アクティブ制御に使用するレンズアクチュエータは、非線形性等によるロストモーションを可能な限り低減する可動機構を採用する必要がある。この為に高精度制御を要するレンズアクチュエータの支持構造として、ばね支持構造とすることが行われており、従来技術として、例えば特許文献1が挙げられる。また携帯機器等への対応のため、記録再生装置全般に小型薄型軽量構造とする要求が強く、これに伴い内蔵されるピックアップおよびこれに搭載されるアクチュエータ構造もさらなる小型薄型軽量化が求められる。一方で、記録再生装置全般にデータ処理の高速化要求とコストダウンが求められる。これに対処するには、アクチュエータ可動部構造をやはり小型軽量化するとともに、一般的に高コストアセンブリであるアクティブ制御用アクチュエータを簡略構造で実現する努力も必要となる。またこの構造は組み立て易いものでなければならず、特性維持や不良品の発生防止の考慮もコストダウンには欠かせない。
一方で、記録再生装置全般にデータ処理の高速化要求とコストダウンが求められる。これに対処するには、アクチュエータ可動部構造をやはり小型軽量化するとともに、一般的に高コストアセンブリであるアクティブ制御用アクチュエータを簡略構造で実現する努力も必要となる。またこの構造は組み立て易いものでなければならず、特性維持や不良品の発生防止の考慮もコストダウンには欠かせない。
しかしながらコストダウン要求のみでなく常時性能向上要求がなされるのも工業製品の特徴である。光ディスク製品の場合には概略としては、高密度記録再生、高品質記録再生、高速記録再生等が挙げられる。近年著しい高密度記録再生にはレーザ光を短波長化やレンズの高NA化やその併用によってますます加速されているが、これらの代償としてレンズの傾きに対して信号劣化が大きいと言う問題が発生する。
これに対処するためには、従来パッシブ使用であったロール回転方向すなわちラジアルチルト方向もアクティブ駆動補正を行う必要が生ずる。ところがアクティブと言っても、フィードバック制御を行うには自らの駆動結果を検出するセンサを必要とし、これがディスク面とレンズ光軸の相対傾き検出を要する。通常、これは可動部上にセンサを配置する必要性を意味するが、ただでさえ軽量高剛性を要求される可動部の特性向上とコストダウンとは逆行する内容となる。
必然的にオープンループ駆動による見越し補正となるが、この場合自らのフォーカシングやトラッキングによって避けられない寄生傾き発生による相対チルトを検出することができず補正もできない。
これに対処する方法として、寄生傾き量そのものを低減する技術が、従来、各種提案されている。
図10は従来における2軸のレンズアクチュエータの外観を示す斜視図であり、非磁性体からなるアクチュエータベース20における一方の端の折り曲げ部20aに、マグネット板21と磁性材からなる背面ヨーク23を貼り合わせた固定磁気回路アセンブリ25が固着されている。アクチュエータベース20の他方の端には非磁性体からなる固定ブロック27が設けられ、固定磁気回路アセンブリ25に対向するように、マグネット板22と背面ヨーク24を貼り合わせた固定磁気回路アセンブリ26が固着されている。
両固定磁気回路アセンブリ25,26の間の空間には、可動部40が電力供給線を兼ねた4本の支持ばね31,32,33,34で上下左右に移動可能に保持されている。支持ばね34は図1では見えない位置にある。可動部40は、対物レンズ41を中心に保持したレンズホルダ42と、このレンズホルダ42の前後方向に1対の固定磁気回路アセンブリ25,26にそれぞれ近接対向するように固着された十字型のコイルアセンブリ47,48と、レンズホルダ42の両側面に固定された可動側プリント基板49,50とからなる。可動側プリント基板50は、図10では見えない位置にある。この可動側プリント基板49,50は、支持ばね31,32,33,34の取り付け部材を兼ねている。可動部40は対物レンズ光軸に関してほぼ対称に構成されているので、可動部40の重心はレンズ光軸上に存在する。支持ばね31と支持ばね33の可動側プリント基板49,50への取り付け位置を結ぶ線は、レンズ光軸を通りそれに直交するように配置され、前記4本の支持ばねの可動側プリント基板への4箇所の取り付け部49a,49bおよび50a,50bによって構成される四辺形の対角線の中心は、可動部40の重心を通るように配置される。
固定磁気回路アセンブリ25とコイルアセンブリ47の組み合わせは第1駆動系を構成し、それぞれのソレノイドコイル43,44に選択的に流される電流によってトラッキング制御およびフォーカシング制御が行われる。対物レンズ41の光軸に関し形状的に対称に配置された固定磁気回路アセンブリ26とコイルアセンブリ48の組み合わせは第2駆動系を構成し、第1駆動系と協働し、トラッキング制御においても、フォーカシング制御においても常に同方向に推力が働くように構成されている。
以下、主要部である駆動系について説明する。図11は駆動系を説明するための一部分解斜視図である。図11において、マグネット板21は一例として、1辺が光ディスクの記録再生面に対して平行になるよう配置され、単極着磁された正方形の板状磁石として示されている。このマグネット板の1つの対角線の両端に位置する端部において、板厚方向に、それぞれ互いに逆向きの極性になるように着磁されている。マグネット板21の一方の面には、マグネット板21とほぼ同型の磁性材料からなる背面ヨーク23が密着固定されて固定磁気回路アセンブリ25を構成している。マグネット板21の背面ヨーク23側の磁気回路は背面ヨーク23が磁性材料からなるので、N極からS極へヨーク内で閉じる。マグネット板21の背面ヨーク23と反対側の面(この面を正面と呼ぶ)は開放状態になっているので、この面の磁気回路は、N極から空間に大きく円弧を描くような磁界を生じてS極へ閉じる。このように、着磁されている磁極同士を結ぶ仮想線を便宜上着磁方向線と呼ぶ。
コイルアセンブリ47を構成するソレノイドコイル43は、隣り合う2辺の長さが異なる長方形に巻かれたコイルであり、その長手方向が光ディスクの記録再生面に平行に配置される。したがって、この例の場合、ソレノイドコイル43の長手方向は、前記着磁方向線、すなわち、前記固定磁気回路アセンブリ25によって生ずる磁界の主方向に対して45度傾いている。コイルアセンブリ47を構成するもう1個のソレノイドコイル44は、ソレノイドコイル43と同型に構成され、その長手方向は、光ディスクの記録再生面に対し垂直に配置されている。したがって、ソレノイドコイル44の長手方向は、前記着磁方向線に対しソレノイドコイル43とは反対側に45度傾いている。そして磁気回路アセンブリ25と、コイルアセンブリ47とで第1駆動系を構成している。
いま、ソレノイドコイル43に電流が流れると、コイルの長手方向はコイルに対して傾斜した磁界ではあるが、コイルに交叉する磁界の向きが、上側のコイル長手部分と、下側のコイル長手部分では逆になると共に、電流の向きも両者では逆になるため発生する推力は同方向になる。この構成で発生する推力は、光ディスクの記録再生面に対して垂直であり、フォーカシング制御に使うことができる。これに対してコイルの短手方向は、固定磁気回路の磁界からはほぼはずれた位置にあるため、ほとんど推力を発生しない。ソレノイドコイル44に電流が流れると、上記と同様の理由により、推力はコイル長手方向に直交する方向に発生し、トラッキング制御に使える。
固定磁気回路アセンブリ26とコイルアセンブリ48の組み合わせも前述と同様に、フォーカシングとトラッキングの推力を得るための第2駆動系を構成している。ソレノイドコイル43とソレノイドコイル45は直列接続されており、同様にソレノイドコイル44とソレノイドコイル46も直列接続されている。このように、固定磁気回路アセンブリ25,26およびコイルアセンブリ47,48はいずれもレンズ光軸に関して形状的に対称に配置されている。ここで、特に形状的に対称と言うのは、巨視的に見える範囲での形状に関して対照的であることをいい、着磁の位置や着磁方向など、あるいはコイルの結線位置やコイル内に流れる電流の方向などについては着目していない。例えば、固定磁気回路アセンブリ26の磁界の置き方は、固定磁気回路25に対して、正面側に向いたN極をどの位置に置くかの着磁位置の決め方で4通りの置き方がある。ただし、その置き方に対し、それぞれのソレノイドコイル45,46に流す電流の向きあるいはコイルの巻き方向を考慮することによって、第1駆動系と同じ方向に推力が働くように構成できる。いずれの組み合わせも、ここではレンズ光軸に関して形状的に対称に配置されているとみなす。
例えば、図11のように、第1駆動系の固定磁気回路アセンブリ21のS極と、第2駆動系の固定磁気回路アセンブリ26のN極が向かい合う位置に配置したとすると、フォーカシング制御用のソレノイドコイル43とソレノイドコイル45に流す電流は図11の向きに見て共に同じ回り方向、例えば図11の矢印Iで示す方向になるようにすれば同方向の推力、この例の場合図11の矢印Fで示すように可動部40の両側においてともに下向きの推力が得られる。トラッキング制御用ソレノイドコイル44とソレノイドコイル46についても、矢印I’のように同じ向きに電流を流すことによって、矢印F’のように可動部40の両側において同方向に推力が働く。図示はしないが、仮に、第2駆動系の固定磁気回路アセンブリ26のN極の代わりにS極を向かい合わせるならば、第2駆動系のソレノイドコイルに流す電流の向きを逆にするだけで、第1駆動系側と同方向の推力を得ることができる。いずれの場合も、固定磁気回路アセンブリ25と固定磁気回路アセンブリ26は同一構成のものを2個用意すれば良いし、コイルアセンブリ47とコイルアセンブリ48も同じ構成のものを2個用意すれば良い。しかも、コイルアセンブリに使われる2個のソレノイドコイルも、長手方向の長さが同じで良い場合は、やはり、同じ構成のものを2個用意すれば良い。
図12は従来における3軸のレンズアクチュエータの外観を示す斜視図であり、35,36は支持ばねを示す。なお、図10に示すレンズアクチュエータにおける部材と、同一の部材または同一機能の部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
図10に示すレンズアクチュエータと図12に示すレンズアクチュエータとの主な違いは、可動部40の支持構造、並びに固定磁気回路アセンブリ25,26およびコイルアセンブリ47,48の構造にある。すなわち、図10に示すレンズアクチュエータにおいては、支持ばね31,32,33,34の4本で可動部40を支持していることに対し、図12に示すレンズアクチュエータでは、可動部40の可動部側プリント基板49に支持ばね31,32,35が接続され、可動部側プリント基板50に支持ばね31,32,36が接続されており、計6本の支持ばねによって可動部40が支持されている。なお、可動部側プリント基板49,50には、取り付け部49a,49b,50a,50bの他に、支持ばね35,36の端部を接続する取り付け部49c,50cが設けられている。なお、可動部側プリント基板50、支持ばね31,32,36は、図12には図示できないが、図10に示す2軸のレンズアクチュエータと同様に、可動部側プリント基板49、支持ばね31,32,35と線対称の位置にある。
図13は図12における駆動系の構成を示す分解斜視図であり、トラックコイル61はラジアル方向に長いリング状のソレノイドコイルであり、レンズホルダ42の上下に並列配置されている。さらに、フォーカスコイル62およびラジアルチルトコイル63はフォーカス方向に長いリング状のソレノイドコイルであり、トラックコイル61,61上でかつトラックコイル61,61のラジアル方向の一端部に、フォーカスコイル62が配置され、他端部に、ラジアルチルトコイル63が配置されている。ここで、トラックコイル61、フォーカスコイル62およびラジアルチルトコイル63はともにタンジェンシャル方向を中心軸として巻線されたものであり、それぞれ共通仕様である。なお、以下、レンズホルダ42における背面ヨーク23に対向する面の上部に配置したトラックコイル61をトラックコイル61a、下部に配置したトラックコイル61をトラックコイル61b、トラックコイル61a,61b上に配置したフォーカスコイル62をフォーカスコイル62a、ラジアルチルトコイル63をラジアルチルトコイル63aと称する。同様に、レンズホルダ42における背面ヨーク23に対向する面の上部に配置したトラックコイル61をトラックコイル61c、下部に配置したトラックコイル61をトラックコイル61d、トラックコイル61c,61d上に配置したフォーカスコイル62をフォーカスコイル62b、ラジアルチルトコイル63をラジアルチルトコイル63dと称する。また、フォーカスコイル62aとフォーカスコイル62b、ラジアルチルトコイル63aとラジアルチルトコイル63bは、対角位置に配置される。
このように、コイルアセンブリ47は、トラックコイル61a,61b、フォーカスコイル62a、ラジアルチルトコイル63aによって構成され、コイルアセンブリ48は、トラックコイル61c,61d、フォーカスコイル62b、ラジアルチルトコイル63bによって構成される。
また、固定磁気回路アセンブリ25は背面ヨーク23とマグネット板64とから構成され、固定磁気回路アセンブリ26は背面ヨーク24とマグネット板65とから構成されている。
マグネット板64,65は、分極着磁されており、タンジェンシャル方向視した場合に正方形となる直方体型であり、十字状の着磁境界線a,bを境に4分割され、さらに分割された各領域は着磁されており、その着磁方向は、フォーカス方向とトラッキング方向とを含む面に対して垂直でかつ隣り合う領域とは反対方向に着磁されている。
可動部40を固定ブロック27に取り付けたとき、マグネット板64,65およびトラックコイル61,フォーカスコイル62,ラジアルチルトコイル63は、対物レンズ41のフォーカス軸とトラック軸で作成される仮想平面に対して対称に配置される。各トラックコイル61の中央部には着磁境界線aが位置し、フォーカスコイル62およびラジアルチルトコイル63の中央部には着磁境界線bが位置するように、トラックコイル61,フォーカスコイル62,ラジアルチルトコイル63がマグネット板15に対向する。
トラックコイル61,フォーカスコイル62,ラジアルチルトコイル63には、支持ばね31,32,33,34,35,36を介してそれぞれ独立して給電される。各コイルに給電した場合、フォーカスコイル62およびラジアルチルトコイル63は上下方向(フォーカス方向)に推力を発生させ、トラックコイル61は水平方向(トラック方向)に推力を発生させる。ここで、フォーカスコイル62a,62bに給電すると、それぞれ同じ方向の推力が発生するため、対物レンズ41はフォーカス方向に沿って移動するが、ラジアルチルトコイルに給電すると、互いに逆方向の推力が発生する。そのため、ラジアルチルトトルクが発生し、対物レンズ41の光軸を傾けることが可能になる。対物レンズ41の光軸の傾き量はフォーカスコイル62a,62bに流す電流値によって制御される。
特許第2856176号公報
特開2003−257056号公報
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態の要部構成を示す説明図であり、70,71は磁性体片を示す。
図1は、図10に示すレンズアクチュエータに、永久磁石からなる1対の磁性体片70,71を設けたものであり、可動部40におけるマグネット板25,26の投影面積の外形位置において、フォーカス方向上部に磁性体片70を配置し、下部に磁性体片71を配置したものである。磁性体片70および磁性体片71は可動部40の中心に対して対象位置にある。
図1(a)は可動部40が固定磁気回路アセンブリ25(26)に対して合焦点基準位置にある場合を示し、トラッキング推力が加わった場合、磁性体片70,71には固定磁気回路アセンブリ25(26)における磁束分布中心側に止まるように、フォーカス軸に対して直交方向の力が発生する。この力は上下の磁性体片70,71において等しいため、通常の磁気ダンパと同様な作用をする。ここで、合焦点基準位置とは、アクチュエータに駆動電圧が全く加えられていない状態における可動部中心の位置を指すものとする。
図1(b)は可動部40が固定磁気回路アセンブリ25(26)に対してフォーカス方向にDCシフトしている場合を示し、この状態でトラッキング推力が加わった場合、磁性体片70は磁束分布中心より遠く、磁性体片71は磁束分布中心に近いために、磁性体片70,71における磁束強度分布中心にとどまろうとする磁気ダンパ効果の吸引力が異なる。すなわち、磁性体片71に作用する力の方が磁性体片70に作用する力よりも大きい。
その結果、磁性体片70,71に作用する力の合力は、DCシフトのフォーカス軸に対して直交方向に加わる推力の寄生トルク(図14(c)に示す回転トルク)を打ち消す方向のトルクを発生するので,寄生傾き発生を低減することが可能となる。
図2は本発明の第2の実施形態の要部構成を示す説明図であり、72,73は磁性体片を示す。
図1に示すレンズアクチュエータは、1対の磁性体片70,71がフォーカス方向両側に配置されたものであることに対し、図2に示すレンズアクチュエータは、1対の磁性体片72,73が、可動部40におけるマグネット投影面積の外形位置のディスク面に平行でかつ半径方向両側に配置されたものである。
トラッキング推力が加わった場合、磁性体片72,73には固定磁気回路アセンブリ25(26)における磁束分布中心側に止まるように、フォーカス軸に対して直交方向の力が発生する。この力は磁性体片72,73において等しいため、通常の磁気ダンパと同様な作用をする。
図2に示す状態は可動部40が固定磁気回路アセンブリ25(26)に対して合焦点基準位置にある場合である。仮に、可動部40が固定磁気回路アセンブリ25(26)に対して半径方向(図中矢印方向)にDCシフトしており、このシフト状態でフォーカス推力が加わった場合、一方の磁性体片72は磁束分布中心より遠く、他方の磁性体片73は磁束分布中心に近いために、半径方向の軸に対して直交方向に加わる推力に対して、磁束強度分布中心にとどまろうとする磁気ダンパ効果の吸引力が異なる。すなわち、磁性体片73に作用する力の方が磁性体片72に作用する力よりも大きい。
その結果、磁性体片72,73に作用する力の合力は、DCシフトの半径方向の軸に対して直交方向に加わる推力の寄生トルクを打ち消す方向のトルクを発生するので、寄生傾き発生を低減することが可能となる。
図3は本発明の第3の実施形態の要部構成を示す説明図であり、80,81,82,83は磁性体片を示す。
図3は、図12に示すレンズアクチュエータに磁性体片80,81,82,83を設けたものであり、可動部40におけるマグネット板25,26の投影面積の外形位置において、4分割された磁極にそれぞれ対応し、フォーカス方向上部に磁性体片80,81を配置し、下部に磁性体片82,83を配置したものである。磁性体片80,81,82,83は可動部40の中心に対して対象位置にあり、4分割された磁極の領域において磁束強度が最大となる位置にそれぞれ配置されている。
図3(a)は可動部40が固定磁気回路アセンブリ25(26)に対して合焦点基準位置にある場合を示し、トラッキング推力が加わった場合、磁性体片80,81,82,83には固定磁気回路アセンブリ25(26)における磁束分布中心側に止まるように、フォーカス軸に対して直交方向の力が発生する。この力は上下の磁性体片80,81,82,83において等しいため、通常の磁気ダンパと同様な作用をする。
図3(b)は可動部40が固定磁気回路アセンブリ25(26)に対してフォーカス方向にDCシフトしている場合を示し、この状態でトラッキング推力が加わった場合、磁性体片80,81,82,83は磁束分布中心より遠く、磁性体片82,83は磁束分布中心に近いために、磁性体片80と磁性体片81および磁性体片82と磁性体片83における磁束強度分布中心にとどまろうとする磁気ダンパ効果の吸引力は同じであるが、磁性体片80,81と磁性体片82,83における磁束強度分布中心にとどまろうとする磁気ダンパ効果の吸引力が異なる。すなわち、磁性体片82,83に作用する力の方が磁性体片80,81に作用する力よりも大きい。
その結果、磁性体片80,81,82,83に作用する力の合力は、DCシフトのフォーカス軸に対して直交方向に加わる推力の寄生トルクを打ち消す方向のトルクを発生するので、寄生傾き発生を低減することが可能となる。
図4は本発明の第4の実施形態の要部構成を示す説明図であり、85,86,87,88は磁性体片を示す。
図3に示すレンズアクチュエータは、磁性体片80,81,82,83がフォーカス方向両側に配置されたものであることに対し、図4に示すレンズアクチュエータは、磁性体片85,86,87,88が、可動部40におけるマグネット投影面積の外形位置のディスク面に平行でかつ半径方向両側に配置されたものである。
図4に示す状態は可動部40が固定磁気回路アセンブリ25(26)に対して合焦点基準位置にある場合である。仮に、可動部40が固定磁気回路アセンブリ25(26)に対して半径方向(図中矢印方向)にDCシフトしており、このシフト状態でフォーカス推力が加わった場合、一方の磁性体片85,87は磁束分布中心より遠く、他方の磁性体片86,88は磁束分布中心に近いために、半径方向の軸に対して直交方向に加わる推力に対して、磁束強度分布中心にとどまろうとする磁気ダンパ効果の吸引力が異なる。すなわち、磁性体片86,88に作用する力の方が磁性体片85,87に作用する力よりも大きい。
その結果、磁性体片85,86,87,88に作用する力の合力は、DCシフトの半径方向の軸に対して直交方向に加わる推力の寄生トルクを打ち消す方向のトルクを発生するので、寄生傾き発生を低減することが可能となる。
図4は、図12に示すレンズアクチュエータに磁性体片85,86,87,88を設けたものであり、可動部40におけるマグネット板25,26の投影面積の外形位置において、4分割された磁極にそれぞれ対応し、フォーカス方向上部に磁性体片85,86を配置し、下部に磁性体片87,88を配置したものである。磁性体片85,86,87,88は可動部40の中心に対して対象位置にあり、4分割された磁極の領域において磁束強度が最大となる位置にそれぞれ配置されている。
なお、本発明は、上述した4つの実施形態に限るものではなく、要は、マグネット投影面積の外形位置両側に少なくとも1対の磁性体片を付与することで、1軸にDCシフトが存在するとシフトした方向側に存在する磁性体片は磁束密度の低い方向にシフトし、他方は密度の高い方向にシフトするのでDCシフトのある軸に対して直交方向に加わる推力に対して磁束強度分布中心にとどまろうとする磁気ダンパ効果の吸引力が異なるようになり、結果としてこの合力はDCシフトのある軸に対して直交方向に加わる推力の寄生トルクを打ち消す方向のトルクを発生するので,寄生傾き発生を低減することが可能となる。
また、第1,第2実施形態の構成を組み合わせて、図5に示すように、2対の磁性体片70,71,72,73を設けても良く、同様に、第3,第4実施形態の構成を組み合わせて、図6に示すように、2対の磁性体片80,81,82,83,85,86,87,88を設けても良い。
また、磁性体片は永久磁石である必要はなく、Fe,Co,Ni等の磁性体や化合物磁性体を用いても良い。
次に、本実施形態のレンズアクチュエータを搭載した光ピックアップについて図7を参照しながら説明する。
半導体レーザ1から発散光として照射された光ビーム(直線偏光)は、カップリングレンズ2により平行光とされ、偏光ビームスプリッタ3に入射する。ビームスプリッタ3は、光の偏光方向の違いによって貼り合わせ面で光を透過または反射させる働きをする。入射光は平行光であり、ビームスプリッタ3の入射面に対して平行振動するため、透過する。透過した光ビームは、立上ミラー4で方向を変えた後、1/4波長板5に入射する。1/4波長板5では直線偏光が円偏光に変換される。その後、光ビームは対物レンズ6に入射する。なお、対物レンズ6は、図10〜13に示す対物レンズ41と同一である。対物レンズ6に入射した光は、光ディスク7の記録面上に集光される。記録面から反射した光は、再び対物レンズ6、1/4波長板5に入射する。このとき円偏光から再び直線偏光に変換されるが、最初に1/4波長板5に入射した光に対して位相が90度ずれ、垂直振動する光となる。この光はビームスプリッタ3により入射方向と垂直な方向に反射される。そして、集光レンズ8により集光された後、受光素子9により受光される。そして、この受光素子9で受光した光量が電気信号に変換され、光ディスク7に記録されている情報が再生される。また、受光素子9を分割して、その分割された各々の受光素子が受光する光量に応じてトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号を生成する。そして、これらの信号に基づいてコイルアセンブリ47,48に電流を流し、トラッキングサーボやフォーカシングサーボさらにはラジアルチルト補正サーボを行っている。
次に、図7に示す光ピックアップを搭載した光ディスクドライブについて、図8,図9を参照しながら説明する。
大容量の情報を記録する装置として、光ディスクが使用されている。ここで、光ディスクとドライブ構成について概略を説明する。一般的なCD−RとCD−Eディスクは、書き込みが可能な(記録可能な)CD(コンパクトディスク)である。前者のCD−R(CDレコーダブル)は、1回だけ書き込みが可能なCDである(なお、CD−Write Onceとも言われている)。また、後者のCD−E(CDイレーザブル)は、複数回の書き込みが可能なCDである(なお、CD−RW:CDリライタブルとも言われている)。これらのCD−RやCD−Eディスク、すなわち、光ディスクは、次の図7に示すようなドライブによって情報の記録再生が行われる。
図8は、光ディスクドライブについて、その要部構成の一例を示す機能ブロック図である。図8において、101は光ディスク、102はスピンドルモータ、103は光ピックアップ、104はモータドライバ、105はリードアンプ、106はサーボ手段、107はCDデコーダ、108はATIPデコーダ、109はレーザコントローラ、110はCDエンコーダ、111はCD−ROMエンコーダ、112はバッファRAM、113はバッファマネージャ、114はCD−ROMデコーダ、115はATAPI/SCSIインターフェース、116はD/Aコンバータ、117はROM、118はCPU、119はRAMを示し、LBはレーザ光、Audioはオーディオ出力信号を示す。
この図8において、矢印はデータが主に流れる方向を示しており、また、図を簡略化するために、図8の各ブロックを制御するCPU118には、太線のみを付けて各ブロックとの接続を省略している。光ディスクドライブの構成と動作は、次の通りである。光ディスク101は、スピンドルモータ102によって回転駆動される。このスピンドルモータ102は、モータドライバ104とサーボ手段105により、線速度が一定になるように制御される。この線速度は、階段的に変更することが可能である。
光ピックアップ103は、図示されない半導体レーザ、光学系、フォーカスアクチュエータ、トラックアクチュエータ、受光素子およびポジションセンサを内蔵しており、レーザ光LBを光ディスク101に照射する。また、この光ピックアップ103は、シークモータによってスレッジ方向への移動が可能である。これらのフォーカスアクチュエータ、トラックアクチュエータ、シークモータは、受光素子とポジションセンサから得られる信号に基づいて、モータドライバ104とサーボ手段105により、レーザ光LBのスポットが光ディスク101上の目的の場所に位置するように制御される。
そして、リード時には、光ピックアップ103によって得られた再生信号が、リードアンプ105で増幅されて2値化された後、CDデコーダ107に入力される。入力された2値化データは、このCDデコーダ107において、EFM(Eight to Fourteen Modulation)復調される。なお、記録データは、8ビットずつまとめられてEFM変調されており、このEFM変調では、8ビットを14ビットに変換し、結合ビットを3ビット付加して合計17ビットにする。この場合に、結合ビットは、それまでの「1」と「0」の数が平均的に等しくなるように付けられる。これを「DC成分の抑制」といい、DCカットされた再生信号のスライスレベル変動が抑圧される。
復調されたデータは、デインターリーブとエラー訂正の処理が行われる。その後、このデータは、CD−ROMデコーダ114へ入力され、データの信頼性を高めるために、さらに、エラー訂正の処理が行われる。このように2回のエラー訂正の処理が行われたデータは、バッファマネージャ113によって一旦バッファRAM12に蓄えられ、セクタデータとして揃った状態で、ATAPI/SCSIインターフェース115を介して、図示しないホストコンピュータへ一気に転送される。なお、音楽データの場合には、CDデコーダ7から出力されたデータが、D/Aコンバータ116へ入力され、アナログのオーディオ出力信号Audioとして取り出される。
また、ライト時には、ATAPI/SCSIインターフェース115を通して、ホストコンピュータから送られてきたデータは、バッファマネージャ113によって一旦バッファRAM112に蓄えられる。そして、バッファRAM112内にある程度の量のデータが蓄積された状態で、ライト動作が開始されるが、この場合には、その前にレーザスポットを書き込み開始地点に位置させる必要がある。この地点は、トラックの蛇行により予め光ディスク101上に刻まれているウォブル信号によって求められる。
ウォブル信号には、ATIPと呼ばれる絶対時間情報が含まれており、この情報が、ATIPデコーダ108によって取り出される。また、このATIPデコーダ108によって生成される同期信号は、CDエンコーダ110へ入力され、光ディスク101上の正確な位置にデータを書き込むことを可能にしている。バッファRAM112のデータは、CD−ROMエンコーダ111やCDエンコーダ110において、エラー訂正コードの付加や、インターリーブが行われ、レーザコントローラ109、光ピックアップ103を介して、光ディスク101に記録される。
なお、EFM変調されたデータは、ビットストリームとしてチャンネルビットレート4.3218Mbps(標準速)でレーザを駆動する。この場合の記録データは、588チャンネルビット単位でEFMフレームを構成する。チャンネルクロックとは、このチャンネルビットの周波数のクロックを意味する。
図9はこの光ディスクドライブを使用した情報処理装置の概略図であり、100は光ディスクドライブを備えた光ディスク装置、120はキーボード,マウス等の入力装置、121はCRT,LCD等の出力装置を示す。入力装置120を操作することにより、データや各種の命令信号を送り、CPU118では入力装置120からの命令にしたがって、光ディスク装置100の光ディスクに記憶された情報を呼び出したり、あるいは記憶したりする。出力装置121はCPU118による制御にしたがって画面表示を行う。