JP2005152758A - 膜形成方法、デバイス製造方法および電気光学装置 - Google Patents

膜形成方法、デバイス製造方法および電気光学装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 1個の液滴から1本の高精細な膜パターンを簡単に形成することが可能な、膜形成方法を提供する。
【解決手段】 (a)基板48の表面にライン状の液滴70を形成し、(b)ライン状液滴70の表面に温度勾配を付与して、(c)ライン状液滴70の低温側端部に直線部分75aを有する乾燥膜75を形成する。ライン状液滴70の表面に温度勾配を付与するには、ホットプレート51および冷却板52の間に、液滴70が配置された基板48を渡しかけることによって行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、膜形成方法、デバイス製造方法および電気光学装置に関するものである。
従来のインクジェット法を用いたパターニング方法として、特許文献1に記載されているように、微粒子を分散させた液状体をインクジェット法にて基板に直接パターン塗布し、その後熱処理やレーザ照射を行うことにより導電膜パターンに変換する方法が提案されている。この方法によれば、フォトリソグラフィ技術を用いることなくパターン形成を行うことが可能になり、パターン形成プロセスを簡略化することができる。また、原材料の使用量も少なくて済むというメリットがある。
また、従来のインクジェット法を用いたパターニング方法として、特許文献2に開示されているように、基板上にバンクを設けることにより、吐出される液滴の位置を制御してパターン形成精度を向上させる方法がある。バンクを形成すれば、基板上に吐出された液滴がバンクの外にはみ出ることがなく、例えば30μm程度の膜パターンを1μm程度の位置精度で形成することができる。
上述したパターニング方法以外にも、有機分子膜によって撥液部および親液部のパターンが形成された基板の親液部のみに選択的に液状体を塗布し、その後の熱処理によって導電膜パターンに変換する方法が提案されている。この場合、簡単な工程で精度よく導電膜パターンを形成することができる。
米国特許第5132248号明細書 特開昭59−75205号公報
近年のデバイスの微細化にともなって、より微細なパターンが求められるようになっている。
しかしながら、特許文献1に記載されたパターニング方法では、形成される線幅が吐出された液滴のサイズに依存するので、線幅を細くするには液適サイズを小さくする必要がある。しかしながら、インクジェットノズル径の大きさの制約上、液滴サイズを小さくするには限界がある。そのため、100μm程度のパターンを30μm程度の位置精度で形成することが限界であった。なお、特許文献2に開示されたパターニング方法では、基板上のバンクをフォトリソグラフィ技術によって形成するため、高コストになるという問題があった。また、有機分子膜によって撥液部および親液部のパターンを基板上に形成する方法も、インクジェットノズル径の大きさの制約上、細くても数十μmオーダーのラインしか形成することができなかった。
なお、液滴内部の対流を利用して、液滴に含まれる固形分を液滴の周辺部に集めることにより、液滴サイズに比べて微細なパターンを形成する技術が提案されている。これは、液滴をライン状に配置して、その端部に乾燥膜を形成することにより、ラインの長手方向に沿った2本のパターンを形成するものである。これにより、従来のパターニング方法に比べてパターンを微細化することが可能になる。ただし、常に2本のパターンが形成されることや、各パターンの間隔が液滴サイズに依存することなど、デバイスへの応用を考えると若干の問題が残されている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、1本のライン状液滴から1本の高精細な膜パターンを簡単に形成することが可能な、膜形成方法の提供を目的とする。
また、高精細な膜パターンを備えることにより、小型で表示品質に優れたデバイスの製造方法および電気光学装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の膜形成方法は、複数の液滴を基板上に配置して、ライン状液滴を形成する工程と、前記ライン状液滴の表面に温度勾配を付与して、該ライン状液滴の端部の一部に膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする。特に、前記ライン状液滴の幅方向の一方端部に、該ライン状液滴の幅方向の他方端部より高いまたは低い温度を付与して、該ライン状液滴の低温側の端部に膜パターンを形成することを特徴とする。
ライン状液滴の表面に温度勾配を付与すると、その表面に表面張力分布が生じて熱毛管流が発生し、これにともなって液滴の内部にはマランゴニ対流が発生する。その際、液滴の表面に適切な温度勾配を付与する事で、ライン状液滴の高温側端部から流出した熱毛管流を、低温側端部まで届かせることなく、その手前で基板に向かって下降するような流れとする事ができる。これにより、マランゴニ対流の流路に含まれない低温側の端部では、液滴に含まれる固形分が析出し、その析出した固形分によって液滴の端部がピン止めされたような状態となり、それ以降の乾燥に伴う液滴の収縮が抑制される(ピニング)。一方、マランゴニ対流の経路に含まれる高温側の端部では、液滴に含まれる固形分が対流により運搬されて析出しにくくなり、乾燥過程において液滴が収縮する(ディピニング)。これにより、ライン状液滴の端部の一部のみに固形分が析出して膜パターンが形成される。したがって、通常サイズの液滴を吐出する一般的な液滴吐出装置を用いて、高精細な膜パターンを形成することができる。
また、前記ライン状液滴の一方端部に第1の温度を付与する第1温度供給部と、該ライン状液滴の他方端部に第1の温度より低いまたは高い温度を付与する第2温度供給部と、の間に前記ライン状液滴が形成された基板を渡すことにより該ライン状液滴の表面に温度勾配を付与することが望ましい。
この構成によれば、基板を介して簡単にライン状液滴の表面に温度勾配を付与することができる。
なお、前記ライン状液滴の幅方向の一方端部、もしくは前記基板に光を照射することにより、該ライン状液滴の表面に温度勾配を付与してもよい。
この構成によっても、ライン状液滴の表面に温度勾配を付与することができる。
また、前記液滴が配置された基板と前記液滴との静的接触角は、20°以上50°以下であることが望ましい。
液滴と基板との接触角が大きい場合には、液滴が表面張力の影響で球状に収縮しようとするため、液滴端部等にバルジ(ふくらみ)が形成されて、所定の膜パターンを形成することが困難になる。逆に、液滴と基板との接触角が小さい場合には、液滴が大きく濡れ広がるため、高精細な膜パターンを形成することが困難になる。また、液滴が濡れ広がりすぎる事で、対流を効果的に起こすことが困難になる。そこで、液滴と基板との静的接触角を20°以上50°以下とすることにより、所定の高精細な膜パターンを形成することができる。ここで静的接触角θはcosθ=(γ−γSL)/γ[ここで、γは基板の表面自由エネルギーを、γは液滴の表面自由エネルギーを、γSLは基板と液滴の界面自由エネルギーを表す]で表される。液滴が固体表面上にあって静止している、平衡状態にあるときに、液体と固体の間になす角度である。
また、前記ライン状液滴が形成された基板と前記液滴との後退接触角は、前記液滴に含まれる固形物が前記液滴の端部に析出する時点において前記液滴の端部と前記基板とのなす角度より、小さく設定されていることが望ましい。
液滴は吐出された直後から蒸発が進行するため、固形分の析出前に液滴が収縮を開始すると、膜パターンを所定位置に形成することが困難になる。この点、上記構成とすれば、ライン状液滴の低温側端部に固形分が析出する前には、液滴の端部と基板とのなす角度が後退接触角より大きくなるので、液滴が収縮することはない。なお、液滴の低温側端部に固形分が析出した後には、その析出した固形分によって液滴の端部がピン止めされたような状態となり、それ以降の乾燥に伴う液滴の収縮が抑制される。したがって、所定位置に固形分を析出させることが可能になり、所定位置に高精細な膜パターンを形成することができる。
また、前記ライン状液滴を複数形成し、複数の該ライン状液滴の表面に温度勾配を付与して、複数の該ライン状液滴の低温側の端部に膜パターンを一括で形成することが望ましい。
この構成によれば、複数の膜パターンを一括形成することができるので、製造コストを低減することができる。また、各ライン状液滴に対して同等の温度勾配を付与することができるので、複数の膜パターンを同等に形成することができる。
また、ライン状液滴の表面に温度勾配を付与して、該ライン状液滴の端部の一部に膜パターンを形成することにより、ライン状の膜パターンが形成される。これにより、電気配線等の様々な分野に応用することができる。なお、液滴を任意の形状に形成することにより、所望形状の膜パターンを形成することが可能である。
一方、本発明のデバイス製造方法は、上述した膜形成方法を使用してデバイスを製造することを特徴とする。
この構成によれば、高精細な膜パターンを備えたデバイスを製造することが可能になり、デバイスを小型化することができる。
一方、本発明の電気光学装置は、上述したデバイス製造方法を使用して製造したことを特徴とする。
この構成によれば、高精細な膜パターンを備えることにより、小型で表示品質に優れた電気光学装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態の膜形成方法の説明図である。なお、図1(a)〜(c)の下図は、液滴および乾燥膜の平面図であり、図1(a)〜(c)の上図は、それぞれの下図のA−A線における側面断面図である。本実施形態の膜形成方法は、図1(a)に示すように、基板48上にライン状液滴70を形成する工程(液滴吐出工程)と、図1(b)に示すように、形成されたライン状液滴70の表面に温度勾配を付与する工程(温度勾配付与工程)と、図1(c)に示すように、ライン状液滴70の低温側の端部に乾燥膜75を形成する工程(ピニング工程)とを有するものである。そして、形成された乾燥膜75の直線部分75aは、微細な電気配線パターン等に利用することができる。上記の各工程について、以下に順次説明する。
[液滴吐出工程]
最初に、図1(a)に示すように、基板48上にライン状液滴70を形成する(液滴吐出工程)。具体的には、乾燥膜の形成材料の分散液を作製し、その分散液を後述する液滴吐出装置から基板48上に吐出して液滴70を形成する。なお、乾燥膜により電気配線を形成する場合には、分散質としてAgコロイドインク等の導電性微粒子を採用する。また、分散媒にはテトラデカン等の有機分散媒を採用することが可能である。
図2は、液滴吐出工程の説明図である。本実施形態では、直線部分を有する乾燥膜を形成するので、液滴70はライン状に形成する。この場合、まず図2(a)に示すように、半球状の微小液滴70aを所定間隔で配置する。次に、図2(b)に示すように、隣接する微小液滴70aの端部と重なるように、第2の微小液滴70bを配置する。すると、図2(c)に示すように、各微小液滴70a,70bが濡れ広がって、ライン状の液滴70が形成される。また、70aの端部同士が重なるように短い所定間隔で配置し、初めから図2(b)のように液滴が繋がった形状を作製してもよい。すると図2(c)に示すように各微小液滴70aが濡れ広がって、ライン状の液滴70が形成される。この場合は当然70bの液滴の配置は不要となる。
ところで、図2(b)において、微小液滴70a,70bと基板との接触角が大きい場合には、各微小液滴が表面張力の影響で球状に収縮しようとするため、微小液滴を構成する液体が容易にライン内を移動してラインの端部等にバルジ(ふくらみ)71が形成されるおそれがある。この場合、所定形状の乾燥膜が得られないことになる。逆に、微小液滴70a,70bと基板との接触角が小さい場合には、液滴が大きく濡れ広がるため、高精細な乾燥膜が得られないことになる。
そこで、微小液滴70a,70bと基板との静的接触角を、20°以上50°以下とすることが望ましく、30°以上40°以下とすることがより望ましい。これにより、バルジ71の発生が防止されるとともに、液滴の過度な濡れ広がりを防止することが可能になり、所定形状の高精細な乾燥膜を得ることができる。なお接触角の調整は、自己組織化膜(SAM膜)で基板を表面処理することによって行うことができる。自己組織化膜として、例えばFAS17(1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン)等を採用することが望ましい。
基板48上に液滴70が吐出されると、液滴に含まれる分散媒の蒸発が進行する。その分散媒の蒸発にともなう気化熱により、液滴の表面には自然温度勾配が発生する。
図3は、液滴表面の自然温度勾配および液滴内部のマランゴニ対流の説明図である。液滴の表面には、液滴に含まれる分散媒の沸点により、異なる温度勾配が発生する。液滴の分散媒が低沸点の場合には、図3(a)に示すように、液滴70の端部より頂上部の方が低温になる。これは、低沸点分散媒は乾燥速度が速いことから、基板からの熱が液滴頂上部まで伝わらないうちに蒸発が進行し続けてしまうからであると考えられる。一方、液滴の分散媒が高沸点の場合には、図3(b)に示すように、液滴の温度は液滴内で略均一化されるか、液滴の頂上部より端部の方が低温になる。これは、高沸点分散媒は乾燥速度が遅いことから、基板からの熱が十分に液滴頂上部まで伝わる余裕がある一方で、液滴頂上部より液滴端部の蒸発率が高くなるからであると考えられる。
この液滴表面の自然温度勾配に基づいて、液滴内部にはマランゴニ対流が発生する。そこで、マランゴニ対流について説明する。
一般に、液体層に温度差が生じると、レイリー対流および/またはマランゴニ対流が発生する。レイリー対流とは、温度差に伴う密度差によって誘起される対流であり、液体層の深さが大きいほどレイリー対流が支配的になる。一方、マランゴニ対流とは、温度差に伴う表面張力差によって誘起される対流であり、液体層の深さが小さいほどマランゴニ対流が支配的になる。本実施形態で扱う液滴吐出装置、例えばインクジェット装置では、吐出される液滴のサイズは十分小さいため、マランゴニ対流が支配的となる。したがって、本実施形態ではこのマランゴニ対流を利用して、液滴内の固形分の析出位置を制御することとなる。なお、気液界面に対して垂直方向の温度勾配によって生じる流れは狭義のマランゴニ流と呼ばれ、気液界面に対して平行方向の温度勾配によって生じる流れは熱毛管流と呼ばれている。ところで、液体表面の温度が高くなると表面張力は小さくなり、温度が低くなると表面張力は大きくなる。そして、表面張力が小さい方から大きい方に向かって液体が引っ張られて流れが生じるので、結果的には温度の高い方から低い方に向かって熱毛管流が生じることになる。なお、温度領域の高低にかかわらず、液滴表面に温度勾配さえあれば熱毛管流が発生する。
そして、液滴表面に自然温度勾配が生じると、その液滴表面に沿って熱毛管流が発生する。これにともなって、液滴内部にはマランゴニ対流が発生する。液滴の分散媒が低沸点の場合には、図3(a)に示すように、液滴70の端部より頂上部の方が低温になるので、液滴の端部から頂上部に向かって熱毛管流171が発生し、これにともなって液滴内部にはマランゴニ対流170が発生する。一方、液滴の分散媒が高沸点の場合には、図3(b)に示すように、液滴の頂上部より端部の方が低温になるので、液滴の頂上部から端部に向かって熱毛管流181が発生し、これにともなって液滴内部にはマランゴニ対流180が発生する。
なお発明者の実験によれば、沸点が150℃を下回る低沸点分散媒を採用した場合には、図3(a)に示すような温度分布およびマランゴニ対流が発生することが確認されている。また、沸点が150℃を上回る高沸点分散媒を採用した場合には、図3(b)に示すような温度分布およびマランゴニ対流が発生することが確認されている。ただし、高沸点分散媒であっても、蒸発が進行して行く過程で温度勾配差が徐々に小さくなり、マランゴニ対流が止まってしまう系も確認されている。さらに、いくつかの分散媒では、液滴表面にそれ程自然温度勾配が発生せず、また液滴内部にマランゴニ対流が発生しないことも確認されている。このような分散媒は、比熱が大きい等、もともと温度勾配の出にくい性質を有するものである。
図4は、本実施形態の各工程における液滴表面の温度勾配および液滴内部のマランゴニ対流の説明図である。本実施形態では、分散媒として高沸点のテトラデカン(沸点254℃程度)を採用したので、図4(a)に示すような自然温度勾配およびマランゴニ対流が発生している。なお、いかなる沸点の分散媒を用いた場合でも、次述する強制温度勾配を付与することにより、その強制温度勾配に起因したマランゴニ対流を発生させることができる。
[温度勾配付与工程]
次に、図1(b)に示すように、形成されたライン状液滴70の表面に強制温度勾配を付与する。具体的には、図4(b)に示すように、ライン状液滴70の幅方向の一方端部から他方端部にかけて、液滴表面の温度が上昇または下降するように温度勾配を付与する。言い換えると、ライン状液滴70の幅方向の一方端部の温度が他方端部の温度より高いまたは低い温度を有するように温度勾配を付与する。温度勾配を付与するには、液滴70の一方端部に第1の温度を供給する第1温度供給部と、他方端部に第1の温度より低い温度を供給する第2温度供給部とを用いる。具体的には、ライン状液滴70が載置された基板48を、ライン状液滴70の一方端部に所定の温度を与えるホットプレート51(第1温度供給部)と、ホットプレート51の温度よりも低い温度をライン状液滴70の他方端部に与える冷却板52(第2温度供給部)との間に渡して(ライン状液滴70の幅方向の一方端部側の基板48がホットプレート51上に配置され、他方端部側の基板48が冷却板52上に配置されて)、ホットプレート51と冷却板52との間にライン状液滴70を配置すればよい。また、ホットプレート51と冷却板52との間にライン状液滴70の全体を配置するのではなく、ライン状液滴70の一方端部または他方端部がホットプレート51と冷却板52とのどちらか一方の上方に配置されていてもよいし、ライン状液滴70の一方端部がホットプレート51の上方に配置され、他方端部が冷却板52の上方に配置されていてもよい。この場合、基板48を介して簡単かつ一様に、ライン状液滴70の表面に温度勾配を付与することができる。
なお、基板48の熱伝導率は高い方がよい。基板48の熱伝導率が高ければ、ホットプレート51と冷却板52との温度差を小さくしても、液滴表面に所望の温度勾配を付与することができるからである。なお、基板48の熱伝導率が低い場合でも、ホットプレート51と冷却板52との温度差を大きくすれば、液滴表面に所望の温度勾配を付与することは可能である。一方、高温側となるライン状液滴70の端部、もしくは高温側となるライン状液滴70の端部に所望の温度を付与できる基板の所定位置、具体的には、高温となるライン状液滴70の幅方向の端部側の基板48部に、レーザ等の光を照射することによって、ライン状液滴の表面に温度勾配を付与することも可能である。
図4(b)に示すように、ライン状液滴の表面に強制温度勾配を付与すると、液滴70の高温側端部から低温側端部に向かって熱毛管流191が発生する。これにともなって、基板48の表面には逆方向の流れ192が生じ、液滴70の内部にはマランゴニ対流190が発生する。液滴70に付与する温度を適切に定めることで、液滴70の高温側端部から流出した熱毛管流191を、液滴70の低温側端部まで届かせることなく、その手前で基板48に向かって下降するような流れとする事が可能であるのが発明者の実験により確認されている。これは、くさび状の液滴端部では液体の出入りが困難であること、および熱毛管流191は液滴表面に沿って下降しつつ低温側端部に向かうため、その手前で液滴表面から離れ基板48に向かって下降し易いことが原因であると考えられる。
これにより、マランゴニ対流190の流路に含まれない低温側端部では、液体が滞留するため基板48に分散質が析出しやすくなる。したがって、低温側先端部では次述するピニングが発生しやすくなる。一方、マランゴニ対流190の流路に含まれる高温側先端部では、そのマランゴニ対流によって分散質が掻き出され、基板上に析出しにくくなる。したがって、高温側先端部では次述するディピニングが発生しやすくなる。
[ピニング工程]
次に、図1(c)に示すように、ライン状液滴70の低温側の端部に乾燥膜75を形成する。乾燥膜75の形成は、ライン状液滴70の低温側端部をピニングさせ、高温側端部をディピニングさせることによって行う。
図5は、代表的な液滴の乾燥過程を模式的に示す図である。液滴の乾燥過程では、液体材料の固形分濃度や、液滴の乾燥速度、対流、固形分が微粒子の場合の粒径等をパラメータとすることにより、液滴の乾燥膜を様々な形状に制御することができる。例えば、図5(a)に示すように中央部に比べて周辺部の膜厚が厚い形状としたり、あるいは図5(b)に示すように着弾後の液滴に比べて収縮した形状としたりすることができる。なお、図5(a)及び(b)に矢印で示す液滴内部の流れは一例であり、実際とは異なる場合がある。
図5(a)は、ピニングの説明図である。このような液滴では一般に縁において乾燥が速く進む。このため、乾燥の初期段階では液滴の周辺部において固形分濃度が上昇する傾向にある。液滴の周辺部における固形分濃度が飽和濃度に達すると、その周辺部において固形分が局所的に析出する。すると、その析出した固形分によって液滴の周辺部がピン止めされたような状態となり、それ以降の乾燥に伴う液滴の収縮(外径の収縮)が抑制される。本明細書では、この現象、すなわち、周辺部に析出した固形分によって乾燥に伴う液滴の収縮が抑制される現象を「ピニング」と呼ぶ。このピニングが起きると、固形分の多くが周辺部に運ばれ、周辺部において固形分が多く析出するので、中央部に比べて周辺部の膜厚が厚い乾燥膜を得ることができる。
図5(b)は、ディピニングの説明図である。液滴の乾燥過程において、液滴の周辺部での局所的な固形分の析出が生じないと、上述したピニングが起こらず、乾燥過程において液滴全体が収縮し、液滴の外径が小さくなる。液滴内の固形分濃度は略均一に上昇し、飽和濃度に達した時点でほぼ一斉に析出が起こる。その結果、得られる薄膜は中央部と周辺部の膜厚はほぼ等しいか、中央部の方がやや厚くなる。以後、この現象、すなわち乾燥時にピニングすることなく液滴が収縮する現象を「ディピニング」と呼ぶ。ディピニングにより、着弾後の液滴に比べて収縮した形状の乾燥膜を得ることができる。
一般に、基板上に配置された液滴は周辺部(エッジ)において乾燥の進行が速く、最初に周辺部において固形分濃度が飽和濃度に達する。そのため、基板上に配置された液滴は、原則としてピニングする。したがって、液滴をディピニングさせるためには、液体材料の固形分濃度や、液滴の乾燥速度、対流、固形分が微粒子の場合の粒径等のパラメータを積極的に制御する必要がある。
これに対して、本実施形態では、図4(b)に示すマランゴニ対流190をライン状液滴70の内部に発生させるので、マランゴニ対流190の流路に含まれない低温側端部はピニングしやすくなり、マランゴニ対流190の流路に含まれる高温側端部はディピニングしやすくなる。もっとも、基板上の液滴は原則としてピニングするので、ライン状液滴70の高温側端部をディピニングさせるには、さらに以下の諸点に留意する必要がある。
まず、液滴に含まれる固形分が微粒子の場合には、その粒径は小さい方がよい。粒径が小さいほど、対流によって運搬されやすいので、液滴の高温側端部における固形分の析出が抑制される。これにより、液滴の高温側端部がディピニングしやすくなるからである。
また、固形分の濃度は低い方がよい。固形分濃度が低いほど、液滴の高温側端部における固形分の析出が抑制される。これにより、液滴の高温側端部がディピニングしやすくなるからである。
また、固形分と基板との付着速度および付着力は弱い方がよい。付着速度および付着力が弱いほど、液滴の高温側端部がピニングしにくくなり、ディピニングしやすくなるからである。また、ディピニング途中において、基板上に固形分が残渣のように残るのを防止し得るからである。
固形分と基板との付着力を弱めるには、微粒子表面の保護層の厚さを厚くすればよい。固形分が微粒子の場合には、微粒子相互の凝集を防止するため、有機物等からなる保護層が微粒子表面に設けられている。この保護層の厚さが厚いほど、微粒子と基板との付着も防止し得るからである。
また、固形分と基板48とを同じ電荷に帯電させておくことにより、両者の付着力を弱めることができる。一般に、微粒子はマイナスに帯電しているので、基板48をマイナスに帯電させておけばよい。基板48を帯電させるには、自己組織化膜(SAM膜)を利用することが望ましい。具体的な自己組織化膜として、R−Si−(O−Et)4−nで表されるシランカップリング剤を採用する。このエチル基が基板48に吸着するので、基板48上に単分子膜が形成される。そして、R部にカルボキシル基(−COO)を採用すれば、基板48の表面をマイナスに帯電させることができる。なお、微粒子がプラスの電荷を有する場合には、R部にアミノ基(−NH )を採用することにより、基板表面をプラスに帯電させればよい。
一方、液滴に含まれる分散媒または溶媒の沸点は高い方がよい。分散媒または溶媒の沸点が低い場合には、強制温度勾配によるマランゴニ対流を発生させる前に液滴が乾燥して、液滴の高温側端部がピニングするおそれがあるからである。
また、分散媒または溶媒の熱伝導率は高い方がよい。分散媒または溶媒の熱伝導率が高いほど、液滴表面に温度勾配を付与し易くなるからである。さらに、表面張力の温度依存性が大きい分散媒または溶媒を採用することが望ましい。表面張力の温度依存性が大きいほど、液滴表面の温度勾配に基づいて表面張力差が発生し易くなり、所望のマランゴニ対流を発生させることができる。これにより、液滴の高温側端部がディピニングしやすくなるからである。
また、分散媒または溶媒の粘性は低い方がよい。分散媒または溶媒の粘性が高い場合には、マランゴニ対流を発生させることが困難になり、液滴の高温側端部がピニングするおそれがあるからである。なお、液滴吐出装置により液状体を安定吐出するため、液状体の粘度は0.1〜30cps程度に設定されている。したがって、液滴吐出装置から吐出形成された液滴であれば、問題なくマランゴニ対流を発生させることができる。
一方、基板の表面は均一に仕上げられている方がよい。基板表面が均一であれば、液滴の高温側端部が均一に収縮するので、高温側端部がピニングしにくくなり、ディピニングしやすくなるからである。更に、基板表面が均一であれば、液滴に含まれる固形分がディピニングの最中に基板上に残渣として残りにくくなる。また、受容性基板は望ましくない。
また、液滴と基板との後退接触角を適切に設定することが望ましい。図6(a)は、液滴の後退接触角の説明図である。後退接触角は、動的接触角と呼ばれるもので、その測定法としてウィルヘルミー法や拡張収縮法、転落法などが知られている。そのうち転落法は、図6(a)に示すように固体試料上に液滴を形成し、この固体試料を傾けながら、液滴が移動する際の接触角を測定するものである。そして、液体が移動する方向の前方における接触角θ1が前進接触角であり、後方における接触角θ2が後退接触角である。
図6(b)に示すように、液滴は吐出された直後から蒸発が進行する。そして、液滴の低温側端部に固形分が析出すると、その析出した固形分によって液滴の端部がピン止めされたような状態となり、それ以降の乾燥に伴う液滴の収縮が抑制される。ところが、固形分の析出前に液滴が収縮を開始すると、乾燥膜を所定位置に形成することが困難になるおそれがある。
そこで、液滴と基板との後退接触角θ2を、液滴の低温側端部に固形分が析出する時点において液滴の端部と基板とのなす角度θ3より、小さく設定することが望ましい。この場合、液滴の低温側端部に固形分が析出する前には、液滴の端部と基板とのなす角度が後退接触角θ2より大きいので、液滴の低温側端部が収縮することはない。なお、液滴の低温側端部に固形分が析出した後には、その析出した固形分によって液滴の端部がピン止めされたような状態となり、それ以降の乾燥に伴う液滴の収縮が抑制される。したがって、所定位置に固形分を析出させることが可能になり、所定位置に高精細な乾燥膜を形成することができる。
液滴と基板との後退接触角の調整は、自己組織化膜(SAM膜)で基板を表面処理することによって行うことができる。自己組織化膜として、例えばC18(オクタデシルトリメトキシシラン)等を採用することが可能である。なお、C18の分子が基板表面に最密パッキングされると、その表面を液滴が移動し易くなるため、後退接触角が大きくなる。そこで、基板表面におけるC18の分子密度を低く設定することにより、後退接触角を低下させることができる。
なお、後退接触角を低下させることは、液滴の乾燥途中におけるバルジの発生を防止するためにも望ましい。液滴が表面張力の影響で球状に収縮しようとする際に、本来ならピニングによってこれを抑制できるが、本実施形態では液滴の高温側端部をディピニングさせるので、液滴の乾燥途中におけるバルジの抑制手段に乏しいからである。
一方、液滴の周辺温度は低い方がよい。周辺温度が高い場合には、液滴の乾燥が促進され、対流の影響が及ぶ前に液滴の端部が高濃度になって、高温側端部がピニングしやすくなるからである。
また、液滴を吐出してから強制温度勾配を付与するまでの時間は短い方がよい。工程間の時間が長いと、液滴の乾燥が進行して、液滴の高温側端部がピニングするおそれがあるからである。
ところで、基板上の液滴が原則としてピニングするのは、液滴の周辺部(エッジ)において乾燥の進行が速く、最初に端部において固形分濃度が飽和濃度に達するからである。そこで、ピニングを抑制してディピニングを発生させるためには、液滴の乾燥速度を低下させて、液滴の端部における蒸発を抑制すればよい。
液滴の乾燥速度は、基板上に配置される液滴同士の間隔(液滴間距離)や、複数の液滴の配列または配置のタイミング、基板が搭載されるステージの移動速度、液体材料に対する基板表面の接触角などに応じて変化する。
液滴の乾燥時、液相から気相に出て行く蒸気は、液滴を中心に3次元に拡散して、蒸気拡散層を形成する。基板上に複数の液滴が配置されるとき、一の液滴が他の液滴の蒸気拡散層内に配置されると、その蒸気拡散層の影響により一の液滴の表面における蒸気濃度が高くなって、一の液滴の乾燥速度が低下する。具体的には、液滴間距離が短く、蒸気拡散層の重なりが大きいほど、液滴の蒸発速度(乾燥速度)が低下して、乾燥時間が長くなる。
また、一の液滴に対してある方向のみに他の液滴が配置されている場合には、他の液滴の蒸気拡散層による影響をその方向から受けるので、一の液滴の乾燥速度はその方向についてのみ低下する。したがって、液滴の配列によって乾燥速度は変化する。さらに、他の液滴が配置されてから一の液滴が配置されるまでの時間が長いと、他の液滴の蒸気拡散層による影響が小さくなるので、液滴の乾燥速度が低下し難くなる。したがって、各液滴を配置する時間間隔が短いほど、液滴の乾燥速度は低下する。
なお、基板を搭載したステージが移動すると、液滴近傍の気相の蒸気濃度が低下するなどにより、液滴の乾燥が促進される。したがって、液滴が配置された基板を移動させない場合には、液滴の乾燥速度が低下する。
以上を踏まえて、図4(c)に示すように、ライン状液滴70の低温側端部をピニングさせるとともに、高温側端部をディピニングさせる。これにより、液滴の低温側端部では固形分が局所的に析出して、それ以降の乾燥に伴う液滴の収縮が抑制される。一方、液滴の高温側端部では固形分が析出することなく、乾燥に伴って液滴が収縮する。そして、液滴の乾燥が終了すると、図1(c)に示すように、ライン状液滴70の低温側端部に沿って乾燥膜75が形成される。
なお上述したように、乾燥膜75の構成材料である微粒子の表面には、微粒子相互の凝集を防止するための保護層が設けられている。そこで、形成された乾燥膜75を熱処理(アニール)して保護層を分解すれば、微粒子相互が凝集して電気配線が焼成される。なお、液滴70をライン状に吐出したので、乾燥膜75は中央には直線部分75aが形成される。そして、その直線部分75aのみを電気配線に利用する場合には、直線部分75aのみを熱処理して微粒子を凝集させ、他の部分は分散媒等に再分散させて除去すればよい。
図7(a)は、複数の液滴を同一工程で一括処理する場合の説明図である。以上には、1本のライン状液滴を形成し、これに温度勾配を付与して、1本の乾燥膜を形成する場合について説明した。しかしながら、複数本のライン状液滴70に対し一括して温度勾配を付与し、複数本の乾燥膜75を同時に形成することも可能である。具体的には、まず基板48に複数本のライン状液滴70を平行に形成する。次に、ホットプレート51と冷却板52との間に基板48を渡して、両者の間にすべてのライン状液滴70を配置する。すると、ホットプレート51と冷却板52との間に配置された全液滴70の表面に対し、一括して同等の温度勾配が付与される。なお、ホットプレート51側の液滴と冷却板52側の液滴とは温度領域が異なるが、液滴表面に温度勾配さえ付与すれば表面張力分布が生じるので、全液滴70の内部にマランゴニ対流を発生させることができる。したがって、各液滴70から上記と同様の乾燥膜75が同時に形成され、複数本の電気配線を同時に得ることができる。しかも、各液滴70には同等の温度勾配が付与されるので、各乾燥膜75を同等に形成することができる。
図7(b)は、形成された乾燥膜の近傍に他の乾燥膜を追加形成する場合の説明図である。上記のように形成された乾燥膜に近接して、他の乾燥膜を追加形成することにより、電気配線等の狭ピッチ化が可能になる。具体的には、先に形成された第1乾燥膜75に近接して第2液滴80を配置し、その第2液滴80の低温側端部に第2乾燥膜85を形成すればよい。なお、先に形成された第1乾燥膜75に熱処理を施して微粒子を凝集させた後に、第2液滴80を配置することが望ましい。これにより、第1乾燥膜75が第2液滴80によって再分散されるのを防止することができる。
本実施形態では、乾燥膜75の線幅は液滴に含まれる固形分濃度に依存しており、濃度を低くすることで線幅を容易に細くできる。
また、本実施形態では液滴をライン状に形成して、直線部分を有する乾燥膜を得る場合を例にして説明したが、液滴の形状を任意に設定することにより、所望パターンの乾燥膜を得ることが可能である。例えば、液滴をドット状(半球状)に形成すれば、三日月状の乾燥膜を得ることも可能である。
また、本実施形態では電気配線を形成する場合を例にして説明したが、本実施形態の膜形成方法を用いてフォトマスクのパターンや、有機TFTのチャネル部などを形成することも可能である。
以上に詳述したように、本実施形態の膜形成方法では、ライン状液滴の表面に強制温度勾配を付与してマランゴニ対流を発生させ、ライン状液滴の低温側端部をピニングさせるとともに高温側端部をディピニングさせて、低温側端部のみに乾燥膜を形成する構成とした。これにより、液滴サイズより微細な乾燥膜を形成することが可能になる。したがって、形成された乾燥膜を、高精細な電気配線として利用することができる。例えば、線幅0.5〜1.0μm程度の高精細な電気配線を形成することも可能であり、新世代のデザインルールに対応した電気配線を提供することができる。
この点、フェムトリットルIJ装置等を用いてサブミクロンサイズの液適を形成すれば、サブミクロンサイズの乾燥膜を形成することは可能である。しかしながら、サブミクロンサイズの液適によりパターンを描画するには、かなりの長時間を要することになる。これに対して、本実施形態の膜形成方法では、ピコリットルサイズの液滴を吐出する一般的なIJ装置を用いて、通常の速度でパターンを描画することができる。具体的には、フェムトリットルIJ装置の10倍程度の速度でパターンを描画することが可能である。したがって、製造コストおよび製造時間を低減することができる。
また、本実施形態の膜形成方法では、温度領域の高低にかかわらず、液滴表面に温度勾配さえ付与すれば、所定の乾燥膜を形成することができる。これにより、基板および下層膜に対する熱履歴の低減に貢献することができる。例えば、プラスチック基板上に電気配線を形成する場合には、液滴表面に低温領域の温度勾配を付与することにより、プラスチック基板を変質させることなく所望の電気配線を形成することができる。
(液滴吐出装置)
上述した各液滴は、液滴吐出装置から液状体を吐出することによって形成する。そこで、液滴吐出装置につき図8を用いて説明する。図8は、液滴吐出装置の斜視図である。液滴吐出装置10は、ベース12、第1移動手段14、第2移動手段16、重量測定手段である電子天秤(不図示)、ヘッド20、キャッピングユニット22、およびクリーニングユニット24を主として構成されている。第1移動手段14および第2移動手段16を含む液滴吐出装置10の動作は、制御装置23により制御されるようになっている。なお図8において、X方向はベース12の左右方向であり、Y方向は前後方向であり、Z方向は上下方向である。
第1移動手段14は、ガイドレール40,40をY軸方向に一致させて、ベース12の上面に直接設置されている。この第1移動手段14は、ガイドレール40,40に沿って移動可能なスライダ42を有している。このスライダ42の駆動手段として、例えばリニアモータを採用することができる。これにより、スライダ42がY軸方向に沿って移動可能とされ、また任意の位置で位置決め可能とされている。
スライダ42の上面にはモータ44が固定され、モータ44のロータにはテーブル46が固定されている。このテーブル46は、基板48を保持しつつ位置決めするものである。すなわち、図示しない吸着保持手段を作動させることにより、テーブル46の穴46Aを通して基板48が吸着され、基板48をテーブル46上に保持することができる。また、モータ44は、例えばダイレクトドライブモータである。このモータ44に通電することにより、ロータとともにテーブル46がθz方向に回転して、テーブル46をインデックス(回転割り出し)することができるようになっている。なお、テーブル46には、ヘッド20が液状体を捨打ち、或いは試し打ち(予備吐出)するための予備吐出エリアが設けられている。
一方、ベース12の後方には支柱16A、16Aが立設され、その支柱16A,16Aの上端部にコラム16Bが架設されている。そして、そのコラム16Bの前面に第2移動手段16が設けられている。この第2移動手段16は、X軸方向に沿って配置されたガイドレール62A,62Aを有し、またガイドレール62A,62Aに沿って移動可能なスライダ60を有している。このスライダ60の駆動手段として、例えばリニアモータを採用することができる。これにより、スライダ60がX軸方向に沿って移動可能とされ、また任意の位置で位置決め可能とされている。
スライダ60には、ヘッド20が設けられている。ヘッド20は、揺動位置決め手段としてのモータ62,64,66,68に接続されている。モータ62は、ヘッド20をZ軸方向に移動可能とし、また任意の位置で位置決め可能とするものである。モータ64は、ヘッド20をY軸回りのβ方向に揺動可能とし、また任意の位置で位置決め可能とするものである。モータ66は、ヘッド20をX軸回りのγ方向に揺動可能とし、また任意の位置で位置決め可能とするものである。モータ68は、ヘッド20をZ軸回りのα方向に揺動可能とし、また任意の位置で位置決め可能とするものである。
以上のように、基板48はY方向に移動および位置決め可能とされ、θz方向に揺動および位置決め可能とされている。また、ヘッド20はX,Z方向に移動および位置決め可能とされ、α,β,γ方向に揺動および位置決め可能とされている。したがって、本実施形態の液滴吐出装置10は、ヘッド20のインク吐出面20Pと、テーブル46上の基板48との相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールすることができるようになっている。
(インクジェットヘッド)
ここで、ヘッド20の構造例について、図9を参照して説明する。図9は、インクジェットヘッドの側面断面図である。ヘッド20は、液滴吐出方式により液状体2をノズル91から吐出するものである。液滴吐出方式として、圧電体素子としてのピエゾ素子を用いて液状体を吐出させるピエゾ方式や、液状体を加熱して発生した泡(バブル)により液状体を吐出させる方式など、公知の種々の技術を適用することができる。このうちピエゾ方式は、液状体に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。そこで、図9のヘッド20には、上述したピエゾ方式が採用されている。
ヘッド20のヘッド本体90には、リザーバ95およびリザーバ95から分岐された複数のインク室93が形成されている。リザーバ95は、各インク室93に液状体2を供給するための流路になっている。また、ヘッド本体90の下端面には、インク吐出面を構成するノズルプレートが装着されている。そのノズルプレートには、液状体2を吐出する複数のノズル91が、各インク室93に対応して開口されている。そして、各インク室93から対応するノズル91に向かって、インク流路が形成されている。一方、ヘッド本体90の上端面には、振動板94が装着されている。なお、振動板94は各インク室93の壁面を構成している。その振動板94の外側には、各インク室93に対応して、ピエゾ素子92が設けられている。ピエゾ素子92は、水晶等の圧電材料を一対の電極(不図示)で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路99に接続されている。
そして、駆動回路99からピエゾ素子92に電圧を印加すると、ピエゾ素子92が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子92が収縮変形すると、インク室93の圧力が低下して、リザーバ95からインク室93に液状体2が流入する。またピエゾ素子92が膨張変形すると、インク室93の圧力が増加して、ノズル91から液状体2が吐出される。なお、印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子92の変形量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子92の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子92への印加電圧を制御することにより、液状体2の吐出条件を制御しうるようになっている。
一方、図8に示す液滴吐出装置は、キャッピングユニット22およびクリーニングユニット24を備えている。キャッピングユニット22は、ヘッド20におけるインク吐出面20Pの乾燥を防止するため、液滴吐出装置10の待機時にインク吐出面20Pをキャッピングするものである。またクリーニングユニット24は、ヘッド20におけるノズルの目詰まりを取り除くため、ノズルの内部を吸引するものである。なおクリーニングユニット24は、ヘッド20におけるインク吐出面20Pの汚れを取り除くため、インク吐出面20Pのワイピングを行うことも可能である。
[電気光学装置]
次に、本実施形態の膜形成方法を使用して製造した電気光学装置の一例である有機EL装置につき、図10を用いて説明する。
有機EL装置200は、マトリクス状に配置された複数の画素領域R,G,Bを備えている。基板210の表面には各画素領域を駆動する回路部220が形成され、その回路部220の表面には複数の画素電極240がマトリクス状に形成されている。なお各画素電極240の周囲には、電気絶縁性材料からなるバンク245が形成されている。陽極として機能する画素電極240の表面には、正孔注入層250および発光層260が順次形成されている。さらに、発光層260およびバンク245の表面全体に、電子注入層270および共通陰極280が形成されている。なお、基板210の端部に封止基板(不図示)が貼り合わされて、全体が密閉封止されている。
そして、本実施形態の膜形成方法を使用することにより、上述した有機EL装置200を構成する各機能層を形成することができる。また、回路部220に含まれる各電気配線を形成することができる。そして、高精細な機能層および電気配線を備えることにより、小型で表示品質に優れた有機EL装置を提供することができる。
[電子機器]
次に、各実施形態の膜形成方法を使用して形成した電子機器につき、図11を用いて説明する。図11は、携帯電話の斜視図である。図11において符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は表示部を示している。この携帯電話1000は、各実施形態の膜形成方法を使用して形成した表示部1001を備えている。したがって、小型で表示品質に優れた携帯電話1000を低コストで提供することができる。
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。例えば、以上には分散質を分散媒に分散させた分散液を用いて膜を形成する場合を例にして説明したが、溶質を溶媒に溶解させた溶液を用いて膜を形成する場合にも本発明を適用することが可能である。また、以上には電気配線パターンを形成する場合を例にして説明したが、それ以外のパターンを形成する場合にも本発明を適用することが可能である。
液滴と基板との接触角を変化させて、微細配線を形成する実験を行った。
分散媒であるテトラデカン(沸点254℃程度)に対して、分散質であるAgコロイドインク(粒径=数nm)を、0.05vol%の濃度で分散させて、吐出用の液状体を作製した。
一方、Si基板の表面を様々なSAMsで表面処理して、接触角の異なる複数種類の基板を作製した。第1基板は、FAS17(1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン)で表面処理し、さらに紫外線を90秒照射して、上記液状体との静的接触角を39.7°とした。第2基板は、C18(オクタデシルトリメトキシシラン)で処理して、上記液状体との静的接触角を34°とした。第3基板は、FT007(C18を最密パッキングしたもの)で表面処理して、上記液状体との接触角を34°とした。なお第3基板は、第2基板より後退接触角が大きくなっている。
そして、上記液状体を液滴吐出装置により、各基板に対して吐出した。具体的には、1dotが10plの液滴(着弾径は50〜55μm)を、45〜55μmのピッチ幅で、10列数100dot吐出した。
さらに、1cm程度の隙間を空けて配置したホットプレートおよび冷却板の間に渡しかけるように、液滴吐出直後の基板を載置した。その際、ライン状液滴の長手方向に対して垂直に温度勾配が付与されるように、基板の向きを調整して載置した。ホットプレートと冷却板の温度はそれぞれ50度と5度である。そのまま基板を放置して液滴を乾燥させ、形成された乾燥膜の状態を顕微鏡で調査した。
その結果、第1基板及び第2基板では、ライン状液滴の低温側端部に線幅約0.5〜1.0μmの微細配線が形成された。ただし、静的接触角を39.7°とした第1基板の場合に、最も一様な微細配線が形成された。また、静的接触角の等しい第2基板および第3基板において、後退接触角が大きい第3基板では、液滴がバルジとなってしまい、一様な微細配線が得られなかった。
なお、上述したSAMs以外にも、FAS17(紫外線未照射)、FAS3(3,3,3トリフルオロプロピルエトキシシラン)、Bz(ベンジルトリエトキシシラン)、Cn(3−シアノプロピルエトキシシラン)、NH2(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、およびC8(オクチルトリクロロシラン)で表面処理した基板を作製して実験を行った。紫外線未照射のFAS17で処理した基板は、接触角が高く、液滴にバルジが発生してライン状の薄膜が得られなかった。その他のSAMsでは、いずれも接触角が低く、濡れ広がってしまった為に対流が効果的に起こせず、液滴の片側に乾燥膜を寄せ集めることはできなかった。
実施形態の膜形成方法の説明図である。 液滴吐出工程の説明図である。 自然温度勾配によるマランゴニ対流の説明図である。 強制温度勾配によるマランゴニ対流の説明図である。 代表的な液滴の乾燥過程を模式的に示す図である。 液滴の後退接触角の説明図である。 複数の液滴を同時に処理する場合の説明図である。 液滴吐出装置の斜視図である。 インクジェットヘッドの側面断面図である。 有機EL装置の側面断面図である。 携帯電話の斜視図である。
符号の説明
48基板 51ホットプレート 52冷却板 70液滴 75乾燥膜 75a直線部分

Claims (9)

  1. 複数の液滴を基板上に配置して、ライン状液滴を形成する工程と、
    前記ライン状液滴の表面に温度勾配を付与して、該ライン状液滴の端部の一部に膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする膜形成方法。
  2. 前記ライン状液滴の幅方向の一方端部に、該ライン状液滴の幅方向の他方端部より高いまたは低い温度を付与して、該ライン状液滴の低温側の端部に膜パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の膜形成方法。
  3. 前記ライン状液滴の一方端部に第1の温度を付与する第1温度供給部と、該ライン状液滴の他方端部に第1の温度より低いまたは高い温度を付与する第2温度供給部と、の間に前記ライン状液滴が形成された基板を渡すことにより該ライン状液滴の表面に温度勾配を付与することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の膜形成方法。
  4. 前記ライン状液滴の幅方向の一方端部に光を照射することにより、該ライン状液滴の表面に温度勾配を付与することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の膜形成方法。
  5. 前記ライン状液滴が形成された基板と該ライン状液滴との静的接触角は、20°以上50°以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の膜形成方法。
  6. 前記ライン状液滴が形成された基板と前記液滴との後退接触角は、前記液滴に含まれる固形物が前記液滴の端部に析出する時点において前記液滴の端部と前記基板とのなす角度より、小さく設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の膜形成方法。
  7. 前記ライン状液滴を複数形成し、複数の該ライン状液滴の表面に温度勾配を付与して、複数の該ライン状液滴の低温側の端部に膜パターンを一括で形成することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の膜形成方法。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の膜形成方法を使用してデバイスを製造することを特徴とするデバイス製造方法。
  9. 請求項8に記載のデバイス製造方法を使用して製造したことを特徴とする電気光学装置。
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