JP2005171433A - 合成繊維糸条への処理剤付与方法及びその装置 - Google Patents

合成繊維糸条への処理剤付与方法及びその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 速度2000m/分以上で高速走行する合成繊維糸条に、均一かつ効率良く処理剤を付着させる処理剤付与装置を提供する。
【解決手段】 2000m/分以上で走行する合成繊維糸条(Y)と接触して処理剤(L)を付与するための処理剤付与ローラ(11A、11B)と、該ローラ(11A、11B)を支承して合成繊維糸条(Y)の走行方向と同方向へ該ローラ(11A、11B)を回転させる回転駆動軸(12A、12B)と、前記ローラ(11A、11B)の下端部が浸漬させられると共に処理剤(L)を貯えた容器(13A、13B)と、該ローラ(11A、11B)の回転に伴い発生する処理剤(L)の流れ方向に対して略直角方向に該ローラ(11A、11B)の下方の該容器(13A、13B)中に立設された邪魔板(18A、18B)と、該容器(13A、13B)中の処理剤(L)の液面レベルを調整する堰(16A、16B)とを含む合成繊維糸条(Y)への処理剤付与装置(1A、1B)であって、更に、この装置はローラ(11A、11B)上に形成される処理剤(L)の液膜の厚さを調整するための膜厚調整部材(17A、17B)を付設する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、高速で走行する合成繊維糸条に対して、処理剤を好適に付与するための処理剤付与方法とその装置に関する。
一般に、衣料分野、あるいは産業資材分野の繊維製造工程、特に紡糸工程においては、機能性付与のために種々の処理剤が繊維に付与される。しかも、現在では、生産性を向上させるために、製糸工程を高速化するのに伴い、2000m/分を超えるような高速で走行する糸条に対して、処理剤の付与が行われるようになっている。
従来、前記製糸工程において、特に、2000m/分より低い速度で走行する糸条に対しては,ローラ式処理剤付与装置が主に用いられていた。しかし、製糸速度の高速化が進むに伴い、ローラ式処理剤付与装置では処理剤のピックアップ量を調整するためにローラを高速で回転させなければならない。そうすると、遠心力の影響によって処理剤を収容するトレイの処理剤の液面が乱れると共に、拘束で走行する糸条に随伴する気流の影響も受けて、ローラ表面に形成される処理剤膜の均一性が失われ、糸条に処理剤を均一付与することが困難となる。また、このような問題と共に、処理剤の飛散量も増大して処理剤の損失が多くなって、処理剤剤の歩留りが低下するという問題があり、更に、製糸環境や得られる製品を汚染して作業環境が悪化するという問題があった。
そこで、このような諸問題を解消して、高速走行する糸条に対して良好に処理剤を付与しようとする試みがなされている。例えば、特開昭63−141114号公報、あるいは実公昭63−11181号公報などでは、前記ローラ式処理剤処理装置とは異なる処理剤付与装置として、ガイドに接触させた走行糸条に対して一定量に計量した処理剤を吐出し付与するガイド式処理剤付与装置が提案されている。
しかしながら、このようなガイド式処理剤付与装置では、固定されたガイド上に糸条を高速走行させることが必須となるために、ガイドとの接触摩擦による糸条の擦過損傷が激しくなり、糸条がダメージを受けて糸条品位及び品質の低下を生ずるという極めて深刻な問題を有している。しかも、近年のように、生産性の向上が追求され、更に高速製糸が要求される環境下において、ますます高速化する糸条に対して、このような従来技術を適用して、処理剤を走行糸条に付与することには大きな問題がある。
そこで、特開2003−183928号公報において、ガイド式処理剤付与装置によらないローラ式処理剤付与装置でありながら、従来のローラ式処理剤付与装置が有していた問題を解消しようとする試みが提案されている。この提案された技術は、ローラ上に形成させる処理剤膜を調整するためにローラ表面に対して並行に設けられた膜厚調整部材を備えると共に、処理剤を収容したトレイ中にローラを浸漬させ、ローラの浸漬長を調整するための処理剤の液面レベルを規定する堰とローラ回転に伴って発生する処理剤の乱れを整流する邪魔板を具備している。
確かに、このようなローラ式処理剤付与装置を用いることで、高速で走行する合成繊維糸条に対して均一な処理剤の付与が可能となったが、処理剤の飛散、経時的な処理剤ピックアップ量の変動、作業環境の悪化という点に関して未だ問題を有している。しかも、近年ますます生産性の向上が追求され、更に、高速製糸が要求される環境下において、この問題を解決することは極めて重要になってきている。
特開昭63−141114号公報 実公昭63−11181号公報 特開2003−183928号公報
本発明の目的は、上記の従来技術が有する諸問題を解決し、2000m/分以上の高速で走行する合成繊維糸条に対して、走行糸条に擦過損傷を与えることなく、処理剤を均一かつ付着斑なく安定に付与でき、かつ、処理剤を周囲に飛散させることなく、処理剤の損失を少なくできて歩留まりを向上させることができる上に、作業環境をも良好に維持できる処理剤付与方法とその装置を提供することにある。
ここに、前記課題を達成するための「合成繊維糸条への処理剤付与方法」に係る発明として、請求項1に記載の「処理剤の膜が形成された回転する処理剤付与ローラと高速走行する合成繊維糸条とを接触させて処理剤を前記糸条に付与する処理剤の付与方法において、走行糸条が前記ローラと最初に接触する位置の近傍に前記ローラの表面から0.08〜0.15mm離れた間隙を形成し、前記間隙を通過できない余剰の処理剤を前記ローラから掻き落とし、掻き落とした余剰の処理剤を回収すると共に、前記ローラ上に形成される処理剤の膜厚を制御することを特徴とする合成繊維糸条への処理剤付与方法」が提供される。
その際、本発明は、請求項2に記載のように、「前記合成繊維糸条が走行する糸道を一定位置に規制し、前記糸条が前記処理剤付与ローラと最初に接触する位置と前記間隙との間の距離を常に一定に制御することを特徴とする、請求項1に記載の合成繊維糸条への処理剤付与方法」とすることが好ましい。
また、本発明は、請求項3に記載のように、「前記ローラが浸漬される処理剤が形成する液面と前記間隙との間の鉛直距離が少なくとも20mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の合成繊維糸条への処理剤付与方法」とすることが好ましい。
更に、本発明は、請求項4に記載のように、「前記合成繊維糸条の走行速度V(m/分)と前記ローラの周速V(m/分)との比V/Vが、20≦V/V≦800であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の合成繊維糸条への処理剤付与方法」とすることが好ましい。
そして、本発明は、請求項5に記載のように、「前記合成繊維糸条の走行速度速度V(m/分)が2000≦V≦8000であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の合成繊維糸条への処理剤付与方法」とすることが好ましい。
次に、前記課題を解決するための「合成繊維糸条への処理剤付与装置」に係る発明として、請求項6に記載の「走行する合成繊維糸条に付与する処理剤の液面レベルが一定に維持されて収容される容器と、前記容器中に浸漬されて容器中の処理剤を回転円周面上にピックアップする処理剤付与ローラと、前記走行糸条が前記ローラと最初に接触する位置の近傍に前記ローラとの間に0.08〜0.15mmの大きさを持った間隙を形成させる間隙形成部材と、前記間隙を通過できない余剰の処理剤を流下させて回収する流下回収部材とを備え、更に、前記流下回収部材は前記間隙形成部材の直下に開口空間を形成することなく設けられていることを特徴とする合成繊維糸条への処理剤付与装置」が提供される。
その際、本発明は、請求項7に記載のように、「走行する前記糸条が前記ローラへ接触する際の糸道を一定位置に規制する糸道規制部材を具備することを特徴とする、請求項6に記載の合成繊維糸条への処理剤付与装置」とすることが好ましい。
更に、本発明は、請求項8に記載のように、「前記処理剤付与ローラの走行糸条との接触部の材質が表面粗さ(Ra)が0.5S(0.5μm)以上、2.0S(2.0μm)以下であるセラミックスであって、該ローラの直径が80mm以上、150mm以下であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の合成繊維糸条への処理剤付与装置」とすることが好ましい。
そして、本発明は、請求項9に記載のように、「前記ローラとの間に間隙を形成する前記間隙形成部材の先端部が、前記ローラの回転円周面に沿って前記ローラの半径と同じ局率半径を有する曲面で構成されていることを特徴とする、請求項6〜8の何れかに記載の合成繊維糸条への処理剤付与装置」とすることが好ましい。
以上に述べた本発明の処理剤付与方法とその装置によれば、例えば、2000m/分以上の高速で走行する合成繊維糸条に対しても、糸条に擦過損傷を与えることなく、均一かつ付着斑なく処理剤を走行糸条に付着させることができる。つまり、本発明は処理剤付与ローラを有するが、この処理剤付与ローラを糸条の走行方向と同一方向へ回転させることによって、擦過によって糸条が受けるダメ―ジを軽減することができ、更に、このように処理剤付与ローラを高速回転させたとしても、このローラによってピックアップされる処理剤の膜厚を良好に制御することができる。
また、本発明の処理剤付与方法とその装置によれば、処理剤付与ローラにピックアップされた処理剤を走行糸条に付与するのに必要な量だけ処理剤付与ローラの回転円周面へ塗布することができ、しかも、塗布された処理剤の膜厚も極めて良好に制御することができる。さらに、走行糸条に適正な処理剤を付与するのに必要とされない余剰の処理剤は、周囲に飛散させずに良好に回収することができるため、作業環境を悪化させることがないばかりか、処理剤の損失が少なくなって歩留まりが向上する。その上、飛散した処理剤が得られた製品や周囲の設備に付着して、これらを汚染することがなくなる。
また、高速で走行する糸条が熱処理や延伸処理などの影響を受けて糸揺れが生じて、その糸道が不安定となることを防止するために、高速走行する糸条を常に一定の糸道を走行させると、膜厚が変動せずに安定して形成される処理剤付与ローラ上の位置に糸条を常に接触させて走行させることができる。そうすると、ローラからの処理剤の飛散が少なくなると共に、均一かつ安定に処理剤を糸条に付与させることができるようになる。また、例えば断糸時の糸掛けなどにおいて何らかの原因によって、走行糸条Yが揺らぐような場合が生じても、前述の間隙形成部材や余剰の処理剤を回収する流下回収部材などと接触させないようにする効果も有する。
本発明の処理剤付与方法とそのための装置は、高速(特に、2000m/分以上)で走行する合成繊維糸条に対して、ローラ式の処理剤付与方式を使用して、高速走行する糸条に対して処理剤を付与することを一大特徴とする。なお、本発明を適用する合成繊維としては、特に限定されないが、主にポリエステル繊維、ポリアミド繊維などを挙げることができる。
ここで、本発明では、走行糸条に対して大きな抵抗を与えないために、合成繊維糸条の走行方向と同方向へ回転するローラ上に処理剤を膜状に塗布して、走行糸条へ処理剤を付与する。ただし、このとき、本発明では、ローラ上を走行する糸条の糸道を一定位置に規制するために、走行糸条に対して擦過抵抗が大きくなって糸条にダメージを与えないように配慮された糸道規制部材を設ける。このため、本発明の方法とその装置では、従来のガイド式処理剤付与方式のように、処理剤を付与するための固定された処理剤付与ガイドを使用することはしない。したがって、本質的に、固定された処理剤付与ガイドによって高速走行する糸条が擦過され、損傷を受けるということはない。
しかしながら、従来技術のようなローラ式処理剤付与方式を単に採用するだけでは、糸条の走行速度が高速になればなるほど、処理剤付与ローラ上に処理剤膜が良好に形成されず、走行する糸条の糸道が不安定化して、処理剤の飛散量が増大し、作業環境を汚染すると共に得られる製品をも汚染する。そこで、以下に、このような従来のローラ式処理剤付与方式の問題点を解決する上で本発明が採用した構成について、図面を参照しながら、その実施形態に基づいてその作用と共に詳細に説明する。
まず、図1は、本発明の装置を好適に適用できる製糸工程を例示した模式説明図である。この図1において、1は処理剤付与装置、2はスピンブロック、3は紡糸パック、4は紡糸口金(破線で図示した)、5は口金下加熱装置、6は断熱板、7は冷却紡糸筒、8は冷却筒、そして、9は紡糸油剤付与装置、10は引取ローラ、11は第1交絡付与装置、12〜15は第1〜第4延伸ローラ、16は第2交絡付与装置、そして17は巻取機をそれぞれ示す。
以上に述べた製糸工程において、溶融した高分子重合体(以下、“ポリマー”と称する)から製品糸条は下記のようにして製造される。すなわち、まず図示しない溶融押出機などを使用して前記ポリエステルなどのポリマーを定法により溶融し、ギヤポンプ等の計量供給手段によってスピンブロック2のパックドームに装着された紡糸パック3へ送る。ついで、この紡糸パック3に設けられた紡糸口金4のポリマー吐出孔群から溶融したポリマーを定量吐出する。そして、紡糸口金4の直下に設けた口金下加熱装置5により紡糸口金4面を保温し、冷却紡糸筒7から冷却風を紡出された糸条Yに対して図の矢印方向へ吹き付け、ガラス転移温度以下に一旦冷却する。
その後、冷却された糸条Yは、ローラ式あるいはガイド式の紡糸油剤付与装置9で紡糸油剤を付与した後、引取りローラ10により引取った後、エアノズルで構成された第1交絡付与装置11によって糸条Yを構成する単繊維群に対して単繊維同士を互いに絡ませる第一段の交絡処理が行われる。ついで、このようにして溶融紡糸された糸条Yは、一対の加熱ローラからなる延伸ローラを多段(本例では4段)に配置した第1〜第4延伸ローラ12〜15へと導かれ、これらの延伸ローラ12〜15によって多段で延伸される延伸工程へと供される。
その際、前記延伸ローラ12〜2に導かれた糸条Yは、糸条Yが各延伸ローラ12〜15に接触する時間が十分に確保されるように、これらの延伸ローラ12〜15に数ターン〜20ターン巻回される。そして、このようにして、延伸ローラ12〜15によって加熱された糸条Yは、各段の延伸ローラ12〜15間でそれぞれ所定の延伸倍率に延伸処理あるいは必要に応じて弛緩処理が施される。更に、このようにして、延伸ローラ群12〜15で延伸された糸条Yは、最終的に第2交絡付与装置16によって交絡処理を受けた後、巻取機17にて巻き取られる。なお、この製糸工程の例では、本発明の処理剤付与装置1は、第3段目の延伸ローラ14と第4段目の延伸ローラ15との間の位置に、延伸工程における処理剤付与装置として設けられている。
以下、前述のような製糸工程などに好適に使用される本発明の処理剤付与装置の実施形態について、詳細かつ具体的に図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明に係わる合成繊維への処理剤付与装置の実施形態を例示した説明図であって、特に、糸条が上方から下方へと走行する実施形態例を示した模式側面図である。この図2において、参照符号Yは走行糸条、そして、参照符号Lは該糸条に付与する処理剤をそれぞれ示している。また、本発明の処理剤付与装置1は、処理剤付与ローラ1a、このローラ1aを回転駆動する回転駆動軸1b、走行糸条Yに付与する処理剤Lの液面が一定位置に維持して収容する容器としてのトレイ1c、処理剤Lの供給口1d、処理剤Lの排出口1e、処理剤Lの付着量をローラ1aとの間に形成した間隙によって調整する間隙形成部材1f、余剰の処理剤を流下させて回収する流下回収部材1g、そして、走行する糸条Yの糸道を規制する糸道規制部材1hを含んで構成される。
以上のように構成される本発明の処理剤付与装置1において、前記処理剤付与ローラ1aは、糸条Yが走行する方向と同じ方向へ回転駆動軸1bによって図の矢印方向へ回転させられる。このようにローラ1aが回転させられることによって、糸条Yがローラ1aによって擦過されて損傷を受けることを防いでいる。
また、本発明の処理剤付与装置1の一部を構成する処理剤Lを貯えたトレイ1cには、供給口1dから新鮮な処理剤Lがトレイ1c中へ常時供給され、走行糸条Yに付着して系外に持ち去られた分を除いて、トレイ1cの制御液面レベルを超えてオーバーフローした処理剤Lは排出口1eから排出される。したがって、処理剤Lを収容する容器としての機能を有するトレイ1c中の処理剤Lの液面レベルは常に一定位置に制御されていることとなる。
このとき、排出口1eから排出された余剰の処理剤Lは、フィルターなどによって、異物を除去した後、その剤温度が所定の温度を維持するように温度制御を行いながら、持ち去られた分の処理剤や系外へ蒸発した水分などを追加補給しつつ、再び供給口1dからトレイ1cへ循環供給するようにしても良い。その際、処理剤Lの粘度が変化すると、ローラ1a上に塗布される処理剤Lのピックアップ量、すなわちローラ1a上の処理剤Lの膜厚も微妙に変化する。したがって、処理剤Lに係わる処理剤温度や水分蒸発などによる処理剤成分などの諸条件が変化しないように配慮することが必要であることは言うまでもない。
また、本発明の処理剤付与装置1において、処理剤Lを貯える前記トレイ1cは、ローラ1aの表面に処理剤Lを付与し、ある程度の厚さを有する液膜を安定に形成させるために、ローラ1aの外周の1/8以上を処理剤Lに浸漬するようにすることが好ましい。何故ならば、もし、1/8以下とした場合には、ローラ1aの表面に付着する処理剤Lの量が少なくなって、糸条Yへの処理剤Lの付与量も非常に低いものとなるからである。この現象は、糸条Yの走行速度が速くなるほど、糸条Yへ処理剤Lを一定量付与させるためにはローラ1aの回転速度も増加させる必要があるため、より顕著となる。なお、ローラ1aを処理剤L中に浸漬する外周値の上限は、糸条Yがトレイ1c中に貯えられた処理剤L中に浸漬されず、安定に走行できる値とすることはいうまでもない。
ところで、本発明の処理剤付与装置は、高速(特に、2000m/分以上、8000m/分以下)で走行する糸条Yに対して適用可能である。しかし、そのためには、必要とされる所定量の処理剤Lを塗布する必要があり、通常、この量はローラ1aの回転数に依存し、目的とする塗布量を得るためには、ローラ1aの回転数も必然的に高く設定する必要がある。また、糸条Yがローラ1aから受ける擦過損傷を防止するためにも、ローラ1aの回転数を高くする必要がある。
しかしながら、ローラ1aの回転数を高く設定すると、回転するローラ1aによって、トレイ1c中の処理剤Lは、ローラ1aの回転方向に押し流されて回転方向へ移動しようとすると共に、その液面も乱されてしまう。このような現象が生じると、ローラ1a上に安定した塗布膜を形成させることができなくなることは言うまでもない。
また、前記ローラ1a上の液膜は、このローラ1aの回転数が低い限りにおいては、重力によりローラの外周面上を処理剤Lが自然落下して薄膜化され、膜厚が均一化される。しかしながら、ローラ1aが高速で回転すると、処理剤Lの自然落下による処理剤膜の安定化ができなくなるばかりか、前述のローラ1aによる回転方向への処理剤Lの連れ込みの影響もあり、ローラ1a上に塗布された処理剤膜は不均一かつ非常に厚くなる。その結果、処理剤Lの飛散の増大、処理剤Lの付着斑、付着量の不安定化などの問題、更に、膜厚調整部材、処理剤付与ローラへの断糸毛羽やスカム等の異物巻き込みという問題が生じてくる。
そこで、本発明の処理剤付与装置1においては、このような回転するローラ1aによって惹起される処理剤Lの移動によるローラ1a上の処理剤膜の乱れを解消するために、ローラ1aの回転円周面に形成される処理剤の膜厚を調整することを一大特徴とする。このためには、図示したように、本発明の処理剤付与装置1が間隙形成部材1fを備えることが肝要であって、これによって、ローラ1aの回転円周面との間に形成する間隙の大きさAと間隙の設置位置Bを調整自在とする。そして、この間隙形成部材1fによって、ローラ1a上に形成される処理剤膜の厚みを制御する。
以下、本発明の処理剤付与装置1が具備する前記間隙形成部材1fについて説明するが、本発明がこの間隙形成部材1fを具備することより、処理剤付与ローラ1aを高速回転させた場合でも、このローラ1a上に薄くかつ均一な処理剤膜を塗布して形成することができ、しかも、このようにして形成された処理剤膜の状態を安定に維持させることができるのである。なお、本発明が有するこのような特徴については、特開2003−113928号公報に提案された従来技術と比較しながら説明すると理解が容易になるので、これについてまず説明する。
特開2003−183928号公報に提案された従来技術では、「処理剤付与ローラの回転円周面に対して微小間隙を置いて、この回転円周面に対して略平行に設けられたピン又はプレートからなる膜厚調整部材を設けること」が提案されている。
しかしながら、この従来技術では“ピン又はプレート”などで構成される膜厚調整部材が処理剤付与ローラの回転円周面に対して略平行に設けられているため、この“ピン又はプレート”からなる膜厚調整部材の下方から処理剤を収容する容器(トレイ)との間については、開口した空間が(オープンスペース)が形成されていることに着目する必要がある。このために、この従来技術では、処理剤付与ローラが高速回転するのに伴って、前記オープンスペースから処理剤の飛沫が周囲に飛び出すという問題を惹起させるのである。
つまり、前述の従来技術では、先ず、処理剤付与ローラが高速回転するのに伴って、ローラにピックアップされた処理剤が次々と“ピン又はプレート”からなる膜厚調整部材の下方へと供給されることになる。そうすると、前述のローラ回転方向への処理剤の連れ込みとの相乗効果によって、ここで液溜りが形成される。そして、この液溜りがある程度成長すると、回転するローラによって周囲に飛沫となって飛び散らされ、その結果、作業環境を悪化させたり、製糸された糸条パッケージなどに付着して得られる製品の品位を落としたりするという問題を惹起するのである。しかも、膜厚調整部材としてピンを採用したりすれば、このようにして生じた液溜りを形成している処理剤がピンをのり越えて流れ出して、その結果としてローラ上での処理剤膜の厚みが乱されて膜厚分布が不均一になると共に、処理剤の飛散量もこれに伴って増大するという好ましくない現象が生じる。また、油剤付与装置のオープンスペースから断糸毛羽やスカム等の異物がトレイや膜厚調整部材の間隙、ローラ等に巻き込むことによって処理剤膜の厚みの乱れが生じ、処理剤の付与量が不安定になるという好ましくない現象が生じる。
そこで、本発明の処理剤付与装置1が具備する前記間隙形成部材1fでは、ローラ1aによってピックアップされる処理剤Lに関し、間隙形成部材1fによって形成された間隙を通過する処理剤Laと、この間隙を通過させない余剰の処理剤Lbとに正確に分離できるように制御する。しかも、本発明の処理剤付与装置1では、余剰の処理剤Lbを流下させて回収する流下回収部材1gが前記間隙形成部材1fの直下に設けられているため、後述するように、余剰の処理剤Lbは周囲に飛散することなく円滑に回収される。以下、この点について、「間隙を通過する処理剤La」と「間隙を通過させない余剰の処理剤Lb」とに別けて説明することにする。
先ず、前者の「間隙を通過する処理剤La」については、前記形成させた間隙の大きさAを調整することによって、間隙を通過する処理剤量と膜厚とが適当な値となるように同時に制御する。したがって、処理剤付与ローラ1aの回転円周面上の走行糸条Yとの接触部には、適切な量の処理剤Laが、間隙形成部材1fで形成した間隙によって、狙い通りの膜厚に制御されて塗布されることとなる。しかも、間隙形成部材1fによって形成された間隙は、走行糸条Yがローラ1aと最初に接触する位置の近傍に設けられているために、適正な膜厚が維持されたままで糸条Yと接触することができる。このため、ローラ1aの高速回転に伴う悪影響を最小限に抑制することができる。
なお、更に付言するならば、処理剤付与ローラ1aの回転円周面上に塗布された処理剤Laについては、余剰の処理剤Lbが取り除かれているために、ローラ1aの回転に伴う処理剤Laの周囲への飛散量は少なくなることはいうまでもない。しかしながら、処理剤Laの飛散量が少なくなるとはいえ、図2に一点鎖線で示したように、処理剤Laの飛散防止部材1iを糸条Yの走行を妨げたり、糸掛け作業に邪魔にならないように配慮して、回転するローラ1aを包み込むようにして設けることが好ましい。
他方、後者の「間隙を通過させない余剰の処理剤Lb」については、先ず、ピックアップされた余剰の処理剤Lbが間隙形成部材1fに当ってローラ1aの回転円周面から掻き落とされる。そうすると、前述のように流下回収部材1gが前記間隙形成部材1fの直下に設けられているため、掻き落とされた余剰の処理剤Lbは流下回収部材1gを伝わって流下し、排出口1eへ強制的に導かれることになる。したがって、走行糸条Yへ付与するために必要とされる処理剤La以外の余剰の処理剤Lbは、周囲に飛散して作業環境を悪化させたり、巻き取った糸条パッケージなどの製品や周辺に配置された設部などに付着したりして、これらを汚染することもなくなる。また、余剰の処理剤Lbは、確実に回収されるために、処理剤Lの節約が可能となり歩留まりが向上することとなる。なお、ここで一言付言しておくと、図2の実施態様例では、間隙形成部材1fの前縁部が余剰の処理剤Lbを掻き落とす役割を果たしている。
このように、本発明の処理剤付与装置1では、従来技術とは異なって、処理剤Lbが周囲に飛散することはなく、しかも、従来技術においては、不可避であった前述のオープンスペースが、本発明の流下回収部材1gによって完全に塞がれるようにすることができる。したがって、本発明の流下回収部材1gは、処理剤Lが周囲に飛散するのを防止するための飛散防止カバーの役割及び外部からの断糸毛羽やスカム等の異物の巻き込み防止カバーの役割をも兼備していることになる。
このとき、前記間隙形成部材1fについては、ローラ1aとの間に間隙を形成する先端部は、処理剤Lの膜厚を良好に制御するために、ローラ1aの回転円周面に沿うように、ローラ1aの半径と同じ局率半径を有する曲面で構成することが好ましいが、本発明の主旨を満足する限り、このような形状に限定されることはない。更に、本発明の間隙形成部材1fは、ローラ1a上に塗布された余分の処理剤Lbを良好に掻き落とすことができる形状とすることが好ましい。なお、このような形状として、ローラ1a上に形成する膜厚を制御し易いように、処理剤Lを掻き落とす先端部が図示したようにローラ1aの中心方向へ向かって曲げられていることが好ましく、更に、この先端部のエッジ部は鋭角を持った状態であることが好ましいが、所望の曲率半径を有する曲面や平面によって面取り加工されていても良い。
更に、間隙形成部材1fによって形成される間隙については、ローラ1a上に形成させる処理剤膜厚を良好に制御するために間隙の大きさ(距離)Aとしは、0.08〜0.15mmに調整することが好ましい。何故ならば、間隙の大きさAが0.05mm未満では、ローラ1a上に形成させる膜厚が薄くなりすぎ、高速で走行する糸条Yに対して、充分な処理剤Lを付与することができなくなるからである。また、間隙の大きさAが0.20mmを超える場合は、ローラ1aの回転数にも依存するが、ローラ1aの表面に形成される膜厚が大きくなり過ぎたり、適正な膜厚を形成するための膜厚制御が難しくなったりして、形成される膜厚の不均一化を招く。そうすると、処理剤Lの飛散量増大や糸条Yに付着する処理剤量の変動などを招いて、本発明が目的とする効果を得ることが難しくなる。
つぎに、本発明の処理剤付与装置1においては、間隙形成部材1fによって形成される間隙の設置位置が重要である。すなわち、図2に示したように、前記間隙を設ける位置として、本発明では、処理剤Lを収容するトレイ1cの液面位置より鉛直方向へ測った距離Bが重要であって、この距離Bを20mm以上とすることが好ましい。何故ならば、距離Bが20mm未満であると、液面から前記間隙までの鉛直距離(すなわち、高さ)が低いために、ローラ1aを高速回転させると、ローラ1a上に塗布された処理剤Lの自重による自然落下が充分に起こらず、必要以上の処理剤Lが回転するローラ1aにピックアップされてしまうからである。また、この距離Bが短いと、回転するローラ1aによる回転方向への処理剤Lの連れ込みの影響が大きくなる。なお、距離Bの上限については、本発明においては、処理剤L中にローラ1aを浸漬させることが必須となるため、浸漬させるローラ1aの大きさ(直径)などによって自動的にその上限が制限されることは言うまでもない。
このように、前記ローラ1aが浸漬されて、その回転円周面に処理剤膜を形成する処理剤Lの液面と前記間隙との間の鉛直距離Bが少なくとも20mm離れていないと、前記間隙形成部材1fによって形成される間隙の大きさAが適正に形成されていたとしても、処理剤溜りが生じて、ローラ1a上に塗布された処理剤Lの膜厚を適正な値に制御することができなくなる。そうすると、前述のローラ回転方向への処理剤Lの連れ込みの影響と共に、ローラ1a上に塗布される処理剤膜厚の間隙形成部材1fによる制御が困難となる。その結果として、ローラ1a上での膜厚増大と膜厚の不均一化を招き、処理剤Lの飛散量の増大や糸条Yへ付与する処理剤量の不安定化などの問題が惹起され、本発明が目的とする効果を得ることが難しくなる。このため、前記鉛直距離Bは、20mm以上とすることが好ましい。
以上に述べたように、本発明の処理剤付与装置1は間隙形成部材1fを具備することを一大特徴とするが、本発明においては、処理剤付与ローラ1aの前部に、糸条Yの糸道を規制するための糸道規制部材1hを更に具備することが望ましい。そこで、この点について、以下に詳細ら説明する。
そこで、まず、糸道規制部材1hが果たす役割について述べると、この糸道規制部材1hは高速で走行する糸条Yが熱処理や延伸処理などの影響を受けて糸揺れが生じて、その糸道が不安定となることを防止する役割を果たす。このようにすると、高速走行する糸条Yを常に一定の糸道を走行させることができ、形成される膜厚が変動しない安定したローラ1a上の位置に糸条Yを接触走行させることができる。そして、これによって、処理剤Lの飛散が少なくなると共に、均一かつ安定に処理剤Lを付与させることができるようになる。また、この糸道規制部材1hは、処理剤Lの付与処理中はもちろんのこと、例えば断糸時の糸掛けなどにおいて何らかの原因によって、走行糸条Yが揺らぐような場合が生じても、前述の間隙形成部材1fや余剰の処理剤Lbを回収する流下回収部材1gと接触させないようにする役割もはたしている。
このとき、糸道規制部材1hの形状としては、一般的に使用されている棒状ガイド、櫛ガイド、スネルガイド、ドッグテールガイド、U字ガイドなどを用いることができるが、ローラ式処理剤付与装置1によって処理剤Lを均一に付与するために、走行糸条Yをローラ1a上で開繊させることが好ましい。したがって、このような点から前記糸道規制部材1hとしては、棒状ガイドを用いることが好ましい。その際、このような糸道規制部材1hを設置する位置としては、処理剤を付与する前に糸条Yが巻回される最終ローラ15と処理剤付与ローラ1aとの間であれば特に限定する必要はないが、走行糸条Yとローラ1aとの接触部位、接触長、接触時間などを調整するために、設置位置を調整自在とすることが望ましい。ただし、固定された糸道規制部材1hによって、走行糸条Yが擦過損傷を受けることがないように、部材の材質や設置位置などを充分配慮する必要があることは言うまでもない。具体的な材質としては、糸道を規制する合成繊維糸条Yの種類・形態・製糸速度などの条件に対応させて適宜選択すればよい性質のものであるが、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウムなどのセラミックスを挙げることができる。
次に、本発明の処理剤付与装置1の重要な構成部品である前記処理剤付与ローラ1aの表面粗さ(Ra)は、0.5S(0.5μm)以上、2.0S(2.0μm)以下が好ましい。何故ならば、2.0S(2.0μm)以上の場合、高速回転するローラ1aでは液膜が厚くなりすぎるため、ローラ1aの表面に塗布される液膜が不均一化したり、処理剤の飛散量が多くなったりするからである。また、0.5S(0.5μm)以下では、走行糸条Yとの間の摩擦係数が高くなり、走行糸条Yが擦過損傷を受け易くなり、単繊維切れなどによる毛羽の発生が多くなって、得られる糸条の品位が悪化する。
更に、処理剤付与ローラ1aの直径としては、80〜150mmとすることが好ましい。何故ならば、ローラ直径が80mm以下である場合、糸条Yに付与する処理剤Lの付着量を目的とする値にするために、ローラ1aの回転数を更に上げる必要があるからである。もし、ローラ1aの回転数を余りにも上げることになれば、ローラ1aの回転に伴って生じる遠心力の影響によって、ルーラ2上に形成される処理剤膜の厚さが不均一になるだけでなく、ローラ1aから振り切られて飛散する処理剤量が増大するために、本発明の目的を達成することが難しくなる。このため、ローラ1aの直径を余りに小さくするのは好ましくない。
これに対して、ローラ1aの直径を150mm以上とすると、主として設置スペースが大きくなるという問題を惹起する。例えば、多錘糸条を同時に処理したり、図1に示すように、溶融紡糸工程と延伸工程とを直結して紡糸延伸同時加工を行ったりするような場合において、限りのある設置スペース内に多くの設備を設ける必要が生じる。しかしながら、このように広い設置スペースが必要とされると、設備をコンパクトに効率よく収めて高効率で製糸することが極めて難しくなるという問題を生じる。
ところで、通常の製糸工程において、糸条Yの走行速度V(m/分)は、処理剤Lが付与される位置においては、製糸条件が変更されない限り常に一定とされることは言うまでもない。このとき、糸条Yの前記走行速度V(m/分)に対して、前記処理剤付与ローラ1aの周速V(m/分)が、20≦V/V≦800という関係であることが走行糸条Yに擦過損傷などのダメージを与えることなく処理剤Lを付与できるため好ましい。また、V/V>800の場合、高速走行する糸条Yに対し、処理剤Lの付与が追従せず、処理剤Lの付着斑を生ずるばかりか、処理剤Lの糸条Yへの付着量は非常に低いものとなる。一方、V/V<20の場合、ローラ1aの表面上に形成された処理剤Lの処理剤膜が厚くなり、処理剤Lの糸条Yへの付着斑が発生するばかりか、処理剤Lの飛散も激しくなって、工程調子と糸条の品質が不安定となる。
なお、本発明の処理剤付与装置1において、処理剤Lの温度を一定に維持するために処理剤Lを貯えるトレイ1cに処理剤Lの温度制御装置を設けることが望ましい。一例を示すならば、前記トレイ1cや処理剤Lの供給配管(図示せず)にジャケットを取り付け、このジャケット内に冷却水などの冷媒を流したりすることで、処理剤Lを一定温度に冷却するのが好ましい。
そして、このようにすることによって、トレイ1c内の処理剤Lの温度を30℃以下に維持することが好ましい。何故ならば、もし、トレイ1c中の処理剤Lの温度が30℃より高くなると、処理剤Lの性能を低下させるばかりではなく、処理剤L中の水分の蒸発が促進されて処理剤Lの濃度が変化するからである。
以下、実施例により本発明の方法を詳細に説明するが、本発明の主旨を満足する限りにおいて、本発明の方法はこれらの実施例に限定されることはない。なお、実施例中における「部」は重量部であり、また、実施例における処理剤の付着量安定性、処理剤の飛散量、及び製糸性は次のようにして求めた。
(1) 処理剤の付着量安定性
巻取機によって巻き取った糸条サンプルを約10g取り出して、150℃にて30分間乾燥した。そして、更に、シリカゲルにて乾燥させたデシケータ中に室温にて30分間放置して冷却した後、前重量Wを測定した。次いで、市販の界面活性剤(商品名:「サブ」 花王社製)の4%水溶液中にて糸条サンプルを3分間超音波洗浄した後、3回水洗を繰返して界面活性剤を完全に洗浄し、更に、150℃で30分間乾燥した。その後、シリカゲルにて乾燥させたデシケータ中に室温にて30分間放置して冷却した後、後重量Wを測定した。そして、このようにして、糸条への処理剤付着量w(%)を下記式(1)によって求めた。
w=((W−W)/W)×100 …… (1)
このとき、「処理剤の付着量安定性」は、前記式(1)から求めた処理剤の付着量wにおいて、2日間連続して製糸した際の最初の処理剤付着量wに対する2日経過後の処理剤付着量wを求めた。そして、下記式(2)から変化率z(%)を求め、このzの値から、○:z≦10、△:10<z≦25、×:z>25 と3段階で評価した。
z=(|w−w|/w)×100 …… (2)
(2) 処理剤の飛散量
処理剤の飛散量を評価するために、前記処理剤付与装置1の処理剤付与ローラ1aと走行糸条Yが接触する部分の近傍の処理剤が飛散する方向に直径5cmの丸板を1分間設置した。そして、この丸板に飛散して付着した処理剤の量を目視で確認し、○:処理剤の飛散がない(付着量を目視確認することが困難)、△:わずかに処理剤の飛散あり、×:処理剤の飛散量が極めて多い、の3段階で評価した。
(3) 製糸性
延伸ローラに熱劣化物が蓄積し、延伸処理が困難となり、蓄積物の清掃が必要となる時間を測定し、○:48時間以上、△:24時間以上48時間未満、×:24時間未満の3段階で評価した。
[実施例1〜3、比較例1〜3]
図1に例示した製糸工程において、図2に例示した処理剤付与装置1を使用して、固有粘度が0.97のポリエステルを公知の溶融紡糸法によって紡出してガラス転移温度以下に冷却して固化した。その際、公知のローラ式油剤付与装置によって0.35重量%となるように油剤の付与条件を調整して紡糸油剤を付与しつつ、引取ローラ10によって、糸条速度1000m/分で引取って、引き続いて、延伸倍率が4.0倍、処理剤付与装置1の設置位置における糸条Yの走行速度が4000m/分となるように延伸熱処理を行った。その際、処理剤付与装置1による処理剤Lの付与量は糸条重量に対して、0.15重量%となるように調整し、1670dtex/250filのポリエステル繊維糸条を巻取機17によって4000m/分で巻き取った。
なお、前記紡糸油剤の組成は、グリセリントリオレート:68部、POE(25)硬化ヒマシ油トリステアレート:20部、POE(3)ラウリルアミノエーテル:10部、POE(8)オレイルフォスフェートナトリウム:2部とし、これに水を加えて増量し、その濃度が水に対して10重量%となるように調製したものを使用した。
ここで、前記処理剤付与装置1として、処理剤付与部のローラ1aの表面粗さ(Ra)が1.0Sであって、その直径が100mmである酸化アルミニウムからなる材質のものを使用した。その際、前記ローラ1aの回転数は、180rpm(ローラ1aの周速Vは57m/分)に設定した。したがって、V/Vは70であった。
なお、この処理剤付与部で付与した前記処理剤の組成は、デナコールEX−421(ナガセケムテックス株式会社製):50部、ジオクチルアゼレート:15部、POE(5)ラウリルエーテル:25部、POE(10)ラウリルアミノエーテル:7.5部、POE(3)ラウリルサルフェートナトリウム:2.5部とし、これに水を加えて増量し、その濃度が水に対して45重量%となるように調製したものを使用した。
このとき、前記処理剤付与装置1を構成するローラ1aについては、その接糸面の表面粗さ(Ra)が1.0Sであって、その直径が100mmの酸化アルミニウム製のものを使用した。このとき、間隙を形成させる先端部が半径1.0mmの半円形状を有する板厚2.0mmの間隙形成部材1fによって形成させた間隙の大きさAは0.10±0.02mmに調整した。さらに、糸道規制部材1hとして、直径がφ6mmの酸化チタン製棒ガイドを用いた。なお、これ以外の条件については、表1に実施例1、及び比較例1〜4の条件とその結果をまとめて表1に示す。
Figure 2005171433
上記表1からも分かるように、間隙形成部材を具備せずに処理剤付与ローラ1aを280rpm(88m/分)で回転させた比較例3では、処理剤の飛散量が多いばかりでなく、処理剤付着量の安定性と製糸性に関しても、その評価は×である。
これに対して、処理剤付与装置1に間隙形成部材1fを設けることによって、処理剤付与ローラ1aの回転数が比較例1〜2の140rpm(周速44m/2分)から実施例1〜3のように200rpm(63m/分)〜280rpm(88m/分)と高速化しても処理剤の飛散量は多くならず、速度が上昇したにもかかわらず飛散量が少なくなるように抑制されていることが分かる。更に、「処理剤付着量の安定性」及び「製糸性」についても、全ての実施例1〜3において比較例1〜3よりも改善されていることが分かる。
また、実施例1のように、前記間隙形成部材1fと共に糸道規制部材1hを設けることによって、走行する糸条Yの揺れなどに起因する糸道の変動要因が除去されて、走行糸条Yの糸道が常に一定位置を安定に走行することができるようになり、更に「処理剤の飛散量」と「製糸性」とが改善されることが分かる。これに対して、当然のことながら、比較例1のように、単に糸道規制部材1hを設けただけでは、これらの評価項目は全く改善されないことが分かる。
ただし、実施例2のように間隙形成部材1fと共に糸道規制部材1hを設け場合であっても、処理剤付与ローラ1aと間隙形成部材1fとの間に形成させる処理剤液面からの距離Bが15mmと、適当な値(B≧20)に設定されていない場合には、ローラ1aによって間隙形成部材1fによって形成される間隙への処理剤の入側に処理剤溜りが形成されるようになるために、糸道規制部材1hの効果が余り発揮されない。
本発明の「合成繊維糸条への処理剤付与方法及びその装置」によれば、高速で走行する糸条に対しても処理剤の付与を良好に行なうことができ、処理剤の周囲への飛散量も大幅に低減でき、処理剤の歩留まりの向上、作業環境の悪化防止、製造する糸条品質の向上などが期待できるために、合成繊維の製造工程に大きな貢献をすることができる。
本発明の処理剤付与方法とそのための装置を好適に適用できる製糸工程を例示した概略工程図である。 本発明に係わる合成繊維への処理剤付与装置の実施形態を例示した説明図(模式側面図)である。
符号の説明
1 処理剤付与装置
2 処理剤付与ローラ
3 回転駆動軸
4 トレイ
5 処理剤の供給口
6 処理剤の排出口
7 間隙形成部材
8 糸道規制部材
Y 糸条
L 処理剤

Claims (9)

  1. 回転する処理剤付与ローラ上に処理剤の膜を形成して、形成された処理剤の膜に高速走行する合成繊維糸条を接触させて走行する糸条に処理剤を付与する方法において、前記走行糸条が前記ローラと最初に接触する位置の近傍に、前記ローラとの間に0.08〜0.15mmの大きさを持った間隙を形成させ、前記間隙を通過できない余剰の処理剤を前記ローラから掻き落として余剰の処理剤を流下させて回収すると共に、前記間隙の大きさを調整することによって間隙を通過する処理剤の膜厚を制御することを特徴とする合成繊維糸条への処理剤付与方法。
  2. 走行する前記糸条が前記ローラへ接触する際の糸道を一定位置に規制することを特徴とする、請求項1に記載の合成繊維糸条への処理剤付与方法。
  3. 前記ローラが浸漬されて回転円周面に処理剤膜を形成する処理剤の液面と前記間隙との間の鉛直距離が少なくとも20mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の合成繊維糸条への処理剤付与方法。
  4. 前記合成繊維糸条の走行速度V(m/分)と前記ローラの周速V(m/分)との比V/Vが、20≦V/V≦800であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の合成繊維糸条への処理剤付与方法。
  5. 前記合成繊維糸条の走行速度速度V(m/分)が2000≦V≦8000であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の合成繊維糸条への処理剤付与方法。
  6. 走行する合成繊維糸条に付与する処理剤の液面レベルが一定に維持されて収容される容器と、前記容器中に浸漬されて容器中の処理剤を回転円周面上にピックアップする処理剤付与ローラと、前記走行糸条が前記ローラと最初に接触する位置の近傍に前記ローラとの間に0.08〜0.15mmの大きさを持った間隙を形成させる間隙形成部材と、前記間隙を通過できない余剰の処理剤を流下させて回収する流下回収部材とを備え、更に、前記流下回収部材は前記間隙形成部材の直下に開口空間を形成することなく設けられていることを特徴とする合成繊維糸条への処理剤付与装置。
  7. 走行する前記糸条が前記ローラへ接触する際の糸道を一定位置に規制する糸道規制部材を具備することを特徴とする、請求項6に記載の合成繊維糸条への処理剤付与装置。
  8. 前記処理剤付与ローラの走行糸条との接触部の材質が表面粗さ(Ra)が0.5S(0.5μm)以上、2.0S(2.0μm)以下であるセラミックスであって、該ローラの直径が80mm以上、150mm以下であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の合成繊維糸条への処理剤付与装置。
  9. 前記ローラとの間に間隙を形成する前記間隙形成部材の先端部が、前記ローラの回転円周面に沿って前記ローラの半径と同じ局率半径を有する曲面で構成されていることを特徴とする、請求項6〜8の何れかに記載の合成繊維糸条への処理剤付与装置。
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JP2008007881A (ja) * 2006-06-28 2008-01-17 Kyocera Corp 給油用ローラ及びこれを用いた紡糸引取り装置
WO2008093867A1 (ja) * 2007-02-02 2008-08-07 Du Pont-Toray Company, Ltd. 繊維のメッキ前処理方法およびメッキされた繊維の製造方法

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