JP2005154313A - 廃プラスチックのケミカルリサイクル方法 - Google Patents

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正皓 伊東
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順也 西野
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裕信 藤吉
Tei Ishinomori
禎 石野森
Nobuhiko Kubota
伸彦 久保田
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Abstract

【課題】 廃プラスチックを加熱分解して石油化学用原料として再利用するケミカルリサ
イクル法において、原料として使用す廃プラスチックに前処理工程を施して、ハロゲン元
素を低減させて、触媒寿命を大幅に延長するとともに、プラントの安定した運転を確保す
る。
【解決手段】 前処理工程として光選別法と比重差選別法を併用して、廃プラスチック中
のハロゲン元素を含むプラスチックの含有量を5wt%未満、もしくはハロゲン元素の含
有量を0.5wt%未満にする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、廃プラスチック、特に都市ゴミ等の廃棄物に含まれる廃プラスチックのうち
、主にポリオレフィン系プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を処理して、
プラスチック原料として再利用できる炭素数2〜4のオレフィンガス、燃料電池用燃料、
水添・脱硫用原料として再利用できる水素、及び化学/医薬原料として再利用できるベン
ゼン、トルエン、及びキシレン(以下BTXと称する)等の芳香族炭化水素を高効率に回
収できるようにした廃プラスチックのケミカルリサイクル方法に関するものである。
近年、都市ゴミ等の廃棄物として多量の高分子廃棄物(廃プラスチック)の発生量が増
加しており、こうした廃プラスチックの処理が大きな社会問題となっている。プラスチッ
クの生産量は、ポリオレフィン系プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン等)が最
も多く、そのために発生する廃プラスチックの量もポリオレフィン系プラスチックが最も
多くなっている。近年、ペットボトルや発泡材容器等は分別回収がすすめられるようにな
ってきているが、種々のプラスチック製の容器、板、袋、帯状物等は分別されることなく
一括して処理されている。
従来からこのような廃プラスチックをリサイクルする方法としては、高炉原料化方法、
油化方法、ガス化方法等が考えられている。
高炉原料化方法は、高炉原料に廃プラスチックを添加して、製鉄時の還元剤とするもの
であるが、最終的には二酸化炭素(CO )となって排出されるものである。
油化方法は、廃プラスチックを、鉄や白金を担持した活性炭触媒の存在下、又は触媒の
存在なしで加熱処理することにより熱分解し、その後コンデンサーにより凝縮させて水素
(H )を含む炭素数1〜20の多様の組成が混在した回収油を得るようにしたもので
ある。この回収油は、種々の燃焼設備でそのまま燃料として用いたり、或いは精製するこ
とによってガソリンを得たり、更にはオレフィンガスや化学/医薬原料等を得るようにし
ている。
ガス化方法は、廃プラスチックを600〜1400℃で加熱して熱分解し、得られた分
解ガスをメタノールやアンモニアを合成する際の原料とするものである。
上記高炉原料化方法では、廃プラスチックを単に製鉄時の還元剤として利用するという
ものであるが、高炉の還元剤として用いられる量には限りがあり、発生する廃プラスチッ
クの量からみて利用される量は非常に少なく期待できる効果も小さい。又、還元剤として
添加した廃プラスチックは、単に二酸化炭素(CO )となって排出されるものであり
、よって、石油資源から作られたプラスチックが石油化学原料としてリサイクルされては
おらず、単に消費されてしまうという問題がある。
又、油化方法では、得られる回収油の組成が多様であるために、特定化合物を回収する
ことが困難であり、特に、プラスチック原料となるオレフィンガス、或いは燃料電池用燃
料、水添・脱硫用原料として利用できる水素(H )、更には化学/医薬原料として利
用できるベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)の回収率が低かった。又、回収油の組
成が多岐にわたるために、必要な成分を取り出すための複雑な精製工程が必要である。従
って、実用上は燃料油としての用途のみに限定され、この場合も石油化学原料としてリサ
イクルされずに単に消費されてしまうという問題がある。
ガス化方法では、単純に廃プラスチックを熱分解によってガス化するために、600〜
1400℃という高温で加熱処理する必要があリ、そのためにエネルギー消費量が増加し
かつ反応器の製作にも耐熱性材料を必要として装置コストが増化する問題がある。又、ガ
ス化方法は高温で分解処理することにより水素(H )及び一酸化炭素(CO)を生成
するものであるが、メタノールやアンモニア等を合成する際には、更に多くのエネルギー
が必要になるという問題がある。このようなエネルギー的、設備的に多大な費用を要する
方法は、廃プラスチックのリサイクル方法として採用することは困難である。
また、前記したように例えばポリ塩化ビニルで成形された容器やその他の材料、或いは
ハロゲン元素により表面加工して通気性を遮断した袋やシート等のように、ハロゲン元素
を含有するものが多く混在している。
このようなハロゲン元素を含む廃プラスチックは、環境汚染の問題から確実にハロゲン
元素を分離除去して処理する必要があるが、一般には単に高温で焼却処理するという方法
が取られていたので、ダイオキシンの発生という新たな環境汚染問題が生じるようになっ
てきた。
一方、廃プラスチックをプラスチックの基礎物質原料として有効に再生しようとするケ
ミカルリサイクル方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
本出願人も、先に上記実情に鑑み廃プラスチックを脱ハロゲン元素処理してハロゲン元
素を確実に除去し、かつ脱ハロゲン元素された廃プラスチックからプラスチック原料とし
てのオレフィンガス及び水素、並びに化学/医薬原料としてのBTXを効果的に回収する
ことができるようにした廃プラスチックのケミカルリサイクル方法及び装置を提案した(
例えば、特許文献2参照。)。
この方法は、廃プラスチックからポリオレフィン系プラスチックとそれ以外のプラスチ
ックとを分離する前処理工程(I)と、ポリオレフィン系プラスチックを熱分解により気
化する加熱分解工程(II)と、その熱分解ガスからガリウム又はホウ素を含有した珪酸塩
触媒の存在下で反応させて、炭素数2〜4のオレフィン成分と水素からなる気相成分と、
芳香族炭化水素を主体とする液相成分を生成する触媒分解工程(III) と、前記触媒分解
工程(III) で得られた気相成分と液体成分とを分離する気液分離工程(IV)と、前記気
液分離工程(IV)で得られた気相成分からオレフィン成分と水素を分離する水素分離工程
(V)及び前記気液分離工程(IV)で得られた液相成分からベンゼン、トルエン及びキシ
レンを分離取得する分溜工程(VI)とを有する方法である。
この発明によれば、前処理工程において、廃プラスチックの大半を占めるポリオレフィ
ン系プラスチックとそれ以外のプラスチックとに効果的に分離し、そのポリオレフィン系
プラスチックを加熱分解工程で気化させ、加熱分解工程で得た熱分解ガスをガリウム又は
ホウ素を含有する珪酸塩触媒の存在下で加熱分解することにより、水素及び炭素数2〜4
のオレフィンを主体とする気相成分、並びに芳香族炭化水素を主体とする液相成分を生成
させ、その後気相成分と液相成分を分離した後、気相成分から水素と炭素数2〜4のオレ
フィンガスを取得し、液相成分からはBTXを分溜取得するようにしているので、炭素数
2〜4のオレフィンガスはプラスチック原料として再利用でき、又水素は燃料電池用燃料
、水添・脱硫用原料として再利用でき、液相は蒸留塔によってベンゼン、トルエン、キシ
レンに分離することで化学/医薬用原料として再利用できる。従って、廃プラスチックを
有効且つ効率的にケミカルリサイクルできる利点がある。
更に、前処理工程と加熱分解工程との間に、前処理工程で分離したポリオレフィン系プ
ラスチックを加熱してハロゲン元素を除去する脱ハロゲン元素処理工程を加えれば、ハロ
ゲン元素を含まない廃プラスチックとしてその後の処理を行うことができ、又、脱ハロゲ
ン元素処理工程での加熱によって廃プラスチックは溶融状態となるので、以後の搬送等の
取扱い性を著しく向上できる利点がある。
特開2002−20533号公報 特開2002−121318号公報
しかしながら、上述の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法では、原料として使用
する前処理工程で分離したポリオレフィン系プラスチック中のハロゲン元素含有量によっ
て触媒寿命が大幅に変動し、安定したプラント運転が困難であることが判明した。
また、前処理工程と加熱分解工程との間に加熱によりハロゲン元素を除去する処理工程
を加える方法では、有害な塩化水素ガスが発生し、塩化水素ガスの処理に複雑な設備を必
要とし、少量のハロゲン元素を処理する割りには大がかりな設備投資を必要とするので効
率的でないことが判明した。
本発明は、先の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法を改良するものであって、前
処理工程で分離されたケミカルリサイクルにかけられるポリオレフィン系プラスチック中
のハロゲン元素含有量に規制を設けることにより、触媒寿命を延長させて安定したプラン
ト運転を可能とし、ハロゲン元素処理用の複雑な設備も必要としないので安価な設備で処
理できる方法を提供するものである。
ハロゲン元素を含む廃プラスチックは、まとめてハロゲン元素濃度を高めた状態で処理
した方が得策だからである。
すなわち、本発明の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法の一つは、廃プラスチッ
クからポリオレフィン系プラスチックとそれ以外のプラスチックとを分離して、ポリオレ
フィン系廃プラスチック中のハロゲン元素を含むプラスチックの含有量を5wt%未満、
好ましくは1wt%未満とする前処理工程と、前記分離されたポリオレフィン系プラスチ
ックを熱分解により気化させる加熱分解工程と、前記加熱分解工程で得られた熱分解ガス
を珪酸塩触媒の存在下で加熱分解して、水素及び炭素数2〜4の低級炭化水素からなる気
相成分と、芳香族炭化水素を主成分とする液相成分を生成させる触媒分解工程と、該触媒
分解工程を出た気相成分から水素を分離して炭素数2〜4の低級炭化水素を得る工程、並
びに前記触媒分解工程で得られた液相成分をベンゼン、トルエン、キシレンを主体とする
芳香族炭化水素に分離する工程とを有するケミカルリサイクル方法とした。
本発明の他の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法は、廃プラスチックからポリオ
レフィン系プラスチックとそれ以外のプラスチックとを分離して、ポリオレフィン系廃プ
ラスチック中のハロゲン元素の含有量を0.5wt%未満、好ましくは0.1wt%未満
とする前処理工程と、前記分離されたポリオレフィン系プラスチックを熱分解により気化
させる加熱分解工程と、前記加熱分解工程で得られた熱分解ガスを珪酸塩触媒の存在下で
加熱分解して、水素及び炭素数2〜4の低級炭化水素からなる気相成分と、芳香族炭化水
素を主成分とする液相成分を生成させる触媒分解工程と、該触媒分解工程を出た気相成分
から水素を分離して炭素数2〜4の低級炭化水素を得る工程、並びに前記触媒分解工程で
得られた液相成分をベンゼン、トルエン、キシレンを主体とする芳香族炭化水素に分離す
る工程とを有するケミカルリサイクル方法とした。
本発明のケミカルリサイクル方法においては、前記珪酸塩触媒としてガリウムシリケイ
ト系触媒もしくはボロンシリケイト系触媒を利用することができる。
これらの珪酸塩触媒を使用すると、廃プラスチックから炭素数2〜4の低級炭化水素及
びBTXを主成分とする芳香族炭化水素を効率良く回収することが可能となる。ここで、
前記珪酸塩触媒としてガリウムシリケイト系触媒を使用すると、芳香族炭化水素を多く取
得することができ、ボロンシリケイト系触媒を使用する場合には、炭素数2〜4の低級炭
化水素を多く取得することが可能となる。
本発明のケミカルリサイクル方法においては、前記前処理工程を光選別方式と比重差
選別方式を併用して行うことにより目標とする選別が可能となる。
光選別方式は比重差選別方式よりも設備が簡単であるが、選別精度はやや劣る難点があ
るが、種々の形状の廃プラスチックに対応することができる。比重差選別方式は設備はや
や複雑になるが、廃プラスチックを小さく裁断して処理するので選別精度が高い。両者を
併用することにより選別精度を向上させることが可能となる。
本発明によれば、処理すべき廃プラスチックはほとんどポリオレフィン系のプラスチッ
クとなり、ハロゲン元素含有量も0.5wt%以下と低いので、珪酸塩触媒の寿命が長く
なり、触媒活性の低下も起こり難くなるので、長時間安定した高収率の操業を維持するこ
とが可能となる。
また、特にハロゲン処理のための捕集設備等を必用としないので、廃プラスチックから
化学原料として有用な水素、低級炭化水素及びBTXを低コストで回収することが可能と
なり、廃プラスチックの再資源化に大きく寄与する結果をもたらす。
近年、各自治体でのゴミの分別回収が進むと同時に、容器包装リサイクル法が施行され
、廃プラスチックがまとまって回収されるようになってきた。現在、廃プラスチックの年
間排出量は約980万トンに上り、このうち約50%を占めるのはポリエチレン、ポリプ
ロピレンなどのポリオレフィン系プラスチックである。廃プラスチックの内大きな割合を
占めるポリオレフィン系プラスチックを石油化学工業の基幹原料である芳香族炭化水素(
いわゆるBTX)と水素、あるいは低級オレフィンに転換できれば、循環型社会の構築に
大いに貢献することができる。
分別回収された廃プラスチックゴミの中身を解析してみると、ポリエチレン(PE)が
18〜37%、ポリプロピレン(PP)が24〜36%、ポリスチレン(PS)が11〜
36%、ポリエチレンテレフタラート(PET)が8〜14%、ポリ塩化ビニル(PVC
)が1〜2%、その他、紙や割り箸、金属などの異物が6〜12%含まれているのが実状
である。
これら廃プラスチックゴミの中でポリ塩化ビニルは重量割合で約73%の塩素を含み、
300〜600℃の高温で加熱分解すると大量の塩化水素ガスや有害なダイオキシンが発
生する。この他にもフッ素系の樹脂やフッ素樹脂をコーティングしたゴミも、高温で加熱
分解すると有害なフッ素ガスを排出する。
したがって、塩素やフッ素などのハロゲン元素を含む廃プラスチックゴミは、塩素やフ
ッ素などの排ガス処理設備の整った専用設備で処理する必要があり、専用設備で集中的に
処理する方が効率的にも経済的にも有利である。
また、珪酸塩触媒を用いた廃プラスチックのケミカルリサイクル法においては、塩素や
フッ素、臭素などのハロゲン元素が存在すると触媒活性が低下し、長時間安定した操業が
維持できなくなるばかりでなく、オレフン類や芳香族炭化水素類の回収率が低下する。
そこで本発明では、廃プラスチックから化学原料として有用な水素、低級炭化水素及び
BTXを低コストで回収するケミカルリサイクル方法において、前処理工程で廃プラスチ
ックを分別処理してハロゲン元素を含むプラスチックの含有量を5wt%未満とすること
にした。あるいはまた、ハロゲン元素の含有量を0.5wt%未満、好ましくは0.1%
未満とすることにした。
図1に本発明の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法の基本フローを示す。
図1中、1は廃プラスチックの分別前処理を実施する前処理工程(I)のための前処理装
置であり、前処理装置1は、少なくとも廃プラスチックからポリオレフィン系プラスチッ
クとそれ以外のプラスチックとに分離する選別装置を備えている。選別装置としては、光
選別方式及び比重差選別方式を採用する。この時、廃プラスチックにはポリオレフィン系
プラスチックによる容器類が非常に多く含まれているので、このような比較的大きい容器
類は、光選別方式によって予め選別してしまうのが好ましい。又廃プラスチックに含まれ
る袋や帯状物或いはその他の破断したプラスチック小片等は、これらを所要の大きさに破
砕し、比重差選別方式によって選別するのが好ましい。
又、上記廃プラスチックのうち、内容物が内部に残っている容器等については洗浄する
必要があり、そのために、前処理装置1には、予め廃プラスチックを破砕する破砕装置や
、破砕した廃プラスチックを洗浄する洗浄装置等を備えることが好ましい。
次に、廃プラスチックの選別法について説明する。
光選別法は、近赤外線による光学式選別法であり、プラスチックに近赤外線を照射して
その反射スペクトルのパタ−ンから材質を判定し、選別する方法である。
使用する光選別装置の概略構造の一例を図2に示す。
図2に示す光選別装置30は、図示省略の搬送部前段に設置された振動フィ−ダ−から
、分別すべき廃プラスチックを搬送部ベルトコンベア31上にばら撒きながら供給し、識
別部32に送る。処理量は搬送部ベルトコンベア31の速度で調整する。識別部32で判
された廃プラスチックは、排出部33にて識別部32の信号に対応して異なる方向に空気
で吹き飛ばして3種類に分別排出する。排出は、例えば第1ピット34(空気上方吹き出
し)にPEとPP、第2ピット35(空気吹き出し無し)にPSとPET及びその他のプ
ラスチック、第3ピット36(空気下方吹き出し)にPVCを排出する。このようにして
第1ピット34に集まったPEとPPのみをケミカルリサイクル工程に廻す。
光選別法は、廃プラスチックの形状を保ったまま処理するので、材質の複合したプラス
チック製品や大小のサイズが混在した廃プラスチックを処理する場合には、選別精度が低
下する。光選別法で得られるポリオレフィン系プラスチックの選別精度は89%以上に達
する。また、選別後の廃プラスチック中のハロゲン元素含有量は1.1wt%以下となる
次に、本発明のもう一つの選別法である比重差選別法について説明する。
比重差選別法は、水中でのプラスチックの比重差による浮遊、沈降を利用した二槽式の
比重分離方法である。比重差選別法のブロックフロ−を図3に示す。
比重差分離設備の主要構成は次の通りである。
一軸せん断破砕機41:梱包された廃プラ原料を破砕機ホッパ−に投入して開梱、粗粉砕
砕(長辺150mm 以下)する装置である。
手選別コンベア42 :異物除去のために手選別を行う広幅ベルトコンベアである。
第1分離槽43 :槽内下部に設置されたスクリューから水を満たした槽内にプラス
チックを供給する。短時間で水に浮く発泡質プラスチック(発泡
PS、発泡PEなど)を、分離槽下部に沈降する重質プラスチッ
ク(PVC、PSなど)から分離除去する。
粉砕機44 :第1分離槽43からのプラスチックを更に粉砕(長辺15mm以
下)してフラフ状にする。
第2分離槽45 : 第1分離槽と同一のもので、再度、発泡プラスチック、重質プ
ラ スチックを分離除去する。
スクリュープレス46:第2分離槽45からの軽質プラスチック(ポリオレフィン混合
物)を乾燥させるために、スクリュープレスにて水切り後、風乾
を行う。
押出し機47 :フラフ状の軽質プラスチックを成型してペレット化する。
比重差選別法は、廃プラスチックを細かく裁断して処理するので一片毎の誤認の機会は
少なくなる。しかし、比重差の小さいものの選別能力には限界がある。比重差選別法で得
られるポリオレフィン系プラスチックの選別精度は、95%以上に達する。また、選別後
の廃プラスチック中のハロゲン元素含有量は0.6wt%以下となる。
上記のような特質を有する光選別法と比重差選別法とを併用することにより、選別精度
を一層高めることば可能となり、選別後の廃プラスチック中のポリオレフィン系プラスチ
ックの含有量は95%以上となり、対象となる廃プラスチックの性状によっては99%以
上も可能である。
また、選別後の廃プラスチック中のハロゲン元素含有量は0.5wt%未満となり、廃
プラスチックの性状によっては0.1%未満も可能である。
選別回収プラスチックの性状は、ポリオレフィンの構成元素である炭素、水素の他に窒
素、酸素、ハロゲン元素や灰分を含有している。このうち窒素および酸素は複合ラミネ−
トフィルム中のナイロン、PETに由来したものであり、塩素もPVC単体より複合材に
使用されているものに由来していると考えられる。
灰分中の金属成分は、廃プラスチックに付着した食品残渣、砂、泥などが混入したもの
と考えられる。チタンは酸化チタンとして同定されていることから、プラスチック中のフ
ィラ−材、印刷顔料と推定される。
再び図1の基本フロー図に戻って、前処理装置1の選別装置で選別され、殆んどがポリ
オレフィン系プラスチックとなった廃プラスチックは、溶融押出機2を通して加熱分解工
程(II)に送られ、熱分解によって気化させるために熱分解槽3に供給される。又、前処
理装置1で選別されたポリオレフィン系プラスチック以外の他のプラスチックは、ハロゲ
ン元素の処理装置が完備した、別工程の処理ルートに廻されて別途処理される。
溶融押出機2は、周囲に電気ヒーターを巻き付けたスクリューコンベアからなり、選別
されたポリオレフィン系プラスチックを200℃以上、250℃程度の温度に加熱して溶
融し、熱分解槽3に供給するものである。
ポリオレフィン系プラスチックを固体状態で供給すると、空気などの気体が巻き込まれ
て溶融浴が泡立ち、安定した分解反応が維持しに難くなる。気体が巻き込まれるのを防止
するためには、減圧状体に抜気して供給する方法もあるが、供給が間歇的になる難点があ
る。そこで、ポリオレフィン系プラスチックを溶融して熱分解槽に供給すれば、気体の巻
込みを防止するとともに、供給速度を任意に調整しながら連続的に供給することができる
ので好ましい。加熱溶融されたポリオレフィン系プラスチックは、密度が約0.95g/
cm 程度で、粘度は約10ポイズ(p)である。
熱分解槽3は、内部の廃ポリオレフィン系プラスチックを撹拌するための撹拌装置23
を有しており、且つ外周にはヒーター12を備えていて、廃プラスチックを約650℃以
下の温度、例えば略500℃の温度に加熱し、気化を行って炭素数が4〜10程度の炭化
水素に低分子化する熱分解ガスを発生させるものである。なお廃プラスチックを熱分解槽
3内に投入する際には、予め窒素ガス等の不活性ガスを熱分解槽3内に導入しておき、不
活性ガス雰囲気下で上記廃プラスチックを加熱するのが好ましい。
熱分解槽3においては、活性炭又はゼオライトのような触媒を使用すれば、反応に必要
な加熱温度を低下させることができ、廃プラスチックの熱分解速度を高めることが可能と
なる。
熱分解槽3内に生じたカーボン質の残渣は、熱分解槽3の底部に設けられた分解残渣排
出槽4に間歇的に抜き取られ、焼却処分される。この時、触媒としてゼオライトを用いた
場合には、焼却灰を再び触媒として利用することができる。
熱分解槽3で生成した熱分解ガスは、フィルター5を通して触媒分解工程(III) に導
かれる。フィルター5は目開き100μm程度の金属メッシュを、500℃程度の加熱し
たものである。熱分解槽3内で溶融状態のポリオレフィン系プラスチックから発生する熱
分解ガスは、微細な飛沫を含んでおり、そのまま触媒反応槽に入って珪酸塩触媒に付着す
ると、触媒の活性を損なう結果をもたらす。そこでフィルター5により微細な飛沫を捕捉
して再加熱し、完全に気化させてから触媒分解工程(III) に送るようにするのが好まし
い。
触媒分解工程(III)は、珪酸塩触媒が収容された触媒反応槽が複数並列して設置して
ある。図1の触媒分解工程(III)では、5基の触媒反応槽(6−1,6−2・・・6−
5)が並列して設置してある例を示している。これらの触媒反応槽は、触媒分解反応、再
生反応及び待機を所定のタイムスケジュールに従って繰り返している。
触媒反応槽6は、外筒7内に珪酸塩触媒が充填された触媒層8を備えており、外筒7の
周囲に取り付けられたヒーター13によって内部温度を350〜550℃の範囲で任意に
設定できるようになっている。
珪酸塩触媒としては、ホウ素含有珪酸塩触媒もしくはガリウム含有珪酸塩触媒を使用す
ることができる。ホウ素含有珪酸塩触媒としては、プロトン置換したH型ホウ素化珪酸塩
が望ましく、ガリウム含有珪酸塩触媒としては、H型ガリウム珪酸塩を用いるのが望まし
い。
珪酸塩触媒としてホウ素含有珪酸塩触媒を使用する場合は、熱分解ガスから炭素数2〜
4の低級オレフィンガスを効果的に生成する作用を有し、例えば50%以上、或いは70
%以上の高い収率を得ることができる。このように、プラスチックの原料として再利用で
きる炭素数2〜4のオレフィンを高い収率で得られることは、プラスチックのリサイクル
上大変有利である。
また、珪酸塩触媒としてガリウム含有珪酸塩触媒を使用する場合は、ベンゼン、トルエ
ン、キシレンと水素を効果的に生成する作用を有する。
このように目的とする回収原料の種類に応じて珪酸塩触媒を使い分ければよい。
触媒反応工程(III)から出たガスは、高沸点成分分離工程(IV)である還流器14に
導かれる。還流器14では、例えば約150℃以上の高沸点成分が凝縮によって分離され
、分離された高沸点成分は、前記熱分解槽2に戻される。
還流器14で高沸点成分が除去されたガスは、気液分離工程(V)であるコンデンサー
15に導かれて冷却され、炭素数2〜4のオレフィンガス及び水素を主体とする気相16
と、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香属炭化水素を主体とする液相17とに分離さ
れるようになっている。
コンデンサー15からの気相は、ガス分離装置24に導かれ、深冷分離法或いはその他
の方法によって、炭素数2〜4の低級オレフィンガスと水素とに分離されるようになって
いる。
又、コンデンサー15からの液相は、蒸留塔18に導いて、ベンゼン、トルエン、キシ
レン(BTX)に分離するようにしている。
本発明によれば、前処理工程において都市ゴミ等の廃棄物に含まれる廃プラスチックの
うち、大半を占めるポリオレフィン系プラスチックと、それ以外のプラスチックとに効果
的に分離し、そのポリオレフィン系プラスチックを加熱分解工程で気化させ、加熱分解工
程で得た熱分解ガスを触媒分解工程に導入して珪酸塩触媒の存在下で加熱分解することに
より炭素数2〜4のオレフィン、BTX並びに水素を生成させ、炭素数2〜4のオレフィ
ンガスはプラスチック原料として再利用でき、又水素は燃料電池用燃料、水添・脱硫用原
料として再利用でき、液相は蒸留塔によってベンゼン、トルエン、キシレンに分離するこ
とで化学/医薬用原料として再利用できる。従って、本発明では、廃プラスチックを有効
且つ高効率にケミカルリサイクルを実現できる。
本発明の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法の基本フローを示す図である。 本発明で使用する光選別装置の概略構造の一例を示す図である。 本発明で使用する比重差選別法のブロックフロ−を示す図である。
符号の説明
I :前処理工程、II :加熱分解工程、III:触媒分解工程、IV :高沸点成分分解工程
、V :気液分離工程、
1・・・・・前処理装置、2・・・・・溶融押出機、3・・・・・熱分解槽、4・・・
・・分解残渣排出槽、5・・・・・フィルター、6・・・・・触媒反応槽、7・・・・・
外筒、8・・・・・触媒層、11・・・・・撹拌器、12・・・・・ヒーター、13・・
・・・ヒーター、14・・・・・還流器、15・・・・・コンデンサー、16・・・・・
気相、17・・・・・液相、18・・・・・蒸留塔、19・・・・・重質残渣受槽


Claims (7)

  1. 廃プラスチックからポリオレフィン系プラスチックとそれ以外のプラスチックとを分離
    して、廃プラスチック中のハロゲン元素を含むプラスチックの含有量を5wt%未満とす
    る前処理工程と、前記分離されたポリオレフィン系プラスチックを熱分解により気化させ
    る加熱分解工程と、前記加熱分解工程で得られた熱分解ガスを珪酸塩触媒の存在下で加熱
    分解して、水素及び炭素数2〜4の低級炭化水素からなる気相成分と、芳香族炭化水素を
    主成分とする液相成分を生成させる触媒分解工程と、該触媒分解工程を出た気相成分から
    水素を分離して炭素数2〜4の低級炭化水素を得る工程、並びに前記触媒分解工程で得ら
    れた液相成分をベンゼン、トルエン、キシレンを主体とする芳香族炭化水素に分離する工
    程とを有することを特徴とする廃プラスチックのケミカルリサイクル方法。
  2. 前記ハロゲン元素を含むプラスチックの含有量が1wt%未満であることを特徴とする
    請求項1に記載の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法。
  3. 廃プラスチックからポリオレフィン系プラスチックとそれ以外のプラスチックとを分離
    して、廃プラスチック中のハロゲン元素の含有量を0.5wt%未満とする前処理工程と
    、前記分離されたポリオレフィン系プラスチックを熱分解により気化させる加熱分解工程
    と、前記加熱分解工程で得られた熱分解ガスを珪酸塩触媒の存在下で加熱分解して、水素
    及び炭素数2〜4の低級炭化水素からなる気相成分と、芳香族炭化水素を主成分とする液
    相成分を生成させる触媒分解工程と、該触媒分解工程を出た気相成分から水素を分離して
    炭素数2〜4の低級炭化水素を得る工程、並びに前記触媒分解工程で得られた液相成分を
    ベンゼン、トルエン、キシレンを主体とする芳香族炭化水素に分離する工程とを有するこ
    とを特徴とする廃プラスチックのケミカルリサイクル方法。
  4. 前記ハロゲン元素の含有量が0.1wt%未満であることを特徴とする請求項3に記載
    の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法。
  5. 前記珪酸塩触媒がガリウムシリケイト系触媒であることを特徴とする請求項1から請求
    項4のいずれか1項に記載の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法。
  6. 前記珪酸塩触媒がボロンシリケイト系触媒であることを特徴とする請求項1から請求項
    4のいずれか1項に記載の廃プラスチックのケミカルリサイクル方法。
  7. 前記前処理工程が、光選別方式と比重差選別方式を併用したものであることを特徴とす
    る請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の廃プラスチックのケミカルリサイクル方
    法。

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