、押出す製造方法が一般的に用いられる。押出しに際しては、Tダイ法、チューブラ法等の既存の方法を採用することができる。その際、分解による分子量の低下を考慮して温度設定をする必要がある。
なお、上記の樹脂混合物又は樹脂には、諸物性を調整する目的で、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填剤、着色剤、顔料等を添加してもよい。
次に、上記の方法で得られた中心層及び最外層を積層する方法としては、この発明の目的を損なわなければ、特に限定されないが、例えば、下記の4つの方法等があげられる。
(1)2または3台以上の押出機を用い、マルチマニホールドまたはフィードブロック方式の口金で積層化し、溶融シートとして押し出す共押出法。
(2)巻き出した一方の層の上にもう一方の樹脂をコーティングする方法。
(3)適温にある各層をロールやプレス機を使って熱圧着する方法。
(4)接着剤を使って貼合せる方法。
上記の方法で得られた積層フィルムは、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線、マイクロウエーブ等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等により、1軸又は2軸に延伸される。
延伸温度は、樹脂混合比、ポリ乳酸系重合体の結晶性、得られる熱収縮性フィルムの要求用途に応じて変える必要があるが、一般的に70〜95℃の範囲で制御される。また、延伸倍率は、樹脂混合比、ポリ乳酸系重合体の結晶性、得られる熱収縮性フィルムの要求用途に応じて変える必要があるが、主収縮方向(流れ方向と直交方向)においては、1.5〜6倍がよく、3〜6倍が好ましい。1.5倍より小さいと、収縮率不足となってしまう。
また、特に収縮方向の延伸倍率を3〜6倍のように、主収縮方向の3延伸倍率を倍以上に高くすることにより、縦方向の耐破断性も向上する傾向があり、より好ましい。ただ、縦方向の延伸倍率を高くするにしたがって、縦方向の収縮も高くなるので、6倍程度で十分である。
ところで、1軸延伸にするか、2軸延伸にするかは、目的の熱収縮性フィルムの要求用途によって決定される。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトル用のラベル用途に関しては、横1軸延伸が最も好ましい。ただ、その横1軸方向に直交する方向に対しては、未延伸状態となるため、上記第1脂肪族ポリエステルを添加しても、耐破断性が十分にならない場合が存在する。そのような用途には、主収縮方向と直交する方向にわずかな延伸、例えば、1.01〜1.20倍の延伸をかけることが効果的となる。1.01倍未満だと、耐破断性が十分にならない場合がある。一方、1.20倍を超えると、縦収縮が大きくなる傾向がある。
ところで、縦収縮を抑える必要のある用途においては、この縦収縮率と縦方向の耐破断性を両立させることが非常に困難であるが、この発明にいては、特定の可塑剤を添加するので、最小限の縦延伸のみで、耐破断性を付与することが可能となる。
耐破断性を評価する方法としては、一般的に引張試験が用いられる。しかし、最近の印刷時の高速化等に対応できるようにするためには、より高い値が求められる。発明者らは、0℃環境下での引張伸びと耐破断性が特に相関が高いことを見出した。すなわち、0℃環境下での引張試験において、特にラベル用途においては、MD(流れ方向)の伸び率が200%以上、好ましくは250%以上、より好ましくは300%以上のフィルムを用いると、十分な耐破断性を有することが明らかとなった。
上記のように、得られるフィルムの縦収縮率は、小さいほど好ましいが、PETボトルやガラス瓶用のラベルにおいては、80℃温水、10秒間の縦収縮率が、10%以下がよく、7%以下が好ましく、5%以下が好ましい。10%より大きいと、必要以上にラベルの縦方向の収縮が目立ち、収縮仕上り性を低下させることがある。なお、上記の縦収縮率を発現させるためには、縦延伸倍率を、前述のように1.01〜1.20倍にすることが好ましい。
上記方法で得られるフィルムの主収縮方向の収縮率は、用途によって異なるが、特にPETボトル用等の場合、80℃温水で10秒間の熱収縮率が、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。さらに、最近の内容物の保護、及び高速化に対応するためには、40%以上がさらに好ましい。20%未満だと、収縮不足が生じやすい。なお、フィルムは、延伸前の長さより短くは収縮しないことから、収縮率の上限は、延伸後のフィルム長/延伸前のフィルム長となる。
上記方法で得られるフィルムのヘーズは、用途によって異なるが、PETボトルやガラス瓶用のラベル用途に用いられ、フィルムの裏側に印刷することによって、透明性が非常に要求される場合には、10%以下がよく、7%以下が好ましく、5%以下がさらに好ましい。10%を超えると、十分な透明性を与えられない場合がある。
以下に、実施例及び比較例等を示して本発明を詳述するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお実施例及び比較例中の物性値及び評価は、以下の方法により測定し、評価を行った。ここで、フィルムの引き取り(流れ)方向をMD、それと直交方向をTDと記載する。
[測定方法及び評価方法]
[ガラス転移温度(Tg)]
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御(株)製)を用い、振動周波数10Hz、昇温速度3℃/分、測定温度−120℃から130℃の範囲で、ガラス転移温度を測定した。なお、測定フィルムは、構成樹脂を0.2〜1.0mm程度の厚みの範囲で、押出機にて押し出した後に、横方向で、すなわち、無配向の方向を測定するか、又は得られたフィルムを熱プレスにて配向を緩和した後、測定した。
[SP値]
Fedors法(Polym.Eng.Sci.,14(2),152,(1974)参照)によって算出した。
[熱収縮率]
フィルムより、各々MD及びTDに100mm幅の標線を入れたサンプルを切り出し、80℃温水バスに10秒間浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
[引張破断伸度(耐破断性評価)]
JIS K 7127に準拠し、引張速度200mm/分で雰囲気温度23℃、及び引張速度100mm/分で雰囲気温度0℃におけるフィルムのMD方向の引張破断伸度を、チャック間40mm、サンプル幅15mmの短冊形にして測定した。
[全ヘーズ]
JIS K 7105により、フィルムのへーズを測定した。
[摩擦係数]
JIS K 7125により、フィルムの摩擦係数を測定した。
[耐融着温度]
フィルムを60mm(主収縮方向、TD)×300mm(直交方向、TD)に切り出し、2枚のフィルムを重ねて、テスター産業(株)製:TP−701−A型ヒートシールテスターにて、圧力0.1MPa×1秒間加圧後、融着の有無を確認し、融着温度を求めた。
[収縮仕上り性]
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムを、MD160mm×TD238(=114×2+10)mmの大きさに切り取り、TDの両端を10mm重ねて、テトラヒドロフランで接着し、円筒状にした。この円筒状フィルムを、容量500mlの円筒型ペットボトルに装着し、上記加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を、回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブにて調整し、80〜90℃の範囲とした。
フィルム被覆後、下記の基準で評価した。
○:収縮が十分で、シワ、アバタ、格子目の歪みがなく、密着性や収縮後の透明性が良好、
△:収縮が十分だが、シワ、アバタ、格子目の歪みが僅かにある、縦方向の収縮が僅かに目立つ、又は透明性の低下を目視にて確認でき、用途によっては、実用上、問題となる可能性がある、
×:横方向収縮不足、又は縦方向の収縮が目立ち、透明性も大幅に低下して実用上、問題となる。
(原材料)
[ポリ乳酸系重合体]
・ポリ乳酸系重合体1…カーギルダウ社製:NatureWorks4050、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、重量平均分子量:20万、以下、「PLA1」と略する。
・ポリ乳酸系重合体2…カーギルダウ社製:NatureWorks4060、L−乳酸/D−乳酸=88.0/12.0、重量平均分子量:20万以下、「PLA2」と略する。
[脂肪族ポリエステル]
・ポリブチレンサクシネート…昭和高分子(株)製:ビオノーレ1010、融点:114℃、ガラス転移温度(Tg):−32℃、以下、「AP1」と略する。
・ポリブチレンサクシネート・アジペート…昭和高分子(株)製:ビオノーレ3003、融点:94℃、ガラス転移温度(Tg):−45℃、以下、「AP2」と略する。
・ポリカプロラクトン…ダイセル化学(株)製:セルグリーンPH−7、融点:61℃、ガラス転移温度(Tg):−58℃、以下、「AP3」と略する。
[可塑剤]
・ジイソデシルアジペート…田岡化学工業(株)製、SP値:8.95、以下、「DIDA」と略する。
・ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート…田岡化学工業(株)製、SP値:8.96、以下、「DOZ」と略する。
[充填剤]
・シリカ…水澤化学工業(株)製:シリカミズカシルP−527、平均粒子径:2.0μm
(実施例1〜2、比較例1〜3)
表1に示す割合で各樹脂を混合して、中心層を構成する樹脂混合物を調整し、また、表1に示す割合で各樹脂及びシリカを混合して、最外層を構成する樹脂混合物を調整した。ついで、中心層の樹脂混合物と最外層の樹脂混合物とを別々の押出機にて、190〜210℃にて混練し、中心層を構成する樹脂混合物に、表1に記載の可塑剤を表1に示す量だけ、ベント溝から添加し、200℃でTダイ内で合流させ、最外層/中心層/最外層の2種3層構造からなる溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを表1に記載の条件で、長手方向の延伸を行い、続けて幅方向の延伸を行って、表1に示すフィルムを得た。
得られたフィルムを用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2005335095

Claims (2)

  1. D−乳酸とL−乳酸との構成割合が98.0:2.0〜85.0:15.0、又は、2.0:98.0〜15.0:85.0であるポリ乳酸系重合体、融点が100〜170℃、かつ、0℃以下にガラス転移温度を少なくとも1つ有する第1脂肪族ポリエステル、及び融点が50〜100℃、かつ、0℃以下にガラス転移温度を少なくとも1つ有する第2脂肪族ポリエステルの混合物であり、
    上記混合物100質量部に、溶解パラメータ(SP値)が8.5〜9.5(cal/cm31/2の範囲にある可塑剤を0.5〜15質量部添加した層を中心層とし、
    D−乳酸とL−乳酸との構成割合が95.0:5.0〜88.0:12.0、又は、5.0:95.0〜12.0:88.0であるポリ乳酸系重合体を最外層とし、
    上記中心層と最外層とを有し、少なくとも一方向に1.5〜6倍に延伸した、熱収縮性ポリ乳酸系フィルム。
  2. 上記のポリ乳酸系重合体、第1脂肪族ポリエステル、及び第2脂肪族ポリエステルの混合物に対する、上記第1脂肪族ポリエステルの含有量が5〜25質量%であり、上記第2脂肪族ポリエステルの含有量が5〜25質量%である請求項1に記載の熱収縮性ポリ乳酸系フィルム。
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