JP2005142550A - 着磁可能な磁性薄膜構造体とその製造方法 - Google Patents

着磁可能な磁性薄膜構造体とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 隣あう微粒子に強磁性的な結合をもたらすことなしに、飽和磁界の制御が可能なFePt等の合金磁性薄膜とその製造方法を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体用の合金磁性薄膜の表面に、強磁性分極を起こさない非磁性層が配設され、合金磁性薄膜が磁気的に孤立した超微粒子から構成され、かつ合金磁性薄膜の非磁性層との界面が不規則相であり、それ以外の部分が規則相であることを特徴とする着磁可能な磁性薄膜構成とする。
【選択図】図3

Description

この出願の発明は、大量の情報を処理・記憶することのできる超高密度磁気記録媒体として有用な、着磁可能な磁性薄膜構造体とその製造方法に関するものである。
情報化社会の発展にともない大量の情報を処理・記憶することのできる超高密度磁気記録媒体の開発が切望されている。記録媒体の高密度化には、通常10nm以下の強磁性微粒子を非磁性マトリックス中に均一に分散させる必要がある。しかし、現行のCoCr基媒体では、微粒子のサイズが10nm以下になると熱エネルギーが異方性エネルギーよりも大きくなり、磁化反転が起こる。一方、L10構造を有するFePt規則相はCoCr
基合金よりも1桁大きい7×107erg/ccもの大きな異方性エネルギーを有するた
め、ナノサイズの超微細粒子であっても磁化反転を起こさない。このため次世代の超高密度磁気記録媒体として期待されている。この材料で単磁区粒子を作製することにより理論的に期待される保磁力は120kOeにも達し、実験的には約70kOeの大きな保磁力が実現されている。
しかしながら、このような単磁区微粒子の媒体を磁化させるには50kOe以上の大きな磁場(飽和磁界)が必要となる。現在のところこのような大きな磁場を発生させることのできる書き込み用磁気ヘッドの開発はされておらず、書き込みが不可能である。ナノスケールの微粒子媒体の飽和記録を実現するために、異方性エネルギーを保持したまま飽和磁界を下げる必要がある。
磁気記録媒体の高密度化には強磁性微粒子をナノメートルサイズの超微粒子とする必要があるが、強磁性微粒子のサイズがナノメートルサイズになると粒子内に磁壁が存在できず、単磁区状態となることから、単磁区微粒子の磁化反転は回転型であり、飽和記録を実現するために非常に大きな磁場を必要とする。そこで、このように大きな飽和磁界を減少させる方法として、FePt合金層にPtをキャップする方法が報告されている(非特許文献1)
S.Okamoto, O.Kitakami, N.Kikuchi, T.Miyazaki, Y.Shimada, Y.K .Takahashi, Phys. Rev. B 67 097722(2003).
上記のように、ナノスケールの単磁区微粒子上に数nmのPtをキャップすることにより異方性磁界を制御できるという報告がなされているが、Ptをキャップした場合の異方性磁界の制御はPtが強磁性分極した結果であり、隣あう微粒子に強磁性的な結合をもたらしてしまう、という問題がある。
そこで、この出願の発明は、隣あう微粒子に強磁性的な結合をもたらすことなしに、飽和磁界の制御が可能な、FePt合金をはじめとする磁気記録媒体用の磁性薄膜構造体とその製造方法を提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するために、第1には、磁気記録媒体用の合金磁性薄膜の表面に、強磁性分極を起こさない非磁性層が配設され、合金磁性薄膜が磁気的に孤立した超微粒子から構成され、かつ合金磁性薄膜の非磁性層との界面が不規則相であり、それ以外の部分が規則相であることを特徴とする着磁可能な磁性薄膜構成体を提供する
また、この出願の発明は、第2には、合金磁性薄膜がFePtまたはCoPt薄膜であることを特徴とする上記の磁性薄膜構成体を、第3には、合金磁性薄膜がFePt薄膜であって、基板上の膜厚が50nm以下であることを特徴とする磁性薄膜構成体を、第4には、非磁性層は無機質層または金属もしくは合金層であることを特徴とする磁性薄膜構成体を、第5には、非磁性層がAl23またはSiO2であることを特徴とする磁性薄膜構
成体を提供する。
そして、この出願の発明は、第6には、上記第1ないし5の発明の磁性薄膜構成体の製造方法であって、基板上に磁気記録媒体用の合金磁性薄膜を550〜700℃の温度の基板上にスパッタ蒸着した後に、成膜表面に非磁性層を室温でスパッタ蒸着することを特徴とする着磁可能な磁性薄膜構成体の製造方法を提供する。
この出願の第1の発明によれば、磁気記録媒体用のFePt等の磁性合金薄膜の飽和磁界の制御が、その表面に配設される非磁性層を成膜した際のプラズマダメージによって界面が不規則化することにより可能となる。同時に、磁性合金薄膜の界面不規則化により保磁力の制御も可能となる。そして、非磁性層の存在は、FePt等の磁性薄膜において、隣接する強磁性微粒子の強磁性的な結合を生じさせることもない。異方性を大きく下げることなく飽和磁場及び保磁力を適度に小さくすることは超高密度磁気記録において非常に有利なことである。
飽和磁界の制御は、界面の不規則化によるものであるため、不規則−規則変態をするような強磁性金属であれば、各種の合金磁性薄膜について、合金磁性薄膜の界面が不規則相となるように非磁性層を表面に配設、すなわち、キャップすることにより飽和磁界の制御が可能になる。
第2の発明によれば、磁気媒体用の合金磁性薄膜として重要な、FePt、そしてCoPtという特定の構成のものが実現される。
第3の発明によれば、磁気記録媒体としての作用に優れたFePt磁性薄膜においては、飽和磁界を制御できるのは磁気的に孤立した強磁性微粒子の場合であって、FePt膜厚が厚くなると連続膜になり、非常に小さな印加磁場で磁壁移動により飽和可能であることから、このような薄膜に界面が不規則化するようにキャップ層をつけても飽和磁界の制御は困難であるが、薄膜が連続化することのない50nm以下の膜厚とすることによって、飽和磁界の制御が可能になる。
第4の発明によれば、FePt等の磁性薄膜の表面に配設することのできるキャップ層としての非磁性層は、強磁性分極を起こさないアモルファス層としてのAl23やSiO2等の無機質物質あるいは金属もしくは合金とすることができる。
第5の発明においては、非磁性層をAl23またはSiO2とすることで、磁化反転過
程を変化させることにより飽和磁界の制御が実現され、また、隣接する強磁性微粒子の強磁性的な結合は全くない。また、Al23またはSiO2を用いていることは金属系とは
違って、温度上昇が起こっても拡散による組成の変化や粒合体が起こらないという利点もある。
さらにまた理想的な記録媒体、すなわち1bit/1粒子の記録をさせるパターンドメディアにおいても、現在では飽和記録させる方法はないが、Al23またはSiO2を配
設すること、つまりキャップすることにより飽和記録が可能になる。
そして、第6の発明の製造方法によれば、磁気記録媒体用のFePt等の磁性合金薄膜の表面に配設される非磁性層を成膜する際に、磁性合金薄膜の非磁性層の界面にプラズマダメージでを与えるように成膜することにより、以上のとおりの特徴を有する磁性薄膜構成体が効率的に、しかもより確実に実現されることになる。
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
この出願の発明の着磁可能な磁性薄膜構成体は、磁気記録媒体用の合金磁性薄膜の表面に、強磁性分極を起こさない非磁性層が配設され、合金磁性薄膜が磁気的に孤立した微粒子から構成され、かつ合金磁性薄膜の非磁性層との界面が不規則相であり、それ以外の部分が規則相であることを特徴とする。
合金磁性薄膜は、大きな異方性エネルギーを有し、規則−不規則変態を行う磁性材料を使用することができるが、とくにFePt薄膜あるいはCoPt薄膜が好ましい。この場合FeあるいはCoの組成は原子比で0.4〜0.6であることが好ましい。このような組成のものは、超高密度磁気記録媒体の実現のために必要なすぐれた磁気特性を備えたものである。
合金磁性薄膜は、磁気的に孤立した単磁区構造の超微粒子からなることが必要である。合金磁性薄膜の膜厚が厚くなると連続膜になり、高い一軸異方性が実現できないため、たとえばFePt薄膜においては膜厚は50nm以下とする。また、熱安定性の点から膜厚の下限は1nm程度である。
合金磁性薄膜の非磁性層との界面は不規則相であり、それ以外の部分は規則相であることが必要である。この不規則相は、たとえば非磁性層を成膜する際にプラズマダメージを与えることで形成することができる。不規則相の厚みは5nm以下、好ましくは1〜5nm程度とすることができる。このような範囲の厚みの不規則相は、異方性エネルギーを低下させずに飽和磁界を低下させることができる。
非磁性層は、強磁性分極を起こさない材料からなることが必要であり、無機質材料または金属もしくは合金を用いることができる。典型的には、非磁性層は、Al23またはSiO2とすることができる。このような非磁性層によれば、不規則相による作用とともに
、磁化反転過程を変化させることにより飽和磁界の制御が実現され、また、隣接する強磁性微粒子の強磁性的な結合は全くない。また、Al23またはSiO2を用いた場合には、金属系とは違って、温度上昇が起こっても拡散による組成の変化や粒合体が起こらないという利点もある。非磁性層の膜厚は5nm以下、好ましくは1〜5nm程度であることが、飽和磁界の制御の観点から好ましい。
この出願の発明の磁性薄膜構成体の製造方法は、上記のような磁性薄膜構造体を、基板上に磁気記録媒体用の合金磁性薄膜を550〜700℃の温度の基板上にスパッタ蒸着した後に、成膜表面に非磁性層を室温でスパッタ蒸着することにより作製するものである。
磁気記録媒体用の合金磁性薄膜を上記のような基板温度でスパッタ蒸着すると、高い一軸異方性を有する磁気的に孤立した単磁区構造の合金磁性薄膜が規則性をもって成膜される。そして、その後、室温で非磁性層を蒸着させると、合金磁性薄膜の非磁性層との界面がプラズマダメージを受けて、所要の厚みの部分が不規則化する。必要なプラズマダメー
ジを与えるには、たとえばRFスパッタ蒸着を行う。このようにすれば、上記の特徴を有する磁性薄膜構造体が効率的かつより確実に実現できる。
以下にこの発明の実施例を示すが、もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
[実施例1]
<薄膜の製造>
MgO(001)単結晶基板上に、高純度(99.99%)のFeとPtの共ターゲットを用いて、マルチDCスパッタ装置においてFePt薄膜(FeとPtの組成は原子比で1:1)をスパッタ蒸着した。基板温度は700℃である。
真空圧は〜6.0×10-7Paに排気し、0.1PaのArガスを導入した。FePt薄膜の成長速度は0.10nm/secとし、全体厚みを10nmとした。
続いて、RFスパッタ蒸着(Al23焼結ターゲットを用いRF電源を用いたArスパッタ(0.1Pa)で、投入電力が150W)により、アモルファスAl23薄膜を5nmの厚みで、室温または700℃で蒸着した。
<薄膜の特性>
図1(a)には、MgO(001)単結晶基板上に基板温度を700℃として作製された膜厚10nmのFePt薄膜のX線回折パターンを示した。2θが24°付近及び77°付近にそれぞれFePtの超格子反射線である(001)及び(003)からの回折線が明瞭に観測されることから規則化したFePtが形成されていることがわかる。このX線回折パターンよりMgO(001)//FePt(001)の方位関係を持ってFePt薄膜が成長していることがわかる。(b)には、基板温度を700℃としてFePtを10nm作製した後に、室温でAl23を5nm成膜したX線回折パターンを示す。2θが47°付近にブロードなピーク(矢印)が観測される。このピークは不規則相によるものか(200)配向によるものかはこのデータだけからではわからない。この薄膜を700℃で1時間熱処理した後のX線回折パターンを(c)に示す。(b)で観測された2θが47°付近のブロードなピークはなくなっていることから、このブロードなピークは不規則相によるものと考えられる。(d)には、Al23も基板温度700℃で作製した薄膜のX線回折パターンを示す。この場合はブロードなピークは観測されない。
また、図2には、基板温度を700℃としてFePtを10nm成膜した薄膜とFePtを作製した後室温でAl23を5nm成膜した薄膜の面内の電子顕微鏡像(TEM像)を示した。制限視野回折像からはFePtがMgO基板上にエピタキシャル成長をしており、なおかつc軸が面内に向いていることがわかる。すなわち、Al23を5nm成膜した後にX線回折像でブロードなピークが観察されたのは、c軸が面内に向いている成分が原因ではなく不規則相が形成されたことが原因であることがわかる。明視野像より、薄膜はAl23のあるなしにかかわらず約100nm程度の粒径を有する微粒子構造を有していることがわかる。
そして、図3には、基板温度を700℃としてFePtを10nm作製し、その後Al23を室温で5nm成膜した薄膜の断面TEM像を示す。明視野像からは約15nmの高さの等しいFePt粒子が確認できる。超格子反射斑点を用いた暗視野像からは規則化したFePt粒子の周りが暗くなっている。基本反射斑点を用いた暗視野像は粒子全体に渡って明るくなっていることから、規則相の粒子の周りを不規則相が囲っていることがわかる。この不規則相の厚さは約2.5nmである。図4には、この薄膜を700℃で1時間熱処理した後の断面TEM像を示した。明視野像からこの薄膜が熱処理により粒の合体が起こっていないことがわかる。超格子反射斑点及び基本反射斑点を用いた暗視野像から、熱処理後はFePt粒子全体が規則化していることがわかる。図5には、Al23をつけていないFePt10nmの薄膜の断面TEM像を示した。暗視野像からFePt粒子全体が規則化していることがわかる。Al23をFePtの上に成膜することによりその界面に不規則相が形成される原因として歪みの効果が考えられる。X線回折パターン(図1(b))に示すように、Al23を成膜した薄膜の回折ピークはAl23を成膜していないものに比してブロードになっている。700℃で1時間の熱処理を行った後では(図1(c))、回折ピークがシャープになっている。Al23を基板温度700℃で成膜した薄膜の回折ピークはシャープになっている。
図6は、SQUIDで測定した初磁化曲線及び磁化曲線を示したものである。実線は磁場印加方向が膜面垂直方向、点線は膜面内方向である。FePtはMgO単結晶基板上にc面配向のエピタキシャル成長をしているため、膜面垂直方向が磁化容易軸、膜面内方向が磁化困難軸である。(a)は基板温度を700℃として作製したFePt10nmの薄膜の磁化曲線である。バルクのFePtの飽和磁化の1100emu/ccに対して、50kOeの磁場印加時で約600emu/ccを示す。断面TEMの観察からFePt粒子の酸化はないため、50kOeの印加磁場では磁化が全く飽和していないことがわかる。保磁力も50kOe以上である。(b)には基板温度を700℃で作製したFePt10nm上にAl23を室温で作製した薄膜の磁化曲線を示す。約30kOeで磁化は飽和し、保磁力は約24kOeである。(c)は室温でAl23を5nm成膜した薄膜を700℃で1時間熱処理した薄膜の磁化曲線である。磁化が飽和する磁場は約48kOeと(b)に比して増加している。保磁力も約35kOeへと増加する。(d)はAl23を基板温度を700℃として成膜した薄膜であり、磁化は50kOeの磁場を印加しても完全には飽和していない。この薄膜の保磁力は約37kOeである。(b)及び(c)の磁化容易軸及び磁化困難軸で囲まれる面積から異方性エネルギーを算出すると、どちらの場合も約4×107erg/ccとなり、バルク値(7×107erg/cc)と同程度の値を示す。不規則相が存在する薄膜の方が異方性エネルギーは低いはずであるが、上に示した異方性エネルギーの見積もり方法はそこまでの精度はない。単純に体積比で計算した場合、完全に規則化したFePt粒子の異方性エネルギーを4×107erg/cc不規則相の異方性エネルギーを0とすると、約3×107erg/ccとなり、粒子全体が規則化しているものと同等の大きな異方性エネルギーを下げることなく飽和磁界の制御が可能であるということがわかる。
磁化過程を検討するために、図7に、基板温度を700℃として作製したFePt5nm、10nm及び20nmの薄膜のSQUIDで測定した磁化曲線とTEM像を示す。膜厚が5nmの薄膜は粒子径が約26nmの非常に小さな粒子からなっている。L10−F
ePtの場合、このサイズの粒子は単磁区であり、磁場の印加に対して磁化反転は回転により起こる。そのために初磁化曲線は磁場の印加に対してなかなか磁化されないような挙動を示している。膜厚が10nmに増加すると平均粒子径が約100nmへと増加する。大きいサイズの粒子は磁壁移動により磁化反転が起こる。そのため、約5kOeという低い磁場で磁化反転が起こっている。しかし10nmの薄膜は単磁区的に振舞うサイズの小さい粒子が体積比にして半分程度存在するために50kOeの印加磁場でバルクの飽和磁化の半分の値を示している。膜厚が20nmになると平均粒子径が約200nmと大きくなり、小さいサイズの粒の体積比率は減少する。そのためほとんどの粒は約5kOeの印加磁場で磁壁移動により磁化反転が起こる。わずかに存在する単磁区的な振る舞いをする粒子が5kOe以上で完全に飽和しない成分である。以上のことから図4の初磁化曲線は、磁壁移動で磁化反転が起こる比較的大きい粒子と磁化回転で磁化反転が起こる比較的小さい粒子の磁化過程の重ね合わせであることがわかる。また、粒子径が均一である膜厚5nmの膜は、図7(a)に示すように全く着磁ができないが、Al23をキャップすることで着磁が可能になると考えられる。
以上のことから飽和磁界の大きいFePt単磁区微粒子にAl23を成膜することにより、異方性エネルギーを低下させずに飽和磁界を低下させること、即ち着磁させることが可能であることが明らかとなった。これは超高密度磁気記録媒体及び数nm程度の強磁性微粒子が整然と配列したパターンドメディアへの応用が可能である。
[実施例2]
次に、界面不規則相形成の原因について調べた結果を述べる。界面不規則相形成の原因としては、界面歪みと、反跳Arなどによるプラズマダメージとが考えられる。もし界面不規則相形成の原因が界面歪みであれば、プラズマ照射量を変化させても界面不規則相の厚みの変化はないはずである。プラズマ照射量を変化させる方法としては、スパッタガスを変える方法とスパッタ方式を変える方法の2つがある。
<薄膜の製造>
MgO(001)単結晶基板上に、高純度(99.99%)のFeとPtの共ターゲットを用いて、マルチDCスパッタ装置においてFePt薄膜をスパッタ蒸着した。基板温度は700℃である。
真空圧は〜6.0×10-7Paに排気し、0.1PaのArガスを導入した。FePt薄膜の成長速度は0.10nm/secとし、全体厚みを5nmとした。
続いて、RFスパッタ蒸着またはDCスパッタ蒸着により、アモルファスAl23薄膜を室温で蒸着した。DCスパッタ蒸着の場合、Al23を作製するためにAr+O2ガス
を成膜室内に導入し反応性スパッタで薄膜作製を行った。DCスパッタ蒸着の方がRFスパッタ蒸着よりもプラズマ照射量は小さい。
図8に、以上のようにして作製した薄膜のX線回折パターンを示す。(a)及び(b)がAl23をDCスパッタ蒸着で作製したもので、それぞれAl23の膜厚が15nm、5nmの場合である。(c)はAl23をRFスパッタ蒸着で作製したもので、(002)ピークの低角側に不規則相に起因する(200)のピークが明瞭に観測される。一方、Al23をDCスパッタ蒸着で作製した(a)と(b)はAl23を設けていない(d)に比して(002)ピークが若干ブロードになっているものの不規則相に起因する回折線は観測されていない。
図9にこれらの薄膜の磁化曲線を示す。(b)はAl23をRFスパッタ蒸着で作製したもので、Al23なしの(a)に比して保磁力が大きく減少していることがわかる。これに対してAl23をDCスパッタ蒸着で作製した(c)及び(d)は(b)ほどには保磁力が減少していないことがわかる。
以上のことから磁性薄膜構造体のPtFe薄膜の界面不規則相はプラズマダメージによるものであることがわかる。
また、磁性薄膜構造体の界面不規則相による保磁力の制御についても検討を行った。
図10に、FePt上のAl23膜厚を変化させた薄膜のX線回折パターンを示す。Al23膜厚の増加とともに不規則相に対応する(200)のピークが強くなっていることがわかる。また、不規則相の厚みを定量的に評価するために成膜直後及び700℃で1時間の熱処理後の(003)の回折線の積分強度比を計算し、そこから不規則相の体積分率を求めた。その結果を図11に示す。成膜直後(as−depo)は界面不規則相が存在する状態、700℃で1時間の熱処理後はこの不規則相が完全に規則化した状態である。Al23膜厚を1nmから10nmへ増加させると、不規則相の体積分率は44%から5
8%へと増加することがわかる。図12に、体積分率より求めた不規則相厚みをAl23膜厚に対してプロットした図を示す。この図から、Al23膜厚の増加とともに不規則相厚みが増加していることがわかる。
図13に、上記各薄膜の磁化曲線の変化を示す。この図から、Al23膜厚の増加とともに保磁力が減少していることがわかる。図14に、保磁力Hcの不規則相厚みに対する変化を示す。この図は、保磁力は不規則相厚みの増加とともに減少しており、このことは不規則相厚みを変化させることで保磁力の制御が可能であることを示している。
[実施例3]
<薄膜の製造>
MgO(001)単結晶基板上に、高純度(99.99%)のFeとPtの共ターゲットを用いて、マルチDCスパッタ装置においてFePt薄膜をスパッタ蒸着した。基板温度は700℃である。
真空圧は〜6.0×10-7Paに排気し、0.1PaのArガスを導入した。FePt薄膜の成長速度は0.10nm/secとし、全体厚みを5nmとした。
続いて、RFスパッタ蒸着により、SiO2薄膜を室温で蒸着した。
図15に、以上のようにして作製した薄膜構造体の断面TEM像を示す。超格子反射斑点で結像された像から界面不規則相が明瞭に観察されます。図16に、この薄膜の磁化曲線を示す。SiO2がない場合は50kOe以上の保磁力を示すのに対して、SiO2を設けたものは保磁力が減少していることがわかる。このようにAl23以外の非磁性層を設けても同じように界面不規則化による保磁力の制御が可能であることがわかる。
飽和磁界の制御は超高密度磁気記録媒体の開発にはかかせないものであって、この出願の発明は単磁区微粒子媒体にAl23等の非磁性層をキャップするという非常に単純な方法であり、現行の生産ラインに即導入可能である。また、HDDの市場は大きく、この市場に対するこの出願の発明の経済効果は非常に大きい。
(a)基板温度を700℃としてMgO単結晶基板上に作製されたFePt10nmのX線回折パターン。(b)(a)の薄膜の上に室温でAl23を5nm成膜した薄膜のX線回折パターン。(c)(b)の薄膜を700℃で1時間の熱処理を行った後のX線回折パターン。(d)(a)の上に基板温度700℃のままでAl23を5nm成膜した薄膜のX線回折パターン。 基板温度を700℃としてFePtを10nm成膜した薄膜とFePtを作製した後室温でAl23を5nm成膜した薄膜の内面の電子顕微鏡像(TEM像)。 基板温度を700℃としてFePtを10nm成膜し、その後Al23を室温で5nm成膜した薄膜の断面TEM像。 図3の薄膜を700℃で1時間熱処理した後の断面TEM像。 Al23をつけていないFePt10nmの薄膜の断面TEM像。 初磁化曲線と磁化曲線。(a)基板温度を700℃としてFePtを10nm成膜した薄膜。(b)(a)の薄膜の上に室温でAl23を5nm成膜した薄膜。(c)(b)を700℃で1時間熱処理した後の薄膜。(d)基板温度を700℃のままでAl23を5nm成膜した薄膜。 基板温度700℃で作製したFePt薄膜の初磁化曲線、磁化曲線及びTEM像。それぞれ膜厚が(a)(d)5nm、(b)(e)10nm、(c)(f)20nm。 (a)(d)の薄膜上に室温でAl23をDCスパッタ蒸着により15nm成膜した薄膜のX線回折パターン。(b)(d)の薄膜の上にAl23を5nm成膜した薄膜のX線回折パターン。(c)(d)の上に基板温度700℃のままでAl23を5nm成膜した薄膜のX線回折パターン。(d)基板温度を700℃としてMgO単結晶基板上に作製されたFePt10nmの薄膜のX線回折パターン。 初磁化曲線と磁化曲線。(a)基板温度を700℃としてFePtを10nm成膜した薄膜。(b)(a)の薄膜の上に室温でAl23をRFスパッタ蒸着により5nm成膜した薄膜。(c)(a)の薄膜の上にAl23をDCスパッタ蒸着により5nm成膜した薄膜。(d)(a)の薄膜の上にAl23をDCスパッタ蒸着により15nm成膜した薄膜。 (a)(d)の薄膜上に室温でAl23をRFスパッタ蒸着により15nm成膜した薄膜のX線回折パターン。(b)(d)の薄膜の上にAl23をRFスパッタ蒸着により5nm成膜した薄膜のX線回折パターン。(c)(d)の上にAl23をRFスパッタ蒸着により基板温度700℃のままでAl23をRFスパッタ蒸着により1nm成膜した薄膜のX線回折パターン。(d)基板温度を700℃としてMgO単結晶基板上に作製されたFePt5nmの薄膜のX線回折パターン。 成膜直後及び700℃で1時間熱処理後の薄膜の(033)の回折線の積分強度比を計算し、そこから求めた不規則相の体積分率の結果。 体積分率より求めた不規則相厚みのAl23に対するプロット。 初磁化曲線と磁化曲線。(a)基板温度を700℃としてFePtを5nm成膜した薄膜。(b)(a)の薄膜の上に室温でAl23をRFスパッタ蒸着により1nm成膜した薄膜。(c)(a)の薄膜の上にAl23をRFスパッタ蒸着により5nm成膜した薄膜。(d)(a)の薄膜の上にAl23をRFスパッタ蒸着により15nm成膜した薄膜。 保磁力Hcの不規則相厚みに対する変化。 基板温度を700℃としてFePtを5nm成膜した薄膜とFePtを作製した後室温でSiO2を5nm成膜した薄膜の内面の電子顕微鏡像(TEM像)。 図15の薄膜の初磁化曲線と磁化曲線。

Claims (6)

  1. 磁気記録媒体用の合金磁性薄膜の表面に、強磁性分極を起こさない非磁性層が配設され、合金磁性薄膜が磁気的に孤立した超微粒子から構成され、かつ合金磁性薄膜の非磁性層との界面が不規則相であり、それ以外の部分が規則相であることを特徴とする着磁可能な磁性薄膜構成体。
  2. 合金磁性薄膜がFePtまたはCoPt薄膜であることを特徴とする請求項1の磁性薄膜構成体。
  3. 合金磁性薄膜がFePt薄膜であって、基板上の膜厚が50nm以下であることを特徴とする請求項2の磁性薄膜構成体。
  4. 非磁性層は無機質層または金属もしくは合金層であることを特徴とする請求項1の磁性薄膜構成体。
  5. 非磁性層がAl23またはSiO2であることを特徴とする請求項4の磁性薄膜構成体
  6. 請求項1ないし5の磁性薄膜構成体の製造方法であって、基板上に磁気記録媒体用の合金磁性薄膜を550〜700℃の温度の基板上にスパッタ蒸着した後に、成膜表面に室温で非磁性層をスパッタ蒸着することを特徴とする着磁可能な磁性薄膜構成体の製造方法。
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