第1の発明は、鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記蓋の下面に設置し磁性体で構成した発熱板と、前記発熱板に設けられた蒸気を排出する蒸気孔と、前記蓋内の前記発熱板の内周縁に沿って対向する位置に設けられた蓋誘導加熱外コイルと、前記蓋内の前記蒸気孔の周縁の少なくとも一部に沿って対向する位置に設けられた蓋誘導加熱内コイルの少なくとも2本の蓋誘導加熱コイルと、前記蓋誘導加熱コイルへの通電制御をする制御手段とを備えたものであり、発熱板の発熱面積を拡大させることで発熱板の温度分布が均一にすることができ、炊きむらを低減して炊飯性能を向上できるとともに、保温中に発熱板が冷却されやすい部分である蒸気孔周辺部と周縁近傍を集中的に発熱させることで、保温中の発熱板の水分結露を防ぐことができ、保温により発生する水分によるご飯の白化を防ぐことができ、保温性能をも向上することができる。
第2の発明は、上記第1の発明において、蓋誘導加熱コイルの少なくとも2本の自己インダクタンスが互いに相違するものであり、発熱板の冷却されやすい部分とそれ以外の部分とで、発熱量を変えることができ、さらに発熱板の温度分布を均一化することができる。
第3の発明は、上記第1または2の発明において、制御手段が、蓋誘導加熱コイルの少なくとも2本への通電を個別に独立制御するものであり、炊飯時と保温時で、個々の蓋誘導加熱コイルへの供給電力量を変化させることができ、炊飯時、保温時各々における供給電力量を自在に変化させることで、炊飯性能、保温性能を両方の性能を引き出すことができる。
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか1つの発明において、室温検知手段を備え、制御手段は、前記室温検知手段の検知温度が低いほど蓋誘導加熱コイルへの総供給電力量を増加させるとともに、蓋誘導加熱内コイルへの供給電力量の増加率が最も大きくなるように制御するものであり、保温時において、季節に関係なく発熱板の温度分布を均一に保つことができ、保温性能を向上することができる。また、夏期のような高温時には供給電力量を下げることもでき、保温時の省エネルギーにも貢献することができる。
第5の発明は、上記第1〜3のいずれか1つの発明において、保温工程中の保温米飯量を測定または推測する保温量検知手段を備え、制御手段は、前記保温量検知手段の検知量が多いほど蓋誘導加熱コイルへの総供給電力量を増加させるとともに、蓋誘導加熱内コイルへの供給電力量の増加率が最も大きくなるように制御するものであり、各保温量に応じた発熱板の加熱が可能になり、特に少量を保温した場合の保温性能を向上することができ、また、不必要な加熱による過加熱を防ぐことができ、省エネルギー効果も得ることができる。
第6の発明は、上記第1〜5のいずれか1つの発明において、鍋の温度を検知する鍋温度検知手段を備え、制御手段は、第1の保温温度または前記第1の保温温度よりも低い第2の保温温度で温度調節すべく前記保温量検知手段の検知温度に基づき鍋加熱手段への通電を制御し、前記第1の保温温度または炊飯終了時から前記第2の保温温度へ移行する間は、前記第2の保温温度で温度調節される間よりも、蓋誘導加熱コイルへの総供給電力量を増加させるものであり、第2の保温温度で温度調節される工程では効率良く、発熱板の温度を均一にし、第1の保温温度または炊飯終了時から第2の保温温度へ移行する温度下降工程では、ご飯より発生する多くの蒸気を発熱板に結露することを防ぐことができる。
第7の発明は、上記第1〜5のいずれか1つの発明において、鍋の温度を検知する鍋温度検知手段を備え、制御手段は、第1の保温温度または前記第1の保温温度よりも低い第2の保温温度で温度調節すべく前記保温量検知手段の検知温度に基づき鍋加熱手段への通電を制御し、前記第2の保温温度から前記第1の保温温度へ移行する間は、前記第2の保温温度で温度調節される間よりも、蓋誘導加熱コイルへの総供給電力量を増加させるものであり、第2の保温温度で温度調節される工程では効率良く発熱板の温度を均一にし、第1の保温温度から第2の保温温度へ移行する間は、第2の保温温度で温度調節される工程よりも多く発生する蒸気を発熱板に結露することを防ぐことができる。
第8の発明は、上記第6または7の発明において、制御手段が、蓋誘導加熱内コイルへの供給電力量の増加率が最も大きくなるように通電を制御するもので、第2の保温温度で温度調節される工程では効率良く、発熱板の温度を均一にし、第1の保温温度または炊飯終了時から第2の保温温度へ移行する温度下降工程では、ご飯より発生する多くの蒸気を発熱板に結露することを防ぐことができる。
また、第1の保温温度から第2の保温温度へ移行する間は、第2の保温温度で温度調節される工程よりも多く発生する蒸気を発熱板に結露することを防ぐことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の断面図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態の炊飯器の要部拡大図を示すものである。
図1及び2において、ボディ31は上面が開口する略円筒形をしており、炊飯器本体を形成している。このボディ31の開口部には上枠32が嵌着している。前記ボディ31内部には上枠32とコイルベース33とで鍋34収納部を形成している。コイルベース33は有底円筒状に形成され、コイルベース33上端部は上枠32に固定されている。コイルベース33には鍋34を誘導加熱するための底内誘導コイル35aが設置されており、鍋34を誘導加熱しているのである。また、鍋34側面には鍋34側底面を誘導加熱する為の底外誘導コイル35bが設置されている。底内誘導コイル35a及び底外誘導コイル35bに高周波電流を通電し、鍋34を誘導加熱する為の加熱基板47はコイルベース33とボディ31内面で構成される空間に設置されており、この加熱基板47には加熱基板47上に設置している発熱部品(図示しない)を冷却する為の、ヒートシンク36が加熱基板47下方に設置されており、更に、このヒートシンク36を冷却する為の、ファンモーター37がヒートシンク36に取り付けられている。また、このファンモーター37はボディ31に形状に添うように、傾斜した状態で取り付けられているのである。
また、鍋34底面には鍋34温度を検知する底センサー38がセンサーバネ(図示しない)により付勢されており、炊飯及び、保温時の鍋温度を検知し、鍋34内の調理物が最適な温度状態になるよう、制御手段であるマイコン46が制御しているのである。
外蓋39は合成樹脂製で、この外蓋39は外蓋カバー40に嵌着されており、この外蓋39は外蓋カバー40に設置されたヒンジ軸を上枠32の後部に一体形成されたヒンジ部材32aにピンを介して回動自在に支持されている。
発熱板41は、鍋パッキン42付着脱式発熱板であり、外蓋39下面を構成する外蓋カバー40に取り付けられている。この発熱板41には炊飯中の蒸気などを本体外部に放出する蒸気孔41aが設けられており、鍋内の空間と外部とを連通するように構成されているのである。また外蓋カバー40には発熱板41を誘導加熱するための蓋誘導加熱コイル43が設置されており、この蓋誘導加熱コイル43は蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱内コイル43bの二つのコイルで構成されている。また、この蓋誘導加熱コイルの上方にはアルミ製の蓋反射板49が設置されており、蓋誘導加熱コイル43から発生する輻射ノイズなどを防いでいるのである。
発熱板41は電磁調理器の加熱原理と同様に蓋誘導加熱コイル43に通電される電流の大きさと、蓋誘導加熱コイル43の巻数等により発熱板41の加熱量が決定されるのである。ここで蓋誘導加熱コイル43の巻数はインダクタンスの大きさに比例しており、コイル巻数を増やせば増やすほど、インダクタンスも大きくなるのである。また、発熱量はインダクタンスに比例する為、蓋誘導加熱コイル43が設置されている部分の発熱量は多くなるのである。また、発熱板41には蓋センサー44がコイルバネ(図示しない)により発熱板41に圧接されており、発熱板41の温度を制御しているのである。上記の底センサー38及び、蓋センサー44の温度信号により、操作基板45に設置されているマイコン46は、底内誘導コイル35a、底外誘導コイル35b、蓋誘導加熱コイル43への通電を制御している。具体的には、所定の瞬時電力での単位時間当たりの通電時間(以下、通電率と記す)を制御している。このマイコン46には、あらかじめ決められた制御プログラムが記憶されてり、炊飯及び保温を行うのである。
ここで、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bは、図2に示すように、コイル巻数を変えてそれぞれのインダクタンスが異なるようにしている。
上記構成において動作を説明すると、まず炊飯を開始すると、鍋34内の米と水が加熱され、この温度を米の糊化が始まらない60℃程度に維持し、米内に十分に水を吸水させる。この工程を浸水工程とし、十分に米に水が吸水されると、つぎに米の糊化を行う炊き上げ工程に入る、この工程では米と水とを一気に加熱し、水を沸騰させ100℃付近で維持する。この炊き上げ工程で米は糊化が行われ、水分も同時に蒸発し、ご飯へと炊き上がって行く。この炊き上げ工程で水分が蒸発すると、むらし工程に入るが、このむらし工程ではすでに水分は蒸発し、鍋34からの加熱を行い過ぎるとご飯が焦げてしまう。
このため、外蓋39の発熱板41から非接触加熱による輻射熱を利用することで、さらに糊化を促すのである。ここで発熱板41の発熱は、前述したように、蓋誘導加熱コイル43により発熱するが、ステンレスなどの磁性体で構成している発熱板41は熱伝導率が低く、発熱している場所とそれ以外の場所では温度差が大きく、発熱板41の温度分布は均一ではない。
発熱板41の温度分布が均一でないと、それだけご飯に与える熱分布もばらつきが大きくなり、ご飯の炊きむらの原因になる。この炊きむらを低減させるために、蓋誘導加熱コイル43を蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bの2個のコイルで構成し、発熱面積を拡大させることにより、発熱板41の温度分布が均一化することで炊きむらを低減し、炊飯性能を向上することができる。
また、発熱板41の温度分布均一化は保温にも大きな影響を与える。通常、保温はご飯の温度を70℃付近で維持し保温を行うが、保温中にはご飯から水分が蒸発してくる。この水分は鍋34の側面や発熱板41の温度の低い部分に結露する。この結露が促進すると、保温中のご飯に滴下し、ご飯がふやけてしまう。このため、蓋誘導加熱コイル43を2つのコイルで構成し、発熱板41の温度分布を均一化することは、発熱板41への水分の結露を防止することができ、ご飯のふやけの低減にもつながる。
また、炊飯器は外気により冷やされるが、発熱板41も同様に、外周から冷やされることになる。このため、蓋誘導加熱外コイル43bのインダクタンスを蓋誘導加熱内コイル43aのインダクタンスよりも大きくしておくことで、発熱板41の発熱は外側の発熱量が大きくなり、外気に冷やされやすい部分の発熱を増やすことでより温度分布の均一化を促すことができる。
また、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bのインダクタンスを変化させ、発熱板41の冷やされやすい部分の発熱を増やすことで、発熱板41の温度分布が均一になるだけでなく、冷えている部分の発熱板41を効率よく加熱し、温度を均一化できるため、発熱板41の発熱に使用される省エネルギー化も可能になる。
以上のように、本実施の形態においては、発熱板41を誘導加熱する蓋誘導加熱コイル43を、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bとで構成したので、発熱板41の発熱面積を拡大させることで発熱板の温度分布が均一にすることができ、炊きむらを低減して炊飯性能を向上できるとともに、保温性能をも向上することができる。
また、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bは、それぞれのインダクタンスが異なるようにしたので、発熱板41の冷却されやすい外周部とそれ以外の部分とで、発熱量を変えることができ、さらに発熱板41の温度分布を均一化することができる。
なお、鍋34の側面には側面誘導コイル47を設置し、鍋34の側面を加熱しているが、この側面誘導コイル47のインダクタンスと蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bのインダクタンスのバランスにより、鍋34側面、発熱板41の温度分布を均一化させることで、さらなる保温性能の向上を得ることができる。
なお、側面誘導コイル47は誘導加熱である必要はなく、コードヒーター等、鍋34を加熱する手段であれば、同じ効果を得ることができる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2おける炊飯器の要部平面図を示すもので、外蓋カバーから外蓋を取り外した図である。
図3に示すように、発熱板41は、ステンレスなどの磁性体で構成し、外蓋(図示せず)の下面を構成する外蓋カバー40に取り付けている。発熱板41には炊飯中の蒸気を排出する蒸気孔41aを設けており、この蒸気孔41aよりも大きい穴を外蓋カバー40にも設けている。この外蓋カバー40に蓋誘導加熱コイル43を設置し、この蓋誘導加熱コイル43は蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bとで構成している。
ここで、蓋誘導加熱外コイル43bのコイル中心は発熱板41の中心と同じであるが、蓋誘導加熱内コイル43aのコイル中心は蓋誘導加熱外コイル43bのコイル中心よりずらし、蒸気孔41aの外周に設置しており、蒸気孔41a近傍の発熱板41を加熱するようにしている。他の構成は上記実施の形態1と同じである。
上記構成において動作を説明すると、保温時には基本的にご飯を75℃程度で維持するが、保温中にもご飯からは水分が常に蒸発している。この蒸発した水分は蒸気孔41aから炊飯器外の放出される蒸気もあれば、鍋(図示せず)の側面や発熱板41に結露するものもある。蒸気が結露する場所は鍋や発熱板41の温度の低い部分に結露することになるが、鍋34、発熱板41の温度が全く同じであれば、ほとんど結露はせずに、炊飯器外に放出される。
しかし、実際には温度差が生じ、温度の低い部分に結露してしまう。特に、蒸気孔41aは発熱板41が直接外気に接触していることもあり、温度の低下がその他の部分よりも大きい。このため、保温をすると蒸気孔41a部に結露が発生しやすくなり、結露が進むと発熱板52からご飯へ水が滴下してしまうことが多い。この問題を解消するには、蒸気孔41a近傍の発熱板41の発熱を他の部分より多く発熱させる必要がある。
このため、蓋誘導加熱内コイル43aを蒸気孔41a周辺に設置することで、蒸気孔41a近傍の発熱板41の発熱を重点的に行うことができ、ご飯への水分の滴下を防ぎ、ご飯のふやけを防ぐことで、保温性能を向上することができる。
以上のように、本実施の形態においては、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bは、それぞれのコイル中心が異なるようにしたので、保温中に発熱板41が冷却されやすい部分である蒸気孔41a周辺部を集中的に発熱させることができ、保温中の発熱板41の水分滴下を防ぐことができ、保温により発生する水分によるご飯の白化を防ぐことができる。
また、本実施の形態では、蓋誘導加熱内コイル43aの径を小さくし、蒸気孔41a近傍に設置しているが、蓋誘導加熱内コイル43aの径を大きくしても、蓋誘導加熱外コイル43bのコイル中心よりも、蒸気孔41a側に蓋誘導加熱内コイル43aのコイル中心を設置することで、発熱板41の発熱は蒸気孔41a側を加熱することになり、同じような効果を得ることができる。
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3おける炊飯器の要部平面図を示すもので、外蓋カバーから外蓋を取り外した図である。
図4に示すように、発熱板41は、ステンレスなどの磁性体で構成し、外蓋(図示せず)の下面を構成する外蓋カバー40に取り付けている。発熱板41には炊飯中の蒸気を排出する蒸気孔41aを設けており、この蒸気孔41aよりも大きい穴を外蓋カバー40にも設けている。この外蓋カバー40に蓋誘導加熱コイル43を設置し、この蓋誘導加熱コイル43は蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bとで構成している。
ここで、蓋誘導加熱外コイル43bのコイル中心は発熱板41の中心と同じであるが、蓋誘導加熱内コイル43aのコイル中心は蓋誘導加熱外コイル43bのコイル中心よりずらし、蒸気孔41aの外周に設置しており、蒸気孔41a近傍の発熱板41を加熱するようにしている。ここで、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bは、通電を個別に独立制御するようにしている。他の構成は上記実施の形態1または2と同じである。
上記構成において動作を説明すると、保温時には基本的にご飯を70℃程度で維持するが、保温中にもご飯からは水分が常に蒸発している。この蒸発した水分は蒸気孔41aから炊飯器外の放出される蒸気もあれば、鍋(図示せず)の側面や発熱板41に結露するものもある。蒸気が結露する場所は鍋や発熱板41の温度の低い部分に結露する。
ここで、発熱板41の冷やされやすい部分は外気と接触している蒸気孔41a近傍であるが、この部分には蓋誘導加熱内コイル43aを設置しており、蒸気孔部41a近傍に蒸気が滴下するのを防いでいる。また、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bの通電率は各々独立制御されており、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bの通電率を変えることができる。
図5は保温時における、鍋温度検知手段の検知温度と経過時間を示した図である。保温は炊飯の終了後自動的に保温に入る。この時ご飯の温度は約100℃であるが、保温性能を向上させる為には、高温で保温するのではなく一定の温度まで低下させ保温を行う。保温をしていると飯が黄変するという現象が生じるが、この黄変はご飯の中に含まれるアミノ酸と糖とのアミノ・カルボニル反応によるものであるが、これはご飯の温度が高いほど促進されてしまう。また、炊きたての飯とは異なる、通常、保温臭と呼ばれる異臭が発生するが、この保温臭の発生は米に含まれる脂肪分が長時間高温にさらされることによって化学変化して起こるものである。また、高温で保温することで、ご飯に含まれている水分の蒸発も促進されてしまい、ご飯の乾燥が起こる。また、蒸発した蒸気が発熱板43や鍋34側面に滴下し、滴下した水分がご飯表面に落ちて、集中的にご飯をべたつかせてしまうのである。これらのようにご飯の保温は高温で保温するのではなく、一定の温度まで温度を低下させて、保温することで保温による劣化を低減できるのである。しかし、ここで別の問題が発生する。ご飯温度を低下させると、雑菌の繁殖が出てくるのである。これらの雑菌を繁殖させないようにしながら、低いご飯温度で保温することが必要になる。これらの保温条件を両立させる為にまず、炊飯直後の温度を60℃程度(第2の保温温度)まで低下させる。第2の保温温度まで低下させる工程を温度下降工程とし、60℃付近まで下降するとご飯をこの第2の保温温度で維持する。この工程を低温維持工程とし、この低温維持工程を長時間行うと、雑菌の繁殖を促してしまう。このため、雑菌を殺菌するために、ご飯温度を78℃(第1の保温温度)付近まで上昇させる必要があるが、このご飯の温度を第1の保温温度まで上昇させる工程を加熱工程とし、ご飯を高温(第1の保温温度)に維持し、雑菌を殺菌させる工程を高温維持工程となる。ここで高温維持工程を長く続けると、ご飯の劣化につながる為に、再度ご飯温度を第2の保温温度まで低下させ、前述した工程を繰り返すことで、ご飯の温度を低下させ保温によるご飯の劣化を防ぎながら、高温維持工程を設けることで、雑菌の繁殖も押さえることが可能となるのである。
このように、保温性能の高い保温を実現する為には、各種工程を設け、ご飯温度を制御しているが、各工程でご飯からの、水分蒸発量、温度維持に必要な電力は様々であり、これらの多くの工程を最適な加熱をする為に発熱板41を発熱させる蓋誘導加熱コイル43を蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bの2個のコイルで構成し、各々のコイルを独立制御することで、発熱板41の温度分布を自在に制御することができるのである。
たとえば、温度下降工程ではご飯をできるだけ早く温度を低下させるため、鍋34の加熱は行わない。しかし、ご飯の温度は高温であるため、ご飯からの水分の蒸発量は低温温度維持工程よりも多量である。このため、発熱板41には蒸気が結露しないだけの加熱を行う必要のため、蓋誘導加熱外内コイル43a、蓋誘導加熱外コイル43b共に同等の通電率が必要となる。これに対し、低温温度維持工程では水分の蒸発量は少ないため、発熱板41の加熱は温度下降工程ほど必要ではない。低温維持工程で問題になってくるのが、発熱板41の蒸気孔41a部の温度である。低温維持工程は水分蒸発量が少ない為、発熱板41の発熱量は下降工程ほど必要ではないが、蒸気孔41a部は炊飯器外部と連通になっているので、外気により冷却されてしまう。蒸気は温度の低い部分に結露する為に、通常は蒸気孔41a部に結露しやすいが、これらを防ぐ為に、蓋誘導加熱内コイル43aの通電率を増やすことで、蒸気の結露を防ぐことができる。この時、蓋誘導加熱外コイル43bの通電率を増やす必要はなく、冷却されやすい部分の蓋誘導加熱内コイル43aのみの通電率を増やすことで、効果を得ることができるのである。
次に加熱工程であるが、加熱工程は雑菌の繁殖を押さえる為78℃まで、ご飯温度を上昇させる工程であるが、やはりご飯が高温になる為、ご飯からの水分蒸発量が増加する。このため、発熱板41に蒸気を結露させない為に、発熱板41の加熱を増加する必要があり、蓋誘導加熱内コイル43a、蓋誘導加熱外コイル43b共に、通電率を増加させることで、発熱板41への水分結露を押さえるのである。これは低温温度維持工程と比較してみると、低温維持工程では蓋誘導加熱内コイル43aの通電率が蓋誘導加熱外コイル43bよりも高くなるのである。
なお、以上の通電率の関係は蓋誘導加熱コイルのインダクタンスによっても左右される。前述したように、発熱板41の発熱量は蓋誘導加熱コイルの通電率、電流量、インダクタンスによって変化するが、同じ電流を誘導コイルに流した場合、インダクタンスが大きい方が、発熱量が増加する。ここで、蓋電磁誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bの巻数を同じにした場合、蓋誘導加熱外コイル43bの方が、コイル径が大きいため、インダクタンスが大きくなる。これらのことより、通電率を同じにした場合でも、コイルの巻数によっても加熱板の発熱バランスを制御することは可能である。
なお、本実施の形態では電磁誘導加熱コイル43は電磁誘導加熱内コイル43aと電磁誘導加熱外コイル43bの2個の誘導コイルで説明したが、2個以上の複数個のコイルを設置すれば、発熱板41の加熱分布をより細かく、制御することが可能となる。
なお、鍋34の加熱も電磁誘導加熱方式で説明したが、鍋34の加熱は加熱方式が鋳込みヒーターなどのヒーター加熱でも同じ効果を得ることができる。
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4おける炊飯器の断面図を示すものである。
基本構成は実施の形態の基本構成と同一のため、説明を省略する。図6において、加熱基板47上には炊飯器本体内部の温度を検知する室温検知手段である室温センサー50を設置している。この室温センサー50は炊飯開始時、炊飯中、保温中などの炊飯器内部の温度を測定することができ、炊飯開始では炊飯時の室温温度とほぼ同等の温度になり、保温中の温度を測定することで、保温中の室温を推測することが可能である。保温時では基本的にご飯を75℃程度で維持するが、保温中にもご飯からは水分が常に蒸発している。この蒸発した水分は蒸気孔41aから炊飯器外の放出される蒸気も有れば、鍋側面や発熱板41に結露するものも有る。蒸気が結露する場所は鍋34や発熱板41の温度の低い部分に結露することになるが、鍋34、発熱板41の温度が全く同じであれば、ほとんど結露はせずに、炊飯器外に放出される。しかし、実際には温度差が生じ、温度の低い部分に結露してしまう。特に蒸気孔41aは発熱板41が直接外気に接触している事も有り、温度の低下がその他の部分よりも大きい。このため保温をすると蒸気孔41a部に結露が発生しやすくなり、結露が進むと発熱板41からご飯へ水が滴下してしまうことが多い。この現象は保温を行う場合の外気の温度によっても、大きく変化する。炊飯器で保温を行う場合、おおよそ−5℃から35℃程度の外気温度が考えられるが、−5℃の外気で保温した場合と35℃で保温された場合では、蒸気孔41aの温度差は大きく変化する。−5℃では蒸気孔41a温度の低下が激しい為に、−5℃雰囲気で保温された場合は蓋誘導加熱内コイル43aの通電率を増加させる必要がある。また、35℃雰囲気で保温した場合、蒸気孔41aは−5℃で保温した場合ほど冷却されないため、蓋誘導加熱内コイル43aの通電率を低下させることができる。このように、保温されている炊飯器の雰囲気温度で、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bの通電率を変化させることで、室温に応じた通電が可能になり、−5℃雰囲気ではご飯に滴下する露量を低下させることができ、また、35℃雰囲気では、蒸気孔41aの過加熱を防止することができ、保温ご飯の乾燥を防止することができる。加えて、35℃雰囲気の通電率を低下することができれば、省エネに関しても、効果を得ることができるのである。
また、外気温度変化により蓋誘導加熱内コイル43aの通電率を変化させるだけでなく、蓋誘導加熱外コイル43bの通電率も変化させる事で、外気温度に最適な通電率が実現し、保温性能を向上させると共に、更に省エネ効果を得る事ができる。
また、本説明では室温センサー50を加熱基板47上に設置した場合の構成で説明したが、室温センサー50は加熱基板47上に設置することに限定したものではなく、室温に応じて、温度変化する場所であれば、設置場所を問うものではない。
これらのことは、季節による温度変化によらず、常に高い保温性能を確保することができる。また、外気温度変化により蓋誘導加熱内コイル43aの通電率を変化させるだけでなく、蓋誘導加熱外コイル43bの通電率も変化させることで、外気温度によらずご飯温度を一定に保つ通電率が実現し、保温性能を向上するとともに、さらに省エネルギー効果を得ることができる。
次に保温量による通電率の変化であるが、保温量検知手段(図示せず)による、保温量の判定は、まず炊飯での判定工程で検知した炊飯量を基礎とする。これは保温量というものは炊飯量よりも少ないということを、仮定することができ、中間量を炊飯した場合は保温量を中間量以下と仮定することができる。この事により中間量に応じた、底誘導コイル35、蓋誘導加熱コイル43などの通電率を制御するのである。更に、保温量の検知精度を上げる為に、保温の加熱工程を利用することができる。保温の加熱工程とは前述したように、まず60℃付近まで温度を下げたご飯を75℃付近まで、温度を上昇させる工程であるが、計時手段(図示せず)を設け、この工程での時間を測定すると、少量保温の場合は短時間で78℃まで温度が上昇し、量が増えるにつれて、時間が増加する為に、保温量の検知ができるのである。
このように検知した保温量により各通電率を制御することが、可能になる。保温は保温量によっても蒸発する水分量、発熱板41からご飯表面までの距離、鍋34の温度変化、発熱板41の温度変化は大きく変わってくる。例えば炊飯量が多い場合、ご飯からの水分の蒸発量が多い為、蓋誘導加熱外コイル43b、蓋誘導加熱内コイル43aの通電率は共に、通電率を下げずに結露の対応を行う。逆に炊飯量が少ない場合には、ご飯からの水分蒸発量が少ない為、蓋誘導加熱コイル43全体の通電率を下げ、結露対策を行う。というような、様々な保温量に応じて、発熱板41の温度を自由に制御することが可能になり、保温量によらず、高い保温性能を維持する事ができるのである。
また、保温量、外気温度の両方に応じて、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bの通電率を独立制御する事で、外気温度、保温量によらず、常に高い保温性能を確保する事ができるのである。
また、鍋側面を加熱する側面誘導コイル48とも更に別々に制御する事で、更にきめこまかい保温制御が可能になり、多くの環境変化に対応した保温が可能になるのである。
以上のように、本実施の形態においては、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bは、通電を個別に独立制御するようにしたので、炊飯時と保温時で、蓋誘導加熱内コイル43aと蓋誘導加熱外コイル43bの通電率を変化させることができ、炊飯時、保温時各々における最適通電率を確保することで、炊飯性能、保温性能を両方の性能を引き出すことができる。