JP2005154742A - 膜状物、その製造方法及びその用途 - Google Patents

膜状物、その製造方法及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐溶剤性、耐熱性の高いポリマーは成型が困難で、膜状物を得ることが難しいという耐久性と成形性の問題点を解決して、任意の形態の、高耐溶剤性、高耐熱性の置換ポリアセチレンの膜状物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で示される重合体を主成分として含有する膜状物を提供する。
【化1】
Figure 2005154742

(ただし、nは2以上の整数、Arは芳香族基、Phはフェニル基を表す。)
また、下記一般式(2)で示される重合体を主成分として含む本発明の膜状物の、一般式(2)中の-ORを水酸基に変える処理を行なうことを含む、上記本発明の膜状物の製造方法を提供する。
【化2】
Figure 2005154742

(ただし、nは2以上の整数、Arは芳香族基、Phはフェニル基、Rはアルキルシリル基、アルキル基又は芳香族基を表す。)
【選択図】 なし

Description

本発明は置換アセチレンポリマーの膜状物、その製造方法及びその分離膜としての用途に関する。
膜状に成形されたポリマーは、一般にポリマーを溶媒に溶解した溶液を膜状に注形した後溶媒を除去して製造するか、あるいはポリマーを溶融状態にして成型した後、固化させて得られる。ここでポリマーの素材を適宜選択することにより得られる膜状物の耐溶剤性、耐熱性を発現している。しかしながら、溶液、溶融状態にして成型するため、成型の容易さと成型後の膜状物の耐溶剤性、耐熱性はしばしば相反する要求となり、成型しやすいポリマーは高い耐溶剤性、耐熱性が得にくく、耐溶剤性、耐熱性の高いポリマーは成型しにくいといった問題が起こって両方を同時に満足することは困難となる場合がある。
そこで、耐熱性、耐溶剤性の向上のためポリマーを膜状物に成型した後架橋反応を行い、ポリマーを不溶化、耐久性向上を図る方法も用いられている。反応を伴う方法は、用いるポリマーの種類によって種々の方法が採用されている。
一方、置換ポリアセチレンはそのユニークな構造により特異な性質を示すことが知られている。置換基を有するポリアセチレンはビニルポリマーに比較して剛直な主鎖構造を持ち、嵩高い置換基の存在によって広い分子鎖間隙を持たせることにより高い物質透過性能が期待できる。1983年増田らによってポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)の合成が報告され、このポリマーが非常に高い気体透過性を示すことが見出された。置換基を有するポリアセチレンの中でもポリ(ジフェニルアセチレン)類は、一般的にTaCl5-n-Bu4Sn触媒により重量平均分子量(Mw)が100万以上の高重合体が得られ、優れた熱安定性を有することが知られている。特にポリ(ジフェニルアセチレン)はいずれの溶媒にも不溶で、かつ融点を持たない。しかしながら、その性質ゆえに成型が困難であり、これまで膜状物のポリ(ジフェニルアセチレン)は得られていなかった。特許文献1によると、アルキルシリル置換フェニル基を有するポリ(ジフェニルアセチレン)は溶媒への溶解性に優れ成形性が著しく改善されたものである。一方、高性能化(耐久性、気体透過性向上)のためには水酸基などの極性官能基導入が要求されるが、一般に極性基は重合触媒を被毒し、重合が不可能なためポリマーは得られなかった。
特開2002−322293号公報
本発明の目的は、耐溶剤性、耐熱性の高いポリマーは成型が困難で、膜状物を得ることが難しいという耐久性と成形性の問題点を解決して、任意の形態の、高耐溶剤性、高耐熱性の置換ポリアセチレンの膜状物及びその製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、高耐溶剤性、高耐熱性の分離膜を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、容易に成形可能な特定の置換ポリアセチレンから成る膜状物を作製し、次いでこの膜状物を酸又はアルカリで処理して特定の基を水酸基に変えることにより、高耐溶剤性、高耐熱性の置換ポリアセチレンの膜状物を作製することができることを見出し、また、この膜状物が、気体及び液体の透過性が高く、分離膜として優れた性能を有することを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される重合体を主成分として含有する膜状物を提供する。
Figure 2005154742
(ただし、nは2以上の整数、Arは芳香族基、Phはフェニル基を表す。)
また、本発明は、下記一般式(2)で示される重合体を主成分として含有する膜状物を提供する。
Figure 2005154742
(ただし、nは2以上の整数、Arは芳香族基、Phはフェニル基、Rはアルキルシリル基、アルキル基又は芳香族基を表す。)
さらに、本発明は、上記一般式(2)で示される重合体を主成分として含む本発明の膜状物の、一般式(2)中の-ORを水酸基に変える処理を行なうことを含む、上記本発明の膜状物の製造方法を提供する。さらに、本発明は、上記一般式(1)で示される重合体を含有する膜状物から成る気体用又は液体用の分離膜を提供する。
本発明の膜状物は耐熱性、耐溶剤性に優れ、高い透過性能を有する分離膜を与えることが出来る。また、本発明の膜状物の製造方法によって成形性の悪い、あるいは成形性のない耐熱性、耐溶剤性重合物の膜状物を得ることが出来る。
本願発明により、耐熱性、耐溶剤性の高い膜状物を容易に入手することが出来、この膜状物を分離膜として用いることにより、高い透過性で有用物を分離することが出来る。また、通常の有機膜では使用することの出来ない酸、アルカリ、有機溶剤の分離や高温での分離が可能となる。さらに、光学活性の膜を用いることにより光学活性体の分離が可能となる。
上記のとおり、本発明の膜状物に主成分として含まれる重合体は一般式(1)で表される置換ポリアセチレンであり、一般式(1)中のArは芳香族基を示す。芳香族基としてはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基などの単環または複環の炭化水素系芳香族基であり、入手のしやすさ、前駆体の重合のしやすさなどの点からフェニル基、ナフチル基、アントリル基が好ましい。重合体を構成する複数の繰返し単位中のArは全て同一であってもよいし、異なるものでもよい。一般式(1)中のnは、繰返し単位の数を示すものであり、2以上の整数である。nは、耐久性、強度の点から20以上が好ましく、より好ましくは100以上である。nの上限は特にないが、通常、10万程度以下である。重合体の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量で1万以上が好ましく、さらに好ましくは10万〜200万、特に好ましくは100万〜200万である。
本発明の重合体は、一般式(1)に示される繰返し単位のみから成ることが好ましいが、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、他の繰返し単位を含む共重合体であってもよい。このような、他の繰返し単位の例として、フェニルアセチレン、ジフェニルアセチレン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの他の繰返し単位の数は、全繰返し単位の数の10%以下が好ましく、さらに好ましくは5%以下である。
本発明の膜状物は、上記した重合体のみから成ることが好ましいが、上記重合体を主成分とし(すなわち、50重量%以上含み)、かつ、本発明の効果に悪影響を与えない範囲であれば、他の重合体や無機物、有機物等の添加物を含んでいてもよい。このような添加物の例として、ポリエステルやポリアミドなどの汎用性ポリマー、ヨウ化カリウム、フタル酸エステル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの添加物の配合量は、膜状物全体の10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは5重量%以下である。
膜状物の厚さは特に限定されないが、下記製造方法により製造される程度の厚さであり、通常、30μm〜500μm程度である。
上記一般式(1)の重合体からなる膜状物は、上記一般式(2)の重合体を溶媒に溶解して、あるいは溶融して膜状物に成型加工し、しかる後に該膜状物を処理して一般式(2)中の-ORを水酸基に変えることにより製造することができる。
上記一般式(2)中のAr、Ph及びnは、一般式(1)中のAr、Ph、nとそれぞれ同義である。一般式(2)中のArは、最終的に得られる一般式(1)の重合体に対応してそれぞれArがフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基などの単環または複環の炭化水素系芳香族基を選択する。また、一般式(2)中のRはアルキルシリル基、アルキル基又は芳香族基を表す。該アルキルシリル基中のアルキル部分又は前記アルキル基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基及びt-ブチル基を挙げることができる。これらのうち、重合反応のしやすさ,成型のしやすさ、成型後の反応のしやすさの点からメチル基、エチル基、イソプロピル基,t-ブチル基が好ましい。また、Rとしては芳香族基(フェニル基、ナフチル基、アントリル基等)も好ましい。また、得られた膜状物に光学活性などの特性を付与するためにはピナニル基などの光学活性な基を用いることが好ましい。また、Rにより表されるアルキルシリル基中のアルキル基の数は1〜3個のいずれであってもよい。すなわち、該アルキルシリル基は、モノアルキルシリル基、ジアルキルシリル基及びトリアルキルシリル基を包含する意味で用いている。なお、一般式(2)で表される重合体は、一般式(1)について説明したのと同様、他の繰返し単位を含む共重合体であってもよい。
一般式(2)で表される重合体は例えばACS.Polym.Prep.,1999,40,431やSynthesis, 1979, 841-876.、J.Chem.Soc.(B)1969.15-20、J.Chem.Soc(b)1969,21-25あるいはMacromolecules,1992,25-,5816-5820等に記載の方法に従って下記一般式(3)で示すような対応する置換アセチレンのモノマーからTaCl5-n-Bu4Sn触媒を用いて合成することが出来る(下記実施例参照)。
Ph−C=C−Ar−OR (3)
(ただし、Ar、Ph、Rは上記一般式(2)における定義と同じ)
一般式(2)で表される重合体を溶媒に溶解した溶液から乾式法、湿式法、あるいは乾湿式法で膜状物を得ることができる。また、重合物を溶融して整形し、冷却して膜状物を得ることが出来る。溶液の溶媒としてはトルエン、キシレン、DMF、DMSOなどを使用することが出来る。すなわち、例えば、下記実施例に具体的に記載するように、一般式(2)で表される重合体の溶液又は溶融物を基体上に流延し、溶液の場合は溶媒を除去し、溶融物の場合には冷却固化することにより膜状物とすることができる。溶液を用いる場合、上記例示したような溶媒中の一般式(2)で表される重合体の濃度は、特に限定されないが、通常、1〜50重量%程度、好ましくは5〜20重量%程度である。なお、膜状物としては、上記一般式(1)の重合体を含む膜状物について説明したのと同様に、上記一般式(2)で示される置換ポリアセチレンを主成分として、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で他の重合物,無機物などを混合しても良い。
得られた一般式(2)の重合体を主成分として含有する膜状物を処理して一般式(2)中の-ORを水酸基に変える。これにより、上記一般式(1)で表される対応する重合体を主成分として含有する膜状物が得られる。この処理は、酸又はアルカリを用いて行うことができる。特に、プロトン酸溶液で処理することが好ましい。プロトン酸としては、一般のプロトン酸で処理できるがトリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸又は硫酸が反応速度の点で好ましい。処理は、例えば、プロトン酸の水溶液、又は有機溶媒と水との混合溶媒に溶解した溶液に膜状物を一定時間浸漬することによって行える。溶液中のプロトン酸の体積濃度は1〜99%が好ましい(ただし、飽和濃度以下)。処理温度は、特に限定されないが、室温下(20〜25℃)で行うことができるので、室温下で行なうことが簡便でコスト的にも好ましい。また、浸漬時間は20〜25℃においては通常、5秒〜24時間であり、温度、触媒の使用によって適宜選択することが出来る。時間が短すぎると反応が不十分となる。上記有機溶媒としては、プロトン酸を溶解し、かつ膜状物を溶解しない溶媒が好ましい。例えばヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族系の溶媒を用いることが出来る。触媒は特に必要ではないが、所望により界面活性剤、ルイス酸等を触媒として用いることができる。
プロトン酸で処理した膜状物は膜状物内の過剰の酸を洗浄することが好ましい。酸が多い場合はアルカリによって中和することが好ましい。アルカリとしてはトリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類が好適に用いられる。また、アルカリ処理は、アルカリを溶媒に溶解した溶液に膜状物を浸漬するか、該液を塗布することによって行える。アルカリ溶液の溶媒はプロトン酸の溶媒と同じく、アルカリを溶解し、かつ膜状物を溶解しない溶媒が好ましい。例えば水やヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族系の溶媒を用いることが出来る。
得られた膜状物は耐溶剤性、耐熱性が高く、気体分離、液体分離に用いることが出来る。気体分離においては気体成分の分離や有機蒸気の分離、酸、アルカリガスの分離、濃縮、精製にまた、高温での使用が可能である。また、液体分離においては水分離、有機溶剤の分離、石油成分の精製、酸、アルカリの分離精製などに用いることが出来る。
以下に、実施例によって本発明の方法をさらに詳細に示すが、本発明の方法はこれら実施例によって制限されるものではない。
実施例1
1−p−(t−ブチルジメチルシロキシ)フェニル−2−フェニルアセチレン6.2gをトルエン200mLに溶解し、TaCl5-n-Bu4Sn触媒3.5gを添加して80℃で24時間反応した。得られた反応液にメタノール500mLを添加してポリマーを沈殿した。さらに沈殿をトルエンに溶解し、メタノールで再沈精製した。得られたポリマーはIR測定の結果ポリ(1−p−(t−ブチルジメチルシロキシ)フェニル−2−フェニルアセチレン)であり、GPC測定でMw>200万、Mw/Mn=10であった。
IRデータ:3050, 1600-1450, 1246, 852, 812 (cm-1)
得られたポリ(1−p−(t−ブチルジメチルシロキシ)フェニル−2−フェニルアセチレン)を1wt%のトルエン溶液とした。この溶液をガラスシャーレに注いだ後、室温25℃で24時間溶媒を蒸発させることによりフィルム1を得た。得られたフィルム1をトリフルオロ酢酸水溶液(濃度20重量%)に浸漬し、25℃で5時間放置した。さらにフィルム中の過剰の酸を中和するために炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度5重量%)に室温で5時間浸漬した。最後にヘキサンにフィルムを2時間浸漬した後、室温で約10時間恒量になるまで乾燥し、フィルム2を得た。
得られたフィルム2はIRスペクトルを測定し、上記した1246cm−1のSi−CH変角振動の吸収が消失していることを確認した。
得られたフィルム1はトルエン、クロロホルムなどに可溶、分解温度320℃、酸素透過係数POが160barrer、PO/PNが3.2であったのに対して、フィルム2はトルエン、クロロホルムなどの溶媒に不溶で分解温度は350℃、酸素透過係数POが8.0barrer、PO/PNは3.5であった。ガス透過係数は、フィルムを気体透過係セルに設置し、酸素、窒素を加圧供給し透過するガスの流量を求めた。透過流量から単位面積あたり、単位圧力あたりの透過ガス量(標準流量)を求めた。同様にして測定した各種気体の透過係数を表1に示す。
Figure 2005154742

Claims (13)

  1. 下記一般式(1)で示される重合体を主成分として含有する膜状物。
    Figure 2005154742
    (ただし、nは2以上の整数、Arは芳香族基、Phはフェニル基を表す。)
  2. 上記一般式(1)において、Arがフェニル基、ナフチル基、アントリル基から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の膜状物。
  3. 上記一般式(1)において、nが100以上の整数である請求項1又は2記載の膜状物。
  4. 前記重合体の重量平均分子量が1万以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の膜状物。
  5. 前記重合体の重量平均分子量が100万以上である請求項4記載の膜状物。
  6. 下記一般式(2)で示される重合体を主成分として含有する膜状物。
    Figure 2005154742
    (ただし、nは2以上の整数、Arは芳香族基、Phはフェニル基、Rはアルキルシリル基、アルキル基又は芳香族基を表す。)
  7. 上記一般式(2)において、Arがフェニル基、ナフチル基、アントリル基から選ばれる少なくとも一種である請求項6記載の膜状物。
  8. 上記一般式 (2)において、nが100以上の整数である請求項7記載の膜状物。
  9. 前記アルキルシリル基中のアルキル部分又は前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はt-ブチル基である請求項8記載の膜状物。
  10. 請求項6ないし9のいずれか1項に記載の膜状物の、一般式(2)中の-ORを水酸基に変える処理を行なうことを含む、請求項1記載の膜状物の製造方法。
  11. 請求項6ないし9のいずれか1項に記載の膜状物を、プロトン酸溶液で処理する請求項10記載の方法。
  12. 前記プロトン酸がトリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸又は硫酸である請求項11記載の方法。
  13. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の膜状物から成る気体用又は液体用の分離膜。

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