JP2005145336A - 車線逸脱防止装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車線逸脱防止の制御を最適に行うことができる。
【解決手段】車線逸脱防止装置は、走行路のカントを検出するとともに(ステップS3)、自車両が走行車線から逸脱する傾向を判定し(ステップS4)、前記走行路のカントに基づいて逸脱回避のための制御の開始タイミングを設定するとともに、自車両が走行車線から逸脱する傾向がある場合、前記開始タイミングで逸脱回避のための制御を開始して、前記逸脱を回避する(ステップS6〜ステップS9)。
【選択図】図2

Description

本発明は、自車両が走行車線から逸脱しそうになったときに、その逸脱を防止する車線逸脱防止装置に関する。
従来の車線逸脱防止装置として、自車両が走行車線を逸脱する可能性がある場合に、車輪への制動力を制御することで自車両にヨーモーメントを与えて自車両が走行車線から逸脱することを回避するとともに、このヨーモーメントの付与により運転者に自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを報知する装置がある(例えば特許文献1参照)。
特開2000−33860号公報
例えば前記特許文献1では、走行車線の基準位置からの車両の走行位置の横ずれ状態を横ずれ状態検出手段により検出して、その検出した横ずれ状態に基づいて車輪に制動力を与えている。これにより、車両にヨーモーメントを付与して車両が走行車線から逸脱することを回避している。すなわち、前記特許文献1の技術では、あくまでも走行車線と自車両との位置関係だけを考慮して当該自車両の逸脱を回避しているに過ぎない。よって、逸脱回避のための制御を最適に行っているとはいい難い。
そこで、本発明は、前述の問題に鑑みてなされたものであり、車線逸脱回避のための制御を最適に行うことができる車線逸脱防止装置の提供を目的とする。
前述の問題を解決するために、本発明に係る車線逸脱防止装置は、逸脱回避制御手段により、走行路のカントに基づいて逸脱回避のための制御の開始タイミングを設定し、自車両が走行車線から逸脱する傾向がある場合、前記開始タイミングで逸脱回避のための制御を開始して、前記逸脱を回避する。
このように本発明に係る車線逸脱防止装置は、走行路のカントに基づくタイミングで逸脱回避のための制御を開始する。
ここで、逸脱回避のための制御とは、車輪の制動力を調整して、車両にヨーモーメントを付与する制御や車両を減速させる制御である。
本発明によれば、走行路のカントに基づくタイミングで逸脱回避のための制御を開始することで、車線逸脱防止の制御を最適に行うことができる。
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施の形態は、本発明の車線逸脱防止装置を搭載した後輪駆動車両である。この後輪駆動車両は、自動変速機とコンベンショナルディファレンシャルギヤとを搭載し、前後輪とも左右輪の制動力を独立制御可能な制動装置を搭載している。
図1は、第1の実施の形態の車線逸脱防止装置を備えた車両を示す概略構成図である。
図中の符号1はブレーキペダル、2はブースタ、3はマスタシリンダ、4はリザーバであり、通常は運転者によるブレーキペダル1の踏込み量に応じて、マスタシリンダ3で昇圧された制動流体圧を各車輪5FL〜5RRの各ホイールシリンダ6FL〜6RRに供給する。また、マスタシリンダ3と各ホイールシリンダ6FL〜6RRとの間には制動流体圧制御部7が介装されており、この制動流体圧制御部7によって、各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を個別に制御することも可能となっている。
制動流体圧制御部7は、例えばアンチスキッド制御やトラクション制御に用いられる制動流体圧制御部を利用したものである。制動流体圧制御部7は、単独で各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を制御することも可能であるが、後述する制駆動力コントロールユニット8から制動流体圧指令値が入力されたときには、その制動流体圧指令値に応じて制動流体圧を制御するようにもなっている。
また、この車両には、駆動トルクコントロールユニット12が設けられている。駆動トルクコントロールユニット12は、エンジン9の運転状態、自動変速機10の選択変速比及びスロットルバルブ11のスロットル開度を制御することにより、駆動輪である後輪5RL,5RRへの駆動トルクを制御する。駆動トルクコントロールユニット12は、燃料噴射量や点火時期を制御したり、同時にスロットル開度を制御することで、エンジン9の運転状態を制御する。この駆動トルクコントロールユニット12は、制御に使用した駆動トルクTwの値を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
なお、この駆動トルクコントロールユニット12は、単独で後輪5RL,5RRの駆動トルクを制御することも可能であるが、制駆動力コントロールユニット8から駆動トルク指令値が入力されたときには、その駆動トルク指令値に応じて駆動輪トルクを制御するようにもなっている。
また、この車両には、画像処理機能付きの撮像部13が設けられている。撮像部13は、自車両の車線逸脱傾向検出用に走行車線内の自車両の位置を検出するためのものである。例えば、撮像部13は、CCD(Charge Coupled Device)カメラからなる単眼カメラで撮像するように構成されている。この撮像部13は車両前部に設置されている。
撮像部13は、自車両前方の撮像画像から例えば白線等のレーンマーカを検出し、その検出したレーンマーカに基づいて走行車線を検出している。さらに、撮像部13は、その検出した走行車線に基づいて、自車両の走行車線と自車両の前後方向軸とのなす角(ヨー角)φ、走行車線中央からの横変位X及び走行車線曲率β等を算出する。この撮像部13は、算出したこれらヨー角φ、横変位X及び走行車線曲率β等を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
また、この車両には、ナビゲーション装置15が設けられている。ナビゲーション装置15は、自車両に発生する前後加速度Yg或いは横加速度Xg、又は自車両に発生するヨーレートφ´を検出する。このナビゲーション装置15は、検出した前後加速度Yg、横加速度Xg、上下方向の加速度(以下、上下加速度という。)Zg及びヨーレートφ´を、道路情報とともに、制駆動力コントロールユニット8に出力する。ここで、道路情報としては、車線数や一般道路か高速道路かを示す道路種別情報がある。
また、この車両には、マスタシリンダ3の出力圧、すなわちマスタシリンダ液圧Pmf,Pmrを検出するマスタシリンダ圧センサ17、アクセルペダルの踏込み量、すなわちアクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ18、ステアリングホイール21の操舵角δを検出する操舵角センサ19、方向指示器による方向指示操作を検出する方向指示スイッチ20、及び各車輪5FL〜5RRの回転速度、所謂車輪速度Vwi(i=fl,fr,rl,rr)を検出する車輪速度センサ22FL〜22RRが設けられている。そして、これらセンサ等が検出した検出信号は制駆動力コントロールユニット8に出力される。
なお、検出された車両の走行状態データに左右の方向性がある場合には、いずれも左方向を正方向とする。すなわち、ヨーレートφ´、横加速度Xg及びヨー角φは、左旋回時に正値となり、横変位Xは、走行車線中央から左方にずれているときに正値となる。また、前後加速度Ygは、加速時に正値となり、減速時に負値となる。
次に、制駆動力コントロールユニット8で行う演算処理手順について、図2を用いて説明する。この演算処理は、例えば10msec.毎の所定サンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって実行される。なお、この図2に示す処理内には通信処理を設けていないが、演算処理によって得られた情報は随時記憶装置に更新記憶されると共に、必要な情報は随時記憶装置から読出される。
先ずステップS1において、前記各センサやコントローラ、コントロールユニットから各種データを読み込む。具体的には、ナビゲーション装置15が得た前後加速度Yg、横加速度Xg、上下加速度Zg、ヨーレートφ´及び道路情報、各センサが検出した、各車輪速度Vwi、操舵角δ、アクセル開度Acc、マスタシリンダ液圧Pmf,Pmr及び方向スイッチ信号、並びに駆動トルクコントロールユニット12からの駆動トルクTw、撮像部13からヨー角φ、横変位X及び走行車線曲率βを読み込む。
続いてステップS2において、車速Vを算出する。具体的には、前記ステップS1で読み込んだ車輪速度Vwiに基づいて、下記(1)式により車速Vを算出する。
前輪駆動の場合
V=(Vwrl+Vwrr)/2
後輪駆動の場合
V=(Vwfl+Vwfr)/2
・・・(1)
ここで、Vwfl,Vwfrは左右前輪それぞれの車輪速度であり、Vwrl,Vwrrは左右後輪それぞれの車輪速度である。すなわち、この(1)式では、従動輪の車輪速の平均値として車速Vを算出している。なお、本実施の形態では、後輪駆動の車両であるので、後者の式、すなわち前輪の車輪速度により車速Vを算出する。
また、このように算出した車速Vは好ましくは通常走行時に用いる。すなわち例えば、ABS(Anti-lock Brake System)制御等が作動している場合には、そのABS制御内で推定している推定車体速度を前記車速Vとして用いるようにする。また、ナビゲーション装置15でナビゲーション情報に利用している値を前記車速Vとして用いても良い。
続いてステップS3において、路面カントを検出する。具体的には、前記ステップS1で得た前後加速度Yg、横加速度Xg、上下加速度Zg及びヨー角φ並びに前記ステップS2で得た車速Vに基づいて路面カントの角度θzを検出する。なお、図3は、車両座標系XYZと路面カントの角度θzとの関係を示す。ここで、図3中(A)は車両100を上方からみた図であり、図3中(B)は車両100を後方からみた図である。
例えば、路面カントがない場合(θz=0)、あるヨー角φであれば、ある前後加速度Ygや横加速度Xgを得ることができる。そして、路面カントがある場合、あるヨー角φであれば、路面カントがない場合の値と異なる前後加速度Ygや横加速度Xgを得ることができる。このような関係を利用して、路面カントの角度θzを推定することができる。
また、前後加速度Yg、横加速度Xg、上下加速度Zg、ヨー角φ及び車速Vと路面カントの角度θzとの関係を予めマッピングデータとして取得しておいて、実際の検出時には、そのマッピングデータを参照して、実際の測定で得た前後加速度Yg、横加速度Xg、上下加速度Zg、ヨー角φ及び車速Vから路面カントの角度θzを得ることもできる。
本実施の形態の説明では、路面カントの角度θzが0より大きい場合(θz>0)、車両からみて左方向が下り側となる路面カントになっているものとし、路面カントの角度θzが0より小さい場合(θz<0)、車両からみて右方向が下り側となる路面カントになっているものとする。そして、路面カントの角度θzが0の場合(θz=0)、路面にカントがないものとする。
続いてステップS4において、車線逸脱傾向の判定を行う。この判定処理の処理手順は具体的には図4に示すようになる。
先ずステップS41において、逸脱予測時間Toutを算出する。具体的には、dxを前記横変位Xの変化量(単位時間当たりの変化量)とし、Lを車線幅とし、横変位Xを用いて、下記(2)式により逸脱予測時間Toutを算出する(X,dx,Lの値については図5を参照)。
Tout=(L/2−X)/dx ・・・(2)
この(2)式によれば、車線中央(X=0)からXだけ横変位している車両100が、その位置から距離L/2だけ離れた外側位置領域(例えば路肩)に至るまでの逸脱予測時間Toutを求めることができる。
なお、車線幅Lについては、撮像部13が撮像画像を処理することで得ている。また、ナビゲーション装置15から車両の位置を得たり、ナビゲーション装置15の地図データから車線幅Lを得てもよい。
続いてステップS42において、逸脱判断フラグを設定する。具体的には、前記逸脱予測時間Toutと所定の第1逸脱判断しきい値Tsとを比較する。ここで、逸脱予測時間Toutが第1逸脱判断しきい値Ts未満の場合(Tout<Ts)、逸脱する(逸脱傾向あり)と判定するとともに、逸脱判断フラグFoutをONにする(Fout=ON)。また、逸脱予測時間Toutが第1逸脱判断しきい値Ts以上の場合(Tout≧Ts)、逸脱しない(逸脱傾向なし)と判定するとともに、逸脱判断フラグFoutをOFFにする(Fout=OFF)。
このステップS42の処理により、例えば自車両が車線中央から離れていき、逸脱予測時間Toutが第1逸脱判断しきい値Ts未満になったとき(Tout<Ts)、逸脱判断フラグFoutがONになる(Fout=ON)。また、自車両(Fout=ONの状態の自車両)が車線中央側に復帰していき、逸脱予測時間Toutが第1逸脱判断しきい値Ts以上になったとき(Tout≧Ts)、逸脱判断フラグFoutがOFFになる(Fout=OFF)。例えば、逸脱傾向がある場合に、後述する逸脱回避のための制動制御が実施されたり、或いは運転者自身が回避操作をすれば、逸脱判断フラグFoutがONからOFFになる。
続いてステップS43において、逸脱方向Doutを判定する。具体的には、横変位Xに基づいて逸脱方向Doutを判定する。すなわち、車線中央から左方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutにし(Dout=left)、車線中央から右方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutにする(Dout=right)。
また、横加速度Xgを用いて逸脱方向Doutを判定してもよい。例えば、横加速度Xgが0より大きい場合(Xg>0)、当該加速度Xgを左方向への加速度とし、横加速度Xgが0より小さい場合(Xg<0)、当該加速度Xgを右方向への加速度とする。この関係より、横加速度Xgが0より大きい場合(Xg>0)、左方向に加速度しているので、その方向を逸脱方向Doutにし(Dout=left)、横加速度Xgが0より小さい場合(Xg<0)、右方向に加速度しているので、その方向を逸脱方向Doutにする(Dout=right)。
以上のようにステップS4において車線逸脱傾向を判定する。
続いてステップS5において、運転者の車線変更の意図を判定する。具体的には、前記ステップS1で得た方向スイッチ信号及び操舵角δに基づいて、次のように運転者の車線変更の意図を判定する。
方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と、前記ステップS4で得た逸脱方向Doutが示す方向とが同じである場合、運転者が意識的に車線変更していると判定し、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。すなわち、逸脱しないとの判定結果に変更する。
また、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と、前記ステップS4で得た逸脱方向Doutが示す方向とが異なる場合、逸脱判断フラグFoutを維持し、逸脱判断フラグFoutをONのままにする(Fout=ON)。すなわち、逸脱するとの判定結果を維持する。
また、方向指示スイッチ20が操作されていない場合には、操舵角δに基づいて運転者の車線変更の意図を判定する。すなわち、運転者が逸脱方向に操舵している場合において、その操舵角δ及びその操舵角の変化量(単位時間当たりの変化量)Δδが設定値以上のときには、運転者が意識的に車線変更していると判定し、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。
続いてステップS6において、逸脱回避のための制御方法を決定する。具体的には、逸脱の警報や逸脱回避の制動制御を行うか否か、さらには逸脱回避の制動制御を行う場合にその制動制御方法を決定する。
ここでは、前記ステップS3で得た路面カントの角度θz、ステップS4で得た逸脱方向Dout及びステップS5で得た逸脱判断フラグFoutに基づいて、逸脱回避のための制御内容を決定する。
例えば、逸脱判断フラグFoutがON(Tout<Ts)になっている場合、逸脱の警報を実施する。例えば、音や表示等により警報を行う。そして、逸脱判断フラグFoutがON(Tout<Ts)になっている場合、さらに路面カントの角度θz及び逸脱方向Doutに基づいて、逸脱回避の制動制御方法を決定する。これについては、後で詳述する。
続いてステップS7において、自車両に発生させる目標ヨーモーメントを算出する。この目標ヨーモーメントは、逸脱回避のために自車両に付与するヨーモーメントである。
具体的には、前記ステップS1で得た横変位Xと前記変化量dxとに基づいて、下記(3)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
Ms=K1・X+K2・dx ・・・(3)
ここで、K1,K2は車速Vに応じて変動するゲインである。例えば、図6はその例を示す。この図6に示すように、例えばゲインK1,K2は、低速域で小さい値になり、車速Vがある値になると、車速Vの増加に対応して大きくなり、その後ある車速Vに達すると一定値になる。
続いてステップS8において、逸脱回避用の減速度を算出する。すなわち、自車両を減速させる目的として左右両輪に与える制動力を算出する。ここでは、そのような制動力を左右両輪に与える目標制動液圧Pgf,Pgrとして算出する。前輪用の目標制動液圧Pgfについては下記(4)式により算出する。
Pgf=Kgv・V+Kgx・dx ・・・(4)
ここで、Kgv,Kgxはそれぞれ、車速V及び横変化量dxに基づいて設定する、制動力を制動液圧に換算するための換算係数である。例えば、図7はその例を示す。この図7に示すように、例えば換算係数Kgv,Kgxは、低速域で大きい値になり、車速Vがある値になると、車速Vの増加に対応して小さくなり、その後ある車速Vに達すると一定値になる。
そして、前輪用の目標制動液圧Pgfに基づいて、前後配分を考慮した後輪用の目標制動液圧Pgrを算出する。
このようにステップS8において、逸脱回避用の減速度(具体的には目標制動液圧Pgf,Pgr)を得る。
続いてステップS9において、各車輪の目標制動液圧を算出する。すなわち、逸脱回避の制動制御の有無に基づいて最終的な制動液圧を算出する。具体的には次のように算出する。
(1)逸脱判断フラグFoutがOFFの場合(Fout=OFF)、すなわち逸脱しないとの判定結果を得た場合、下記(5)式及び(6)式に示すように、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)をマスタシリンダ液圧Pmf,Pmrにする。
Psfl=Psfr=Pmf ・・・(5)
Psrl=Psrr=Pmr ・・・(6)
ここで、Pmfは前輪用のマスタシリンダ液圧である。また、Pmrは後輪用のマスタシリンダ液圧であり、前後配分を考慮して前輪用のマスタシリンダ液圧Pmfに基づいて算出した値になる。
(2)逸脱判断フラグFoutがONの場合(Fout=ON)、すなわち逸脱するとの判定結果を得た場合、先ず前記目標ヨーモーメントMsに基づいて、前輪目標制動液圧差ΔPsf及び後輪目標制動液圧差ΔPsrを算出する。具体的には、下記(7)式〜(10)式により目標制動液圧差ΔPsf,ΔPsrを算出する。
Ms<Ms1の場合
ΔPsf=0 ・・・(7)
ΔPsr=2・Kbr・Ms/T ・・・(8)
Ms≧Ms1の場合
ΔPsf=2・Kbf・(Ms−Ms1)/T ・・・(9)
ΔPsr=2・Kbr・Ms1/T ・・・(10)
ここで、Ms1は設定用しきい値を示す。また、Tはトレッドを示す。なお、このトレッドTは、簡単のため前後で同じ値にする。また、Kbf,Kbrは、制動力を制動液圧に換算する場合の前輪及び後輪についての換算係数であり、ブレーキ諸元により定まる。
このように、目標ヨーモーメントMsの大きさに応じて車輪に与える制動力を配分している。すなわち、目標ヨーモーメントMsが設定用しきい値Ms1未満のときには、前輪目標制動液圧差ΔPsfを0として、後輪目標制動液圧差ΔPsrに所定値を与えて、左右後輪で制動力差を発生させ、また、目標ヨーモーメントMsが設定用しきい値Ms1以上のときには、各目標制動液圧差ΔPsr,ΔPsrに所定値を与え、前後左右輪で制動力差を発生させる。
そして、以上のように算出した目標制動液圧差ΔPsf,ΔPsr及び減速用の目標制動液圧Pgf,Pgrを用いて最終的な各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。具体的には、前記ステップS6で決定した制動制御方法に基づいて最終的な各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
ここで、前記ステップS6で決定する制動制御方法を説明する。
前記ステップS6では、逸脱判断フラグFoutがONの場合において、前記路面カントの角度θz及び逸脱方向Doutに基づいて制動制御方法を決定している。
前述したように、横加速度Xgを用いて逸脱方向Doutを判定することができる。すなわち、横加速度Xgが0より大きい場合(Xg>0)、左方向を逸脱方向Doutとし(Dout=left)、横加速度Xgが0より小さい場合(Xg<0)、右方向を逸脱方向Doutとする(Dout=right)。このような関係から、路面カントの角度θzが0より大きく(θz>0)、かつ横加速度Xgが0より大きい場合(Xg>0)、又は路面カントの角度θzが0より小さく(θz<0)、かつ横加速度Xgが0より小さい場合(Xg<0)、路面カントの下り側に逸脱していることになる。また、路面カントの角度θzが0より大きく(θz>0)、かつ横加速度Xgが0より小さい場合(Xg<0)、又は路面カントの角度θzが0より小さく(θz<0)、かつ横加速度Xgが0より大きい場合(Xg>0)、路面カントの上り側に逸脱していることになる。
このような関係を踏まえて、路面カントの角度θz及び逸脱方向Doutで場合分け(第1のケース〜第3のケース)して制動制御方法を説明する。
(第1のケース) 路面カントがない場合(θz=0)で、かつ逸脱傾向がある場合、逸脱判断フラグFoutがOFFになるまで、逸脱を回避するためのヨーモーメントが車両に付与されるように制動制御(以下、逸脱回避用ヨー制御という。)と、車両を減速させるための制動制御(以下、逸脱回避用減速制御という。)とを組み合わせて行う。これら逸脱回避のための制御は、逸脱判断フラグFoutがONになったとき(Tout<Ts)、開始する。
ここで、逸脱回避用ヨー制御では、逸脱を回避するために車両に付与するヨーモーメントの大きさを前記目標ヨーモーメントMsとしている。そして、車両へのヨーモーメントの付与は、左右の車輪に与える制動力に差をつけることで行う。具体的には、前述したように、目標ヨーモーメントMsが設定用しきい値Ms1未満のときには、左右後輪で制動力差を発生させて、車両に当該目標ヨーモーメントMsを付与し、また、目標ヨーモーメントMsが設定用しきい値Ms1以上のときには、前後左右輪で制動力差を発生させて、車両に当該目標ヨーモーメントMsを付与する。また、逸脱回避用減速制御は、左右両車輪に同程度の制動力を与えて行う。
また、逸脱判断フラグFoutがONからOFFになる場合とは、逸脱傾向がある場合に、逸脱回避のための制動制御が実施されたり、或いは運転者自身が回避操作をしたようなときである。
(第2のケース) 路面カントの角度θzが0より大きく(θz>0)、かつ横加速度Xgが0より大きい場合(Xg>0)、又は路面カントの角度θzが0より小さく(θz<0)、かつ横加速度Xgが0より小さい場合(Xg<0)、すなわち路面カントの下り側に逸脱傾向がある場合である。
この場合、前記第1逸脱判断しきい値Tsに、ある設定量dTkdownを加算した逸脱判断しきい値(Ts+dTkdown)よりも逸脱予測時間Toutが小さくなったとき(Tout<(Ts+dTkdown)、逸脱回避用減速制御を行う。さらに、前記第1逸脱判断しきい値Ts未満の第2逸脱判断しきい値Tr(Ts>Tr>0)を定義して、この第2逸脱判断しきい値Trよりも逸脱予測時間Toutが小さくなったとき(Tout<Tr)、逸脱回避用減速制御に加えて、逸脱回避用ヨー制御を行う。
例えば、前記設定量dTkdownは第1逸脱判断しきい値Ts未満の値である(Ts>dTkdown)。
これにより、前記逸脱判断しきい値(Ts+dTkdown)よりも逸脱予測時間Toutが小さくなったときに(Tout<(Ts+dTkdown))、逸脱回避用減速制御が開始され、第2逸脱判断しきい値Trよりも逸脱予測時間Toutが小さくなったとき(Tout<Tr)、逸脱回避用減速制御に加えて、逸脱回避用ヨー制御が開始される。このとき、逸脱回避用減速制御の開始タイミングは、路面カントがない場合よりも設定量dTkdown分だけ早くなる。
また、路面カントの角度θzの絶対値が大きいほど、前記設定量dTkdownを大きくする。これにより、路面カントの勾配が大きくなるほど、逸脱回避用減速制御の開始タイミングが早くなる。
(第3のケース) 路面カントの角度θzが0より大きく(θz>0)、かつ横加速度Xgが0より小さい場合(Xg<0)、又は路面カントの角度θzが0より小さく(θz<0)、かつ横加速度Xgが0より大きい場合(Xg>0)、すなわち路面カントの上り側に逸脱傾向がある場合である。
この場合、前記第1逸脱判断しきい値Tsから、ある設定量dTkupを引き算した逸脱判断しきい値(Ts−dTkup)よりも逸脱予測時間Toutが小さくなったとき(Tout<(Ts−dTkup)、逸脱回避用ヨー制御を行う。
ここで、前記設定量dTkupは0より大きく、第1逸脱判断しきい値Tsより小さい値である(Ts>dTkup>0)。これにより、逸脱回避用ヨー制御の開始タイミングは、路面カントがない場合よりも遅くなる。
また、路面カントの角度θzの絶対値が大きいほど、前記設定量dTkupを大きくする。これにより、路面カントの勾配が大きくなるほど、逸脱回避用ヨー制御の開始タイミングが遅くなる。
なお、以上の第1乃至第3のケースの説明では、逸脱方向の判断に横加速度Xgを用いているが、逸脱方向の判断に逸脱方向Doutを用いることができることはいうまでもない。
前記ステップS6では、このように、路面カントの角度θz及び逸脱方向Dout或いは横加速度Xgの値に応じて種々の制動制御方法を決定している。すなわち、路面カントの角度θz及び逸脱方向Dout或いは横加速度Xgの値に応じて、逸脱回避用ヨー制御のみ、或いは逸脱回避用ヨー制御と逸脱回避用減速制御との組み合わせとして、逸脱回避のための制動制御方法を決定している。
そして、ステップS9では、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)をこのような各種制動制御方法に対応して算出する。
例えば、前記第3のケースの場合における逸脱回避用ヨー制御では、下記(11)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pmf
Psfr=Pmf+ΔPsf
Psrl=Pmr
Psrr=Pmr+ΔPsr
・・・(11)
また、前記第1及び第2のケースの場合では、逸脱回避用ヨー制御と逸脱回避用減速制御とを行うことになるが、この場合、下記(12)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pmf+Pgf/2
Psfr=Pmf+ΔPsf+Pgf/2
Psrl=Pmr+Pgr/2
Psrr=Pmr+ΔPsr+Pgr/2
・・・(12)
また、この(11)式及び(12)式が示すように、運転者による減速操作、すなわちマスタシリンダ液圧Pmf,Pmrを考慮して各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出している。
以上がステップS9の処理になる。このようにステップS9では、逸脱判断フラグFoutの状態に基づいて各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出している。そして、逸脱判断フラグFoutがONの場合には、前記ステップS6で路面カントの角度θz及び逸脱方向Dout或いは横加速度Xgの値に応じて決定した種々の制動制御方法に対応して各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出している。
以上が、制駆動力コントロールユニット8による演算処理である。そして、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS9で算出した各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動流体圧指令値として、制動流体圧制御部7に出力する。
以上のような車線逸脱防止装置は概略として次のように動作する。
先ず、各センサやコントローラ、コントロールユニットから各種データを読み込む(前記ステップS1)。続いて車速Vを算出する(前記ステップS2)。
続いて路面カントを検出する(前記ステップS3)。具体的には、路面カントの角度θzを参照して、路面カントの角度θzが0より大きい場合(θz>0)、車両からみて左方向が下り側となる路面カントを検出し、路面カントの角度θzが0より小さい場合(θz<0)、車両からみて右方向が下り側となる路面カントを検出し、路面カントの角度θzが0の場合(θz=0)、路面にカントがないことを検出する。
また、逸脱予測時間Toutに基づいて逸脱判断フラグFoutを設定するとともに、横変位Xに基づいて逸脱方向Doutを判定する(前記ステップS4、図4)。
また、そのようにして得た逸脱方向Doutと方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)とに基づいて運転者の車線変更の意図を判定する(前記ステップS5)。
例えば、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と逸脱方向Doutが示す方向とが同じである場合、運転者が意識的に車線変更していると判定する。この場合、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する。
また、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と逸脱方向Doutが示す方向とが異なる場合に、逸脱判断フラグFoutがONにされている場合には、それを維持する。これは例えば、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と逸脱方向Doutが示す方向とが異なる場合には、車両の逸脱挙動が運転者による車線変更等の運転者の意思による車両挙動でないと考えることができるので、逸脱判断フラグFoutがONにされている場合には、それを維持する。
そして、前記路面カントの角度θz、逸脱判断フラグFout及び逸脱方向Dout或いは横加速度Xgに基づいて逸脱回避のための警報開始の有無、逸脱回避のための制動制御の有無、逸脱回避のための制動制御を実施する場合のその方法を決定する(前記ステップS6)。
さらに、横変位Xと前記変化量dxとに基づいて目標ヨーモーメントMsを算出し(前記ステップS7)、また、逸脱回避用の減速度を算出する(前記ステップS8)。
そして、前記路面カントの角度θz、逸脱判断フラグFout及び逸脱方向Dout或いは横加速度Xgに基づいて決定した制動制御方法を実現するための各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出し、その算出した目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動流体圧指令値として制動流体圧制御部7に出力している(前記ステップS9)。制動流体圧制御部7では、制動流体圧指令値に基づいて、各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を個別に制御する。これにより、逸脱傾向にある場合には、路面カントに応じて次のような車両挙動を示すようになる。
路面カントがない場合(θz=0)で、かつ逸脱傾向がある場合、逸脱判断フラグFoutがONになったとき(Tout<Ts)、逸脱回避用ヨー制御と、逸脱回避用減速制御とを組み合わせて行う。そして、この逸脱回避のための制動制御を、逸脱判断フラグFoutがOFFになるまで行う(前記第1のケース)。これにより、自車両は逸脱を回避する。一方、運転者は、この車両の逸脱回避動作により横方向の加速度或いは走行方向の減速度を感じ、自車両が逸脱傾向にあることを知ることができる。
また、路面カントの角度θzが0より大きく(θz>0)、かつ横加速度Xgが0より大きい場合(Xg>0)、又は路面カントの角度θzが0より小さく(θz<0)、かつ横加速度Xgが0より小さい場合(Xg<0)、すなわち路面カントの下り側に逸脱傾向がある場合、前記逸脱判断しきい値(Ts+dTkdown)よりも逸脱予測時間Toutが小さくなったとき(Tout<(Ts+dTkdown)、逸脱回避用減速制御を行う。さらに、前記第2逸脱判断しきい値Trよりも逸脱予測時間Toutが小さくなったとき(Tout<Tr)、逸脱回避用減速制御に加えて、逸脱回避用ヨー制御を行う(前記第2のケース)。これにより、自車両は逸脱を回避する。一方、運転者は、この車両の逸脱回避動作により走行方向の減速度を感じ、自車両が逸脱傾向にあることを知ることができる。ここで、逸脱回避用減速制御については、路面カントがない場合よりも設定量dTkdown分だけ早く作動する。
また、路面カントの角度θzが0より大きく(θz>0)、かつ横加速度Xgが0より小さい場合(Xg<0)、又は路面カントの角度θzが0より小さく(θz<0)、かつ横加速度Xgが0より大きい場合(Xg>0)、すなわち路面カントの上り側に逸脱傾向がある場合、前記逸脱判断しきい値(Ts−dTkup)よりも逸脱予測時間Toutが小さくなったとき(Tout<(Ts−dTkup)、逸脱回避用ヨー制御を行う(前記第3のケース)。これにより、自車両は逸脱を回避する。一方、運転者は、この車両の逸脱回避動作により横方向の減速度を感じ、自車両が逸脱傾向にあることを知ることができる。ここで、路面カントがない場合よりも逸脱回避用ヨー制御が遅く作動する。
次に本発明の効果を説明する。
前述したように、路面カントの下り側に逸脱傾向がある場合、前記逸脱判断しきい値(Ts+dTkdown)よりも逸脱予測時間Toutが小さくなったとき(Tout<(Ts+dTkdown)、逸脱回避用減速制御を行っている。そして、その制御開始タイミングは、路面カントがない場合よりも設定量dTkdown分だけ早くなっている。
これにより、逸脱傾向がある場合に、遅れることなく逸脱回避用減速制御を開始することができ、逸脱回避のための制御を最適に行うことができる。
また、前述したように、路面カントの上り側に逸脱傾向がある場合、前記逸脱判断しきい値(Ts−dTkup)よりも逸脱予測時間Toutが小さくなったとき(Tout<(Ts−dTkup)、逸脱回避用ヨー制御を行っている。そして、その制御開始タイミングは、路面カントがない場合よりも遅くなっている。
これにより、逸脱傾向がある場合に、不要に早くならないように逸脱回避用ヨー制御を開始することができる。これにより、その制御の作動が早すぎることで運転者に煩わしさを与えてしまうことを防止できる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施の形態として実現されることに限定されるものではない。
すなわち、前述の実施の形態では、逸脱を回避するためのヨーモーメントが車両に付与されるように制動制御(逸脱回避用ヨー制御)、逸脱を回避するために減速させるための制動制御(逸脱回避用減速制御)との組み合わせ方法、その作動順序、その制御量(ヨーモーメントの大きさ、減速度の大きさ)を具体的に説明した。しかし、これに限定されないことはいうまでもない。
例えば、前述したように、路面カントの下り側に逸脱傾向がある場合、逸脱回避のための制御として逸脱回避用減速制御を行っている。しかし、路面カントの下り側に逸脱傾向がある場合、逸脱回避のための制御として逸脱回避用ヨー制御を行ってもよい。また、前述したように、路面カントの上り側に逸脱傾向がある場合、逸脱回避のための制御として逸脱回避用ヨー制御を行っている。しかし、路面カントの上り側に逸脱傾向がある場合、逸脱回避のための制御として逸脱回避用減速制御を行ってもよい。
また、前述の実施の形態では、ブレーキ構造が流体圧を利用したブレーキ構造によるものを説明している。しかし、これに限定されないことはいうまでもない。例えば、電動アクチュエータにより摩擦材を車輪側部材の回転体に押し付ける電動式摩擦ブレーキや、電気的に制動作用させる回生ブレーキや発電ブレーキでもよい。また、エンジンのバルブタイミング変更などにより制動制御するエンジンブレーキ、変速比を変更することでブエンジンブレーキのように作用させる変速ブレーキ、或いは空気ブレーキでもよい。
また、前述の実施の形態では、横変位X及びその変化量dxに基づいて逸脱予測時間Toutを算出している(前記(2)式参照)。しかし、逸脱予測時間Toutを他の手法により得るようにしてもよい。例えば、ヨー角φ、走行車線曲率β、ヨーレートφ´或いは操舵角δに基づいて逸脱予測時間Toutを得てもよい。
また、前述の実施の形態では、運転者の車線変更の意図を操舵角δやその操舵角の変化量Δδに基づいて得ている(前記ステップS5参照)。しかし、運転者の車線変更の意図を他の手法により得るようにしてもよい。例えば、操舵トルクに基づいて運転者の車線変更の意図を得てもよい。
また、前述の実施の形態では、横変位X及び変化量dxに基づいて目標ヨーモーメントMsを算出している(前記(3)式参照)。しかし、目標ヨーモーメントMsを他の手法により得るようにしてもよい。例えば、下記(13)式に示すように、ヨー角φ、横変位X及び走行車線曲率βに基づいて目標ヨーモーメントMsを算出してもよい。
Ms=K3・φ+K4・X+K5・β ・・・(13)
ここで、K3,K4,K5は車速Vに応じて変動するゲインである。
また、前述の実施の形態では、前輪用の目標制動液圧Pgfを具体的な式を用いて説明している(前記(4)式参照)。しかし、これに限定されるものではない。例えば、下記(14)式により前輪用の目標制動液圧Pgfを算出してもよい。
Pgf=Kgv・V+Kgφ・φ+Kgβ・β ・・・(14)
ここで、Kgφ,Kgβはそれぞれ、ヨー角φ及び走行車線曲率βに基づいて設定する、制動力を制動液圧に換算するための換算係数である。
また、前述の実施の形態では、逸脱回避用ヨー制御を実現するために、前輪及び後輪の目標制動液圧差ΔPsf,ΔPsrを算出している(前記(7)式及び(8)式参照)。しかし、これに限定されるものではない。例えば、前輪の目標制動液圧差ΔPsfだけで逸脱回避用ヨー制御を実現してもよい。この場合、下記(15)式により前輪の目標制動液圧差ΔPsfを算出する。
△Psf=2・Kbf・Ms/T ・・・(15)
なお、前述の実施の形態の説明において、制駆動力コントロールユニット8が、走行路のカントに基づいて逸脱回避のための制御の開始タイミングを設定し、自車両が走行車線から逸脱する傾向がある場合、前記開始タイミングで逸脱回避のための制御を開始して、前記逸脱を回避する逸脱回避制御手段を構成している。すなわち、制駆動力コントロールユニット8の図2に示すステップS6で行う逸脱判断しきい値の設定は、走行路のカントに基づいて逸脱回避のための制御の開始タイミングを設定する処理を実現しており、制駆動力コントロールユニット8の図2に示すステップS6〜ステップS9の処理は、自車両が走行車線から逸脱する傾向がある場合、前記開始タイミングで逸脱回避のための制御を開始して、逸脱を回避する処理を実現している。
本発明の車線逸脱防止装置を搭載した車両を示す概略構成図である。 前記車線逸脱防止装置を構成する制駆動力コントロールユニットの処理内容を示すフローチャートである。 車両座標系XYZと路面カントの角度θzとの関係を示す図である。 前記制駆動力コントロールユニットの逸脱傾向判定の処理内容を示すフローチャートである。 逸脱予測時間Toutの説明に使用した図である。 目標ヨーモーメントMsの算出に用いるゲインK1,K2の特性を示す特性図である。 目標制動液圧Pgfの算出に用いる換算係数Kgv,Kgxの特性を示す特性図である。
符号の説明
6FL〜6RR ホイールシリンダ
7 制動流体圧制御部
8 制駆動力コントロールユニット
9 エンジン
12 駆動トルクコントロールユニット
13 撮像部
15 ナビゲーション装置
17 マスタシリンダ圧センサ
18 アクセル開度センサ
19 操舵角センサ
22FL〜22RR 車輪速度センサ

Claims (4)

  1. 走行路のカントに基づいて逸脱回避のための制御の開始タイミングを設定し、自車両が走行車線から逸脱する傾向がある場合、前記開始タイミングで逸脱回避のための制御を開始して、前記逸脱を回避する逸脱回避制御手段を備えることを特徴とする車線逸脱防止装置。
  2. 前記逸脱回避制御手段は、前記カントの下り側に自車両が逸脱する傾向がある場合、前記開始タイミングを早くすることを特徴とする請求項1記載の車線逸脱防止装置。
  3. 前記逸脱回避制御手段は、前記カントの上り側に自車両が逸脱する傾向がある場合、前記開始タイミングを遅くすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車線逸脱防止装置。
  4. 前記逸脱回避制御手段は、車輪への制動力を制御して、自車両にヨーモーメントを付与するか、又は、自車両を減速させることで、走行車線からの逸脱を回避させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車線逸脱防止装置。
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