JP2005158142A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体 Download PDF

Info

Publication number
JP2005158142A
JP2005158142A JP2003394520A JP2003394520A JP2005158142A JP 2005158142 A JP2005158142 A JP 2005158142A JP 2003394520 A JP2003394520 A JP 2003394520A JP 2003394520 A JP2003394520 A JP 2003394520A JP 2005158142 A JP2005158142 A JP 2005158142A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetic
layer
recording medium
powder
magnetic recording
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003394520A
Other languages
English (en)
Inventor
Katsuhiko Meguro
克彦 目黒
Masatoshi Takahashi
昌敏 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP2003394520A priority Critical patent/JP2005158142A/ja
Publication of JP2005158142A publication Critical patent/JP2005158142A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Magnetic Record Carriers (AREA)

Abstract

【課題】 高C/N比を保ち、エラーレートの低い優れた磁気記録媒体を提供するとともに、各種環境下で低いエラーレートを維持できる磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】 非磁性支持体上に、放射線照射により重合可能な化合物を含む層を放射線照射により硬化させた厚さ0.3〜3.0μmの放射線硬化層を有し、その上に必要に応じ非磁性粉体と結合剤を含む下層を介し、平均板径5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末もしくは平均長軸長20〜100nmの強磁性金属微粉末及び結合剤を分散した少なくとも一層の磁性層を有する磁気記録媒体において、該非磁性支持体のガラス転移温度が80〜150℃の範囲にあり、かつ、温度70℃、応力13MPaで48時間経過後のクリープコンプライアンスが0.05〜0.20GPa−1の範囲にあることを特徴とする磁気記録媒体。

Description

本発明は、非磁性支持体上の少なくとも片面に、強磁性微粉末と結合剤とを分散させてなる磁性層を設けるか、または非磁性粉末と結合剤とを分散させてなる非磁性塗布層を非磁性支持体上に設けさらに磁性層を設けた磁気記録媒体において、極めて優れた電磁変換特性、走行耐久性を持つ磁気記録媒体に関するものである。
磁気ディスクの分野において、Co変性酸化鉄を用いた2MBのMF−2HDフレキシブルディスクがパーソナルコンピュータに標準搭載されようになった。しかし扱うデータ容量が急激に増加している今日において、その容量は十分とは言えなくなり、フレキシブルディスクの大容量化が望まれていた。
また、磁気テープの分野においても近年、パーソナルコンピュータ、ワークステーションなどの普及に伴って、外部記憶媒体としてコンピュータデータを記録するための磁気テープ(いわゆるバックアップテープ)の研究が盛んに行われている。このような用途の磁気テープの実用化に際しては、特にコンピューターの小型化、情報処理能力の増大と相まって、記録の大容量化、小型化を達成するために、記録容量の向上が強く要求される。
従来、電磁誘導を動作原理とする磁気ヘッド(誘導型磁気ヘッド)が用いられ普及しているが、更に高密度記録再生領域で使用するには限界が見え始めている。すなわち、大きな再生出力を得るためには再生ヘッドのコイル巻数を多くする必要があるがインダクタンスが増加し高周波での抵抗が増加し結果として再生出力が低下する問題があった。
近年、磁気抵抗(MR)を動作原理とする再生ヘッドが提案され、ハードディスク等で使用され始め、また、特開平8−227517号公報には磁気テープへの応用が提案されている。MRヘッドは誘導型磁気ヘッドに比較して数倍の再生出力が得られ、かつ誘導コイルを用いないため、インピーダンスノイズ等の機器ノイズが大幅に低下し、磁気記録媒体のノイズを下げることで大きなSN比を得ることが可能になってきた。換言すれば従来機器ノイズに隠れていた磁気記録媒体ノイズを小さくすれば良好な記録再生が行え、高密度記録特性が飛躍的に向上できることになる。
従来、磁気記録媒体には酸化鉄、Co変性酸化鉄、CrO、強磁性金属粉末、六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散した磁性層を非磁性支持体に塗設したものが広く用いられている。特に、強磁性金属微粉末と六方晶系フェライト微粉末は高密度記録特性に優れていることが知られている。ノイズを低減するには各種手段が考えられるが、特に強磁性粉末の粒子のサイズを下げることが効果的であり、最近の磁性体では板径40nm以下の強磁性六方晶フェライト微粉末、平均長軸長100nm以下の強磁性金属微粉が使用され効果を上げている。
ディスクの場合、高密度記録特性に優れる強磁性金属微粉末を用いた大容量ディスクとしては10MBのMF−2TD、21MBのMF−2SDまたは六方晶フェライトを用いた大容量ディスクとしては4MBのMF−2ED、21MBフロプティカルなどがあるが、容量、性能的に十分とは言えなかった。このような状況に対し、高密度記録特性を向上させる試みが多くなされている。例えば、LS―120やZIPなどの100M〜120M等の高容量で高密度の記録が実現され、さらに面記録密度で30Mbit/cm以上もの高密度記録が要求されつつある。面記録密度は線記録密度とトラック密度との積で表され、現在市販されている100MBクラスの記録容量のディスクに対して線記録密度とトラック密度の両者を数倍大きくする必要がある。このような高密度の磁気記録媒体にあっては、安定な記録再生を維持するためには従来の媒体よりもさらに高度な寸度安定性、機械的強度が要求される。
リニア記録方式を採用する磁気記録再生システムにおいても、より高い記録密度でかつより大きな記録容量を実現するために、磁気テープの記録・再生時のトラック幅は狭くなる傾向にある。記録・再生時には、磁気ヘッドが磁気テープの幅方向(上下方向)に移動し、いずれかのトラックを選択しなければならないが、トラック幅が狭くなるに従い、磁気テープとヘッドとの相対位置を制御するために高い精度が必要になる。
また、上述した様なMRヘッドおよび微粒子磁性体を使用しS/N比を向上させ狭トラック化を実現しても、使用される環境の温湿度により磁気記録媒体が変形し、記録されたトラックを再生ヘッドが読み出せなくなる場合が生じる。このため、ヤング率やクリープ変形量を規定した支持体やそれを用いる磁気記録媒体が提案されている(特許文献1〜3参照)。しかし、これらに規定された膨張係数では、媒体の寸度安定性は十分とは言えなかった。
特許第2607358号公報 特開平11−348114号公報 特開2000−251239号公報
本発明は、高C/N比を保ち、エラーレートの低い優れた磁気記録媒体を提供するとともに、各種環境下で低いエラーレートを維持できる磁気記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の目的は、下記(1)〜(4)によって解決された。
(1)非磁性支持体上に、放射線照射により重合可能な化合物を含む層を放射線照射により硬化させた厚さ0.3〜3.0μmの放射線硬化層を有し、その上に必要に応じ非磁性粉体と結合剤を含む下層を介し、平均板径5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末もしくは平均長軸長20〜100nmの強磁性金属微粉末及び結合剤を分散した少なくとも一層の磁性層を有する磁気記録媒体において、該非磁性支持体のガラス転移温度が80〜150℃の範囲にあり、かつ、温度70℃、応力13MPaで48時間経過後のクリープコンプライアンスが0.05〜0.20GPa−1の範囲にあることを特徴とする磁気記録媒体、
(2)上記非磁性支持体がポリフェニレンサルファイドである(1)に記載の磁気記録媒体、
(3)該放射線照射により重合可能な化合物が分子内にエーテル結合および放射線照射により重合可能な官能基を1分子中に2個以上有し、分子量が1,000以下の化合物である(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体、
(4)前記非磁性支持体の放射線硬化層塗布面にコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、及び電子線照射処理からなる群より選ばれる易接着処理を行った後に放射線硬化層を塗設した(1)〜(3)いずれか1つに記載の磁気記録媒体。
なお、上記(1)の磁気記録媒体は、下層の有無に応じて、以下の2つの層構成となる。
すなわち、下層の無い場合には、非磁性支持体上に、順次、放射線照射により重合可能な化合物を含み放射線照射により硬化させた厚さ0.3〜3.0μmの放射線硬化層、並びに平均板径5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末もしくは平均長軸長20〜100nmの強磁性金属微粉末及び結合剤を分散した少なくとも一層の磁性層を有する磁気記録材料において、該非磁性支持体のガラス転移温度が80〜150℃の範囲にあり、かつ、温度70℃、応力13MPaで48時間経過後のクリープコンプライアンスが0.05〜0.20GPa-1の範囲にある磁気記録媒となる。
一方、下層を有する場合には、非磁性支持体上に、順次、放射線照射により重合可能な化合物を含み放射線照射により硬化させた厚さ0.3〜3.0μmの放射線硬化層、非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層、並びに平均板径5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末もしくは平均長軸長20〜100nmの強磁性金属微粉末及び結合剤を分散した少なくとも一層の磁性層を有する磁気記録媒体において、該非磁性支持体のガラス転移温度が80〜150℃の範囲にあり、かつ、温度70℃、応力13MPaで48時間経過後のクリープコンプライアンスが0.05〜0.20GPa-1の範囲にある磁気記録媒体となる。
本発明は、各種環境下で低いエラーレートを維持できる磁気記録媒体を提供できることから、従来方法に比較し顕著な効果が認められる。
I.非磁性支持体
本発明の磁気記録媒体には、ガラス転移温度が80〜150℃の範囲にあり、かつ、温度70℃、応力13MPaで48時間経過後のクリープコンプライアンスが0.05〜0.20GPa−1の範囲にある非磁性支持体を使用する。
本発明の非磁性支持体のガラス転移温度は、磁気記録媒体の製造工程中で過剰なエンタルピーが適度に緩和される80〜150℃の範囲であるが、85〜130℃が好ましい。80℃未満では磁気記録媒体製造の際、乾燥工程などで加えられる温度により非磁性支持体の非晶部分のミクロブラウン運動が激しくなり、完成した磁気記録媒体の支持体中に過剰にエンタルピーが蓄積され、クリープし易くなる。また、150℃を超えると、磁気記録媒体製造の際にサーモ処理等を行っても蓄積された過剰エンタルピーが緩和されず、結果として完成した磁気記録媒体はクリープし易くなる。
ここで本発明において、ガラス転移温度とは、パーキンエルマー社製示差走査熱量計Pyris1を使用し、昇温速度5℃/minで室温から200℃まで測定し、ベースライン上のギャップから求めた温度をいう。
また、本発明の非磁性支持体の温度70℃、応力13MPaの条件下での48時間後のクリープコンプライアンスは小さければ小さいほど好ましく、0であることが理想的であるが、現状の技術では0.05〜0.20GPa-1の範囲、好ましくは0.07〜0.18GPa-1の範囲である。本発明のクリープコンプライアンスが0.20を越える場合は、記録/読み出し走行時の張力あるいは巻き返し後の張力によって、保管経時した時に磁気テープの長手方向または幅方向の変形量が大きくなり、その変形量の一部が永久歪みとして残り、記録/読み出し時のトラックずれとなりやすくなるので好ましくない。
ここでクリープコンプライアンスとは「高分子化学序論(第2版)」((株)化学同人、1981年発行)で定義されたものである。すなわち、クリープコンプライアンスは、温度70℃、応力13MPaの条件下での48時間後の寸度安定性をいい、以下の測定方法で求められる値である。
磁気テープをその長手方向に30mm、幅方向に幅5mmで切り出したサンプルをアルバック理工(株)製熱機械試験装置TM−9200にセットして70℃で1時間エージングする。引き続き温度70℃で13MPaの応力をかけ、48時間後の寸法変化を測定し、以下の式によりクリープコンプライアンスが算出される。
クリープコンプライアンス(GPa-1)=(寸法変化/サンプル長)/応力
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては上記のガラス転移温度条件及びクリープコンプライアンスを満たすものであって、従来から磁気テープにおいて使用されている材料から選ぶことができる。具体的には二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの混合物、エチレンテレフタレート成分とエチレンナフタレート成分とを含む共重合物等のポリエステル類、芳香族ポリアミド等のポリアミド類、芳香族ポリイミド等のポリイミド類、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体類、ポリカーボネート等の公知のものが使用できる。好ましくはポリフェニレンサルファイドである。
本発明の非磁性支持体を調製する方法は、特に限定されないが、長手方向、幅方向の力学的強度を調整することが好ましい。具体的には上述した樹脂をフィルム状に形成(製膜)する際に、長手方向、幅方向を適度に延伸する方法を用いることが好ましい。本発明で用いる支持体のヤング率は長手方向、横方向ともに4,000〜15,000MPaであることが好ましく、5,000〜11,000MPaであることがより好ましい。長手方向、横方向のヤング率はそれぞれ異なっていても良い。
また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の磁性層塗布面側の中心面平均粗さ(JISB0660−1998、ISO4287−1997)がカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜10.0nm、好ましくは0.5〜8.0nmの範囲が好ましく、支持体の両面の粗さは異なっていてもよい。また、これらの非磁性支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく、粗大突起がないことが好ましく、磁性層塗布面側に存在する高さ273nm以上の突起が0〜100個/100cm2であることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体における非磁性支持体の好ましい厚みとしては3〜80μmである。
これらの非磁性支持体は放射線硬化層塗布面及び/又はバック面にあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線照射処理等の易接着処理を行うことが好ましい。
上記処理方法のうち、例えばコロナ処理の場合、例えば、気体中で10〜40kV程度の高電圧で発生するコロナ放電により表面処理することができる。金属ロール等の導電性ロール(アース側)に沿って支持体に連続的に走行させ、ロールと平行に対設された一本のコロナ電極とロールとの間にコロナ放電を生じさせてもよく、また2本の平行な電極をロールと平行に対設し、両電極間に高電圧を印加し、電極−ロール−電極間に生ずる放電を利用してもよい。いずれの場合もロールに支持されない側、すなわち電極に面している側の支持体の表面が処理される。
プラズマ処理の場合、例えばDCプラズマ、RFプラズマ、ACプラズマ等のいずれも使用でき、またそれぞれマグネトロン方式であってもよい。また、電子線照射の場合には、スキャニング方式、ダブルスキャニング方式またはカーテンビーム方式等の加速器を用いて、加速電圧10〜300kV、吸収線量として10〜100kGy程度で電子線を可撓性非磁性支持体表面全体に照射する。
II.放射線硬化層
本発明の磁気記録媒体は、放射線照射により重合可能な化合物(以下、「放射線硬化型化合物」という。)を含み放射線照射により硬化させた厚さ0.3〜3.0μmの放射線硬化層を有する。
<放射線硬化型化合物>
放射線硬化型化合物とは、紫外線または電子線などの放射線を照射すると重合または架橋を開始し、高分子化して硬化する性質を有する化合物をいう。放射線硬化型化合物は、外部からエネルギー(紫外線または放射線)を与えない限り反応が進行しない。このため、放射線硬化型化合物を含む塗布液は、紫外線または電子線を照射しない限り粘度が安定しており、高い塗膜平滑性を得ることができる。また、紫外線または電子線による高いエネルギーにより瞬時に反応が進むため、放射線硬化型化合物を含む塗布液では高い塗膜強度を得ることができる。
なお、本発明で用いられる放射線には、電子線(β線)、紫外線、X線、γ線、α線などの各種の放射線が含まれる。
本発明で使用される放射線硬化型化合物の分子量は、200〜1,000の範囲であることが好ましい。分子量が上記範囲であると、塗液が流動しやすく平滑な塗膜を実現することができる。
放射線硬化型化合物の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等を挙げることができる。なお、ここでいう「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称である。
2官能の放射線硬化型化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFやこれらのアルキレンオキサイド付加物に(メタ)アクリル酸、を付加させたものや、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の環状構造を有するものが挙げられる。
3官能の放射線硬化型化合物の具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変成トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変成トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変成ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4官能以上の放射線硬化型化合物の具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変成ヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
上記の放射線硬化型化合物の中でも、好ましいものは分子量200〜1,000の6価のポリオールの(メタ)アクリレート化合物(ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなど)であり、さらに好ましいものは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。
また、放射線硬化型化合物として、分子内にエーテル結合および放射線照射により重合可能な官能基を1分子中に2個以上有し、分子量1,000以下の化合物を用いることが好ましい。
このような化合物の具体例としては、水素化ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールFアルキレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特に好ましくは5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレートである。
上記放射線硬化型化合物を重合させるために紫外線を用いる場合、重合開始剤を併用することが好ましい。重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤および光アミン発生剤等を用いることができる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ミヒラーケトン類、アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α, α'−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2'−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類、アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類、フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;アシルホスフィンオキシド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物などが挙げられる。
また、光ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、例えば、IRGACURE−184、同261、同369、同500、同651、同907(チバ−ガイギー社製)、Darocur−1173、同1116、同2959、同1664、同4043(メルクジャパン社製)、KAYACURE−DETX、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA(日本化薬(株)製)、VICURE−10、同55(STAUFFER Co.LTD製)、TRIGONALP1(AKZO Co.LTD製)、SANDORAY1000(SANDOZ Co.LTD製)、DEAP(APJOHN Co.LTD製)、QUANTACURE−PDO、同ITX、同EPD(WARD BLEKINSOP Co.LTD製)等の市販品を挙げることができる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、メタロセン化合物類、ジアリールヨードニウム塩類、ニトロベンジルスルホナート類、α−スルホニロキシケトン類、ジフェニルジスルホン類、イミジルスルホナート類が挙げられる。
光カチオン重合開始剤の具体的な例としては、アデカウルトラセットPP−33、OPTMER SP−150、同170(旭電化工業(株)製)(ジアゾニウム塩)、OPTOMER SP−150、170(旭電化工業(株)製)(スルホニウム塩)、IRGACURE261(チバ−ガイギー(株)製)(メタロセン化合物)等の市販品を挙げることができる。
光アミン発生剤としては、例えば、ニトロベンジカーバミメート類、イミノスルホナート類が挙げられる。これらの光重合開始剤は、露光条件(たとえば酸素雰囲気下であるか、無酸素雰囲気下であるか)等によって適宜選択され用いられる。またこれらの光重合開始剤は、2種以上組み合わせて用いることもできる。
上記放射線硬化型化合物を重合させるために電子線を用いる場合、電子線の加速器としてはバンデグラーフ型のスキャニング方式、ダブルスキャニング方式、またはカーテンビーム方式を採用できるが、好ましくは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が10〜1,000kV、好ましくは50〜300kVである。加速電圧が10kV以上であれば、エネルギーの透過量としては充分である。また加速電圧が1,000kV以下であれば、重合に使われるエネルギー効率が低下することもない。吸収線量は0.5〜20Mrad、好ましくは1〜10Mradである。吸収線量が0.5Mrad以上であれば、硬化反応により充分な強度が得られ、また20Mrad以下であれば、硬化に使用されるエネルギー効率が低下することがなく、さらに被照射体が発熱することもないため、非磁性支持体の変形を防止できる。
一方、上記放射線硬化型化合物を重合させるために紫外線を用いる場合、その量は10〜100mJ/cm2が好ましい。10mJ/cm2以上であれば、硬化反応により充分な強度が得られ、100mJ/cm2以下であれば硬化に使用されるエネルギー効率の低下、被照射体の発熱を防ぐことができるため、非磁性支持体が変形することはない。紫外線(UV)および電子線(EB)照射装置、照射条件などについては、「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
なお、本発明の放射線硬化層で用いられる放射線硬化型化合物は、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂などの有機溶剤可溶性の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物と併用してもよい。
併用される樹脂の分子量については、質量平均分子量1,000〜100,000の範囲内にあるものを用いることができるが、特に5,000〜50,000の範囲のものが好ましい。1,000以上であれば、端面でのブロッキング等を生じることもなく、また質量平均分子量が100,000以下であれば、有機溶剤への溶解性も良好であり、放射線硬化層を塗布することも充分可能である。
放射線硬化型化合物と併用される樹脂を混合して使用する場合、例えば、放射線硬化型化合物100重量部に対して併用される樹脂を5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは20〜80重量部の範囲で添加する放射線硬化層に添加する。放射線硬化型化合物に対する併用される樹脂の混合量が上記範囲内であれば、平滑化に有利なレベリング性が確保できると共に、架橋による硬化収縮が抑えられるため好ましい。
本発明の放射線硬化層に含まれる放射線硬化型化合物、併用される樹脂および光重合開始剤からなる組成物は、それらを溶解できる溶媒で塗布液とされるが、その溶媒は従来公知の有機溶剤を使用でき、特に限定されるものではない。本発明の放射線硬化層の乾燥は、自然乾燥および加熱乾燥のいずれであってもよく、非磁性支持体上に上記の塗布液を塗布して乾燥した後に上記の放射線を塗布層に照射する。
<放射線硬化層の厚さ>
本発明における放射線硬化層の厚さは0.3〜3.0μmの範囲であれば特に制限はないが、好ましくは0.35〜2.0μmの範囲であり、さらに好ましくは0.4〜1.5μmの範囲である。放射線硬化層の厚さは、放射線硬化層の構成成分等によるが、放射線硬化層の表面性、物理強度が確保されるのであれば、高容量化には薄い程好ましい。
III.磁性層
本発明の磁気記録媒体は、平均板径5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末又は平均長軸長20〜100nmの強磁性金属微粉末及び結合剤を分散した磁性層を有する。
(強磁性六方晶フェライト粉末)
本発明に使用する強磁性六方晶フェライト粉末には、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等がある。より具体的には、マグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部にスピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般には、Co−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用できる。また原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
強磁性六方晶フェライト粉末の平均板径は5〜40nmであるが、好ましくは10〜38nm、より好ましくは15〜36nmである。特にトラック密度を上げるため磁気抵抗ヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があり、平均板径は40nm以下が好ましい。平均板径が5nm未満では熱揺らぎのため安定な磁化が望みにくい。40nmを越えるとノイズが高くなる傾向があり、いずれも優れた高密度磁気記録には向かない。
平均板厚は、1〜30nmが好ましく、2〜25nmがより好ましく、3〜20nmがさらに好ましい。
板状比(板径/板厚)は1〜15が好ましく、1〜7であることがさらに好ましい。板状比が1〜15であれば、磁性層で高充填性を保持しながら充分な配向性が得られ、かつ、粒子間のスタッキングによりノイズ増大を抑えることができる。
また、上記粒子サイズの範囲内におけるBET法による比表面積は10〜200m2/gである。この比表面積は、概ね粒子板径と板厚からの計算値と符号する。
強磁性六方晶フェライト粉末の粒子板径・板厚の分布は、通常狭いほど好ましい。粒子板径・板厚を数値化することは困難であるが、粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することで比較できる。粒子板径・板厚の分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、σ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには、粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
磁性体で測定される抗磁力(Hc)は39.8〜398.0kA/m(500〜5,000Oe)程度まで作成できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明ではHcは159.2〜238.8kA/m(2,000〜3,000Oe)程度であることが好ましく、より好ましくは175.1kA/m以上、222.9kA/m以下(2,200Oe以上、2,800Oe以下)である。ヘッドの飽和磁化が1.4Tを越える場合は、159.2kA/m(2,000Oe)以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
飽和磁化σsは40〜80A・m2/kg(40〜80emu/g)であることが好ましい。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理剤としては、無機化合物及び有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P等の酸化物又は水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。添加量は磁性体の重量に対して0.1〜10重量%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
強磁性六方晶フェライト粉末の製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1,100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
(強磁性金属粉末)
磁性層に用いられる強磁性金属粉末としては、平均長軸長が20〜100nmであって、Feを主成分とするもの(合金も含む)であれば特に限定されないが、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つがα−Fe以外に含まれるものが好ましく、特に、Co、Al、Yが含まれるのが好ましい。さらに具体的には、CoがFeに対して10〜40原子%、Alが2〜20原子%、Yが1〜15原子%含まれるのが好ましい。
上記強磁性金属粉末には後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。また、強磁性金属粉末は、少量の水、水酸化物又は酸化物を含むものであってもよい。強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。
強磁性金属粉末の結晶子サイズは8〜20nmであることが好ましく、10〜18nmであることがより好ましく、12〜16nmであることがさらに好ましい。この結晶子サイズは、X線回折装置(理学電機製 RINT2000シリーズ)を使用し、線源CuKα1、管電圧50kV、管電流300mAの条件で回折ピークの半値幅からScherrer法により求めた平均値である。
強磁性金属粉末の平均長軸長は20〜100nm、好ましくは30〜90nm、より好ましくは40〜80nmである。長軸長は透過型電子顕微鏡写真を撮影し、その写真から強磁性粉末の短軸長と長軸長とを直接読みとる方法と画像解析装置カールツァイス社製IBASSIで透過型電子顕微鏡写真トレースして読みとる方法を併用して求められる。
強磁性金属粉末のBET法による比表面積(SBET)は、30m2/g以上50m2/g未満が好ましく、38〜48m2/gであることがさらに好ましい。この範囲であれば良好な表面性と低いノイズの両立が可能となる。
強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12が好ましく、7〜10がより好ましい。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが200ppm以下であれば特に特性に影響を与える事は少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は、空孔が少ないほうが好ましく、その値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。
また、強磁性金属粉末の形状については、先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、粒状、米粒状又は板状いずれでもかまわないが、特に針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。針状強磁性金属粉末の場合、針状比は4〜12が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。
強磁性金属粉末の抗磁力(Hc)は、好ましくは159.2〜238.8kA/m(2,000〜3,000Oe)であり、さらに好ましくは167.2〜230.8kA/m(2,100〜2,900Oe)である。
また、飽和磁束密度は、好ましくは150〜300mT(1,500〜3,000G)であり、さらに好ましくは160〜290mT(1,600〜2,900G)である。また飽和磁化(σs)は、好ましくは140〜170A・m2/kg(140〜170emu/g)であり、さらに好ましくは145〜160A・m2/kg(145〜160emu/g)である。
磁性体自体のSFD(switching field distribution)は小さい方が好ましく、0.8以下であることが好ましい。SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また磁化反転がシャープでピークシフトが小さくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hc分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲータイトの粒度分布を良くする、単分散αFe23を使用する、粒子間の焼結を防止するなどの方法がある。
強磁性金属粉末は、公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。焼結防止処理を行った含水酸化鉄、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFe又はFe−Co粒子などを得る方法、複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性金属粉末は公知の徐酸化処理する。含水酸化鉄、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元し、酸素含有ガスと不活性ガスの分圧、温度、時間を制御して表面に酸化皮膜を形成する方法が、減磁量が少なく好ましい。
<結合剤>
本発明の磁性層に用いられる結合剤は、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物である。
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂を挙げることができる。
また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等を挙げることができる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び反応型樹脂については、いずれも朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。
また、電子線硬化型樹脂を磁性層に使用すると、塗膜強度が向上し耐久性が改善されるだけでなく、表面が平滑化され電磁変換特性もさらに向上する。これらの例とその製造方法については、特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。
以上の樹脂は単独又はこれらを組み合わせた態様で使用することができる。中でもポリウレタン樹脂を使用することが好ましく、さらには水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのポリプロピレンオキサイド付加物などの環状構造体と、アルキレンオキサイド鎖を有する分子量500〜5000のポリオールと、鎖延長剤として環状構造を有する分子量200〜500のポリオールと、有機ジイソシアネートとを反応させ、かつ親水性極性基を導入したポリウレタン樹脂、又はコハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族二塩基酸と、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のアルキル分岐側鎖を有する環状構造を持たない脂肪族ジオールからなるポリエステルポリオールと、鎖延長剤として2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の炭素数が3以上の分岐アルキル側鎖をもつ脂肪族ジオールと、有機ジイソシアネート化合物とを反応させ、かつ親水性極性基を導入したポリウレタン樹脂、又はダイマージオール等の環状構造体と、長鎖アルキル鎖を有するポリオール化合物と、有機ジイソシアネートとを反応させ、かつ親水性極性基を導入したポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。
本発明で使用可能なポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4−4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を挙げることができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMRミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製デスモジュールL,デスモジュールIL、デスモジュールNデスモジュールHL等がありこれらを単独又は硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組み合せで各層とも用いることができる。
本発明で使用される極性基含有ポリウレタン系樹脂の平均分子量は、5,000〜100,000であることが好ましく、さらには10,000〜50,000であることが好ましい。平均分子量が5,000以上であれば、得られる磁性塗膜が脆い等といった物理的強度の低下もなく、磁気記録媒体の耐久性に影響を与えることはないため好ましい。また、分子量が100,000以下であれば、溶剤への溶解性が低下することもないため、分散性も良好である。また、所定濃度における塗料粘度も高くなることはないので、作業性が良好で取り扱いも容易となる。
上記ポリウレタン系樹脂に含まれる極性基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(以上につき、Mは水素原子又はアルカリ金属塩基)、−OH、−NR2、−N+3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CNなどが挙げられ、これらの極性基の少なくとも1つ以上を共重合又は付加反応で導入したものを用いることができる。また、この極性基含有ポリウレタン系樹脂がOH基を有する場合、分岐OH基を有することが硬化性、耐久性の面から好ましい。1分子当たり2〜40個の分岐OH基を有することが好ましく、1分子当たり3〜20個有することがさらに好ましい。また、このような極性基の量は好ましくは10-1〜10-8モル/gであり、より好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
結合剤の具体例としては、例えば、ユニオンカーバイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などを挙げることができる。
本発明の磁性層に用いられる結合剤の添加量は、強磁性粉末(強磁性金属粉末又は強磁性六方晶フェライト粉末)の重量に対して5〜50重量%の範囲、好ましくは10〜30重量%の範囲である。ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20重量%、ポリイソシアネートは2〜20重量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合には、ポリウレタンのみ又はポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。その他の樹脂として塩化ビニル系樹脂を用いる場合には5〜30重量%の範囲であることが好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは0〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm2)、降伏点は0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm2)が好ましい。
本発明の磁気記録媒体には、必要に応じて非磁性層を設けてもよい。この場合、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性層、各磁性層とで変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層で結合剤量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層の結合剤量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層の結合剤量を多くして柔軟性を持たせることができる。
<その他添加剤>
本発明における磁性層には、分散効果、潤滑効果、帯電防止効果、可塑効果などを付与するために、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。
これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸基、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、イソノニルホスホン酸、イソデシルホスホン酸、イソウンデシルホスホン酸、イソドデシルホスホン酸、イソヘキサデシルホスホン酸、イソオクタデシルホスホン酸、イソエイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル、リン酸ベンジル、リン酸フェネチル、リン酸α−メチルベンジル、リン酸1−メチル−1−フェネチル、リン酸ジフェニルメチル、リン酸ビフェニル、リン酸ベンジルフェニル、リン酸α−クミル、リン酸トルイル、リン酸キシリル、リン酸エチルフェニル、リン酸クメニル、リン酸プロピルフェニル、リン酸ブチルフェニル、リン酸ヘプチルフェニル、リン酸オクチルフェニル、リン酸ノニルフェニル等の芳香族リン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソオクチル、リン酸イソノニル、リン酸イソデシル、リン酸イソウンデシル、リン酸イソドデシル、リン酸イソヘキサデシル、リン酸イソオクタデシル、リン酸イソエイコシル等のリン酸アルキルエステル及びそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸、酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していても良い一塩基性脂肪酸及びこれらの金属塩、又はステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよく、一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよく、1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよく、またアルコキシアルコール又はアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又は多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基およびF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又はリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社、1960年発行)に詳細に記載されている。
上記潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。
これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3、ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
また、本発明における磁性層には、必要に応じてカーボンブラックを添加することができる。磁性層で使用可能なカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5〜300mμ、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN150、50、40、15、RAVEN−MT−P、日本EC社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用したりしてもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独又は組み合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、磁性体の重量に対して0.1〜30重量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、磁性層及び非磁性層でその種類、量、組み合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、PHなどの先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。
本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは、例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
本発明で用いられる有機溶剤は公知のものが使用できる。本発明で用いられる有機溶媒は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
本発明で使用されるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は、磁性層、さらに後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じて使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着又は結合する性質を有しており、磁性層では主に強磁性粉末の表面に、また非磁性層では主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着又は結合し、一度吸着した有機リン化合物は、金属又は金属化合物等の表面から脱着し難いと推察される。したがって、本発明の強磁性粉末(強磁性金属粉末及び強磁性六方晶フェライト粉末)表面又は非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、該強磁性粉末又は非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性粉末あるいは非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い、表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性層又は非磁性層用の塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
IV.非磁性層
<非磁性粉末>
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。
本発明の磁気記録媒体は、放射線硬化層を設けた磁性支持体上に結合剤及び非磁性粉末を含む非磁性層(下層)を有していてもよい。
非磁性層には、下層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよいが、非磁性粉末を用いることが好ましい。
非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタンなどが単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。
非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜1μmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが4nm〜1μmの範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。
これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜2μmの範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
非磁性粉末の比表面積は、好ましくは1〜100m2/gであり、より好ましくは5〜70m2/gであり、さらに好ましくは10〜65m2/gである。比表面積が1〜100m2/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。
ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、好ましくは5〜100ml/100g、より好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。
比重は好ましくは1〜12、より好ましくは3〜6である。タップ密度は好ましくは0.05〜2g/ml、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。
非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下又は脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることはない。
非磁性粉末の含水率は、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。含水量が0.1〜5重量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。
強熱減量は、20重量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
また、非磁性粉末が無機粉末である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は、1〜20μmol/m2であり、さらに好ましくは2〜15μmol/m2である。
非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、20〜60μJ/cm2(200〜600erg/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。
100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。
これらの非磁性粉末の表面にはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
本発明の非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX 石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HDなどが挙げられる。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
非磁性層には非磁性粉末と共に、カーボンブラックを混合し表面電気抵抗を下げ、光透過率を小さくすると共に、所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。非磁性層のμビッカース硬度は、通常25〜60kg/mm2、好ましくはヘッド当りを調整するために、30〜50kg/mm2であり、薄膜硬度計(日本電気製 HMA−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の吸収が3%以下、たとえばVHS用磁気テープでは0.8%以下であることが規格化されている。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
本発明の非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は5〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
本発明の非磁性層に用いることができるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
また、カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して50重量%を越えない範囲、非磁性層総重量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組み合せで使用することができる。本発明の非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
また非磁性層には目的に応じて有機質粉末を添加することもできる。このような有機質粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
非磁性層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
V.バックコート層
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層用塗料は、研磨剤、帯電防止剤などの粒子成分と結合剤とを有機溶媒に分散させる。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができる。また、結合剤としては、例えば、ニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独又はこれらを混合して使用することができる。
VI.易接着層
本発明の非磁性支持体は、さらに磁性層用塗料側及びバックコート層用塗料の塗布面に易接着層を設けてもよい。易接着層を設けることによって支持体と磁性層又は非磁性層との接着力を向上させることができる。易接着層としては、溶剤への可溶性のポリエステル樹脂を塗布してもよい。易接着層は厚さとして0.5μm以下のものが用いられる。
VII.層構成
本発明で用いられる磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体の好ましい厚みが3〜80μmである。コンピュータテープの非磁性支持体は、3.5〜7.5μm、好ましくは3〜7μmの範囲の厚さのものが使用される。また、非磁性支持体と非磁性層又は磁性層の間に易接着層を設けた場合、易接着層の厚みは、0.01〜0.8μm、好ましくは0.02〜0.6μmである。また、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対側の面に設けられたバックコート層の厚みは、0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜0.8μmである。
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には10〜10nmであり、好ましくは20〜80nmであり、さらに好ましくは30〜80nmである。また、磁性層の厚み変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±40%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
本発明の非磁性層の厚みは、0.02〜0.3μmであり、0.03〜0.25μmであることが好ましく、0.04〜0.2μmであることがさらに好ましい。なお、本発明の磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10T・m(100G)以下又は抗磁力が7.96kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
VIII.製造方法
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる六方晶フェライト強磁性粉末又は強磁性金属粉末、非磁性粉末、ベンゼンスルホン酸誘導体、π電子共役系の導電性高分子、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は磁性粉末又は非磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)及び磁性体100重量部に対し15〜500重量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用液及び非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法では、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性塗布液を所定の膜厚となるようにして磁性層を塗布して形成する。ここで複数の磁性層塗布液を逐次又は同時に重層塗布してもよく、非磁性層塗布液と磁性層塗布液とを逐次又は同時に重層塗布してもよい。上記磁性塗布液又は非磁性層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
磁性層塗布液の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属微粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶フェライトの場合は一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向することもできる。
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1,000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい、また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダ処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。本発明の磁気記録媒体は、表面の中心面平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤とを選んで形成した磁性層を上記カレンダ処理を施すことにより行われる。カレンダ処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cmの範囲であり、好ましくは200〜450kg/cmの範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cmの範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
熱収縮率低減手段として、低テンションでハンドリングしながらウエッブ状で熱処理する方法と、バルク又はカセットに組み込んだ状態などテープが積層した形態で熱処理する方法(サーモ処理法)があり、両者を利用できる。高出力と低ノイズの磁気記録媒体を供給する観点からはサーモ処理法が好ましい。
得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
IX.物理特性
本発明に用いられる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は100〜300mT(1,000〜3,000G)である。また磁性層の抗磁力(Hr)は、143.3〜318.4kA/m(1,800〜4,000Oe)であるが、好ましくは159.2〜278.6kA/m(2,000〜3,500Oe)である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFD及びSFDrは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
本発明で用いられる磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において0.5以下であり、好ましくは0.3以下である。また、表面固有抵抗は、好ましくは磁性面104〜1012Ω/sq、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2,000kg/mm2)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1,500kg/mm2)、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールやカレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体における非磁性層と磁性層と間では、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができる。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くすることができる。
具体的実施例ならびに比較例をあげるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
なお実施例中の「部」の表示は特に断らない限り「重量部」を示す。
(測定方法)
1.中心面平均粗さ
光干渉法(WYKO社製TOPO3D)によりカットオフ値0.25mmで測定した。
2.クリープコンプライアンス
磁気テープをその長手方向に30mm、幅方向に幅5mmで切り出したサンプルをアルバック理工(株)製熱機械試験装置TM−9200にセットして70℃で1時間エージングした。引き続き温度70℃で13MPaの応力をかけ、48時間後の寸法変化を測定し、以下の式により求めた。 クリープコンプライアンス(GPa-1)=(寸法変化/サンプル長)/応力
3.エラーレート(初期、保存後)
信号を23℃、50%RHにおいて8−10変換PR1等化方式で記録し、記録直後(初期)および50℃、80%RHの各環境下で1週間保存した後のエラーレートを測定した。
4.ガラス転移温度
パーキンエルマー社製示差走査熱量計Pyris1を使用し、昇温速度5℃/minで室温から200℃まで測定し、ベースライン上のギャップからガラス転移温度を求めた。
<実施例1−1>
1.放射線硬化層形成塗液の調製
放射線硬化型樹脂(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15部
メチルエチルケトン 50部
シクロヘキサノン 50部
上記組成物をディスパーで溶解し放射線硬化層形成塗液とした。
2.磁性塗料液の調製
強磁性板状六方晶フェライト粉末 100部
組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9.1/0.2/0.8、
Hc:195kA/m(2,450Oe)、板径:28nm、板状比:4、
BET比表面積:50m2/g、σs:60A・m2/kg(60emu/g)
ポリウレタン樹脂 12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、
親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al23(粒子サイズ0.15μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ 20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
3.非磁性塗料液の調製
非磁性無機質粉末 85部
α−酸化鉄
表面処理剤:Al23、SiO2、長軸径:0.15μm、タップ密度:0.8、
針状比:7、BET比表面積:52m2/g、pH8、
DBP吸油量:33g/100g
カーボンブラック 20部
DBP吸油量:120ml/100g、pH:8、
BET比表面積:250m2/g、揮発分:1.5%
ポリウレタン樹脂 12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、
親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
アクリル樹脂 6部
ベンジルメタクリレート/ダイアセトンアクリルアミド系、
親水性極性基:−SO3Na=60eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al23(平均粒径0.2μm) 1部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
上記上層用磁性塗料および下層用非磁性塗料組成物のそれぞれについて、各成分をオープンニーダーで60分間混練した後、サンドミルで120分間分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)を6部加え、さらに20分間撹拌混合した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料および非磁性塗料を調製した。
予めコロナ処理を行った厚さ6μmで中心面平均表面粗さが4nmのポリフェニレンサルファイド支持体上に放射線硬化層形成塗液を乾燥後の厚さが0.5μmになるように塗布、乾燥した後、加速電圧150kVで吸収線量が4Mradとなるように電子線照射を行い、次いで上記非磁性塗料液を乾燥後の厚さが1.5μmになるように塗布し、さらにその直後に磁性層用塗料液を乾燥後の厚さが0.08μmになるように同時重層塗布した。磁性層および非磁性層が未乾燥の状態で300mT(3,000G)の磁石で磁場配向を行い、さらに乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダで速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃で表面平滑化処理を行った後、70℃で48時間加熱処理を行い、1/2インチ幅にスリットし、磁気テープを作成した。
<実施例1−2、1−3>
放射線硬化層の厚みを表1に示したように変更した以外は、実施例1−1と同様の方法で実施例1−2、3を作成した。
<比較例1−1〜1−4>
非磁性支持体、放射線硬化層、強磁性板状六方晶フェライト粉末を表1に示したように変更した以外は、実施例1−1と同様の方法で比較例1−1〜1−4を作成した。
表1に、使用した非磁性支持体、放射線硬化層、強磁性板状六方晶フェライト粉末の種類及びエラーレートの測定結果を示す。
Figure 2005158142
<実施例2−1>
4.上層磁性塗料液の調製
強磁性針状金属粉末 100部
組成:Fe/Co/Al/Y=68/20/7/5、
表面処理剤:Al23、Y23
Hc:199kA/m(2,500Oe)、結晶子サイズ:130Å、
長軸径:60nm、針状比:6、BET比表面積:46m2/g、
σs:150A・m2/kg(150emu/g)
ポリウレタン樹脂 12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、
親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al23(粒子サイズ0.15μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
上記上層用磁性塗料の各成分を用いて実施例1−1と同様の方法で磁性塗料を調製し、さらに実施例1−1と同様の方法で磁気テープを作成した。
<実施例2−2、2−3>
放射線硬化層厚みを表2に示したように変更した以外は、実施例2−1と同様の方法で実施例2−2、2−3を作成した。
<比較例2−1〜2−4>
非磁性支持体、放射線硬化層、強磁性針状金属粉末を表2に示したように変更した以外は、実施例2−1と同様の方法で比較例2−1〜2−4を作成した。
表2に、使用した非磁性支持体、放射線硬化層、強磁性針状金属粉末の種類及びエラーレートの測定結果を示す。
Figure 2005158142

Claims (4)

  1. 非磁性支持体上に
    放射線照射により重合可能な化合物を含む層を放射線照射により硬化させた厚さ0.3〜3.0μmの放射線硬化層を有し、
    その上に必要に応じ非磁性粉体と結合剤を含む下層を介し、
    平均板径5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末もしくは平均長軸長20〜100nmの強磁性金属微粉末及び結合剤を分散した少なくとも一層の磁性層を有する
    磁気記録媒体において、
    該非磁性支持体のガラス転移温度が80〜150℃の範囲にあり、かつ、温度70℃、応力13MPaで48時間経過後のクリープコンプライアンスが0.05〜0.20GPa−1の範囲にあることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 上記非磁性支持体がポリフェニレンサルファイドである請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 該放射線照射により重合可能な化合物が分子内にエーテル結合および放射線照射により重合可能な官能基を1分子中に2個以上有し、分子量が1,000以下の化合物である請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
  4. 前記非磁性支持体の放射線硬化層塗布面にコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、及び電子線照射処理からなる群より選ばれる易接着処理を行った後に放射線硬化層を塗設した請求項1〜3いずれか1つに記載の磁気記録媒体。
JP2003394520A 2003-11-25 2003-11-25 磁気記録媒体 Pending JP2005158142A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003394520A JP2005158142A (ja) 2003-11-25 2003-11-25 磁気記録媒体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003394520A JP2005158142A (ja) 2003-11-25 2003-11-25 磁気記録媒体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005158142A true JP2005158142A (ja) 2005-06-16

Family

ID=34720561

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003394520A Pending JP2005158142A (ja) 2003-11-25 2003-11-25 磁気記録媒体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005158142A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007250078A (ja) * 2006-03-15 2007-09-27 Fujifilm Corp 磁気記録媒体
JP2007294075A (ja) * 2006-03-29 2007-11-08 Fujifilm Corp 磁気記録媒体

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007250078A (ja) * 2006-03-15 2007-09-27 Fujifilm Corp 磁気記録媒体
JP2007294075A (ja) * 2006-03-29 2007-11-08 Fujifilm Corp 磁気記録媒体

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2007265574A (ja) 磁気記録媒体
JP2007273037A (ja) 磁気記録媒体およびその製造方法
JP2006041493A (ja) 六方晶フェライト磁性粉末、その製造方法および磁気記録媒体
JP2007294079A (ja) 磁気テープ
JP2007250078A (ja) 磁気記録媒体
JP2007273038A (ja) 磁気記録媒体
JP2007188613A (ja) 磁気記録媒体及びその製造方法
US20060093869A1 (en) Magnetic recording medium
EP1643492A1 (en) Magnetic tape cartridge
JP4719431B2 (ja) 六方晶フェライト磁性粉末、その製造方法および磁気記録媒体
US7438983B2 (en) Magnetic recording medium
EP1722362B1 (en) Magnetic recording medium
JP2007012225A (ja) 磁気記録媒体
JP2007305208A (ja) 磁気記録媒体およびその製造方法
JP2006040334A (ja) 磁気記録媒体
JP2006277838A (ja) 磁気記録媒体
JP2004005890A (ja) 磁気記録媒体
JP2005222603A (ja) 磁気記録媒体
JP2005158142A (ja) 磁気記録媒体
JP4078133B2 (ja) 磁気記録媒体
JP2006338795A (ja) 磁気記録媒体
JP2007272956A (ja) 磁気記録媒体
JP2007294083A (ja) 磁気記録媒体
JP2004158109A (ja) 磁気記録媒体
JP2004039051A (ja) 磁気記録媒体