JP2005161480A - 物体処理装置、物体の移動方法及びその移動方法を用いて処理された物体 - Google Patents

物体処理装置、物体の移動方法及びその移動方法を用いて処理された物体 Download PDF

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Abstract

【課題】 光ピンセットによって捕捉した微小物体の所望の位置への移動を容易かつ迅速に行い得るようにする。
【解決手段】 液体試料内に含まれる微小物体試料Sに光を照射することによって微小物体試料Sを捕捉し、該光を移動させることによって光を照射した微小物体を移動させる光ピンセット106と、該光ピンセット106によって捕捉された微小物体試料Sの移動範囲を規制するガイド手段1とを備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、バイオテクノロジー、微小光学素子、マイクロマシンやそれらの融合領域などの技術分野において物体の操作や処理、特に、微小物体の移動などに好適な物体処理装置、物体の移動方法及びその移動方法を用いて処理された物体に関する。
現在、バイオテクノロジーの発達とともに、細胞試料などの微小物体試料に対する操作性向上の要求が高まっている。
従来、細胞試料などの微小物体試料に対する処理、操作は、顕微鏡下で観察しつつ自作の器具などを用いて注意深く行われてきた。このような微小物体試料を処理する器具としては、例えば、非常に近接した試料と顕微鏡の対物レンズの間でも操作できるような特殊形状のキャピラリーやピペットなどが挙げられる。また、細胞は非常にデリケートな液体試料であるため、その捕捉、移動等の操作には、光ピンセットが使用されている。この光ピンセットは、レーザ光を集光させ、その光スポットを処理対象となる細胞に照射することによりその光圧によって細胞を捕捉し、レーザ光を移動させることによって捕捉した細胞を任意の位置に移動させ得るものとなっている。このため、処理対象となる細胞等を処理に適した位置へと非接触で移動させることが可能となり、細胞の損傷などを避けることができる有効な手段として用いられている。
特開平2−91545号公報
しかしながら、上記のような光ピンセットを用いた細胞の捕捉、移動操作は、熟練を要する操作となっている。特に、捕捉した細胞を所望の位置へとスムーズに移動させることは極めて困難な作業となっており、多くの時間と労力を要している。これが、このバイオテクノロジーなどの分野における工業化を遅らせている一つの要因になっている。
本発明は、上記従来技術に着目してなされたものであり、光ピンセットによって捕捉した物体を所望の位置への移動を容易かつ迅速に行い得るようにすることを目的とする。
上記各従来技術の課題を解決するため、本発明は、以下の構成を有するものとなっている。
すなわち、本発明の第1の態様は、基板上の液体試料に含まれる物体に光を照射することによって、前記物体を捕捉し、前記光を移動させることによって前記光を照射した前記物体を移動させる光ピンセットと、前記光ピンセットによって捕捉された前記物体の移動する範囲を規制するガイド手段とを備えたことを特徴とする物体処理装置を提供するものである。
本発明の第2の態様は、液体試料に含まれる物体を保持するための基板と、前記基板上に保持された前記物体を間接的に移動させる補助物体とを備え、前記補助物体に光を照射することによって、前記補助物体を捕捉し、前記光を移動させることによって前記光を照射した前記補助物体を移動させる光ピンセットと、前記光ピンセットによって捕捉された前記補助物体の移動する範囲を規制するガイド手段とを備えたことを特徴とする物体処理装置を提供するものである。
本発明の第3の態様は、液体試料に含まれる物体の移動範囲を規制するガイド手段を設け、前期液体試料に含まれる前記物体に光ピンセットの光を照射することによって、前記物体を捕捉し、且つ前記光を移動させることによって前記物体の移動範囲を規制しつつ所望の位置へと前記物体を移動させることを特徴とする物体の移動方法を提供するものである。
本発明の第4の態様は、物体を含む液体溶液を保持する基板上に補助物体を設け、前記物体を保持した前記補助物体に光を照射することによって前記補助物体を捕捉し、前記光を移動させることによって、前記補助物体の移動範囲を規制しつつ、前記補助物体を介して前記物体を所望の位置へと間接的に移動させることを特徴とする物体の移動方法を提供するものである。
上記のように、本発明によれば、光ピンセットとガイド手段とを組み合わせることによって、従来は困難であった物体の所望の位置への簡単かつ高速の移動操作が可能になり大量な物体を高速処理を促進することが可能になる。
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は本実施形態における物体処理装置(微小物体処理装置)100の概略構成を示す説明図である。
図において、101は細胞などの微小物体試料を含んだ液体試料を保持する基板である。102はこの基板101を水平移動させる搬送手段であり、この搬送手段102は、水平面上の直交する2軸方向(X方向およびY方向)へと移動する粗動ステージ103と、この粗動ステージ103の上を3軸方向(X方向、Y方向およびこれらと直交するZ方向(図1中、紙面と直交する方向)に移動可能な微動ステージ104と、各ステージ103,104の移動させるステージ駆動部105とからなる。なお、前記粗動ステージ103は後述の光ピンセットからの光を微動ステージ104に載置された基板101の裏面から照射させ得るために、透光性を有する板材を用いるか、あるいは光ピンセットの光路のための開口部が形成されているものを使用することも可能である。
また、106は光ピンセットとしてのレーザピンセットである。このレーザピンセット106は、レーザ光を発するレーザ光源107と、このレーザ光を集光し前記微動ステージ104上に載置された基板101に所定の径の光スポットを照射する光学系108と、前記基板101に照射される光スポットをX方向およびY方向に移動させる走査部109とを有する構成となっている。また、110は微動ステージ上に配置された基板101の位置を検出するためのアライメント光学系、111は基板101上の微小物体試料に対して所定の加工処理を施す処理機器であり、ここでは処理機器として試料の採取、注入などの処理を行うマイクロシリンジを用いた場合を示している。
なお、このレーザピンセット106と前記基板101とにより、微小物体用マニピュレータが構成されており、さらに、この微小物体用マニピュレータと、前記搬送手段102によって本実施形態の微小物体処理装置100が構成されている。
また、図2は上記構成を有する微小物体処理装置100の制御系を示すブロック図である。
図2において、200は微小物体処理装置における種々の動作を制御する制御手段としての制御部であり、この制御部200は、演算、判別および制御などの処理を行うCPU201と、このCPU201の実行する処理の制御プログラムなどが格納されたROM202と、種々のデータを一時的に格納するRAM203などを有する。そして、この制御部には、前記マイクロシリンジ111を駆動する駆動部112、ステージ駆動部105、走査部109、レーザピンセット光源107およびアライメント光学系110が接続されると共に、所定のデータや指令を入力するキーボードなどからなる入力部113と、基板上の画像を撮像する撮像部114と、この撮像部114によって撮像された画像などを表示するモニターなどの表示部115とが接続されている。
以上のように構成された微小物体処理装置では、細胞などの微小物体試料を含んだ液体試料および補助微小物体を基板101上に供給して保持させ、ステージ駆動部105を駆動して基板101を所定の位置に移動させる。また、レーザピンセット光源107を駆動すると、ここから発せられたレーザ光はレーザピンセット光学系108によって集光され、微動ステージおよび粗動ステージの開口部を経て透光性を有する基板の裏面から液体試料へとレーザ光が入射する。オペレータは、表示部の映像を確認しつつ、レーザ光学系の走査部109あるいは微動ステージ104の移動を行い、液体試料中の対象とする微小物体試料にレーザ光のスポットを照射して微小物体試料の捕捉を行う。そして、走査部109あるいは微動ステージ104を移動させることにより、捕捉した試料をその後の処理に適した所望の位置へと搬送し、そこで所定の処理動作を行う。
次に、上記微小物体処理装置100における微小物体用マニピュレータについて、より詳細に説明する。この実施形態における微小物体用マニピュレータは、細胞試料などの微小物体試料を、加工を行うための処理位置へと効率的、迅速、かつ安全に搬送し得る構成を特徴の一つとしており、その特徴的構成を中心に説明する。
すなわち、本実施形態における微小物体用マニピュレータは、基板101に保持された液体試料の中の微小物体試料Sの移動を規制するガイド手段1と、前記微小物体試料Sの移動を補助するための補助微小物体4とを備えるものとなっている。
図3ないし図10は、基板101および基板101上に形成されるガイド手段1の構造を示す図である。この実施形態におけるガイド手段1は、細胞などの微小物体試料Sに対して所定の加工を施すための処理位置に迅速、効率的、かつ安全に搬送されるように微小物体試料Sの移動をガイドするガイドパターン2と、前記処理位置に移動した微小物体試料の移動を規制する位置決めパターン3とにより構成されている。
図3は、前記ガイドパターンの平面形状の例を示す図であり、(a)は微小物体試料を位置決めパターンまで直線的に誘導するパターンの例を、(b)は微小物体試料を中心の位置決めパターンまで渦巻き状に誘導するパターンの例をそれぞれ示している。パターン平面上のデザインはその加工の目的や、微小物体試料Sの大きさや性質、さらには、レーザピンセットなどによる把持の難易度、作業性等によって自由に設定することができる。
また、基板101、ガイドパターン2及び位置決めパターン3等の材質は次のようなものが好ましい。
すなわち、図1に示すように、レーザピンセットのレーザ光を基板101の裏面から照射して微小物体試料の移動操作を行う場合は、基板材料は、使用するレーザ光に対して透過率が良いものが望ましい。また、基板101の表面には、その基板101の裏面側から入射するレーザ光の反射防止膜をコーティングすることが望ましい。これは、レーザ光が表面で反射されたり、基板101内で吸収されたりすると、細胞試料などの微小物体試料を捕捉する場合に、捕捉力が低下するからである。また、このようにして不要な反射を低減すれば迷光を低減でき、結果的に微小物体試料Sの把持、搬送の精度が向上することも可能となる。これに対し、レーザ光を基板101の表面より入射させる光ピンセットの場合は、基本的に基板表面は水溶液で皮膜された状態にあり、水溶液と基板表面の屈折率の差は小さくなるので、反射防止膜のコーティングの必要度は相対的に低くなる。
一方、微小物体試料Sおよび補助微小物体(補助物体)4をガイドするためのガイドパターン2は、図3(a)、(b)に示すように連続的なパターンであっても良いし、図4に示すように円柱や角柱などを整列させたパターンであっても良い。後者の場合は、液中での微小物体の移動に伴う圧力変化を避けることができるのでより容易に微小物体試料Sを搬送することができる。ガイドパターン2によって形成される溝の幅(通路Pの幅)は、処理しようとする微小物体試料Sのサイズに応じて設定すれば良い。好適な溝の幅は、最も狭い場所で、微小物体試料Sの幅の1.5倍程度にすることが望ましい。各パターン2,3の高さ、すなわち微小物体試料Sおよび補助微小物体4と当接してそれらの移動を規制する面(規制面)2aの高さは、処理しようとする微小物体試料Sのサイズより高いことが望まれるが、基本的には注入する液の深さに応じて適切なものを用意する。例えば液の深さが1mmであれば、規制面2aの高さは900μmから1000μm程度が望ましい。
また、パターンの断面形状はレーザピンセット106のレーザ光が基板101の表面から入射する場合には、図5(a)に示すように、基板101の平面と規制面2aとのなす角度αが鈍角となるよう順テーパー状に形成し、レーザピンセット106のレーザ光が裏面から入射する場合には、図5(b)に示すように基板101の平面と規制面2aとのなす角度αが鋭角となるよう逆テーパー状に形成することが望ましい。これは、搬送しようとする微小物体試料Sがガイドパターン2または20の側壁(規制面)に付着した場合、レーザピンセット106での捕捉を容易にするためである。
一方、加工対象とする微小物体試料Sの搬送をより効率的に行うために、搬送を補助する補助微小物体4を用いることもできる。すなわち、図6に示すように、補助微小物体4と位置決めパターン2との間に微小物体試料Sが位置するよう、基板106上に補助微小物体4を供給する。そして、この補助微小物体4を光ピンセット106によって捕捉し、移動させることによって微小物体試料Sを押圧し、位置決めパターン3へと搬送する。この補助微小物体4のサイズは、目的とする微小物体試料1より大きめにすれば、微小物体試料4の搬送をより容易に行うことができ、しかも、直接的に微小物体試料Sを光ピンセット106によって捕捉しないため、細胞などの微小物体試料Sに対し捕捉による損傷を発生させる虞もなく、より安全に微小物体試料Sの搬送を行うことができる。さらに、微小物体試料が透明で光で捕捉できない場合でも、補助微小物体を用いることにより微小物体試料の搬送を行なうことができる。なお、材質は、ラテックスやポリスチレンやポパール等のゲル状物質の球体が好適に用いられる。但し、この補助微小物体4の形状は、必ずしも球体に限らず、その他の形状を有するものも適用可能である。例えば、補助微小物体4との接触面を平面あるいは凹面状の補助微小物体を用いれば、微小物体試料Sと補助微小物体4との当接状態をより安定させることも可能となる。
また、図8に示すように、複数本のガイドパターン1によって形成された複数の通路Pに対し、微小物体試料Sの把持、移動を行う複数のレーザピンセット106を組み合わせれば、さらに効率的な微小物体試料Sの処理が可能となる。すなわち、この場合には、各通路間へとレーザ光の照射位置を移動させる必要がなく、単に各レーザピンセット106を各通路Pに沿って直線的に走査させれば良いため、効率的に微小物体試料Sの搬送を行うことができる。なお、この場合にも、各通路P内に存在する微小物体試料Sの搬送を光ピンセット106によって直接的に、または補助微小物体4を介して間接的に搬送することができる。
さらに、これらのガイドパターン1を利用して搬送された微小物体試料Sは、所望の処理を行うために、位置決めパターン2によってその移動を規制されて位置決めされる。位置決めパターン2の平面形状及び断面形状は、処理しようとする微小物体試料Sの形状や大きさ、処理の方法等によって設定すれば良い。汎用的なパターンとしては、図7(a)に示すようにV字状の平面形状をなすものがある。このV字状パターンでは位置決めしようとする微小物体試料Sの大きさや形状にある程度のバラツキがあっても位置決めに支障を来たすことはなく、種々の微小物体試料Sに適用可能であるため、良好な汎用性を得ることができる。
また、処理しようとする微小物体試料Sが変形し易い場合は、その微小物体試料Sをより多くの点や面で支持するように微小物体の形状、大きさに見合った形状にすることが望ましい。例えば、図7(b)に示すように、U字状のパターンや円弧状のパターン等が好適に用いられる。この位置決めパターン2によって位置決めされた微小物体試料Sは、所定の処理機器によって処理される。例えば、微小物体試料Sが細胞試料である場合、その細胞試料内の特定の成分をマイクロシリンジ111等によって採取したり、レーザ切削機(図示せず)によって加工したりすることが行われる。
また、大量の微小物体を高速に処理しようとする場合には、図9に示すように、一つの基板101上に複数のブロック20を配置し、その基板101をステージと共に移動することによって、より高速かつ効率的に大量の試料の処理を行うことができる。すなわち、第1のブロック内で上述の操作により微小物体試料Sの搬送、位置決め、処理を行った後、第2ブロックが光ピンセット106による作業位置に達するまでステージを移動し、再び同様の処理を行う、といった動作を全ブロックに対して繰り返し行う。こうすれば、大量の試料を高速に処理することが可能となる。なお、各ブロックは、図8に示したものと同様に、複数本のガイドパターン2と、位置決めパターン3と、補助微小物体4とをユニット化した構成となっている。
また、基板101の搬送動作において、処理対象となるブロックを変更する際には、単一のブロックの場合に比較して基板101の移動距離が大きくなるため、その搬送動作は粗動ステージ103を移動させることによって行う。但し、各ブロックには液体試料が充填されているため、ステージの移動時に液体がこぼれたり、隣のブロックへ移動しないように注意されたプログラムが必要である。
また、基板上の各ブロックは、図9に示すように、同一形状のガイド手段(ガイドパターン2および位置決めパターン3)を有するものであっても良いし、図10に示すように、異なる形状のガイドパターン2および位置決めパターン3を有するブロック20,21を同一の基板101上に混在させるようにしても良い。
なお、異なるブロックを有する場合は、各種ブロック毎に識別マーク20a,21aなどを形成し、これをアライメント光学系110などによって検出することによって、処理すべきブロックの種類を判別し、判別したブロックの種類に応じた処理プログラムを実行するようにする。このようにすることによって、同一基板101上で、複数の処理プログラムを実行することができる。例えば、同一基板101上で複数の異なる微小物体試料Sを取り扱ったり、複数の異なる処理を行ったりすることができる。そして、一つの基板101上の各ブロックに対する処理が終了した場合、または中断させる場合には、その基板101を微動ステージ104から搬出し、新たな他の基板101を搬入することによって、微小物体試料Sに対する処理を順次行なうことができる。
次に、前記基板101に設けるガイドパターン2および位置決めパターン3の製造方法について説明する。
ガイドパターン2および位置決めパターン3を基板1上に形成する第1の方法は、通常のプラスチックの加工に用いられる成形加工である。微小物体試料Sと補助微小物体4をガイドするための精密なパターンを有する射出成形用の金型を用いて、樹脂を成形する。成形に使用する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の汎用ポリマーや、ポリアミド樹脂、ポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチックなど一般のプラスチック成形に用いられるもので良い。
第2の方法は、切削加工である。
この方法では、予め決められた微小物体試料Sと補助微小物体4をガイドするための精密なパターンを有するデザインデータに基き、数値制御(NC)工作機を用いて基板表面の加工を行う。この方法では、基板材料は第1の方法で述べた射出成形用の樹脂だけでなく、射出成形が困難な材料も使用することができる。例えば、ポリイミド樹脂、軟質ガラス等の材料も使用することが可能である。
第3の方法は、プリンティング方法である。
微小物体と補助微小物体をガイドするための精密な各パターン2,3を有する原版を被加工基板にプレスすることによって基板表面に所望のパターンを形成する。本方法の場合は、プラスチックの板材などを直接加工しても良いが、より精密なパターンを形成したい場合は、表面が平坦なガラス基板等の上に加工層として樹脂をコーティングし、この表層に原版をプレスすることによってパターンの加工を行うようにする。プレス工程においては、圧力のほかに加熱を行っても良い。加熱温度は、加工する樹脂層のガラス転移温度以上とすることが好ましいが、また同時に樹脂が分解する温度以下とすることが必要になる。
第4の方法はリソグラフィーによる方法である。
基板101上にレジストまたは感光性樹脂を塗布し、微小物体試料Sと補助微小物体4とをガイドするための精密なパターンを有するフォトマスクを通して前記感光性樹脂に露光し、現像処理を施すことによって所望のパターンを形成する。レジスト層は単層のレジストを用いる場合には、形成されたレジストパターンそのものが、微小物体試料Sと補助微小物体4をガイドするためのガイドパターンあるいは微小物体試料Sの位置決めを行う位置決めパターン3として使用し得るものであっても良いし、レジストパターンをマスクとし、その下地である基板をエッチング加工することによって各パターンを形成することも可能である。レジストパターン自体を、微小物体試料Sおよび補助微小物体4をガイドするためのパターンとして使用する場合は、硬化反応を伴うネガ型のレジストを使用することが好適である。
このようなレジスト材料は例えば、環化ゴムとビスアジド化合物からなるレジスト材料やポリケイヒ酸ビニルをベースとしたレジスト、クロロメチル化ポリスチレン、塩素化ポリスチレン、ポリグリシジルメタクリレート、2,3−エピチオプロピルメタクリレートなどのホモポリマーまたは共重合体、レゾール樹脂を使用したレジストなど、レジスト材料として一般的なものを使用することができる。また、ポジ型レジストであっても水に不溶なレジスト、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)やEBR−9(東レ製)、ポリブテン−1―スルフォン、ポリ2−メチルペンテンー1―スルフォン等は使用することが可能である。
一方、レジストパターン自体を、微小物体試料Sと補助微小物体4をガイドするためのパターンとして使用する場合やエッチングの目的でレジストパターンの形状を制御したい場合は、レジスト層のさらに上層にシリコン含有のレジストを塗布し、該上層レジストをパターンニングした後、本パターンをマスクとして、下層レジストをドライエッチングにより加工しても良い。この場合は、レジストパターンの側壁がより垂直形状に近いパターンを得ることができる。
これらの方法の外にも、微小物体試料Sと補助微小物体4をガイドするためのパターンを形成する方法はレーザを使用した直接加工など、通常の方法を用いることができる。レジストの露光方法は、フォトマスクと被加工基板を密着または狭ギャップで配置して光を照射する方法または、レンズやミラーを介して露光する投影露光方法でも良いし、微小物体と補助微小物体4をガイドするための精密なパターンデータに基いて電子ビームやレーザビームによる描画方法を実行しても良い。
次に、上記実施形態を用いた具体的な実施例を説明する。
(基板の作成1)
微小物体試料Sと補助微小物体4をガイドするためのガイドパターンおよび位置決めパターンが形成された鋳型を用いてポリスチレン樹脂のインジェクションモールディングを行う。この方法で、高さ30μmのガイドパターン2および位置決めパターン3が形成された基板101を得る。
(基板の作成2)
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の板材上にNC(数値制御)工作機を用いて、ガイドパターン2および位置決めパターン3を形成することにより、PMMA基板上に微小物体Sと補助微小物体4のガイドおよび位置決めを可能とするパターンを有する基板101を得る。
(基板の作成3)
ガラス基板上に加工層としてアクリル樹脂を主成分とした紫外線硬化樹脂を10μmの膜厚にコーティングする。微小物体試Sと補助微小物体4のガイドおよび位置決めを可能とするためのガイドパターンおよび位置決めパターンが形成された鋳型を主成分のアクリル樹脂のガラス転移温度より高い70℃に昇温し、プレスすることによって基板上に前期パターンを転写する。次いで、紫外線を照射し形成されたパターンを硬化させ、目的の基板101を得る。
(基板の作成4)
ガラス基板上に加工層としてPMMAを8μmの膜厚にコーティングする。PMMAの上層にさらにシリコン含有の感光性樹脂を0.2μmの膜厚にコーティングする。微小物体試料Sと補助微小物体4とをガイドするためのガイドパターン2および位置決めパターン3が描かれた複数のブロックを有するフォトマスクを通して上層のシリコン含有感光性樹脂に露光を行い、アルカリ現像液で現像することによって所望のパターンを得る。次いで、このパターンをマスクとして、酸素ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)によって下層のPMMA層をエッチングし、ガラス基板上に微小物体と補助微小物体をガイドするためのガイドパターン2および位置決めパターン3を形成する。
(微小物体試料の搬送1)
実施例1で作成した基板101上に細胞試料Sが分散した生理食塩水を注ぎ込む。次いで、レーザピンセット106を用いて細胞試料Sを捕捉した後、ガイドパターン2に沿って搬送する。操作中に細胞試料Sがレーザピンセット106から脱落しても、ガイドパターン2内に留まるため、光ピンセット106による再捕捉を容易に行うことができ、結果的に短時間で細胞試料Sを位置決めパターン3まで搬送することができる。このため、位置決めパターンが存在しない従来に比し、搬送操作性は大幅に向上する。
(微小物体試料の搬送2)
実施例2で作成した基板101上に細胞試料Sが分散した生理食塩水を注ぎ込む。次いで、細胞試料Sを間接操作するための補助微小物体4として、直径7μmのラテックスを、基板101上のガイドパターン2の間に投入する。この際、補助微小物体4は、位置決め用パターン3との間に細胞試料Sが位置するように、基板101上のガイドパターンの端部から投入する。次いで、レーザピンセット106でこの補助微小物体4を捕捉し、搬送することによって細胞試料Sを間接的に移動させ、位置決めパターン3まで搬送する。このように、ラテックス製の補助微小物体を介して細胞試料Sを搬送するため、レーザピンセット106のレーザ光が細胞試料Sに直接照射されることにより損傷する虞がなく、安全に搬送を行うことができる。
(微小物体試料の搬送3)
実施例3で作成した基板101上に細胞試料Sが分散した生理食塩水を注ぎ込む。次いで、細胞試料を間接操作するための補助微小物体4として直径10μmのポリスチレン球を、細胞試料Sが位置決め用パターン3との間に位置するように、基板101上の各ガイドパターン2の間に形成されている通路Pの端部から投入する。次いで、基板101の裏面より複数のレーザピンセット106でこのポリスチレン球からなる補助微小物体4を操作して細胞試料Sを間接的に搬送操作し、細胞試料Sを位置決めパターン3に位置させる。この搬送動作を、複数のレーザピンセット106を用いて複数の補助微小物体4に対して行うようにすることより、レーザピンセット106で捕捉すべき細胞試料の場所を特定する操作が軽減でき、効率よく細胞試料Sを位置決めパターンまで搬送することができる。
(微小物体試料の処理1)
実施例5ないし実施例7において、基板101上の位置決めパターン3に固定された細胞試料Sに対し、微小なシリンジ111を用いた特定成分の抽出や注入などの処理あるいは、レーザメスなどの手段を用いた細胞の切断処理などのような様々な処理を行う。
(微小物体の処理2)
実施例4で作成した複数のブロックを有する基板106上に、細胞試料Sが分散した生理食塩水を注ぎ込む。実施例7および実施例8と同様に第1のブロックを操作した後、基板101を支持するステージ(例えば、粗動ステージ103)を移動し、第2のブロックに対して同様の操作を行う。このようにして全てのブロックに対して処理を行う。
本実施形態における微小物体処理装置の概略構成を示す説明図であるガイドパターンのデザイン例1を表す図である。 本発明の実施形態における微小物体処理装置の制御系を示すブロック図である。 本発明の実施形態におけるガイドパターンの平面形状の例を示す図であり、(a)は微小物体試料を位置決めパターンまで直線的に誘導するパターンの例を、(b)は微小物体試料を中心の位置決めパターンまで渦巻き状に誘導するパターンの例をそれぞれ示している。 本発明の実施形態におけるガイドパターンの平面形状の例を示す図であり、円柱や角柱などを整列させたパターンを示している。 本発明の実施形態におけるガイドパターンおよび位置決めパターンの断面形状の例を示す図であり、(a)は基板の平面と規制面とのなす角度αが鈍角となるよう順テーパー状に形成された場合を、(b)は基板の平面と規制面とのなす角度αが鋭角となるよう逆テーパー状に形成された場合をそれぞれ示している。 本発明の実施形態における基板上に補助微小物体を供給した状態を示す図である。 本発明の実施形態における位置決めパターンの平面形状を示す図であり、(a)はV字状のパターンを、(b)はU字状のパターンをそれぞれ示している。 本発明の実施形態において、複数のレーザピンセットを使用して微小物体を搬送操作する場合を示す平面図である。 本発明の実施形態において、基板上に微小物体を処理するための同種のブロックのみを複数配置した例を表す図である。 本発明の実施形態において、基板上に微小物体を処理するための異種のブロックを複数配置した例を表す図である。
符号の説明
1 ガイド手段
2 ガイドパターン
3 位置決めパターン
4 補助微小物体
20,21 ブロック
100 微小物体処理装置
101 基板
102 搬送手段
103 粗動ステージ
104 微動ステージ
105 ステージ駆動部
106 光ピンセット
109 走査部
110 アライメント光学系
111 マイクロシリンジ
200 制御部
S 微小物体試料

Claims (8)

  1. 基板上の液体試料に含まれる物体に光を照射することによって、前記物体を捕捉し、前記光を移動させることによって前記光を照射した前記物体を移動させる光ピンセットと、
    前記光ピンセットによって捕捉された前記物体の移動する範囲を規制するガイド手段とを備えたことを特徴とする物体処理装置。
  2. 液体試料に含まれる物体を保持するための基板と、前記基板上に保持された前記物体を間接的に移動させる補助物体とを備え、
    前記補助物体に光を照射することによって、前記補助物体を捕捉し、前記光を移動させることによって前記光を照射した前記補助物体を移動させる光ピンセットと、
    前記光ピンセットによって捕捉された前記補助物体の移動する範囲を規制するガイド手段とを備えたことを特徴とする物体処理装置。
  3. 前記ガイド手段が、凹凸のパターンを前記基板表面に形成している前記基板を用いることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の物体処理装置。
  4. 前記基板が、前記物体を所定の位置に位置決めするための位置決めパターンを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の物体処理装置。
  5. 前記位置決めパターンと前記ガイド手段とが形成する一つのユニットが複数形成されていることを特徴とする請求項4記載の物体処理装置。
  6. 液体試料に含まれる物体の移動範囲を規制するガイド手段を設け、
    前記液体試料に含まれる前記物体に光ピンセットの光を照射することによって、前記物体を捕捉し、
    且つ前記光を移動させることによって前記物体の移動範囲を規制しつつ所望の位置へと前記物体を移動させることを特徴とする物体の移動方法。
  7. 物体を含む液体溶液を保持する基板上に補助物体と前記補助物体の移動範囲を規制するガイド手段とを設け、
    前記補助物体に光を照射することによって前記補助物体を捕捉し、前記光を移動させることによって、前記補助物体の移動範囲を規制しつつ、前記補助物体を介して前記物体を所望の位置へと間接的に移動させることを特徴とする物体の移動方法。
  8. 請求項6または請求項7に記載の方法によって処理されたことを特徴とする物体。
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