JP2005146411A - 無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤、保護膜及び該保護膜を有する製品、並びにそれらの製造方法 - Google Patents

無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤、保護膜及び該保護膜を有する製品、並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 クロム酸系処表面理剤で形成される保護膜と同等の耐食性及び耐変色性を有する保護膜を形成し得る無電解ニッケルめっき用表面処理剤、無電解ニッケルめっき皮膜表面の保護膜及びその製造方法、並びに前記保護膜で被覆されたニッケルめっき皮膜を有する製品の提供。
【解決手段】 モリブデン化合物0.1〜10質量%、タングステン化合物0.01〜5質量%、リン酸化合物0.1〜12質量%、硫酸化合物0.01〜3質量%、ケイ酸化合物0.01〜12質量%を含有する水溶液からなる無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤であり、無電解ニッケルめっき皮膜上に酸素30〜90質量%、ケイ素0.1〜30質量%、ニッケル0.01〜18質量%及びリン5〜50質量%を含有する保護膜を形成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤、無電解ニッケルめっき皮膜の保護膜及び該保護膜で被覆された無電解ニッケルめっき皮膜を有する製品、並びにそれらの製造方法に関する。
より詳しくは、本発明は、従来のクロム酸系処理液と同等の耐食性及び耐変色性が得られる無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤、該表面処理剤を用いて得られる保護膜、及び前記保護膜で被覆された無電解ニッケルめっき皮膜を有する製品、並びにそれらの製造方法に関する。
従来より、無電解ニッケルめっき皮膜の耐食性及び耐変色性を改善する目的で、クロム酸などの表面処理剤を用いてニッケルめっき皮膜上に保護膜を形成する処理(以下「後処理」という)が行われている(例えば、特許文献1参照)。クロム酸系表面処理剤は、クロム酸、重クロム酸等のクロム化合物を主成分とする水溶液である。
しかしながら、クロム酸系表面処理剤に含まれるクロム化合物は、環境を汚染し、かつ人体に対しても発癌性を有する有害物質である。このため、今日では無電解ニッケルめっき皮膜の後処理にクロム酸系表面処理剤の使用を控える企業が増加する一方、今後は法規制によりクロム酸系表面処理剤の使用が禁止される予定である。
このような状況から、最近ではクロム酸系表面処理剤に代替する表面処理剤の開発が盛んに行われ、例えば、無機リン酸系又はケイ酸系の表面処理剤が知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、これらの表面処理剤により形成された保護膜は、耐食性、耐変色性及びゴム密着性がクロム酸系表面処理剤より劣り、さらに水洗処理を行わない場合には表面抵抗の増加や外観にしみ等が発生し、外観不良が起きやすいという欠点があった。
また、有機系水きり剤は、クロム酸系表面処理剤と同程度の耐食性を示す保護膜をめっき皮膜上に形成できることが知られている。しかるに、この表面処理剤により得られる保護膜は耐変色性がクロム酸系表面処理剤で得られた保護膜より劣るという欠点があった。さらに有機系水きり剤により形成された保護膜は、ゴムとの密着性が悪いという欠点があった。さらに有機系水きり剤を用いて、例えばプリンター用シャフトなどニッケルめっき皮膜を有する製品の保護膜を形成した場合、熱により保護膜が劣化し、又は場合によっては放射ノイズを発生するという欠点もあった。
したがって、予てよりクロム酸系表面処理剤で形成された保護膜と同等の耐食性及び耐変色性を有する保護膜、及びその保護膜を形成し得る表面処理剤の開発が望まれていた。
特開2003−138396号公報(請求項1、[0007]〜[0012]) 「腐食防食ハンドブック、第6章 腐食環境の処理と腐食抑制剤」、腐食防食協会著、丸善株式会社(2000年発行)p497〜501
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の第一の目的は、クロム酸系表面処理剤で形成される保護膜と同等の耐食性及び耐変色性を有する保護膜を形成し得る無電解ニッケルめっき用表面処理剤を提供することにある。さらに、本発明の第2の目的は、クロム酸系表面処理剤で形成される保護膜と同等の耐食性及び耐変色性を有する無電解ニッケルめっき皮膜表面保護膜及びその製造方法を提供することにある。さらに本発明の第3の目的は、前記保護膜で被覆されたニッケルめっき皮膜を有する製品及びその製造方法を提供することにある。
クロム酸系表面処理剤で無電解ニッケルめっき皮膜を処理すると、クロム酸の強い酸化作用により表面に不動態膜が形成される。この不動態膜を形成し得る無機系の不動態化剤としては、リン酸化合物、モリブデン酸化合物、及びタングステン化合物を含む水溶液が知られている。しかし、これらの化合物を含む水溶液は、様々なpH値を採り得るため、これらを単独又は組み合わせても、クロム酸系表面処理剤により形成される不動態膜と同等の保護膜は得られない。
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記不動態化剤にさらにケイ酸化合物及び硫酸化合物を組み合わせ、かつアルカリ性領域で処理すると、意外にも無電解ニッケルめっき皮膜に対してクロム酸系表面処理剤で形成される保護膜と同等の性能を有する不動態膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の目的は、モリブデン化合物0.1〜10質量%、タングステン化合物0.01〜5質量%、リン酸化合物0.1〜12質量%、硫酸化合物0.01〜3質量%、ケイ酸化合物0.01〜12質量%を含有する水溶液であることを特徴とする無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤により達成される。
本発明の表面処理剤は、マンガン化合物、チタン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、水酸化ナトリウム及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を水溶液の質量に対して10質量%以下の含有率でさらに含有することができる。
さらに本発明の表面処理剤は、水溶液のpHが7〜14であることが好ましい。
本発明の第2の目的は、無電解ニッケルめっき皮膜上に形成される、酸素30〜90質量%、ケイ素0.1〜30質量%、ニッケル0.01〜18質量%及びリン5〜50質量%を含有することを特徴とする保護膜により達成される。
本発明の保護膜は、保護膜の質量に対して15質量%以下のモリブデン及び/又は10質量%以下のタングステンをさらに含有することができる。
また、本発明の保護膜は、膜厚が0.5〜100nmであることが好ましい。
本発明の保護膜は、上記表面処理剤を前記無電解ニッケルめっき皮膜表面に接触させることにより前記無電解ニッケルめっき皮膜上に製造することができる。
本発明の製造方法により得られる保護膜は、保護膜の質量に対して15質量%以下のモリブデン及び/又は10質量%以下のタングステンをさらに含有することができる。
本発明の製造方法は、さらに保護膜を形成した後に水洗する工程を有することができる。
また本発明の製造方法により形成される保護膜の膜厚は0.5〜100nmであることが好ましい。
本発明の第3の目的は、前記保護膜で被覆された無電解ニッケルめっき皮膜を有する製品により達成することができる。
前記製品は、被めっき基材が鉄、アルミニウム、チタン、銅、及びそれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記製品は、無電解ニッケルめっき皮膜を有する製品の無電解ニッケルめっき皮膜表面に前記無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤を接触させることにより、前記製品の無電解ニッケルめっき皮膜表面上に、酸素30〜90質量%、ケイ素0.1〜30質量%、ニッケル0.01〜18質量%及びリン5〜50質量%を含有する保護膜を形成することにより得られる。
本発明の表面処理剤は、所定量のモリブデン化合物、タングステン化合物、リン酸化合物、硫酸化合物、及びケイ酸化合物を含有する。さらに、水酸化ナトリウムまたはアンモニアを含有することで、上記モリブデン化合物等が少量であっても、同等の効果が得られる。これにより本発明の表面処理剤によれば、クロム酸化合物を含有しなくても、クロム酸系表面処理剤により形成される保護膜と同等の耐食性及び耐変色性を有する保護膜を形成できる。
また本発明の保護膜は、無電解ニッケルめっき皮膜上に形成される酸素、ケイ素、ニッケル及びリンを含有する膜である。このため、本発明の保護膜は、クロム酸系表面処理剤で形成される不動態膜と同等の耐食性及び耐変色性を有する。
また本発明の保護膜及び製品の製造方法では、前記表面処理剤を用いて無電解ニッケルめっき皮膜の表面処理が行われる。これにより、本発明によれば、クロム酸系表面処理剤で形成される不動態膜と同等の耐食性及び耐変色性を有する保護膜を製造でき、かつそのような保護膜を有する製品も製造することができる。
さらに、本発明の製品は、無電解ニッケルめっき皮膜上に、無機系化合物からなる保護膜を有する。これにより本発明によれば、優れた耐食性及び耐変色性を有する製品を提供することができる。
以下、本発明の表面処理剤、保護膜及びその製造方法、並びに前記保護膜を有する製品について詳細に説明する。
[表面処理剤]
本発明の表面処理剤は、モリブデン化合物を0.1〜10質量%、タングステン化合物を0.01〜5質量%、リン酸化合物を0.1〜12質量%、硫酸化合物を0.01〜3質量%、ケイ酸化合物を0.01〜12質量%それぞれ含有する。
本発明の表面処理剤に含まれるモリブデン化合物は、例えば、酸化モリブデンなどのモリブデン酸化物、パラモリブデン酸、メタモリブデン酸などのモリブデン酸及びその塩類などであることができ、中でもモリブデン酸ナトリウム又はモリブデン酸アンモニウムであることが好ましい。
本発明の表面処理剤中におけるモリブデン化合物の含有率は、0.1〜10質量%であることが適当であり、0.3〜8質量%であることが好ましく、0.6〜5質量%であることがさらに好ましい。モリブデン化合物の含有率が0.1〜10質量%の範囲内であれば、耐食性及び耐変色性に優れた保護膜を形成することができる。
本発明の表面処理剤に含まれるタングステン化合物は、例えば、酸化タングステンなどのタングステン酸化物、塩化タングステンなどのハロゲン化タングステン、タングステン酸、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸コバルト、タングステン酸銅などのタングステン酸及びその塩類などであることができ、中でもタングステン酸ナトリウム又はタングステン酸カリウムを用いることが好ましい。
上記タングステン化合物の表面処理剤中における含有率は、0.01〜5質量%であることが適当であり、0.05〜3質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがさらに好ましい。タングステン化合物の含有率が0.01〜5質量%の範囲内であれば、耐食性及び耐変色性に優れた保護膜を形成することができる。
本発明の表面処理剤に含まれるリン酸化合物は、例えば、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、トリポリリン酸ナトリウムなどのリン酸及びその塩類であることができ、中でもトリポリリン酸ナトリウム又はピロリン酸などの縮合リン酸塩を用いることが好ましい。
表面処理剤中における前記リン酸化合物の含有率は、0.1〜12質量%であることが適当であり、0.5〜10質量%であることが好ましく、0.7〜8質量%であることがさらに好ましい。リン酸化合物の含有率が0.1〜12質量%の範囲内であれば、耐食性及び耐変色性に優れた保護膜を形成することができる。
本発明の表面処理剤に含まれる硫酸化合物は、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウムなどの硫酸塩であることができ、中でも硫酸ナトリウム又は硫酸カリウムを用いることが好ましい。
表面処理剤中における前記硫酸化合物の含有率は、0.01〜3質量%であることが適当であり、0.05〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1.5質量%であることがさらに好ましい。硫酸化合物の含有率が0.01〜3質量%の範囲内であれば、耐食性及び耐変色性に優れた保護膜を形成することができる。
表面処理剤に含まれるケイ酸化合物は、例えば、オルトケイ酸、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カリウム、オルトケイ酸カルシウム、メタケイ酸、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、メタケイ酸カルシウムなどのケイ酸及びその塩類、オルトケイ酸メチルエステル、オルトケイ酸エチルエステル、メタケイ酸メチルエステル、メタケイ酸エチルエステルなどのケイ酸エステルなどであることができる。中でもオルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどを用いることが好ましい。
表面処理剤中における前記ケイ酸化合物の含有率は、0.01〜12質量%であることが適当であり、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜6質量%であることがさらに好ましい。ケイ酸化合物の含有率が0.01〜12質量%の範囲内であれば、耐食性及び耐変色性に優れた保護膜を形成することができる。
本発明の表面処理剤は、上記化合物以外にさらにマンガン化合物、チタン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、水酸化ナトリウム及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。特に、ジルコニウム化合物、水酸化ナトリウム及び/又はアンモニアが表面処理剤に含有されていると保護膜の形成を促進できるため好ましい。
上記マンガン化合物、チタン化合物、亜鉛化合物及びジルコニウム化合物は、特に限定されないが、例えば、マンガン化合物として、酸化マンガン、塩化マンガン、マンガンコバルト、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸バリウムなどを用いることができる。また、チタン化合物として、酸化チタン、オルトチタン酸、メタチタン酸、塩化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウムなどを用いることができる。また、亜鉛化合物として、酸化亜鉛、亜鉛酸ナトリウム、硫酸亜鉛などを用いることができる。また、ジルコニウム化合物として、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、ジルコニウム酸ナトリウム、ジルコニウム酸カリウム、ジルコニウム酸カルシウム、ジルコニウム酸亜鉛などを用いることができる。また、スズ化合物として、塩化スズ、酸化スズ、オルトスズ酸、メタスズ酸、スズ酸カリウム、スズ酸ナトリウム、ヘキサヒドロオクソスズ酸などを用いることができる。
マンガン化合物、チタン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、水酸化ナトリウム及びアンモニアのいずれか1種を含む場合、それらの化合物の含有量は、表面処理剤(水溶液)の質量に対して10質量%以下であり、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜8質量%であることがより好ましく、0.01〜5質量%であることがさらに好ましい。マンガン化合物等の含有率が0.01〜10質量%の範囲内であれば、耐食性及び耐変色性を維持した良好な保護膜を形成することができる。
本発明の表面処理剤で用いられる溶媒としての水は、その種類は特に限定されないが、不純物が混入することを回避する観点からは蒸留水、精製水及び脱イオン水から選ばれるいずれか1種であることが好ましい。なお、表面処理剤中における水の含有率は、上記化合物の含有率の合計の残り含有率である。
本発明の表面処理剤は、水溶液のpHが7〜14であることが適当であり、好ましくはpH9〜13であり、さらに好ましくはpH11〜13である。従来の無電解ニッケルめっき皮膜で用いられる表面処理剤はpH7以下の酸性の水溶液であったが、本発明の表面処理剤は中性〜アルカリ性の水溶液である。本発明の表面処理剤は、アルカリ性であっても、耐食性及び耐変色性において従来の酸性表面処理剤と同等の性能を有する保護膜を提供することができる。
本発明の表面処理剤は、上記の所定の含有率になるよう所定量のモリブデン化合物、タングステン化合物、リン酸化合物、硫酸化合物及びケイ酸化合物を水に含有させ、適宜攪拌しながら水中に溶解させることにより作製することができる。溶解度の観点からはリン酸化合物を先に水に含有させることが好ましい。また、水溶液の温度は特に限定されず、室温又は適宜加温しながら水に溶解させることもできる。
本発明の表面処理剤の処理対象である無電解ニッケルめっき皮膜は、特に限定されず、一般の無電解ニッケルめっき法により得られた皮膜であることができる。無電解ニッケルめっき皮膜としては、例えば、ニッケル−リン系皮膜、ニッケル−ホウ素系皮膜、ニッケル−リン−ホウ素系皮膜などを挙げることができ、硫黄化合物が添加された皮膜であってもよい。
例えば、ニッケル−リン−ホウ素系の皮膜の場合、ニッケル塩に還元剤としリン化合物及びホウ素化合物を含む無電解めっき浴を用いて皮膜を析出形成させることができる。ニッケル塩としては、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル等を用いることができる。還元剤としリン化合物としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ニッケル等を用いることができる。また、還元剤としてのホウ素化合物としては、ジメチルアミノホウ素、ジエチルアミノホウ素、水素化ホウ素ナトリウム等を挙げることができる。めっき浴中のニッケル塩、リン化合物及びホウ素化合物の比率は、めっき皮膜の組成に応じて適宜調整することができる。また、各成分の濃度は、浴の安定性や析出速度等を考慮して決めることができ、通常ニッケル塩濃度が15〜30g/リットルの範囲となるようにすることが適当である。さらにめっき浴には、安定性、pH緩衝作用を考慮して、酢酸、リンゴ酸、クエン酸等の有機酸やエチレンジアミン四酢酸等のキレート剤を添加することもできる。また、ニッケル化合物が自己分解して析出することを防止する目的で、上記めっき浴には安定化剤として、微量の硝酸鉛、硝酸ビスマス、アンチモン塩、イオウ化合物等を添加することができる。
[保護膜]
本発明の保護膜は、無電解ニッケルめっき皮膜上に形成される酸素、ケイ素、ニッケル及びリンからなる組成を有し、その含有率は、酸素30〜90質量%、ケイ素1〜30質量%、ニッケル0.01〜18質量%及びリン5〜50質量%である。本発明の保護膜は、さらにモリブデンやタングステンを含有していてもよい。
本発明の保護膜における酸素の含有率は、保護膜の質量に対して30〜90質量%であり、40〜80質量%であることが好ましく、45〜60質量%であることがさらに好ましい。酸素が保護膜の質量に対して30〜90質量%程度含まれていれば、クロム酸系表面処理剤で形成される保護膜と同等の良好な耐食性及び耐変色性が得られる。
本発明の保護膜中に含まれるケイ素は、保護膜の質量に対して0.1〜30質量%であることが適当であり、0.5〜25質量%であることがより好ましく1〜20質量%であることがさらに好ましい。ケイ素が保護膜の質量に対して0.1〜30質量%程度含まれることにより、保護膜の変色を防ぐことができる。
本発明の保護膜中に含まれるニッケルは、保護膜の質量に対して0.01〜18質量%であることが適当であり、0.01〜10質量%であることがより好ましく、0.01〜5質量%であることがさらに好ましい。ニッケルが0.01〜18質量%の範囲であれば、耐食性及び耐変色性が低下することがないため好ましい。
ニッケルは、保護膜の下層に存在する無電解ニッケルめっき皮膜に含まれるニッケルに由来するものであり、保護膜の厚みが薄いものほど保護膜に多く含まれる傾向にある。保護膜中にニッケルが含まれるメカニズムは明らかではないが、無電解ニッケルめっき皮膜表面に存在するニッケルが、保護膜との界面において、保護膜中に含まれる酸素やリンと化学結合を形成し、保護膜が形成されると推察される。
本発明の保護膜中に含まれるリンは、保護膜の質量に対して5〜50質量%であることが適当であり、10〜35質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることがさらに好ましい。リンが5〜50質量%の範囲であれば、保護膜の耐食性を向上させることができるため好ましい。
本発明の保護膜は、上記酸素、ケイ素、ニッケル及びリンのほかに、さらにモリブデン及びタングステンを含有していてもよい。モリブデンを含有する場合、その含有率は保護膜の質量に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。また、タングステンを含有する場合、その含有率は保護膜の質量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。15質量%以下のモリブデン及び10質量%以下のタングステンであれば、保護膜の耐食性及び耐変色性に影響を与えることがないため好ましい。
本発明の保護膜の膜厚は特に制限されないが、0.5〜100nm程度であることが適当であり、5〜70nmであることが好ましく、10〜40nmであることがさらに好ましい。膜厚が0.5〜100nmの範囲にあれば、十分な耐食性が得られ、かつ変色や模様の発生もないため良好な保護膜が得られる。
[保護膜の製造方法]
本発明の保護膜は、無電解ニッケルめっき皮膜表面に本発明の表面処理剤を接触させることにより製造することができる。
無電解ニッケルめっき皮膜表面と本発明の表面処理剤との接触方法は、特に限定されず、公知の接触方法を用いることができる。例えば、表面に無電解ニッケルめっき皮膜を有する製品を本発明の表面処理剤中に浸漬する方法、表面に無電化ニッケルめっき皮膜を有する製品のめっき皮膜表面に本発明の表面処理剤を噴霧又は塗布する方法などが挙げられる。中でも浸漬法がニッケルめっき皮膜表面に均一に保護膜を形成できるため好ましい。
無電解ニッケルめっき皮膜表面と本発明の表面処理剤との接触時間及び温度は、特に限定されず、無電解ニッケルめっき皮膜の表面積などに応じて適宜決定することができる。例えば、浸漬法では、接触時間は20秒〜10分程度であり、1〜6分程度であることが好ましい。浸漬法における接触時間が20秒以上であれば保護膜の厚みが0.5nm未満となることはなく、十分な耐食性及び耐変色性が得られる。一方、接触時間が10分以下であれば、耐食性及び耐変色性が低下することはない。
浸漬法における接触温度は、常温(5〜40℃)〜70℃の範囲であることが適当であり、50〜60℃であることが好ましい。接触温度が常温以上であれば、保護膜の形成が遅くなることはなく、また70℃以下であれば、良好な耐食性及び耐変色性を有する保護膜が得られる。
無電解ニッケルめっき皮膜表面と本発明の表面処理剤との接触回数は、特に制限はなく、形成する保護膜の膜厚に応じて適宜回数を決定することができる。好ましくは、1〜3回、さらに好ましくは1〜2回接触させることができる。
本発明の保護膜の製造方法では、無電解ニッケルめっき皮膜と本発明の表面処理剤とを接触させて保護膜を形成した後、形成された保護膜を水洗することができる。本発明の製造方法により得られる保護膜は、モリブデンやタングステンを含有していてもよいが、より良好な耐食性及び耐変色性を得る観点からは水洗してモリブデン及びタングステンを洗い流すことが好ましい。製造される保護膜を水洗することにより、保護膜上に付着している過剰の表面処理剤やモリブデン及びタングステンを除去することができる。
水洗い工程で使用される水は、特に制限はなく、例えば、水道水、蒸留水及び精製水などを用いることができる。不純物の混入を防ぐ観点からは蒸留水や精製水などを用いることが好ましい。また、水洗いの回数及び時間は、保護膜が除去されない程度であれば、特に制限されない。水洗いは3〜5回程度が好ましく、水洗い時間は30〜180秒程度であることが好ましい。
[保護膜で被覆された無電解ニッケルめっき皮膜を有する製品及びその製造方法]
本発明の製品は、上述した保護膜で被覆された無電解ニッケルめっき皮膜を有する。本発明の製品は、上記保護膜を最表面に有するため、クロム酸系表面処理剤で形成された保護膜と同等の耐食性及び耐変色性を示す保護膜を有する製品とすることができる。
無電解ニッケルめっき皮膜で被覆される被めっき基材は、特に限定されず、無電解ニッケルめっきが可能な基材であればいかなる基材も用いることができる。中でも鉄、アルミニウム、チタン、銅及びそれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる基材であることが好ましい。
本発明の製品には、例えば、ピストンなどの摺動部材、プリンター又は複写機のシャフトなどの各種の用途で用いられる製品が含まれる。好ましくは、プリンター又は複写機のシャフトである。
本発明の製品は、無電解ニッケルめっき皮膜表面に上記本発明の表面処理剤を接触させることにより製造することができる。すなわち、無電解ニッケルめっき皮膜表面に本発明の表面処理剤を接触させることにより、無電解ニッケルめっき皮膜表面上に、酸素30〜90質量%、ケイ素0.1〜30質量%、ニッケル0.01〜18質量%及びリン5〜50質量%を含有する保護膜を形成することができる。
製品の無電解ニッケルめっき皮膜表面と本発明の表面処理剤との接触時間、接触温度、接触回数などの接触条件は、上記の本発明の保護膜の製造方法で記載した接触条件と同一とすることができる。
以下に本発明の表面処理剤、保護膜及びその製造方法、並びに該保護膜を有する製品をさらに具体的に説明するための実施例を示す。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[評価方法及び分析方法]
1.耐食性試験の評価
耐食性試験はJIS−H−8502(1999)記載の中性塩水噴霧試験を行い、得られた製品のRN(レイティングナンバー)を評価した。
2.耐変色性試験の評価
耐変色性試験では、中性塩水噴霧試験後の製品の外観を目視で評価した。
3.保護膜表面の分析
2cm×5cmの平板状製品を用意し、この製品の表面に存在する保護膜をX線光電子分光装置(ESCA)と蛍光X線分析装置(XRF)とを用いて表面分析した。ESCA及びXRFの主な測定条件を以下に示す。
(1)装置:X線光電子分光装置(ESCA)
型式:ESCA3400(クレイトス製)
励起:Mg−Kα
出力:8kV−30mA
測定元素:O、Ni、P、Si、Mo、W
スパッタ速度:80nm/分 Arイオン:500V−40mA
(2)装置:蛍光X線分析装置(XRF)
型式:XRF−1800(島津製作所製)
励起:Rh−Kα 出力:70kV−50mA 測定面積:15mmφ
4.腐食性評価
5cm×10cmの平板状製品を用意し、この製品の表面に存在する保護膜の腐食評価試験を電気化学測定システムを用いて行った。なお、電気化学測定の主な測定は次の条件で行った。
装置:電気化学測定システム
型式:HZ−3000(北斗電工製)
掃引速度:1mV/s フィルター:1kHz 電解溶液:3%NaCl
温度:25℃
(実施例1)
<無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤の調製>
以下の化合物(小宗化学薬品工業社製)を含有する表面処理剤を調製した。表面処理剤のpHは13.0であった。
トリポリリン酸ソーダ 40g/リットル
モリブデン酸ソーダ 30g/リットル
タングステン酸ソーダ 10g/リットル
オルトケイ酸ソーダ 10g/リットル
硫酸ソーダ 10g/リットル
水を加えて全体を1リットルとした。
<保護膜の作製>
SUM24L(日本メカニック社製)の表面をカニゼン社製S−780の5ターン処理液でめっき皮膜(Ni−P系皮膜)を形成した製品(以下「めっき製品」という)を上記の表面処理剤中に60℃で3分間浸漬し、めっき皮膜表面と表面処理剤とを接触させた。得られた製品は水洗せずに、そのまま乾燥させた。
(実施例2)
実施例1と同様の方法により得られた保護膜を有する製品の表面を水洗し、次いで乾燥した。
(実施例3)
以下の化合物(小宗化学薬品工業社製)を含有する表面処理剤を調製した。得られた表面処理剤のpHは13.0であった。
トリポリリン酸ソーダ 8g/リットル
モリブデン酸ソーダ 6g/リットル
タングステン酸ソーダ 2g/リットル
オルトケイ酸ソーダ 2g/リットル
硫酸ソーダ 2g/リットル
28%アンモニア水 50ml/リットル
水を加えて全体を1リットルとした。
実施例1と同様の方法により得られた保護膜を有する製品の表面を水洗し、次いで乾燥した。
(比較例1)
上記表面処理剤の替わりに市販のクロム酸系表面処理剤(重クロム酸ソーダ溶液)を用いた以外は実施例1と同様の方法によりめっき製品の後処理を行い、次いで水洗後、乾燥した。
(比較例2)
表面処理剤を用いて後処理していないことを除き、実施例1と同一の基材を用いてめっき製品の後処理を行い、次いで水洗後、乾燥した。
(比較例3)
表面処理剤の替わりに市販の有機系水きり剤を用いた以外は実施例1と同様の方法により、めっき製品の後処理を行い、次いで水洗後、乾燥した。
(比較例4)
表面処理剤の替わりにリン酸ナトリウムからなる市販の処理剤を用いた以外は実施例1と同様の方法により、めっき製品の後処理を行い、次いで水洗後、乾燥した。
(比較例5)
表面処理剤の替わりに市販のケイ酸塩からなる処理剤(防錆剤)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、めっき製品の後処理を行った。
<耐食性及び耐変色性の評価>
上述した評価法に従い、実施例1、2及び3と比較例1〜5のそれぞれの耐食性と耐変色性を評価した。結果を表1に示す。なお、RNは、レイティングナンバーであり、RN10は、錆がまったく存在しない状態であり、RN値が下がるほど錆が多く存在することを意味する。
Figure 2005146411
表1より本発明の製品のうち水洗した場合(実施例2)には、錆が殆ど発生せず(RN9〜10)、かつ変色もなく、従来のクロム酸系表面処理剤(比較例1:RN9〜10)で処理した製品と同等の耐食性及び耐変色性を示した。また、水洗しない場合(実施例1)には、耐食性はクロム酸系表面処理剤より僅かに劣っていたが(RN8〜9)、耐変色性はクロム酸系表面処理剤と同等であった。実施例3についても、実施例1及び2と同等であった(RN8〜10)。これに対し、表面処理されていない製品(比較例2)や、リン酸塩(比較例4)又はケイ酸塩系(比較例5)の処理剤で処理した製品は、耐食性及び耐変色性がいずれも本発明の製品よりも劣っていた(RN6〜8、変色有)。さらに、有機系水きり剤(比較例3)で処理した製品は、リン酸塩等よりも耐食性は向上したが(RN8〜9)、耐変色性が本発明の製品よりも劣っていた(変色有)。
これより、本発明の表面処理剤により得られる保護膜で被覆されたニッケルめっき皮膜を有する製品は、クロム酸系表面処理剤で処理した製品とほぼ同等の耐食性及び耐変色性を有することが分かる。
<表面分析>
実施例1及び2と比較例2の製品の表面をX線光電子分光装置(ESCA)及び蛍光X線分析装置(XRF)を用いて分析した。結果を表2に示す。
Figure 2005146411
ESCA及びXRFの測定結果より、後処理していない無電解めっき皮膜表面(比較例2)からは、ニッケルめっき皮膜成分であるニッケル及びリンと、さらに酸素が検出された。これに対し、水洗していない保護膜表面(実施例1)からは、Ni(0.10%)と、O(54.38%)、Si(3.98%)、P(20.75%)のほかに、Mo(13.01%)及びW(7.78%)も検出された。一方、水洗した保護膜表面(実施例2)からは、O(49.33%)、Ni(14.47%)、さらにSi(18.77%)及びP(17.43%)が検出された。さらに、実施例3の保護膜表面(水洗した表面)からは、O(33.12%)、Ni(47.86%)、さらにSi(1.31%)及びP(17.71%)が検出された。
また、膜厚については、ESCAのスパッタリング速度から算出し、水洗しない保護膜(実施例1)の膜厚は約40nmであり、水洗した保護膜(実施例2及び3)の膜厚は約20nmであった。
上記結果より、本発明の表面処理剤で形成された保護膜は、後処理していない無電解ニッケルめっき皮膜よりも多くの酸素を含み、かつニッケルめっき皮膜には存在しないケイ素(水洗していない保護膜の場合、さらにモリブデン及びタングステン)を含むことが分かる。
また、水洗した場合と水洗しない場合の保護膜を比較すると、水洗した保護膜では、表面に付着していたモリブデンとタングステンが水洗により除去できることが分かる。さらに、水洗した保護膜では、保護膜中のケイ素の含有率が大幅に上昇したことが分かる。この理由は明らかではないが、保護膜表面に付着していたモリブデン、タングステンが洗い流されたことにより保護膜中に含まれるケイ素が保護膜表面に現れ、その結果、表面を占めるケイ素が増加したためであると推測される。
<保護膜の耐食性の電気化学的評価>
本発明の表面処理剤で後処理した後、水洗していない製品(実施例1)及び水洗した製品(実施例2及び3)の表面と、クロム酸系表面処理剤を用いて処理した製品(比較例1)の表面と、本発明の表面処理剤で処理していない製品(比較例2)の表面の腐食評価試験を、電気化学測定システムを用いて行った。結果を図1に示す。
図1は、縦軸に電位の変化(E/V)、横軸に電流の絶対値(I/μA)を示す。図1のグラフの曲線のうち、電流の絶対値−1〜+1付近における電位の変化に着目すると、クロム酸系処理した曲線のカーブと、本発明の表面処理剤で水洗した場合の曲線のカーブがほぼ同等の電位幅(縦軸の−0.6〜0.25E/Vの間)を有することが分かる。また本発明の表面処理剤で水洗しない場合の電流の絶対値(I/μA)は表面処理していない場合と比べて小さく(左側へシフト)なっていることが分かる。
これより本発明の表面処理剤で表面処理した製品(実施例1、2及び3)は、いずれも耐食性が優れ、特に水洗した製品(実施例2及び3)は、クロム酸系表面処理剤で処理した製品(比較例1)と同程度の耐食性(同一の電流値で同程度の電位(E/V))を示すことが分かる。
本発明の表面処理剤は、無電解ニッケルめっき皮膜の表面処理に好適に用いることができる。また、本発明の表面処理剤により形成される保護膜は、優れた耐食性及び耐変色性を示すため、本発明の表面処理剤はクロム酸系表面処理剤に代替する表面処理剤としての利用が可能である。また、本発明の製品は、耐食性及び耐変色性に優れた製品として各種の用途に用いることができる。
実施例1〜3並びに比較例1及び2の保護膜の電気的化学法による腐食性試験の結果を示すグラフである。

Claims (12)

  1. モリブデン化合物0.1〜10質量%、タングステン化合物0.01〜5質量%、リン酸化合物0.1〜12質量%、硫酸化合物0.01〜3質量%及びケイ酸化合物0.01〜12質量%を含有する水溶液であることを特徴とする無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤。
  2. マンガン化合物、チタン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、水酸化ナトリウム及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を前記水溶液の質量に対して10質量%以下の含有率でさらに含有する請求項1に記載の表面処理剤。
  3. 前記水溶液のpHが7〜14である請求項1又は2に記載の表面処理剤。
  4. 無電解ニッケルめっき皮膜上に形成される保護膜であって、酸素30〜90質量%、ケイ素0.1〜30質量%、ニッケル0.01〜18質量%及びリン5〜50質量%を含有することを特徴とする前記保護膜。
  5. 保護膜の質量に対して15質量%以下のモリブデン及び/又は10質量%以下のタングステンをさらに含有する請求項4に記載の保護膜。
  6. 膜厚が0.5〜100nmである請求項4又は5に記載の保護膜。
  7. 請求項4〜6のいずれか一項に記載の保護膜で被覆された無電解ニッケルめっき皮膜を有する製品。
  8. 被めっき基材が鉄、アルミニウム、チタン、銅及びそれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる請求項7に記載の製品。
  9. 無電解ニッケルめっき皮膜表面に請求項1〜3のいずれか1項に記載の無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤を接触させることにより、前記無電解ニッケルめっき皮膜表面上に、酸素30〜90質量%、ケイ素0.1〜30質量%、ニッケル0.01〜18質量%及びリン5〜50質量%を含有する保護膜を形成することを特徴とする保護膜の製造方法。
  10. 形成される保護膜が、保護膜の質量に対して15質量%以下のモリブデン及び/又は10質量%以下のタングステンをさらに含有する請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記保護膜を形成した後に水洗する工程を有する請求項9又は10に記載の製造方法。
  12. 無電解ニッケルめっき皮膜を有する製品の無電解ニッケルめっき皮膜表面に請求項1〜3のいずれか一項に記載の無電解ニッケルめっき皮膜用表面処理剤を接触させることにより、前記製品の無電解ニッケルめっき皮膜表面上に、酸素30〜90質量%、ケイ素1〜30質量%、ニッケル0.01〜18質量%及びリン5〜50質量%を含有する保護膜を形成することを特徴とする無電解ニッケルめっき皮膜を有する製品の製造方法。
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