つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、この発明を適用できる車両のパワートレーン、およびその車両の制御系統を、図3に示す。図3に示す車両Veにおいては、動力源1と車輪2との間の動力伝達経路に、流体伝動装置3、ロックアップクラッチ4、前後進切り換え機構5、無段変速機6などが設けられている。動力源1としては、例えば、内燃機関または電動機の少なくとも一方を用いることができ、好ましくは電子スロットルバルブ7を備えた内燃機関などの出力を電気的に制御できる機構を備えた内燃機関が使用される。電動機としては、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有するモータ・ジェネレータを用いることが可能である。この実施例では、動力源1として、電子スロットルバルブ7を備えたガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどの内燃機関が用いられている場合について説明する。
また、流体伝動装置3およびロックアップクラッチ4は、動力源1と前後進切り換え機構5との間の動力伝達経路に設けられており、流体伝動装置3とロックアップクラッチ4とは相互に並列に配置されている。流体伝動装置3は、流体の運動エネルギにより動力を伝達する装置であり、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、動力源1によって回転させられるポンプインペラと、これに対向させて配置したタービンランナと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナに供給することよりタービンランナを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となる。そのため、ポンプインペラなどの入力側の部材と、タービンランナなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ4が設けられている。このロックアップクラッチ4は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ係合状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。また、前後進切り換え機構5は、入力されたトルクを選択的に反転して出力する装置であって、例えば遊星歯車機構を主体として構成されている。
無段変速機6は、要は、変速比を連続的に変化させることのできる機構であって、ベルト式あるいはトロイダル型の無段変速機を使用することができる。図3にはベルト式のものが示されており、この無段変速機6は、前後進切り換え機構5と車輪2との間の動力伝達経路に設けられている。無段変速機6についてより具体的に説明すると、相互に平行に配置されたプライマリシャフト8およびセカンダリシャフト9が設けられている。このプライマリシャフト8にはプライマリプーリ10が設けられており、セカンダリシャフト9にはセカンダリプーリ11が設けられている。プライマリプーリ10は、プライマリシャフト8に固定された固定シーブ12と、プライマリシャフト8の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ13とを有している。そして、固定シーブ12と可動シーブ13との間にV字形状の溝M1が形成されている。
また、この可動シーブ13をプライマリシャフト8の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ13と固定シーブ12とを接近・離隔させる油圧サーボ機構14が設けられている。この油圧サーボ機構14は、油圧室15と、油圧室15のオイル量または油圧に応じてプライマリシャフト8の軸線方向に動作しかつ可動シーブ13に接続されたピストン(図示せず)とを備えている。
一方、セカンダリプーリ11は、セカンダリシャフト9に固定された固定シーブ16と、セカンダリシャフト9の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ17とを有している。そして、固定シーブ16と可動シーブ17との間にはV字形状の溝M2が形成されている。そして、これらの溝M1,M2に挟持された状態でベルト18が各プーリ10,11に巻き掛けられている。
また、この可動シーブ17をセカンダリシャフト9の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ17と固定シーブ16とを接近・離隔させる油圧サーボ機構19が設けられている。この油圧サーボ機構19は、油圧室20と、油圧室20の油圧またはオイル量に応じてセカンダリシャフト9の軸線方向に動作しかつ可動シーブ17に接続されたピストン(図示せず)とを備えている。
一方、無段変速機6の油圧サーボ機構14,19およびロックアップクラッチ4、および前後進切り換え機構5を制御する機能を有する油圧制御装置21が設けられている。さらに、動力源1、ロックアップクラッチ4、前後進切り換え機構5、無段変速機6、油圧制御装置21を制御するコントローラとしての電子制御装置22が設けられている。この電子制御装置22は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
図3に示す無段変速機6の変速比を車両Veの走行状態、すなわちアクセル開度や車速などに基づいて制御する自動変速制御と、手動変速操作に基づいて変速を実行する手動変速(マニュアルシフト)制御とを実行できるように構成されている。シフト装置23は、その自動変速制御と手動変速制御とを選択するように構成されている。その一例を説明すると、シフトレバー24をガイドするガイド溝が図3に模式的に示すように変形したH字形に形成され、一方の直線部分にパーキングポジション(P)、リバースポジション、ニュートラルポジション、ドライブポジション(D)、ブレーキポジション(B)が割り付けられ、かつドライブポジションから分岐した他方の直線部分の中央部がマニュアルポジション(M)に割り付けられ、このマニュアルポジションを挟んでアップシフトポジション(+)とダウンシフトポジション(−)とが設けられている。そして、各ポジションを検出するスイッチなどのセンサ(図示せず)が設けられており、そのセンサの出力信号が前記電子制御装置22に入力されている。また、シフトレバーの移動を前記油圧制御装置21に伝達するためのケーブルなどのリンゲージ(図示せず)が設けられている。
上記の電子制御装置22に入力されている信号を例示すると、エンジン回転数、アクセルペダルの操作状態、ブレーキペダルの操作状態、スロットルバルブの開度、シフトポジション、プライマリシャフト8の回転数、セカンダリシャフト9の回転数、油圧制御装置21のソレノイドバルブのフェールの有無、エンジンの吸入空気量、登坂路か否かなどを検知するセンサの信号、シフト装置23で選択されているシフトポジションを示す信号、前記アップシフトポジションに設けられたセンサからのアップシフト信号、前記ダウンシフトポジションに設けられているセンサからのダウンシフト信号などが入力されている。また、電子制御装置22には各種のデータが記憶されており、電子制御装置22に入力される信号、および記憶されているデータに基づいて、電子制御装置22から、動力源1を制御する信号、無段変速機6を制御する信号、前後進切り換え機構5を制御する信号、ロックアップクラッチ4を制御する信号、油圧制御装置21を制御する信号などが出力される。
電子制御装置22に記憶されているデータとしては、エンジントルク制御マップ、変速機制御マップ、ロックアップクラッチ制御マップなどが挙げられる。エンジントルク制御マップは、例えば電子スロットルバルブ7の制御量の一時的な増大量を設定したマップである。また、変速機制御マップには、変速比の制御マップ、トルク容量の制御マップなどが含まれる。変速比制御マップは、車速、アクセル開度、減速度もしくはブレーキの操作状態などに基づいて、無段変速機6の変速比もしくは動力源1の目標回転数を設定するマップである。動力源1としてエンジンが用いられている場合は、無段変速機6の変速比の制御により、エンジン回転数を最適燃費曲線に近づけるように制御できる。なお、この回転数制御は、主として目標回転数と実回転数との偏差に基づくフィードバック制御によっておこなわれ、必要に応じてフィードフォワード制御が実行もしくは併用される。トルク容量制御マップは、変速比、伝達するべきトルクなどに基づいて、無段変速機6のトルク容量を制御する場合に用いるマップである。また、ロックアップクラッチ制御マップは、車速、アクセル開度などに基づいて、ロックアップクラッチ4のトルク容量を設定するマップである。
上述したように、無段変速機6は動力源1の回転数を燃費が最適になる回転数に制御するように機能させることができる。このいわゆる通常の制御では、一例として、アクセル開度などで代表される駆動要求量と車速とに基づいて適宜のマップから要求駆動力を求め、その要求駆動力と車速とから動力源の目標出力を算出する。その目標出力を最適燃費で出力することのできる目標回転数を、いわゆる最適燃費線と目標出力線との交点での回転数としてマップなどから求め、その目標回転数と実際の動力源回転数との差を制御偏差として無段変速機6の変速比がフィードバック制御される。一方、目標出力とその時点の車速などに基づいて目標トルクが算出され、その目標トルクを達成するように電子スロットルバルブ7などによって動力源1の出力トルクが制御される。
このいわゆる通常制御は、車速や流体伝動装置3のタービン回転数などとアクセル開度などの要求駆動量とで定まる走行状態に基づいて無段変速機6を制御するものであるが、無段変速機6の変速比の制御としては、手動変速操作に基づく制御も可能である。その制御は、シフト装置23のアップシフトポジションあるいはダウンシフトポジションに設けられているスイッチもしくはセンサを、シフトレバーによってオン動作させて信号を出力させ、その信号に基づいて、動力源1の目標回転数をステップ的に変化させ、あるいは信号の出力している間、目標回転数を連続的に変化させる制御である。このような変速制御が、手動変速制御(マニュアルシフト制御)である。
マニュアルシフトは、車両の機敏な動作を期待して実行するから、変速速度(変速比変化率)が大きくなるように無段変速機6が制御される。例えば、減速時にマニュアルダウンシフト操作した場合には、変速比を通常より速い速度で増大させる。また反対に加速中にマニュアルアップシフト操作した場合には、通常より速い速度で変速比を減少させる。このような変速制御は、通常のマニュアルシフト制御として実行される。
また、このようなマニュアルシフトの場合、変速速度が速いので、ショックを緩和もしくは防止するために、エンジントルクの制御が併せて実行される。具体的には、減速時のマニュアルダウンシフトの場合には、エンジントルクを迅速に増大させる制御が実行される。これは、図3に示す車両では、電子スロットルバルブ7の開度を増大させ、その後、徐々に復帰させる制御である。このエンジントルク制御が変速制御と協調して実行されると、変速比の増大に伴ういわゆるエンジンブレーキ力を、エンジントルクの制御によって小さくし、変速比が急激に増大することによる駆動トルクの変化を抑制してショックが防止もしくは緩和される。また、マニュアルアップシフトの場合、変速比が急激に小さくなることによって動力源1やこれに関連する回転部材の回転数が減少して慣性トルクが発生し、これがショックの原因となるので、その慣性トルクを相殺するようにエンジントルクが低下させられる。このようにエンジントルクの制御も、通常のマニュアルシフト制御に含まれる。
上記のように、マニュアルシフトによる変速制御が実行されることによって、通常よりも速い変速速度で変速がおこなわれ、車両の機敏な動作を実現することが可能になる。その一方で、例えばマニュアルシフトによってダウンシフトがおこなわれ、その変速が完了する前にマニュアルシフトによるアップシフトがおこなわれたり、その反対に、マニュアルアップシフトがおこなわれ、その変速が完了する前にマニュアルダウンシフトがおこなわれるような、マニュアルシフトでの連続的な変速操作がおこなわれると、目標回転数が急変し、それに伴って目標回転数と実際の回転数との偏差である差回転数が大きく変化してしまう場合がある。
その場合に、この差回転数の変化を考慮せずに変速制御が実行されると、具体的には、変速制御のために実行されるフィードバック制御のフィードバックゲインが、差回転数の変化を考慮せずに一律に設定されると、例えば差回転数が小さくなり急速な変速は必要ないにもかかわらず、大きなフィードバックゲインが設定されてしまい、運転者の意図しない急変速や、制御のハンチングが発生してしまう可能性がある。そこでこの発明の制御装置は、以下の制御を実行するように構成されている。
図1はその制御の一例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図1において、先ず、マニュアルシフト(マニュアルモード)が選択されているか否かが判断される(ステップS1)。マニュアルシフトが選択されていないことによって、このステップS1で否定的に判断された場合、すなわち自動変速制御が実行される自動変速モードであると判断された場合には、特に制御をおこなうことなくこのルーチンを一旦終了する。一方、マニュアルシフトが選択されていることによって、ステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS2へ進み、そのマニュアルシフトによってアップシフトもしくはダウンシフトがおこなわれたか否かが判断される。このステップS2で否定的に判断された場合には、変速比の変化が生じないので、特に制御をおこなうことなく、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、マニュアルシフトによってアップシフトもしくはダウンシフトがおこなわれたことによって、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ステップ3へ進み、現在の無段変速機6の目標入力回転数と実入力回転数との偏差である差回転数(言い換えると、目標入力回転数と実入力回転数との回転数差の絶対値である差回転数)が、所定値T以下であるか否かが判断される。この所定値Tは、「差回転数が大きい状態」と「差回転数が小さい状態」とを区別するための閾値として予め設定された値である。したがって、現在の差回転数が所定値Tよりも大きい場合は、「差回転数が大きい状態」であると判断される。すなわち、その場合はステップS3で否定的に判断され、ステップS4へ進む。
ステップS4では、変速制御のフィードバック制御における、「差回転数が大きい状態」のフィードバックゲインが設定される。具体的には、例えばアクセル開度や変速種類などの車両の走行状態をパラメータとして、マップから読みとられることによって、車両の走行状態に応じたフィードバックゲインが設定される。「差回転数が大きい状態」のフィードバックゲインが設定されると、その後、このルーチンを一旦終了する。
一方、現在の差回転数が所定値T以下である場合は、「差回転数が小さい状態」であると判断される。すなわち、その場合はステップS3で肯定的に判断され、ステップS5へ進み、「差回転数が小さい状態」のフィードバックゲインが設定される。「差回転数が小さい状態」では、制御の応答性をさらに向上させる必要がないため、フィードバックゲインは、急変速によるショックやハンチングが生じない程度の小さな値に低下させられて設定される。
続いて、現在の差回転数が前回の差回転数以上であるか否かが判断される(ステップS6)。これは、フィードバック制御が実行された際の差回転数の変化を判断するためのものであって、例えば、目標入力回転数に対する実入力回転数が、収束する方向にあるのか発散する方向にあるのかを判断するためのものである。したがって、現在の差回転数が前回の差回転数より小さいことによって、ステップS6で否定的に判断された場合、すなわちフィードバック制御による目標入力回転数に対する実入力回転数が、収束する方向にあると判断された場合は、そのままこのルーチンを一旦終了する。
そして、現在の差回転数が前回の差回転数より大きいことによって、ステップS6で肯定的に判断された場合、すなわちフィードバック制御による目標入力回転数に対する実入力回転数が、発散する方向にあると判断された場合は、フィードバック制御によって目標入力回転数に対して実入力回転数を収束させる必要があるため、フィードバックゲインを徐々に大きくする。すなわちフィードバックゲインのスイープアップ制御が実施される(ステップS7)。このスイープアップ制御は、例えば予め定められた一定のスイープ勾配でスイープアップさせることができ、あるいは、差回転数の大きさに応じてスイープ勾配の傾きを変更してスイープアップさせることもできる。そして、このスイープアップ制御が実行されると、その後、このルーチンを一旦終了する。
図2は、上記の図1に示す制御を実施した場合と実施しない場合とを比較して模式的に示したタイムチャートである。図2の期間Aは、マニュアルダウンシフト操作が開始されて無段変速機6の入力回転数(もしくは動力源1の回転数)が上昇している際中に、マニュアルアップシフト操作がおこなわれた場合を示している。マニュアルダウンシフト操作によりダウンシフトの変速制御が実行開始されると、図2の一点鎖線で示すように、無段変速機6の目標入力回転数が設定される。そして無段変速機6の実際の入力回転数である実入力回転数は、目標入力回転数に向けて上昇を開始するが、実入力回転数は不可避的な制御遅れを伴って上昇するため、目標入力回転数と実入力回転数との間には比較的大きな差が生じる。すなわち目標入力回転数と実入力回転数との偏差である差回転数が大きくなる。すると、目標入力回転数に対して実入力回転数を速やかに収束させるために、換言すると、マニュアルシフトによる変速を速やかに実行させるために、この変速制御のために実行されるフィードバック制御のフィードバックゲイン(この実施例では比例ゲイン)が増大させられる。このようにフィードバックゲインが増大させられることによって、変速制御の応答性が向上し、マニュアルシフトによる機敏な変速をおこなうことが可能となる。
一方、このマニュアルダウンシフト操作による変速制御の実行中に、マニュアルアップシフト操作がおこなわれると、アップシフトの変速制御によって、大幅に低下させられた目標入力回転数が設定され、この目標入力回転数の低下に伴い差回転数も同時に小さくなる。このとき、図2の点線(期間B)で示すような、この発明の制御を実施しない場合には、上記のように差回転数が小さくなっても、フィードバック制御の比例ゲインは差回転数の大小に関係なく一律とされ、差回転数が小さいにもかかわらず大きな比例ゲインが設定されてしまう場合がある。すると、差回転数が小さく変速の幅も小さいのに対して、比例ゲインが不適切に大きな値となって、急変速によるショックが生じたり、図2の点線で示すような制御のハンチングが生じてしまう可能性がある。
そこで、この発明に係る無段変速機の制御装置は、差回転数の大小に応じてフィードバック制御の比例ゲインを変更し、その変更した結果に基づいてさらに比例ゲインを変更するように制御を実行する。すなわち、図2の期間Bに示すように、マニュアルシフトの連続操作などによって、差回転数が急変して小さくなった場合には、その急変速によるショックの発生を防ぐため、フィードバック制御の比例ゲインが大幅に低下させられる。そして、比例ゲインが小さくなった分だけ制御の応答性が低下し、次第に差回転数が増大してくると、今度は、実入力回転数を目標入力回転数に収束させて、かつ急変速によるショックや制御のハンチングを生じさせないように、フィードバック制御の比例ゲインがスイープアップされる(図2の期間C)。そしてその後、実入力回転数が徐々に低下して目標入力回転数に収束していくと、すなわち差回転数が小さくなると、比例ゲインは通常の小さな値に低下させられて、マニュアルシフトによる変速制御が終了する。
以上のように制御が実行されることによって、マニュアルシフトの連続的な操作により、差回転数が急変するような場合であっても、フィードバック制御の比例ゲインが適宜低下させられて、さらに、その後の差回転数の変動に応じて、低下された比例ゲインがスイープアップなどの方法で適切に増大させられる。その結果、差回転数の大きさとフィードバック制御の比例ゲインの大きさの設定とが適切でないことによって生じる、急変速によるショックや制御のハンチングを防止もしくは抑制することができる。
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS3の機能的手段が、この発明の第1の差回転数判定手段に相当し、ステップS4,5の各機能的手段が、この発明の第1の係数制御手段に相当する。また、ステップS6の機能的手段が、この発明の第2の差回転数判定手段に相当し、ステップS7の機能的手段が、この発明の第2の係数制御手段に相当する。
なお、この発明は、上記の具体例に限定されないのであって、無段変速機はベルト式以外にトロイダル型のものであってもよい。
また、上記の具体例では、無段変速機の差回転数を、「差回転数が大きい状態」と「差回転数が小さい状態」とに区別するために、所定値Tを閾値として設定した例を示しているが、この所定値Tは、一つの値に限られるものではなく、例えば、閾値にヒステリシスを設けて、所定値T1,T2を閾値として設定された複数の値であってもよい。すなわち、この発明の係数制御手段における、「差回転数が所定値以下の場合に、フィードバックゲインを低下させる」場合の所定値と、「差回転数が所定値より大きい場合には、フィードバックゲインの低下をおこなわない」場合の所定値とは、同じ値であっても、あるいは複数の異なる値であってもよい。
さらに、上記の具体例では、差回転数の大きさや変化に基づいて設定されるフィードバックゲインとして、比例ゲインを増大もしくは低下させる例を示しているが、この発明ではこれに限るものではなく、比例ゲインに換えて、積分ゲインや微分ゲインを適宜変更することによって適切な変速制御を実行するようにしてもよく、あるいは、これらの比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインなどの組合せによって適切な変速制御を実行するようにしてもよい。
そして、上記の具体例(特に図2のタイムチャート)では、差回転数が急変する場合として、手動変速操作によるダウンシフト実行中に手動変速操作によるアップシフトが実行される例を示しているが、この例に限定されるものではなく、手動変速操作によるアップシフト実行中に、手動変速操作によるダウンシフトが実行されることによって、差回転数が急変するような場合にも適用することができる。あるいは、これら以外の他の外乱などによって、差回転数が変化するような場合にも適用することができる。