JP2005179340A - 脂質組成物の製造方法 - Google Patents

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裕司 林
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正朗 遠藤
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Abstract

【課題】 天然物から乾燥を行わず直接、比較的少量で且つ人体に安全性の高い溶媒での抽出可能であり、しかも水溶性成分の混入が少ない脂質組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 天然物から、得られた抽出液が相分離するように疎水性溶媒と親水性溶媒を用いて脂溶性成分を抽出する工程を含み、得られた相分離した抽出液から脂質組成物が含有される液相を分取することを特徴とする脂質組成物の製造方法。天然物としては魚介類の組織、特にホタテのウロが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は天然物から、脂溶性の有効成分を高品質にしかも安価に製造する方法に関する。
天然物には様々な生理活性を示す有効成分が含まれていることは周知の事実である。特に魚介類には学習機能向上効果、抗炎症作用、コレステロール低下作用など様々な生理活性が報告されているDHA、EPA、アスタキサンチンなどが比較的大量に含まれている。他にも細胞膜の主要成分でありその生理活性に注目されているリン脂質や抗酸化物質として有名なビタミンEなど、人体に有用な脂質組成物が多く含まれている。
これらの脂溶性成分を天然物から抽出する方法はいくつか報告されている。通常、原料となる天然物、特に魚介類には大量に水分が含まれているため、真空乾燥法や凍結乾燥法などで乾燥し、その乾燥原料から有機溶媒を用いて脂質成分を抽出するのが一般的な方法である。しかし魚介類の組織などはその質量の50%以上が水分であるものが多く、有効成分が熱に不安定である場合が多いため原料の乾燥には非常に時間とコストがかかり問題となっている。
この問題を解決するため原料を酵素処理して固形分の容積を減らし、乾燥の負荷を軽減する方法も報告されている(特許文献1、特開平11−123052号公報)。この手法を用いると確かに乾燥への労力を多少は軽減できるが、酵素処理の工程が新たに増えるため総合的にはむしろ手間とコストのかかる手法である。
他に原料の乾燥にかかる負荷を改善する目的で、原料をアセトンで洗浄して効率よく水分を除去する方法が開示されている(特許文献2、特開平9−77782号公報)。しかし、原料の洗浄・脱水処理のために大量のアセトンを必要とするため未だ十分な方法といえるものではなかった。
そこで、本出願人は原料を乾燥しないで脂質成分を抽出する方法として、含水原料にアセトンを使い脂質成分を抽出する方法を開発した(特許文献3、特願2002−188589号公報)。しかし、含水アセトンに対する脂質成分の溶解度は低いため脂質成分を完全に抽出するためには大量の溶剤を必要とする。
また、乾燥の有無に関わらず、抽出操作でヘキサンのような脂質組成物を非常に良く溶解する疎水性溶媒のみを用いると、原料への浸透性が悪く非常に抽出効率が不十分となる。
そのため通常、エタノールやエタノールとヘキサンの混合溶媒などある程度の親水性をもった溶媒が用いられる。例えば、特許文献4(特開昭60−234921号公報)では卵黄からヘキサン/エタノールの混合溶媒を用いて脂質成分を抽出している。しかし、抽出液が均一系になるように、溶媒を大量に用いており、相分離については全く触れられていない。そして、ろ過により抽出液全体を取り出しているため、水溶性成分も大量に混入してしまう。また、前述した通り、一般に原料を乾燥しないと抽出効率が悪い(特許文献5、特開平08−325192号公報)。抽出が不十分な場合、溶媒で何度か抽出を繰り返すのだが混合溶媒の場合は均一系で同じ組成の溶媒で繰り返し操作するのが普通である。しかし、親水性のある溶媒を用いると脂溶性成分のほかに水溶性成分が大量に混入し、それを分離する労力が必要となる。
その他、水分の多い組織から脂質成分を抽出する方法としては例えばBligh−Dyer法(非特許文献1、E.G.Bligh and W.J.Dyer,Can.J.Biochem.Physiol.,37,911(1957))や、Folch法(非特許文献2、J.Folch、M.Lees and G.A.Sloane−Stanley,J.Biol.Chem.,226,497(1957))が知られているが、いずれの方法も人体に有害なクロロホルムおよびメタノールを用いており食品等の製造には用いることは出来ないばかりか、工業的に行なうにも作業者の健康上の問題がある。また、抽出液そのものは均一系であり、抽出が足りない場合は混合液を再び加えて抽出を繰り返し、その抽出液を合わせたものに水を加えなければ有機相と水相は分相しない。そのうえ、有機相が下層にくるため、抽出残渣との分離が困難になる場合がある。また、人体によりやさしい方法としてヘキサン−イソプロピルアルコール混液抽出法(非特許文献3、A.Hara、N.S.Radin,Anal.Biochem.,90,420(1978))が知られている。しかし、この方法も抽出液そのものは均一であり、混合液で抽出を繰り返した後、水などを加えて相分離を行なっている。また、後から水を加える手間を省く方法としてGraeme Aらはメタノール、クロロホルム、水の比率を変えたBligh−Dyer変法を用いている。(非特許文献4、Lipid,V28(No.10),1993)しかし、実施例を行なうと、実際に分相させるにはNaCl水を加える必要があり、抽出時間も一晩と非常に長時間かかる。また、人体に有害な溶媒を用いていることには変わりがない。一般的には相分離をするような組成では抽出効率が悪いと考えられる。
このように、天然物から有用な脂質成分を抽出する従来の方法は種々の問題を有している。そのため乾燥を行わずに比較的少量で且つ、人体に安全性の高い溶媒で水溶性成分の混入量が少ない脂溶性成分を通常の抽出と同等、もしくは短時間で抽出できる方法が強く望まれていた。
特開平11−123052号公報 特開平9−77782号公報 特願2002−188589号公報 特開昭60−234921号公報 特開平08−325192号公報 E.G.Bligh and W.J.Dyer,Can.J.Biochem.Physiol.,37,911(1957) J.Folch、M.Lees and G.A.Sloane−Stanley,J.Biol.Chem.,226,497(1957) A.Hara、N.S.Radin,Anal.Biochem.,90,420(1978) Lipid,V28(No.10),1993
原料である天然物の乾燥を行わずに比較的少量で、且つ人体に安全性の高い溶媒を用い、水溶性成分の混入が少ない脂溶性成分を通常の抽出と同等、もしくは短時間で、なおかつ高収率で抽出できる、脂質組成物の製造方法を提供する。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに特定の親水性溶媒と疎水性溶媒の混合液を、原料に含まれる水を利用して相分離する比率で混合して抽出操作を行うことにより、脂質成分を含んだ抽出液を、他の成分を加えることなく親水性相と疎水性相に相分離させることができ、結果として、水溶成分の混入が少なく比較的少量の溶媒で効率よく脂溶性成分を抽出できることを見出し本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)天然物から、得られた抽出液が相分離するように疎水性溶媒と親水性溶媒を用いて脂溶性成分を抽出する工程を含み、得られた相分離した抽出液から脂質組成物が含有される相を分取することを特徴とする脂質組成物の製造方法。
(2)天然物が魚介類の組織であることを特徴とする前記(1)に記載の脂質組成物の製造方法。
(3)魚介類の組織がホタテのウロであることを特徴とする前記(2)に記載の脂質組成物の製造方法。
(4)疎水性溶媒がヘキサンを含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の脂質組成物の製造方法。
(5)親水性溶媒がアセトンを含むことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の脂質組成物の製造方法。
(6)親水性溶媒がエタノールを含むことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の脂質組成物の製造方法。
(7)脂質組成物がリン脂質組成物であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の脂質組成物の製造方法。
(8)魚介類の組織から、ヘキサン、およびエタノールまたはアセトンを含む溶媒を用いてリン脂質を含む脂溶性成分を抽出する工程を含み、その抽出する工程で得られた抽出液を抽出時の組成のままで相分離させることを特徴とする脂質組成物の製造方法。
本発明の製造法は、乾燥していない天然物から水溶性成分の混入が少なく、比較的少量でかつ人体に安全性の高い溶媒で効率よく脂質組成物を抽出できる効果を有する。
本発明でいう天然物とは、含水量が全重量に対して0.1質量%〜95質量%の範囲のもので植物の組織、動物の組織の両方もしくはどちらか一方のことをいう。植物の組織とは、個体そのものはもちろんのこと、その根、葉、茎、花弁、果実などの一部でも構わない。また動物の組織も個体そのものはもちろんのこと、その皮、脳ミソ、内臓、筋肉や卵などでも構わない。魚介類の組織は本発明を用いるに最も有用な原料である。ここでいう魚介類の組織とは、例えば、カツオ、サバ、イワシ、サケ、マグロ、サンマなどの魚類や、ホタテ、カキ、アサリ、ハマグリなどの貝類、タコやイカなど頭足類の個体そのものはもちろんのこと、その頭部や目、内臓、卵などの各部分、もしくはそれらの混合物でも構わない。なかでも日本最大の漁獲量を誇るホタテのウロは大量に廃棄されており、原料として大量に安価に入手可能なため、原料として好ましい。ホタテのウロとは、ホタテ貝の中腸線のみを狭義ウロ、貝柱以外の軟体部全体を広義のウロという。一般には単純にウロというと、狭義のウロか広義のウロかは明確ではない。本発明では狭義、広義のどちらか一方でも良いし、それらの混合物でも構わない。
本発明の脂質組成物とは、例えばDHAやEPAなどの中性脂質や、フォスファジルコリン、フォスファジルセリン、フォスファジルエタノールアミン、フォスファジルイノシトールなどのグリセロリン脂質やそのリゾ体、スフィンゴリン脂質、セラミドなどの糖脂質、コレステロール、ビタミンAやビタミンEなど、天然物がその組織に保持している脂溶性の天然成分一つもしくは複数含むものをいう。特に本発明は魚介類からリン脂質組成物を抽出するのに適している。魚介類由来のリン脂質組成物は、その構成脂肪酸中にDHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸が占める割合が高く、その生理活性に注目を浴びている物質である。
本発明の疎水性溶媒とは常温、常圧下で水に対して5質量%以上は溶解しないものを指す。例えばヘキサン、ヘプタン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどがある。これらを単独で用いても良いし、混合して用いても良いが、特にヘキサンを含むものが好ましい。ここで言うヘキサンとは石油留分のうち、n−ヘキサンの沸点留分の通称であって、純物質としてのn−ヘキサンを指しているのではない。通常、ヘキサン中にはn−ヘキサンは60質量%程度含まれている。本発明の疎水性溶媒中にはn−ヘキサンとして20質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。操作の簡便性の点からはヘキサンを単独でそのまま用いることが好ましい。
一方、本発明の親水性溶媒とは常温、常圧下で水に対して30質量%以上溶解するものをいう。例えばアセトン、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、THF、1−ブタノールなどがある。これらを単独で用いても良いし、混合して用いても良いが、安全性やコストの観点からはアセトンまたはエタノールを含むものを用いることが好ましい。親水性溶媒中にエタノール及び/またはアセトンが30質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは80質量%以上である。
本発明においては、上記2種類の溶媒を用いて抽出をおこなう。その具体的な手法としては、原料となる天然物に上記2種類の溶媒を加えた系を混合しても良いし、また、原料となる天然物に、先に親水性溶媒のみを加えて抽出操作を行った系に、さらに疎水性溶媒を加えて攪拌を続けてもよい。いずれの方法によっても、系内に溶媒が均一に行きわたるように、十分に攪拌することが好ましいが、特に、先に親水性溶媒のみを用いる場合は、親水性溶媒のみでの脂溶性成分の溶解量が極めて低く、その溶媒による抽出量が少ないため、疎水性溶媒を加えた後にその抽出液が均一に混合されるよう、よりいっそう、十分に攪拌して更に抽出操作をすることが必要となる。このため、操作性の観点から、2種類の溶媒を同時に加える方法のほうが、より効率的で好ましい。また、攪拌の操作は疎水性溶媒と親水性溶媒が混合しさえすれば良く、攪拌翼による攪拌に限ったものではない。特に抽出の対象となる天然物をあまり細分化しないで液のみを混ぜて抽出することが、抽出残渣の後処理の点からは好ましい。
抽出温度に関しては、一般的に抽出温度が高いほど抽出効率が良いが、目的とする有効成分の熱安定性も十分に考慮して設定する必要がある。通常は室温程度で行えば良い。抽出時間もその成分により適宜判断が必要であるが通常、1回の抽出は1時間程度で良い。
本発明における抽出操作では、脂質組成物を含有する抽出液が相分離しうることが必要である。ここでいう、相分離とは組成の異なる複数の液状組成物の各々が、実質的に層状の液相を形成して系内に存在する状態をいう。
このような、抽出液の相分離は、原料の天然物に含まれる水分量に対して、用いる親水性および疎水性溶媒の量を調整することにより、実現することができる。例えば、一般的には用いる親水性溶媒の量を原料の天然物に含まれる水に対して質量比で0.1〜4.0倍が好ましく、より好ましくは1.0〜2.0倍である。疎水性溶媒の量は親水性溶媒に対して質量比で好ましくは0.01〜10.0倍、より好ましくは0.05〜5.0倍、さらに好ましくは0.1〜2.0倍の量を用いる。ただし、原料の天然物が液体に完全に浸る状態が好ましいため極めて含水量の少ない天然物や既に乾燥した原料を用いる場合は、適当量の水を追加しても構わない。この場合は、もともと原料の天然物に含まれていた水と、あとから加えた水の合計の量に対して、親水性溶媒を上記範囲の量を加えることが好ましい。
上記、脂質組成物を製造する具体的な操作としては、先述した、原料となる天然物と、親水性および疎水性溶媒の混合物の攪拌操作を行ったあと、攪拌を停止して抽出液を適当な時間静置し、目的とする脂溶性成分を含有する液相を分取することによりおこなう。例えば親水性溶媒としてアセトン、疎水性溶媒としてヘキサンを用いた場合、脂溶性成分を含んだヘキサン相が最上層にくるのでデカンテーションなどでヘキサン相のみを分離する。一回の抽出で有効成分の取得量が不十分な場合、残った残渣および親水性溶媒相に再びヘキサンなどの疎水性溶媒を加え、再度、上記抽出操作を行えばよい。分離したヘキサン相のヘキサンを留去することにより得られる抽出油に、脂質組成物が含まれる。
このように、あたかも液液抽出のような操作によって、実質的に固液抽出をおこなえることが、本発明の大きな効果の一つである。また、従来技術では再抽出の際、親水性溶媒、疎水性溶媒の両方を加えなければならず、溶媒が大量に必要であった点も本発明との大きな相違点でもある。本発明の相分離操作によって得られる、疎水性溶媒相には原料に含まれる脂溶性の有効成分のほぼ全量が溶解しており、水溶性成分はほとんど含まれていない。一方、親水性溶媒相には脂溶性成分をほとんど含まないうえに水溶性成分はほぼ全量が残っているため、天然物に含まれる、水溶性成分を所望する場合の有効な脂質成分除去法としても利用可能である。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の例によって何ら制限されるものではない。
[実施例1]
ボイルしたホタテの広義ウロ(水分75質量%)100gにアセトンを100g、ヘキサンを25g加えて40℃で1時間、200rpmで攪拌した。攪拌を止めて5分間静置して最上層のヘキサン相を上からスポイトで抜き取った。水相と残渣が残った容器に新しくヘキサン25gを加えて同様の抽出、静置の操作を行った後、最上層にあるヘキサン相をスポイトで抜き取った。二つのヘキサン相を混合してエバポレーターでヘキサンを留去して抽出粗油6.3gを得た。この抽出粗油を再びヘキサン18gに溶解し、アセトン20g、水18gを加えて有機相を水洗して不純物として含まれる水溶性成分を除去した。(前述のような、抽出粗油をヘキサンに溶かし含水アセトンで液液抽出操作を行なうことを水洗操作と呼ぶ。)有機相を抜き出しヘキサンを留去して抽出油6.2gを得た。水溶性成分は抽出粗油中に1.6質量%だけ混入していた。抽出油には中性脂質が61質量%、リン脂質が30質量%、ビタミンEやカロチノイド系色素、遊離脂肪酸などの他の脂溶性成分がおよそ7質量%含まれていた。
[実施例2]
ボイルしたホタテの広義ウロ(水分75質量%)100gにエタノールを80g、ヘキサンを30g加えて40℃で2時間、200rpmで攪拌した。攪拌を止めて5分間静置して最上層のヘキサン相を上からスポイトで抜き取った。水相と残渣が残った容器に新しくヘキサン25gを加えて同様の抽出、静置の操作を行った後、最上層にあるヘキサン相をスポイトで抜き取った。二つのヘキサン相を混合してエバポレーターでヘキサンを留去して抽出粗油6.4gを得た。この抽出粗油を再びヘキサン18gに溶解し、アセトン20g、水18gを加えて有機相を水洗して不純物として含まれる水溶性成分を除去した。有機相を抜き出しヘキサンを留去して抽出油6.2gを得た。水溶性成分は抽出粗油中に3.1質量%だけ混入していた。抽出油には中性脂質が61質量%、リン脂質が30質量%、ビタミンEやカロチノイド系色素、遊離脂肪酸などの他の脂溶性成分がおよそ7質量%含まれており、組成は実施例1と同じであった。
[比較例1]
ボイルしたホタテの広義ウロ(水分75質量%)100gに300gのアセトンを加えて、40℃で1時間、200rpmで攪拌して2回抽出を行った。その抽出油のアセトンをエバポレーターで留去して抽出粗油7.1gを得た。この抽出粗油を実施例1と同様の手法で水洗操作をして5.7gの抽出油を得た。水溶性の成分は抽出粗油に対して20質量%であった。実施例1と比較して溶媒の使用量は約4倍であるが、抽出油の収量は若干少ない上に抽出粗油には10倍以上の水溶性成分が混入していた。
[比較例2]
ボイルしたホタテの広義ウロ(水分75質量%)100gを真空乾燥機で40℃、8時間乾燥して乾燥原料25gを得た。水分の含量は7.2質量%であった。この原料から90質量%エタノール90gを用いて40℃、1時間、200rpmで攪拌して2回抽出をした。この抽出液からエバポレーターでエタノールを留去して抽出粗油5.5gを得た。この抽出粗油を実施例1と同様の手法で水洗操作をした。しかし、一度の水洗では水溶性成分を取りきれなかったため同じ操作を二度繰り返して4.0gの抽出油を得た。水溶性の成分は抽出粗油に対して27質量%であった。実施例1と比較して、乾燥のために余計に8時間もかかっている。実施例1に比べて溶媒の使用量はおよそ1.8倍であるが、抽出油の収量は少なくなっており、さらに抽出粗油には約16倍もの水溶性成分が混入していた。
[比較例3]
ボイルしたホタテの広義ウロ(水分75質量%)100gにクロロホルム124g、メタノール66gを加え(Bligh−Dyer変法)40℃、1時間、200rpmで攪拌した。その後、30分静置しても相分離が不十分だったため6.7gの食塩を加えて攪拌したところ2層に分離した。最下層のクロロホルム相を抜き出し、クロロホルム124gを加えて再び、40℃、1時間、200rpmで抽出した。10分静置後、最下層のクロロホルム相を抜き出し、一回目の抽出液と混合してエバポレーターでクロロホルムを留去した。抽出粗油は2.1gしか得られなかった。
[実施例3]
イカの皮(水分55質量%)100gをミキサーで粉砕してエタノール150g、ヘキサン50gを加えて室温で1時間、250rpmで攪拌した。攪拌を止めて5分間静置して、下相を残渣ごと抜き出して残ったヘキサン相のヘキサンを減圧留去して抽出粗油6.0gを得た。この抽出粗油をふたたびヘキサン20gに溶解し、アセトン22g、水18gを加えて有機相を水洗した。有機相を抜き出しヘキサンを留去して抽出油を5.8g得た。水溶性の成分は抽出粗油中に3.3質量%だけ混入していた。抽出油には中性脂質が66質量%、リン脂質が25質量%、ビタミンEやカロチノイド系色素、遊離脂肪酸などの他の脂溶性成分がおよそ6質量%含まれていた。
[比較例4]
イカの皮(水分55質量%)100gをミキサーで粉砕し、ヘキサンとエタノールの1対1質量比の混合溶媒600g(エタノールの水に対する重量比はおよそ5.5倍)を加えて40℃で1時間、200rpmで攪拌した。液相は相分離しなかったため、そのまま吸引ろ過を行い固液分離した。ヘキサン/エタノールを留去して抽出粗油7.3gを得た。この抽出粗油をヘキサン20gに溶解し、アセトン22g、水18gを加えて有機相を水洗した。有機相を抜き出しヘキサンを留去して、抽出油を5.6g得た。実施例3に比べて溶媒を3倍も使っているが収量は少なく、水溶性の成分は抽出粗油中におよそ9倍も含まれていた。
[実施例4、比較例5]
ジャスミン花(水分85質量%)150gに、アセトン150gとヘキサン50gを加えて室温で一時間、200rpmで攪拌して抽出操作を行った。攪拌を止めて5分間静置してヘキサン相を分離した。ヘキサンをエバポレーターで留去して、抽出粗油を1.9g得た。
比較例4ではアセトンを用いずに、ヘキサン50gのみで同様の抽出操作を行った。その抽出液からヘキサンを留去したところ抽出粗油は0.5gしか得られなかった。
本発明の製造方法は乾燥の負荷が少なく、比較的少量でかつ人体に安全性の高い溶媒で水溶性成分の混入が少ない脂質組成物を得ることが出来るので、天然物からの抽出物を用いる健康食品や医薬品などの分野で好適に利用できる。

Claims (8)

  1. 天然物から、得られた抽出液が相分離するように疎水性溶媒と親水性溶媒を用いて脂溶性成分を抽出する工程を含み、得られた相分離した抽出液から脂質組成物が含有される液相を分取することを特徴とする脂質組成物の製造方法。
  2. 天然物が魚介類の組織であることを特徴とする請求項1記載の脂質組成物の製造方法。
  3. 魚介類の組織がホタテのウロであることを特徴とする請求項2に記載の脂質組成物の製造方法。
  4. 疎水性溶媒がヘキサンを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脂質組成物の製造方法。
  5. 親水性溶媒がアセトンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脂質組成物の製造方法。
  6. 親水性溶媒がエタノールを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脂質組成物の製造方法。
  7. 脂質組成物がリン脂質組成物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の脂質組成物の製造方法。
  8. 魚介類の組織から、ヘキサン、およびエタノールまたはアセトンを含む溶媒を用いてリン脂質を含む脂溶性成分を抽出する工程を含み、その抽出する工程で得られた抽出液を抽出時の組成のままで相分離させることを特徴とする脂質組成物の製造方法。
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