JP2005166483A - 固体酸化物形燃料電池用燃料電極 - Google Patents

固体酸化物形燃料電池用燃料電極 Download PDF

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Abstract

【課題】多孔質の燃料電極骨格内に、耐炭素析出性もしくは燃料ガスの電気化学反応に対し活性な微粒子化された材料を、その材料が触媒としての作用を最も発揮する部位に導入し、かつ劣化物を生じず、また金属粒子同士の凝集も起こさない長期安定性に優れた燃料電極を提供する。
【解決手段】固体電解質の表面に、空孔率の異なる複数層の、酸素イオン伝導性を有する金属酸化物と電子伝導性を有する金属またはその酸化物微粒子からなる多孔質燃料電極骨格を形成し、前記骨格中の空孔率が他の層と比較して大きい層に、熱処理により熱処理により活性物質もしくは耐炭素析出性物質となりうる化合物を含む溶液を注入し熱処理することにより、前記空孔率が大きな層内に活性物質を酸化物および金属として分散させたことを特徴とする。

Description

本発明は、SOFC(Solide Oxide Fuel Cellすなわち固体酸化物形燃料電池)用燃料電極に関するものである。
近年、酸素イオン伝導体を用いたSOFCに関心が高まりつつある。特にエネルギーの有効利用という観点から、固体燃料電池はカルノー効率の制約を受けないため本質的に高いエネルギー変換効率を有し、さらに良好な環境保全が期待されるなどの優れた特長を持っている。
しかしながら、固体電解質型燃料電池は、水素を燃料とすることができるが、燃料の貯蔵の簡便さからメタンや天然ガスそしてメタノールなどの炭化水素を燃料に使用する方法が実用的である。SOFCの場合、炭化水素を水蒸気とともに直接燃料極に送り込むことでの燃料極内で改質を行い燃料極で使用する水素を取り出す事が可能である。改質の転換率を高めるために燃料の改質に必要な水蒸気量の2〜3倍の水蒸気を混合しているのが現状である(参考文献1:M.Ihara,etal;Jounal of The Electrochemical Society,vol.46(7)2481−2487(1999))。これは、未反応の炭化水素が燃料極に供給されるとクラッキング反応が起きて燃料極内に炭素が析出、蓄積し、燃料極の特性を損なう事が懸念されるためである。しかしこの様に多量の水蒸気量を混合した燃料を用いるとセル出力電圧の低下を引き起こす。また、燃料極内は電解質を通して透過してきた酸素イオンが電気化学的に水素と反応し水蒸気が生成される。このため、燃料に混合する水蒸気量が多い場合セル内で生成された水蒸気との相乗効果でセル出力電圧がますます低下する。このため、なるべく少ない水蒸気を混合し、かつ燃料極内での炭素の析出を抑制する技術が望まれる。
混合水蒸気量を低減した燃料を用いても炭素の析出の無い燃料極材料として、Cuとジルコニア系電解質との混合体を用いたCu系燃料極が提案されている(M.B.Joerger,B.Vgler,L.Gauckler;Proce.of the 14th International Conf.on Solide State Ionics p47,(2003))。しかしCuは水素や炭化水素燃料に対して活性が低いため電極性能の低下を引き起こす。
M.Ihara,etal;Jounal of The Electrochemical Society,vol.46(7)2481−2487(1999) M.B.Joerger,B.Vgler,L.Gauckler;Proce.of the 14th International Conf.on Solide State Ionics p47,(2003)
本発明は、界面抵抗および燃料電極過電圧を低減することでセル出力電圧を向上させ、かつ燃料極内に生じる炭素の析出を極力低減させるため、あらかじめ形成した酸素イオン伝導性を有する金属酸化物と電子伝導性を有する金属またはその酸化物微粒子からなる多孔質の燃料電極骨格内に、耐炭素析出性もしくは燃料ガスの電気化学反応に対し活性な微粒子化された材料を、その材料が触媒としての作用を最も発揮する部位に導入し、かつ劣化物を生じず、また金属粒子同士の凝集も起こさない長期安定性に優れた燃料電極を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明による固体酸化物形燃料電池用燃料電極は、固体電解質の表面に、空孔率の異なる複数層の、酸素イオン伝導性を有する金属酸化物と電子伝導性を有する金属またはその酸化物微粒子からなる多孔質燃料電極骨格を形成し、前記骨格中の空孔率が他の層と比較して大きい層に、熱処理により活性物質もしくは耐炭素析出性物質となりうる化合物を含む溶液を注入し熱処理することにより、前記空孔率が大きな層内に活性物質を酸化物および金属として分散させたことを特徴とする。
本発明の燃料電極は、酸素イオン伝導性を有する金属酸化物と電子伝導性を有する金属またはその酸化物微粒子からなる多孔質の燃料電極を、あらかじめ空孔率の異なる層状の骨格構造体として形成した。さらに、上記燃料電極中の空孔率の大きい層中に、耐炭素析出性あるいは燃料ガスの電気化学反応に対し活性な材料(活性物質)を、溶液の状態を出発物として注入し、その後熱処理することにより、上記多孔質の表面を覆う微粒子として形成した。
また、形成する層状の骨格構造体中の空孔率を大きくする部位をあらかじめ制御することで、上記した注入する溶液の注入する部位を制御することとした。さらに、燃料電極構造中の燃料ガスの流れおよび反応量を勘案し、炭素質の析出の抑制が望まれる部位もしくは燃料ガスの改質の抑制が望まれる部位に、CuおよびFeのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含有した上記した溶液を注入することとした。さらに、燃料ガスの電気化学反応における界面抵抗および燃料電極過電圧の低下が望まれる部位に、CoおよびNiのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含有した上記した溶液を注入することとした。
本発明は、酸素イオン伝導性を有する金属酸化物と電子伝導性を有する金属またはその酸化物微粒子からなる多孔質の燃料電極を、あらかじめ空孔率の異なる層状の骨格構造体として形成し、さらに、上記燃料電極中の空孔率の大きい層中に、耐炭素析出性あるいは燃料ガスの電気化学反応に対し活性な材料を、溶液の状態を出発物として注入し、その後熱処理することにより、上記多孔質の表面を覆う微粒子として形成した電極を採用することにより、界面抵抗を1/5〜1/10程度に低減し、セル出力電圧を向上させることが可能となった。また、燃料電極骨格構造体中の空孔率を電極の層単位で制御し、そこに注入する材料の制御することにより、あらゆる運転条件においても、耐炭素析出性を保持し、かつ燃料ガスの電気化学反応の活性を維持することが可能となった。
本発明における、酸素イオン伝導性を有する金属酸化物と電子伝導性を有する金属またはその酸化物微粒子からなる空孔率の異なる層状の骨格構造体は、主に燃料電極構造中の供給ガスおよび反応後のガスの通路および電子伝導のためのパスを提供する。その骨格上に形成する溶液の状態を出発物とした微粒子が、骨格表面を覆うことにより電気化学的な反応場および燃料が改質反応を起こす場を提供する。
本発明では、上記した構成をとることにより、すなわちあらかじめ燃料電極の骨格構造体を形成することで、さらに注入する溶液およびそこから形成される微粒子の種類およびその材料の持つ熱膨張率によらず、その力学的構造を容易に保持することを可能とした。本発明の最も特徴的な作用は、燃料電極骨格構造体中の空孔率の制御およびそこに注入する材料の制御により、あらゆる運転条件においても、耐炭素析出性と燃料ガスの電気化学反応の活性を維持できることにある。
本実施形態においては、燃料電極を支持基板とする燃料電極支持型のSOFCについて説明するが、本発明における電池構造はこれに限定するものではなく、電極内の空孔率が制御可能な電極構造であれば、電解質支持型および空気極支持型SOFCにも適応可能である。また、本実施態様では、例として電解質及び骨格構造に混合する電解質材料として、Sc、Al添加ジルコニア(SASZまたは、0.895ZrO−0.10Sc−0.005Al)を用いたが、イットリア安定化ジルコニアおよびセリア系電解質材料を採用した際にも同等の効果を発揮する。
ここで、以下の実施例に供した燃料電極支持型SOFCの調整および作製法の一例を下記に述べる。電解質には、SASZを用い、これに有機バインダーを添加することによりスラリー状にし、ドクターブレード法により厚さ20〜50μmのグリーンシートとして作製した。骨格構造体となる燃料電極は、NiO:SASZが60:40(wt%)となるように混合したサーメットに有機バインダーを添加することでスラリー状にし、ドクターブレード法により厚さ20〜300μmのグリーンシートとして作製した。
また、上記した燃料電極のグリーンシートとは別に、骨格構造体の空孔率の制御を目的として、NiO:SASZが60:40(wt%)となるように混合したサーメットに対し、10wt%含有するようにカーボンパウダーを混合したサーメットをドクターブレード法により厚さ20〜300μmのグリーンシートとして作製した。
上記のように調整および作製したグリーンシートの電解質を端面として燃料電極のグリーンシートとともに積層し、加圧・加熱接着し、脱脂工程を経て、1300℃2時間焼成しハーフセルを得た。焼成後のハーフセルの厚さは1mmとした。この時、カーボンパウダーを混合したグリーンシートは、後述する溶液を出発物とする材料を配置する部位に積層する必要がある。また、本実施例においては、燃料電極骨格構造の空孔率を確保するために、カーボンパウダーを使用したが、スラリーにする際の有機バインダーや溶剤に溶解しない材料であれば、樹脂などの微細な球を混合しても作製が可能である。なお、ここでは、電極焼成温度を1300℃としたが、1250〜1450℃の範囲で焼成が可能であり、以下の実施例においても同様に実施可能である。
また、ハーフセルの厚さに関しても、単セルを積層したスタック構造をとる際に、そこで要求される力学的強度を保持していれば厚さは限定されるものではない。上記したハーフセルのSASZ電解質の裏面にLaNi0.6Fe0.4のスラリーを塗布し、1000℃、2時間の条件で焼成し空気極とした。以上の工程により、骨格構造をなすSOFCが完成される。
さらに、骨格構造をなすSOFCのカーボンパウダーを混合し作製されたグリーシートより作製された燃料電極層に、耐炭素析出性あるいは燃料ガスの電気化学反応に対し活性な材料を、有機化合物を含む溶液の状態を出発物として注入し、その後850℃4時間熱処理することにより、上記多孔質の表面を覆う微粒子として形成した。なお、熱処理温度は、燃料電極の骨格構造の焼成温度より低い温度であればよく、800℃〜950℃が、形成された活性な材料の微細な構造を保持するために好ましい。また、注入する物質は以下の実施例で詳細に述べる。ここで、注入する溶液は、カーボンパウダーを混合しないグリーンシートから作製された燃料電極層の空孔率が5%程度であるのに対し、カーボンパウダーを混合する電極層の空孔率20−30%程度と大きいため、選択的にカーボンパウダーを混合したグリーンシートから作製された燃料電極層に注入することが可能となる。
また、上記したカーボンパウダーを混合しない燃料電極層の空孔率は5%であるが、その空孔の一部は閉空孔として形成されており、溶液の含浸には適当でないことを走査型電子顕微鏡観察(SEM観察)により確認した。なお、上記した溶液を注入する際の空孔率はいずれの場合においても、焼成後の酸化物の状態であるため、その後発電の用途に供する場合は、酸化物中の金属となりうる元素が還元され、空孔率が増大し、燃料ガスや生成したガスの流通を阻害するものではない。また、酸化物の状態で注入する溶液は、あらかじめ熱処理され電極骨格上に焼成されるため、還元後に骨格構造中を移動することはない。
上記したセルを用いて図1に示す燃料電池を組み立て、800℃において発電試験を行った。図1に試験用セルと試験用セルの測定装置への装着状況を示す。図1(a)は試験用セルの構成図、図1(b)は試験用セルの取り付け部および測定装置への装着状況を示す図である。前記試験セルは固体電解質1の両面に燃料電極2および空気電極3を設けた構造になっている。
試験用セルは図1(b)に示すように、酸化アルミニウムでできた取り付け部5に取り付けられる。後述する試験用セルの電気的測定のための配線は空気極3側をPtメッシュ6とPt線61とした。一方、燃料電極2側は、炭化水素の分解による炭素質の析出を避ける目的から、炭化水素の分解に不活性なAuをメッシュ7と線71を配線として用いた。
また、試験温度付近に軟化点を持つガラスリング8を介して試験用セルを、図1(b)における酸化アルミニウムでできた取り付け部5に取り付けることにより、燃料電極2と空気極3のガス雰囲気を区分した。なお4は高温用シール剤、9は電気炉である。
この時の燃料ガスの組成は、それぞれ3vol%水蒸気添加水素、64vol%水蒸気添加メタン(水蒸気/メタン体積比率=2/1)、および33vol%水蒸気添加メタン(水蒸気/メタン体積比率=1/2)とした。
ここで、これらのセルの評価方法として交流インピーダンス法による界面抵抗値の測定を行った。すなわち、直流電流値がゼロの開放起電力の状態において、空気極と燃料電極に微小な交流電流をかけて、空気極と燃料電極の間の応答交流電位から燃料電極−電解質間および空気極−電解質間の界面の抵抗を求める方法である。なお、燃料電極−電解質間および空気極−電解質間の電位応答の特性が異なるため、各抵抗の分離は可能である。
本実施態様においては、燃料電極−電解質間の界面の抵抗について述べるが、この値は、燃料電極の三相界面と呼ばれる活性サイトの量に反比例しており、界面抵抗値が低いほど電極の性能が高いといえる。界面抵抗値は、発電試験開始直後に測定した値(初期界面抵抗値)および電極の単位面積あたりに流す電流値が0.5A/cmで500時間保持したのちに電流を開放し測定した値(放置試験後界面抵抗値)を用いて評価を行った。
同時に、500時間保持試験後、燃料電極雰囲気を不活性なNに切り換え、燃料電極の還元処理状態を保持したまま常温に戻し、発電試験セル表面および断面をSEM観察し炭素質の析出の状態や有無を検証した。
電解質のグリーンシートと接する燃料電極に厚さ50μmのカーボンパウダーを含むグリーンシートから形成された燃料電極層を配置し、そのほかの燃料電極層にはカーボンパウダーを含まないグリーンシートから作製された燃料電極層を配置したセルを作製した。このセルのカーボンパウダーを含むグリーンシートから形成された燃料電極層に骨格表面に形成する活性物質として、Ni1.2Ti0.8およびCo1.2Ce0.8となりうる有機化合物を含む溶液を注入し、それぞれ熱処理を施した。
上記のとおり作製したセルの断面の構造を示した概念図を図2に示した。すなわち固体電解質層21上に空孔率の大きな層22および空孔率の小さな層23を形成されたものであり、前記空孔率の大きな層22には前述のNiまたはCoの内の少なくとも1元素を含む溶液が注入されており、空孔率の小さな層23には添加物が注入されていない。
上記の条件以外は前述した実施条件で作製したセルを用いて、前述のとおり発電試験を行った。なお、比較のため溶液を注入していないセルも作製し同様の測定を行った。以上の発電試験結果を表1にまとめた。
電解質と燃料電極の界面近傍に活性物質を配置することにより、いずれの燃料ガス条件においても界面抵抗を1/10程度に低減させることに成功した。また、界面抵抗値の上昇の度合いは、注入がある場合も、ない場合も、いずれも2倍程度であるが、抵抗の絶対値は1/10程度に保持することが可能であることが実証された。
500時間保持した後のセルの断面をSEM観察したところ、活性物質を注入した電解質近傍の燃料電極層には5−50nm程度の微細な酸化物とNiもしくはCoの粒子が電極骨格上に析出していることが観察された。また、活性物質を注入していない燃料電極層の一部には炭素質の析出が観測された。ただしこの析出は一部にとどまっており、本実施例の範囲ではセルそのものの破壊には至らなかった。
本実施においては、燃料電極の骨格中に注入する溶液として、Ni1.2Ti0.8およびCo1.2Ce0.8となりうる有機化合物を含む溶液を採用したが、CoおよびNiのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含有した物質であれば、同様の効果がある。また、注入する溶液を有機化合物を含む溶液としたが、無機化合物を含む溶液であっても同様の効果がある。
Figure 2005166483
電解質のグリーンシートと接する燃料電極に厚さ50μmのカーボンパウダーを含まないグリーンシートから形成された燃料電極層を配置し、そのほかの燃料電極層にはカーボンパウダーを含むグリーンシートから作製された燃料電極層を配置したセルを作製した。このセルのカーボンパウダーを含むグリーンシートから形成された燃料電極層に骨格表面に形成する燃料ガスであるメタンのクラッキングによる炭素質の析出を防止する物質として、Cu1.2Ti0.8およびFe1.2Ce0.8となりうる有機化合物を含む溶液を注入し、それぞれ熱処理を施した。
上記のとおり作製したセルの断面の構造を示した概念図を図3に示した。このセルにおいては、固体電解質層21上に空孔率の小さな層23および空孔率の大きな層22を形成したものであり、前記空孔率の大きな層22には前述のCuおよびFeの内の少なくとも1元素を含む溶液が注入されており、空孔率の小さな層23には添加物が注入されていない。
上記の条件以外は前述した実施条件で作製したセルを用いて、前述のとおり発電試験を行った。なお、比較のため溶液を注入していないセルも作製し同様の測定を行った。以上の発電試験結果を表2にまとめた。
三相界面と考えられる電解質と燃料電極の界面近傍から離れた電極構造中に上記物質を配置することによって、初期界面抵抗値は低減できないものの、500時間の放置試験による界面抵抗値の上昇の度合いは約2倍から約1.4倍程度に低減されており、骨格上への物質の形成による電極性能の劣化抑制効果が確認できた。
500時間保持した後のセルの断面をSEM観察したところ、物質を注入した電解質近傍の燃料電極層には5−50nm程度の微細な酸化物とCuもしくはFeの粒子が電極骨格上に析出していることが観察された。また、物質を注入した燃料電極層には炭素質の析出は観測されなかった。
本実施においては、燃料電極の骨格中に注入する溶液として、Cu1.2Ti0.8およびFe1.2Ce0.8となりうる有機化合物を含む溶液を採用したが、CuおよびFeのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含有した物質であれば、同様の効果がある。また、注入する溶液を有機化合物を含む溶液としたが、無機化合物を含む溶液であっても同様の効果がある。
Figure 2005166483
電解質のグリーンシートと接する燃料電極に厚さ50μmのカーボンパウダーを含まないグリーンシートから形成された燃料電極層を配置し、そのほかの燃料電極層にはカーボンパウダーを含むグリーンシートから作製された燃料電極層を配置した円形状のセルを作製した。このセルに対し、カーボンパウダーを含むグリーンシートから作製された燃料電極層の同心円状に中心部から順にCu1.2Ti0.8およびFe1.2Ce0.8となりうる有機化合物を含む溶液およびNi1.2Ti0.8およびCo1.2Ce0.8となりうる有機化合物を含む溶液をそれぞれ注入し、それぞれ熱処理を施した。
上記のとおり作製したセルの燃料電極の断面図および平面図を図4に示した。固体電解質層21上に空孔率の小さな層23および空孔率の大きな層22を積層した構造になっている(図4a参照)。前記空孔率の大きな層22は二つの部位に分割されている。すなわち中心部にCuおよびFeの内の少なくとも1元素が注入された部位(ガス導入部位)221を設け、その外周上にNiおよびCoの内の少なくとも1元素が注入された部位(ガス排出部位)222を設けた構造になっている(図4b参照)。なお矢印は燃料ガスの流れる方向を示している。
上記の条件以外は前述した実施条件で作製したセルを用いて、前述のとおり発電試験を行った。なお、比較のため溶液を注入していないセルも作製し同様の測定を行った。以上の発電試験結果を表3にまとめた。
これより、円形のセルの中心部からクラッキングによる炭素質の析出を防止する物質および燃料電極反応の活性物質を注入し、配置することにより、物質の注入を行わないセルと比較して、初期界面抵抗値を1/5程度に低減できかつ、500時間の放置試験による界面抵抗値の上昇の度合いは1.2倍程度に抑制することができた。
500時間保持した後のセルの断面をSEM観察したところ、物質を注入した電解質近傍の燃料電極層には5−50nm程度の微細な酸化物とNiおよびCuの粒子が電極骨格上に析出していることが観察された。また、物質を注入した燃料電極層には炭素質の析出は観測されなかった。
Figure 2005166483
* Ni1.2Ti0.8+Cu1.2Ti0.8
本発明によれば、酸素イオン伝導性を有する金属酸化物と電子伝導性を有する金属またはその酸化物微粒子からなる多孔質の燃料電極を、あらかじめ空孔率の異なる層状の骨格構造体として形成し、さらに、上記燃料電極中の空孔率の大きい層中に、耐炭素析出性あるいは燃料ガスの電気化学反応に対し活性な材料を、溶液の状態を出発物として注入し、その後熱処理することにより、上記多孔質の表面を覆う微粒子として形成した電極を採用することにより、界面抵抗を1/5〜1/10程度に低減し、セル出力電圧を向上させることが可能となった。また、燃料電極骨格構造体中の空孔率を電極の層単位で制御し、そこに注入する材料の制御することにより、あらゆる運転条件においても、耐炭素析出性を保持し、かつ燃料ガスの電気化学反応の活性を維持することが可能となった。
本実施例で用いた、燃料電極を支持基板とする燃料電極支持型のSOFCの単セル(a)及び試験装置への装着状況(b)を示す概念図。 実施例1で用いた、電解質のグリーンシートと接する燃料電極にカーボンパウダーを含むグリーンシートから形成された燃料電極層を配置し、そのほかの燃料電極層にはカーボンパウダーを含まないグリーンシートから作製された燃料電極層を配置したセルを示す概念図。 実施例2で用いた、電解質のグリーンシートと接する燃料電極にカーボンパウダーを含まないグリーンシートから形成された燃料電極層を配置し、そのほかの燃料電極層にはカーボンパウダーを含むグリーンシートから作製された燃料電極層を配置したセルを示す概念図。 実施例3で用いた、電解質のグリーンシートと接する燃料電極にカーボンパウダーを含まないグリーンシートから形成された燃料電極層を配置し、そのほかの燃料電極層にはカーボンパウダーを含むグリーンシートから作製された燃料電極層を配置した円形状のセルに、同心円状に中心部から順にCu1.2Ti0.8およびFe1.2Ce0.8となりうる有機化合物を含む溶液およびNi1.2Ti0.8およびCo1.2Ce0.8となりうる有機化合物を含む溶液をそれぞれ注入したセルを示す概念図。
符号の説明
1 固体電解質
2 燃料電極
3 空気極
4 高温用シール剤
5 取り付け部
6 Ptメッシュ
61 Pt線
7 Auメッシュ
71 Au線
8 ガラスリング
9 電気炉
21 固体電解質層
22 空孔率の大きな層
221 ガス導入部位
222 ガス排出部位
23 空孔率の小さな層

Claims (7)

  1. 固体電解質の表面に、空孔率の異なる複数層の、酸素イオン伝導性を有する金属酸化物と電子伝導性を有する金属またはその酸化物微粒子からなる多孔質燃料電極骨格を形成し、前記骨格中の空孔率が他の層と比較して大きい層に、熱処理により活性物質もしくは耐炭素析出性物質となりうる化合物を含む溶液を注入し熱処理することにより、前記空孔率が大きな層内に活性物質を酸化物および金属として分散させたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用燃料電極。
  2. 前記酸化物および金属は、CoおよびNiのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含むことを特徴とする請求項1記載の固体酸化物形燃料電池用燃料電極。
  3. 前記酸化物および金属は、CuおよびFeのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含むことを特徴とする請求項1記載の固体酸化物形燃料電池用燃料電極。
  4. 固体電解質近傍の多孔質である燃料電極骨格層の空孔率を他の層と比較して大きく形成し、そこにCoおよびNiのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含む酸化物および金属を分散させたことを特徴とする請求項1または2記載の固体酸化物形燃料電池用燃料電極。
  5. 固体電解質とは直接接しない燃料電極骨格層の空孔率を他の層と比較して大きく形成し、そこにCuおよびFeのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含む酸化物および金属を分散させたことを特徴とする請求項1または3記載の固体酸化物形燃料電池用燃料電極。
  6. 前記空孔率の大きな層をガス導入部位とガス排出部位に分け、前記ガス導入部位側にCuおよびFeのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含む酸化物および金属を分散させ、前記ガス排出部位側にCoおよびNiのうち1元素もしくは2元素を含みかつTiもしくはCeを含む酸化物および金属を分散させたことを特徴とする請求項1記載の固体酸化物形燃料電池用燃料電極。
  7. 前記酸化物および金属は5〜50μmの粒径の微粒子であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の固体酸化物形燃料電池用燃料電極。
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