JP2000070707A - 光触媒装置 - Google Patents

光触媒装置

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JP2000070707A
JP2000070707A JP10246639A JP24663998A JP2000070707A JP 2000070707 A JP2000070707 A JP 2000070707A JP 10246639 A JP10246639 A JP 10246639A JP 24663998 A JP24663998 A JP 24663998A JP 2000070707 A JP2000070707 A JP 2000070707A
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optical waveguide
waveguide layer
photocatalyst
light
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JP10246639A
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Shinichi Mizuno
真一 水野
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、物体表面に付着する塵埃を小さな
光エネルギーによって効率的に除去したり、微小物体を
小さな光パワーによってマニピュレートしたりすること
を可能にする光触媒装置を提供することを目的とする。 【解決手段】 合成石英基板10上にポリイミド光導波
路層12及び超親水機能を有するTiO2 光触媒層14
が順に積層され、ポリイミド光導波路層12端面に密着
された半導体レーザ16から出射された波長1.5μm
以上の赤外線18がポリイミド光導波路層12内を伝搬
する際、エバネセント波24を生成し、その放射圧30
がTiO2 光触媒層14上の微小物体26に作用するよ
うになっている。水銀ランプ20から出射した波長40
0nm以下の紫外線22がTiO2光触媒層14を照射
して活性化し、その超親水機能によってTiO2 光触媒
層14の表面に潤滑性をもつ分子レベルの薄い水膜を形
成するようになっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒装置に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来から光の照射によって触媒作用を発
揮する光触媒材料として、二酸化チタン、酸化タングス
テン、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、
硫化亜鉛、酸化錫が知られているが、その優れた酸化分
解機能、防汚機能、親水機能などから、近年特に二酸化
チタン(TiO2 )が注目されている(「特集 ビッグ
バンの予感!光触媒」、NIKKEI MECHANI
CAL 1998.4 no.523参照)。
【0003】このような光触媒材料を用いた光触媒装置
は、その用途に応じて種々の構造をとるが、一般には、
例えばタイル、ガラス、プラスチック等からなる基板上
に、TiO光触媒層を形成し、その上方から例えば
紫外線等の光触媒の励起光が照射されるようになってい
る。そして、TiO2 光触媒層が光触媒の励起光によっ
て照射されると、光電効果によって電子が励起されて、
電子と正孔(ホール)が発生し、TiO2 光触媒層表面
に移動する。そして、一方の電子は空気中の酸素を還元
してスーパーオキサイドイオン(O2 - )に変え、他方
の正孔は表面の水分(吸着水)を分解して水酸基ラジカ
ル(・OH)に変える。これらのスーパーオキサイドイ
オンと水酸基ラジカルは活性酸素種と呼ばれ、強力な酸
化作用を示す。
【0004】このため、TiO2 光触媒層の表面にに有
機系の汚れが付着すると、スーパーオキサイドイオンが
有機化合物の炭素を奪い、水酸基ラジカルが有機化合物
の水素を奪って分解する。バラバラになった炭素と水素
はそれぞれ酸化されて二酸化炭素と水に変化する。この
ようにして、有機物の酸化分解機能、防汚機能が発揮さ
れる。また、活性酸素種は、TiO2 光触媒層の表面の
疎水性分子を二酸化炭素と水に分化し、水酸基を剥き出
しにする。また、TiO2 光触媒層の表面のブリッジン
グ酸素と呼ばれる酸素原子が水と置換し、水酸基が発生
する。露出した水酸基には、空気中の水が吸着し、この
物理的吸着水がTiO2 光触媒層の表面に分子レベルの
薄い水膜を形成する。このようにして、親水機能が発揮
される。
【0005】また、微小物体に光を照射した際には、波
数ベクトルに比例した運動量を有するフォトンの衝突に
よって放射圧が生じるが、この光の放射圧を利用して、
微小物体、例えば微小部品や、高分子、バクテリア、ウ
ィルス、細胞、染色体、精子、DNA等をマニピュレー
トする技術が従来から知られている(笹木敬司、増原
宏、「マイクロ光マニピュレーション」、O plus
E 1998年1月参照)。
【0006】このようなマニピュレート技術の一つとし
て、基板表面のエバネセント波の放射圧によって微小物
体を移動する技術がある。ここで、エバネセント波と
は、光がプリズム等の界面において全反射したり、基板
上に形成された光導波路中を伝搬したりする際に、その
全反射面の表面や光導波路の表面に沿って進行する平面
波をいう。その強度は、表面においては全反射光や導波
光とほぼ等しいが、表面から離れるに従って減衰し、波
長程度の距離でほぼ消滅する。そして、このエバネセン
ト波を微小物体に照射するとミー散乱光が発生し、それ
に伴うフォトンの運動量の変化の反作用として、微小物
体に力が働く。このエバネセント波と微小物体との相互
作用によって生じる力が放射圧である。特に光導波路に
おいては、薄い導波層中を伝搬するために強いエバネセ
ント波が得られるため、強い放射圧が得られる。従っ
て、小さな光パワーを用いて微小物体をマニピュレート
することが可能になる。
【0007】なお、マニピュレート技術の別の一つとし
て、水中においてレーザ光の集光光束によって微小物体
をレーザトラッピングして移動する技術がある。ここ
で、レーザトラッピングとは、レーザ光を絞り込むと、
そのレーザ光の焦点位置の方向に放射圧が働くことを利
用して、その集光スポットに微小物体を捕捉する手法を
いう。但し、この技術においては、水による抵抗がある
ために大きな力が必要になることから、大きな光パワー
が必要になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の光触媒装置
においては、酸化分解機能を利用して物体表面に付着す
る塵埃を除去する際に、その塵埃の有機物を完全に酸化
分解して除去することは可能であるが、それには大きな
光エネルギーと長い時間が必要になり、効率的ではなか
った。また、塵埃のうち、砂ぼこり等の無機物は、光触
媒装置の酸化分解機能によっては分解されない。そのた
め、実際には、塵埃の物体表面への接着剤の役割を果た
している脂質などの有機物のみを分解することによって
塵埃を取れ易くするだけのことが多い。従って、取れ易
くなった塵埃が自然に除去されるためには、雨水など外
部からの力が必要であった。
【0009】また、上記従来のマニピュレート技術、特
に光導波路構造をもつ基板表面のエバネセント波の放射
圧によって微小物体を移動する技術においては、小さな
光パワーによってマニピュレートすることが可能になる
とはいっても、実際に微小物体を移動する際には、微小
物体と基板との間に摩擦が生じるため、大きな力が必要
であった。
【0010】そこで本発明は、上記事情を鑑みてなされ
たものであり、物体表面に付着する塵埃を小さな光エネ
ルギーによって効率的に除去したり、微小物体を小さな
光パワーによってマニピュレートしたりすることを可能
にする光触媒装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下の本発
明に係る光触媒装置により達成される。即ち、請求項1
に係る光触媒装置は、基板と、この基板上に面状に形成
された光導波路層と、この光導波路層上に形成された光
触媒層と、光導波路層内に所定の波長の光を出射する第
1の光源と、光触媒層に励起光を照射するための第2の
光源と、を有し、第2の光源から出射された励起光によ
って光触媒層を照射して活性化すると共に、第1の光源
から出射された所定の波長の光が光導波路層内を伝搬す
る際の放射圧によって光触媒層上の微小物体を移動させ
ることを特徴とする。
【0012】このように請求項1に係る光触媒装置にお
いては、基板上に面状の光導波路層及び光触媒層が順に
積層された構造であることにより、基板として第1の光
源から出射された所定の波長の光を透過し且つ表面がそ
の出射光の波長のオーダーで平滑なものを用いれば、こ
の基板と光導波路層と光触媒層と光触媒層とからなる積
層構造と更に光触媒層に接する空気層によって4層スッ
テプ構造のスラブ型光導波路が構成されることになり、
第1の光源から光導波路層に出射された所定の波長の光
は光導波路層内を伝搬する。
【0013】この光導波路層内を伝搬する所定の波長の
光は、光導波路層から光触媒層の表面に滲み出すエバネ
セント波を生成する。そして、このエバネセント波が光
触媒層上の微小物体に照射すると、ミー散乱光が発生す
る。このミー散乱光は、空気層側よりも光触媒層側に強
くなるため、それに伴うフォトンの運動量の変化の反作
用として働く放射圧により、光触媒層上の微小物体は光
導波路層内の光の伝搬方向より斜め空気層側に向かう力
を受ける。また、このとき、第2の光源から出射された
励起光が光触媒層を照射して活性化することにより、光
触媒層の親水機能が発揮され、空気中の水を吸着して、
光触媒層の表面に分子レベルの薄い水膜を形成する。
【0014】こうして、光触媒層上の微小物体が光導波
路層内を伝搬する所定の波長の光に起因するエバネセン
ト波の放射圧によって伝搬方向に向かう力を受ける際
に、光触媒層の表面に分子レベルの薄い水膜が形成され
ているため、この水膜の潤滑機能によって光触媒層上の
微小物体は光導波路層内の光の伝搬方向に容易に移動す
ることになる。しかも、この微小物体は水中に浸ってい
る状態ではないため、水中を移動するときのように大き
な水の抵抗が生じることもない。従って、光触媒層上の
微小物体が除去すべき塵埃であれば、光触媒層におる酸
化分解機能のみを利用する場合よりも小さなエネルギー
によって、しかも雨水など外部からの力の補助を必要と
せずにクリーニングされるため、この光触媒装置は種々
のクリーニング機構に有効に応用される。また、光触媒
層上の微小物体が微小部品や高分子等のようなマニピュ
レートする対象であれば、小さな光パワーを用いて移動
させることが可能となるため、この光触媒装置はマイク
ロドラックカプセルのコンベアやセルソータ等に有効に
応用される。
【0015】また、請求項2に係る光触媒装置は、基板
と、この基板上にチャネル状に形成された光導波路層
と、この光導波路層上に形成された光触媒層と、光導波
路層内に所定の波長の光を出射する第1の光源と、光触
媒層に励起光を照射するための第2の光源と、を有し、
第2の光源から出射された励起光によって光触媒層を照
射して活性化すると共に、第1の光源から出射された所
定の波長の光が光導波路層内を伝搬する際の放射圧によ
って光触媒層上の微小物体を移動させることを特徴とす
る。
【0016】このように請求項2に係る光触媒装置にお
いては、基板上にチャネル状の光導波路層及び光触媒層
が順に積層された構造であることにより、基板として第
1の光源から出射された光を透過し且つ表面がその出射
光の波長のオーダーで平滑なものを用いれば、この基板
と光導波路層と光触媒層と光触媒層とからなる積層構造
と更に光触媒層に接する空気層によって4層ステップ構
造のチャネル型光導波路が構成されることになり、第1
の光源から光導波路層に出射された所定の波長の光は光
導波路層内を伝搬する。この光導波路層内を伝搬する所
定の波長の光は、上記と請求項1の場合と同様に、光導
波路層から光触媒層の表面に滲み出すエバネセント波を
生成し、このエバネセント波が光触媒層上の微小物体に
照射した際に発生するミー散乱光に伴って働く放射圧に
より、光触媒層上の微小物体は力を受けるが、チャネル
型光導波路はスラブ型光導波路よりも小さな光パワーで
同等の強度のエバネセント波を生成するため、光触媒層
上の微小物体が受ける力は増大する。
【0017】そして、チャネル型光導波路においては、
上記請求項1のスラブ型光導波路の場合と異なり、光導
波路層内を伝搬する所定の波長の光の強度分布がチャネ
ル型光導波路の中央部において最も高く、中央部から離
れるにつれて低くなるため、光触媒層上の微小物体が光
導波路層内を伝搬する所定の波長の光に対して透明であ
る場合には、光強度分布の高いチャネル型光導波路の中
央部に向かう方向に放射圧が作用し、逆に不透明であっ
たり反射する場合には、光強度分布の高いチャネル型光
導波路の中央部から離れる方向に放射圧が作用する。こ
のとき、第2の光源から出射された励起光は、上記請求
項1の場合と同様に、光触媒層を照射して活性化するこ
とにより、光触媒層の親水機能が発揮され、空気中の水
を吸着して、光触媒層の表面に分子レベルの薄い水膜を
形成する。
【0018】こうして、光触媒層上の微小物体は、チャ
ネル状の光導波路層内を伝搬する所定の波長の光に起因
するエバネセント波の放射圧によって力を受け、チャネ
ル状の光導波路層に沿って移動したり、このチャネル状
の光導波路層から排除されるように移動したりするが、
その際に光触媒層の表面には分子レベルの薄い水膜が形
成されているため、この水膜の潤滑機能によって光触媒
層上の微小物体の移動は極めて容易になる。しかも、微
小物体は水中に浸っている状態ではないため、水中を移
動するときのように大きな水の抵抗が生じることもな
い。
【0019】従って、光触媒層上の微小物体がチャネル
状の光導波路層内を伝搬する所定の波長の光に対して不
透明であったり反射する場合には、雨水など外部からの
力の補助を必要とすることなく、光触媒層におる酸化分
解機能のみを利用する場合よりも又上記請求項1の場合
よりも小さなエネルギーによりチャネル状の光導波路層
に沿ってクリーニングされるため、この光触媒装置はチ
ャネル状に局所的に清浄化するクリーニング機構に有効
に応用される。また、光触媒層上の微小物体がチャネル
状の光導波路層内を伝搬する所定の波長の光に対して透
明である場合には、上記請求項1の場合よりも更に小さ
な光パワーを用いて、チャネル状の光導波路層に沿って
正確に移動させることが可能となるため、この光触媒装
置はマイクロドラックカプセルのコンベアやセルソータ
等に有効に応用される。
【0020】また、請求項3に係る光触媒装置は、上記
請求項1又は2に係る光触媒装置において、光導波路層
が非酸化性材料からなる構成とすることにより、光触媒
層として例えばTiO2 光触媒層のように酸化力が著し
く大きいものを用いる場合であっても、光触媒層によっ
て光導波路層が酸化されることが防止されるため、光触
媒装置の特性劣化が防止され、そのライフタイムが長く
なる。
【0021】また、請求項4に係る光触媒装置は、上記
請求項1又は2に係る光触媒装置において、第1の光源
から出射された所定の波長の光に対して透明であり且つ
光導波路層よりも屈折率の小さいバッファ層が基板と光
導波路層との間に介在している構成とすることにより、
たとえ基板が所定の波長の光を透過しない不透明なもの
であっても、また基板の表面がこの光の波長のオーダー
で平滑でない場合であっても、この第1のバッファ層と
光導波路層と光触媒層とからなる積層構造と更に光触媒
層に接する空気層によって4層スッテプ構造のスラブ型
光導波路又はチャネル型光導波路が構成されることにな
り、第1の光源から光導波路層に出射された所定の波長
の光は光導波路層内を伝搬すると共に、その際に光導波
路層から光触媒層の表面に滲み出すエバネセント波を生
成し、このエバネセント波の放射圧が光触媒層上の微小
物体に作用するため、上記請求項1又は2に係る光触媒
装置の場合と同様の作用を奏する。
【0022】また、請求項5に係る光触媒装置は、上記
請求項1又は2に係る光触媒装置において、第1の光源
が光導波路層の端面に密着して設置されている構成とす
ることにより、第1の光源から出射された所定の波長の
光は無駄なく光導波路層内に入射されると共に、光源と
光触媒層との間に空気や水などの媒質が存在せず、こう
した媒質による光吸収や光散乱のために生じる光量ロス
もないために、その放射圧により光触媒層上の微小物体
を移動させるエバネセント波の生成に光パワーが極めて
有効に利用される。また、第1の光源が基板等と一体に
なっていることになり、第1の光源を独立して設置する
スペースが不必要となり、装置全体としても小型化され
るため、光触媒装置の使用範囲が拡大されると共に、美
感を損なう恐れも殆どなくなる。
【0023】また、請求項6に係る光触媒装置は、上記
請求項1又は2に係る光触媒装置において、第1の光源
が光ファイバを介して光導波路層の端面に光学的に接続
されている構成とすることにより、上記請求項5に係る
光触媒装置の場合とほぼ同様の作用を奏する。そして、
この場合、第1の光源は基板等と一体にはならないもの
の、第1の光源を独立して設置するスペースの制約は小
さくなる。
【0024】なお、ここで、「光ファイバを介して」と
あるのは、単一線の光ファイバの場合のみならず、単一
線の光ファイバが途中から複数本に分岐して光導波路層
の端面に接続されている場合や、複数の光導波路部が円
柱状に束ねられている光ファイバ束が途中から複数の光
導波路部が線状に配列されている光ファイバシートにな
って光導波路層の端面に接続されている場合も含むもの
とする。そして、途中から複数本に分岐する光ファイバ
を使用する場合は、単一線の光ファイバを使用する場合
に比べて、スラブ型光導波路内を伝搬させる所定の波長
の光の強度が面状に均一となり、途中から光ファイバシ
ートになる光ファイバ束を使用する場合は、複数本に分
岐する光ファイバを使用する場合に比べて、スラブ型光
導波路内を伝搬させる所定の波長の光の強度が更に面状
に均一となる。
【0025】また、請求項7に係る光触媒装置は、上記
請求項1又は2に係る光触媒装置において、第2の光源
から出射された励起光が光導波路層に入射され、この光
導波路層内を伝搬する際の励起光の漏洩光によって光触
媒層を照射する構成とすることにより、基板として第2
の光源から出射された励起光を透過し且つ表面がその出
射光の波長のオーダーで平滑なものを用いれば、この基
板と光導波路層と光触媒層とからなる積層構造と更に光
触媒層に接する空気層によって4層スッテプ構造のスラ
ブ型光導波路又はチャネル型光導波路が構成されること
になり、第2の光源から光導波路層に出射された励起光
は光導波路層内を伝搬すると共に、その際に光導波路層
から漏洩して光触媒層を裏面全体から照射し、更にその
照射光は光触媒層内を長い距離にわたって透過していく
ため、光触媒層はその全体において高効率に活性化され
る。従って、光触媒層の親水機能がより効果的に発揮さ
れ、空気中の水を吸着して光触媒層の表面に分子レベル
の薄い水膜を形成することから、この水膜の潤滑機能に
よって光触媒層上の微小物体が更に容易に移動するた
め、光触媒層上の塵埃などがより小さなエネルギーによ
ってクリーニングされたり、光触媒層上の微小部品や高
分子等がより小さな光パワーを用いてマニピュレートさ
れる。
【0026】また、請求項8に係る光触媒装置は、上記
請求項7に係る光触媒装置において、第2の光源が光導
波路層の端面に密着して設置されている構成とすること
により、第2の光源から出射された励起光は無駄なく光
導波路層内に入射されると共に、光源と光触媒層との間
に空気や水などの媒質が存在せず、こうした媒質による
光吸収や光散乱のために生じる光量ロスもないために、
光導波路層を介して光触媒層をその裏面から照射して活
性化するために光パワーが極めて有効に利用される。
【0027】また、光触媒の励起光として紫外光を使用
する場合であっても、第2の光源から光導波路層を経て
光触媒層に至る過程は光触媒の励起光が装置内に閉じ込
められる構造となっており、光触媒層の表面に付着した
塵などによる散乱光以外には励起光が外部に漏れること
はなくなるため、例えばテレビのブラウン管面や自動車
のフロントガラスやのように人が見たり近くに居る時間
が長いものに光触媒装置を用いても、人体に悪影響を及
ぼし、特に皮膚癌の発生原因となるという心配はなくな
る。また、第2の光源が基板等と一体になっていること
から、第2の光源を独立して設置するスペースが不必要
となり、装置全体としても小型化されるため、光触媒装
置の使用範囲が拡大されると共に、美感を損なう恐れも
殆どなくなる。
【0028】また、請求項9に係る光触媒装置は、上記
請求項7に係る光触媒装置において、第2の光源が光フ
ァイバを介して光導波路層の端面に光学的に接続されて
いる構成とすることにより、上記請求項8に係る光触媒
装置の場合とほぼ同様の作用を奏する。そして、この場
合、第2の光源は基板等と一体にはならないものの、第
2の光源を独立して設置するスペースの制約は小さくな
る。
【0029】なお、ここで、「光ファイバを介して」と
あるのは、単一線の光ファイバの場合のみならず、単一
線の光ファイバが途中から複数本に分岐して光導波路層
の端面に接続されている場合や、光ファイバ束が途中か
ら光ファイバシートになって光導波路層の端面に接続さ
れている場合も含むものとする。そして、途中から複数
本に分岐する光ファイバを使用する場合は、単一線の光
ファイバを使用する場合に比べて、スラブ型光導波路内
を伝搬させる所定の波長の光の強度が面状に均一とな
り、途中から光ファイバシートになる光ファイバ束を使
用する場合は、複数本に分岐する光ファイバを使用する
場合に比べて、スラブ型光導波路内を伝搬させる所定の
波長の光の強度が更に面状に均一となる。
【0030】また、請求項10に係る光触媒装置は、上
記請求項7に係る光触媒装置において、光導波路層が基
板に接する第1の光導波路層と光触媒層に接する第2の
光導波路層との2層構造になっており、第1の光導波路
層の屈折率は第2の光導波路層の屈折率より低く、第1
の光導波路層の厚さは第2の光導波路層の厚さより厚
く、基板が第2の光源から出射された励起光に対して透
明であり且つ第1の光源から出射された所定の波長の光
に対して不透明である構成とすることにより、基板と第
1の光導波路層と第1の光導波路層より屈折率の高い第
2の光導波路層と光触媒層とからなる積層構造と更に光
触媒層に接する空気層とが第1の光源から出射された所
定の波長の光に対する5層スッテプ構造のスラブ型光導
波路又はチャネル型光導波路が構成されることになり、
第2の光源から光導波路層に出射された励起光は第2の
光導波路層より厚い第1の光導波路層内を主要に伝搬す
ることになるため、光触媒層に入射される励起光の光量
が相対的に小さくなる。従って、光触媒層における光吸
収による減衰が抑制され、大面積の光触媒層であっても
光触媒層全体が均一に活性化される。
【0031】なお、このとき、第1の光導波路層と第1
の光導波路層より屈折率の高い第2の光導波路層と光触
媒層とからなる積層構造と更に光触媒層に接する空気層
とが第1の光源から出射された所定の波長の光に対する
4層スッテプ構造のスラブ型光導波路が構成されること
になり、第1の光源から光導波路層に出射された所定の
波長の光は第1の光導波路層より薄い第2の光導波路層
内を主要に伝搬することになるが、光触媒層上の微小物
体に放射圧を作用させるエバネセント波は吸収による減
衰がないため、この微小物体に作用する放射圧が弱くな
ることはない。
【0032】また、請求項11に係る光触媒装置は、上
記請求項7に係る光触媒装置において、第2の光源から
出射された励起光が入射される光導波路層の端面に対向
する光導波路層の端面に、光導波路層内を伝搬してきた
励起光を反射するためのミラーが設置されている構成と
することにより、光導波路層内を伝搬してきた励起光は
このミラーによって反射され、再び光導波路層内を戻っ
ていくため、励起光の光量ロスが少なくなる。また、光
導波路層内を一回伝搬する間だけで励起光を吸収する必
要がなくなり、伝搬中の励起光の吸収を小さくして減衰
を抑制することが可能になるため、大面積の光触媒層で
あっても光触媒層に入射される励起光の強度が面内にお
いて一様になる。そして、光触媒層の活性度は、励起光
の強度がある強度以上になるとほぼ一様になり、それ以
上は殆ど大きくならないため、励起光の強度分布が面内
において不均一にならず一様であって一定の強度を保持
していることは光量ロスを少なくするためにも好まし
い。
【0033】また、請求項12に係る光触媒装置は、上
記請求項7に係る光触媒装置において、第1の光源から
出射された所定の波長の光及び第2の光源から出射され
た励起光の双方に対して透明であり且つ光導波路層より
も屈折率の小さいバッファ層が基板と光導波路層との間
に介在している構成とすることにより、このバッファ層
と光導波路層と光触媒層とからなる積層構造と更に光触
媒層に接する空気層によって多モード4層スッテプ構造
のスラブ型光導波路又はチャネル型光導波路が構成され
ることになり、たとえ基板が第1及び第2の光源から出
射された光を透過しない不透明なものであっても、基板
の表面がこれらの光の波長のオーダーで平滑でない場合
であっても、上記請求項7に記載の光触媒装置の場合と
同様の作用を奏する。
【0034】また、請求項13に係る光触媒装置は、上
記請求項12に係る光触媒装置において、光導波路層が
基板に接する第1の光導波路層と光触媒層に接する第2
の光導波路層との2層構造になっており、第1の光導波
路層の屈折率は第2の光導波路層の屈折率より低く、第
1の光導波路層の厚さは第2の光導波路層の厚さより厚
く、バッファ層が第2の光源から出射された励起光に対
して透明であり、第1の光源から出射された所定の波長
の光に対して不透明である構成とすることにより、バッ
ファ層と第1の光導波路層と第1の光導波路層より屈折
率の高い第2の光導波路層と光触媒層とからなる積層構
造と更に光触媒層に接する空気層とが第1の光源から出
射された所定の波長の光に対する5層スッテプ構造のス
ラブ型光導波路又はチャネル型光導波路が構成されるこ
とになり、たとえ基板が第1及び第2の光源から出射さ
れた光を透過しない不透明なものであっても、基板の表
面がこれらの光の波長のオーダーで平滑でない場合であ
っても、上記請求項7に記載の光触媒装置の場合と同様
の作用を奏する。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しながら、
本発明の実施の形態を説明する。 (第1の実施形態)図1は本発明の第1の実施形態に係
る光触媒装置を示す概略斜視図である。図1に示される
ように、本実施形態に係る光触媒装置においては、赤外
線及び紫外線を透過する透明で表面が平滑な合成石英基
板10上に、例えばフッ化ポリイミドからなるポリイミ
ド光導波路層12が形成されており、更にこのポリイミ
ド光導波路層12上に、超親水機能を有するアナターゼ
型のTiO2 光触媒層14が形成されている。
【0036】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6がその射出開口をポリイミド光導波路層12の端面に
密着して設置され、波長1.5μm以上の赤外線18を
ポリイミド光導波路層12に出射するようになってい
る。更に、第2の光源としての水銀ランプ20が合成石
英基板10の下方に設置され、波長400nm以下の紫
外線22をTiO2 光触媒層14に向けて出射するよう
になっている。ここで、合成石英基板10の屈折率は
1.5、ポリイミド光導波路層12の屈折率は1.7、
TiO2 光触媒層14の屈折率は2.5である。このた
め、これら合成石英基板10とポリイミド光導波路層1
2とTiO2 光触媒層14とからなる積層構造と更にこ
のTiO2 光触媒層14に接する空気層によって、半導
体レーザ16から出射される赤外線18に対する多モー
ド4層ステップ構造のスラブ型光導波路とみなすことが
できる。
【0037】次に、図1に示される光触媒装置の動作を
説明する。先ず、第1の光源としての半導体レーザ16
から波長1.5μm以上の赤外線18を出射し、その射
出開口に密着しているポリイミド光導波路層12に入射
する。このポリイミド光導波路層12に入射された赤外
線18は、多モード4層ステップ構造のスラブ型光導波
路を構成するポリイミド光導波路層12内を伝搬すると
共に、その際にポリイミド光導波路層12からTiO2
光触媒層14の表面に滲み出すエバネセント波24を生
成する。そして、このエバネセント波24がTiO2
触媒層14上の微小物体26に照射すると、ミー散乱光
28が発生する。このミー散乱光28は、空気層側より
もTiO2 光触媒層14側に強くなるため、それに伴う
フォトンの運動量の変化の反作用としての放射圧30が
微小物体26に作用し、ポリイミド光導波路層12内の
赤外線18の伝搬方向に向かう力を受ける。
【0038】なお、ここで、ポリイミド光導波路層12
はその厚さが薄い方がその内部を伝搬する赤外線18の
光強度が大きくなるため、TiO2 光触媒層14の表面
に生成するエバネセント波24の光強度も大きくなる。
従って、小さな光パワーであってもTiO2 光触媒層1
4上の微小物体26にエバネセント波24の放射圧30
を強く作用させるためには、ポリイミド光導波路層12
の厚さが薄い方が好ましい。また、このとき、合成石英
基板10の下方に設置されている第2の光源としての水
銀ランプ20からは、光触媒の励起光として波長400
nm以下の紫外線22を出射し、合成石英基板10及び
ポリイミド光導波路層12を透過して、TiO2 光触媒
層14をその裏面から照射する。この光触媒の励起光と
しての紫外線22によって照射されたTiO2 光触媒層
14は、その紫外線22を吸収して活性化され、その光
触媒作用により超親水機能を発揮する。即ち、空気中の
水を吸着して、TiO2 光触媒層14の表面に分子レベ
ルの薄い水膜(図示せず)を形成する。
【0039】こうして、TiO2 光触媒層14上の微小
物体26がポリイミド光導波路層12内を伝搬する赤外
線18によって生成されるエバネセント波24の放射圧
30によって伝搬方向に向かう力を受ける際に、TiO
2 光触媒層14の表面には分子レベルの薄い水膜が形成
され、この水膜が潤滑剤として機能するため、エバネセ
ント波24の放射圧30が小さなものであっても、即ち
半導体レーザ16から出射される赤外線18の光パワー
が小さくても、TiO2 光触媒層14上の微小物体26
はポリイミド光導波路層12内の赤外線18の伝搬方向
に容易に移動する。
【0040】以上のように本実施形態によれば、半導体
レーザ16から出射された赤外線18がポリイミド光導
波路層12内を伝搬する際に生成するエバネセント波2
4の放射圧30と、水銀ランプ20から出射された紫外
線22がTiO2 光触媒層14を活性化し、その超親水
機能によりTiO2 光触媒層14表面に形成される分子
レベルの薄い水膜の潤滑性を利用して、TiO2 光触媒
層14上の微小物体26をポリイミド光導波路層12内
の赤外線18の伝搬方向に容易に移動させることができ
る。しかも、このとき、TiO2 光触媒層14上の微小
物体26は水中に浸っている状態ではないため、水中を
移動するときのような大きな抵抗を受けることもない。
【0041】従って、この微小物体26が除去すべき塵
埃等である場合には、TiO2 光触媒層14による酸化
分解機能によって完全に分解するに至らなくとも、また
酸化分解機能のみを利用する場合よりも小さなエネルギ
ーによって、しかも雨水など外部からの力の補助を必要
とせずにクリーニングすることが可能となるため、例え
ばテレビの管面や自動車のウィンドウガラス、バックミ
ラー等に有効に応用して、その透明基板の表面を清浄に
保ちクリーンな視界を確保することができる。また、こ
の微小物体26が例えば微小部品や高分子等のマニピュ
レートする対象である場合には、小さな光パワーを用い
て移動させることが可能となるため、マイクロドラック
カプセルのコンベアやセルソータ等に有効に応用するこ
とができる。
【0042】また、ポリイミド光導波路層12が非酸化
性材料からなることにより、酸化力が著しく大きいTi
2 光触媒層14によっても酸化されないため、光触媒
装置の特性劣化を防止して、そのライフタイムを長くす
ることができる。
【0043】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6がポリイミド光導波路層12の端面に密着して設置さ
れていることにより、この半導体レーザ16から出射さ
れる指向性の高い赤外線18は無駄なくポリイミド光導
波路層12に入射されると共に、半導体レーザ16とポ
リイミド光導波路層12との間には空気や水などの光吸
収や光散乱を生じる媒質が存在しないため、こうした光
吸収や光散乱による光量ロスもなく、その放射圧30に
よって微小物体26を移動させるエバネセント波24を
生成するために半導体レーザ16から出射される赤外線
18の光パワーを極めて有効に利用することができる。
同時に、半導体レーザ16から出射される波長1.5μ
m以上の赤外線18は、皮膚や眼などの人体に有害な紫
外線等と異なり、人体に対して安全である。また、この
波長域の赤外線18は、容易にその出射強度を高めるこ
とができるという利点がある。
【0044】(第2の実施形態)図2は本発明の第2の
実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図である。な
お、上記図1の光触媒装置の構成要素と同一の要素には
同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態に係る
光触媒装置においては、上記図1の光触媒装置において
合成石英基板10の下方に設置されている第2の光源と
しての水銀ランプ20の代わりに、半導体レーザがその
射出開口をポリイミド光導波路層の端面に密着して設置
されている点に特徴がある。
【0045】即ち、図2に示されるように、透明で表面
が平滑な合成石英基板10上に、ポリイミド光導波路層
12及び超親水機能を有するアナターゼ型のTiO2
触媒層14が順に積層されて形成されている。また、第
1の光源としての半導体レーザ16がその射出開口をポ
リイミド光導波路層12の端面に密着して設置され、波
長1.5μm以上の赤外線18をポリイミド光導波路層
12に出射するようになっている。そして、第2の光源
としての2個の半導体レーザ32a、32bがそれらの
射出開口をポリイミド光導波路層12の互いに対向する
両端面に密着してそれぞれ設置され、波長400nm以
下の紫外線(図示せず)をポリイミド光導波路層12に
出射するようになっている。
【0046】ここで、合成石英基板10の屈折率はポリ
イミド光導波路層12の屈折率よりも小さい。このた
め、合成石英基板10とポリイミド光導波路層12とT
iO2光触媒層14との積層構造と更にTiO2 光触媒
層14に接する空気層とによって、半導体レーザ16か
ら出射される赤外線18及び半導体レーザ32a、32
bから出射される紫外線の双方に対する多モード4層ス
テップ構造のスラブ型光導波路が構成される。
【0047】次に、図2に示される光触媒装置の動作を
説明する。先ず、上記第1の実施形態の場合と同様にし
て、第1の光源としての半導体レーザ16から波長1.
5μm以上の赤外線18をポリイミド光導波路層12に
入射し、多モード4層ステップ構造のスラブ型光導波路
を構成するポリイミド光導波路層12内を伝搬させると
共に、その際にポリイミド光導波路層12からTiO2
光触媒層14の表面に滲み出すエバネセント波24を生
成する。そして、このエバネセント波24がTiO2
触媒層14上の微小物体26に照射する際に発生するミ
ー散乱光28に伴い、ポリイミド光導波路層12内の赤
外線18の伝搬方向に向かう放射圧30が微小物体26
に作用する。
【0048】また、このとき、第2の光源としての半導
体レーザ32a、32bから、波長400nm以下の紫
外線を光触媒の励起光として出射し、それらの射出開口
に両端部がそれぞれ密着しているポリイミド光導波路層
12に入射する。このポリイミド光導波路層12に入射
された紫外線は、多モード4層ステップ構造のスラブ型
光導波路を構成するポリイミド光導波路層12内を伝搬
すると共に、その際に、ポリイミド光導波路層12から
の漏洩光がTiO2 光触媒層14に入射する。即ち、T
iO2 光触媒層14は、ポリイミド光導波路層12に接
する裏面全体から紫外線を照射される。この光触媒の励
起光としての紫外線によって裏面全体から照射されたT
iO2 光触媒層14は、その紫外線を吸収して活性化さ
れ、その光触媒作用により超親水機能を発揮する。即
ち、空気中の水を吸着して、TiO2 光触媒層14の表
面に分子レベルの薄い水膜(図示せず)を形成する。
【0049】こうして、TiO2 光触媒層14上の微小
物体26がポリイミド光導波路層12内を伝搬する赤外
線18によって生成されるエバネセント波24の放射圧
30によって伝搬方向に向かう力を受ける際に、TiO
2 光触媒層14の表面には分子レベルの薄い水膜が形成
され、この水膜が潤滑剤として機能するため、エバネセ
ント波24の放射圧30が小さなものであっても、即ち
半導体レーザ16から出射される赤外線18の光パワー
が小さくても、TiO2 光触媒層14上の微小物体26
はポリイミド光導波路層12内の赤外線18の伝搬方向
に容易に移動する。
【0050】以上のように本実施形態によれば、半導体
レーザ16から出射された赤外線18がポリイミド光導
波路層12内を伝搬する際に生成するエバネセント波2
4の放射圧30と、半導体レーザ32a、32bから出
射された紫外線がポリイミド光導波路層12内を伝搬す
る際の漏洩光によって活性化されたTiO2 光触媒層1
4の超親水機能によりTiO2 光触媒層14表面に形成
される分子レベルの薄い水膜の潤滑性を利用して、Ti
2 光触媒層14上の微小物体26をポリイミド光導波
路層12内の赤外線18の伝搬方向に容易に移動させる
ことができるため、上記第1の実施形態の場合と同様の
効果を奏することができる。このとき、TiO2 光触媒
層14はポリイミド光導波路層12内を伝搬する紫外線
の漏洩光によって裏面全体から照射されることから、こ
の光触媒の励起光としての紫外線はTiO2 光触媒層1
4内を長い距離にわたって透過していくことになり、T
iO2 光触媒層16をその全体において高効率に活性化
することが可能になるため、TiO2 光触媒層16の超
親水機能を上記第1の実施形態の場合よりも効果的に発
揮することができる。
【0051】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6のみならず、第2の光源としての半導体レーザ32
a、32bもポリイミド光導波路層12の端面に密着し
て設置されていることにより、これらの半導体レーザ1
6、32a、32bから出射された指向性の高い赤外線
18及び紫外線は無駄なくポリイミド光導波路層12に
入射されると共に、半導体レーザ16、32a、32b
とポリイミド光導波路層12との間には空気や水などの
光吸収や光散乱を生じる媒質が存在しないため、こうし
た光吸収や光散乱による光量ロスもなく、その放射圧3
0によって微小物体26を移動させるエバネセント波2
4の生成や TiO2 光触媒層14の超親水機能を発揮
させるための活性化に半導体レーザ16、32a、32
bからの光パワーを極めて有効に利用することができ
る。
【0052】同時に、半導体レーザ32a、32bから
出射される紫外線は皮膚や眼などの人体に対して有害で
あり、皮膚癌の発生原因ともなるが、半導体レーザ32
a、32bからポリイミド光導波路層12を経てTiO
2 光触媒層14に至る過程は紫外線が装置内に閉じ込め
られる構造となっているため、TiO2 光触媒層16の
表面に付着した塵などによる散乱光以外には紫外線が外
部に漏れることはなくなるため、例えばテレビのブラウ
ン管面や自動車のフロントガラスやのように人が見たり
近くに居る時間が長いものに本実施形態に係る光触媒装
置を用いても、人体に悪影響を及ぼし、特に皮膚癌の発
生原因となるという心配はなくなる。
【0053】更に、これらの半導体レーザ16、32
a、32bは共に合成石英基板10等と一体になってい
ることから、例えばテレビのブラウン管面や自動車のフ
ロントガラスの枠に埋め込むことが可能になり、独立し
て設置するためのスペースが不必要となって目立たなく
なるため、光触媒装置が更に小型化されてその使用範囲
を益々拡大することが可能になると共に、美感を損なう
恐れも殆どなくすことができる。
【0054】(第3の実施形態)図3は本発明の第3の
実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図である。な
お、上記図2の光触媒装置の構成要素と同一の要素には
同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態に係る
光触媒装置においては、上記図2の光触媒装置における
合成石英基板10の代わりに、表面が紫外線の波長のオ
ーダーで平滑でない不透明なセラミック基板上に赤外線
及び紫外線を透過し且つポリイミド光導波路層12より
も屈折率の小さいバッファ層が積層されているものを用
いる点に特徴がある。
【0055】即ち、図3に示されるように、表面が紫外
線の波長のオーダーで平滑でない不透明なセラミック基
板34上に、例えばアモルファスフルオロポリマからな
る赤外線及び紫外線を透過するバッファ層36が紫外線
の波長のオーダーで平滑な表面をもって形成され、この
バッファ層36上に、バッファ層36よりも屈折率の大
きいポリイミド光導波路層12と超親水機能を有するア
ナターゼ型のTiO2光触媒層14とが順に積層されて
形成されている。
【0056】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6が、その射出開口をポリイミド光導波路層12の端面
に密着して設置され、波長1.5μm以上の赤外線18
をポリイミド光導波路層12に出射するようになってい
る。また、第2の光源としての2個の半導体レーザ32
a、32bが、それらの射出開口をポリイミド光導波路
層12の互いに対向する両端面に密着してそれぞれ設置
され、波長400nm以下の紫外線(図示せず)をポリ
イミド光導波路層12に出射するようになっている。
【0057】ここで、バッファ層36の屈折率はポリイ
ミド光導波路層12の屈折率よりも小さいため、これら
バッファ層36とポリイミド光導波路層12とTiO2
光触媒層14とからなる積層構造と更にTiO2 光触媒
層14に接する空気層によって、半導体レーザ16から
出射される赤外線18及び半導体レーザ32a、32b
から出射される紫外線の双方に対する4層ステップ構造
のスラブ型光導波路が構成される。
【0058】なお、図3に示される光触媒装置の動作
は、合成石英基板10とポリイミド光導波路層12とT
iO2 光触媒層14と空気層との積層構造の代わりに、
バッファ層36とポリイミド光導波路層12とTiO2
光触媒層14と空気層との積層構造によって4層ステッ
プ構造のスラブ型光導波路が構成されており、このスラ
ブ型光導波路構造のポリイミド光導波路層12内を半導
体レーザ16、32a、32bから出射される赤外線1
8及び紫外線が伝搬する点を除くと、上記図2に示され
る第2の実施形態の場合と基本的に同様であるため、そ
の説明は省略する。
【0059】以上のように本実施形態によれば、第1及
び第2の光源としての半導体レーザ16、32a、32
bから出射された赤外線及び紫外線を透過し且つポリイ
ミド光導波路層12よりも屈折率の小さいバッファ層3
6がセラミック基板34とポリイミド光導波路層12と
の間に形成され、ポリイミド光導波路層12との間に平
滑な境界面を形成していることにより、このバッファ層
36やポリイミド光導波路層12を含む積層構造がステ
ップ型スラブ型光導波路を構成し、半導体レーザ16、
32a、32bからポリイミド光導波路層12に入射さ
れた赤外線及び紫外線をポリイミド光導波路層12内に
伝搬させることが可能になるため、セラミック基板34
のように赤外線及び紫外線を透過しない不透明なもの
や、その表面が紫外線の波長のオーダーで平滑でないも
のを基板として使用しても、上記第2の実施形態に係る
光触媒装置の場合と同様の効果を奏することができる。
【0060】(第4の実施形態)図4は本発明の第4の
実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図である。な
お、上記図2の光触媒装置の構成要素と同一の要素には
同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態に係る
光触媒装置においては、上記図2の光触媒装置において
第1及び第2の光源としての半導体レーザ16、32
a、32bがポリイミド光導波路層12の端面に密着し
て設置されている代わりに、これらの半導体レーザ1
6、32a、32bが光ファイバを介してポリイミド光
導波路層12の端面に接続されている点に特徴がある。
即ち、図4に示されるように、透明で表面が平滑な合成
石英基板10上に、ポリイミド光導波路層12と超親水
機能を有するアナターゼ型のTiO2 光触媒層14とが
順に積層されて形成されている。
【0061】そして、第1の光源としての半導体レーザ
16は、その射出開口が集光用のレンズ38を介して単
一線の光ファイバ40に接続されている。この光ファイ
バ40はその途中にある分岐カップラ42によって3本
の光ファイバ40a、40b、40cに3分岐されてい
る。そして、これら3本の光ファイバ40a、40b、
40cの他端がポリイミド光導波路層12の端面に接続
されている。こうして、半導体レーザ16が出射する波
長1.5μm以上の赤外線44は、レンズ38、光ファ
イバ40、分岐カップラ42、及び3本の光ファイバ4
0a、40b、40cを介して、ポリイミド光導波路層
12に入射されるようになっている。
【0062】また、第2の光源としての2個の半導体レ
ーザ32a、32bは、それらの射出開口がそれぞれレ
ンズ46a、46bを介して単一線の光ファイバ48
a、48bに接続されている。そして、これらの光ファ
イバ48a、48bの他端がポリイミド光導波路層12
の互いに対向する両端面にそれぞれ接続されている。こ
うして、半導体レーザ32a、32bが出射する波長4
00nm以下の紫外線(図示せず)は、レンズ46a、
46b及び光ファイバ48a、48bを介して、ポリイ
ミド光導波路層12に入射されるようになっている。こ
こで、上記第2の実施形態の場合と同様に、合成石英基
板10とポリイミド光導波路層12とTiO2 光触媒層
14とからなる積層構造と更にTiO2 光触媒層14に
接する空気層によって、半導体レーザ16から出射され
る赤外線44及び半導体レーザ32a、32bから出射
される紫外線の双方に対する4層ステップ構造のスラブ
型光導波路が構成される。
【0063】次に、図4に示される光触媒装置の動作を
説明する。先ず、第1の光源としての半導体レーザ16
から出射した波長1.5μm以上の赤外線44は、レン
ズ38によって集光された後、光ファイバ40、分岐カ
ップラ42、及び3本の光ファイバ40a、40b、4
0cを経由してポリイミド光導波路層12に入射し、4
層ステップ構造のスラブ型光導波路を構成するポリイミ
ド光導波路層12内を伝搬する。その際に、3本の光フ
ァイバ40a、40b、40cとポリイミド光導波路層
12の端面との接続点が3つの点光源として機能するた
め、上記第2の実施形態のように半導体レーザ16がポ
リイミド光導波路層12の端面に密着して設置され、そ
の接点が単一の点光源として機能する場合と比較する
と、TiO2 光触媒層14表面におけるエバネセント波
24は、TiO2 光触媒層14の全面にわたってほぼ同
一方向に均一な光強度で生成される。このため、微小物
体26はTiO2 光触媒層14上のどの位置において
も、ほぼ同一の伝搬方向に向かう均一な強度の放射圧3
0の作用を受けることになる。
【0064】また、このとき、半導体レーザ32a、3
2bから出射した波長400nm以下の紫外線は、それ
ぞれレンズ46a、46bによって集光された後、光フ
ァイバ48a、48bを経由してポリイミド光導波路層
12に入射し、4層ステップ構造のスラブ型光導波路を
構成するポリイミド光導波路層12内を伝搬する。そし
て、その際に、ポリイミド光導波路層12からの漏洩光
がTiO2 光触媒層14に入射する。即ち、TiO2
触媒層14は、ポリイミド光導波路層12に接する裏面
全体から紫外線を照射され、活性化されて、その光触媒
作用により超親水機能を発揮する。即ち、空気中の水を
吸着して、TiO2 光触媒層14の表面に分子レベルの
薄い水膜(図示せず)を形成する。
【0065】こうして、上記第2の実施形態の場合と同
様に、TiO2 光触媒層14上の微小物体26がポリイ
ミド光導波路層12内を伝搬する赤外線44によって生
成されるエバネセント波24の放射圧30によりその伝
搬方向に向かう力を受ける際、TiO2 光触媒層14の
表面には分子レベルの薄い水膜が形成され、この水膜が
潤滑剤として機能するため、エバネセント波24の放射
圧30が小さなものであっても、即ち半導体レーザ16
から出射される赤外線44の光パワーが小さくても、T
iO2 光触媒層14上の微小物体26はポリイミド光導
波路層12内の赤外線44の伝搬方向に容易に移動す
る。
【0066】以上のように本実施形態によれば、半導体
レーザ16から出射された赤外線44が光ファイバ40
や3本の光ファイバ40a、40b、40c等を経由し
てポリイミド光導波路層12内を伝搬する際に生成する
エバネセント波24の放射圧30と、半導体レーザ32
a、32bから出射された紫外線が光ファイバ48a、
48bを経由してポリイミド光導波路層12内を伝搬す
る際の漏洩光によって活性化されたTiO2 光触媒層1
4の超親水機能によりTiO2 光触媒層14表面に形成
される分子レベルの薄い水膜の潤滑性とを利用して、上
記第2の実施形態の場合と同様に、TiO2 光触媒層1
4上の微小物体26をポリイミド光導波路層12内の赤
外線44の伝搬方向に容易に移動させることができるた
め、上記第2の実施形態に係る光触媒装置の場合と同様
の効果を奏することができる。
【0067】このとき、3本の光ファイバ40a、40
b、40cとポリイミド光導波路層12の端面との接続
点がポリイミド光導波路層12内を伝搬する赤外線44
の3つの点光源として機能するため、上記第2の実施形
態のように半導体レーザ16とポリイミド光導波路層1
2の端面との密着した接点が単一の点光源として機能す
る場合と比較すると、TiO2 光触媒層14の全面にわ
たってほぼ同一方向に均一な光強度のエバネセント波2
4を生成することが可能になるため、TiO2光触媒層
14上のどの位置においても、ほぼ同一の伝搬方向に向
かう均一な強度の放射圧30を微小物体26に作用させ
ることができる。従って、微小物体26として微小部品
や高分子等を対象にする場合に、そのマニピュレーショ
ンを高精度に制御することが可能になる。
【0068】また、半導体レーザ16は、フレキシブル
な光ファイバ40や3本の光ファイバ40a、40b、
40c等を介してポリイミド光導波路層12に接続され
ていることにより、上記第2の実施形態のように半導体
レーザ16が合成石英基板10等と一体になっている場
合と比較すると、独立して設置するためのスペースは必
要となるものの、その設置の位置や方法の自由度は高く
なるため、上記第2の実施形態の場合とは異なる形態に
おいてその使用範囲を拡大することが可能になる。
【0069】(第5の実施形態)図5は本発明の第5の
実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図である。な
お、上記図3及び図4の光触媒装置の構成要素と同一の
要素には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形
態に係る光触媒装置においては、上記図4の光触媒装置
における合成石英基板10の代わりに、上記図3の光触
媒装置に示されるように、表面が紫外線の波長のオーダ
ーで平滑でない不透明なセラミック基板34上に赤外線
及び紫外線を透過する透明なバッファ層36が積層され
ているものを用いる点に特徴がある。
【0070】即ち、図5に示されるように、表面が紫外
線の波長のオーダーで平滑でない不透明なセラミック基
板34上に、赤外線及び紫外線を透過するバッファ層3
6が紫外線の波長のオーダーで平滑な表面をもって形成
され、このバッファ層36上に、バッファ層36よりも
屈折率の大きいポリイミド光導波路層12と超親水機能
を有するアナターゼ型のTiO2 光触媒層14とが順に
積層されて形成されている。
【0071】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6は、集光用のレンズ38を介して単一線の光ファイバ
40に接続され、この光ファイバ40は分岐カップラ4
2によって3本の光ファイバ40a、40b、40cに
3分岐されてポリイミド光導波路層12の端面に接続さ
れている。こうして、半導体レーザ16が出射する波長
1.5μm以上の赤外線44は、レンズ38、光ファイ
バ40、分岐カップラ42、及び3本の光ファイバ40
a、40b、40cを介して、ポリイミド光導波路層1
2に入射されるようになっている。
【0072】また、第2の光源としての2個の半導体レ
ーザ32a、32bは、それぞれ集光用のレンズ46
a、46bを介して単一線の光ファイバ48a、48b
に接続され、これらの光ファイバ48a、48bはポリ
イミド光導波路層12の互いに対向する両端面にそれぞ
れ接続されている。こうして、半導体レーザ32a、3
2bが出射する波長400nm以下の紫外線は、それぞ
れレンズ46a、46b及び光ファイバ48a、48b
を介して、ポリイミド光導波路層12に入射されるよう
になっている。
【0073】ここで、上記第3の実施形態の場合と同様
に、バッファ層36とポリイミド光導波路層12とTi
2 光触媒層14とからなる積層構造と更にTiO2
触媒層14に接する空気層によって、半導体レーザ16
から出射される赤外線44及び半導体レーザ32a、3
2bから出射される紫外線の双方に対する4層ステップ
構造のスラブ型光導波路が構成される。
【0074】なお、図5に示される光触媒装置の動作
は、合成石英基板10とポリイミド光導波路層12とT
iO2 光触媒層14と空気層との積層構造の代わりに、
バッファ層36とポリイミド光導波路層12とTiO2
光触媒層14と空気層との積層構造によって4層ステッ
プ構造のスラブ型光導波路が構成されており、このスラ
ブ型光導波路構造のポリイミド光導波路層12内を半導
体レーザ16、32a、32bから出射される赤外線4
4及び紫外線が伝搬する点を除くと、上記図4に示され
る第2の実施形態の場合と基本的に同様であるため、そ
の説明は省略する。
【0075】以上のように本実施形態によれば、第1及
び第2の光源としての半導体レーザ16、32a、32
bから出射された赤外線44及び紫外線を透過し且つポ
リイミド光導波路層12よりも屈折率の小さいバッファ
層36がセラミック基板34とポリイミド光導波路層1
2との間に形成され、ポリイミド光導波路層12との間
に平滑な境界面を形成していることにより、このバッフ
ァ層36やポリイミド光導波路層12を含む積層構造が
ステップ型スラブ型光導波路を構成し、半導体レーザ1
6から光ファイバ40や3本の光ファイバ40a、40
b、40c等を経由してポリイミド光導波路層12に入
射された赤外線44及び半導体レーザ32a、32bか
ら光ファイバ48a、48bを経由してポリイミド光導
波路層12に入射された紫外線をポリイミド光導波路層
12内に伝搬させることが可能になるため、セラミック
基板22のように光触媒の励起光を透過しない不透明な
ものや、その表面が紫外線の波長のオーダーで平滑でな
いものを基板として使用しても、上記第4の実施形態に
係る光触媒装置の場合と同様の効果を奏することができ
る。
【0076】(第6の実施形態)図6は本発明の第6の
実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図である。な
お、上記図4の光触媒装置の構成要素と同一の要素には
同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態に係る
光触媒装置においては、上記図4の光触媒装置において
第1の光源としての半導体レーザ16が光ファイバ40
及び光ファイバ40a、40b、40cを介してポリイ
ミド光導波路層12の端面に接続され、第2の光源とし
ての半導体レーザ32a、32bがそれぞれ光ファイバ
48a、48bを介してポリイミド光導波路層12の両
端面に接続されている代わりに、半導体レーザ16が光
ファイバ束及び光ファイバシートを介してポリイミド光
導波路層12の端面に接続され、半導体レーザ32a、
32bもそれぞれ光ファイバ束及び光ファイバシートを
介してポリイミド光導波路層12の両端面に接続されて
いる点に特徴がある。
【0077】即ち、図6に示されるように、透明で表面
が平滑な合成石英基板10上に、ポリイミド光導波路層
12及び超親水機能を有するアナターゼ型のTiO2
触媒層14が順に積層されて形成されている。そして、
第1の光源としての半導体レーザ16は、集光用のレン
ズ38を介して、光導波路部が円柱状に束ねられている
光ファイバ束50に接続されている。この光ファイバ束
50はその途中から光導波路部が線状に配列された光フ
ァイバシート52に変わっている。この光ファイバシー
ト52の他端はポリイミド光導波路層12の端面に線状
に接続されている。こうして、半導体レーザ16が出射
する波長1.5μm以上の赤外線54は、レンズ38、
光ファイバ束50、及び光ファイバシート52を介し
て、ポリイミド光導波路層12に入射されるようになっ
ている。
【0078】また、第2の光源としての2個の半導体レ
ーザ32a、32bは、それぞれレンズ46a、46b
を介して、光ファイバ束56a、56bに接続してい
る。これらの光ファイバ束56a、56bはその途中か
ら光ファイバシート58a、58bに変わっている。こ
れらの光ファイバシート58a、58bの他端がポリイ
ミド光導波路層12の互いに対向する両端面にそれぞれ
線状に接続されている。こうして、半導体レーザ32
a、32bが出射する波長400nm以下の紫外線(図
示せず)は、それぞれレンズ46a、46b、光ファイ
バ束56a、56b、及び光ファイバシート58a、5
8bを介して、ポリイミド光導波路層12に入射される
ようになっている。
【0079】ここで、上記第4の実施形態の場合と同様
に、合成石英基板10とポリイミド光導波路層12とT
iO2 光触媒層14とからなる積層構造と更にTiO2
光触媒層14に接する空気層によって、半導体レーザ1
6から出射される赤外線54及び半導体レーザ32a、
32bから出射される紫外線の双方に対する4層ステッ
プ構造のスラブ型光導波路が構成される。
【0080】次に、図6に示される光触媒装置の動作を
説明する。先ず、第1の光源としての半導体レーザ16
から出射した波長1.5μm以上の赤外線54は、レン
ズ38によって集光された後、光ファイバ束50及び光
ファイバシート52を経由してポリイミド光導波路層1
2に入射し、4層ステップ構造のスラブ型光導波路を構
成するポリイミド光導波路層12内を伝搬する。
【0081】その際に、光ファイバシート52とポリイ
ミド光導波路層12の端面との接続部が線状光源として
機能するため、上記第4の実施形態のように3本の光フ
ァイバ40a、40b、40cとポリイミド光導波路層
12の端面との接続点が3つの点光源として機能する場
合と比較すると、TiO2 光触媒層14表面におけるエ
バネセント波24は、TiO2 光触媒層14の全面にわ
たって同一方向に極めて均一な光強度で生成される。こ
のため、微小物体26はTiO2 光触媒層14上のどの
位置においても、同一の伝搬方向に向かう極めて均一な
強度の放射圧30の作用を受けることになる。
【0082】また、このとき、半導体レーザ32a、3
2bから出射した波長400nm以下の紫外線は、それ
ぞれレンズ46a、46bによって集光された後、光フ
ァイバ束56a、56b及び光ファイバシート58a、
58bを経由して、ポリイミド光導波路層12に入射
し、4層ステップ構造のスラブ型光導波路を構成するポ
リイミド光導波路層12内を伝搬すると共に、その際の
ポリイミド光導波路層12からの漏洩光がTiO2 光触
媒層14に入射して、ポリイミド光導波路層12に接す
る裏面全体から照射する。
【0083】そして、その際に、光ファイバシート58
a、58bとポリイミド光導波路層12の両端面との接
続部が線状光源として機能するため、上記第4の実施形
態のように単一線の光ファイバ48a、48bとポリイ
ミド光導波路層12の両端面との接続点がそれぞれ1つ
の点光源として機能する場合と比較すると、TiO2
触媒層14をその裏面全体から照射する紫外線は、Ti
2 光触媒層14の全面にわたって極めて均一な光強度
となる。このため、TiO2 光触媒層14はその全面に
わたって均一に活性化され、その光触媒作用により超親
水機能を発揮する。即ち、空気中の水を吸着して、Ti
2 光触媒層14の表面に分子レベルの薄い水膜(図示
せず)をその全面にわたって均一に形成する。
【0084】こうして、TiO2 光触媒層14上の微小
物体26がポリイミド光導波路層12内を伝搬する赤外
線54によって生成されるエバネセント波24の放射圧
30によってその伝搬方向に向かう力を受ける際、Ti
2 光触媒層14の表面には分子レベルの薄い水膜が均
一に形成され、この水膜が潤滑剤として機能するため、
エバネセント波24の放射圧30が小さなものであって
も、即ち半導体レーザ16から出射される赤外線54の
光パワーが小さくても、TiO2 光触媒層14上の微小
物体26はポリイミド光導波路層12内の赤外線54の
伝搬方向に容易に移動する。
【0085】以上のように本実施形態によれば、半導体
レーザ16から出射された赤外線54が光ファイバ束5
0及び光ファイバシート52を経由してポリイミド光導
波路層12内を伝搬する際に生成するエバネセント波2
4の放射圧30と、半導体レーザ32a、32bから出
射された紫外線が光ファイバ束56a、56b及び光フ
ァイバシート58a、58bを経由してポリイミド光導
波路層12内を伝搬する際の漏洩光によって照射された
TiO2 光触媒層14の超親水機能によりTiO2 光触
媒層14表面に形成される分子レベルの薄い水膜の潤滑
性を利用して、TiO2 光触媒層14上の微小物体26
をポリイミド光導波路層12内の赤外線54の伝搬方向
に容易に移動させることができるため、上記第4の実施
形態に係る光触媒装置の場合と同様の効果を奏すること
ができる。
【0086】このとき、光ファイバシート52とポリイ
ミド光導波路層12の端面との接続部がポリイミド光導
波路層12内を伝搬する赤外線54の線状光源として機
能するため、上記第4の実施形態のように3本の光ファ
イバ40a、40b、40cとポリイミド光導波路層1
2の端面との接続点が3つの点光源として機能する場合
と比較すると、TiO2 光触媒層14の全面にわたって
同一方向に極めて均一な光強度のエバネセント波24を
生成することが可能になるため、TiO2 光触媒層14
上のどの位置においても、同一の伝搬方向に向かう均一
な強度の放射圧30を微小物体26に作用させることが
できる。
【0087】同時に、光ファイバシート58a、58b
とポリイミド光導波路層12の両端面との接続部がポリ
イミド光導波路層12内を伝搬する紫外線の線状光源と
して機能するため、上記第4の実施形態のように単一線
の光ファイバ48a、48bとポリイミド光導波路層1
2の両端面との接続点がそれぞれ1つの点光源として機
能する場合と比較すると、このTiO2 光触媒層14の
全面にわたって極めて均一な光強度の紫外線によってT
iO2 光触媒層14は均一に活性化されるために、その
超親水機能によりTiO2 光触媒層14の全表面にわた
って分子レベルの薄い水膜を極めて均一に形成すること
ができる。従って、TiO2 光触媒層14上の微小物体
26に同一の伝搬方向に向かう均一な強度で作用する放
射圧30とTiO2 光触媒層14の全表面に極めて均一
に形成される薄い水膜による均一な潤滑性とを利用し
て、例えば微小物体26として微小部品や高分子等を対
象にする場合に、そのマニピュレーションを極めて高精
度に制御することが可能になる。
【0088】また、半導体レーザ16は、フレキシブル
な光ファイバ束50及び光ファイバシート52等を介し
てポリイミド光導波路層12に接続され、半導体レーザ
32a、32bも、フレキシブルな光ファイバ束56
a、56b及び光ファイバシート58a、58b等を介
してポリイミド光導波路層12に接続されていることに
より、それらの設置の位置や方法の自由度は高くなるた
め、その使用範囲を拡大することが可能になる。
【0089】(第7の実施形態)図7は本発明の第7の
実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図である。な
お、上記図5及び図6の光触媒装置の構成要素と同一の
要素には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形
態に係る光触媒装置においては、上記図6の光触媒装置
における合成石英基板10の代わりに、上記図5の光触
媒装置に示されるように、表面が紫外線の波長のオーダ
ーで平滑でない不透明なセラミック基板34上に赤外線
及び紫外線を透過する透明なバッファ層36が積層され
ているものを用いる点に特徴がある。
【0090】即ち、図7に示されるように、表面が紫外
線の波長のオーダーで平滑でない不透明なセラミック基
板34上に、赤外線及び紫外線を透過するバッファ層3
6が紫外線の波長のオーダーで平滑な表面をもって形成
され、このバッファ層36上に、バッファ層36よりも
屈折率の高いポリイミド光導波路層12と超親水機能を
有するアナターゼ型のTiO2 光触媒層14とが順に積
層されて形成されている。
【0091】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6は、集光用のレンズ38を介して光ファイバ束50に
接続され、この光ファイバ束50はその途中から光ファ
イバシート52に変わり、この光ファイバシート52の
他端がポリイミド光導波路層12の端面に線状に接続さ
れている。こうして、半導体レーザ16が出射する波長
1.5μm以上の赤外線54は、レンズ38、光ファイ
バ束50、及び光ファイバシート52を介して、ポリイ
ミド光導波路層12に入射されるようになっている。
【0092】また、第2の光源としての2個の半導体レ
ーザ32a、32bは、それぞれ集光用のレンズ46
a、46bを介して光ファイバ束56a、56bに接続
され、これらの光ファイバ束56a、56bはその途中
から光ファイバシート58a、58bに変わり、これら
の光ファイバシート58a、58bの他端がポリイミド
光導波路層12の互いに対向する両端面にそれぞれ線状
に接続されている。こうして、半導体レーザ32a、3
2bが出射する波長400nm以下の紫外線(図示せ
ず)は、それぞれレンズ46a、46b、光ファイバ束
56a、56b、及び光ファイバシート58a、58b
を介して、ポリイミド光導波路層12に入射されるよう
になっている。
【0093】ここで、上記第5の実施形態の場合と同様
に、バッファ層36とポリイミド光導波路層12とTi
2 光触媒層14とからなる積層構造と更にTiO2
触媒層14に接する空気層によって、半導体レーザ16
から出射される赤外線54及び半導体レーザ32a、3
2bから出射される紫外線の双方に対する4層ステップ
構造のスラブ型光導波路が構成される。
【0094】なお、図7に示される光触媒装置の動作
は、合成石英基板10とポリイミド光導波路層12とT
iO2 光触媒層14と空気層との積層構造の代わりに、
バッファ層36とポリイミド光導波路層12とTiO2
光触媒層14と空気層との積層構造によって4層ステッ
プ構造のスラブ型光導波路が構成されており、このスラ
ブ型光導波路構造のポリイミド光導波路層12内を半導
体レーザ16、32a、32bから出射される赤外線5
4及び紫外線が伝搬する点を除くと、上記図6に示され
る第6の実施形態の場合と基本的に同様であるため、そ
の説明は省略する。
【0095】以上のように本実施形態によれば、第1及
び第2の光源としての半導体レーザ16、32a、32
bから出射された赤外線54及び紫外線を透過し且つポ
リイミド光導波路層12よりも屈折率の小さいバッファ
層36がセラミック基板34とポリイミド光導波路層1
2との間に形成され、ポリイミド光導波路層12との間
に平滑な境界面を形成していることにより、このバッフ
ァ層36やポリイミド光導波路層12を含む積層構造が
ステップ型スラブ型光導波路を構成し、半導体レーザ1
6から光ファイバ束50及び光ファイバシート52を経
由してポリイミド光導波路層12に入射された赤外線5
4及び半導体レーザ32a、32bから光ファイバ束5
6a、56b及び光ファイバシート58a、58bを経
由してポリイミド光導波路層12に入射された紫外線を
ポリイミド光導波路層12内に伝搬させることが可能に
なるため、セラミック基板22のように光触媒の励起光
を透過しない不透明なものや、その表面が紫外線の波長
のオーダーで平滑でないものを基板として使用しても、
上記第6の実施形態に係る光触媒装置の場合と同様の効
果を奏することができる。
【0096】(第8の実施形態)図8は本発明の第8の
実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図である。な
お、上記図6の光触媒装置の構成要素と同一の要素には
同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態に係る
光触媒装置においては、上記図6の光触媒装置における
合成石英基板10の代わりに、紫外線に対して透明で赤
外線に対して不透明な基板を用い、ポリイミド光導波路
層12の代わりに、低屈折率のポリイミド光導波路層と
高屈折率のポリイミド光導波路層との2層構造を用いる
点に特徴がある。
【0097】即ち、図8に示されるように、紫外線に対
して透明で赤外線に対して不透明な基板60上に、相対
的に屈折率が低く厚さの薄い低屈折率ポリイミド光導波
路層62aと相対的に屈折率が高く厚さの厚い高屈折率
ポリイミド光導波路層62bとが順に積層されて形成さ
れている。そして、この高屈折率ポリイミド光導波路層
62上に、超親水機能を有するアナターゼ型のTiO2
光触媒層14が形成されている。
【0098】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6は、集光用のレンズ38を介して光ファイバ束50に
接続され、この光ファイバ束50はその途中から光ファ
イバシート52に変わり、この光ファイバシート52の
他端が高屈折率ポリイミド光導波路層62bの端面に線
状に接続されている。こうして、半導体レーザ16が出
射する波長1.5μm以上の赤外線64は、レンズ3
8、光ファイバ束50及び光ファイバシート52を介し
て、高屈折率ポリイミド光導波路層62bに入射される
ようになっている。
【0099】また、第2の光源としての2個の半導体レ
ーザ32a、32bは、それぞれ集光用のレンズ46
a、46bを介して光ファイバ束56a、56bに接続
され、これらの光ファイバ束56a、56bはその途中
から光ファイバシート58a、58bに変わり、これら
の光ファイバシート58a、58bの他端が低屈折率ポ
リイミド光導波路層62aの互いに対向する両端面にそ
れぞれ線状に接続されている。こうして、半導体レーザ
32a、32bが出射する波長400nm以下の紫外線
(図示せず)は、レンズ46a、46b、光ファイバ束
56a、56b、及び光ファイバシート58a、58b
を介して、低屈折率ポリイミド光導波路層62aに入射
されるようになっている。
【0100】ここで、低屈折率ポリイミド光導波路層6
2aと高屈折率ポリイミド光導波路層62bとTiO2
光触媒層14とからなる積層構造と更にTiO2 光触媒
層14に接する空気層によって、半導体レーザ16から
出射される赤外線64に対する4層ステップ構造のスラ
ブ型光導波路が構成される。
【0101】また、紫外線に対して透明な基板60は低
屈折率ポリイミド光導波路層62aよりも屈折率が低く
なっている。このため、この紫外線に対して透明な基板
60と低屈折率ポリイミド光導波路層62aと高屈折率
ポリイミド光導波路層62bとTiO2 光触媒層14と
からなる積層構造と更にTiO2 光触媒層14に接する
空気層によって、半導体レーザ32a、32bから出射
される紫外線に対する5層ステップ構造のスラブ型光導
波路が構成される。
【0102】次に、図8に示される光触媒装置の動作を
説明する。先ず、第1の光源としての半導体レーザ16
から出射した波長1.5μm以上の赤外線64は、レン
ズ38によって集光された後、光ファイバ束50及び光
ファイバシート52を経由して、高屈折率ポリイミド光
導波路層62bに入射し、4層ステップ構造のスラブ型
光導波路を構成する高屈折率ポリイミド光導波路層62
b内を伝搬する。その際に、光ファイバシート52と高
屈折率ポリイミド光導波路層62bの端面との接続部が
線状光源として機能するため、TiO2 光触媒層14表
面におけるエバネセント波24は、TiO2 光触媒層1
4の全面にわたって同一方向に極めて均一な光強度で生
成され、微小物体26はTiO2 光触媒層14上のどの
位置においても、同一の伝搬方向に向かう極めて均一な
強度の放射圧30の作用を受けることになる。
【0103】なお、ここで、半導体レーザ16から出射
した赤外線64が伝搬する高屈折率ポリイミド光導波路
層62bは相対的に薄い膜厚となっているが、TiO2
光触媒層14表面に生成されるエバネセント波24は吸
収による減衰がないため、微小物体26に作用する放射
圧30が弱くなることはない。
【0104】また、このとき、半導体レーザ32a、3
2bから出射した波長400nm以下の紫外線は、それ
ぞれレンズ46a、46bによって集光された後、光フ
ァイバ束56a、56b及び光ファイバシート58a、
58bを経由して、低屈折率ポリイミド光導波路層62
aに入射し、多モード5層ステップ構造のスラブ型光導
波路を構成する低屈折率ポリイミド光導波路層62a内
を伝搬すると共に、その際の漏洩光がTiO2 光触媒層
14をその裏面全体から照射する。そして、その際に、
光ファイバシート58a、58bと低屈折率ポリイミド
光導波路層62aの両端面との接続部が線状光源として
機能するため、TiO2 光触媒層14をその裏面全体か
ら照射する紫外線は、TiO2 光触媒層14の全面にわ
たって極めて均一な光強度となり、TiO2 光触媒層1
4をその全面にわたって極めて均一に活性化する。
【0105】更に、ここで、半導体レーザ32a、32
bから出射した紫外線が伝搬する低屈折率ポリイミド光
導波路層62aは相対的に厚い膜厚となっているため、
TiO2 光触媒層14に入射する紫外線の光量が相対的
に小さくなる。従って、TiO2 光触媒層14における
光吸収による減衰が小さくなるため、TiO2 光触媒層
14が大面積の場合であってもそのTiO2 光触媒層1
4全体を均一に活性化する。従って、上記第6の実施形
態の場合よりも更に効果的に大面積のTiO2光触媒層
14の超親水機能を発揮して、分子レベルの薄い水膜
(図示せず)をその全表面にわたって極めて均一に形成
する。
【0106】こうして、TiO2 光触媒層14上の微小
物体26が高屈折率ポリイミド光導波路層62b内を伝
搬する赤外線64によって生成されるエバネセント波2
4の放射圧30によってその伝搬方向に向かう力を受け
る際、TiO2 光触媒層14の表面には分子レベルの薄
い水膜が極めて均一に形成され、この水膜が潤滑剤とし
て機能するため、エバネセント波24の放射圧30が小
さなものであっても、即ち半導体レーザ16から出射さ
れる赤外線64の光パワーが小さくても、TiO2 光触
媒層14上の微小物体26はポリイミド光導波路層12
内の赤外線64の伝搬方向に容易に移動する。
【0107】以上のように本実施形態によれば、紫外線
に対して透明で赤外線に対して不透明な基板60上に低
屈折率ポリイミド光導波路層62aと高屈折率ポリイミ
ド光導波路層62bとの2層構造が形成され、半導体レ
ーザ16から出射した赤外線64が高屈折率ポリイミド
光導波路層62b内を伝搬すると共に、半導体レーザ3
2a、32bから出射した紫外線が相対的に厚さの厚い
低屈折率ポリイミド光導波路層62a内を伝搬すること
により、エバネセント波24の放射圧30を弱めること
なく、TiO2 光触媒層14に入射する紫外線の光量を
相対的に小さくして光吸収による減衰を抑制し、大面積
のTiO2 光触媒層14であってもその全体を均一に活
性化することが可能になるため、上記第6の実施形態の
場合よりも更に効果的に大面積のTiO2 光触媒層14
の超親水機能を発揮して、分子レベルの薄い水膜をその
全表面にわたって極めて均一に形成することができる。
【0108】従って、TiO2 光触媒層14が大面積の
場合であっても、そのTiO2 光触媒層14上の微小物
体26に同一の伝搬方向に向かう極めて均一な強度で作
用する放射圧30とTiO2 光触媒層14の全表面に極
めて均一に形成される薄い水膜による均一な潤滑性とを
利用して、例えば微小部品や高分子等のような微小物体
26のマニピュレーションを極めて高精度に制御するこ
とが可能になる。
【0109】(第9の実施形態)図9は本発明の第9の
実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図である。な
お、上記図6の光触媒装置の構成要素と同一の要素には
同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態に係る
光触媒装置においては、上記図6の光触媒装置における
第2の光源としての半導体レーザ32b、レンズ46
b、光ファイバ束56b、及び光ファイバシート58b
の代わりに、ポリイミド光導波路層12等の端面にミラ
ーが設置されている点に特徴がある。
【0110】即ち、図9に示されるように、透明で表面
が平滑な合成石英基板10上に、ポリイミド光導波路層
12及び超親水機能を有するアナターゼ型のTiO2
触媒層14が順に積層されて形成されている。また、第
1の光源としての半導体レーザ16は、集光用のレンズ
38を介して光ファイバ束50に接続され、この光ファ
イバ束50はその途中から光ファイバシート52に変わ
り、この光ファイバシート52の他端がポリイミド光導
波路層12の端面に線状に接続されている。こうして、
半導体レーザ16が出射する波長1.5μm以上の赤外
線54は、レンズ38、光ファイバ束50、及び光ファ
イバシート52を介して、ポリイミド光導波路層12に
入射されるようになっている。
【0111】また、第2の光源としての半導体レーザ3
2aは、集光用のレンズ46aを介して光ファイバ束5
6aに接続し、この光ファイバ束56aはその途中から
光ファイバシート58aに変わり、この光ファイバシー
ト58aの他端がポリイミド光導波路層12の端面に線
状に接続されている。こうして、半導体レーザ32aが
出射する波長400nm以下の紫外線66は、レンズ4
6a、光ファイバ束56a、及び光ファイバシート58
aを介して、ポリイミド光導波路層12に入射されるよ
うになっている。
【0112】更に、光ファイバシート58aが線状に接
続されているポリイミド光導波路層12の端面に対向す
る合成石英基板10、ポリイミド光導波路層12、及び
TiO2 光触媒層14の端面には、ミラー68がコーテ
ィングされ、ポリイミド光導波路層12内を伝搬してき
た紫外線66を反射するようになっている。
【0113】ここで、上記第6の実施形態の場合と同様
に、合成石英基板10とポリイミド光導波路層12とT
iO2 光触媒層14とからなる積層構造と更にTiO2
光触媒層14に接する空気層によって、半導体レーザ1
6から出射される赤外線54及び半導体レーザ32aか
ら出射される紫外線66の双方に対する4層ステップ構
造のスラブ型光導波路が構成される。
【0114】次に、図9に示される光触媒装置の動作を
説明する。先ず、第1の光源としての半導体レーザ16
から出射した波長1.5μm以上の赤外線54は、レン
ズ38によって集光された後、光ファイバ束50及び光
ファイバシート52を経由して、ポリイミド光導波路層
12に入射し、4層ステップ構造のスラブ型光導波路を
構成するポリイミド光導波路層12内を伝搬する。
【0115】その際に、上記第6の実施形態の場合と同
様に、光ファイバシート52とポリイミド光導波路層1
2の端面との接続部が線状光源として機能するために、
TiO2 光触媒層14表面におけるエバネセント波24
は、TiO2 光触媒層14の全面にわたって同一方向に
極めて均一な光強度で生成される。従って、微小物体2
6はTiO2 光触媒層14上のどの位置においても、同
一の伝搬方向に向かう均一な強度の放射圧30の作用を
受けることになる。
【0116】また、このとき、半導体レーザ32aから
出射した波長400nm以下の紫外線66は、レンズ4
6aによって集光された後、光ファイバ束56a及び光
ファイバシート58aを経由して、ポリイミド光導波路
層12に入射し、多モード4層ステップ構造のスラブ型
光導波路を構成するポリイミド光導波路層12内を伝搬
する。そして、その際に、光ファイバシート58aとポ
リイミド光導波路層12の端面との接続部が線状光源と
して機能するため、ポリイミド光導波路層12内を伝搬
する紫外線66は、その全面にわたって均一な光強度と
なる。従って、TiO2 光触媒層14はポリイミド光導
波路層12からの漏洩する紫外線66によってその裏面
全体から均一な光強度で照射される。
【0117】しかも、ポリイミド光導波路層12内を伝
搬する紫外線66は、ポリイミド光導波路層12の入射
側端面に対向する端面にコーティングされたミラー68
によって反射され、再びポリイミド光導波路層12内に
戻されるため、ポリイミド光導波路層12内を伝搬する
紫外線66はその光強度が更に均一になり、且つTiO
2 光触媒層14を照射するために効率的に使用されて光
量ロスが少なくなる。更にまた、この紫外線66はポリ
イミド光導波路層12内を1回伝搬する間だけでTiO
2 光触媒層14の照射が終了するわけではないため、ポ
リイミド光導波路層12内を伝搬する際の紫外線66の
吸収を小さくして、その減衰を抑制することが可能にな
る。
【0118】そして、紫外線66によって極めて均一な
光強度で照射されたTiO2 光触媒層14は、その全面
にわたって極めて均一に活性化され、その光触媒作用に
より超親水機能を発揮する。即ち、空気中の水を吸着し
て、TiO2 光触媒層14の表面に分子レベルの薄い水
膜(図示せず)をその全面にわたって極めて均一に形成
する。
【0119】こうして、TiO2 光触媒層14上の微小
物体26がポリイミド光導波路層12内を伝搬する赤外
線54によって生成されるエバネセント波24の放射圧
30によってその伝搬方向に向かう力を受ける際、Ti
2 光触媒層14の表面には分子レベルの薄い水膜が極
めて均一に形成され、この水膜が潤滑剤として機能する
ため、エバネセント波24の放射圧30が小さなもので
あっても、即ち半導体レーザ16から出射される赤外線
54の光パワーが小さくても、TiO2 光触媒層14上
の微小物体26はポリイミド光導波路層12内の赤外線
54の伝搬方向に容易に移動する。
【0120】以上のように本実施形態によれば、半導体
レーザ32aから出射した紫外線66が光ファイバ束5
6aや光ファイバシート58a等を介してポリイミド光
導波路層12に入射する端面と対向する端面にミラー6
8がコーティングされていることにより、ポリイミド光
導波路層12内を伝搬してきた紫外線66はこのミラー
68によって反射され、再びポリイミド光導波路層12
内に戻されるため、光量ロスが少なくして効率的に且つ
均一な光強度でTiO2 光触媒層14を照射することが
可能になるため、上記第6の実施形態に係る光触媒装置
の場合と同様の効果をより効率的に奏することができ
る。
【0121】また、上記第6の実施形態に係る光触媒装
置と比較すると、第2の光源としての半導体レーザ32
b、レンズ46b、光ファイバ束56b、及び光ファイ
バシート58bが不要となるため、その分だけ光触媒装
置が小型化されてその使用範囲を拡大することが可能に
なる。
【0122】(第10の実施形態)図10は、本発明の
第10の実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図で
ある。なお、上記図7及び図9の光触媒装置の構成要素
と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る光触媒装置においては、上記図9の光
触媒装置における合成石英基板10の代わりに、上記図
7の光触媒装置に示されるように、表面が紫外線の波長
のオーダーで平滑でない不透明なセラミック基板34上
に赤外線及び紫外線を透過する透明なバッファ層36が
積層されているものを用いる点に特徴がある。
【0123】即ち、図10に示されるように、表面が紫
外線の波長のオーダーで平滑でない不透明なセラミック
基板34上に、赤外線及び紫外線を透過するバッファ層
36が紫外線の波長のオーダーで平滑な表面をもって形
成され、このバッファ層36上に、バッファ層36より
も屈折率の高いポリイミド光導波路層12と超親水機能
を有するアナターゼ型のTiO2 光触媒層14とが順に
積層されて形成されている。
【0124】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6は、集光用のレンズ38を介して光ファイバ束50に
接続され、この光ファイバ束50はその途中から光ファ
イバシート52に変わり、この光ファイバシート52の
他端がポリイミド光導波路層12の端面に線状に接続さ
れている。こうして、半導体レーザ16が出射する波長
1.5μm以上の赤外線54は、レンズ38、光ファイ
バ束50、及び光ファイバシート52を介して、ポリイ
ミド光導波路層12に入射されるようになっている。
【0125】また、第2の光源としての半導体レーザ3
2aは、集光用のレンズ46aを介して光ファイバ束5
6aに接続し、この光ファイバ束56aはその途中から
光ファイバシート58aに変わり、この光ファイバシー
ト58aの他端がポリイミド光導波路層12の端面に線
状に接続されている。こうして、半導体レーザ32aが
出射する波長400nm以下の紫外線66は、レンズ4
6a、光ファイバ束56a、及び光ファイバシート58
aを介して、ポリイミド光導波路層12に入射されるよ
うになっている。更に、光ファイバシート58aが線状
に接続されているポリイミド光導波路層12の端面に対
向する合成石英基板10、ポリイミド光導波路層12、
及びTiO2 光触媒層14の端面には、ミラー68がコ
ーティングされ、ポリイミド光導波路層12内を伝搬し
てきた紫外線66を反射するようになっている。
【0126】ここで、上記第7の実施形態の場合と同様
に、合成石英基板10とポリイミド光導波路層12とT
iO2 光触媒層14とからなる積層構造と更にTiO2
光触媒層14に接する空気層によって、半導体レーザ1
6から出射される赤外線54及び半導体レーザ32aか
ら出射される紫外線66の双方に対する4層ステップ構
造のスラブ型光導波路が構成される。
【0127】なお、図10に示される光触媒装置の動作
は、合成石英基板10とポリイミド光導波路層12とT
iO2 光触媒層14と空気層との積層構造の代わりに、
バッファ層36とポリイミド光導波路層12とTiO2
光触媒層14と空気層との積層構造によって4層ステッ
プ構造のスラブ型光導波路が構成されており、このスラ
ブ型光導波路構造のポリイミド光導波路層12内を半導
体レーザ16、32aから出射される赤外線54及び紫
外線が伝搬する点を除くと、上記図9に示される第9の
実施形態の場合と基本的に同様であるため、その説明は
省略する。
【0128】以上のように本実施形態によれば、第1及
び第2の光源としての半導体レーザ16、32aから出
射された赤外線54及び紫外線を透過し且つポリイミド
光導波路層12よりも屈折率の小さいバッファ層36が
セラミック基板34とポリイミド光導波路層12との間
に形成され、ポリイミド光導波路層12との間に平滑な
境界面を形成していることにより、このバッファ層36
やポリイミド光導波路層12を含む積層構造がステップ
型スラブ光導波路を構成し、半導体レーザ16から光フ
ァイバ束50及び光ファイバシート52を経由してポリ
イミド光導波路層12に入射された赤外線54及び半導
体レーザ32aから光ファイバ束56a及び光ファイバ
シート58aを経由してポリイミド光導波路層12に入
射された紫外線66をポリイミド光導波路層12内に伝
搬させることが可能になるため、セラミック基板34の
ように光触媒の励起光を透過しない不透明なものや、そ
の表面が紫外線の波長のオーダーで平滑でないものを基
板として使用しても、上記第9の実施形態に係る光触媒
装置の場合と同様の効果を奏することができる。
【0129】(第11の実施形態)図11は、本発明の
第10の実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図で
ある。なお、上記図8及び図9の光触媒装置の構成要素
と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る光触媒装置においては、上記図9の光
触媒装置における合成石英基板10上にポリイミド光導
波路層12が形成されている代わりに、上記図8の光触
媒装置に示されるように、紫外線に対して透明で赤外線
に対して不透明な基板60上に低屈折率のポリイミド光
導波路層62aと高屈折率のポリイミド光導波路層62
bとの2層構造が形成されている点に特徴がある。
【0130】即ち、図11に示されるように、紫外線に
対して透明で赤外線に対して不透明な基板60上に、低
屈折率ポリイミド光導波路層62aと高屈折率ポリイミ
ド光導波路層62bとが順に積層されて形成されてい
る。そして、この高屈折率ポリイミド光導波路層62上
に、超親水機能を有するアナターゼ型のTiO2 光触媒
層14が形成されている。
【0131】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6は、集光用のレンズ38を介して光ファイバ束50に
接続され、この光ファイバ束50はその途中から光ファ
イバシート52に変わり、この光ファイバシート52の
他端が高屈折率ポリイミド光導波路層62bの端面に線
状に接続されている。こうして、半導体レーザ16が出
射する波長1.5μm以上の赤外線64は、レンズ3
8、光ファイバ束50、及び光ファイバシート52を介
して、高屈折率ポリイミド光導波路層62bに入射され
るようになっている。
【0132】また、第2の光源としての半導体レーザ3
2aは、集光用のレンズ46aを介して光ファイバ束5
6aに接続し、この光ファイバ束56aはその途中から
光ファイバシート58aに変わり、この光ファイバシー
ト58aの他端が低屈折率ポリイミド光導波路層62a
の端面に線状に接続されている。こうして、半導体レー
ザ32aが出射する波長400nm以下の紫外線70
は、レンズ46a、光ファイバ束56a、及び光ファイ
バシート58aを介して、低屈折率ポリイミド光導波路
層62aに入射されるようになっている。
【0133】更に、光ファイバシート58aが線状に接
続されている低屈折率ポリイミド光導波路層62aの端
面に対向する基板60、低屈折率ポリイミド光導波路層
62a、高屈折率ポリイミド光導波路層62b、及びT
iO2 光触媒層14の端面には、ミラー68がコーティ
ングされており、低屈折率ポリイミド光導波路層62a
内を伝搬してきた紫外線70を反射するようになってい
る。
【0134】ここで、低屈折率ポリイミド光導波路層6
2aと高屈折率ポリイミド光導波路層62bとTiO2
光触媒層14とからなる積層構造と更にTiO2 光触媒
層14に接する空気層によって、半導体レーザ16から
出射される赤外線64に対する4層ステップ構造のスラ
ブ型光導波路が構成されている。また、紫外線に対して
透明な基板60は低屈折率ポリイミド光導波路層62a
よりも屈折率が小さい。このため、紫外線に対して透明
な基板60と低屈折率ポリイミド光導波路層62aと高
屈折率ポリイミド光導波路層62bとTiO2 光触媒層
14とからなる積層構造と更にTiO2 光触媒層14に
接する空気層によって、半導体レーザ32aから出射さ
れる紫外線70に対する5層ステップ構造のスラブ型光
導波路が構成されている。
【0135】次に、図11に示される光触媒装置の動作
を説明する。先ず、第1の光源としての半導体レーザ1
6から出射した波長1.5μm以上の赤外線64は、レ
ンズ38によって集光された後、光ファイバ束50及び
光ファイバシート52を経由して、高屈折率ポリイミド
光導波路層62bに入射し、全体が4層ステップ構造の
スラブ型光導波路を構成する高屈折率ポリイミド光導波
路層62b内を伝搬する。その際に、光ファイバシート
52と高屈折率ポリイミド光導波路層62bの端面との
接続部が線状光源として機能するため、TiO2 光触媒
層14表面におけるエバネセント波24は、TiO2
触媒層14の全面にわたって同一方向に極めて均一な光
強度に生成され、微小物体26はTiO2 光触媒層14
上のどの位置においても、同一の伝搬方向に向かう均一
な強度の放射圧30の作用を受けることになる。
【0136】なお、ここで、半導体レーザ16から出射
した赤外線64が伝搬する高屈折率ポリイミド光導波路
層62bは相対的に薄い膜厚となっているが、TiO2
光触媒層14表面に生成されるエバネセント波24は吸
収による減衰がないため、微小物体26に作用する放射
圧30が弱くなることはない。
【0137】また、このとき、半導体レーザ32aから
出射した波長400nm以下の紫外線70は、レンズ4
6aによって集光された後、光ファイバ束56a及び光
ファイバシート58aを経由して、低屈折率ポリイミド
光導波路層62aに入射し、5層ステップ構造のスラブ
型光導波路を構成する低屈折率ポリイミド光導波路層6
2a内を伝搬する。そして、その際に、光ファイバシー
ト58aと低屈折率ポリイミド光導波路層62aの端面
との接続部が線状光源として機能するため、低屈折率ポ
リイミド光導波路層62a内を伝搬する紫外線70は、
その全面にわたって均一な光強度となる。従って、Ti
2 光触媒層14はポリイミド光導波路層12からの漏
洩する紫外線66によってその裏面全体から均一な光強
度で照射される。
【0138】しかも、低屈折率ポリイミド光導波路層6
2a内を伝搬する紫外線70は、この低屈折率ポリイミ
ド光導波路層62aの入射側端面に対向する端面にコー
ティングされたミラー68によって反射され、再び低屈
折率ポリイミド光導波路層62a内に戻されるため、低
屈折率ポリイミド光導波路層62a内を伝搬する紫外線
70はその光強度が更に均一になり、且つTiO2 光触
媒層14を照射するために効率的に使用されて光量ロス
が少なくなる。また、この紫外線70は低屈折率ポリイ
ミド光導波路層62a内を1回伝搬する間だけでTiO
2 光触媒層14の照射が終了するわけではないため、低
屈折率ポリイミド光導波路層62a内を伝搬する際の紫
外線70の吸収を小さくして、その減衰を抑制すること
が可能になる。
【0139】更に、ここで、半導体レーザ32aから出
射した紫外線が伝搬する低屈折率ポリイミド光導波路層
62aは相対的に厚い膜厚となっているため、TiO2
光触媒層14に入射する紫外線の光量が相対的に小さく
なる。従って、TiO2 光触媒層14における光吸収に
よる減衰が抑制されるため、TiO2 光触媒層14が大
面積の場合であってもそのTiO2 光触媒層14の全体
を均一に活性化する。従って、上記第9の実施形態の場
合よりも更に効果的に大面積のTiO2 光触媒層14の
超親水機能を発揮して、分子レベルの薄い水膜(図示せ
ず)をその全表面にわたって均一に形成する。
【0140】こうして、TiO2 光触媒層14上の微小
物体26が高屈折率ポリイミド光導波路層62b内を伝
搬する赤外線64によって生成されるエバネセント波2
4の放射圧30によってその伝搬方向に向かう力を受け
る際、TiO2 光触媒層14の表面には分子レベルの薄
い水膜が極めて均一に形成され、この水膜が潤滑剤とし
て機能するため、エバネセント波24の放射圧30が小
さなものであっても、即ち半導体レーザ16から出射さ
れる赤外線64の光パワーが小さくても、TiO2 光触
媒層14上の微小物体26はポリイミド光導波路層12
内の赤外線64の伝搬方向に容易に移動する。
【0141】以上のように本実施形態によれば、紫外線
に対して透明で赤外線に対して不透明な基板60上に低
屈折率ポリイミド光導波路層62aと高屈折率ポリイミ
ド光導波路層62bとが順に積層されて形成され、半導
体レーザ16から出射した赤外線64が高屈折率ポリイ
ミド光導波路層62b内を伝搬すると共に、半導体レー
ザ32aから出射した紫外線70が相対的に厚さの厚い
低屈折率ポリイミド光導波路層62a内を伝搬すること
により、エバネセント波24の放射圧30を弱めること
なく、TiO2 光触媒層14に入射する紫外線70の光
量が相対的に小さくして光吸収による減衰を抑制し、大
面積のTiO2 光触媒層14であってもその全体を均一
に活性化することが可能になるため、上記第9の実施形
態の場合よりも更に効果的に大面積のTiO2 光触媒層
14の超親水機能を発揮して、分子レベルの薄い水膜を
その全表面にわたって均一に形成することができる。
【0142】従って、TiO2 光触媒層14が大面積の
場合であっても、そのTiO2 光触媒層14上の微小物
体26に同一の伝搬方向に向かう均一な強度で作用する
放射圧30とTiO2 光触媒層14の全表面に極めて均
一に形成される薄い水膜による潤滑性とを利用して、例
えば微小部品や高分子等のような微小物体26のマニピ
ュレーションを極めて高精度に制御することが可能にな
る。
【0143】(第12の実施形態)図12は、本発明の
第12の実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視図で
ある。なお、上記図10及び図11の光触媒装置の構成
要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略す
る。本実施形態に係る光触媒装置においては、上記図1
1の光触媒装置における紫外線に対して透明で赤外線に
対して不透明な基板60の代わりに、表面が紫外線の波
長のオーダーで平滑でない不透明なセラミック基板34
上に紫外線に対して透明で赤外線に対して不透明なバッ
ファ層が積層されているものを用いる点に特徴がある。
【0144】即ち、図12に示されるように、表面が紫
外線の波長のオーダーで平滑でない不透明なセラミック
基板34上に、紫外線に対して透明で赤外線に対して不
透明なバッファ層72が紫外線の波長のオーダーで平滑
な表面をもって形成され、このバッファ層72上に、バ
ッファ層72よりも屈折率が大きい低屈折率ポリイミド
光導波路層62aと高屈折率ポリイミド光導波路層62
bとが順に積層されて形成されている。そして、この高
屈折率ポリイミド光導波路層62上に、超親水機能を有
するアナターゼ型のTiO2 光触媒層14が形成されて
いる。
【0145】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6は、集光用のレンズ38を介して光ファイバ束50に
接続され、この光ファイバ束50はその途中から光ファ
イバシート52に変わり、この光ファイバシート52の
他端が高屈折率ポリイミド光導波路層62bの端面に線
状に接続されている。こうして、半導体レーザ16が出
射する波長1.5μm以上の赤外線64は、レンズ3
8、光ファイバ束50、及び光ファイバシート52を介
して、高屈折率ポリイミド光導波路層62bに入射され
るようになっている。
【0146】また、第2の光源としての半導体レーザ3
2aは、集光用のレンズ46aを介して光ファイバ束5
6aに接続し、この光ファイバ束56aはその途中から
光ファイバシート58aに変わり、この光ファイバシー
ト58aの他端が低屈折率ポリイミド光導波路層62a
の端面に線状に接続されている。こうして、半導体レー
ザ32aが出射する波長400nm以下の紫外線70
は、レンズ46a、光ファイバ束56a、及び光ファイ
バシート58aを介して、低屈折率ポリイミド光導波路
層62aに入射されるようになっている。
【0147】更に、光ファイバシート58aが線状に接
続されている低屈折率ポリイミド光導波路層62aの端
面に対向するセラミック基板34、バッファ層72、低
屈折率ポリイミド光導波路層62a、高屈折率ポリイミ
ド光導波路層62b、及びTiO2 光触媒層14の端面
には、ミラー68がコーティングされており、低屈折率
ポリイミド光導波路層62a内を伝搬してきた紫外線7
0を反射するようになっている。
【0148】ここで、低屈折率ポリイミド光導波路層6
2aと高屈折率ポリイミド光導波路層62bとTiO2
光触媒層14とからなる積層構造と更にTiO2 光触媒
層14に接する空気層によって、半導体レーザ16から
出射される赤外線64に対する4層ステップ構造のスラ
ブ型光導波路が構成されている。
【0149】また、紫外線に対して透明なバッファ層7
2と低屈折率ポリイミド光導波路層62aと高屈折率ポ
リイミド光導波路層62bとTiO2 光触媒層14とか
らなる積層構造と更にTiO2 光触媒層14に接する空
気層によって、半導体レーザ32aから出射される紫外
線70に対する5層ステップ構造のスラブ型光導波路が
構成されている。
【0150】なお、図12に示される光触媒装置の動作
は、紫外線に対して透明な基板60と低屈折率ポリイミ
ド光導波路層62aと高屈折率ポリイミド光導波路層6
2bとTiO2 光触媒層14と空気層との積層構造の代
わりに、紫外線に対して透明なバッファ層72と低屈折
率ポリイミド光導波路層62aと高屈折率ポリイミド光
導波路層62bとTiO2 光触媒層14と空気層との積
層構造によって5層ステップ構造のスラブ型光導波路が
構成されており、このスラブ型光導波路構造の低屈折率
ポリイミド光導波路層62a内を半導体レーザ32aか
ら出射される紫外線70が伝搬する点を除くと、上記図
11に示される第11の実施形態の場合と基本的に同様
であるため、その説明は省略する。
【0151】以上のように本実施形態によれば、紫外線
に対して透明で赤外線に対して不透明なバッファ層72
上に低屈折率ポリイミド光導波路層62aと高屈折率ポ
リイミド光導波路層62bとが順に積層されて形成さ
れ、半導体レーザ16から出射した赤外線64が高屈折
率ポリイミド光導波路層62b内を伝搬すると共に、半
導体レーザ32aから出射した紫外線70が相対的に厚
さの厚い低屈折率ポリイミド光導波路層62a内を伝搬
することにより、エバネセント波24の放射圧30を弱
めることなく、TiO2 光触媒層14に入射する紫外線
70の光量を相対的に小さくして光吸収による減衰を抑
制し、大面積のTiO2 光触媒層14であってもその全
体を均一に活性化することができるため、セラミック基
板34のように光触媒の励起光を透過しない不透明なも
のや、その表面が紫外線の波長のオーダーで平滑でない
ものを基板として使用しても、上記第11の実施形態に
係る光触媒装置の場合と同様の効果を奏することができ
る。
【0152】(第13の実施形態)図13(a)は本発
明の第13の実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視
図であり、図13(b)は図13(a)の光触媒装置の
断面図である。なお、上記図2の光触媒装置の構成要素
と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る光触媒装置においては、上記図2の光
触媒装置においてスラブ型光導波路を構成する面状のポ
リイミド光導波路層12の代わりに、チャネル状のポリ
イミド光導波路層が形成されている点に特徴がある。
【0153】即ち、図13(a)、(b)に示されるよ
うに、透明で表面が平滑な合成石英基板10上に、この
合成石英基板10よりも屈折率の高いチャネル状のポリ
イミド光導波路層74が形成され、このチャネル状のポ
リイミド光導波路層74を挟む合成石英基板10上に
は、チャネル状のポリイミド光導波路層74よりも屈折
率の低いポリイミド層76が形成されている。また、こ
れらチャネル状のポリイミド光導波路層74及びポリイ
ミド層76上には、超親水機能を有するアナターゼ型の
TiO2 光触媒層14が形成されている。
【0154】なお、このチャネル状のポリイミド光導波
路層74は、合成石英基板10上にポリイミド層76を
形成した後、このポリイミド層76に電子線を線状に照
射してその屈折率を局所的に変化させることにより、容
易に作製される。
【0155】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6がその射出開口をチャネル状のポリイミド光導波路層
74の一方の端面に密着して設置され、波長1.5μm
以上の赤外線(図示せず)をこのチャネル状のポリイミ
ド光導波路層74に出射するようになっている。
【0156】また、第2の光源としての半導体レーザ3
2aがその射出開口をチャネル状のポリイミド光導波路
層74の他方の端面に密着して設置され、波長400n
m以下の紫外線(図示せず)をこのチャネル状のポリイ
ミド光導波路層74に出射するようになっている。
【0157】そして、ここで、合成石英基板10とチャ
ネル状のポリイミド光導波路層74とTiO2 光触媒層
14と更にTiO2 光触媒層14に接する空気層とが順
に積層され、チャネル状のポリイミド光導波路層74の
両サイドがポリイミド層76に挟まれている構造は、半
導体レーザ16から出射される赤外線及び半導体レーザ
32aから出射される紫外線に対する多層ステップ構造
のチャネル型光導波路が構成されている。
【0158】次に、図13(a)、(b)に示される光
触媒装置の動作を説明する。先ず、第1の光源としての
半導体レーザ16から波長1.5μm以上の赤外線をチ
ャネル状のポリイミド光導波路層74に入射して、多モ
ード多層ステップ構造のチャネル型光導波路を構成する
チャネル状のポリイミド光導波路層74内を伝搬させ、
その際にポリイミド光導波路層12からTiO2 光触媒
層14の表面に滲み出すエバネセント波24を生成す
る。そして、このエバネセント波24がTiO2 光触媒
層14上の微小物体26に照射する際に発生するミー散
乱光28に伴い、ポリイミド光導波路層12内の赤外線
18の伝搬方向に向かう放射圧30が微小物体26に作
用する。
【0159】ここで、チャネル状のポリイミド光導波路
層74内を伝搬する赤外線の光強度分布はチャネル状の
ポリイミド光導波路層74の中央部において最も高く、
その中央部から離れるにつれて低くなる。このため、T
iO2 光触媒層14上の微小物体26が透明である場合
には、光強度分布の高いチャネル状のポリイミド光導波
路層74の中央部に向かう方向に放射圧が作用する。従
って、微小物体26はポリイミド光導波路層12内の赤
外線18の伝搬方向に向かう放射圧30を受けてチャネ
ル状のポリイミド光導波路層74に沿って移動する。ま
た、逆に、TiO2 光触媒層14上の微小物体26が不
透明であったり反射する場合には、光強度分布の高いチ
ャネル状のポリイミド光導波路層74の中央部から離れ
る方向に放射圧が作用する。従って、微小物体26はチ
ャネル状のポリイミド光導波路層74の上方から排除さ
れる。
【0160】なお、微小物体26が透明になるか不透明
になるかは、エバネセント波24の波長によって変化す
る。また、このエバネセント波24を生成するチャネル
状のポリイミド光導波路層74内の伝搬光は赤外線に限
定されるものではない。従って、半導体レーザ16から
出射される光の波長を変化させることにより、微小物体
26が透明になるか不透明になるかを制御することが可
能である。また、このとき、第1の光源としての半導体
レーザ32aから波長400nm以下の紫外線を光触媒
の励起光としてチャネル状のポリイミド光導波路層74
に入射して、全体がチャネル光導波路とみなされるチャ
ネル状のポリイミド光導波路層74内を伝搬させる。そ
の際に、ポリイミド光導波路層12からの漏洩光によっ
てTiO2 光触媒層14をその裏面照射する。そして、
このTiO2 光触媒層14はその紫外線を吸収して活性
化され、その光触媒作用により超親水機能を発揮し、空
気中の水を吸着してTiO2 光触媒層14の表面に分子
レベルの薄い水膜(図示せず)を形成する。
【0161】こうして、TiO2 光触媒層14上の微小
物体26がチャネル状のポリイミド光導波路層74に沿
って移動する場合や、チャネル状のポリイミド光導波路
層74の上方から排除される場合のいずれにおいても、
TiO2 光触媒層14の表面には分子レベルの薄い水膜
が形成され、この水膜が潤滑剤として機能するため、エ
バネセント波24の放射圧30が小さなものであって
も、即ち半導体レーザ16から出射される赤外線の光パ
ワーが小さくても、TiO2 光触媒層14上の微小物体
26は容易に移動したり、排除されたりする。
【0162】以上のように本実施形態によれば、半導体
レーザ16から出射された赤外線がチャネル状のポリイ
ミド光導波路層74内を伝搬する際に生成するエバネセ
ント波24の放射圧30と、半導体レーザ32aから出
射された紫外線がチャネル状のポリイミド光導波路層7
4内を伝搬する際の漏洩光によって活性化されたTiO
2 光触媒層14の超親水機能により形成される分子レベ
ルの薄い水膜の潤滑性とを利用して、TiO2 光触媒層
14上の微小物体26が透明な場合にはチャネル状のポ
リイミド光導波路層74に沿って容易に移動させ、不透
明であったり反射する場合にはチャネル状のポリイミド
光導波路層74の上方から容易に排除することができ
る。
【0163】従って、この微小物体26がチャネル状の
ポリイミド光導波路層74の上方から局所的に除去すべ
き塵埃等である場合には、小さなエネルギーによって、
しかも外部からの力の補助を必要とせずにクリーニング
することができる。また、この微小物体26が微小部品
や高分子等のようなマニピュレートする対象である場合
には、微小物体26が透明になるように半導体レーザ1
6から出射される光の波長を選択することにより、微小
物体26を小さな光パワーを用いて移動させるマイクロ
ドラックカプセルのコンベアやセルソータ等に有効に応
用することができる。
【0164】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6のみならず、第2の光源としての半導体レーザ32a
もチャネル状のポリイミド光導波路層74の端面に密着
して設置されていることにより、これらの半導体レーザ
16、32aから出射された指向性の高い赤外線及び紫
外線は無駄なくチャネル状のポリイミド光導波路層74
に入射されるため、光吸収や光散乱による光量ロスもな
く、その放射圧30によって微小物体26を移動させる
エバネセント波24の生成やTiO2 光触媒層14の超
親水機能を発揮させるための活性化に半導体レーザ1
6、32aからの出射光の光パワーを極めて有効に利用
することができる。
【0165】しかも、チャネル型光導波路を構成するチ
ャネル状のポリイミド光導波路層74は、スラブ型光導
波路を構成するポリイミド光導波路層12よりも小さな
光パワーで同等の光強度のエバネセント波24を生成す
るため、上記第1〜第12の実施形態の場合と比較する
と、光の利用効率を高くすることができる。
【0166】更に、これらの半導体レーザ16、32a
は共に合成石英基板10等と一体になっていることか
ら、上記第2の実施形態の場合と同様に、光触媒装置を
更に小型化してその使用範囲を益々拡大することが可能
になると共に、美感を損なう恐れも殆どなくすことがで
きる。
【0167】(第14の実施形態)図14(a)は本発
明の第14の実施形態に係る光触媒装置を示す概略斜視
図であり、図14(b)は図14(a)の光触媒装置の
面図である。なお、上記図3及び図13の光触媒装置の
構成要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省
略する。本実施形態に係る光触媒装置においては、上記
図13の光触媒装置における合成石英基板10の代わり
に、上記図3の光触媒装置に示されるように、表面が紫
外線の波長のオーダーで平滑でない不透明なセラミック
基板34上に、赤外線及び紫外線を透過するバッファ層
36が積層されているものを用いる点に特徴がある。
【0168】即ち、図14(a)、(b)に示されるよ
うに、表面が紫外線の波長のオーダーで平滑でない不透
明なセラミック基板34上に、赤外線及び紫外線を透過
するバッファ層36が紫外線の波長のオーダーで平滑な
表面をもって形成され、このバッファ層36上に、バッ
ファ層36よりも屈折率の高いチャネル状のポリイミド
光導波路層74が形成され、このチャネル状のポリイミ
ド光導波路層74を挟むバッファ層36上に、チャネル
状のポリイミド光導波路層74よりも屈折率の低いポリ
イミド層76が形成されている。また、これらチャネル
状のポリイミド光導波路層74及びポリイミド層76上
には、超親水機能を有するアナターゼ型のTiO2 光触
媒層14が形成されている。
【0169】また、第1の光源としての半導体レーザ1
6がその射出開口をチャネル状のポリイミド光導波路層
74の一方の端面に密着して設置され、波長1.5μm
以上の赤外線(図示せず)をこのチャネル状のポリイミ
ド光導波路層74に出射するようになっている。
【0170】また、第2の光源としての半導体レーザ3
2aがその射出開口をチャネル状のポリイミド光導波路
層74の他方の端面に密着して設置され、波長400n
m以下の紫外線(図示せず)をこのチャネル状のポリイ
ミド光導波路層74に出射するようになっている。
【0171】そして、ここで、バッファ層36とチャネ
ル状のポリイミド光導波路層74とTiO2 光触媒層1
4と更にTiO2 光触媒層14に接する空気層とが順に
積層され、チャネル状のポリイミド光導波路層74の両
サイドがポリイミド層76に挟まれている構造は、半導
体レーザ16から出射される赤外線及び半導体レーザ3
2aから出射される紫外線に対する多層ステップ構造の
チャネル型光導波路が構成されている。
【0172】なお、図14(a)、(b)に示される光
触媒装置の動作は、合成石英基板10とチャネル状のポ
リイミド光導波路層74とTiO2 光触媒層14と空気
層とが順に積層され、チャネル状のポリイミド光導波路
層74の両サイドがポリイミド層76に挟まれている構
造の代わりに、バッファ層36とチャネル状のポリイミ
ド光導波路層74とTiO2 光触媒層14と空気層とが
順に積層され、チャネル状のポリイミド光導波路層74
の両サイドがポリイミド層76に挟まれている構造によ
って多層ステップ構造のチャネル型光導波路が構成さ
れ、このチャネル型光導波路構造のチャネル状のポリイ
ミド光導波路層74内を半導体レーザ16、32aから
出射される赤外線及び紫外線が伝搬する点を除くと、上
記図13(a)、(b)に示される第13の実施形態の
場合と基本的に同様であるため、その説明は省略する。
【0173】以上のように本実施形態によれば、第1及
び第2の光源としての半導体レーザ16、32aから出
射された赤外線及び紫外線を透過し且つチャネル状のポ
リイミド光導波路層74よりも屈折率の小さいバッファ
層36がセラミック基板34とチャネル状のポリイミド
光導波路層74及びポリイミド層76との間に形成さ
れ、チャネル状のポリイミド光導波路層74との間に平
滑な境界面を形成していることにより、このバッファ層
36やチャネル状のポリイミド光導波路層74を含む積
層構造がステップ型チャネル光導波路とみなされ、半導
体レーザ16、32aから出射された赤外線及び紫外線
をチャネル状のポリイミド光導波路層74内に伝搬させ
ることが可能になるため、セラミック基板22のように
光触媒の励起光を透過しない不透明なものや、その表面
が紫外線の波長のオーダーで平滑でないものを基板とし
て使用しても、上記第13の実施形態に係る光触媒装置
の場合と同様の効果を奏することができる。
【0174】なお、上記第1〜第14の実施形態におい
ては、第1の光源として波長1.5μm以上の赤外線1
8、44、54、64等を出射する半導体レーザ16を
使用しているが、半導体レーザ16に限定されるもので
なく、例えばこの代わりに、同様の赤外線を出射するL
EDを使用してもよい。
【0175】また、上記第1の実施形態においては、第
2の光源として波長400nm以下の紫外線22を出射
する水銀ランプ20を使用しているが、例えば自動車の
ウィンドウガラスやバックミラー等のように屋外で使用
するものに光触媒装置を応用する場合には、水銀ランプ
20の代わりに、紫外線を含む太陽光を使用してもよ
い。また、この水銀ランプ20は、合成石英基板10の
下方に設置されるが、合成石英基板10の上方に設置し
てもよい。
【0176】また、上記第2〜第14の実施形態におい
ては、第2の光源として波長400nm以下の紫外線7
0等を出射する半導体レーザ32a、32bを使用して
いるが、この代わりに、同様の紫外線を出射するLED
を使用してもよい。
【0177】また、上記第1〜第10の実施形態におい
て使用しているポリイミド光導波路層12の代わりに、
非酸化性のプラスチックを材料とする光導波路層を用い
てもよい。この場合、加工が容易であり、安価に製作す
ることが可能になり、誘電体等を使用するよりも応用範
囲が広くなるという利点がある。
【0178】また、上記第3、第5、第7、第10、及
び第14の実施形態においては、表面が紫外線の波長の
オーダーで平滑でない不透明なセラミック基板34を使
用する場合について説明したが、この他に、例えばポリ
マー基板のように屈折率が極めて高いものを使用する場
合にも、ポリイミド光導波路層12又はチャネル状のポ
リイミド光導波路層74よりも屈折率の小さいバッファ
層36を高屈折率のポリマー基板とポリイミド光導波路
層12との間に介在させることにより、半導体レーザ1
6から出射される赤外線及び半導体レーザ32a、32
bから出射される紫外線の双方に対する多モード4層ス
テップ構造のスラブ型光導波路又はチャネル型光導波路
を構成して、同様の効果を奏することができる。
【0179】同様に、上記第12の実施形態における表
面が紫外線の波長のオーダーで平滑でない不透明なセラ
ミック基板34の代わりに、例えばポリマー基板のよう
に屈折率が極めて高いものを使用する場合にも、低屈折
率のポリイミド光導波路層62aよりも屈折率の小さい
バッファ層72を高屈折率のポリマー基板と低屈折率の
ポリイミド光導波路層62aとの間に介在させることに
より、半導体レーザ16から出射される赤外線及び半導
体レーザ32aから出射される紫外線の双方に対する5
層ステップ構造のスラブ型光導波路を構成して、同様の
効果を奏することができる。
【0180】また、上記第8の実施形態において、紫外
線に対して透明で赤外線に対して不透明な基板60の代
わりに、例えば不透明なセラミック基板上に紫外線に対
して透明で赤外線に対して不透明で且つ低屈折率ポリイ
ミド光導波路層62aよりも屈折率の低いバッファ層が
積層されているものを用いてもよい。この場合、このバ
ッファ層と低屈折率ポリイミド光導波路層62aと高屈
折率ポリイミド光導波路層62bとTiO2 光触媒層1
4とからなる積層構造と更にTiO2 光触媒層14に接
する空気層とが、半導体レーザ32a、32bから出射
される紫外線に対する5層ステップ構造のスラブ型光導
波路を構成する。
【0181】
【発明の効果】以上、詳細に説明した通り、本発明に係
る光触媒装置によれば、次のような効果を奏することが
できる。即ち、請求項1に係る光触媒装置によれば、基
板上に面状の光導波路層及び光触媒層が順に積層された
構造であることにより、基板として第1の光源から出射
された所定の波長の光を透過し且つ表面がその出射光の
波長のオーダーで平滑なものを用いれば、この基板と光
導波路層と光触媒層と光触媒層とからなる積層構造と更
に光触媒層に接する空気層によって4層スッテプ構造の
スラブ型光導波路が構成されることになり、第1の光源
から光導波路層に出射された所定の波長の光を光導波路
層内を伝搬させ、その際に光触媒層の表面にエバネセン
ト波を生成することが可能になるため、このエバネセン
ト波の放射圧を光触媒層上の微小物体に作用させること
ができる。そして、このとき、第2の光源から出射され
た励起光によって光触媒層を照射し活性化することによ
り、光触媒層の親水機能を発揮させ、光触媒層の表面に
分子レベルの薄い水膜を形成することができる。こうし
て、光触媒層上の微小物体にエバネセント波の放射圧を
作用させる際、光触媒層の表面には分子レベルの薄い水
膜が形成されているため、この水膜の潤滑機能によって
光触媒層上の微小物体を光導波路層内の光の伝搬方向に
容易に移動することが可能になる。
【0182】従って、光触媒層上の微小物体が除去すべ
き塵埃であれば、光触媒層におる酸化分解機能のみを利
用する場合よりも小さなエネルギーによって、しかも雨
水など外部からの力の補助を必要とせずにクリーニング
することが可能になるため、この光触媒装置を種々のク
リーニング機構に有効に応用することができる。また、
光触媒層上の微小物体が微小部品や高分子等のようなマ
ニピュレートする対象であれば、小さな光パワーを用い
て移動させることが可能となるため、この光触媒装置は
マイクロドラックカプセルのコンベアやセルソータ等に
有効に応用することができる。
【0183】また、請求項2に係る光触媒装置によれ
ば、基板上にチャネル状の光導波路層及び光触媒層が順
に積層された構造であることにより、基板として第1の
光源から出射された光を透過し且つ表面がその出射光の
波長のオーダーで平滑なものを用いれば、基板と光導波
路層と光触媒層と光触媒層とからなる積層構造と更に光
触媒層に接する空気層によって多モード4層スッテプ構
造のチャネル型光導波路が構成されることになり、第1
の光源から光導波路層に出射された所定の波長の光を光
導波路層内を伝搬させ、その際に光触媒層の表面にエバ
ネセント波を生成することが可能になるため、このエバ
ネセント波の放射圧を光触媒層上の微小物体に作用させ
ることができる。ここで、チャネル型光導波路はスラブ
型光導波路よりも小さな光パワーで同等の強度のエバネ
セント波を生成するため、光触媒層上の微小物体が受け
る力は増大する。また、チャネル型光導波路において
は、光導波路層内を伝搬する所定の波長の光の強度分布
がチャネル型光導波路の中央部において最も高く、中央
部から離れるにつれて低くなるため、光触媒層上の微小
物体が光導波路層内を伝搬する所定の波長の光に対して
透明である場合には、光強度分布の高いチャネル型光導
波路の中央部に向かう方向に放射圧が作用し、逆に不透
明であったり反射する場合には、光強度分布の高いチャ
ネル型光導波路の中央部から離れる方向に放射圧が作用
する。そして、このとき、第2の光源から出射された励
起光によって光触媒層を照射し活性化することにより、
光触媒層の親水機能を発揮させ、光触媒層の表面に分子
レベルの薄い水膜を形成することができる。こうして、
光触媒層上の微小物体にエバネセント波の放射圧を作用
させる際、光触媒層の表面には分子レベルの薄い水膜が
形成されているため、光触媒層上の微小物体がエバネセ
ント波の放射圧によりチャネル状の光導波路層に沿って
移動したり、このチャネル状の光導波路層から排除され
るように移動したりするいずれの場合にも、水膜の潤滑
機能によって光触媒層上の微小物体の移動は極めて容易
になる。
【0184】従って、光触媒層上の微小物体がチャネル
状の光導波路層内を伝搬する所定の波長の光に対して不
透明であったり反射する場合には、雨水など外部からの
力の補助を必要とすることなく、光触媒層におる酸化分
解機能のみを利用する場合よりも又上記第1の実施形態
の場合よりも小さなエネルギーによりチャネル状の光導
波路層に沿って局所的にクリーニングすることが可能に
なるため、この光触媒装置を種々のクリーニング機構に
有効に応用することができる。また、光触媒層上の微小
物体がチャネル状の光導波路層内を伝搬する所定の波長
の光に対して透明である場合には、上記第1の実施形態
の場合よりも更に小さな光パワーを用いて、チャネル状
の光導波路層に沿って正確に移動させることが可能とな
るため、この光触媒装置はマイクロドラックカプセルの
コンベアやセルソータ等に有効に応用することができ
る。
【0185】また、請求項3に係る光触媒装置によれ
ば、光導波路層が非酸化性材料からなることにより、光
触媒層として例えばTiO2 光触媒層のように酸化力が
著しく大きいものを用いる場合であっても、光触媒層に
よって光導波路層が酸化されることを防止することが可
能になるため、光触媒装置の特性劣化を防止して、その
ライフタイムを長くすることができる。
【0186】また、請求項4に係る光触媒装置によれ
ば、第1の光源から出射された所定の波長の光を透過し
且つ光導波路層よりも屈折率の小さいバッファ層が基板
と光導波路層との間に介在していることにより、たとえ
基板が所定の波長の光を透過しない不透明なものであっ
ても、基板の表面がこの光の波長のオーダーで平滑でな
い場合であっても、この第1のバッファ層と光導波路層
と光触媒層とからなる積層構造と更に光触媒層に接する
空気層によって4層ステップ構造のスラブ型光導波路又
はチャネル型光導波路が構成されることになり、第1の
光源から光導波路層に出射された所定の波長の光を光導
波路層内に伝搬し、その際に光触媒層の表面に生成する
エバネセント波の放射圧を光触媒層上の微小物体に作用
させることが可能になるため、上記請求項1又は2に係
る光触媒装置の場合と同様の効果を奏することができ
る。
【0187】また、請求項5に係る光触媒装置によれ
ば、第1の光源が光導波路層の端面に密着して設置され
ていることにより、第1の光源から出射された所定の波
長の光は無駄なく光導波路層内に入射されるため、その
放射圧により光触媒層上の微小物体を移動させるエバネ
セント波の生成に光パワーを極めて有効に利用すること
ができる。また、第1の光源が基板等と一体になってい
ることから、第1の光源を独立して設置するスペースが
不必要となり、装置全体としても小型化されるため、光
触媒装置の使用範囲が拡大されると共に、美感を損なう
恐れも殆どなくなる。
【0188】また、請求項6に係る光触媒装置によれ
ば、第1の光源が光ファイバを介して光導波路層の端面
に光学的に接続されていることにより、上記請求項5に
係る光触媒装置の場合とほぼ同様の効果を奏することが
できる。そして、この場合には、第1の光源を独立して
設置するスペースの制約を小さくすることができる。
【0189】また、請求項7に係る光触媒装置によれ
ば、第2の光源から出射された励起光が光導波路層に入
射され、この光導波路層内を伝搬する際の励起光の漏洩
光によって光触媒層を照射することにより、基板として
第2の光源から出射された励起光を透過し且つ表面がそ
の出射光の波長のオーダーで平滑なものを用いれば、基
板と光導波路層と光触媒層と光触媒層とからなる積層構
造と更に光触媒層に接する空気層によって4層スッテプ
構造のスラブ型光導波路又はチャネル型光導波路が構成
されることになり、第2の光源から光導波路層に出射さ
れた励起光を光導波路層内に伝搬させ、その際の漏洩光
によって光触媒層を裏面全体から照射し活性化すること
が可能になるため、光触媒層の親水機能を発揮させて光
触媒層の表面に分子レベルの薄い水膜を形成することが
でき、上記請求項1又は2に係る光触媒装置の場合とほ
ぼ同様の効果を奏することができる。しかも、このと
き、光触媒層の照射光は光触媒層内を長い距離にわたっ
て透過していくため、光触媒層はその全体において高効
率に活性化され、その親水機能がより効果的に発揮され
ることになり、光触媒層上の塵埃などをより小さなエネ
ルギーによってクリーニングすることができ、光触媒層
上の微小部品や高分子等をより小さな光パワーを用いて
マニピュレートすることができる。
【0190】また、請求項8に係る光触媒装置によれ
ば、第2の光源が光導波路層の端面に密着して設置され
ていることにより、第2の光源から出射された励起光は
無駄なく光導波路層内に入射されるため、光導波路層を
介して光触媒層をその裏面から照射して活性化するため
に光パワーを極めて有効に利用することができる。ま
た、光触媒の励起光として紫外光を使用する場合であっ
ても、第2の光源から光導波路層を経て光触媒層に至る
過程は光触媒の励起光が装置内に閉じ込められる構造と
なっており、励起光が外部に漏れることはなくなるた
め、例えばテレビのブラウン管面や自動車のフロントガ
ラスやのように人が見たり近くに居る時間が長いものに
光触媒装置を用いても、人体に悪影響を及ぼし、特に皮
膚癌の発生原因となるという心配はなくなる。更に、第
2の光源が基板等と一体になっていることから、第2の
光源を独立して設置するスペースが不必要となり、装置
全体としても小型化されるため、光触媒装置の使用範囲
が拡大されると共に、美感を損なう恐れも殆どなくな
る。
【0191】また、請求項9に係る光触媒装置によれ
ば、第2の光源が光ファイバを介して光導波路層の端面
に光学的に接続されていることにより、上記請求項8に
係る光触媒装置の場合とほぼ同様の効果を奏することが
できる。そして、この場合には、第2の光源を独立して
設置するスペースの制約は小さくなる。
【0192】また、請求項10に係る光触媒装置によれ
ば、光導波路層が基板に接する第1の光導波路層と光触
媒層に接する第2の光導波路層との2層構造になってお
り、第1の光導波路層の屈折率は第2の光導波路層の屈
折率より低く、第1の光導波路層の厚さは第2の光導波
路層の厚さより厚く、基板が第2の光源から出射された
励起光に対して透明であり、第1の光源から出射された
所定の波長の光に対して不透明であることにより、基板
と第1の光導波路層と第2の光導波路層と光触媒層と空
気層とからなる積層構造が第1の光源から出射された所
定の波長の光に対する5層スッテプ構造のスラブ型光導
波路又はチャネル型光導波路が構成されることになり、
第2の光源から光導波路層に出射された励起光を第2の
光導波路層より厚い第1の光導波路層内に主要に伝搬さ
せることが可能になるため、光触媒層に入射される励起
光の光量を相対的に小さくして、光触媒層における光吸
収による減衰を抑制し、大面積の光触媒層であっても光
触媒層全体を均一に活性化することが可能になる。従っ
て、その親水機能により大面積の光触媒層の表面全体に
分子レベルの薄い水膜を均一に形成することができ、光
触媒層上の微小物体に対するクリーニング機能やマニピ
ュレーション機能を更に容易に発揮させることができ
る。なお、このとき、第1の光導波路層と第2の光導波
路層と光触媒層と空気層とからなる積層構造によって第
1の光源から出射された所定の波長の光に対する4層ス
ッテプ構造のスラブ型光導波路が構成され、この所定の
波長の光は第1の光導波路層より薄い第2の光導波路層
内を主要に伝搬することになるが、光触媒層の表面に生
成されるエバネセント波は吸収による減衰がないため、
この微小物体に作用する放射圧が弱くなることはない。
【0193】また、請求項11に係る光触媒装置によれ
ば、第2の光源から出射された励起光が入射された光導
波路層の端面に対向する光導波路層の端面に、光導波路
層内を伝搬してきた励起光を反射するためのミラーが設
置されていることにより、光導波路層内を伝搬してきた
励起光はこのミラーによって反射され、再び光導波路層
内を戻っていくため、励起光の光量ロスを少なくするこ
とができる。また、光導波路層内を一回伝搬する間だけ
で励起光を吸収する必要がなくなり、伝搬中の励起光の
吸収を小さくして減衰を抑制することが可能になるた
め、大面積の光触媒層であっても光触媒層に入射される
励起光の強度を面内において一様にすることができる。
従って、大面積の光触媒層であっても光触媒層全体を均
一に活性化し、その親水機能により大面積の光触媒層の
表面全体に分子レベルの薄い水膜を均一に形成すること
ができるため、光触媒層上の微小物体に対するクリーニ
ング機能やマニピュレーション機能を更に容易に発揮さ
せることができる。
【0194】また、請求項12に係る光触媒装置によれ
ば、第1の光源から出射された所定の波長の光及び第2
の光源から出射された励起光の双方に対して透明であり
且つ光導波路層よりも屈折率の小さいバッファ層が基板
と光導波路層との間に介在していることにより、このバ
ッファ層と光導波路層と光触媒層と空気層とからなる積
層構造が4層スッテプ構造のスラブ型光導波路又はチャ
ネル型光導波路が構成されることになり、たとえ基板が
第1及び第2の光源から出射された光を透過しない不透
明なものであっても、基板の表面がこれらの光の波長の
オーダーで平滑でない場合であっても、上記第7の実施
形態に係る光触媒装置の場合と同様の効果を奏すること
ができる。
【0195】また、請求項13に係る光触媒装置によれ
ば、光導波路層が基板に接する第1の光導波路層と光触
媒層に接する第2の光導波路層との2層構造になってお
り、第1の光導波路層の屈折率は第2の光導波路層の屈
折率より低く、第1の光導波路層の厚さは第2の光導波
路層の厚さより厚く、バッファ層が第2の光源から出射
された励起光に対して透明であり、第1の光源から出射
された所定の波長の光に対して不透明であることによ
り、バッファ層と第1の光導波路層と第2の光導波路層
と光触媒層と空気層とからなる積層構造が第1の光源か
ら出射された所定の波長の光に対する5層スッテプ構造
のスラブ型光導波路又はチャネル型光導波路が構成され
ることになり、たとえ基板が第1及び第2の光源から出
射された光を透過しない不透明なものであっても、基板
の表面がこれらの光の波長のオーダーで平滑でない場合
であっても、上記第10の実施形態に係る光触媒装置の
場合と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光触媒装置を示
す概略斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光触媒装置を示
す概略斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る光触媒装置を示
す概略斜視図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る光触媒装置を示
す概略斜視図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る光触媒装置を示
す概略斜視図である。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る光触媒装置を示
す概略斜視図である。
【図7】本発明の第7の実施形態に係る光触媒装置を示
す概略斜視図である。
【図8】本発明の第8の実施形態に係る光触媒装置を示
す概略斜視図である。
【図9】本発明の第9の実施形態に係る光触媒装置を示
す概略斜視図である。
【図10】本発明の第10の実施形態に係る光触媒装置
を示す概略斜視図である。
【図11】本発明の第11の実施形態に係る光触媒装置
を示す概略斜視図である。
【図12】本発明の第12の実施形態に係る光触媒装置
を示す概略斜視図である。
【図13】(a)は本発明の第13の実施形態に係る光
触媒装置を示す概略斜視図であり、(b)は(a)の光
触媒装置の断面図である。
【図14】(a)は本発明の第14の実施形態に係る光
触媒装置を示す概略斜視図であり、(b)は(a)の光
触媒装置の断面図である。
【符号の説明】
10…合成石英基板、12…ポリイミド光導波路層、1
4…アナターゼ型のTiO2 光触媒層、16…半導体レ
ーザ、18…波長1.5μm以上の赤外線、20…水銀
ランプ、22…波長400nm以下の紫外線、24…エ
バネセント波、26…微小物体、28…ミー散乱光、3
0…放射圧、32a、32b…半導体レーザ、34…セ
ラミック基板、36…バッファ層、38…レンズ、4
0、40a、40b、40c…光ファイバ、42…分岐
カップラ、44…赤外線、46a、46b…レンズ、4
8a、48b…光ファイバ、50…光ファイバ束、52
…光ファイバシート、54…赤外線、56a、56b…
光ファイバ束、58a、58b…光ファイバシート、6
0…紫外線に対して透明で赤外線に対して不透明な基
板、62a…低屈折率ポリイミド光導波路層、62b…
高屈折率ポリイミド光導波路層、64…赤外線、66…
紫外線、68…ミラー、70…紫外線、72…紫外線に
対して透明で赤外線に対して不透明なバッファ層、74
…チャネル状のポリイミド光導波路層、76…ポリイミ
ド層。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と、 前記基板上に面状に形成された光導波路層と、 前記光導波路層上に形成された光触媒層と、 前記光導波路層に所定の波長の光を出射する第1の光源
    と、 前記光触媒層に励起光を照射するための第2の光源と、
    を有し、 前記第2の光源から出射された励起光によって前記光触
    媒層を照射して活性化すると共に、前記第1の光源から
    出射された所定の波長の光が前記光導波路層内を伝搬す
    る際の放射圧によって前記光触媒層上の微小物体を移動
    させることを特徴とする光触媒装置。
  2. 【請求項2】 基板と、 前記基板上にチャネル状に形成された光導波路層と、 前記光導波路層上に形成された光触媒層と、 前記光導波路層に所定の波長の光を出射する第1の光源
    と、 前記光触媒層に励起光を照射するための第2の光源と、
    を有し、 前記第2の光源から出射された励起光によって前記光触
    媒層を照射して活性化すると共に、前記第1の光源から
    出射された所定の波長の光が前記光導波路層内を伝搬す
    る際の放射圧によって前記光触媒層上の微小物体を移動
    させることを特徴とする光触媒装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の光触媒装置にお
    いて、 前記光導波路層が、非酸化性材料からなることを特徴と
    する光触媒装置。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2に記載の光触媒装置にお
    いて、 前記第1の光源から出射された所定の波長の光に対して
    透明であり且つ前記光導波路層よりも屈折率の小さいバ
    ッファ層が、前記基板と前記光導波路層との間に介在し
    ていることを特徴とする光触媒装置。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2に記載の光触媒装置にお
    いて、 前記第1の光源が、前記光導波路層の端面に密着して設
    置されていることを特徴とする光触媒装置。
  6. 【請求項6】 請求項1又は2に記載の光触媒装置にお
    いて、 前記第1の光源が、光ファイバを介して前記光導波路層
    の端面に光学的に接続されていることを特徴とする光触
    媒装置。
  7. 【請求項7】 請求項1又は2に記載の光触媒装置にお
    いて、 前記第2の光源から出射された励起光が、前記光導波路
    層に入射され、前記光導波路層内を伝搬する際の励起光
    の漏洩光によって前記光触媒層を照射することを特徴と
    する光触媒装置。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の光触媒装置において、 前記第2の光源が、前記光導波路層の端面に密着して設
    置されていることを特徴とする光触媒装置。
  9. 【請求項9】 請求項7記載の光触媒装置において、 前記第2の光源が、光ファイバを介して前記光導波路層
    の端面に光学的に接続されていることを特徴とする光触
    媒装置。
  10. 【請求項10】 請求項7記載の光触媒装置において、 前記光導波路層が、前記基板に接する第1の光導波路層
    と前記光触媒層に接する第2の光導波路層との2層構造
    になっており、前記第1の光導波路層の屈折率は前記第
    2の光導波路層の屈折率より低く、前記第1の光導波路
    層の厚さは前記第2の光導波路層の厚さより厚く、 前記基板が、前記第2の光源から出射された励起光に対
    して透明であり、前記第1の光源から出射された所定の
    波長の光に対して不透明であることを特徴とする光触媒
    装置。
  11. 【請求項11】 請求項7記載の光触媒装置において、 前記第2の光源から出射された励起光が入射される前記
    光導波路層の端面に対向する前記光導波路層の端面に、
    前記光導波路層内を伝搬してきた励起光を反射するため
    のミラーが設置されていることを特徴とする光触媒装
    置。
  12. 【請求項12】 請求項7記載の光触媒装置において、 前記第1の光源から出射された所定の波長の光及び前記
    第2の光源から出射された励起光の双方に対して透明で
    あり且つ前記光導波路層よりも屈折率の小さいバッファ
    層が、前記基板と前記光導波路層との間に介在している
    ことを特徴とする光触媒装置。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の光触媒装置におい
    て、 前記光導波路層が、前記基板に接する第1の光導波路層
    と前記光触媒層に接する第2の光導波路層との2層構造
    になっており、前記第1の光導波路層の屈折率は前記第
    2の光導波路層の屈折率より低く、前記第1の光導波路
    層の厚さは前記第2の光導波路層の厚さより厚く、 前記バッファ層が、前記第2の光源から出射された励起
    光に対して透明であり、前記第1の光源から出射された
    所定の波長の光に対して不透明であることを特徴とする
    光触媒装置。
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