JP2005150292A - 磁気抵抗効果素子、薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置 - Google Patents

磁気抵抗効果素子、薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ピンド層における磁化の方向の固定の不安定性を抑制して、磁気抵抗効果素子の感度の変動を抑制する。
【解決手段】MR素子5は、互いに反対側を向く2つの面を有する非磁性導電層25と、この非磁性導電層25の一方の面に隣接するように配置されたフリー層26と、非磁性導電層25の他方の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定されたピンド層24と、このピンド層24における非磁性導電層25とは反対側の面に隣接するように配置され、ピンド層24との交換結合によりピンド層24における磁化の方向を固定する反強磁性層22と、反強磁性層22とピンド層24との間に配置され、非磁性且つ導電性の材料よりなる中間層23とを有している。
【選択図】図2

Description

本発明は、磁気抵抗効果素子、ならびに、この磁気抵抗効果素子を有する薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に関する。
近年、ハードディスク装置の面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドとしては、基板に対して、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッドと書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。
MR素子としては、異方性磁気抵抗(Anisotropic Magnetoresistive)効果を用いたAMR素子や、巨大磁気抵抗(Giant Magnetoresistive)効果を用いたGMR素子や、トンネル磁気抵抗(Tunnel-type Magnetoresistive)効果を用いたTMR素子等がある。
再生ヘッドの特性としては、高感度および高出力であることが要求される。この要求を満たす再生ヘッドとして、既に、スピンバルブ型GMR素子を用いたGMRヘッドが量産されている。スピンバルブ型GMR素子は、一般的には、互いに反対側を向く2つの面を有する非磁性導電層と、この非磁性導電層の一方の面に隣接するように配置されたフリー層と、非磁性導電層の他方の面に隣接するように配置されたピンド層と、このピンド層における非磁性導電層とは反対側の面に隣接するように配置された反強磁性層とを有している。フリー層は信号磁界に応じて磁化の方向が変化する層である。ピンド層は、磁化の方向が固定された強磁性層である。反強磁性層は、ピンド層との交換結合により、ピンド層における磁化の方向を固定する層である。このようなスピンバルブ型GMR素子の構成は、例えば特許文献1に記載されている。
また、TMR素子は、一般的に、上記スピンバルブ型GMR素子における非磁性導電層を薄い絶縁層に置き換えた構成になっている。
特開2001−195710号公報
ところで、例えばPtMnによって形成された反強磁性層には、微視的に見ると、ピンド層との間における交換結合エネルギーよりも、異方性エネルギーが小さくなる領域が多く存在している。このように反強磁性層中の異方性エネルギーが小さい領域に対向するピンド層中の領域では、磁化の方向の固定が不十分となり、外部磁界の大きさや方向に応じて磁化の方向が固定されたり固定されなかったりする現象が生じる。この現象から、従来の再生ヘッドでは、感度が変動するという問題点があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、ピンド層における磁化の方向の固定の不安定性を抑制して、感度の変動を抑制できるようにした磁気抵抗効果素子、ならびに、この磁気抵抗効果素子を有する薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置を提供することにある。
本発明の第1の磁気抵抗効果素子は、
互いに反対側を向く2つの面を有する非磁性導電層と、
非磁性導電層における一方の面に隣接するように配置され、外部磁界に応じて磁化の方向が変化するフリー層と、
非磁性導電層の他方の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定されたピンド層と、
ピンド層における非磁性導電層とは反対側の面に隣接するように配置され、ピンド層との交換結合により、ピンド層における磁化の方向を固定する反強磁性層と
非磁性且つ導電性の材料よりなり、反強磁性層とピンド層との間に配置された中間層とを備えたものである。
本発明の第2の磁気抵抗効果素子は、
互いに反対側を向く2つの面を有する絶縁層と、
絶縁層における一方の面に隣接するように配置され、外部磁界に応じて磁化の方向が変化するフリー層と、
絶縁層の他方の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定されたピンド層と、
ピンド層における絶縁層とは反対側の面に隣接するように配置され、ピンド層との交換結合により、ピンド層における磁化の方向を固定する反強磁性層と
非磁性且つ導電性の材料よりなり、反強磁性層とピンド層との間に配置された中間層とを備えたものである。
本発明の第1または第2の磁気抵抗効果素子では、反強磁性層とピンド層との間に、非磁性且つ導電性の材料よりなる中間層が配置されている。これにより、中間層がない場合に比べて、反強磁性層とピンド層との交換結合は全体的に弱まる。その結果、反強磁性層中の異方性エネルギーが特に小さい領域に対向するピンド層中の領域では、反強磁性層との交換結合による磁化の方向の固定が行なわれなくなる。これにより、ピンド層中の上記領域において、外部磁界の大きさや方向に応じて磁化の方向が固定されたり固定されなかったりする現象がなくなり、その結果、磁気抵抗効果素子の感度の変動が抑制される。
本発明の第1または第2の磁気抵抗効果素子において、中間層の厚さは、0.1〜0.5nmの範囲内であってもよい。また、中間層の材料はCu(銅)であってもよい。
本発明の薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面と、記録媒体からの信号磁界を検出するために媒体対向面の近傍に配置された本発明の第1または第2の磁気抵抗効果素子とを備えたものである。
本発明のヘッドジンバルアセンブリは、本発明の薄膜磁気ヘッドを含み、記録媒体に対向するように配置されるスライダと、スライダを弾性的に支持するサスペンションとを備えたものである。
本発明のハードディスク装置は、本発明の薄膜磁気ヘッドを含み、回転駆動される円盤状の記録媒体に対向するように配置されるスライダと、スライダを支持すると共に記録媒体に対して位置決めする位置決め装置とを備えたものである。
本発明によれば、反強磁性層とピンド層との間に、非磁性且つ導電性の材料よりなる中間層を配置したので、反強磁性層中の異方性エネルギーが特に小さい領域に対向するピンド層中の領域において、外部磁界の大きさや方向に応じて磁化の方向が固定されたり固定されなかったりする現象がなくなる。従って、本発明によれば、ピンド層における磁化の方向の固定の不安定性を抑制して、磁気抵抗効果素子の感度の変動を抑制することができるという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図7および図8を参照して、本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成および製造方法の概略について説明する。図7は薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面および基板に垂直な断面を示す断面図、図8は薄膜磁気ヘッドの磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示す断面図である。なお、ここでは、MR素子としてGMR素子を用いた場合を例にとって説明する。
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、まず、アルティック(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなる基板1の上に、スパッタリング法等によって、アルミナ(Al23)等の絶縁材料よりなる絶縁層2を、例えば1〜5μmの厚さに形成する。次に、絶縁層2の上に、スパッタリング法またはめっき法等によって、パーマロイ(NiFe)等の磁性材料よりなる再生ヘッド用の下部シールド層3を、例えば約3μmの厚さに形成する。
次に、下部シールド層3の上に、スパッタリング法等によって、アルミナ等の絶縁材料よりなる下部シールドギャップ膜4を、例えば10〜200nmの厚さに形成する。次に、下部シールドギャップ膜4の上に、再生用のMR素子5と、図示しないバイアス磁界印加層と、電極層6を、それぞれ、例えば数十nmの厚さに形成する。次に、下部シールドギャップ膜4およびMR素子5の上に、スパッタリング法等によって、アルミナ等の絶縁材料よりなる上部シールドギャップ膜7を、例えば10〜200nmの厚さに形成する。
次に、上部シールドギャップ膜7の上に、磁性材料からなり、記録ヘッドの下部磁極層を兼ねた再生ヘッドの上部シールド層8を、例えば3〜4μmの厚さに形成する。なお、上部シールド層8に用いる磁性材料は、NiFe、CoFe、CoFeNi、FeN等の軟磁性材料である。上部シールド層8は、スパッタリング法またはめっき法等によって形成される。なお、上部シールド層8の代わりに、上部シールド層と、この上部シールド層の上にスパッタリング法等によって形成されたアルミナ等の非磁性材料よりなる分離層と、この分離層の上に形成された下部磁極層とを設けてもよい。
次に、上部シールド層8の上に、スパッタリング法等によって、アルミナ等の絶縁材料よりなる記録ギャップ層9を、例えば50〜300nmの厚さに形成する。次に、磁路形成のために、後述する薄膜コイルの中心部分において、記録ギャップ層9を部分的にエッチングしてコンタクトホール9aを形成する。
次に、記録ギャップ層9の上に、例えば銅(Cu)よりなる薄膜コイルの第1層部分10を、例えば2〜3μmの厚さに形成する。なお、図7において、符号10aは、第1層部分10のうち、後述する薄膜コイルの第2層部分15に接続される接続部を表している。第1層部分10は、コンタクトホール9aの周囲に巻回される。
次に、薄膜コイルの第1層部分10およびその周辺の記録ギャップ層9を覆うように、フォトレジスト等の、加熱時に流動性を有する有機絶縁材料よりなる絶縁層11を所定のパターンに形成する。次に、絶縁層11の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。この熱処理により、絶縁層11の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となる。
次に、絶縁層11のうちの後述するエアベアリング面20側の斜面部分からエアベアリング面20側にかけての領域において、記録ギャップ層9および絶縁層11の上に、記録ヘッド用の磁性材料によって、上部磁極層12のトラック幅規定層12aを形成する。上部磁極層12は、このトラック幅規定層12aと、後述する連結部分層12bおよびヨーク部分層12cとで構成される。
トラック幅規定層12aは、記録ギャップ層9の上に形成され、上部磁極層12の磁極部分となる先端部と、絶縁層11のエアベアリング面20側の斜面部分の上に形成され、ヨーク部分層12cに接続される接続部とを有している。先端部の幅は記録トラック幅と等しくなっている。接続部の幅は、先端部の幅よりも大きくなっている。
トラック幅規定層12aを形成する際には、同時に、コンタクトホール9aの上に磁性材料よりなる連結部分層12bを形成すると共に、接続部10aの上に磁性材料よりなる接続層13を形成する。連結部分層12bは、上部磁極層12のうち、上部シールド層8に磁気的に連結される部分を構成する。
次に、磁極トリミングを行う。すなわち、トラック幅規定層12aの周辺領域において、トラック幅規定層12aをマスクとして、記録ギャップ層9および上部シールド層8の磁極部分における記録ギャップ層9側の少なくとも一部をエッチングする。これにより、図8に示したように、上部磁極層12の磁極部分、記録ギャップ層9および上部シールド層8の磁極部分の少なくとも一部の各幅が揃えられたトリム(Trim)構造が形成される。このトリム構造によれば、記録ギャップ層9の近傍における磁束の広がりによる実効的なトラック幅の増加を防止することができる。
次に、全体に、アルミナ等の無機絶縁材料よりなる絶縁層14を、例えば3〜4μmの厚さに形成する。次に、この絶縁層14を、例えば化学機械研磨によって、トラック幅規定層12a、連結部分層12bおよび接続層13の表面に至るまで研磨して平坦化する。
次に、平坦化された絶縁層14の上に、例えば銅(Cu)よりなる薄膜コイルの第2層部分15を、例えば2〜3μmの厚さに形成する。なお、図7において、符号15aは、第2層部分15のうち、接続層13を介して薄膜コイルの第1層部分10の接続部10aに接続される接続部を表している。第2層部分15は、連結部分層12bの周囲に巻回される。
次に、薄膜コイルの第2層部分15およびその周辺の絶縁層14を覆うように、フォトレジスト等の、加熱時に流動性を有する有機絶縁材料よりなる絶縁層16を所定のパターンに形成する。次に、絶縁層16の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。この熱処理により、絶縁層16の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となる。
次に、トラック幅規定層12a、絶縁層14,16および連結部分層12bの上に、パーマロイ等の記録ヘッド用の磁性材料によって、上部磁極層12のヨーク部分を構成するヨーク部分層12cを形成する。ヨーク部分層12cのエアベアリング面20側の端部は、エアベアリング面20から離れた位置に配置されている。また、ヨーク部分層12cは、連結部分層12bを介して上部シールド層8に接続されている。
次に、全体を覆うように、例えばアルミナよりなるオーバーコート層17を形成する。最後に、上記各層を含むスライダの機械加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドを含む薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面20を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
このようにして製造される薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面としてのエアベアリング面20と再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドは、MR素子5と、エアベアリング面20側の一部がMR素子5を挟んで対向するように配置された、MR素子5をシールドするための下部シールド層3および上部シールド層8とを有している。
記録ヘッドは、エアベアリング面20側において互いに対向する磁極部分を含むと共に、互いに磁気的に連結された下部磁極層(上部シールド層8)および上部磁極層12と、この下部磁極層の磁極部分と上部磁極層12の磁極部分との間に設けられた記録ギャップ層9と、少なくとも一部が下部磁極層および上部磁極層12の間に、これらに対して絶縁された状態で配設された薄膜コイル10,15とを有している。この薄膜磁気ヘッドでは、図7に示したように、エアベアリング面20から、絶縁層11のエアベアリング面20側の端部までの長さが、スロートハイトTHとなる。なお、スロートハイトとは、エアベアリング面20から、2つの磁極層の間隔が開き始める位置までの長さ(高さ)をいう。
次に、図1ないし図6を参照して、本実施の形態における再生ヘッドの構成について詳しく説明する。本実施の形態において、MR素子5は、スピンバルブ型GMR素子またはトンネル磁気抵抗効果を用いるTMR素子である。
まず、図1ないし図3を参照して、MR素子5としてスピンバルブ型GMR素子を用いたときの再生ヘッドの構成の一例について説明する。図1は、再生ヘッドのエアベアリング面に平行な断面を示す断面図である。図1に示した再生ヘッドは、所定の間隔を開けて配置された下部シールド層3および上部シールド層8と、この下部シールド層3と上部シールド層8との間に配置されたMR素子5と、下部シールド層3とMR素子5との間に配置された下部シールドギャップ膜4と、上部シールド層8とMR素子5との間に配置された上部シールドギャップ膜7とを備えている。MR素子5は、互いに反対側を向く2つの面と、2つの側部とを有している。
再生ヘッドは、更に、MR素子5の各側部に隣接するように配置され、MR素子5に対して縦バイアス磁界を印加する2つのバイアス磁界印加層18と、それぞれ各バイアス磁界印加層18の一方の面に隣接するように配置され、MR素子5に対して信号検出用の電流であるセンス電流を流す2つの電極層6とを備えている。図1では、電極層6はバイアス磁界印加層18の上に配置されているが、バイアス磁界印加層18のない領域では、電極層6は下部シールドギャップ膜4の上に配置されている。
バイアス磁界印加層18は、硬磁性層(ハードマグネット)や、強磁性層と反強磁性層との積層体等を用いて構成される。電極層6は、例えば、Ta層とAu層との積層体、Tiw層とTa層の積層体、あるいはTiN層とTa層の積層体等によって構成される。
図2は、図1におけるMR素子5の構成の一例を示す斜視図である。このMR素子5は、下部シールドギャップ膜4の上に順に積層された下地層21、反強磁性層22、中間層23、ピンド層24、非磁性導電層25、フリー層26および保護層27を有している。ピンド層24は磁化の方向が固定された層であり、反強磁性層22はピンド層24における磁化の方向を固定する層である。中間層23は、非磁性且つ導電性の材料よりなる層である。中間層23の機能については、後で詳しく説明する。フリー層26は、軟磁性層からなり、記録媒体からの信号磁界に応じて磁化の方向が変化する層である。
このようにMR素子5は、互いに反対側を向く2つの面を有する非磁性導電層25と、この非磁性導電層25の一方の面(上面)に隣接するように配置されたフリー層26と、非磁性導電層25の他方の面(下面)に隣接するように配置され、磁化の方向が固定されたピンド層24と、このピンド層24における非磁性導電層25とは反対側の面に隣接するように配置され、ピンド層24との交換結合によりピンド層24における磁化の方向を固定する反強磁性層22と、反強磁性層22とピンド層24との間に配置された中間層23とを有している。
下地層21の厚さは、例えば2〜6nmである。下地層21の材料としては、例えばTaやNiCrが用いられる。
反強磁性層22の厚さは、例えば5〜30nmである。反強磁性層22は、例えば、Pt、Ru、Rh、Pd、Ni、Au、Ag、Cu、Ir、CrおよびFeからなる群のうちの少なくとも1種MIIと、Mnとを含む反強磁性材料により構成されている。このうちMnの含有量は35原子%以上95原子%以下、その他の元素MIIの含有量は5原子%以上65原子%以下であることが好ましい。この反強磁性材料には、熱処理しなくても反強磁性を示し、強磁性材料との間に交換結合磁界を誘起する非熱処理系反強磁性材料と、熱処理により反強磁性を示すようになる熱処理系反強磁性材料とがある。この反強磁性層22は、そのどちらにより構成されていてもよい。
なお、非熱処理系反強磁性材料にはγ相を有するMn合金等があり、具体的には、RuRhMn、FeMnあるいはIrMn等がある。熱処理系反強磁性材料には規則結晶構造を有するMn合金等があり、具体的には、PtMn、NiMnおよびPtRhMn等がある。
ピンド層24では、反強磁性層22との交換結合により、磁化の向きが固定されている。ピンド層24は、例えば、反強磁性層22側から順に、第1の強磁性層24a、結合層24bおよび第2の強磁性層24cを、この順に積層した構造を有している。第1の強磁性層24aおよび第2の強磁性層24cは、例えば、CoおよびFeからなる群のうちの少なくともCoを含む強磁性材料により構成されている。特に、この強磁性材料の(111)面は積層方向に配向していることが好ましい。2つの強磁性層24a,24cを合わせた厚さは、例えば1.5〜5nmである。2つの強磁性層24a,24cは、反強磁性結合し、磁化の方向が互いに逆方向に固定されている。
ピンド層24における結合層24bの厚さは、例えば0.2〜1.2nmである。結合層24bは、例えば、Ru、Rh、Ir、Re、CrおよびZrからなる群のうち少なくとも1種を含む非磁性材料により構成されている。この結合層24bは、第1および第2の強磁性層24a,24cの間に反強磁性交換結合を生じさせ、第1の強磁性層24aの磁化と第2の強磁性層24cの磁化とを互いに逆方向に固定するためのものである。なお、第1の強磁性層24aの磁化と第2の強磁性層24cの磁化が互いに逆方向というのは、これら2つの磁化の方向が互いに180°異なる場合のみならず、2つの磁化の方向が180°±20°異なる場合を含む。
ピンド層24における第2の強磁性層24cは、その内側において、磁性を有し、他の部分よりも電気抵抗が大きい強磁性層内高抵抗層を有していてもよい。この強磁性層内高抵抗層は、電子の少なくとも一部を反射して電子の移動を制限することにより、MR素子5の抵抗変化率を大きくするためのものである。強磁性層内高抵抗層の厚さは0.3〜1nmが好ましい。強磁性層内高抵抗層は、酸化物、窒化物および酸化窒化物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。それは、磁気的に安定であり、出力変動を小さくすることができるからである。また、強磁性層内高抵抗層は、第2の強磁性層24cの他の部分を構成する材料の一部を酸化、窒化または酸化および窒化することによって形成してもよい。
中間層23は、反強磁性層22中の異方性エネルギーが特に小さい領域とこれに対向するピンド24層中の領域との間を除いて、反強磁性層22とピンド24層との交換結合を生じさせることのできる厚さとする。中間層23の材料は、非磁性且つ導電性の材料であるが、Cu、Au、Agのいずれかであることが好ましく、特にCuであることが好ましい。中間層23の厚さは、0.1〜0.5nmの範囲内であることが好ましい。この好ましい範囲の下限値である0.1nmは、中間層23を成膜可能か否かという観点で定められ、成膜可能な中間層23の厚さの下限値とほぼ等しい。好ましい範囲の上限値である0.5nmは、後で示す実験の結果に基づいて定められている。
非磁性導電層25の厚さは、例えば1.0〜3.0nmである。非磁性導電層25は、例えば、Cu、AuおよびAgからなる群のうち少なくとも1種を80重量%以上含む非磁性の導電性材料により構成されている。
フリー層26の厚さは、例えば1.0〜8.0nmである。フリー層26は、単層で構成されていてもよいし、2つ以上の層によって構成されていてもよい。ここでは、フリー層24が2つの軟磁性層で構成される場合の例を挙げる。2つの軟磁性層のうち、非磁性導電層25側の層を第1の軟磁性層と呼び、保護層27側の層を第2の軟磁性層と呼ぶ。
第1の軟磁性層の厚さは、例えば0.5〜3nmである。第1の軟磁性層は、例えば、Ni、CoおよびFeからなる群のうちの少なくともCoを含む磁性材料により構成されている。具体的には、第1の軟磁性層は、(111)面が積層方向に配向しているCoxFeyNi100-(x+y)により構成されることが好ましい。式中、x,yはそれぞれ原子%で70≦x≦100、0≦y≦25の範囲内である。
第2の軟磁性層の厚さは、例えば0.5〜8nmである。第2の軟磁性層は、例えば、Ni、Co、Fe、Ta、Cr、Rh、MoおよびNbからなる群のうち少なくともNiを含む磁性材料により構成されている。具体的には、第2の軟磁性層は、[NixCoyFe100-(x+y)100-ZIZにより構成されることが好ましい。式中、MIは、Ta、Cr、Rh、MoおよびNbのうち少なくとも1種を表し、x、y、zはそれぞれ原子%で75≦x≦90、0≦y≦15、0≦z≦15の範囲内である。
保護層27の厚さは、例えば0.5〜10nmである。保護層27の材料としては、例えばTaが用いられる。また、保護層25は、Ta層、Ru層等の組み合わせの2積層構造や、Ta層、Ru層、Ta層等の組み合わせの3積層構造としてもよい。
図3は、図1におけるMR素子5の構成の他の例を示す斜視図である。このMR素子5は、反強磁性層22からフリー層26までの層の順番が図2に示した構成と逆になっているものである。すなわち、図3に示したMR素子5は、下地層21の上に、フリー層26、非磁性導電層25、ピンド層24、中間層23、反強磁性層22および保護層27が順に積層された構成になっている。
次に、図4ないし図6を参照して、MR素子5としてTMR素子を用いたときの再生ヘッドの構成の一例について説明する。図4は、再生ヘッドのエアベアリング面に平行な断面を示す断面図である。図4に示した再生ヘッドは、所定の間隔を開けて配置された下部シールド層3および上部シールド層8と、この下部シールド層3と上部シールド層8との間に配置されたMR素子5とを備えている。MR素子5は、互いに反対側を向く2つの面と、2つの側部とを有している。MR素子5の一方の面(下面)は下部シールド層3に接し、MR素子5の他方の面(上面)は上部シールド層8に接している。
再生ヘッドは、更に、MR素子5の2つの側部に隣接するように配置され、MR素子5に対してバイアス磁界を印加する2つのバイアス磁界印加層18と、MR素子5およびバイアス磁界印加層18の周囲に配置された下部シールドギャップ膜4および上部シールドギャップ膜7とを備えている。下部シールドギャップ膜4は、下部シールド層3およびMR素子5と、バイアス磁界印加層18との間に介在して、これらの間を絶縁する。上部シールドギャップ膜7は、バイアス磁界印加層18と上部シールド層8との間に介在して、これらの間を絶縁する。
図5は、図4におけるMR素子5の構成の一例を示す断面図である。このMR素子5は、図2に示したMR素子5における非磁性導電層25の代わりに、非磁性絶縁層よりなるトンネルバリア層28が設けられた構成になっている。このトンネルバリア層28は、トンネル効果によりスピンを保存した状態で電子が通過できる層である。トンネルバリア層28の厚さは、例えば0.5〜2nmである。トンネルバリア層28の材料としては、例えばAl23、NiO、GdO、MgO、Ta25、MoO2、TiO2またはWO2が用いられる。図5に示したMR素子5のその他の構成は、図2に示したMR素子5と同様である。
図6は、図4におけるMR素子5の構成の他の例を示す断面図である。このMR素子5は、図3に示したMR素子5における非磁性導電層25の代わりに、非磁性絶縁層よりなるトンネルバリア層28が設けられた構成になっている。図6に示したMR素子5のその他の構成は、図3に示したMR素子5と同様である。
図5、図6に示したMR素子5では、下部シールド層3と上部シールド層8が、MR素子5にセンス電流を流すための電極層を兼ねている。図5、図6に示したMR素子5では、センス電流は、MR素子5を構成する各膜の面に対して垂直な方向に流れる。なお、下部シールド層3とMR素子5の間と、MR素子5と上部シールド層8との間に、それぞれ、MR素子5にセンス電流を流すための電極層を設けてもよい。
次に、本実施の形態に係るMR素子5および薄膜磁気ヘッドの作用について説明する。薄膜磁気ヘッドは、記録ヘッドによって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生する。
ここで、図2および図3に示したように、バイアス磁界印加層18によるバイアス磁界の方向をX方向とし、エアベアリング面20に垂直な方向をY方向とする。X方向とY方向は直交している。MR素子5において、信号磁界がない状態では、フリー層26の磁化の方向は、バイアス磁界の方向であるX方向に揃えられている。一方、ピンド層24では、強磁性層24aの磁化の方向は、反強磁性層22によってY方向に固定され、強磁性層24cの磁化の方向は、強磁性層24aの磁化の方向とは逆方向に固定されている。
MR素子5では、記録媒体からの信号磁界に応じてフリー層26の磁化の方向が変化し、これにより、フリー層26の磁化の方向とピンド層24の強磁性層24cの磁化の方向との間の相対角度が変化し、その結果、MR素子5の抵抗値が変化する。MR素子5の抵抗値は、MR素子5にセンス電流を流したときの2つの電極層間の電位差より求めることができる。このようにして、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生することができる。
次に、中間層23の機能について説明する。反強磁性層22には、微視的に見ると、ピンド層24との間における交換結合エネルギーよりも、異方性エネルギーが小さくなる領域が多く存在している。そのため、中間層23を設けない場合には、反強磁性層22中の異方性エネルギーが小さい領域に対向するピンド層24中の領域では、磁化の方向の固定が不十分となり、外部磁界の大きさや方向に応じて磁化の方向が固定されたり固定されなかったりする現象が生じる。この現象から、再生ヘッドの感度が変動する。
本実施の形態では、反強磁性層22とピンド層24との間に、非磁性且つ導電性の材料よりなる中間層23が配置されている。これにより、中間層23がない場合に比べて、反強磁性層22とピンド層24との交換結合は全体的に弱まる。その結果、反強磁性層22中の異方性エネルギーが特に小さい領域に対向するピンド層24中の領域では、反強磁性層22との交換結合による磁化の方向の固定が行なわれなくなる。これにより、ピンド層24中の上記領域において、外部磁界の大きさや方向に応じて磁化の方向が固定されたり固定されなかったりする現象がなくなり、その結果、MR素子5の感度の変動が抑制される。従って、本実施の形態によれば、ピンド層24における磁化の方向の固定の不安定性を抑制して、MR素子5感度の変動を抑制することができる。
次に、中間層23による効果を確認するために行った第1の実験の結果について説明する。この実験では、それぞれスピンバルブ型GMR素子よりなる3つのMR素子の試料A,B,Cを作製した。試料A,Bは比較例の試料であり、中間層23を有していない。試料Cは、本実施の形態の実施例の試料であり、Cuよりなる中間層23を有している。試料Cにおける中間層23の厚みは0.5nmである。この実験では、上記の試料A,B,Cの状態を、状態1から状態8までの8つの状態に順次切り換え、各状態において、試料A,B,Cの磁気抵抗変化率を測定した。
実験の結果を図13に示す。図13において、横軸は状態を表し、縦軸は磁気抵抗変化率を表している。なお、磁気抵抗変化率を測定する際の外部磁界変化量は900Oe(900×79.6A/m)とした。状態1では、磁気抵抗変化率を測定するための外部磁界以外の外部磁界(以下、外乱磁界と言う。)を試料に印加していない。状態2では、バイアス磁界と同じ方向に、10000Oe(10000×79.6A/m)の外乱磁界を試料に印加した。状態3では、強磁性層24cの磁化の方向と同じ方向に、1000Oe(1000×79.6A/m)の外乱磁界を試料に印加した。状態4では、バイアス磁界と同じ方向に、10000Oe(10000×79.6A/m)の外乱磁界を試料に印加した。状態5では、強磁性層24cの磁化の方向と同じ方向に、5000Oe(5000×79.6A/m)の外乱磁界を試料に印加した。状態6では、強磁性層24cの磁化の方向と同じ方向に、10000Oe(10000×79.6A/m)の外乱磁界を試料に印加した。状態7では、外乱磁界を試料に印加していない。状態8では、バイアス磁界と同じ方向に、10000Oe(10000×79.6A/m)の外乱磁界を試料に印加した。
状態3、状態5および状態6では、外乱磁界は、反強磁性層22に隣接する強磁性層24aの磁化の方向と反対方向である。そのため、外乱磁界は、強磁性層24aの磁化の方向を変化させるように働く。ここで、中間層23が設けられていない試料Aおよび試料Bでは、反強磁性層22中の異方性エネルギーが特に小さい領域に対向する強磁性層24a中の領域において、外部磁界の大きさや方向に応じて磁化の方向が固定されたり固定されなかったりする現象が生じ、この現象から、MR素子の感度が変動する。このことは、試料Aおよび試料Bでは、大きな外乱磁界が印加される状態6において、磁気抵抗変化率が大きく低下していることからよく分かる。
本実施の形態では、反強磁性層22とピンド層24との間に中間層23が配置されていることから、上述の現象に起因するMR素子5の感度の変動が抑制される。このことは、試料Cでは、状態6においても、磁気抵抗変化率がさほど低下していないことからよく分かる。
なお、中間層23の材料をCuの代わりにAuまたはAgとした試料でも、上記と同様の実験において、試料Cと同様の挙動を示した。
次に、中間層23の厚さの好ましい範囲を求めるために行なった第2および第3の実験の結果について説明する。第2の実験では、図2に示した構造のスピンバルブ型GMR素子よりなるMR素子の試料を用いて、中間層23の材料および厚さと、反強磁性層22とピンド層24の間における交換結合磁界との関係を求めた。第2の実験で用いたMR素子の層の構成は、以下の通りである。下地層21は厚さ5nmのNiCr層とした。反強磁性層22は厚さ13nmのPtMn層とした。ピンド層24は厚さ1.5nmのCoFe層とした。非磁性導電層25は厚さ2.4nmのCu層とした。フリー層26は、厚さ1nmのCoFe層と厚さ2nmのNiFe層との積層体とした。保護層27は、厚さ0.5nmのRu層と厚さ2nmのTa層との積層体とした。
第2の実験では、試料として、中間層23を有しないものと、中間層23がCu層で、厚さがそれぞれ0.3nm、0.5nm、0.7nmのものと、中間層23がRu層で、厚さがそれぞれ0.2nm、0.3nm、0.5nmのものとを用いた。第2の実験では、これらの試料について、反強磁性層22とピンド層24の間における交換結合磁界を求め、その結果に基づいて、中間層23の材料および厚さと交換結合磁界との関係を求めた。第2の実験の結果を、下記の表と図14に示す。図14において、横軸は中間層23の厚さを表し、縦軸は交換結合磁界を表している。なお、下記の表には、この後で説明する第3の実験の結果も載せている。
Figure 2005150292
第3の実験では、図2に示した構造のスピンバルブ型GMR素子よりなるMR素子の試料を用いて、中間層23の材料および厚さと、MR素子の抵抗変化量との関係を求めた。第3の実験で用いたMR素子の層の構成は、以下の通りである。下地層21は厚さ5nmのNiCr層とした。反強磁性層22は厚さ13nmのPtMn層とした。ピンド層24は、第1の強磁性層としての厚さ1.5nmのCoFe層、結合層としての厚さ0.8nmのRu層、第2の強磁性層としての厚さ1.6nmのCoFe層を、この順に積層した構造とした。非磁性導電層25は厚さ1.9nmのCu層とした。フリー層26は、厚さ1nmのCoFe層と厚さ2nmのNiFe層との積層体とした。保護層27は、厚さ0.5nmのRu層と厚さ2nmのTa層との積層体とした。
第3の実験では、第2の実験と同様に、試料として、中間層23を有しないものと、中間層23がCu層で、厚さがそれぞれ0.3nm、0.5nm、0.7nmのものと、中間層23がRu層で、厚さがそれぞれ0.2nm、0.3nm、0.5nmのものとを用いた。第3の実験では、これらの試料について、MR素子の抵抗変化量を求め、その結果に基づいて、中間層23の材料および厚さと抵抗変化量との関係を求めた。第3の実験の結果を、前記の表と図15に示す。図15において、横軸は中間層23の厚さを表し、縦軸は抵抗変化量を表している。
第2の実験から、MR素子において、中間層23を有しない場合に比べて、中間層23を設けることにより、交換結合磁界が小さくなることが分かる。しかし、中間層23を設けた場合でも、交換結合磁界は、ある程度大きくなければならず、中間層23を有しない場合における交換結合磁界の80%以上であることが好ましい。そこで、第2の実験においては、中間層23を設けた場合における交換結合磁界は、中間層23を有しない場合における交換結合磁界の約80%である500(Oe=×79.6A/m)以上が好ましいものとする。
また、第3の実験から、MR素子において、中間層23を有しない場合に比べて、中間層23を設けることにより、抵抗変化量が小さくなることが分かる。しかし、中間層23を設けた場合でも、抵抗変化量は、ある程度大きくなければならず、中間層23を有しない場合における抵抗変化量の90%以上であることが好ましい。そこで、第3の実験においては、中間層23を設けた場合における抵抗変化量は、中間層23を有しない場合における抵抗変化量の約90%である2.4(Ω/□)以上が好ましいものとする。
中間層23の材料がCuの場合には、中間層23の厚さが0.5nm以下のときに、上記の2つの好ましい条件を満たす。また、中間層23の厚さが0.5nmを超えると、抵抗変化量が急激に減少する。これらのことから、中間層23の厚さは0.5nm以下であることが好ましい。なお、中間層23の材料がRuの場合には、中間層23の厚さが0.2nmであっても、交換結合磁界が、中間層23を有しない場合における交換結合磁界の80%を下回るため、Ruは中間層23の材料として好ましくはない。
以下、本実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置について説明する。まず、図9を参照して、ヘッドジンバルアセンブリに含まれるスライダ210について説明する。ハードディスク装置において、スライダ210は、回転駆動される円盤状の記録媒体であるハードディスクに対向するように配置される。このスライダ210は、主に図7における基板1およびオーバーコート層17からなる基体211を備えている。基体211は、ほぼ六面体形状をなしている。基体211の六面のうちの一面は、ハードディスクに対向するようになっている。この一面には、エアベアリング面20が形成されている。ハードディスクが図9におけるz方向に回転すると、ハードディスクとスライダ210との間を通過する空気流によって、スライダ210に、図9におけるy方向の下方に揚力が生じる。スライダ210は、この揚力によってハードディスクの表面から浮上するようになっている。なお、図9におけるx方向は、ハードディスクのトラック横断方向である。スライダ210の空気流出側の端部(図9における左下の端部)の近傍には、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド100が形成されている。
次に、図10を参照して、本実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリ220について説明する。ヘッドジンバルアセンブリ220は、スライダ210と、このスライダ210を弾性的に支持するサスペンション221とを備えている。サスペンション221は、例えばステンレス鋼によって形成された板ばね状のロードビーム222、このロードビーム222の一端部に設けられると共にスライダ210が接合され、スライダ210に適度な自由度を与えるフレクシャ223と、ロードビーム222の他端部に設けられたベースプレート224とを有している。ベースプレート224は、スライダ210をハードディスク262のトラック横断方向xに移動させるためのアクチュエータのアーム230に取り付けられるようになっている。アクチュエータは、アーム230と、このアーム230を駆動するボイスコイルモータとを有している。フレクシャ223において、スライダ210が取り付けられる部分には、スライダ210の姿勢を一定に保つためのジンバル部が設けられている。
ヘッドジンバルアセンブリ220は、アクチュエータのアーム230に取り付けられる。1つのアーム230にヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドアームアセンブリと呼ばれる。また、複数のアームを有するキャリッジの各アームにヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドスタックアセンブリと呼ばれる。
10は、ヘッドアームアセンブリの一例を示している。このヘッドアームアセンブリでは、アーム230の一端部にヘッドジンバルアセンブリ220が取り付けられている。アーム230の他端部には、ボイスコイルモータの一部となるコイル231が取り付けられている。アーム230の中間部には、アーム230を回動自在に支持するための軸234に取り付けられる軸受け部233が設けられている。
次に、図11および図12を参照して、ヘッドスタックアセンブリの一例と本実施の形態に係るハードディスク装置について説明する。図11はハードディスク装置の要部を示す説明図、図12はハードディスク装置の平面図である。ヘッドスタックアセンブリ250は、複数のアーム252を有するキャリッジ251を有している。複数のアーム252には、複数のヘッドジンバルアセンブリ220が、互いに間隔を開けて垂直方向に並ぶように取り付けられている。キャリッジ251においてアーム252とは反対側には、ボイスコイルモータの一部となるコイル253が取り付けられている。ヘッドスタックアセンブリ250は、ハードディスク装置に組み込まれる。ハードディスク装置は、スピンドルモータ261に取り付けられた複数枚のハードディスク262を有している。各ハードディスク262毎に、ハードディスク262を挟んで対向するように2つのスライダ210が配置される。また、ボイスコイルモータは、ヘッドスタックアセンブリ250のコイル253を挟んで対向する位置に配置された永久磁石263を有している。
スライダ210を除くヘッドスタックアセンブリ250およびアクチュエータは、本発明における位置決め装置に対応し、スライダ210を支持すると共にハードディスク262に対して位置決めする。
本実施の形態に係るハードディスク装置では、アクチュエータによって、スライダ210をハードディスク262のトラック横断方向に移動させて、スライダ210をハードディスク262に対して位置決めする。スライダ210に含まれる薄膜磁気ヘッドは、記録ヘッドによって、ハードディスク262に情報を記録し、再生ヘッドによって、ハードディスク262に記録されている情報を再生する。
本実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置は、前述の本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドと同様の効果を奏する。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、実施の形態では、第1の強磁性層24a、結合層24bおよび第2の強磁性層24cが積層された構造のピンド層24を有するMR素子5を示したが、本発明は他の構造のピンド層を有するMR素子にも適用することができる。
また、実施の形態では、基体側に再生ヘッドを形成し、その上に、記録ヘッドを積層した構造の薄膜磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。
また、読み取り専用として用いる場合には、薄膜磁気ヘッドを、再生ヘッドだけを備えた構成としてもよい。
また、本発明の磁気抵抗効果素子は、薄膜磁気ヘッドにおける再生ヘッドに限らず、磁界を検出するセンサや磁性薄膜メモリ等にも適用することができる。
本発明の一実施の形態における再生ヘッドの構成の一例を示す断面図である。 図1におけるMR素子の構成の一例を示す斜視図である。 図1におけるMR素子の構成の他の例を示す斜視図である。 本発明の一実施の形態における再生ヘッドの構成の他の例を示す断面図である。 図4におけるMR素子の構成の一例を示す斜視図である。 図4におけるMR素子の構成の他の例を示す斜視図である。 本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面および基板に垂直な断面を示す断面図である。 本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示す断面図である。 本発明の一実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリに含まれるスライダを示す斜視図である。 本発明の一実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリを含むヘッドアームアセンブリを示す斜視図である。 本発明の一実施の形態に係るハードディスク装置の要部を説明するための説明図である。 本発明の一実施の形態に係るハードディスク装置の平面図である。 本発明の一実施の形態の効果を示す第1の実験結果を示す説明図である。 本発明の一実施の形態における中間層の厚さの好ましい範囲を求めるために行なった第2の実験の結果を示す特性図である。 本発明の一実施の形態における中間層の厚さの好ましい範囲を求めるために行なった第3の実験の結果を示す特性図である。
符号の説明
1…基板、2…絶縁層、3…下部シールド層、4…下部シールドギャップ膜、5…MR素子、6…電極層、7…上部シールドギャップ膜、8…上部シールド層、9…記録ギャップ層、10…薄膜コイルの第1層部分、12…上部磁極層、15…薄膜コイルの第2層部分、17…オーバーコート層、18…バイアス磁界印加層、20…エアベアリング面、21…下地層、22…反強磁性層、23…中間層、24…ピンド層、25…反強磁性層、26…フリー層、27…保護層。

Claims (9)

  1. 互いに反対側を向く2つの面を有する非磁性導電層と、
    前記非磁性導電層における一方の面に隣接するように配置され、外部磁界に応じて磁化の方向が変化するフリー層と、
    前記非磁性導電層の他方の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定されたピンド層と、
    前記ピンド層における前記非磁性導電層とは反対側の面に隣接するように配置され、前記ピンド層との交換結合により、前記ピンド層における磁化の方向を固定する反強磁性層と
    非磁性且つ導電性の材料よりなり、前記反強磁性層とピンド層との間に配置された中間層と
    を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  2. 前記中間層の厚さは、0.1〜0.5nmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  3. 前記中間層の材料はCuであることを特徴とする請求項1または2記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 互いに反対側を向く2つの面を有する絶縁層と、
    前記絶縁層における一方の面に隣接するように配置され、外部磁界に応じて磁化の方向が変化するフリー層と、
    前記絶縁層の他方の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定されたピンド層と、
    前記ピンド層における前記絶縁層とは反対側の面に隣接するように配置され、前記ピンド層との交換結合により、前記ピンド層における磁化の方向を固定する反強磁性層と
    非磁性且つ導電性の材料よりなり、前記反強磁性層とピンド層との間に配置された中間層と
    を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  5. 前記中間層の厚さは、0.1〜0.5nmの範囲内であることを特徴とする請求項4記載の磁気抵抗効果素子。
  6. 前記中間層の材料はCuのいずれかであることを特徴とする請求項4または5記載の磁気抵抗効果素子。
  7. 記録媒体に対向する媒体対向面と、
    前記記録媒体からの信号磁界を検出するために前記媒体対向面の近傍に配置された請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子と
    を備えたことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  8. 請求項7記載の薄膜磁気ヘッドを含み、記録媒体に対向するように配置されるスライダと、
    前記スライダを弾性的に支持するサスペンションと
    を備えたことを特徴とするヘッドジンバルアセンブリ。
  9. 請求項7記載の薄膜磁気ヘッドを含み、回転駆動される円盤状の記録媒体に対向するように配置されるスライダと、
    前記スライダを支持すると共に前記記録媒体に対して位置決めする位置決め装置と
    を備えたことを特徴とするハードディスク装置。
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