JP2005149776A - 車両灯具用赤色バルブおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ガラス球外表面に赤色塗装膜を形成することで、光束,色度および耐熱性のすべてにおいて優れた、非点灯時における見栄えのよい車両灯具用赤色バルブを提供する。
【解決手段】フィラメント35C1,35C2を収容したガラス球30C1の外表面に赤色顔料として酸化鉄を含有する赤色塗装膜38を形成した車両灯具用赤色バルブであって、ガラス球30C1をアンバー色ガラスで構成し、赤色塗装膜38を薄膜(1〜5μm)で構成した。フィラメント35C1,35C2の白色発光は、アンバー色ガラス球30C1を透過することでアンバー色を帯び、さらに赤色塗装膜38を透過することで赤色を帯びた光となるが、赤色塗装膜38入射前に赤色に近いアンバー色を帯びているので、赤色塗装膜38の膜厚を薄く形成することで、透過光は所望の赤の色度をもつ。赤色塗装膜38の膜厚が薄い分、透過光量が増えて所望の光束が得られ、バルブ16Cの赤色ガラス球30Cの透明性も上がる。
【選択図】 図3
【解決手段】フィラメント35C1,35C2を収容したガラス球30C1の外表面に赤色顔料として酸化鉄を含有する赤色塗装膜38を形成した車両灯具用赤色バルブであって、ガラス球30C1をアンバー色ガラスで構成し、赤色塗装膜38を薄膜(1〜5μm)で構成した。フィラメント35C1,35C2の白色発光は、アンバー色ガラス球30C1を透過することでアンバー色を帯び、さらに赤色塗装膜38を透過することで赤色を帯びた光となるが、赤色塗装膜38入射前に赤色に近いアンバー色を帯びているので、赤色塗装膜38の膜厚を薄く形成することで、透過光は所望の赤の色度をもつ。赤色塗装膜38の膜厚が薄い分、透過光量が増えて所望の光束が得られ、バルブ16Cの赤色ガラス球30Cの透明性も上がる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、赤色塗装膜をガラス球外表面に形成した車両灯具用赤色バルブおよびその製造方法に係わり、特に赤色顔料として酸化鉄を用いた赤色塗装膜をガラス球に形成した車両灯具用赤色バルブおよびその製造方法に関する。
自動車等の車両の後部には、車両後部を表示するためのテールランプやブレーキ制動に連係して点灯するブレーキランプや両者を一体化したテールアンドストップランプあるいはリアフォグランプが標識灯として設けられている。これらの標識灯は、灯室内に備え付けたバルブの発光によりレンズカバーが機能色である赤色に発光する構造となっている。
これらのランプ(赤色標識灯)は、近年では、機能色が白色であるバックアップランプやクリアランスランプ、あるいは機能色がアンバー色であるターンシグナルランプ等の他の標識灯と一体化したコンビネーションランプとして構成される傾向にある。そして、コンビネーションランプのレンズカバーをクリアにしてランプユニットとしての一体感を持たせるとともに、テールアンドストップランプのバルブは赤色バルブ、ターンシグナルランプのバルブはアンバー色バルブ、クリアランスランプのバルブは白色バルブというように、各標識灯に用いられるバルブは、バルブの発光そのものがそれぞれの機能色を帯びるバルブであることが要求されている。
そして、テールアンドストップランプやリアフォグランプといった赤色標識灯においては、光束(120±20%1m)、色度(y≦0.335,y≧0.980−x)および耐熱性(350℃以上)の三条件すべてを満たすことが要求されるが、ガラス球自体が赤色ガラスで構成されたもの、クリアなガラス球表面に赤色塗装膜を形成したもののいずれの構造においても、上記三条件すべてを満たすものは存在しない。
そこで、発明者は、下記特許文献1において、耐熱性に優れた無機系赤色顔料として酸化鉄を含有する赤色塗料(酸化鉄の平均粒子径10〜100nm、PWC濃度60〜90%)をクリアなガラス球の外表面にコーティングした赤色バルブを提案した。
特願2002-157579号
しかし、この特許文献1に係る赤色バルブでは、赤色塗装膜を透過した光が所定の赤の色度を得るために膜厚を厚くせざるを得ず、この膜厚が厚いことが以下の問題点に繋がった。
第1に、非点灯時における赤色バルブ(のガラス球)がクリアなレンズカバーを通して黒っぽく(赤黒く)見えて、見栄えが悪い。
第2に、膜厚が厚い分それだけ透過光量が少なく、所定の光束が得られない。そして、光束の低下を補うには、フィラメントの形状を設計変更するなどの工夫により対応できるものの、バルブ(のフィラメント)の寿命が低下する。
そこで、赤色塗装膜の膜厚を薄くすることで、赤色バルブ(のガラス球)が明るく見えて見栄えが良好となるとともに、透過光量が増えて所定の光束も得られるという、何かよい方法がないか検討したところ、ターンシグナルランプ用のバルブとして従来公知のアンバー色バルブのガラス球にこの赤色塗料をコーティングする方法を考えた。
即ち、赤色塗装膜に入射する前のガラス球透過光が赤色に近いアンバー色を帯びるように構成しておけば、赤色塗装膜が薄くても所望の赤色の色度が得られるとともに、所望の光束も得られるのではないかと考えて、ガラス生地自体がアンバー色を帯びているアンバー色バルブのガラス球の表面に、特許文献1と同一の赤色塗料(平均粒子径10〜100nmでPWC濃度60〜90%に調整した酸化鉄を含有する赤色塗料)をコーティングし、赤色塗装膜の膜厚を種々代えたサンプルについて、色度と光束を測定する実験を重ねた結果、赤色塗装膜を所定の膜厚とした場合に赤色標識灯としての光束,色度,耐熱性の三条件について満足できることが確認されたので、本発明を提案するに至ったものである。
本発明は前記した従来技術の問題点と発明者の知見に基づいてなされたもので、その目的は、ガラス球外表面に赤色塗装膜を形成することで、光束,色度および耐熱性のすべてにおいて優れた、非点灯時における見栄えのよい車両灯具用赤色バルブおよびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に係る車両灯具用の赤色バルブにおいては、白色発光体を収容したガラス球の外表面に赤色顔料として酸化鉄を含有する赤色塗装膜が形成された車両灯具用の赤色バルブであって、前記ガラス球をアンバー色ガラスで構成するとともに、前記赤色塗装膜を適宜薄膜で構成するようにした。なお、ここで適宜薄膜とは、赤色標識灯として要求される光束,色度および耐熱性の三条件を満たす膜厚をいい、具体的には、請求項2に示すように、赤色塗装膜の膜厚を1〜5μmの範囲に構成することである。
(作用)ガラス球内の発光体(例えばフィラメント)の白色発光は、アンバー色ガラスで構成されたガラス球を透過することでアンバー色を帯び、さらに赤色塗装膜を透過することで赤色を帯びた光となるが、赤色塗装膜によって赤色を帯びる前に、ガラス球透過光が赤色に近いアンバー色を帯びているので、赤色塗装膜の膜厚が特許文献1に示す場合に比べて薄く形成されていても、赤色塗装膜透過光は所望の赤の色度をもつ光となる。また、赤色塗装膜が薄い分、透過光量が増えて、所望の光束も得られる。また、赤色塗装膜が薄い分、見栄えの重要な条件であるガラス球全体の透明感が高められる。なお、所望の色度とは、ECE規格において赤色標識灯用の赤色バルブに要求される赤の色度(y≦0.335,y≧0.980−x)であり、所望の光束とは、赤色標識灯用の赤色バルブとして要求される120±20%ルーメンの光束である。
即ち、ガラス球を透過してアンバー色を帯びた光は、ガラス球外表面の赤色塗装膜に入射し、塗装膜を透過するまでに塗装膜中の酸化鉄粒子で何回も反射が繰り返されることで、低波長域の光が吸収されて、高波長域(赤色)の光の割合が増えて、赤色を帯びるものと考えられる。そして、塗装膜の膜厚が1μm未満の場合は、光が酸化鉄粒子と接触する回数が少ないため、十分に赤色を帯びることができず、所望の赤の色度が得られない。一方、塗装膜の膜厚が5μmを超えた場合は、光が酸化鉄粒子と接触する回数が多過ぎるため、赤色が強すぎて所望の赤の色度が得られず、さらに透過光が少ないために100ルーメン以上の光束も得られない。したがって、ガラス球の外表面に形成する赤色塗装膜の膜厚は、所望の赤の色度および所望の光束が得られる1〜5μmの範囲に構成することが好ましい。
また、アンバー色ガラスとしては、例えば、ターンシグナルランプ用の光源として従来公知のアンバー色バルブのガラス球(アンバー色ガラスで構成されたガラス球)を構成するアンバー色ガラスと同一のものを使用できる。そして、この場合の発光体の白色発光は、アンバー色ガラス球を透過することで、ターンシグナルランプ等に使用するアンバー色バルブとして要求される所望の色度(y≧0.390,y≧0.790−0.670x,y≦x−0.120)を帯びる光となり、さらに赤色塗装膜を透過することで、所望の赤の色度(y≦0.335,y≧0.980−x)を帯びる光となる。
請求項3においては、請求項1または2に記載の車両灯具用赤色バルブにおいて、前記赤色塗装膜を、赤色顔料である酸化鉄の平均粒子径が10〜100nmの範囲、PWC濃度が60〜90%の範囲となるように構成した。
(作用)赤色塗装膜に入射した光は、塗装膜中の酸化鉄粒子で反射が繰り返されることで赤色を帯びるが、塗装膜中の酸化鉄の平均粒子径が10nm未満の場合は、光が酸化鉄粒子と接触する回数が多過ぎて、100ルーメン以上の光束が得られない、即ち光束が不足する。一方、塗装膜中の酸化鉄の平均粒子径が100nmを越えた場合は、透過光毎に酸化鉄粒子と接触する回数が大きく異なって、赤色を帯びる度合いがばらつく、いわゆる光束ムラが生じる。
また、PWC濃度(固形成分に対する赤色顔料の重量%濃度)は、ガラス球表面への定着性(密着性)と色度に影響するが、PWC濃度が60%未満では、所定の赤の色度(y≦0.335,y≧0.980−x)が得られず、一方、PWC濃度が90%を越えると、所定の赤の色度(y≦0.335,y≧0.980−x)が得られないことに加えて、塗装膜が剥離し易くなって定着性(密着性)が悪く、耐久性および耐熱性(350℃以上)が不十分となる。
このため、バルブのガラス球外表面に形成された塗装膜中の酸化鉄を、適正な光束(120±20%ルーメン)および色度(y≦0.335,y≧0.980−x)が得られるとともに耐熱性(350℃以上)も満足できる、平均粒子径10〜100nmの範囲でPWC濃度60〜90%の範囲に構成することが望ましい。
請求項4においては、白色発光体を収容したガラス球の外表面に赤色顔料として酸化鉄を含有する赤色塗料をコーティングするコーティング工程を備えた車両灯具用赤色バルブの製造方法であって、前記ガラス球をアンバー色ガラスで構成するとともに、前記コーティング工程は、添加溶剤により適宜稀釈率で稀釈された赤色塗料をコーティングするように構成した。なお、ここで適宜稀釈率とは、赤色標識灯として要求される光束,色度および耐熱性の三条件を満たす添加溶剤の稀釈率をいい、具体的には、請求項5に示すように、赤色塗料に加える添加溶剤の稀釈率(添加溶剤の重量/赤色塗料の重量、以下、これを添加溶剤稀釈率という)を40〜60%の範囲に調整することである。そして、赤色塗料を希釈する工程としては、市販の赤色塗料を塗料メーカから購入し、これを希釈する場合と、予め塗料メーカへ希釈率をオーダーして所望の希釈された赤色塗料として購入する場合とがある。
(作用)赤色顔料として酸化鉄を含有する赤色塗料を添加溶剤で所定の稀釈率に稀釈して、アンバー色ガラスで構成したガラス球にコーティングするが、赤色標識灯として要求される光束,色度および耐熱性の三条件を満たす、即ち膜厚を1〜5μmの範囲にするためには、稀釈率を40〜60%の範囲に調整することが望ましい。
また、ガラス球にコーティングする際の赤色塗料における稀釈率は比較的高い(赤色塗料の粘性が比較的低い)ので、赤色塗料をガラス球外表面にコーティングし易く、かつコーティングした赤色塗料表面(赤色塗装膜表面)の平滑性にも優れる。
請求項1,2によれば、赤色塗装膜をガラス球外表面に形成した、光束(120±20%1m)、色度(y≦0.335,y≧0.980−x)および耐熱性(350℃以上)の三条件すべてを満たす車両灯具用の赤色バルブが提供される。
また、赤色塗装膜が薄い分、さらに赤色塗装膜を形成するガラス球自体にアンバー色の透明感がある分、赤色塗装膜を形成したガラス球の赤色透明感が強いので、非点灯時における見栄えのよい赤色バルブが提供される。
さらに、請求項1,2の赤色バルブを光源とする赤色標識灯においては、クリアなレンズカバーを介して赤色バルブの赤色透明感のあるガラス球が透けて見えるので、奥行きのある落ち着いた高級感をもつ赤色標識灯が提供される。
請求項3によれば、赤色塗装膜の形成されたガラス球に色ムラの全くない赤色透明感が得られるとともに、赤色塗装膜の定着性も優れているので、非点灯時における赤色バルブの見栄えおよび赤色バルブの耐久性が一層改善されたものとなる。
請求項4,5によれば、赤色塗料のコーティング工程が簡単になるとともに、赤色塗装膜表面の平滑度が高いことから、赤色透明性のより優れた非点灯時における見栄えのよい赤色バルブを提供できる。
次に、本発明の好適な実施形態について、本発明の実施例を示す添付図面を参照しながら説明する。
図1〜8は、本発明を自動車のリアコンビネーションランプに適用した一実施例を示し、図1はリアコンビネーションランプの正面図、図2は同ランプの縦断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)、図3は一部を破断して示すテールアンドストップランプ用の赤色バルブの拡大側面図、図4はテールアンドストップランプ用の赤色バルブのガラス球表面にコーティングする赤色塗料の構成を示す図、図5は同赤色バルブのガラス球表面に形成された赤色塗装膜中を光が透過する様子を示す断面図で、(a)は同赤色塗装膜中の酸化鉄粒子の平均粒子径が大きい場合を示し、(b)は同赤色塗装膜中の酸化鉄粒子の平均粒子径が小さい場合を示す。図6は光源色の三刺戟値X,Y及びZに対応する色度座標変換値x,y,zのyを縦軸、xを横軸にとった座標図で、(a)はアンバー色バルブのECE赤色規格を、(b)は赤色バルブのECE赤色規格をそれぞれ示す図、図7は赤色バルブのガラス球にコーティングする赤色塗料中に含有する赤色顔料(酸化鉄)の平均粒子径とPWC濃度の望ましい範囲を示す図、図8は添加溶剤稀釈率と光束,色度および耐熱性との関係を示す図である。
図1,2において、符号10は、リアコンビネーションランプの縦長容器状のランプボディで、水平に延びる隔壁12によって、ランプボディ10の内部が上から下に順にターンシグナルランプの灯室空間A,バックアップランプの灯室空間B,テールアンドストップランプの灯室空間Cに画成され、灯室空間A,B,Cを形成するランプボディ10の内周面には、それぞれ多重反射面をもつリフレクター14A,14B,14Cが形成され、リフレクター14A,14B,14Cのそれぞれの後頂部に設けられたバルブ挿着孔には、それぞれ光源であるバルブ16A,16B,16Cが挿着されている。ランプボディ10の前面開口周縁部および灯室を画成する隔壁12の前端部にはシール溝17が形成され、レンズカバー20のシール脚22がシール溝17に係合するようにレンズカバー20がランプボディ10に一体化されている。
レンズカバー20は、全体がクリアー色に形成されて、コンビネーションランプ全体に色彩上の統一がもたらされている。さらに、リフレクター14A,14B,14Cの多重反射面で配光をとる関係上、レンズカバー20は拡散用の配光制御ステップを設けないノンステップレンズで構成されて、灯室A,B,C内が透けて見えることで、コンビネーションランプ全体に奥行きのある高級なイメージが出るようになっている。
また、ターンシグナルランプ用のバルブ16A,バックアップランプ用のバルブ16Bおよびテールアンドストップランプ用のバルブ16Cは、それぞれのガラス球30A,30B,30Cのピンチシールされた平板状の基端部31がソケット32A,32B,32Cの前方に開口する挿着孔32aに挿着されることで、抜け止め一体化されるウェッジベースバルブとして構成されている(図2,3参照)。ガラス球30A,30B,30Cは、後述するように、アンバー色,白色,赤色に発光するように構成されるとともに、それぞれの基端部31がソケット32A,32B,32Cの挿着孔32aに対応するように構成されている。即ち、図3にはテールアンドストップランプ用の赤色バルブ16Cの分解側面図が示されており、赤色バルブ16Cを構成する赤色ガラス球30Cの基端部31の左右側縁部には、ターンシグナルランプ用のアンバー色ガラス球30Aおよびバックアップランプ用の白色ガラス球30Bには設けられていない係合突起31aが設けられた構造で、赤色ガラス球30Cをアンバー色ガラス球対応ソケット32Aや白色ガラス球対応ソケット32Bに挿着しようとしても挿着できず、またアンバー色ガラス球30Aや白色ガラス球30Bを赤色ガラス球対応ソケット32Cに挿着しようとしても挿着できず、各バルブにおけるガラス球のソケットへの過誤挿着を回避できるようになっている。
また、それぞれのガラス球30A,30B,30Cは、それぞれの機能色であるアンバー色,白色および赤色に発光することで、クリアなレンズカバー20のリフレクター14A,14B,14C対応領域20A,20B,20Cがアンバー色,白色および赤色にそれぞれ発光する。
そして、ターンシグナルランプ用のアンバー色バルブ16A(アンバー色ガラス球30A)およびテールアンドストップランプの赤色バルブ16C(赤色ガラス球30C)は、それぞれの標識灯として要求される所定の光束および色度を満足するように構成されている。即ち、ターンシグナルランプのアンバー色バルブ16Aでは、方向指示器に連係してガラス球30A内の発光体であるフィラメント35Aが点滅発光することでターンシグナルランプ全体が点滅して、後続車両等に路線変更や左折又は右折を認識させるべく機能する。ターンシグナルランプ用のバルブ16Aは、ガラス球30Aのガラス自体がアンバー色に構成されており、フィラメント35Aの発光がガラス球30Aを透過することで、アンバー色を帯びた光となる。そして、このバルブ16Cのアンバー色を帯びた光は、適正な光束(280±20%ルーメン)および図6(a)に示すアンバー色バルブとして要求されるECEアンバー色規格E1(y≧0.390,y≧0.790−0.670x,y≦x−0.120)を満たしている。
一方、テールアンドストップランプの赤色バルブ16Cのガラス球30Cは、ターンシグナルランプ用のアンバー色バルブ16Aのガラス球30Aと同一のアンバー色を帯びたガラス球30C1の外表面に赤色塗装膜38が形成された構造で、発光体であるダブルフィラメント35C1,35C2のそれぞれの発光はアンバー色ガラス球30C1およびガラス球30C1を覆う赤色塗装膜38を透過することで、機能色である所定の色度をもつ赤色光となる。そして、このバルブ16Cの赤色を帯びた光は、適正な光束(120±20%ルーメン)および図6(b)に示す赤色バルブとして要求されるECE赤色規格E2(y≦0.335,y≧0.980−x)を満たしている。
以下、テールアンドストップランプの赤色バルブ16Cの構造を図3に基づいて詳しく説明する。
赤色バルブ16Cのガラス球30Cは、図3に示すように、内蔵する発光体である2本のフィラメント35C1,35C2がそれぞれリードサポート36A,36Bによって両端支持されたダブルフィラメントタイプに構成されている。符号34は、リードサポート36A,36Bを一体化するガラス製のブリッジである。そして、テールランプの点灯スイッチをONした時には、一方のフィラメント35C1が発光し、自動車後部の存在を後続車両に認識させるテールランプとして機能する。また、ブレーキを踏んだ時には、その間だけ他方のフィラメント35C2も併せて発光し、ブレーキ制動を後続車両に認識させるストップランプとして機能する。
ガラス球30Cに設けられている赤色塗装膜(アンバー色ガラス球30C1の外表面に形成された赤色塗装膜)38は、後述する赤色塗料を所定の溶剤稀釈率に稀釈した赤色塗料液をコーティングすることで形成される。即ち、赤色塗料に溶剤を加えて所定の稀釈率に調整した赤色塗料液中にバルブのガラス球30C1を所定位置まで浸漬して引き上げ、所定の温度、時間条件の下で、乾燥処理することによって所定の厚さ(1〜5μm)に成膜したものである。成膜方法としては、浸漬(ディッピング)の他に、公知のエアスプレー塗装などの方法も採用可能である。
次に、赤色塗装膜38を形成する赤色塗料の好ましい配合について、図4〜図8に基づいて説明する。
赤色塗料は、図4に示すように、基本的には、皮膜形成性を有するシリコン系、アクリルシリコン系、ポリエステルシリコン系などのバインダーである透明ベース樹脂と、有機溶剤からなる揮発性の基剤と、色成分である顔料と、分散剤他の添加剤から構成されている。顔料としては、赤色顔料として酸化鉄を、後述する所定の割合で混合することによって、所望の赤の色度が得られるように調整されている。
具体的には、図4に示すように、本実施例に示す赤色塗料は、平均粒子径20nm(0.02μm)の顔料(酸化鉄)が67.5重量%、バインダー(透明ベース樹脂)25.0重量%、有機溶剤(揮発性の基剤)7.5重量%で構成されている。なお、分散剤他の添加剤は微小であり、無視できる。また、ガラス球30C1を浸漬する赤色塗料液は、この赤色塗料に溶剤を添加することで添加溶剤稀釈率40%に調整(稀釈)されている。即ち、赤色塗料液は、赤色塗料の重量に対する添加溶剤の重量の割合(添加溶剤の重量/赤色塗料の重量)が40%となるように調整されている。
そして、ガラス球30C1に赤色塗料液をコーティングした後、乾燥処理により有機溶剤が揮発してガラス球30C1の外表面に所定厚さ(1〜5μm)の赤色塗装膜38が形成されるが、赤色塗装膜38中の酸化鉄のPWC濃度(固形成分である赤色顔料とバインダーの総重量に対する赤色顔料の重量%濃度)は約73%である。
図5(a),(b)は、含有酸化鉄の平均粒子径が小さい本実施例の赤色塗装膜と含有酸化鉄の平均粒子径が大きい赤色塗装膜をそれぞれ透過する光の様子を示す模式図であるが、酸化鉄の平均粒子径が例えば1μmと大きい従来の赤色塗装膜を透過する光は、図5(b)に示すように、一般的に酸化鉄の粒子Sで反射干渉される回数が少なく、透過光毎の赤色を帯びる度合いの隔差が大きく、透過光毎に帯びる赤色にばらつきがでる、いわゆる光束ムラが生じる。一方、本実施例のように酸化鉄の平均粒子径が20nmと小さい赤色塗装膜を透過する光は、図5(a)に示すように、一般的に酸化鉄の粒子sで反射干渉される回数が多く、それだけ透過光毎の赤色を帯びる度合いの隔差が少なく、透過光の帯びる赤色が平滑化されて、光束ムラが生じない。
また、赤色顔料のPWC濃度(固形成分に対する赤色顔料の重量%濃度)は、ガラス球30C1表面への赤色塗装膜38の定着性(密着性)と色度に影響する。即ち、図6(b)は、光源色の三刺戟値X,Y及びZに対応する色度座標変換値x,y,zのyを縦軸、xを横軸にとった座標図であって、符号E2で表す領域は、ECE赤色規格の定める色度範囲(y≦0.335,y≧0.980−x)を示しており、赤色バルブ16Cの発光(赤色塗装膜38からの出射光)は、このECE赤色規格の色度範囲(y≦0.335,y≧0.980−x)であることが必要とされる。
そして、PWC濃度が約73%である本実施例では、十分満足できる色度(y≦0.335,y≧0.980−x)が得られるとともに、赤色塗装膜38が剥離することもなく、定着性(密着性)も良好で、耐久性および耐熱性(350℃以上)も十分であることが、図7に示すデータによって確認されている。
図7は、バルブのガラス球30C1にコーティングする赤色塗料中に含有する赤色顔料(酸化鉄)の平均粒子径とPWC濃度の望ましい範囲を示す図である。
この図に示すように、赤色塗料(赤色塗装膜38)中に含有する赤色顔料(酸化鉄)の平均粒子径が10nm未満の場合は、所定の色度(y≦0.335,y≧0.980−x)が得られない。一方、赤色塗料(赤色塗装膜38)中の赤色顔料(酸化鉄)の平均粒子径が100nmを越えた場合は、前記したように、光束ムラが生じる。また、赤色と層膜38の定着性(密着性)が悪く、耐熱性(350℃以上)が不十分となる。
また、PWC濃度が60%未満では、所定の色度(y≦0.335,y≧0.980−x)が得られないとか耐熱性に劣り、一方、PWC濃度が90%を越えると、塗装膜38が剥離し易くなって定着性(密着性)が悪く、耐久性および耐熱性(350℃以上)が不十分となる。
したがって、バルブのガラス球30C1に形成されている赤色塗装膜38(ガラス球30C1にコーティングする赤色塗料液)中に含有する赤色顔料(酸化鉄)の平均粒子径とPWC濃度の範囲は、これに限られるものでなく、図7に示すように、平均粒子径が10〜100nmの範囲でPWC濃度が60〜90%の範囲であれば、適正な光束(120±20%ルーメン)および色度(y≦0.335,y≧0.980−x)が得られるとともに、耐熱性(350℃以上)も満足できる。
また、赤色塗装膜38の膜厚は、1〜5μmに設定されているが、これは図8の実験結果による。即ち、図8は添加溶剤稀釈率と光束,色度および耐熱性との関係を示す図であり、図4の組成をもつ赤色塗料の添加溶剤稀釈率を5%毎に変えた赤色塗装液をガラス球にコーティングして光束,色度および耐熱性を調べたものである。なお、光束,色度および耐熱性のそれぞれについての適否は、サンプル数5に対する割合で示されている。
この図からわかるように、添加溶剤稀釈率が40%未満では、100ルーメン以上の光束が得られず、色度がECE規格外の暗い赤色となり、耐熱性も悪い。一方、添加溶剤稀釈率が60%未満を超えると、ECE規格の赤色が得られないし、耐熱性も悪くなる。
また、添加溶剤稀釈率が大きいほど、赤色塗料が溶剤で稀釈されることとなって、赤色塗料液中全体に対する固形成分(顔料とバインダー)の割合が減少し、赤色塗料液の粘性も低くなる。そして、ガラス球30C1に形成される赤色塗装膜38の膜厚は、添加溶剤稀釈率40%で5μm、添加溶剤稀釈率60%で1μmとなる。
そして、赤色塗装膜38の膜厚については、次のように説明できる。
ガラス球30C1内のフィラメント35C1,35C2の発光(白色)は、アンバー色ガラス球30C1を透過することでアンバー色を帯び、さらに赤色塗装膜38を透過することで赤色を帯びた光となるが、赤色塗装膜38によって赤色を帯びる前(赤色塗装膜38への入射前)に、ガラス球30C1透過光は予め赤色に近いアンバー色を帯びているので、ガラス球30C1に形成する赤色塗装膜38は、クリアなガラス球に形成する赤色塗装膜の膜厚(特許文献1)に比べて薄い厚さ(1〜5μm)であっても、所望の赤の色度(y≦0.335,y≧0.980−x)をもつ透過光となる。また、赤色塗装膜38の膜厚が薄い分、透過光量が増えて、所望の光束(120±20%ルーメン)も確保しやすい。
即ち、ガラス球30C1を透過してアンバー色を帯びた光は、ガラス球30C1外表面の赤色塗装膜38に入射し、塗装膜38を透過するまでに塗装膜38中の酸化鉄粒子で何回も反射が繰り返されることで、赤色を帯びる。そして、塗装膜38の膜厚が1μm未満の場合は、光が酸化鉄粒子sと接触する回数が少ないため、十分に赤色を帯びることができず、所望の色度が得られない。一方、塗装膜38の膜厚が5μmを超えた場合は、光が酸化鉄粒子sと接触する回数が多過ぎるため、赤色が強すぎて所望の色度が得られず、さらに透過光が少ないために100ルーメン以上の光束も得られない。したがって、ガラス球30Cの外表面に形成する赤色塗装膜38の膜厚は、ECE規格に合致する赤の色度および100ルーメン以上の光束が得られる1〜5μmの範囲に構成することが好ましい。
また、ガラス球30C1にコーティングする赤色塗料の添加溶剤稀釈率は、40〜60%と比較的高い(コーティングする赤色塗料液の粘性が低い)ので、赤色塗料液をガラス球30C1外表面にコーティングし易く、かつコーティングした赤色塗料表面(赤色塗装膜表面)の平滑性にも優れるので、コーティング工程が簡単となる上に、赤色バルブ16Cの赤色ガラス球30Cの透明感が向上して見栄えも良好となる。
このように本実施例のコンビネーションランプでは、灯室A,B,C内が透けて見えるため、非点灯時のコンビネーションランプ全体が色彩上クリアに統一されて、奥行きのある落ち着いた高級感をもつことになる。特に、灯室C内には赤色バルブの透明感ある赤色ガラス球が透けて見えて、見栄えが非常によい。
なお、前記した実施例では、アンバー色ガラス球30C1は、従来公知のターンシグナルランプにおけるアンバー色バルブのガラス球を構成するアンバー色ガラスと同一のものを使用できるとして説明したが、赤色塗装膜38を透過して所望の赤色の色度を満たすものであれば、アンバー色ガラスはターンシグナルランプで要求される色度を満たすものでなくてもよい。
また、前記実施例では、バルブ16Cをウエッジベースバルブとして説明したが、S球バルブ等の他の仕様のバルブにも採用できる。
また、前記した実施例では、コンビネーションランプとして他の機能の標識灯と一体化されているテールアンドストップランプについて説明したが、本発明は赤色光を発光するテールランプやストップランプやテールアンドストップランプあるいはリアフォグランプといった単独の赤色標識灯に適用してもよい。
s 赤色塗装膜中の赤色顔料である酸化鉄粒子
10 ランプボディ
16C 赤色バルブ
20 レンズカバー
20C テールアンドストップランプ点灯時のレンズカバー発光領域
C テールアンドストップランプの灯室空間
30C 赤色ガラス球
30C1 アンバー色ガラス球
35C1,35C2 発光体であるフィラメント
38 赤色塗装膜
10 ランプボディ
16C 赤色バルブ
20 レンズカバー
20C テールアンドストップランプ点灯時のレンズカバー発光領域
C テールアンドストップランプの灯室空間
30C 赤色ガラス球
30C1 アンバー色ガラス球
35C1,35C2 発光体であるフィラメント
38 赤色塗装膜
Claims (5)
- 白色発光体を収容したガラス球の外表面に赤色顔料として酸化鉄を含有する赤色塗装膜が形成された車両灯具用の赤色バルブであって、前記ガラス球がアンバー色ガラスで構成されるとともに、前記赤色塗装膜が適宜薄膜で構成されたことを特徴とする車両灯具用赤色バルブ。
- 前記赤色塗装膜の膜厚は、1〜5μmの範囲に構成されたことを特徴とする車両用灯具赤色バルブ。
- 前記赤色塗装膜は、赤色顔料である酸化鉄の平均粒子径が10〜100nmの範囲、PWC濃度が60〜90%の範囲に構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両灯具用赤色バルブ。
- 白色発光体を収容したガラス球の外表面に赤色顔料として酸化鉄を含有する赤色塗料をコーティングするコーティング工程を備えた車両灯具用赤色バルブの製造方法であって、前記ガラス球をアンバー色ガラスで構成するとともに、前記コーティング工程は、添加溶剤により適宜稀釈率で稀釈された赤色塗料をコーティングすることを特徴とする車両灯具用赤色バルブの製造方法。
- 前記添加溶剤の稀釈率を40〜60%の範囲に調整したことを特徴とする請求項4に記載の車両灯具用赤色バルブの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003381930A JP2005149776A (ja) | 2003-11-12 | 2003-11-12 | 車両灯具用赤色バルブおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003381930A JP2005149776A (ja) | 2003-11-12 | 2003-11-12 | 車両灯具用赤色バルブおよびその製造方法 |
Publications (1)
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JP2005149776A true JP2005149776A (ja) | 2005-06-09 |
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ID=34691127
Family Applications (1)
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JP2003381930A Pending JP2005149776A (ja) | 2003-11-12 | 2003-11-12 | 車両灯具用赤色バルブおよびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2005149776A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109268775A (zh) * | 2018-11-13 | 2019-01-25 | 华域视觉科技(上海)有限公司 | 用于车灯的光学零件、车灯及汽车 |
-
2003
- 2003-11-12 JP JP2003381930A patent/JP2005149776A/ja active Pending
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