JP2000325799A - 光触媒装置 - Google Patents

光触媒装置

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JP2000325799A
JP2000325799A JP11139512A JP13951299A JP2000325799A JP 2000325799 A JP2000325799 A JP 2000325799A JP 11139512 A JP11139512 A JP 11139512A JP 13951299 A JP13951299 A JP 13951299A JP 2000325799 A JP2000325799 A JP 2000325799A
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Japan
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photocatalyst
optical waveguide
light
layer
photocatalytic
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JP11139512A
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Shinichi Mizuno
真一 水野
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Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光源からの光パワーを有効に利用して、光触
媒作用を安定かつ高効率に発揮させる光触媒装置を提供
すること。 【解決手段】 透明な合成石英(又はガラス)基板1上
に、Ta2 5 からなる光導波路2が形成されており、
この光導波路2上に、TiO2 からなる光触媒層3が形
成されている。この光触媒層3は、厚さ100nm以
下、例えば20nmに形成されている。また、光源とし
てのGaNからなる半導体レーザ4の光出射側は、光フ
ァイバー束5に結合され、この光ファイバー束5が一列
状のシート6に配列され、光導波路2の光入射端面に密
着されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光励起によって触
媒作用を呈する光触媒層を有する光触媒装置に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】光の照射によって励起され、触媒作用を
発揮する光触媒材料として、二酸化チタン、酸化タング
ステン、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム、酸化亜
鉛、硫化亜鉛、酸化錫が知られているが、その優れた酸
化分解機能、防汚機能、親水機能などから、特に二酸化
チタン(TiO2 )が注目されている。
【0003】このような光触媒材料を用いた光触媒装置
は、その用途に応じて種々の構造を有しているが、通
常、図9に示すように、例えばガラス、プラスチック等
からなる基板81上に、TiO2 光触媒層83を形成
し、その上方から紫外線等の光触媒の励起光87が照射
されるように構成されている。
【0004】TiO2 光触媒層83に光触媒の励起光8
7が照射されると、光触媒層83内で光電効果によって
電子が励起されて電子と正孔(ホール)が発生し、Ti
2光触媒層73表面に移動する。電子は空気中の酸素
を還元してスーパーオキサイドイオン(O2 - )に変
え、正孔は表面の水分(吸着水)を分解して水酸基ラジ
カル(・OH)に変える。これらのスーパーオキサイド
イオンと水酸基ラジカルは活性酸素種と呼ばれ、強力な
酸化作用を示す。
【0005】この結果、TiO2 光触媒層83に有機系
の汚れが付着すると、スーパーオキサイドイオンが有機
化合物の炭素と反応し、水酸基ラジカルが有機化合物の
水素と反応して、有機化合物を分解する。このような分
解過程で上記の炭素と水素はそれぞれ酸化され、二酸化
炭素と水に変化する。こうして、有機物の酸化分解機
能、防汚機能(浄化作用)が発揮される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の光触媒
装置においては、TiO2 光触媒層83を照射する光触
媒の励起光70として、例えば紫外線を含む太陽光や室
内光、又は専用の人工光源から出射された紫外線等が使
用される。
【0007】しかしながら、このような構造では、光触
媒装置の外部に光源が配置されて、励起光70を垂直方
向から入射させているため、光源とTiO2 光触媒層8
3との間に存在する空気や水などの媒質に光触媒の励起
光70が光吸収されたり、光散乱されたりして、TiO
2 光触媒層83に到達するまでに光触媒の励起光87が
減衰してしまうことがある。従って、光源からの光パワ
ーを有効に利用することができない。
【0008】また、光触媒の励起光87として太陽光を
利用する場合、屋外においては天候によって太陽光の照
射強度が大きく左右され、屋内においては太陽光が遮蔽
されるか又は減少することから、TiO2 光触媒層83
の光触媒作用が安定して発揮されない。
【0009】また、例えば光触媒の励起光87の光源と
して蛍光ランプの如き指向性のない光源を使用する場合
には、TiO2 光触媒層83を照射しないで散逸してし
まう光があるため、光源からの光パワーを有効に利用す
ることができない。
【0010】更に、光触媒の効率を高めるためには光触
媒層83の厚さを厚くして光吸収率を高くする必要があ
る。光触媒層83が厚いとき、その表面下の深い位置で
酸化チタンが励起されて生成した電子と正孔は、光触媒
の活性に寄与するためには表面まで移動して表面に活性
な酸素や水酸基を生成する必要があるが、この移動過程
で電子と正孔が再結合して消滅する確率が高くなるの
で、光触媒としての活性化率が低下し易い。
【0011】他方、上記の問題点を解消できる光触媒装
置として、光導波路上に光触媒をコーティングして、光
導波路内で導かれる導波光の漏れ光で光触媒を励起する
構造も報告されている。しかしながら、光触媒層中での
電子、正孔の再結合による効率の低下については何ら考
慮されていない。
【0012】しかも、光触媒層が厚くなると、光触媒層
の不均一性、表面の凹凸が大きくなるので、大きな光散
乱が発生する。このため、光導波路上に光触媒をコート
した場合、光散乱による導波光の減衰が大きいため、光
エネルギーの損失が大きい。
【0013】そこで、本発明の目的は、上記した従来の
問題点を克服し、光源からの光パワーを有効に利用し、
光触媒作用を安定かつ高効率に発揮させることができる
光触媒装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、光導波
路と、前記光導波路上に形成された光触媒層とを有し、
前記光触媒層が100nm以下の厚みに形成されている
光触媒装置、及び、前記光導波路内に光触媒の励起光を
入射させる光源を更に有する光触媒装置に係るものであ
る。
【0015】本発明の光触媒装置によれば、光導波路上
に光触媒層が形成されているので、基板として、光触媒
の励起光を透過しかつ表面が光触媒の励起光の波長のオ
ーダーで平滑なものを用いれば、基板、光導波路及び光
触媒層からなる積層構造と、更に光触媒層に接する空気
層とによって多モードの4層構造のステップ型スラブ光
導波路装置とみなされる。従って、光源から光導波路に
入射した光触媒の励起光は光導波路内を伝搬すると共
に、その伝搬中に光導波路から漏洩して光触媒層を裏面
全体から照射し、更にその照射光は光触媒層内を十分に
透過するため、光触媒層はその全体において高効率に活
性化される。
【0016】また、光源から出射された光触媒の励起光
は無駄なく光導波路内に入射されると共に、光源と光触
媒層との間に空気や水などの媒質が存在せず、こうした
媒質による光吸収や光散乱のために生じる光量ロスもな
くせるために、光源からの光パワーが極めて有効に利用
される。また、光触媒の励起光が伝搬する光導波路の材
料として、光触媒の励起光の光吸収の小さなものを選択
すれば、この光導波路における光吸収による光量ロスも
低減される。
【0017】また、光触媒の励起光として太陽光を利用
する場合のように外部環境によって左右されることはな
く、光触媒層における光触媒作用が安定して発揮され
る。
【0018】また、光触媒の励起光として紫外光を使用
する場合であっても、光源から光導波路を経て光触媒層
に至る過程は光触媒の励起光が装置内に閉じ込められる
構造となっており、光触媒層の表面に付着した塵などに
よる散乱光以外には励起光が外部に漏れることはなくな
るため、たとえテレビジョン受像機のブラウン管面や自
動車のフロントガラスのように、人が見たり、近くに居
る時間が長いものに光触媒装置を用いても、人体に悪影
響を及ぼし、特に皮膚癌の発生原因となるという心配は
なくなる。
【0019】本発明の光触媒装置は更に、光触媒層の厚
さが、従来とは異なって100nm以下(好ましくは、
例えば10nm)と非常に薄くしているので、光触媒層
内で、光による励起で生じた電子と正孔が光触媒層の表
面まで移動する距離が短くなり、再結合によって消滅す
る確率が小さくなる。従って、光エネルギーのロスが小
さく、このため、パワーの小さい半導体レーザやLED
(発光ダイオード)などの光源を用いても触媒作用を発
揮でき、省エネルギーにもなる。そして、光触媒層の厚
さが薄い方が光散乱の小さい薄膜を作りやすいので、光
エネルギーのロスが更に小さくなる。
【0020】これに加えて、光触媒層を厚さ100nm
以下と薄膜化することによって、可視光で励起される光
触媒を使用しても、全体として光学的に透明な光触媒コ
ート基板を得ることができる。これまで、紫外光で励起
され、可視光に対しては透明な酸化チタンしか使用でき
なかった自動車のバックミラー等の如く透明性が要求さ
れる用途にも、酸化鉄やフラーレンを使用できるように
なる。
【0021】また、光触媒としての酸化チタン等の光触
媒層を上記のように薄くすることによって、量子サイズ
効果によって光触媒活性が高くなる。そして光導波路上
に光触媒をコートした場合、光触媒膜の均一性、表面の
平坦化が十分となるので、光散乱による導波光の減衰が
小さくなり、光エネルギーの損失が小さくなる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の光触媒装置において、酸
化チタン等の光触媒を単分子層にすれば、例えば光触媒
活性が粉末酸化チタン触媒(ルチル)と比較して数10
0倍も高くなる。従って、光触媒層が上記したように薄
くしたことによる光吸収及び光励起の低下の問題は、光
触媒活性の著しい向上によって完全に解消され、触媒作
用がむしろ向上する。
【0023】酸化チタン光触媒に関しては、単分子層化
することにより光触媒活性が著しく向上することが知ら
れている。固定化担持光触媒材料、例えば固定化担持酸
化チタンは配位不飽和な状態にある分子状の酸化チタン
種である。特に、高分散な状態にあるこのような固定化
担持酸化チタンは吸収光エネルギーの失活が小さく、ま
た、光励起による活性種の反応性が特異的で高いという
特徴がある。このように高分散な固定化担持酸化チタン
は反応性が特異的で高いが、一般的に、酸化チタン以外
の高分散な分子状酸化物光触媒でも、従来のバルク触媒
では見られない特異な光触媒活性を示す。これらの例と
しては、例えば文献1:安保正一及び野村幸生「表面」
30(1991)253の表1、及び、文献2:安保正
一「触媒」33(1991)221のTable1に示
された光触媒反応がある。
【0024】本発明の光触媒装置では、単分子層の光吸
収が小さいために励起効率が低く、結果としてその高い
活性を生かせなかった従来技術の状況において、そのよ
うな単分子層でもその高い光触媒活性を効果的に生かす
ことにより、その問題点の影響を弱め、実用可能な光触
媒装置を実現できたのである。
【0025】また、上記光触媒層の下層として高屈折率
の薄膜を形成することによって、光導波路から光触媒層
に励起光を強力に集光することができる。
【0026】また、光触媒層又は/及び光導波路に3次
元、2次元又は1次元のグレーティングを形成すれば、
フォトニックバンドを形成し、光導波路に励起光を閉じ
込めることによって、光触媒層を強力に励起できる。こ
れと同様の効果は、光入射面以外を光反射膜で覆い、光
反射によって励起光を光導波路内に閉じ込めることによ
っても、得ることができる。
【0027】また、光導波路内の導波光のモードを表す
光線が光源側から光導波路との界面へ入射する入射角を
大きくすることによって、光触媒層から基板の外方への
エバネセント波のしみ出しを小さくし、外部の空気や溶
液による励起光の散乱や吸収(エネルギーの損失)を小
さくすることができる。このように界面への入射角を大
きくするためには、光導波路端面への入射光束の開口数
NAを小さくする等の方法がある。
【0028】光源は光導波路の端面に密着して設ける
か、或いは光源の出射光が光ファイバー又はそのシート
状集合体を介して光導波路に導くことにより、光源から
の出射光は一層無駄なく光導波路内に入射する。また、
光源が基板や光触媒層と一体化されると、光源を独立し
て設置するスペースが不要となり、装置全体としても小
型化されるため、光触媒装置の使用範囲が拡大されると
共に、美感を損なうおそれも殆どなくなる。
【0029】以下、本発明の好ましい実施の形態の具体
例を図面について説明する。
【0030】第1の実施の形態 図1及び図2は、本発明の第1の実施形態による光触媒
装置を示すものである。
【0031】本実施の形態による光触媒装置10におい
ては、透明な合成石英(又はガラス)基板1上に、Ta
2 5 からなる光導波路2が形成されており、この光導
波路2上に、アナターゼ型のTiO2 からなる光触媒層
3が形成されている。この光触媒層3は、本発明に基づ
いて厚さ100nm以下、例えば20nmに形成されて
いる。また、光源としてのGaNからなる半導体レーザ
4の光出射側は、光ファイバー束5に結合され、この光
ファイバー束5が一列状のシート6に配列され、光導波
路2の光入射端面に密着されている。
【0032】ここで、合成石英基板1の屈折率は1.
5、Ta2 5 光導波路2の屈折率は1.9〜2.2、
TiO2 光触媒層3の屈折率は2.5である。このた
め、基板1と光導波路2と光触媒層3とからなる積層構
造と、更にこの光触媒層3に接する空気層とによって4
層構造のステップ型スラブ光導波路とみなすことができ
る。
【0033】また、TiO2 光触媒層3は、その厚さが
100nm以下と非常に薄いが、触媒活性が高く、また
ゾルゲル法により成膜したTiO2 光触媒層3は超微粒
子が堆積されたものであるが、厚さが小さいために光散
乱が小さく、光損失が小さい。
【0034】また、光導波路2の厚さは、光触媒層3の
厚さよりも厚くする。このことにより、光導波路2内に
光触媒の励起光7を伝搬させる場合に、光導波路2にお
ける光量が相対的に大きくなると共に、光触媒層3に入
射する光触媒の励起光の光量が相対的に小さくなる。
【0035】なお、光導波路2は、CVP(Chemi
cal Vapor Deposition)法やスパ
ッタ法によって成膜してよい。また、光触媒層3は、ゾ
ルゲル法等によって成膜してよい。
【0036】次に、本実施の形態による光触媒装置10
の動作を説明すると、光導波路2の端面には、半導体レ
ーザ4からレンズ、光ファイバー束5及び光ファイバー
シート6を介して、光触媒層3のバンドギャップに相当
する波長の光(即ち、波長約400nmの光)を光触媒
の励起光7として入射させる。半導体レーザ4と光導波
路2は光ファイバーで結合するが、光ファイバーは光源
側部分が円柱状5に束ねられ、光導波路側部分がシート
状6に並べられる。射出側の光ファイバーシート6は光
導波路2の端面に接着固定され、光ファイバーシート6
の射出光は直接に光導波路2に入射するが、この光ファ
イバーシート6の端面が線状であるため、導波光7の強
度は基板面内で均一になる。
【0037】この導波光(励起光)7は、全体が4層構
造のステップ型スラブ光導波路とみなされる光導波路2
内を矢印の方向に伝搬する。
【0038】光導波路2に入射された励起光7の伝搬を
より具体的に説明すると、この励起光は、光触媒層3と
外部の空気層との境界面、及び光導波路2と基板1との
境界面において全反射を繰り返しながら、光導波路2内
を進行する。また、この光導波路2内を伝搬する励起光
7は、光吸収等による減衰が無視できる程度であって十
分な距離に亘って透過することが可能である。
【0039】そして、その際の光導波路2からの漏洩光
が光触媒層3に入射する。即ち、光触媒層3は、光導波
路2に接する裏面全体から波長約400nmの励起光に
よって照射され、この励起光を吸収して活性化される。
これによって、光触媒層3の光触媒作用により、有機物
の酸化分解機能や防汚機能を発揮する。
【0040】この光触媒層3の活性化とその触媒作用を
詳しく説明すると、酸化チタン(TiO2 )光触媒で
は、波長が400nm以下の励起光を照射することによ
って電子と正孔が生成する。このうち、電子は格子のT
4+に捕獲されてTi3+になり、このTi3+は酸素O2
と反応してO2 - を生成する。また正孔は、格子酸素イ
オンO2-で捕獲されて、反応性の高いO- 種を生成し、
さらに、表面に吸着水が存在すると、OH- イオンと反
応してOHラジカルを生成する。これらのO2 -やO-
種、OHラジカルを活性種として光触媒反応が誘起され
る。
【0041】このように光触媒を励起するため、図1及
び図2のように光導波路2の表面に光触媒層3をコート
し、その導波光7で光触媒を励起するが、光導波路2を
使用することによって、励起光7が光源から光触媒まで
到達する間に途中の媒質、特に光触媒で浄化しようとし
ている液体や気体によって吸収されることがなくなり、
光量ロスが減少する。また、太陽光を用いる場合のよう
に外部環境に左右されることなく、安定した動作が可能
となる。また、光触媒の励起光が外部に漏れることが少
なくなるため、テレビジョン受像機のブラウン管面や自
動車のフロントガラスに用いても、人体に悪影響を及ぼ
し、特に皮膚癌の発生原因となることはなく、ブラウン
管などに埋め込むことが可能になり、光触媒装置が小型
化され、美感を損なうこともない。
【0042】一般に、光導波路を使用する場合であって
も使用しない場合であっても、光触媒の活性度を高くす
るためには光触媒層の膜厚を厚くすることで励起光の吸
収率を大きくし、吸収光量を大きくして電子と正孔を大
量に発生させている。このとき、光触媒層の表面より下
層の部分で発生する電子と正孔は、光触媒の活性に寄与
するために表面まで移動して、表面に活性な酸素や水酸
基を生成するものと考えられている。しかしこの表面ま
で移動する過程で、電子と正孔が再結合して消滅する確
率が高くなるので、光触媒としての活性化率が低下する
ものと考えられる。
【0043】しかし、光導波路の層厚を薄くするなら
ば、強い光強度で励起光を光触媒に照射でき、光散乱が
減少する。従って、光触媒を強力に励起できるので、本
実施の形態のように薄い光触媒層3であっても、励起電
子と正孔を大量に生成でき、さらに、薄い光触媒層3の
中では表面まで電子と正孔が移動する距離が短いので、
移動過程で再結合して消滅する確率は小さい。従って、
光エネルギーの損失を小さくできるので、光触媒の活性
化率が低下しない。光導波路を使用しない場合に比べ
て、更には光触媒層3を厚くした場合に比べて、低パワ
ーの光源で同等な光触媒能力を得ることができる。
【0044】こうした効果を得る上で、光触媒層3を構
成するTiO2 膜はゾルゲル法等によってTiO2 超微
粒子をコーティングして成膜されるに際し、TiO2
は超微粒子の粒径(特に1〜20nm:これは表面積大
にして量子サイズ効果に優れる。)よりも十分に厚けれ
ばよいが、約100nmの厚さまでは光散乱が小さく、
導波光が減衰せずに長い距離を伝搬できるので、散乱に
よる光エネルギーの損失を小さくするためにも、これ以
下の膜厚が望ましい。なお、使用可能な光触媒は、酸化
チタンに限らず、フラーレンや酸化鉄も使用できる。
【0045】これに加えて、光触媒層3を厚さ100n
m以下と薄膜化することによって、可視光で励起される
光触媒を使用しても、全体として光学的に透明な光触媒
コート基板を得ることができる。これまで、紫外光で励
起され、可視光に対しては透明な酸化チタンしか使用で
きなかった自動車のバックミラー等の如く透明性が要求
される用途にも、酸化鉄やフラーレンを使用できるよう
になる。
【0046】また、光触媒としての酸化チタン等の光触
媒層3を上記のように薄くすることにより、量子サイズ
効果で光触媒活性が高くなる。そして、光導波路2上に
光触媒をコートした場合、光触媒層3の均一性、表面の
平坦化が十分となるので、光散乱による導波光の減衰が
小さくなり、光エネルギーの損失が小さくなる。
【0047】第2の実施の形態 図3は、本発明の第2の実施の形態による光触媒装置を
示すものである。
【0048】本実施の形態による光触媒装置20は、上
述の第1の実施の形態において上述と同様の光導波路2
2上に、分子サイズの固定化担持酸化チタンからなる光
触媒層23を形成したものである。この光触媒層23を
構成する酸化チタン(TiO2 )は、その配位状態が一
定のものである。
【0049】この固定化担持酸化チタンは、合成石英や
Porous Vycor Glass(PVG)上
で、次式のように水酸基と塩化チタンTiCl4 を反応
させて生成され、酸化チタンを固定化担持した単分子膜
として知られている〔文献3:M.Anpo,N.Aikawa,Y.kubo
kawa,C.Louis,E.Giamello,M.Che:J.Phys.Chem.89(1985)
5017〕。 m(Si−OH)+TiCl4 (g)→(Si−O−)
m TiCl4-m +mHCl (Si−O−)m TiCl4-m +(4−m)H2
(g)→(Si−O−)m Ti(OH)4-m なお、固定化担持する分子サイズの光触媒は、TiO2
ばかりではなく、Fe2 3 、V2 5 、MoO3 、N
2 5 、CuMoO4 、Mo(CO)6 、W(CO)
6 、ZnS−CdS、NiS−WS2 、CoO、Cr2
3 、NiO、CuO、CrO3 、WO3 、NiO、C
r(CO)6 、Fe(CO)5 、Ru3(CO)12、C
dS等であってもよい。
【0050】このような、固定化担持酸化チタンは、実
際には、光導波路22上に固定化担持されるが、光導波
路22を構成するTa2 5 も上記と同様に表面に吸着
基(OH)を有しているため、同様にして光導波路22
上に固定化担持され、光触媒層23を形成する。
【0051】このような固定化担持酸化チタンを光触媒
層23に用いることによって、その高触媒活性により、
上述した第1の実施の形態で述べた効果に加えて、触媒
性能を大きく向上させることができる。このことは、メ
チルアセチレンの水素化分解反応について、固定化担持
酸化チタンの光触媒活性を通常の粉末酸化チタンと比較
すると、Ti原子当たりの光触媒活性は数100倍も高
いという報告(上記した文献3参照)で裏付けられる。
また、二酸化炭素と水の存在下において、固定化担持酸
化チタンの光触媒作用によって高い選択率でメタン、メ
タノール、一酸化炭素を生成することができる。〔文献
4:H.Yamashita,H.Nishiguchi,N.Kamada,M.Anpo:Res.C
hem.Intermedi.20(1994)815 、及び文献5:M.Anpo,K.C
hiba:J.Mol.Catal.74(1992)207参照〕。
【0052】固定化担持酸化チタンは、配位不飽和な状
態にある分子状の酸化チタン種である。特に高分散な
(例えば10nm角当りTi原子が100個分布した)
状態にあり、均一な膜を形成するこのような固定化担持
酸化チタンは吸収光エネルギーの失活が小さく、また、
光励起による活性種の反応性が特異的で高いという特徴
がある。一般的に、酸化チタン以外の高分散な分子状酸
化物光触媒でも、従来のバルク触媒では見られない特異
な光触媒活性を示す。これらの例としては、例えば、上
述の文献1の表1や文献2のTable1に示されたよ
うな光触媒反応がある。
【0053】また、このように光触媒が単分子膜化する
ことによって、単位面積当たりの光吸収が小さくなり、
透明に近くなる(但し、表面へ電子及び正孔へ移動し易
くなり、また量子サイズ効果による活性触媒能が向上
し、光散乱によるロスも小さくなる)。このため、これ
までは酸化チタンのように紫外光で励起できるもの以外
には透明なウインドウガラスの清浄化などの用途に使用
できなかったが、酸化鉄のように可視光で励起されるも
のでも、透明な用途に使用できるようになる。また、可
視光で励起できることによって、光源の選択の幅が広が
るばかりではなく、太陽光によっても励起することがで
きるようになる。従って、自然の太陽エネルギーが利用
できるばかりではなく、紫外光源よりも発光効率が高い
可視の半導体レーザ(LD)やLEDを使用できるの
で、省資源、省エネルギーになる。
【0054】第3の実施の形態 図4は、本発明の第3の実施の形態を示すものである。
【0055】本実施の形態による光触媒装置30は、上
述の第2の実施の形態での固定化担持TiO2 膜23以
外の光触媒として、合成石英基板31上に酸化鉄(Fe
2 3 )33を固定化担持したものである。
【0056】酸化鉄は可視光域に吸収を持ち、価電子帯
の準位が深いために、大きな酸化力を有する。しかし、
可視光域に吸収を持つため、これまで、透明なテレビジ
ョン受像機のブラウン管面や自動車のウインドウガラス
等には使用できなかったが、本実施の形態によれば、酸
化鉄を固定化担持して単分子層膜とすることによって、
可視域の吸収も極めて小さくなるので、透明であること
が要求される用途にも使用できるようになる。また、可
視光で励起が可能となるため、光源の選択の幅が広が
り、応用範囲が拡大すること等が見込まれる。しかも、
紫外光源よりも発光効率が高い可視光の半導体レーザや
LEDが使用できるので、エネルギーロスが小さくな
り、省資源、省エネルギーになる。
【0057】この酸化鉄の単分子膜は、ピリジン中で塩
化鉄(FeCl3 )を加水分解することによって作成可
能である〔文献6:K.Leland,J.Bard:J.Phys.Chem..91
(1987)5076 参照〕。
【0058】そして、屈折率が2.0以下程度と低い光
導波路32上に高屈折率の薄膜34を作成し、その上に
固定化担持Fe2 3 の光触媒層33を単分子層膜とし
て形成する。これによって、上述した第2の実施の形態
で述べた効果に加えて、光導波路32の光触媒側と光触
媒層33に励起光をより強く集中することができ、効率
的に光触媒を励起できる。この高屈折率薄膜34の厚さ
は数10nm以下であってもよい。
【0059】具体的な構造としては、合成石英基板31
上にポリイミド光導波路32をコートし、その上に高屈
折率の薄膜34としてTa2 5 又はNb2 5 をスパ
ッタによってコートし、その上に光触媒層33として酸
化鉄(Fe2 3 )を固定化担持する。各々の屈折率
は、合成石英が1.5、ポリイミドが1.7、Ta2
5 が2.1〜2.3、Nb2 5 が1.9〜2.2であ
る。このような構造は、上述した第2又は第1の実施の
形態においても同様に採用できる。
【0060】第4の実施の形態 図5は、本発明の第4の実施の形態を示すものである。
【0061】本実施の形態による光触媒装置40は、上
述の第1又は第2の実施の形態において、ポリメチルメ
タクリレートからなる光導波路42の下層として、光触
媒の励起光を透過するパーフルオロ化合物(例えばテト
ラフルオロエチレンとパーフルオロ−2,2−ジメチル
−1,3−ジオキソールとの共重合体:デュポン社製商
品名「テフロンAF」)からなるバッファ層45が、光
触媒の励起光の波長よりも十分に厚く形成されている。
こうして、基板41の表面が平滑でなくとも、その上に
塗布された透明なバッファ層45によって平滑な表面が
形成されている。
【0062】また、光導波路42上には、光触媒の励起
光を透過する非酸化性樹脂からなるバッファ層44が光
触媒の励起光の波長よりも十分に薄く形成されている。
また、このバッファ層44上には、アナターゼ型又は固
定化担持のTiO2 光触媒層43が形成されている。
【0063】このバッファ層44の材料となる非酸化性
樹脂としては、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂があ
る。フッ素系樹脂の例としてはバッファ層45と同じ
「テフロンAF」がある。シリコーン系樹脂としては、
例えばオルガノシラン系(テトラアルコキシシラン、ト
リアルコキシシランを主成分とする)樹脂がある。
【0064】ここで、バッファ層45の屈折率は光導波
路42の屈折率より小さく、光導波路42の屈折率は
1.5であり、バッファ層45の屈折率も光導波路42
の屈折率より小さく、光触媒層43の屈折率は2.5で
ある。このため、これらバッファ層45と光導波路42
とバッファ層44と光触媒層43とからなる積層構造
と、更にこの光触媒層43に接する空気層とによって、
多モードの5層構造のステップ型スラブ光導波路とみな
すことができる。
【0065】また、上述の実施形態の場合と同様に、光
触媒層43の厚さは、100nm以下と非常に薄くして
おく。また、光導波路42の厚さは、光触媒層43の厚
さよりも厚くする。
【0066】この光触媒装置40によれば、光導波路4
2内に入射した励起光は、光触媒層43と外部の空気層
との境界面及び光導波路42バッファ層45、44との
境界面において全反射を繰り返しながら、光導波路42
内を進行する。ここで、基板41と光導波路42との間
に介在するバッファ層45は、その厚さが光触媒の励起
光の波長よりも十分に厚く、平滑な表面を有しているた
め、光導波路42との境界面において光触媒の励起光を
全反射する。また、光導波路42と光触媒層43との間
に介在するバッファ層44は、その厚さが光触媒の励起
光の波長よりも十分に薄いため、その屈折率が光導波路
42の屈折率より小さくても、光導波路42との境界面
において光触媒の励起光を全反射することなく、光触媒
の励起光を通過させる。
【0067】こうして、裏面全体から光触媒の励起光に
よって照射された光触媒層43は、この光触媒の励起光
を吸収して活性化され、その厚さが100nm以下と非
常に薄いために、優れた光触媒作用により有機物の酸化
分解機能や防汚機能等を発揮する。
【0068】第5の実施の形態 図6は、本発明の第5の実施の形態を示すものである。
【0069】本実施の形態の光触媒装置50は、上述し
た酸化チタンや酸化鉄等の単分子層膜からなる光触媒層
53の下に、3次元グレーティング構造55を作成して
フォトニックバンドを形成し、空間伝搬モードと導波光
の結合を無くし、励起光を基板表面に閉じ込めるように
する。これによって、光触媒を効率的に励起でき、光吸
収が小さい単分子層膜であっても、効率的に励起でき
る。ここで、3次元グレーティングの特殊な場合とし
て、2次元又は1次元グレーティングも含まれる。この
ようなグレーティングは、光導波路に形成してよいが、
光触媒層に形成してもよい。また、このグレーティング
は上述した実施の形態にも同様に採用可能である。
【0070】具体的には、ポリメチルメタクリレートか
らなる光導波路52上に2次元の平面グレーティング5
5を作成したものであり、合成石英基板51上にポリメ
チルメタクリレートの光導波路52を作成し、この表面
にグレーティング55をプレスする。その上にポリイミ
ドのバッファ層54をコートし、表面を平滑化し、さら
に、その上に厚さ100nm以下の酸化物光触媒53を
固定化担持する。屈折率は、合成石英基板51が1.4
5、ポリメチルメタクリレート光導波路52が1.4
9、ポリイミドバッファ層54が1.7である。上述の
第4の実施の形態で述べたと同様に、上述した他の実施
の形態で述べた効果に加えて、バッファ層54の作用に
よって励起光の光触媒への集中効果が良好となる。
【0071】第6の実施の形態 図7は、本発明の第6の実施の形態を示すものである。
【0072】本実施の形態の光触媒装置60では、上述
した酸化チタンや酸化鉄、フラーレン等の光触媒を合成
石英基板上の光導波路上にコートした構造の光触媒基板
において、光源64からの励起光が入射する領域以外の
光導波路、光触媒膜、基板の端面がアルミニウム等の金
属薄膜のミラー66でコートされていることによって、
外部へ放出されようとする励起光7を反射し、光導波路
中に励起光7を閉じ込める。これによって、上述した実
施の形態で述べた効果に加えて、光触媒を効率的に励起
でき、光吸収が小さい薄膜の光触媒層であっても効率的
に励起できる。ここで、ミラーの代わりに、ミラーと同
等な機能を有するグレーティングを基板の端部分の光触
媒層、又は光触媒と接する基板又は光導波路に形成し
て、導波光を基板の内側に閉じ込めることも可能であ
る。
【0073】また、光源としての半導体レーザ64が光
導波路の端面に密着して設置されることにより、例えば
テレビジョン受像機のブラウン管面や自動車のフロント
ガラスの枠に埋め込むことが可能になり、独立して光源
を設置するためのスペースが不必要となって目立たなく
なるため、光触媒装置60が小型化されてその使用範囲
を拡大することが可能になると共に、美感を損なうこと
も殆どない。このようなミラー66を設ける構造や光源
密着型の構造は、上述した各実施の形態においても同様
に採用可能である。
【0074】具体的には、光触媒基板としては、合成石
英基板にポリイミド光導波路をコートし、さらにその上
に酸化チタン光触媒をコートしたものを使用する。励起
光源の半導体レーザ64は基板の4隅の角部に取り付け
られ、それぞれから光導波路に励起光7が入射する。光
触媒基板の端面は、半導体レーザ64が取り付けられて
いる部分を除いてアルミニウムのミラー66がコートさ
れている。
【0075】第7の実施の形態 図8は、本発明の第7の実施の形態を示すものである。
【0076】本実施の形態の光触媒装置70は、上述し
た酸化チタンや酸化鉄、フラーレン等の光触媒73を光
導波路72上にコートした構造の光触媒基板において、
光導波路72の導波光のモードを表す光線7が光導波路
との界面へ入射する入射角を大きくすることによって、
光触媒膜73から基板の外側へのエバネセント波の染み
出しを小さくする。これによって、上述した実施の形態
で述べた効果に加えて、外部の空気や溶液による励起光
の散乱や吸収が小さくなる。界面への入射角を大きくす
るためには、例えば光導波路72の端面への入射光束7
の開口数(NA)を小さくする。
【0077】本実施の形態においては、光触媒73とし
て酸化チタンを使用し、光導波路72への入射光束のN
Aを0.1とする。酸化チタンの励起は400nm以下
の波長で生じるので、励起光7の波長を400nmとす
る。このとき、光導波路72の端面における入射光スポ
ットの径は約5μmとなる。このため、光導波路72の
膜厚を5μm以上とすることにより、入射光をロスなく
光導波路72に入射させることができる。このような構
造は、上述した他の実施の形態においても同様に採用可
能である。
【0078】具体的には、合成石英基板71上に作成さ
れたポリイミド光導波路72に酸化チタン光触媒73が
コートされ、基板端面に光源ユニット77が直接固定さ
れている。光源ユニット77は、半導体レーザ74を光
源としてレンズ78によりNA=0.1で光導波路端面
に光束が集光されるようになっている。ここで、膜厚は
ポリイミド光導波路72が5μm、光触媒層73が0.
1μmであり、屈折率は合成石英基板71が1.5、ポ
リイミド光導波路72が1.7、酸化チタン光触媒層7
3が2.5である。
【0079】以上に説明した実施の形態は、本発明の技
術的思想に基づいて更に変形可能である。
【0080】例えば、光触媒層の膜厚や材質、その形成
方法などは様々に変更してよい。光触媒層は、上述した
固定化担持TiO2 のように、1層の単分子層からなる
ものに限らず、複数層が積み重なっていてもよい。ま
た、光触媒層は、TiO2 膜などで形成する場合、超微
粒子ではなく、スパッタ等によって連続的な薄膜として
成膜したものであってもよい。
【0081】また、光触媒装置の構造や形状なども、上
述した例に限られるものではなく、矩形や円柱形など、
用途に応じて変形してよい。光源の種類や取付け方法、
配置なども様々であってよく、上述の光ファイバー束又
は光ファイバーシートを介して取付けたり、光導波路端
面に直接固定してもよい。光導波路も、上述したいわゆ
る平面型をはじめ、ストリップ型、埋込み型など様々で
あってよい。
【0082】
【発明の作用効果】本発明は、上述したように、光導波
路と、前記光導波路上に形成された光触媒層とを有し、
前記光触媒層が100nm以下の厚みに形成されている
ので、光源から光導波路に入射した光触媒の励起光は光
導波路内を伝搬すると共に、その伝搬中に光導波路から
漏洩して光触媒層を裏面全体から照射し、更にその照射
光は光触媒層内を十分に透過するため、光触媒層はその
全体において高効率に活性化される。
【0083】また、光源から出射された光触媒の励起光
は無駄なく光導波路内に入射されると共に、光源と光触
媒層との間に空気や水などの媒質が存在せず、こうした
媒質による光吸収や光散乱のために生じる光量ロスもな
くせるために、光源からの光パワーが極めて有効に利用
される。また、光触媒の励起光が伝搬する光導波路の材
料として、光触媒の励起光の光吸収の小さなものを選択
すれば、この光導波路における光吸収による光量ロスも
低減される。
【0084】また、光触媒の励起光として太陽光を利用
する場合のように外部環境によって左右されることはな
く、光触媒層における光触媒作用が安定して発揮され
る。
【0085】また、光触媒の励起光として紫外光を使用
する場合であっても、光源から光導波路を経て光触媒層
に至る過程は光触媒の励起光が装置内に閉じ込められる
構造となっており、光触媒層の表面に付着した塵などに
よる散乱光以外には励起光が外部に漏れることはなくな
るため、たとえテレビジョン受像機のブラウン管面や自
動車のフロントガラスのように、人が見たり、近くに居
る時間が長いものに光触媒装置を用いても、人体に悪影
響を及ぼし、特に皮膚癌の発生原因となるという心配は
なくなる。
【0086】更に、光導波路上に形成された光触媒層が
100nm以下と非常に薄いので、光触媒層内で光によ
る励起で生じた電子と正孔が光触媒層の表面まで移動す
る距離が短くなり、再結合によって消滅する確率が小さ
くなる。従って、光エネルギーのロスが小さく、このた
めパワーの小さい半導体レーザやLED(発光ダイオー
ド)などの光源を用いても触媒作用を発揮でき、省エネ
ルギーにもなる。そして、光触媒層の厚さが薄い方が光
散乱の小さい薄膜を作りやすいので、光エネルギーのロ
スが更に小さくなる。
【0087】これに加えて、光触媒層を厚さ100nm
以下と薄膜化することによって、可視光で励起される光
触媒を使用しても、全体として光学的に透明な光触媒コ
ート基板を得ることができる。これまで、紫外光で励起
され、可視光に対しては透明な酸化チタンしか使用でき
なかった自動車のバックミラー等の如く透明性が要求さ
れる用途にも、酸化鉄やフラーレンを使用できるように
なる。
【0088】また、光触媒としての酸化チタン等の光触
媒層を上記のように薄くすることによって、量子サイズ
効果によって光触媒活性が高くなる。そして、光導波路
上に光触媒をコートした場合、光触媒膜の均一性、表面
の平坦化が十分となるので、光散乱による導波光の減衰
が小さくなり、光エネルギーの損失が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による光触媒装置の
概略斜視図である。
【図2】同、光触媒装置の概略断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態による光触媒装置の
要部の概略断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態による光触媒装置の
概略断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態による光触媒装置の
概略断面図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態による光触媒装置の
概略断面図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態による光触媒装置の
概略平面図である。
【図8】本発明の第7の実施の形態による光触媒装置の
概略断面図である。
【図9】従来の光触媒装置の概略断面図である。
【符号の説明】
10、20、30、40、50、60、70…光触媒装
置、1、31、41、51、71…基板、2、22、3
2、42、52、72…光導波路、3、23、33、4
3、53、73…光触媒層、4、64、74…半導体レ
ーザ、5…光ファイバー束、6…光ファイバーシート、
7…励起光、34…高屈折率膜、44、45、54…バ
ッファ層、55…グレーティング、66…ミラー、77
…光源ユニット

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光導波路と、前記光導波路上に形成され
    た光触媒層とを有し、前記光触媒層が100nm以下の
    厚みに形成されている光触媒装置。
  2. 【請求項2】 前記光触媒層が光触媒の単分子層からな
    っている、請求項1に記載した光触媒装置。
  3. 【請求項3】 前記触媒層が固定化担持光触媒材料で形
    成されている、請求項2に記載した光触媒装置。
  4. 【請求項4】 光学的に透明な基板上に前記光導波路及
    び前記光触媒層がこの順に形成され、全体として光学的
    に透明となっている、請求項1に記載した光触媒装置。
  5. 【請求項5】 前記光触媒層の下層として高屈折率の薄
    膜が形成されている、請求項1に記載した光触媒装置。
  6. 【請求項6】 前記光触媒層又は/及び前記光導波路
    に、3次元、2次元又は1次元のグレーティングが形成
    されている、請求項1に記載した光触媒装置。
  7. 【請求項7】 光入射面以外が光反射膜で覆われてい
    る、請求項1に記載した光触媒装置。
  8. 【請求項8】 前記光触媒層の励起光として低パワーの
    半導体レーザ又は発光ダイオードの出射光が使用され
    る、請求項1に記載した光触媒装置。
  9. 【請求項9】 前記光触媒層の励起光が、前記光導波路
    に対し大きな入射角で入射する、請求項1に記載した光
    触媒装置。
  10. 【請求項10】 光導波路と、前記光導波路内に光触媒
    の励起光を入射させる光源と、前記光導波路上に形成さ
    れた光触媒層とを有し、前記光触媒層が100nm以下
    の厚みに形成されている光触媒装置。
  11. 【請求項11】 前記光触媒層が光触媒の単分子層から
    なっている、請求項10に記載した光触媒装置。
  12. 【請求項12】 前記触媒層が固定化担持光触媒材料で
    形成されている、請求項11に記載した光触媒装置。
  13. 【請求項13】 光学的に透明な基板上に前記光導波路
    及び前記光触媒層がこの順に形成され、全体として光学
    的に透明となっている、請求項10に記載した光触媒装
    置。
  14. 【請求項14】 前記光触媒層の下層として高屈折率の
    薄膜が形成されている、請求項10に記載した光触媒装
    置。
  15. 【請求項15】 前記光触媒層又は/及び前記光導波路
    に、3次元、2次元又は1次元のグレーティングが形成
    されている、請求項10に記載した光触媒装置。
  16. 【請求項16】 光入射面以外が光反射膜で覆われてい
    る、請求項10に記載した光触媒装置。
  17. 【請求項17】 前記光源が低パワーの半導体レーザ又
    は発光ダイオードからなっている、請求項10に記載し
    た光触媒装置。
  18. 【請求項18】 前記光触媒層の励起光が、前記光導波
    路に対し大きな入射角で入射する、請求項10に記載し
    た光触媒装置。
  19. 【請求項19】 前記光源が前記光導波路の端面に密着
    して設けられている、請求項10に記載した光触媒装
    置。
  20. 【請求項20】 前記光源の出射光が光ファイバー又は
    そのシート状集合体を介して前記光導波路に導かれる、
    請求項10に記載した光触媒装置。
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