JP2005168399A - コチョウランクローン苗の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明の目的は、コチョウラン親株の分身である花茎腋芽由来のシュートを無菌的に培養することによって安全かつ安定的に複製する方法を提供することである。
【解決手段】 無菌的に得られたコチョウランのシュートの茎頂をはんだごててなどを用いて焼殺処理した後に側生シュート誘導培地にて無菌的に培養して側生シュートを誘導せしめ、当該側生シュートを切り出して生長培地で培養した後、当該シュートを繰り返して茎頂の除去処理、側生シュート誘導培養を行うことを特徴とするコチョウランクローン苗の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 無菌的に得られたコチョウランのシュートの茎頂をはんだごててなどを用いて焼殺処理した後に側生シュート誘導培地にて無菌的に培養して側生シュートを誘導せしめ、当該側生シュートを切り出して生長培地で培養した後、当該シュートを繰り返して茎頂の除去処理、側生シュート誘導培養を行うことを特徴とするコチョウランクローン苗の製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、シュート培養によるコチョウランクローン苗の製造方法に関し、詳しくはコチョウラン親株の分身である花茎腋芽由来のシュートの茎頂を焼殺処理した後、無菌的に培養することによって側生シュートを誘導し、PLB誘導を経由しないで安全的に複製する方法に関する。
コチョウランは、ラン科植物の中で最も注目されている園芸植物で、シンピジュームやデンドロピュームと並んで、最も人気のある洋ランのひとつである。近年では、技術の発展にともない一年中出荷されるようになり、洋ランの中では最も多く生産されている。近年、植物を栽培するにあたり、クローン増殖による苗の大量生産が盛んになってきている。
元来、コチョウランの栽培では、実生苗を用いた栽培が主体であったが、実生苗は品質が不均一であり、生産管理の効率化も図りにくい。このため、高品質化と生産の効率化を目的として、上述のようなクローン苗を用いた栽培が導入されてきている。
クローンとは、無性的に増殖した遺伝的に均一な生物の集団を意味し、つまり、見かけも中身も同じものを意味する。クローン化技術は、動物では倫理的に大きな問題となるが、植物では従来から株分けや挿し木で特性や形質が同一の花卉草木を増やしてきている。最近では、バイオテクノロジー技術を利用して優良種苗や無病苗を効率的に、また大量に増殖することが可能となっている。したがって、親株と遺伝的に同じ性質を有するコチョウランクローン苗を、例えば、組織培養法を用いて、大量生産し、栽培特性や花の形質が均一である、例えば、生育や花の数、色、形が良好にそろったコチョウランを生産することが主流に行われている。
一般に、ラン科の植物では、種子から生育したもの、つまり実生苗からは形や色がバラバラで、この手法では良いものと悪いものを選別する手間がかかり、しかも、3年以上育てないと花がつかないために、非常に生産しにくい植物のひとつであった。そこで、形や色のそろった良好なコチョウランを大量に増やすために、培養による増殖を行っている。概略すると、コチョウランでは、蕾のふくらむ前の伸びつつある花茎の先端部分を3mm程度に輪切りにして、これを試験管の中で培養する。その後、2乃至3ヶ月でプロトコーム様球体(PLB)と呼ばれる植物体の基となる直径数ミリの球状のものが発生し、このPLBを増殖用の培地に植えると、数ヶ月で20倍程度に増殖し、これを繰り返すことでPLBを無限大に増やすことが可能である。このPLBを植物体に戻すための培地に植えると半年程度で小さな苗となり、この段階で試験管から取り出した苗がクローン苗である。試験管から出た後、普通の栽培を行うと2年程度で花が咲くようになり、したがって、クローン苗によって、良質の同じ形の花が咲く株が大量にできる。同時期に咲くため出荷時期を調節しやすいなどのメリットがあり、ランの栽培農家やアグリビジネスにおける花卉生産工程で利用されている。
詳細には、例えば、クローン苗生産の方法として主にPLBを誘導する方法(例えば、非特許文献1、2、3を参照)、および側生シュートを誘導する方法(例えば、非特許文献4を参照)が現在行われている。
M.TANAKA, 「STUDIES ON THE CLONAL PROPAGATION OF PHALAENOPSIS THROUGH IN VITRO CULTURE」、MEMOIRS OF FACULTY OF AGRICULTURE, KAGAWA UNIVERSITY、1987、NO.49:1−85 S.ICHIHASHI、「MICROPROPAGATION OF PHALAENOPSIS THROUGH THE CULTURE OF LATERAL BUDS FROM YOUNG FLOWER STALKS. LINDLEYANA」、1992 寺本貴尚、周天甦著、「異なる培養方法におけるファレノプシス類の品種間差について」 2000年、園学雑69別1:370 JX DUAN, H. CHEN, AND S. YAZAWA、 「IN VITRO PROPAGATION OF PHALAENOPSIS VIA CULTURE OF CYTOKININ-INDUCED NODES」、 J. PLANT GROWTH REGLATION、1996、15:133−137 周天甦、坂口修一著、「ファレノプシス類の培養変異と倍数性」、2001年、Proceedings of APOC7、Nagoya、p.202−203
M.TANAKA, 「STUDIES ON THE CLONAL PROPAGATION OF PHALAENOPSIS THROUGH IN VITRO CULTURE」、MEMOIRS OF FACULTY OF AGRICULTURE, KAGAWA UNIVERSITY、1987、NO.49:1−85 S.ICHIHASHI、「MICROPROPAGATION OF PHALAENOPSIS THROUGH THE CULTURE OF LATERAL BUDS FROM YOUNG FLOWER STALKS. LINDLEYANA」、1992 寺本貴尚、周天甦著、「異なる培養方法におけるファレノプシス類の品種間差について」 2000年、園学雑69別1:370 JX DUAN, H. CHEN, AND S. YAZAWA、 「IN VITRO PROPAGATION OF PHALAENOPSIS VIA CULTURE OF CYTOKININ-INDUCED NODES」、 J. PLANT GROWTH REGLATION、1996、15:133−137 周天甦、坂口修一著、「ファレノプシス類の培養変異と倍数性」、2001年、Proceedings of APOC7、Nagoya、p.202−203
しかしながら、既知の方法のPLBを誘導する方法は培養変異の発生(例えば、非特許文献5を参照)が問題とされ、また、他方従来の側生シュート誘導には高濃度の植物ホルモン(例えば、非特許文献4を参照)に依存し、遺伝的保存性の低い不定芽が発生しやすく、さらに従来、メスなどによって茎頂を除去する方法はあるが、正確に茎頂を切断することが難しく、効率が悪い上、煩雑な作業を伴うなどの問題がある。
したがって、本発明は上述に鑑みてなされたものであり、側生シュートの誘導にあたって効率的、かつ簡単に茎頂の除去ができ、より安全的かつ効率的にコチョウランクローン苗の製造を行うことを目的とする。
即ち、上記目的は、請求項1に記載されるが如く、シュート培養によるコチョウランクローン苗の製造方法であって、花茎培養などより無菌的に得られたコチョウランのシュートの茎頂をはんだごてなどの細い先端を有する金具を用いて茎頂を焼殺処理した後に側生シュート誘導培地にて無菌的に培養して側生シュートを誘導せしめ、当該側生シュートを切り出して生長培地で培養した後、さらに当該シュートの茎頂を繰り返して焼殺処理し、側生シュート誘導培養を繰り返し行うことを特徴とするコチョウランクローン苗の製造方法を提供する。
請求項1に記載の発明によれば、シュート培養によるコチョウランクローン苗の製造方法において、花茎培養などより無菌的に得られたコチョウランのシュートの茎頂をはんだごてなどの細い先端を有する金具を用いて茎頂を焼殺処理することによって頂芽優勢を抑えることができ、側芽の発生を促進するように側生シュート誘導培地にて無菌的に培養して側生シュートを誘導せしめ、当該側生シュートを切り出して生長培地で培養した後、さらに当該シュートの茎頂を繰り返して焼殺処理し、側生シュート誘導培養を繰り返し行うコチョウランクローン苗の製造方法を提供できる。それによって、効率的で簡単にコチョウランクローン苗を製造することができ、ひいては、良質で同形状・同色の花が咲くコチョウランを効率的に大量生産できる。
請求項2にかかる発明は、請求項1の発明において、培養用シュートは、前記側生シュート誘導培地での培養に先立ち、当該培養用シュートの茎頂を焼殺処理したものであることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、前記側生シュート誘導培地での培養に先立ち、培養用シュートの茎頂を焼殺処理されることによって、該培養用シュートの茎頂を正確に除去でき、さらに除去作業を効率が良く、簡素にすることができ、それによってコチョウランクローン苗の製造を効率的に行うことができる。
請求項3にかかる発明は、請求項1または2の発明において、前記側生シュート誘導培地は、1乃至15ppmの濃度の植物ホルモンを含有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、前記側生シュート誘導培地に、1乃至15ppmの濃度の植物ホルモンを含有することによって、高濃度の植物ホルモンに依存せず、遺伝的保存性の低い不定芽の発生を抑えることができる。
請求項4にかかる発明は、請求項3の発明において、前記植物ホルモンは、ベンジルアデニンであることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、ベンジルアデニンである植物ホルモンを1乃至15ppmの濃度で使用することによって、高濃度の植物ホルモンに依存せず、遺伝的保存性の低い不定芽の発生を抑えることができ、高効率でシュートの形成ができる。
本発明の効果は、側生シュートの誘導にあたって効率的かつ簡単に茎頂の除去ができ、より安全的かつ効率的にコチョウランクローン苗の製造を行うことができる。
本発明者は、コチョウランのシュート培養法について鋭意検討した結果、シュートの茎頂を焼殺処理することによって、頂芽優勢を抑え、側芽の展開を向上できることを見出し、さらに当該シュートを側生シュート誘導培地、培養条件等について検討を重ね、実用的なコチョウランのコチョウランクローン苗の製造法を開発し、本発明を完成させた。
本発明は、無菌的に得られたコチョウランのシュートの茎頂をはんだごてなどを用いて焼殺処理をした後に側生シュート誘導培地にて無菌的に培養して側生シュートを誘導せしめ、当該側生シュートを切り出して生長培地で培養した後、当該シュートを繰り返して茎頂の除去処理、側生シュート誘導培養を行うことを特徴とするコチョウランクローン苗の製造に関する。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるコチョウランの品種は特に限定せず、例えばドリテノプシス属のDtps. City Girl, Dtps. White Castle,Dtps. Quevedo, Dtps.Zuma White Butteafly等やファレノプシス属のPhal. Cygnus, Phal. Zuma Rascal, Phal. Zuma's Pixie, Phal. Bald Mountain,等の品種が挙げられる。
本発明によれば、上記のいずれの品種、また他の多数のコチョウラン品種や原種を用いた場合でも、良好な結果が得られる。
本発明における無菌的に得られるコチョウランのシュートとしては、例えば通常に表面殺菌をした開花株の花茎を無菌的に培養することによって得られるシュートや開花株花茎のたかめを表面殺菌したものが用いられる。前者は表面殺菌を行わずに用いられるので表面殺菌によるダメージはなく、たかめより好ましい材料である。
このようにして得られたコチョウランのシュートを、まず粗調整として滅菌メスで根を切除し、さらに葉を約2/3程度を切除する。次に、はんだごてを用いてシュートの茎頂部へ差し込み、高温によって茎頂を焼殺処理する(図1)。図1の(I)は未調製のシュート、(II)は粗調製したシュートおよびはんだごてによる焼殺処理をそれぞれ示す。次いで、このように処理して得た培養用シュートは、基部を培地に接するようにシュート誘導培地に置床する。
シュート誘導培地としては、MS培地、B5培地、WV培地等の組織培養用培地を用いる。シュート誘導培地には、糖類として多糖類、単糖類、糖アルコール類(例えば、蔗糖やソルビトール等)、天然有機物としてはココナツウオーター、新鮮バナナや新鮮ジャガイモなど、さらにサイトカイニン類の植物ホルモンを添加するとよい。蔗糖の場合は0.5乃至3%、好ましくは1%、ココナツウオーターの場合は5乃至25%、好ましくは10%、植物ホルモンの場合はベンジルアデニン(BA)を1乃至15ppm、好ましくは3ppmを添加すればよい。
なお、本発明の方法では、培地の支持体として通常ジェランガムや寒天のようなゲル化剤を用いる。寒天の場合は、0.6乃至1.0%、好ましくは0.7%添加する。
シュート誘導培養は、常法により実施すればよく、通常は18乃至30℃、好ましくは28℃で、連続または16時間照明(照度500乃至5000lux、好ましくは3000lux)下で、30乃至90日間培養する。
このシュート誘導培養により側生シュートが形成される。側生シュート形成能は、品種間で差があるので、培養を適切な期間において続けるべきである。
次に、この培養により誘導された側生シュートを滅菌メスで元のシュートとの接着部より切り出し、植物体を再生させる場合は、通常の無菌播種用培地に移植すればよく、容易に苗等の幼植物体に発達する。なお、通常は1シュートから数個体しか得られないので、幼植物を量産するためには、側生シュートをさらに大きく生長させ、前述のような茎頂の除去処理を繰り返す必要がある。側生シュートを早く大きく生長させるには、育苗時に培養環境、例えば明るさと通気性を一定に保ち、通常の育苗用培地に移植すればよい。
本発明では、元のシュートから誘導された側生シュートを切り出して育苗培地で1乃至3ヶ月間培養した後、当該シュートを再び茎頂の除去処理をして培養を行い、側生シュートを誘導し、コチョウランクローン苗を無菌的に製造する。
本発明に用いる育苗用培地としてMS培地、B5培地、V&W培地等の基本培地が挙げられ、それに新鮮バナナ50乃至200g/l、好ましくは100g/lと、蔗糖0.5乃至3%、好ましくは1%と、活性炭0.05乃至0.2%、好ましくは0.1%を添加し、寒天0.5乃至0.8%、好ましくは0.6%とで固めたものが好ましい。育苗条件としては、20乃至28℃、好ましくは23乃至26℃、8乃至24時間、好ましくは16時間の照明、照度は200乃至10000lux、好ましくは3000luxである。
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
供試材料として、Dtps. City Girlの花茎腋芽培養苗由来の無菌的な4乃至5枚の葉を有するシュートを用いた。なお、花茎腋芽の調整・培養方法は田中法(非特許文献1を参照)を用いた。
試験区として図1に示すようにシュートを粗調整した処理区および粗調整した後に、はんだごてを用いてシュートの茎頂部へ差し込み、高温によって茎頂を焼殺処理した処理区を設けた。
シュート培養用培地として、B5培地に蔗糖1%、ココナツウオーター10%、ベンジルアデニン(BA)1ppmをそれぞれ添加して、寒天0.7%で固形化した。
該培地に各処理区のシュートを置床し、25℃で2000luxの16時間照明下で培養し、2ヶ月後に測定した。その結果を表1に示した。
供試材料は実施例1の茎頂の除去処理をしたシュートを用いた。
シュート培養用培地として、培地a:B5培地に蔗糖1%、ココナツウオーター10%、ベンジルアデニン(BA)0ppmを添加して寒天0.7%で固形化したもの、培地b:培地aのベンジルアデニン(BA)を3ppm添加したもの、培地c:培地aのベンジルアデニン(BA)を10ppm添加したものを調製した。
各培地に除葉処理をしたシュートを置床し、25℃で2000luxの16時間照明下で培養し、2ヶ月後に測定した。その結果を表2に示した。
本発明により、コチョウランの親株が遺伝的保存性の高い花茎腋芽をスタート材料とするコチョウランのクローン苗を製造が効率よくでき、安全かつ安定的なクローン苗生産に多大に貢献することができる。
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
Claims (4)
- シュート培養によるコチョウランクローン苗の製造方法であって、花茎培養などより無菌的に得られたコチョウランのシュートの茎頂をはんだごてなどの細い先端を有する金具を用いて茎頂を焼殺処理した後に側生シュート誘導培地にて無菌的に培養して側生シュートを誘導せしめ、当該側生シュートを切り出して生長培地で培養した後、さらに当該シュートの茎頂を繰り返して焼殺処理し、側生シュート誘導培養を繰り返し行うことを特徴とするコチョウランクローン苗の製造方法。
- 培養用シュートは、前記側生シュート誘導培地での培養に先立ち、当該培養用シュートの茎頂を焼殺処理したものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記側生シュート誘導培地は、1乃至15ppmの濃度の植物ホルモンを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
- 前記植物ホルモンは、ベンジルアデニンであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
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